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ツムラ(東証1部 4540)
注目点
医療用漢方製剤のシェア84%を占めるトップ企業。中国
における原料生薬の価格上昇を主因とした減益は、円高
と中国経済の減速を背景とした価格の落ち着き等により
18/3期を底にV字回復が予想される。
当社は原料生薬の約8割を中国から調達しており、1円/
米ドルの円高は2年後に2億円強の増益要因と試算される
円高メリット会社である。
原料生薬の安定調達に向けた取り組みについては、自社
管理圃場(当社の栽培指導ができ、栽培にかかるコスト
の把握とそれに基づく生薬の購入価格設定が可能な農
地)から調達する原料生薬が16/3期に全体の36%まで拡
大しており22/3期の50%に向けて着実に進捗している。
医師の約3割がまだ医療用漢方製剤を未使用と推定され、
同剤のエビデンス(科学的根拠)の蓄積とともに売上高
の伸びる余地は大きいと予想される。
円高メリット、18/3期を底にV字回復を予想
当社は在庫を約2年かかえているため、11年以降の生薬
価格の上昇と13年以降の急激な円安というダブルデメ
リット時に調達した原料生薬の影響は17/3期および
18/3期に出てくることから18/3期までは減益が続くと
予想される。
業績動向
バリュエーション
SBI証券は当社の予想PERの推移について、原料生薬の
高騰前はPER15倍から20倍のレンジ圏、高騰後の高止ま
り期の11年から15年はPER10倍から15倍のレンジ圏で推
移し、ダブルメリットの環境に入った16年からは再び
PER15倍から20倍のレンジ圏に入ったとみている。目標
株価は原料生薬高騰の影響が一巡すると予想される
18/3期の翌期(19/3期)の予想EPSを基にPER20倍の
3,430円と算出した。
SBI証券 投資調査部シニアアナリスト岩田俊幸
2016年8月19日(新規)
投資評価
中立
目標株価
3,430円
時価の目標株価からの乖離率 -18%株価(8/18)
2,813円
時価総額
195,051百万円
発行済株式数
69,339千株
外国人持株比率
38.9%
配当(17/3期予想)
64円
PER(17/3期予想)
18.6倍
PBR(17/3期予想)
1.3倍
ROE(17/3期予想)
6.8%
(注)発行済株式数は自己株除く、予想はSBI証券 連結業績決算期 売上高 前年比 営業利益 前年比 経常利益 前年比 当期利益 前年比 EPS PER ROE
( 百万円) ( %) ( %) ( %) ( %) ( 円) ( 倍) ( % ) 2016/3 112,625 2.0 19,826 1.7 19,494 -9.7 12,557 -10.8 178.1 - - 2 0 1 7 / 3 会社予 1 1 5 , 4 0 0 2 . 5 1 4 , 5 0 0 - 2 6 . 9 1 5 , 0 0 0 - 2 3 . 1 1 0 , 7 0 0 - 1 4 . 8 1 5 1 . 7 1 8 . 5 -SBI予 1 1 5 , 4 0 0 2 . 5 1 4 , 6 3 0 - 2 6 . 2 1 4 , 8 3 0 - 2 3 . 9 1 0 , 5 1 0 - 1 6 . 3 1 5 1 . 6 1 8 . 6 6 . 8 *コンセンサス - - - - - - - - - - - 2 0 1 8 / 3 SBI予 1 1 9 , 1 5 0 3 . 2 1 3 , 1 3 0 - 1 0 . 3 1 3 , 6 3 0 - 8 . 1 9 , 6 7 5 - 7 . 9 1 4 0 . 7 2 0 . 0 6 . 2 *コンセンサス - - - - - - - - - - - 2 0 1 9 / 3 SBI予 1 2 2 , 4 0 0 2 . 7 1 6 , 0 3 0 2 2 . 1 1 6 , 5 3 0 2 1 . 3 1 1 , 7 9 0 2 1 . 9 1 7 1 . 5 1 6 . 4 7 . 2 2 0 2 0 / 3 SBI予 1 2 6 , 2 5 0 3 . 1 2 0 , 0 3 0 2 5 . 0 2 0 , 5 3 0 2 4 . 2 1 4 , 7 0 5 2 4 . 7 2 1 3 . 9 1 3 . 2 8 . 6 2 0 2 1 / 3 SBI予 1 3 0 , 0 0 0 3 . 0 2 2 , 0 1 0 9 . 9 2 2 , 5 1 0 9 . 6 1 6 , 1 5 0 9 . 8 2 3 4 . 9 1 2 . 0 8 . 8 2 0 2 2 / 3 SBI予 1 3 4 , 3 5 0 3 . 3 2 4 , 0 0 0 9 . 0 2 4 , 5 0 0 8 . 8 1 7 , 5 9 0 8 . 9 2 5 5 . 9 1 1 . 0 9 . 0 5 2 週株価高安 ¥3 , 6 3 0 ~¥2 , 4 1 0
