第12巻第2号(1960) 283
Counseling に関す る研究
−ラ ボ−・ト につ い て−
墳 田 耕 治
Studies on the Counseling
On the Rapport
KojiSAXAIDA
I 経 口 CounseliIlg(カウンセリング)とは,広い意味ではtt相談”又はtt助言”と言うことである.そして,我々が日 常の社会生活の中で直面する悩み,苦しみ,緊張や圧迫等について,他に相談し,問題解決の糸口を見出し,叉ほ 解決を得ることは,現実的な形態や機能として広く行われて−いることである しかしここでは,教育の場に於ける,組織化され技術化された心理学的分野からみるカウンセリングの問題をと り上げ,特にその方法上におけるラボー・ト(rapp)r・t)を中心として■論を進めて行きたいと思う カウンセリングの方法については厳密に.言っていろんな立場がある小 第一・は指示的カウンセリング(CounseloI− Centered又はdirecive Counseling)であり,第こは非指示的カウンセリング(Client・CenterIed又はnondir・e・ ctive Counseling),第三には以上の=つを併用する折衷的カウンセリング(eclectic Counseling)である..備そ の他に,以上の心理学的なカウンセリングの諸立場に影響を与え,そして又現在もう一つの重要な役割を担ってい る精神分析学的な立場に立って,フロイト式のいわゆる自由連想法を主体とし,ロールシャツハ・チ・ストをも駆使 ㌧て行なうカウンセリングもあるわけである・ 現在,カウンセリングについての研究においてをま,折衷的な立場を取っている場合が多いように思われるが,こ の点についてはウイリアムスン(肌LLIAMSON・E“G・)が述べているように,「カウンセリングの究極の目的乃寧 日標が,個々のタライエント(Client)が,その能力の限界内で最大限の発達をなすことが出来るように.援助を与 える」ことである限り,その方法は,カウンセラ・−(Counselor・)の個性に.最も適合し,しかもクライエントの必 要に応じて,その間題について最も有効且つ望ましい方法が考えられなければならないことに.なる Ⅱ ラボー・ト(Rapport)について 1.ラボ′一卜の意味 以上簡単に述べた方法上の諸立場の何れをとるとしても,カウンセリングを実施するに当って最も蕃要であり, カウンセラ′一にとって十分検討されねばならないことの・一つがラボ−トの問題であるように思う 何故ならば,カウンセリングはカウンセラーと生徒との間に.行なわれる,直接の,しかも一対一の人間関係にお いて成り立つものだからである‖ 従って二人の間に“信頼が介在し,心が通い合っている状態”が維持され,lt何の かくし立てもなく心の底から打ち明けられ”くく話したことが十分に理解される”という関係,つまり心のつながり が保たれなければ,其のカウンセリングは成立し得ないと言っで良い.故に.ラボ・−トはカウンセリングを効果あら しめるための基本的な条件であることは言うを伐たない所であろう‖ 特に.カウンセリングを実施する上に.,カウン セラーーとクライエントとの間に作り出されるラボ・−トの強さが,以後のカウンセリングの深さと持続性や,クライ 丁ントを洞察する上に.極めて大きな影響をもつものであり,ひいてはカウンセリングの効果を左右すると言っても 過言ではないであろう 2い ラボ・−トを高める要件 それでは,このような意味と重要性を持つラポートを高める為には,カウンセラーにとって如何なる心構えが必OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
香川大学農学部学術報告 284 要であろうか.つまりは,カウンセラーーの取るべき行動又はクライ・エ・ントに接する態度が如何にあるべきかという 問題について考察の歩を進めてみたいと思う“というのは,撞かの事例ながら,実際に.カウンセリングを行なって みても,例えばクラ・イェソトが極度の心理的緊張の状態にあったり,必要以上の防衛態勢を取って居たり,非常に ぎこちない態度で,自由な表現を妨げるようなことはまま起り勝ちである.そのような場合カウンセラーとしては, 既にカウンセリングの第一歩において,その後のカウンセリングの成果が危ぶまれることにもなり兼ねないからで ある. このような概点に.立つならば,ラポートを高める為にカワンセラ「として留意すべき要件は,以下述べるような 事柄になるであろう. (1)クライェントの気持を和げることり −−クライ、エ・ントが特に.