(日本語翻訳版)
加味逍遙散合四物湯エキス錠 「KGS1」 による皮膚症状と毛髪物性の改善効果
市橋正光1)、 吉田郁代2)、 山口博史2)、 山下耕作2)、 秋葉哲生3) 1) 医療法人再生未来 再生未来クリニック神戸 2) 小林製薬株式会社 中央研究所 3) 医療法人社団伝統医学研究会 あきば伝統医学クリニック Original ArticleKGS1 Kamishoyosangoshimotsuto Extract Tablets Improved Skin Condition and
Hair Properties
Masamitsu Ichihashi 1), Ikuyo Yoshida 2), Hiroshi Yamaguchi 2), Kousaku Yamashita 2), Tetsuo Akiba 3) 1) SAISEI MIRAI Clinic Kobe
2) Kobayashi Pharmaceutical Co. Ltd., Central R&D Laboratory 3) AKIBA Hospital of Traditional Medicine
Received: Mar. 23, 2011 Accepted: May. 6, 2011 Published online: Jun. 13, 2011
Anti-Aging Medicine 8 (3) : 15-22, 2011 〒 567-0057 大阪府茨木市豊川 1-30-3 Anti-Aging Medicine 8 (3) : 15-22, 2011
抄録
加味逍遙散合四物湯エキス錠 「KGS1」 の皮膚症状および毛髪物性に対する改善効果の検証を目的として、 皮膚や毛髪 の悩み ( かさつき、 しみ、 キメの粗さ、 薄毛、 抜け毛等 ) があり、 かつ血瘀や血虚の症状のある女性 20 名を対象として 24 週間の使用試験を実施した。 皮膚の評価では、 角質水分量、 キメスコア、 しみの明度に有意な改善が認められ、 毛髪物 性の評価では、 毛髪の太さと破断強度に有意な上昇が認められた。 さらに、 試験品服用前後の全顔写真を目視観察によ り比較評価した結果、 対象者の約半数で顔色や色素沈着領域の皮膚色が明るく変化し、 くすみが改善され、 皮膚のつや が増している様子が確認された。KEY WORDS:
加味逍遙散合四物湯、 血瘀、 血虚、 皮膚、 毛髪はじめに
患者の顔色や皮膚の状態、 頭髪の状態は、 全身の栄養状 態や血行を表しており、 これらを観察することは、 漢方医学に おいて重要な視診 (望診) の1つである1)。 例えば皮膚は、 色つやが良く、 適度の潤いとつやがあるものが正常とされてい るが、 病態によっては乾燥、 角化異常、 色素沈着や皮下出 血等の症状が現れることが知られている2)。 漢方医学における 「気血水」 の 「血」 は、 体内を流れる 赤色の液体と考えられており、 「気」 による制御を受けながらも 自律的に巡り、 全身の組織に栄養を与え2)、 老廃物を排泄す る。 「気」 や 「水」 とともに、 体内を過不足なく循行していれ ば健康が保たれるが3)、 その動的均衡が崩れると、 「 血 」 は 停滞 ・ 下降の性質を示す2)。 このようにして生じる病態が 「血 瘀 (けつお)」 であり、 「 血 」 が凝滞して通じない状態、 ある いは局所的に 「 血 」 の作用が過剰になった状態である。 また、 もう1つの代表的な 「 血 」 の病態が 「血虚 (けっきょ)」 であり、 「 血 」 の滋養作用の不足により、 肉体の物質的な不足を来し た状態である。 これら 「血」 に関わる病態では、 皮膚や毛髪 に症状が現れるという特徴がある。 すなわち、 「血瘀」 病態で は、顔面の毛細血管の拡張1)、眼輪部の色素沈着、顔面黒色、 皮膚の甲錯 (さめはだ)、 口唇の紫暗赤化4,5,6)、 「血虚」 病 態では、 顔色が悪くつやがない、 皮膚の乾燥、 毛髪が細くつ やがない、 抜け毛といった皮膚や毛髪の症状が発現する6,7)。 