(1)会社概要
当社は1893年(明治26年)4月に津村重舎が婦人薬「中将湯」を製造販売する津 村順天堂を東京・日本橋で開業したことに始まる。1978年9月に店頭市場(当 時)に株式を公開し、80年11月に東証2部に上場、82年9月に東証1部に上場した。 漢方薬業界初の上場企業となり、信頼も増した当社の業績は順調に拡大した。 当時の業績をけん引した医療用漢方製剤は、慢性肝炎における肝機能障害の改 善効果が認められた「小柴胡湯(しょうさいことう)」であり、同剤のピーク 売上高は92/3期に298億円となった。しかし、90年に間質性肺炎の副作用が起き たことで91年に使用上の注意が改訂され、94年にはC型肝炎治療薬「インター フェロン」との併用が禁止されたこと、96年には死亡例の報告があったことか ら売上は急減した。この件は「漢方薬は効果が弱いが、副作用もない」という 当時は医師も含めた多くの人が抱いていた「漢方薬の安全神話」の崩壊となり、 当社の業績は急速に落ち込むこととなった。 この危機を乗り越えるために当社は、95年6月に経営陣を一新し、漢方薬という ハードだけでなく、漢方医学というソフトもあわせて普及させる方針に転じ、 漢方医学教育への支援活動を活発化させた。当社が漢方医学の普及に地道に取 り組んでいる中、政府から神風が吹いた。2001年3月に文部科学省から医学教育 モデル・コア・カリキュラムが公表され、大学医学部や医科大学の学生に対し 卒業時までの到達目標として「和漢薬を概説できる」という項目が設けられた。 これを契機に、大学における漢方医学教育の導入が進み、2004年度には医学部 を持つ全国80大学のすべてにおいて実施された。同カリキュラムは11年3月に改 訂され、新しい達成目標は「和漢薬(漢方薬)の特徴や使用の現状について概 説できる」に変更されている。この結果、日本では04年以降に卒業した医師は 大学で医療用漢方製剤の講義を受けているため、同剤を抵抗なく医療現場で使 用する環境が整えられた。SBI証券は漢方未使用医師は全体の3割、逆に10処方 以上を使用するコアユーザーの医師は全体の1割と推定している。 当社の医療用漢方製剤の売上高は2000/3期を底に回復に転じている。小柴胡湯 事件の反省を基にエビデンス重視の姿勢や医師に対する細やかな情報提供等を 進めたことから16/3期で1,230億円(薬価ベース)、10年CAGR(年平均成長率) は5.0%となり、全体の伸び(4.5%)よりも高い成長を続け、シェアは84.3%と なっている。 創業123年 図表1 医療用漢方製剤の市場規模と当社のシェアの推移 小柴胡湯事件の反省を基 にエビデンス重視の経営 小柴胡湯事件による業績 悪化 大学での漢方医学教育の 必修化による回復3 成長領域には参入企業が相次ぐのが普通だが、市場規模がまだ1,460億円と小さい ことや、医療用漢方製剤は参入障壁が高いため、新規参入がほとんどない特異的 な領域である。医療用医薬品市場(10兆8,378億円)でのシェアはまだ1.3%にすぎ ない。 参入障壁の1つは、医療用漢方製剤は天然物である生薬(薬草の根や茎、葉などの 有用部分を乾燥させたものや動物由来のもの、鉱物等)が原料であること。西洋 薬は有効成分が1種類であるのに対して、医療用漢方製剤は2種類以上の生薬を組 み合わせており、有効成分が多成分であることが特徴となっている。そのため、 新規に事業参入するには一定品質の原料生薬を安定的に調達できるルートの構築 が必要となる。 参入障壁の2つ目は、生産設備が通常の西洋薬と比べ大規模なプラントとなること。 ①原料生薬を煎じる、②得られたエキスを濃縮する、③スプレードライヤーで乾 燥させエキス粉末にするというノウハウの塊のような製造工程が必要となる。 ジェネリック医薬品が参入する可能性がほとんどないことも特徴である。医療用 漢方製剤は複数の生薬の組み合わせから構成され、天然物である生薬は産地や品 質によって含まれる成分が異なるため、先発企業の製品と生物学同等性を証明す る必要があるジェネリック医薬品を作製することはほとんど不可能と予想される。 1剤で複数の疾患に対応できることも特徴である。漢方医学の基本的な考え方は、 人間が本体持っている治癒力を前提に、からだ全体を診ながらそのバランスを正 常な状態にしていくこと。病気を単なる一つの器官の異常としてとらえるのでは なく、からだ全体の問題としてとらえて対処していく。