初対面のカウンセラーに.対してとる態度は,意 識的たると否とにかかわらず,極度に緊張して居る場合が多く,多くは極めて警戒的である.気持を解きほぐす為 には,気軽な雉談をすることが非常に有効である.時によっては,日常生活の明るい,愉快で楽しい面,クライエ ントの身近な出来事や長所,笑点,興味を持っている事柄等について,軽い気持で話しかけることである (2)カウンセラ・−の気持を表面に表わす努九(1)の場合と密接な関係があるが,カウンセラーがクライエントに 対して持っている暖かい気持,そして叉誠実さを持って屠り,信頼し得るという印象をクライエントに与えるよう, つとめてそれを外に表現しなければならない. (3)批判をさけ・ること.「 カウンセラ−は,いかなるクライエントの,いかなる問題であっても,善悪甲批判 に対する先入感を持っていてはならないことは当然である‖ そして−クライエントの行動や言葉に対して,すぐ善意 の判断を下したり,批判的な態度をとることはつとめて避ける必要がある..このようなカウンセラーの態熟ま,切 角の信頼感を裏切ることに.なり,自由な表現どころか,往々にしてクライエ・ントの沈黙を意識的に招く恐れがある からである. (4)クライエントの秘密は必らず守られるとの信頼感を持たせる‖・一個人的な秘密は決して口外しない旨を最 初に明言しておくことは必要であり,発言した秘密は必らず守られるという信頼感を抱かせることが大事である† カウチセリング蛸通の場合,唯一周限りでは終らないのであるから,この点に関しては,カウンセラーが打ち明
けられた秘密を絶対に他にもらさないことが重要な点であるが,更にカウンセリングに使用する一足の場痍を設定
することも望ましいと思われる.を実施中に,他の人から見られたり聞かれたりする恐れのない,落ちついて話せる, しかも明かるい感じの部屋が設けられることが,ラボ−・トを高める一つの条件となると言え.よう. 伍)クライエントの気持を推測する.一両者の間に或程度のラボー・トは存在しているとの確イ言から出発しても 時々クライエ.ントは沈掛こおちいり,その時間が極めて長びく場合が起る“この際笹も,クライエントの態度や表 情から,出来得る限りその気持を読み取る努力が必要である..そして推測したクライエントの気持を,カウンセラ −が言葉でもって反射するのが有効な方法である‖ 但しこれはかなり豊富な臨床的経験を必要とするわけで,下手 にこの方法を用いると,かえってクライエントの自由な発言を妨げる結果をもたらす危険があるい 従ってこの点に 関しては,あくまでもクライエントの心理状態をやさしく理解しようとするカウンセラ−の素直な態度こそ要求さ れるのであり,根本的にはクライエントを尊重する立場と言えるであろう (6)カウンセリング以外に,クライエントとあまり交渉を持たぬこと,.・−巧まずして,クライエ・ントと既に・現 在迄密接な交渉を持っている場合のカウンセリングも無いとは言えない小 しかし大部分はクライ・エントの個人的な 何らかの間靂を媒介として成り立つのがカウンセリングであるとすれば,いわゆるtく馴れている”関係においては, 意図的・計画的なカウンセリングには供重な態度と心構えが要求されるであろう‖従って,ラボ・−トを高めるに・は, 或る点では非常に親密であるが,他の面においては常に一度の距離を持っていることが必要である (7)カウンセリングの主導権を,カウンセラ・−からクライエントへ移すい・−クライエントの中には,自由に鞍 舞うことが不可能に近いまでに抑圧されていることもある.従ってクライエントにとって自由な場面に置かれるこ と自体が,一つの大きな脅威となることも考え得る,このような場面に直面し,叉ほ予想される時にをま,カウンセ ラーーが最初に話し合いをり一−ドする形にもって行くことが必要となるい そして,その為には,勿論出来得る限りク ライエントに関する事前の準備に万善の措置が講ぜられていなければならないことになる. 言う迄もなく一般のカウンセリングの場合は,主に面接を通してクライエントを理解す孝資料が得られ, に必要な援助が与えられるのが普通であるハ しかし,事前にクライェントに関する資料,例えば学校に.おける指導 要録,本人の作品や成放物,各種テストの結果,他の教師の観察等の資料は得られるし,又家庭における家族関係,OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