これまで我々は、 津田玄仙著「療治経験筆記」 を出典とし 8)、 「駆瘀血」 作用および「補血」 作用を有する方剤である加 味逍遙散合四物湯を用い、 8週間の服用による顔面の皮膚血 流と皮膚症状の改善効果を報告している9)。 本臨床試験では、 皮膚や毛髪の悩み(かさつき、 しみ、 キメの粗さ、 薄毛、 抜け 毛等) があり、 かつ「血瘀」 や「血虚」 の症状のある女性を対 象として、 24 週間の長期間服用における皮膚症状および毛髪 症状に対する改善効果を機器測定により検証した。 また同時 に、 皮膚症状に関しては服用前後の顔面写真を撮影し、 外 観的な変化を観察した10)。試験方法
1.対象 本臨床試験は、 ヘルシンキ宣言に基づく倫理原則および個 人情報保護法を遵守し、 医療法人社団新光会倫理審査委員 会の承認の下、 各対象者からインフォームドコンセントを得た 上で実施した。 「血瘀」、 「血虚」 に加え 「気虚」、 「肝鬱 (か んうつ) ・ 肝火」、 「脾胃虚 (ひいきょ)」、 「熱証」 等の病態の 有無により医師が本剤の適応と診断し、 かつ皮膚の悩み (か さつき、 しみ、 キメの粗さ等) がある 20 歳から 59 歳までの女 性のうち、 日焼け止め剤 (SPF 20 以上、 PA++以上) を 日常的に使用する習慣がある者を対象とした。 また、 毛髪評 価の対象者は、 円形脱毛症およびミノキシジル製剤使用者は 除外した上で、 毛髪の悩み (薄毛、 抜け毛等) があり、 かつ 試験開始前 6 ヶ月以内に染毛、 脱色、 パーマ等の施術をし ていない者に限定し、 8名を選定することとした。 2.生活規制 試験期間中は、 強い紫外線にあたる活動は禁止し、 日常 的な外出の際も日焼け止め剤の使用を義務づけた。 日焼け 止め剤は、 試験開始前に使用していた製品を継続して使用す ることとした。 また、 その他の外用剤 (化粧品、 医薬部外品、 医薬品) についても、 試験期間中に新規の製品を使用するこ とは禁止し、 試験開始前に使用していた製品を継続して使用 することとした。 毛髪評価の対象者は、頭髪用製品 (シャンプー、コンディショ ナー、 トリートメント、 整髪料等) についても新規の製品を使 用することは禁止し、 試験開始前に使用していた頭髪用製品 を継続して使用することとした。 また、 試験期間中は染毛、 脱 色、 パーマなど、 毛髪物性に影響を与える施術を禁止した。 3.試験品および服用方法 加味逍遙散合四物湯エキス 3.9 g (一日量 18 錠中) を含む 製剤 「KGS1」 (小林製薬株式会社提供 : 大阪府大阪市) を 試験品として用いた。 試験品は、 1 日 3 回、 1回6錠を食前ま たは食間に水または白湯にて服用した。 4.試験デザイン 本臨床試験は、 単一試験機関によって管理運営される、 単 群オープン試験として実施した。 試験期間は 2009 年 9 月 18 日から 2010 年 3 月 15 日とし、 試験期間中の 24 週間を服用 期間とした。 皮膚症状の観察日は、 服用前 (服用0週目)、 服用4週目、 8週目、 12 週目、 16 週目、 20 週目、 24 週目 にあたる各時点とした。 毛髪物性については、 服用前 (服用 0週目)、 服用 12 週目、 24 週目に評価を行った。 5.測定および評価方法 皮膚の測定および毛髪サンプルの採取は、 株式会社イン フォワード恵比寿スキンリサーチセンター (東京都渋谷区) に て実施し、 毛髪物性の測定は、 カトーテック株式会社 (京都 府京都市) にて実施した。 皮膚の測定は、 環境条件を室温 22℃、 湿度 45% の恒温 恒湿に設定し、 対象者を環境条件に 15 分間馴化させた後に 実施した。 毛髪物性の測定は、 環境条件を室温 20℃、 湿度 60%の恒温恒湿に設定し、 対象者から採取した毛髪サンプル を環境条件に2時間馴化させた後に実施した。(1)皮膚症状の測定・評価方法 1) 角質水分量