このため、西洋医学では 症状ごとに病名があり、病名ごとに医薬品を処方することになり、これが高齢者 が平均6種類以上もの医薬品を服用しているという多剤投薬問題の原因となってい る。これに対して医療用漢方製剤は1剤で複数の疾患に対応が可能となっている。 ここで注目されるのは、16年度の診療報酬改定で新設された「多剤投薬の患者の 減薬を伴う指導の評価」である。入院時に6種類以上の内服薬が処方されている患 者が、退院時に処方される内服薬が2種類以上減少した場合、その医療機関には 「薬剤総合評価調整加算」として250点(2,500円)が支払われることになった。 SBI証券は医療用漢方製剤の使用が増える要因になる可能性があるとして動向に注 目している。 医療用漢方製剤は日本では新薬が出る可能性がほとんどないことも特徴である。 日本では148処方が厚生労働省に承認され、保険が適用されているが、1988年以降 新規承認されていない。これは1980年代に医療用漢方製剤の承認基準が変更され、 同剤は医療用配合剤の範疇に含められ、西洋薬の新薬と同様に臨床試験が求めら れることになり、品質確保のために煎じ薬とエキス製剤の同等性に関するデータ の提出が義務づけられたことが要因である。保険適用された医療用漢方製剤148処 方の売上高が16/3期で1,460億円ということは1処方当たりの平均売上高は10億円 弱にすぎず、薬価の安い日本で臨床試験をして新薬を開発するマインドが働かな いと予想される。当社は129処方の医療用漢方製剤を所有している。一方、シェア 2位(推定10%強)のクラシエ薬品は57処方であり、当社の優位は続くと予想され る。 ジェネリック医薬品の参 入は困難 医療用医薬品でのシェア は1.3%のニッチ市場
(2)医療用漢方製剤の特異性
生産設備も参入障壁 複数の疾患に対応できる ことも特徴 新薬が出る可能性がほと んどない特異的な市場 参入障壁は原料生薬の安 定的な調達新たな説明資材の作成 日本漢方生薬製剤協会(日漢協)が08年に実施した医師への医療用漢方製剤の使用状 況を調査した結果として、同剤を使用していない医師の理由上位3つは「漢方薬の使い 方が難しい」「エビデンスが十分でない」「治療効果が不十分」であった。この結果 から、医療用漢方製剤市場で成長を続けるにはエビデンスの構築と医師に対する細や かな情報提供がカギになると考えられる。 当社はエビデンスの構築に関しては、05/3期から「育薬」を推進している。育薬とは、 既存の西洋薬に有効な治療薬がなく、医療用漢方製剤が特異的に効果を発揮する疾患 領域に的を絞り、当該分野における高い専門性を有する施設・ドクターと臨床・基礎 研究を進め、その結果を論文化し、学会や医学雑誌で発表することでエビデンスを蓄 積していくこと。現状は5処方(大建中湯、抑肝散、六君子湯、牛車腎気丸、半夏瀉心 湯)で行っている。「大建中湯(だいけんちゅうとう)」は手術後の消化管機能障害 に伴う腹部膨満感、「抑肝散(よくかんさん)」は認知症に伴う周辺症状、「六君子 湯(りっくんしとう)」は胃もたれ、食欲不振などの症状があるにもかかわらず、検 査では異常が発見できない状態である機能性胃腸症に伴う上腹部不定愁訴、「牛車腎 気丸(ごしゃじんきがん)」は抗がん剤等による末梢神経障害(しびれ等)、「半夏 瀉心湯(はんげしゃしんとう)」は抗がん剤等による粘膜障害(下痢・口内炎)を対 象疾患としている。その成果として各種疾患治療ガイドラインに推奨としての記載が 増えてきている。 医師に対する細やかな情報提供に関しては、13年4月から病院の全診療科での説明会開 催(従来は医局単位での開催)に向けた営業活動を開始し、15年4月からは医師の情報 ニーズの多様化に対応するための「疾患・症状別アプローチ」を開始している。医療 用漢方製剤の使い分け情報を疾患・症状別にイラスト付で整理した説明資材を新たに 作成し、ある医療用漢方製剤の処方では効果が得られなかった患者へ次の選択肢をわ かりやすく解説している。医師の処方数が増加したことで説明資材に記載された77処 方(44疾患)は着実に売上高が伸びており、今後の成長のけん引役になることが予想 される。
(3)業績動向
育薬5処方 エビデンスの構築と細や かな情報提供がカギ 図表2 売上高予想の内訳 (百万円) 16/3期 17/3期予 18/3期予 19/3期予 20/3期予 21/3期予 22/3期予売上高
112,625
115,400
119,150
122,400
126,250
130,000
134,350
医療用医薬品108,109
110,820
114,500
117,700
121,500
125,200
129,500
医療用漢方製剤107,599
110,320
114,000
117,200
121,000
124,700
