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日本の社債市場の活性化に向けた課題

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日本の社債市場の活性化に向けた課題

~

我が国金融・資本市場の国際化に関する

スタディグループ

2007年5月10日

スタンダード&プアーズ

金融サービス格付け

マネ-ジング・ディレクター

根本直子

(2)

本日の内容

日本の金融資本市場がバランスのとれた発展を遂げるためには、社債(デット)市場

の活性化が重要。そのためには、銀行、投資家等、市場参加者がリスク・リターンを

機軸とした判断をより徹底していく必要がある。

1.日本の社債市場の特徴

国際的な比較でも、規模・流動性に劣り、適正なリターンを確保しにくく、多様性が少ない

2.活性化を阻害する要因

銀行の低金利融資、機関投資家の運用手法の遅れ、発行体の消極的な開示姿勢などが制

約となっている

3.市場活性化のメリット

市場活性化は、参加者の利益を拡大させ、内外の資金フローを促し、好循環をもたらす

4.今後の対応

銀行の適正な利ざや確保、投資家の運用力向上、市場のインフラ整備、が必要

(3)

1(1).日本の社債市場は海外諸国との比較で規模が劣る

出所 :日本証券業協会、 内閣府

Federal Board of Bulletin

社債発行残高/GDP比(%)

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

日本

韓国

台湾

シン

ガポ

出所:各国統計 06年12月

日本の社債市場の特徴ー(1)

•社債発行市場の規模は米国に比

べて小さい。

•企業の資金需要の回復にもかか

わらず、発行額は低迷しており、

米国との格差は拡大している。

•間接金融主体であった韓国、台

湾に比べても、GDP対比での規

模が小さく、日本の「間接金融主

体」は際立っている。

日本、米国の社債発行高GDP対比(%)

0

10

20

30

40

50

60

70

1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006

日本

アメリカ

(4)

1(2).日本の社債市場は流動性が低い。また広義のデット市場も同様。

日本の社債市場の特徴ー(2)

社債の流通市場は未発達であり、市場参加者は売り、買いを迅速に、大き

な価格変動を伴わずに行うことが難しい。

広義のデット市場(シンジケートローン、クレジットデフォルトスワップ<CDS

>)も課題は多い

シンジケートローンは成長を遂げているものの、規模としてはアメリカに比べて小さくまた多様

な参加者による流通市場は育っていない。

ローン格付け、企業の情報開示などが十分浸透していないため、プライシングの透明性が十

分とはいえない

CDSも銘柄、流動性が限られているため、貸し出しや社債のヘッジ手段として機能しにくい。

(5)

1(3).スプレッドカーブが平坦なため、リターンを確保しにくい

日本の社債市場の特徴-(3)

日本市場は、アメリカに比べると格付

け(信用リスク)に対応したスプレッド

が薄く、 スプレッドカーブはフラット化

している。

リスクにみあったリターンが確保しにく

いことから、投資家にとって魅力が少

ないものとなっている。

スプレッドのタイト化は、超低金利が

続く中で市場の選別機能が低下して

いること、需要が供給を上回っている

こと(郵貯等の機関投資家が運用対

象を社債に多様化させている)、など

を反映。

出所:スタンダード&プアーズ

2007 年3月

グローバルデフォルト率は「グロー

バルデフォルトスタディー2005年

版」 累積1年間を参照

社債(5年)スプレッド平均の日米比較

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

AAA

AA A

BBB

BB

BP

アメリカ

日本

グローバルデフォルト率

(6)

1(4).投資適格企業を中心としているため、多様性が少ない

日本の社債市場の特徴 -(4)

投資適格の発行体が市場の90%

を占め、ハイイールド(BB+以下)

の企業の起債が少ない(10%)。

アメリカを初めとする海外市場で

はハイイールドの発行比率がより

高く、近年増加傾向にある(米国

2001年37%→2006年51%)。

また、アメリカではシンジケート・ロ

ーン格付けもハイイールドが66%

を占めている。

企業の格付け別分布 0.00 5.00 10.00 15.00 20.00 25.00 30.00 35.00 40.00 45.00 AAA AA A BBB BB B CCC/C % 米国 欧州 日本 アジア

出所:スタンダード&プアーズ 2006年12月

格付け別発行体企業の割合(米国・%) 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1987 198 9 1991 1993 199 5 199 7 1999 200 1 200 3 2005 CCC & BELOW B BB BBB A AA AAA

(7)

1(4).投資適格企業を中心としているため、多様性が少ない

日本の社債市場の特徴ー(4)

日本ではハイイールドに分類される企業は、銀行からの借入れに依存している。

近年中小企業の私募債発行が増えているが、引き受けた銀行が満期まで保有す

るケースが多い。

日本においては、投資家、仲介者の分析手法の蓄積が遅れるおそれもある。

一例として、アメリカではハイイールド債券について、デフォルト確率だけでなく、

元本の最終的な回収率の見通しを表す「リカバリー・レーティング」が急速に普及。

同手法はアジア市場にも広がっている。

(8)