Corneometer CM825(Courage Khazaka 社、ドイツ)を用いて、 顔面頬部の角質水分量を測定した。
2) キメスコア
Robo Skin Analyzer (株式会社インフォワード) を用いて、 顔面頬部の 40 倍拡大画像を撮影し、 皮溝と皮丘の色調の濃 淡を二値化処理した後、 一辺 0.4mm の正三角形を並べたキ メモデルとの近似性を 100 点を満点とするキメスコアとして数値 化した。 3) しみ ⅰ) しみの個数と面積
Robo Skin Analyzer を用いて撮影した全顔画像において、 周辺部と比べて 「やや暗い部分」 または 「暗い部分」 として 検出された 0.6mm2以上の色素沈着領域を 「 しみ 」 と定義し、
その個数と面積を計測した。 ⅱ) しみの明度 (L*値)
Robo Skin Analyzer を用いて撮影した全顔画像において 「 濃いしみ 」 として検出された色素沈着領域のうち、 各対象者 において最も大きな領域を1箇所抽出し、 これらを対象とした。 Adobe photoshop CS3 (アドビ システムズ社、 東京都品川区) を用いて全顔画像から対象とする色素沈着領域を切り取り、 そ の領域の RGB 値から明度 (L*値) を算出した。 4) 全顔写真 顔色や皮膚の状態を服用前と服用後で比較評価するため、 全顔写真を撮影した。 撮影は、 照明、 カメラ機材、 着衣、 背 景、 およびカメラと対象者の距離 ・ 角度などの条件を一定にし て行った。 服用0週目と 12 週目、 24 週目の全顔写真を目視 にて比較評価した。 (2)毛髪物性の測定・評価方法 毛根から8~ 18mm の領域を測定に用いた。 一般にヒトの毛 髪は8~ 12mm/ 月の速度で成長することが知られており、 本 臨床試験では、 10mm/ 月の速度で成長すると仮定した。 従っ て、 12 週目の測定領域はおおよそ服用3週目から8週目に生 えた領域に相当し、 24 週目の測定領域はおおよそ服用 15 週 目から 20 週目に生えた領域に相当すると考えられる。 1) 直径 毛髪直径計測試験機 KES-2000 (カトーテック株式会社) を用いて、 毛髪の直径を測定した。 各対象者あたり5本の毛 髪サンプルを測定した。 また、 測定部位は毛根から8~ 18mm の 測 定 領 域 内 に お い て、 毛 根 か ら 10mm、 12mm、 14mm、 16mm に相当する4箇所とした。 2) 破断強度 高感度毛髪引張り試験機 KES-G1-SH (カトーテック株式会 社) を用いて、 毛髪を長さ方向に 0.1mm/ 秒の速さで引張り、 破断時の荷重値 (破断強度荷重値、 gf) を測定した。 各対 象者あたり5本の毛髪サンプルを測定した。 6.解析方法 対象者 20 名の全体的な解析については、 服用4週目、 8 週目、 12 週目、 16 週目、 20 週目、 24 週目の各観察日にお ける測定結果と0週目の測定結果との差を Bonferroni の方法 による多重比較検定にて解析し、p < 0.05 を有意差ありとし た。 また, データのばらつきは, 標準誤差にて評価した。 対 象者個別の推移については、 0週目、 4週目、 8週目、 12 週 目、 16 週目、 20 週目、 24 週目の各観察日における測定結 果に対して回帰分析による有意差検定を行い、p < 0.05 を有 意差ありとした。
結果