129,000
育薬5処方29,180
30,003
31,157
32,242
33,858
35,320
37,270
大建中湯10,273
10,530
10,845
11,170
11,617
12,060
12,600
抑肝散7,215
7,540
8,030
8,430
8,980
9,430
10,000
六君子湯6,604
6,795
7,034
7,315
7,760
8,170
8,800
牛車腎気丸3,838
3,857
3,915
3,942
4,021
4,080
4,170
半夏瀉心湯1,250
1,281
1,333
1,385
1,480
1,580
1,700
Grouing5処方23,701
24,691
26,169
27,367
28,738
29,960
31,410
補中益気湯6,968
6,969
7,178
7,357
7,558
7,730
7,950
5 原料生薬の高騰 育薬5処方のうち、SBI証券が最も注目している製剤は、認知症患者にみられる周辺 症状(BPSD)に対する効果が認められている抑肝散である。日本の中高年の健康に 関する意識調査で最も心配する疾患が認知症であるが、厚生労働省の推計によると 2012年に462万人といわれていた認知症の人は2015年には65歳以上の高齢者の5人に 1人に相当する700万人に達するといわれている。認知症の症状は中核症状と周辺症 状に大別され、中核症状とは少し前の出来事を忘れる記憶障害や時間や場所の見当 がつかなくなる見当識障害など患者に共通してみられる認知障害である。一方、周 辺症状は中核症状により日常生活で失敗が重なり、不安が募ったり、イライラしや すくなることで二次的に引き起こされる症状で幻覚、妄想、徘徊、興奮、睡眠障害 等があり、患者のみならず、介護する家族や医療関係者にとっても大きな負担と なっている。 現状は西洋薬に適切な薬がない状態である。向精神薬が一般に使われているが、向 精神薬は身体機能を鎮静化させることで問題行動を低下させるため、誤嚥性肺炎や 転倒しやすくなるという問題がある。SBI証券が注目している理由は、16年度の診 療報酬改定で認知症に対する主治医機能の評価として新設された「認知症地域包括 診療料」と「認知症地域包括診療加算」である。複数疾患を有する認知症患者に対 して、1処方につき5種類を超える内服薬および3種類を超える向精神薬の投薬がな い場合は、月に1回1,515点(1万5,150円)、再診料1回につき30点(300円)の加算 が支払われることになった。SBI証券は抑肝散の使用が増える要因になる可能性が あるとして動向に注目している。SBI証券は抑肝散の16/3期売上高72億円が22/3期 に100億円(6年CAGR5.6%)と予想している。なお、抑肝散の1日当たり薬価は約86 円と安く、医療経済の圧迫要因にならないことも評価される。 当社はコストの主因である原料生薬を中国から約80%、日本で約15%、ラオスなどか ら約5%調達している。在庫は約2年分かかえていることから収益へ反映されるのは2 年後となる。中国においては各地の生薬生産農家、産地会社などを通じて調達して いるが、2010年頃から中国の人件費の上昇を背景に生薬価格が上昇傾向にあったと ころに、11年は天候不順に加えて一部の生薬、特に栽培期間が5年と長い“人参” には投機資金が入ったことから大幅に上昇し、政府が取り締まりを強化する事態と なった。2013年からは円安が急速に進んだことで当社にとってダブルデメリットの 環境になった。 高齢者の5人に1人が認知 症の時代へ 診療報酬改定による恩恵 を予想 図表3 出所:対象会社公表資料を基にSBI証券投資調査部作成
米国で臨床試験を実施中 当社は対応策として2012年より自社管理圃場の拡大に取り組んだ。投機の対象になっ た人参については11年10月に中国吉林省白山市政府と人参の共同開発に関する協議書 を締結している。白山市は中国における人参の主要産地である。今回の共同開発につ いては白山市政府から人参産業の振興と継続的な発展のために当社の長期的な協力の 申し出によって実現したものであり、人参栽培基地の拡大が進められている。SBI証 券は白山市と共同開発している人参が18年頃から収穫が始まると予想しており、16/3 期に全体の36%となっている自社管理圃場からの調達率が19/3期に40%に達し、22/3期 は50%に到達すると予想している。 16年に入ってからは急激な円高となり、現状はダブルメリットの状態になっている。 生薬価格については、中国政府が中医薬(TCM:Traditional Chinese Medicine)の 国際化を図っているため、原料生薬に投機資金が入ることに監視を高めていることや、 中国経済の減速による人件費上昇が抑制されていることもあり、低下傾向となってい る。