1(5). 債券市場の国際化は遅れている

円建て非居住者債(対GDP比%)

0

0.5

1

1.5

2

2.5

98年 99年 00年 01年 02年 03年 04年 05年 06年

日本の社債市場の特徴(5)

アメリカ、イギリスとの比較では、日本

の債券への海外からの投資額は少な

い。

国際金融センターとして発展するイギ

リスの場合、対外投資だけでなく、同

国の株式、債券市場に流入する資金

も多額であり、バランスがとれている。

海外企業の日本市場での円建て債発

行高も低迷。

出所:証券業協会

アメリカ

イギリス

日本

対外投資残高・株式(資産)

23.1

43.4

8.5

対外投資残高・債券(資産)

7.4

56.9

35.7

対内投資残高・株式(負債)

17.3

46.2

23.5

対内投資残高・債券(負債)

35.3

60.6

8.7

対外・対内投資の残高比較(対GDP比、%)

(9)

2.日本のデット市場活性化の遅れは、リスク・リターンを機軸とした判断が浸透していないため

日本の社債(デット)市場の活性化を阻害する要因

-銀行が低利で安定した資金を供給していれば、企業は直接調達に踏み切る動機を持ちにくい。

-銀行は内部格付けに応じた貸し出し金利設定を目指しているが、預金超過、競争環境などにより、実際には適用できていない。

-格付けを足切り基準とするような、運用手法の硬直性が、市場の多様化を妨げている。

-GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は社債についていずれかの格付け会社からトリプルB以上を取得していることを

管理運用方針としており、それを民間機関投資家がデファクト・スタンダードとしている面も。

-リスク・リターンを定量的に比較して、投資判断を行う慣行は十分根付いてはいない。

-企業の側も市場の評価を受け、プライシングが明確になることに消極的。

-ローンのセカンダリー市場が育たないのは、企業が売却に同意しない、あるいは情報開示に応じない点も制約となっている

-企業経営陣は、株価に比べてデットIRの意識は薄い。

銀行による低金利の融資慣行

機関投資家の運用手法開発の遅れ

企業の消極的な開示姿勢

(10)

3.市場活性化は参加者の利益を拡大させ、内外の資金フローを促す

日本市場活性化のメリット

機関投資家

国債を中心とするポートフォリオを多様化させ 収益率を高め

られる。

個人

ミドルリスク、ミドルリターンの資産を有することでバランス

のとれたポートフォリオを構築できる。

資金調達の多様化、安定化につながる。ガバナンスの向上。

成長力の高いアジア等の企業が、日本の潤沢な資金を

活用できる。

銀行

ポートフォリオ管理が進展し、大口集中リスクを削減できる。

自己資本比率も改善。

証券

市場の多様化により、収益性の高いビジネスを 拡大できる。

投資家

仲介者

発行体

多様な商品、流動性

による好循環

投資家

発行体企業

内外資金の

フロー活発化

仲介者

(11)

4.銀行、投資家、当局がリスク・リターンを機軸とした判断を徹底させることが重要

今後の対応:

日本のデット市場を

銀行:

貸出に際して、流通市場も見据えた適正なプライシングの適用を。

経営指標の目標や業績評価の重点をボリュームから利益率にシフトする、預金を他の金融商品などの預かり資産にシフト

させること、なども効果的。

ー市場金利の上昇、バーゼルIIの適用、公的信用保証制度の変更(信用力に応じた保証料率の適用、06年4月)などは、支

援的な環境といえる。

投資家:

運用手法、リスク管理の高度化。

情報システムの強化、外部人材の活用、人事・報酬制度の見直しなど。

仲介者:

発行体企業への情報開示の支援。投資家の選好、リスク許容度に応じた、商品組成。

金融監督当局、政府:

リスク・リターンを意識した貸し出し、運用を金融機関に指導。

同時に、日本をアジアの中核市場として育てるための制度設計が重要。

非居住者向け公社債利子の非課税措置の検討。

市場のインフラ整備(流通性、利便性、決済システムの安全性、会計制度の信頼性向上、コーポレートガバナンスの改善な

ど)

“適正な値付け力、高い流動性、優れたインフラ”を持つアジアの中核市場に

(12)

結 論

日本の社債(デット)市場は流動性の低さや、リスクに応じたリターンを確保しにくいという問

題がある。また、投資適格企業を中心としており、すそ野の広がりがない。

社債市場が活性化すれば、投資家はより高い運用リターンを得ることができ、市場参加者に

はさまざまなメリットをもたらす。また内外資金フローの活発化を招き、プラスの循環につなが

っていく。

日本の社債市場の活性化のためには、銀行、投資家等、市場参加者がリスク・リターンを機

軸とした判断と行動をより徹底していく必要がある。また、当局はこうした行動を促すように金

融機関を指導するとともに、日本をアジアの中核市場として発展させるための制度設計やイ

ンフラ整備を行うべきである。

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