1.対象者背景 対象者条件を満たす 24 ~ 58 歳の女性 20 名を対象とした。 対象者の平均年齢は 39.8 歳であった。 また、 毛髪評価の対象 者は、 基準を満たす8名を選定し、 対象者の平均年齢は 48.3 歳であった。 試験中止症例や解析からの除外症例は発生せず に試験を終了した。 よって、皮膚症状に関しては 20 名分のデー タ、 毛髪物性に関しては8名分のデータで解析を行った。 2.皮膚症状の評価結果 各対象者の年齢および服用0週目、 12 週目、 24 週目の皮 膚症状の測定結果および回帰分析による有意差検定の結果 をTable 1に示す。 対象者個別の推移として、 角質水分量は 10 名、 キメスコア、 しみの個数、 しみの面積は各1名、 しみ の明度は5名において、 有意な変化が認められた。 (1)角質水分量 表皮角質層の水分量の測定結果をFig.1に示す。 角質水 分量は服用4週目から8週目にかけて急激に増加し、 8週目以 降は緩やかに増加した。 また、 8週目以降は0週目と比較して 有意な増加が認められた。 (2)キメスコア キメスコアの測定結果をFig.2に示す。 キメスコアは 100 点 を満点として、 数値が高いほどキメが整った状態であることを 示す。 キメスコアは、 服用期間が長くなるに従って上昇し、 服 用 20 週目は0週目と比較して有意な上昇が認められた。 しか しながら、 24 週目では、 20 週目に比べて下降する傾向がみ られた。 (3)しみ 1) しみの個数と面積 しみの個数の測定結果をFig.3、 面積の測定結果をFig.4 に示す。 しみの個数に関しては、 服用前後で有意差は認めらTable 1
皮膚症状の測定結果
回帰分析による有意差検定 : * p < 0.05, ** p < 0.01. 年齢 (歳) 角質水分量 (指数) キメスコア(指数) しみの個数 (個) しみの面積 (mm2) しみの明度(L* 値) 皮 膚 症 状 対象者 No. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 24 26 28 29 29 33 34 35 36 39 41 42 43 43 45 51 51 54 55 58 45.9 60.1 50.3 49.4 40.8 48.0 65.9 30.0 56.1 36.2 52.7 36.9 42.8 45.2 28.7 59.0 57.5 56.8 29.5 32.6 57.8 55.9 54.7 48.5 52.5 51.0 66.2 38.1 65.0 52.4 61.0 40.8 56.9 47.8 33.0 59.4 58.6 59.2 36.3 53.8 58.8 60.7 69.1 67.3 51.0 57.8 74.0 43.6 64.9 52.0 63.7 47.7 58.6 48.8 41.7 69.3 64.4 63.3 42.3 53.9 * * * * ** ** ** ** * ** 23 29 17 32 19 6 23 34 23 39 32 15 17 16 15 29 19 27 31 25 12 30 20 56 26 14 24 21 24 37 30 39 18 7 34 17 45 46 34 57 18 33 21 20 20 39 28 41 31 51 23 33 29 11 17 45 41 20 17 49 * 54 114 71 76 103 34 56 37 56 91 94 37 92 117 80 55 85 52 144 63 69 113 82 70 78 44 60 26 64 110 103 40 99 130 69 69 91 44 132 74 54 100 81 56 68 48 66 22 58 71 113 33 109 139 70 72 104 73 140 71 ** 125 458 199 249 294 117 282 114 131 263 314 110 317 334 282 148 401 157 546 263 167 383 253 206 239 164 361 108 135 316 294 114 334 364 218 195 380 140 512 331 173 307 201 155 177 133 395 108 144 181 289 