会社側は原料生薬の金額を開示していないが、SBI証券は14/3期158億円→15/3期 181億円→16/3期213億円→17/3期256億円→18/3期280億円→19/3期261億円→20/3期 228億円→21/3期234億円→22/3期240億円と予想している(実績値もSBI証券予想)。 なお、当社の中国からの年間取引額は約2.5億米ドル(有価証券報告書を参考)であ り、当社の為替変動の影響は1円/米ドルの円高は2年後に約2.5億円の増益要因と試算 される。 もう1つのコスト要因である研究開発費については、米国におけるTU-100(大建中 湯)の開発ステージが現在の前期第Ⅱ相から19/3期頃に次のステージ(後期第Ⅱ相/ 第Ⅲ相)へアップすることが予想され、SBI証券は16/3期60億円→17/3期66億円 →18/3期75億円→19/3期77億円→20/3期87億円→21/3期80億円→22/3期78億円と予想 している。大建中湯は日本では手術後の使用が標準治療になりつつあり、当社の医療 用漢方製剤の中で売上高トップ(16/3期売上高102.7億円)となっている。開腹手術 をした後は、腸管の運動機能が低下し、イレウス(術後腸管機能障害)になりやすく、 そのために腹部膨満感や強い腹痛などに苦しめられることになる。大建中湯は腸のぜ ん動運動を活発化させて、不快症状が早期に改善することが多く、入院日数の短縮効 果も報告されていることから使用が拡大している。 米国ではイレウスと過敏性腸症候群の2つの疾患に対してエンドポイント探索試験が 実施されており、SBI証券は18/3期にデータが出そろい、19/3期から最終試験である 後期第Ⅱ相/第Ⅲ相試験に入ると予想している。データ解析が終了した段階で開発 パートナー企業探しが本格化すると予想されるが、SBI証券の業績予想は単独で最終 試験を行う前提で、研究開発費の中に米国の臨床試験費用を19/3期15億円→ 20/3期 20億円→21/3期15億円→22/3期15億円と見込んでいる。 なお、当社は16年5月12日に新中期経営計画を発表し、戦略課題の1つに中国における 新規ビジネスへの挑戦をあげている。具体的には中国企業と協力し、刻み生薬事業へ の参入や中薬配合顆粒(単味生薬エキス顆粒)事業への参入が示されているが、ビジ ネスの細かい内容はこれからつめていく状況であり、SBI証券は今回のレポートには 中国での新規ビジネスについて業績予想には織り込んでいない。 自社管理圃場の拡大 現状は円高、生薬価格低 下のダブルメリット 開発パートナー探し 中国での新規ビジネス
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(3)投資判断とバリュエーション/リスク
SBI証券は当社の予想PERの推移について、原料生薬の高騰前はPER15倍から20倍のレン ジ圏で推移し、高騰後の高止まり期の11年から15年はPER10倍から15倍のレンジ圏で推 移し、ダブルメリットの環境に入った16年からは再びPER15倍から20倍のレンジ圏に 入ったとみている。 目標株価は、原料生薬高騰の影響が一巡すると予想される18/3期の翌期である19/3期 の予想EPSを基にPER20倍の3,430円と算出した。 当社は16年8月4日に初の自社株買いを発表している。8月5日から10月31日までの期間 に取得株数が180万株(上限)、取得金額は50億円(上限)としている。 SBI証券は8 月18日終値である2,813円で177万7,000株を購入する(取得金額50億円)として業績予 想に織り込んでいる。 カタリストは医療用漢方製剤の薬価維持策が発表されること。16年度の薬価制度改革 の目玉政策の1つが「基礎的医薬品の薬価下支えルール」が導入されたことである。基 礎的医薬品の新ルールは「収載から25年以上経過」「乖離率が全体の平均以下」「一 般的なガイドラインに記載され、広く使用されるなど汎用性がある」を満たした品目 に適用されるが、今回は試行的な導入という位置づけから、「病原生物に対する医薬 品」「医療用麻薬」「過去に不採算再算定が適用された品目」の3区分に限定されてい る。SBI証券は今回は医療用漢方製剤は含まれなかったが、前例ができたことから18年 度または20年度の薬価改定時に基礎的医薬品の医療用漢方製剤が含まれる可能性はあ るとみている。 リスクは原料生薬に再び投機資金が入ること。中国政府による原料生薬の輸出制限な どがあげられる。 