弟12巻第月号(1960) 285 本人の身体歴,言動そして友人関係等についての情報も成る程皮得られる筈である.それ等の資料をもとに.してク ライェ・ントの理解を深めてこおき,しかも藍要なことは,く、調べられ,知られている”ということをクライエ・ントに.察 知されるような不用意の発言をさけつつ,クライェントを自由な表現へ導くことなのである.このことは勿論広く カウンセリングの技術としてこの問題でもある小 こうしてクライエントのくく心に深くくいこむ”話し合いの端緒が, tくより速い親近感”を産むことになり..カウンセリングそのものを効果あらしめる結果ともなるであろう (8)カウンセラ−の能力.・−カウンセリングを効果あらしめる為に.カウンセラーが有能且つ豊富な経験を持 ばならぬことは当然である.しかし現在の段階ではカウンセラ−の能力に.おいて非常に大きな差異があることは否 たね定出来ない..この点についての考察は後日に.譲るとしで.とにかくカウン・セリング場面に.おけるラポートを強 める為の要素の一つとして,くtヵゥンセラ−と.して−の能力を持つ”ことが先決である.これを他の一面から考える ならば,“カウンセラ−の評判が良い”こともその一つの表われと見られる. クライェ.ントに.と.って,カウンセラ・−・が信頼に催すると感ずること.,それはカウンセラ−のtく自信ある態度”か らも引き出される,.そのような関係からは,カウンセラ一に.とって−も,く、クラ・イエ・ントに有益な経験を与えた”と感 ずることになり,引き続いて−クライエ・ントは進歩,改善への槻会を与えられるざ・とに・もなる Ⅱ 結 以上,カウンセリングを実施するに際してのラポートに関して,臨床経験を基に.しつつ考察を加えてみたもので あるい しかし,クライエントの事例数や諸設備等の関係もあり,研究の及ばなかった他の数多くの問題点も残され てこいると思う‖ それらの点については,更に臨床的経験を豊富に.し,考察の糸もたぐりたいと考えているが,とに かく,究極的に.予想することが許されるならば,tt強いラボ・−トの存在するところ,カウンセリングに.おける大盈の リードも,大Lて偲抗を起すことなくタライェントに.f受け入れられるであろう”と.いうこと,そして−ヵウンセリン グはおいては,ltヵウンセラーとクライェントの間に作りあげられるラボ−トの畳よりも大きな効果をあげることは あり得ない.’’と言うこと.である. 参 考 文 献 (1)沢田慶輔:相談心理学(1957) (2)井坂行男:カウンセリング (申・高校)(1953) (3)中村弘道: 〃 (大学)() (4)友田不二男:カウンセリングの技術(1959) 伍)伊東博訳編:カウンセリングの基礎(1960) ●レチマ
(6)嘉品凄蒜哀‥精神療法,(1958)
(7)HARDEE,M、P∴Counseling and Guidancein
Gener・alEducation(1955)
(8)CASSIDY,R.and KozMAN,fr.C.:Counse艮ng Gir・1sin a Changing Society(1947).
(9)LILrILE,W・and CHAPM空N,A・L・:Develop− mentalGuidancein Secondary・School(1953). 00)HAMILTON,G∴Psychotherapyin Child Guid−
ance(1948).
Summary
In schoc.1counseling,the conditions of str・engthening the rapport between counselor and client are summarized as follows:1.Counselor・needs toassuagethefeelingsofclientu 2、Counselorneedsto
show theLeeユingsofhimseユf byanymeans。3。Don,tcriticizeagainstclient.4.Counselor needsto capture the client,s con丘dence.5.Counselor needs to enterinto client’s feelings6巾Itis to be desir・ed thattheconnectionsbetween themare nothingexcept for counseling.7.Itisimportant to trIanSfer the工eadership from counselor to client.8い Substantialabiユities ofcouzISelor’haveneed to
elevated.