169 336 389 213 200 542 237 545 327 * 60.7 60.8 49.3 61.9 57.3 55.9 52.7 51.2 55.0 50.3 47.3 58.3 51.7 51.5 62.0 46.5 58.9 58.5 54.2 55.5 60.6 61.4 49.7 62.5 57.7 57.2 50.9 54.3 55.4 54.5 47.5 58.5 52.3 55.4 62.1 46.7 60.8 59.2 53.8 57.7 60.5 62.5 51.2 63.9 57.7 58.5 52.1 50.9 54.0 54.2 45.8 58.6 61.9 54.8 62.5 45.1 60.7 59.0 56.1 55.5 ** * * * * 0 週 目 12週目 24週目 有意差判定 0 週 目 12週目 24週目 有意差判定 0 週 目 12週目 24週目 有意差判定 0 週 目 12週目 24週目 有意差判定 0 週 目 12週目 24週目 有意差判定 Fig. 1. 角質水分量 Corneometer CM825 による角質水分量の測定結果 服用8週目以降は、角質水分量の有意な増加が認められた。 平均値±標準誤差,n=20 Bonferroni の方法による多重比較検定 : **p<0.01, ***p<0.001Fig. 2. キメスコア
Robo Skin Analyzer によるキメスコアの測定結果
服用後はキメスコアが経時的に上昇し、服用 20 週目では有意な上昇が認められた。 平均値±標準誤差,n=20
Bonferroni の方法による多重比較検定 : *p<0.05
Fig. 3. しみの個数
Robo Skin Analyzer によるしみの個数の測定結果 服用前後で差は認められなかった。
値は平均値±標準誤差,n=20
Fig. 4. しみの面積
Robo Skin Analyzer によるしみの面積の測定結果
服用 16 週目では有意な減少が認められたが、全体的な推移としては、一定の傾向が認められなかった。 平均値±標準誤差, n=20
れなかった。 しみの面積は、 服用0週目と比較して 16 週目に 有意な減少が認められたが、 全体的な推移としては、 一定の 傾向が認められなかった。 2) しみの明度 (L*値) しみの明度の解析結果をFig.5に示す。 しみの明度は、 服 用期間が長くなるに従って上昇し、 服用 16 週目は0週目と比 較して有意な上昇が認められた。 また、 16 週目以降は、 定 常状態が維持された。 Fig. 5. しみの明度 (L* 値)
Robo Skin Analyzer の画像を用いたしみの明度(L* 値)解析結果
服用後は、しみの明度が経時的に上昇し、服用 16 週目では有意な上昇が認められた。 平均値±標準誤差,n=20 Bonferroni の方法による多重比較検定 : **p<0.01 Fig. 6. 服用前後の全顔写真 例1 くすみが改善され,顔色が明るくなり、右頬上部の色素沈着が改善された。 例2 くすみが改善され,顔色が明るくなり,皮膚のつやが増した。 例2 対象者 No.15(45 歳) 0週目 12 週目 24 週目 例1 対象者 No.5(29 歳) 0週目 12 週目 24 週目
(4)全顔写真 全顔写真の代表例をFig.6に示す。対象者 No. 5(29 歳)は、 服用前と比べて服用後は、 くすみが改善され、 顔色が明るく なった様子が観察された。 また、 右頬上部の色素沈着の改善 が認められた。 対象者 No.15 (45 歳) は、 服用後は服用前 と比較して、 くすみが改善され、 顔色が明るくなり、 皮膚のつ やが増している様子が観察された。 このように目視で認められる外観上の明らかな変化は、 約半 数の対象者において観察された。 残りの対象者では、 全顔写 真の評価で判別できるほどの明確な変化は認められなかった。 3.