出所:QUICKデータを基にSBI証券投資調査部作成 図表4 当社の予想PERの推移 PERによる評価 初の自社株買い リスク カタリスト図表5 損益計算書 (百万円) 15/3期 16/3期 17/3期予 18/3期予 19/3期予 20/3期予 21/3期予 22/3期予 17/3期会社予 売上高 110,438 112,625 115,400 119,150 122,400 126,250 130,000 134,350 115,400 (前年比) 0.3% 2.0% 2.5% 3.2% 2.7% 3.1% 3.0% 3.3% 2.5% 売上原価 41,859 45,055 50,626 54,238 53,620 51,627 53,380 55,173 50,700 粗利益 68,579 67,570 64,774 64,912 68,780 74,623 76,620 79,177 64,700 売上高比 62.1% 60.0% 56.1% 54.5% 56.2% 59.1% 58.9% 58.9% 56.1% 販管費 49,087 47,743 50,144 51,782 52,750 54,593 54,610 55,177 50,200 販管費(除R&D) 42,835 41,775 43,544 44,282 45,050 45,893 46,610 47,377 43,600 売上高比 38.8% 37.1% 37.7% 37.2% 36.8% 36.4% 35.9% 35.3% 37.8% R&D費 6,252 5,968 6,600 7,500 7,700 8,700 8,000 7,800 6,600 売上高比 5.7% 5.3% 5.7% 6.3% 6.3% 6.9% 6.2% 5.8% 5.7% 営業利益 19,491 19,826 14,630 13,130 16,030 20,030 22,010 24,000 14,500 売上高比 17.6% 17.6% 12.7% 11.0% 13.1% 15.9% 16.9% 17.9% 12.6% (前年比) -13.2% 1.7% -26.2% -10.3% 22.1% 25.0% 9.9% 9.0% -26.9% 営業外収支 2,091 -331 200 500 500 500 500 500 500 金融収益 415 460 460 410 410 410 410 410 金融費用 -201 -182 -160 -160 -160 -160 -160 -160 その他営業外収 支 1,877 -609 -100 250 250 250 250 250 経常利益 21,583 19,494 14,830 13,630 16,530 20,530 22,510 24,500 15,000 売上高比 19.5% 17.3% 12.9% 11.4% 13.5% 16.3% 17.3% 18.2% 13.0% (前年比) -9.9% -9.7% -23.9% -8.1% 21.3% 24.2% 9.6% 8.8% -23.1% 特別損益 -1,505 -595 0 0 0 0 0 0 税前当期純利益 20,078 18,898 14,830 13,630 16,530 20,530 22,510 24,500 法人税等 5,754 6,072 4,050 3,680 4,460 5,540 6,070 6,615 実効税率 28.7% 32.1% 27.3% 27.0% 27.0% 27.0% 27.0% 27.0% 少数株主利益 248 268 270 275 280 285 290 295 当期純利益 14,075 12,557 10,510 9,675 11,790 14,705 16,150 17,590 10,700 (前年比) -22.0% -10.8% -16.3% -7.9% 21.9% 24.7% 9.8% 8.9% -14.8% EPS (円/株) 199.6 178.1 151.6 140.7 171.5 213.9 234.9 255.9 151.7 CFPS (円/株) 276.0 249.8 239.5 235.3 273.3 323.0 348.4 372.2 DPS (円/株) 64.0 64.0 64.0 64.0 64.0 64.0 64.0 64.0 64.0 ROE (%) 10.1% 8.3% 6.8% 6.2% 7.2% 8.6% 8.8% 9.0% PER (倍) - - 18.6 20.0 16.4 13.2 12.0 11.0 18.5 EV/EBITDA (倍) - - 10.6 11.1 9.2 7.3 6.4 5.6 PCFR (倍) - - 11.7 12.0 10.3 8.7 8.1 7.6 BPS (円/株) 2,103.0 2,169.1 2,176.9 2,251.4 2,355.9 2,501.5 2,667.5 2,853.9 PBR (倍) - - 1.3 1.2 1.2 1.1 1.1 1.0 設備投資 9,755 10,485 8,600 10,500 11,000 9,000 8,000 8,000 8,600