毛髪物性の評価結果 (1)直径 毛髪直径の測定結果をFig.7に示す。 服用後は服用前と比 較して毛髪直径の有意な増加が認められた。 また、 直径の増 加は服用 12 週目に定常状態に達し、 24 週目まで定常状態 が維持される傾向がみられた。 (2)破断強度 毛髪の破断強度点荷重値の測定結果をFig.8に示す。 服 用後は服用前と比較して毛髪の破断強度が上昇し、 服用 24 週目では0週目と比較して有意な上昇が認められた。 Fig. 7. 毛髪の直径 毛髪直径計測試験機 KES-2000 による毛髪直径の測定結果 服用後は、毛髪直径が有意に増加した。 平均値±標準誤差,n=8 Bonferroni の方法による多重比較検定 : **p<0.01 Fig. 8. 毛髪の破断強度 高感度毛髪引張り試験機 KES-G1-SH による毛髪破断強度の測定結果 服用後は、破断強度が上昇する傾向を示し、服用 24 週目では有意な上昇が 認められた。 平均値±標準誤差,n=8 Bonferroni の方法による多重比較検定 : *p<0.05
考察
漢方医学の 「気血水」 における 「血」 の病態では、 皮膚 や毛髪に症状が現れる。 また同様に、 病態が改善されるに従 い、皮膚や毛髪の症状が改善していく。 このような「血」と皮膚・ 毛髪症状の関連は、 臨床現場では日常的に経験され、 広く 知られるところである。 そこで、 漢方治療において日常的に観 察される患者の外観上の変化について、 今回、 皮膚科学的 な測定機器を用い客観的に評価した。 具体的には、「駆瘀血」 作用および 「補血」 作用を有する方剤である加味逍遙散合 四物湯を試験品として用い、 皮膚状態に対する外観的な改善 効果と客観的数値データとして認められる改善効果を初めて 同時に示した。 また、 毛髪物性についても機器測定による客 観的な評価を行い、 試験品による毛髪物性の改善効果を示し た10)。 皮膚症状の客観的指標として、 角質水分量、 キメスコア、 しみ (個数、 面積、 明度) を評価した結果、 本剤服用により 角質水分量、 キメスコア、 しみの明度の有意な改善が認めら れた。 これら皮膚症状の改善は、 服用開始から経時的に高ま り、 おおよそ服用 16 週目から 20 週目で定常状態に達し、 そ の後は服用を継続することで定常状態が維持される傾向がみ られた。 また今回、 しみの明度については有意な改善が認め られたが、 しみの個数と面積については、 有意な変化が認め られなかった。 本臨床試験では、 顔画像撮影装置 Robo Skin Analyzer の解析定義に従い、周辺部と比べて 「やや暗い部分」 または 「暗い部分」 として検出された 0.6mm2以上の色素沈 着領域を 「 しみ 」 として検出した。 すなわち、 周辺部との明る さの比較により、 「しみ」 の領域が検出される。 今回、 しみの 明度の有意な改善が認められたにも関わらず、 その個数と面 積には有意な変化が認められなかったことは、 しみ領域の明 度上昇と同時に、 しみ周辺部領域の明度も上昇したため、 明 度の改善を示しながらも個数と面積には変化が生じなかったも のと考えられた。 そこで、 しみ周辺部領域に対しても明度解析 を実施したところ、 しみ領域と同様に明度が上昇しており、 16 週目では、 有意な上昇が認められた (データ提示せず)。 つ まり、 本試験品は、 しみ領域の明度を局所的に改善するだけ でなく、 皮膚全体の明度を改善することが示唆される。 毛髪物性については、 直径と破断強度を評価した結果、 い ずれの項目においても服用 12 週目で0週目と比較して有意な 上昇が認められたことから、 本剤服用により、 毛髪が太く、 切 れにくくなったことが示唆される。 また、 12 週目と 24 週目の測 定値に大きな差がなかったことから、 被測定領域の毛髪物性 の改善は 12 週目には定常状態に達し、 その後は服用を継続 することで定常状態が維持される傾向が示唆された。 