9 図表6 貸借対照表 図表7 キャッシュフロー計算書 (百万円) (百万円) 出所:対象会社の公表資料を基にSBI証券投資調査部作成 出所:対象会社の公表資料を基にSBI証券投資調査部作成
15/3期 16/3期 17/3期予 18/3期予 19/3期予 20/3期予 21/3期予 22/3期予 流動資産 現金・預金 19,379 25,150 11,402 12,714 17,736 29,959 39,331 49,829 有価証券 0 0 0 0 0 0 0 0 売上債権 42,142 41,875 42,794 44,185 45,390 46,818 48,208 49,821 棚卸資産 50,715 52,348 59,400 63,500 60,900 56,200 57,400 58,900 その他の流動資産 16,248 14,295 17,688 12,263 11,833 11,398 8,804 6,205 流動資産合計 128,484 133,668 131,284 132,662 135,859 144,374 153,743 164,755 固定資産 有形固定資産 60,624 62,822 65,322 69,322 73,322 74,822 75,022 75,022 無形固定資産 209 226 226 226 226 226 226 226 投資その他の資産 26,336 25,750 25,750 25,750 25,750 25,750 27,904 30,058 固定資産合計 87,169 88,799 91,298 95,298 99,298 100,798 103,152 105,306 資産合計 215,654 222,468 222,582 227,960 235,157 245,172 256,895 270,061 流動負債 支払手形・買掛金 2,828 3,157 3,544 3,797 3,753 3,614 3,737 3,862 短期借入金・社債 21,957 21,957 21,957 21,957 21,957 21,957 21,957 21,957 その他の流動負債 16,581 18,588 18,535 18,485 18,435 18,385 18,335 18,285 流動負債合計 41,366 43,702 44,036 44,239 44,145 43,956 44,029 44,104 固定負債 長期借入金・社債 15,000 15,000 15,000 15,000 15,000 15,000 15,000 15,000 その他 8,339 8,063 6,759 6,659 6,559 6,459 6,359 6,259 固定負債合計 23,339 23,063 21,759 21,659 21,559 21,459 21,359 21,259 負債合計 64,706 66,765 65,795 65,898 65,704 65,415 65,388 65,363 株主資本合計 135,351 143,084 144,170 149,445 156,835 167,141 178,891 192,081 その他 15,596 12,618 12,617 12,617 12,617 12,617 12,617 12,617 純資産合計 150,947 155,702 156,787 162,062 169,452 179,758 191,508 204,698 負債・純資産合計 215,654 222,468 222,582 227,960 235,157 245,172 256,895 270,061 15/3期 16/3期 17/3期予 18/3期予 19/3期予 20/3期予 21/3期予 22/3期予 営業キャッシュ・フロー 4,992 17,570 9,296 11,212 20,422 25,623 21,772 22,897 税金等調整前当期純利益 20,078 18,898 14,830 13,630 16,530 20,530 22,510 24,500 減価償却費 5,387 5,059 6,100 6,500 7,000 7,500 7,800 8,000 運転資本増減 -8,561 -1,835 -7,584 -5,238 1,352 3,133 -2,468 -2,988 その他 -11,912 -4,552 -4,050 -3,680 -4,460 -5,540 -6,070 -6,615 投資キャッシュ・フロー -10,683 -7,461 -8,600 -10,500 -11,000 -9,000 -8,000 -8,000 設備投資 -9,755 -10,485 -8,600 -10,500 -11,000 -9,000 -8,000 -8,000 その他 -928 3,024 0 0 0 0 0 0 財務キャッシュ・フロー 10,408 -4,608 -9,422 -4,400 -4,400 -4,400 -4,400 -4,400 有利子負債増減 15,000 0 0 0 0 0 0 0 配当支払額 -4,515 -4,515 -4,422 -4,400 -4,400 -4,400 -4,400 -4,400 その他 -77 -93 -5,000 0 0 0 0 0 FCF (フリーキャッシュ・フロー) -5,691 10,109 696 712 9,422 16,623 13,772 14,897
【目標株価・レーティングについて】 目標株価は、弊社のアナリストが今後6カ月から1年の期間に達すると予想している株価水準です。 投資判断(レーティング)の定義は以下の通りです。対象期間は今後6カ月から1年間とします。 強気:目標株価設定・変更時において目標株価からの乖離率が-20%以下である銘柄 中立:目標株価設定・変更時において目標株価からの乖離率が±20%未満である銘柄 弱気:目標株価設定・変更時において目標株価からの乖離率が20%以上である銘柄 NR:投資判断を実施しない銘柄 ※本レーティングは当社アナリストが対象会社を評価・分析した結果算出した目標株価をベースにした絶対評価になります。 ※目標株価の根拠についてはレポート本文をご参照ください。 【利益相反関係発生の可能性】 SBI証券及びその関連する会社は、本レポートに記載された企業に対して投資銀行業務に関するサービスを提供する等、同企業と取引を行なってい る、または今後行なう可能性があります。したがって、本レポートを閲覧される投資家の皆さまは、本レポートの客観性に影響を与える利益相反関係 が当社に発生する可能性があることを予めご了承ください。本レポートはあくまでも投資判断の参考のための一つの要素としてご参照ください。 【重要な開示事項】 ・保有株式等について 当社は、レポートに掲載されている銘柄の株式について、今後保有し、または売買する可能性がございます。 当社が発行済株式総数の5%を超える株式等を保有しているとして大量保有報告を行なっている銘柄は当社WEBサイト (URL:http://search.sbisec.co.jp/v2/popwin/info/home/pop690_kaiji.html)にてご確認いただけます。 ・主幹事担当会社について 平成27年3月以降、募集・売出し(普通社債を除く)にあたり、株式会社SBI証券が、主幹事となっている銘柄は当社WEBサイト (URL:http://search.sbisec.co.jp/v2/popwin/info/home/pop690_kaiji.html)にてご確認いただけます。 ※WEBサイトを閲覧可能な環境にない方は下記【お問合わせ先】までご連絡ください。 【お問合わせ先】 ・株式会社SBI証券 カスタマーサービスセンター:0120-104-214 ※携帯電話・PHSからは0570-550-104(ナビダイヤル)をご利用ください。 ※ナビダイヤルは20秒10円(税抜)の通話料がかかります。 ・年末年始を除く平日8:00~18:00 【その他留意事項】 本資料は日本国内の投資家向けに投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたものであり、個別の銘柄の売買推奨や、投資勧誘 を目的としたものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。本資料の内容は作成時点のも のであり、信頼できると判断した情報源からの情報に基づいて作成したものですが、正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載 の情報、意見等は予告なく変更される可能性があります。過去の実績値にもとづき推定された将来のパフォーマンス等に関する内容はあくまでもシ ミュレーションであり、お客さま個々人の運用成果等を保証または示唆するものではありません。万一、本資料に基づいてお客様が損害を被ったとし ても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行