前回、 我々は本剤の8週間の服用による皮膚血流と皮膚症 状の改善効果、並びに、皮膚血流の増加と皮膚症状の改善(角 質水分量、 経表皮水分蒸散量、 キメスコア、 弾力性) の関 連性について報告した9)。 また、 皮膚血流量、 とりわけ皮膚 微小循環における血流量の増加が皮膚症状の改善に寄与し、 逆にその減少が皮膚の老化や皮膚症状の悪化を促進するとい う報告が多数あることを示した9)。 これらの報告から、 本剤に よる皮膚症状の改善は、 「駆瘀血」 作用および 「補血」 作用 により皮膚血流が促進され、 皮膚の代謝活性が上がり、 ター ンオーバーが促進されたことによると考えられる。 このような本 剤の効果発現機序の仮説は、 先述の 「しみの明度」 の改善 に関する推測を説明し得る。 つまり、 皮膚血流 (皮膚微小循 環) は、 言うまでもなく皮膚全体に存在し、 これが本剤によっ て促進されれば、 しみ領域のみならず、 しみ周辺領域を含む 皮膚全体の代謝活性 ・ ターンオーバーが促進される。 つまり、 しみ領域の明度の改善は、 しみ領域の明度の局所的な上昇 によるものではなく、 皮膚全体の明度の上昇によるものである と考えられる。 本臨床試験において、 24 週間の長期間服用により皮膚症 状の改善は経時的に高まり、 定常状態を維持したことから、 皮 膚血流や皮膚の代謝活性もまた、 改善状態が維持されている と考えられる。 また、 毛髪物性の改善についても、 頭皮の毛 球周辺部の微小循環が改善し、 毛母細胞および内毛根鞘、 外毛根鞘等の細胞が活性化されたことが寄与している可能性 が考えられる11,12)。 また、 本臨床試験では、 機器測定による客観的評価に加え、 服用前後における対象者の全顔写真を目視にて比較評価し た。 その結果、 服用前に比べて服用後は、 約半数の対象者 において、 顔色や色素沈着領域の皮膚色が明るく変化し、 く すみが改善し、 皮膚のつやが増す等の変化が観察されたこと から、 本剤の効果は服用者の外観的な変化として観察できる という結果を得た。 「血」 の病態を改善する漢方薬の一つである加味逍遙散合 四物湯は、 長期間の服用 (24 週間) により皮膚や毛髪に関 する症状を改善し、 さらにその良好な状態を維持することから、 皮膚や毛髪に対して有効性を示す新しい抗加齢改善薬の1つ として、 今後の活用が期待される。1)寺澤捷年,喜多敏明,小暮敏明 他:専門医のための漢方 医学テキスト;34-39:2009 2) 佐藤祐造,福澤素子,荻原幸夫 他:入門漢方医学;68-69:2006 3)秋葉哲生:東西医学の交差点 その源流と現代における九つ の診断系;84:2002 4)寺沢捷年,篠田裕之,今田屋章 他:瘀血証の症候解析と診 断基準の提唱.日本東洋医学雑誌 34;1-17:1983 5)寺澤捷年:駆瘀血剤の臨床.耳鼻咽喉科臨床 補冊;61-71: 1996 6)葛西浩史:実地医家が始める漢方診療 [ 処方の前に ] 気・血・ 水について.臨床と薬物治療 19;99-101:2000 7)中島一:特集・処方研究 四物湯 四物湯と皮膚病.月刊東 洋医学 21;26-29:1993 8)小山誠次:加味逍遙散,及び四物湯合方の出典.日本東洋 医学雑誌 45;529-534:1995 9) 市橋正光,吉田郁代,秋葉哲生 他:加味逍遙散合四物湯 「KGS1」 による皮膚血流と皮膚症状の改善効果.皮膚の科学 8;72-80:2009 10) 吉田郁代,秋葉哲生,市橋正光 他:加味逍遙散合四物湯K GS1の服用による皮膚症状と毛髪物性の改善効果.第 10 回日本抗加齢医学会総会プログラム・抄録集;202:2010 11) 荒瀬誠治:男性型脱毛症治療の可能性.臨床皮膚科 54; 123-127:2000 12) 荒瀬誠治:脱毛(薄毛化)メカニズム研究と育毛剤開発. Fragrance Journal 5;98-101:2008