「日経デジタルコア」はデジタル社会、 デジタルビジネスの発展する方向を議論する 新しいコミュニティーです
NIKKEI D
IGITAL
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「世界情報通信サミット2003ミッドイヤー・フォーラム」を7月4日、 東京・大手町の日経ホールで行った。 今年のミッドイヤー・フォーラムでは、この春より日経デジタルコ アでも研究会を組織して議論を続けている「無線ICタグとトレー サビリティー(情報の追跡・遡及可能性)」を全体テーマに、新た なIT(情報技術)の応用可能性と社会的課題を探った。 無線ICタグについては「モノ」を無線で個体認識できることか ら、バーコードの次世代版として世界中で注目されているほか、 ユビキタス・コンピューティングの基盤技術として広範な用途開発 が期待されている。一方で、実用化にあたっては、個人情報保 護の観点から問題を指摘する声も多く、利便性とプライバシーの バランスについても議論が尽きない。 今回のプログラムは、無線ICタグの普及を推進する坂村健 東大教授と村井純慶大教授の対談に続き、パネルセッションで はウォルマート、森ビルなどユーザー企業、ベンダー、行政の担当 者ら6名がそろうという豪華キャストで、6百人の定員に6千人の 応募が殺到。パネルの司会を務めた國領二郎慶大教授も「あ る種のバブル」と指摘するほど、各方面からの関心の高さが浮 き彫りになった。 対談は、無線ICタグの規格を巡って坂村氏率いる「ユビキタ スIDセンター」と、村井氏が日本の代表を務める米国主導の「オ
Contents
Report
1
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「無線 IC タグとトレーサビリティー」ミッドイヤー・フォーラムと研究会で
全体像を描く
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集中勉強会「IP 電話と通信の未来」
4
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研究会「デジタルコンテンツ流通研究会」
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月例会「電波資源の開放で IT に活力を」
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世界情報通信サミット 2003「ネットから『メッシュ』へ」
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緊急討論会「e-Japan 戦略
II
」
Off line
7
米国のブロードバンド議論の息遣い
谷脇 康彦8
子連れ出張奮戦記
高橋 明子Member
8
新規ネット会議参加者
S e p t e m b e r 2 0 t h 2 0 0 3「無線I
Cタグとトレーサビリティー」
ミッドイヤー・フォーラムと研究会で全体像を描く
日経デジタルコア
Vol.3
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.1
Report
http://www.nikkei.co.jp/digitalcore/
2003 年 7 月 4 日 日経ホール(大手町)での世界情報通信サミッ ト2003ミッドイヤー・フォーラム会場風景拭したい、という両人の思いから、スケジュールをなんとか調整い ただき、実現した。 対談では冒頭から、坂村・村井氏が、二つの団体のアプロー チが異なるため、最終的に衝突するものではないとの認識で一 致したが、その他の話題については微妙に両者の考え方の差 が表れて興味深かった。 坂村氏は、日本の関連技術における水準の高さをアピールし 「標準化において日本はもっと世界に発言すべき」と主張した。 村井氏もこれに賛同したが「優れた技術が必ずしも世界のリー ダーシップを取るとは限らない」として、積極的に使い道を示して いくべきと提案した。また、普及のプロセスについて、坂村氏は、 センサーなどを駆使した技術の高度化やセキュリティーの確保な ど、技術面の検討を慎重に行った上で、ユーザーに利点を明示 すべきと訴えた。一方村井氏は、オートIDがバーコードの置き換 えという戦略を明確に持つことから、コストを下げて、むしろ簡便 な技術で利用を促すというアプローチを取っていると述べた。対 談の最後に坂村氏が「村井先生は日本と米国の架け橋になっ てほしい」と述べたことからも、日本のIT発展のためにはやはり 2人のリーダーの協力が欠かせないという印象を受けた。 続くパネルセッションでは、トレーサビリティーに関する各分野で の取り組みが紹介された。司会の國領氏も指摘するように、圧 倒的なコスト削減、個人ごとに個別化されたサービスの提供や、 モノの情報を可視化することで消費者に安心を与えるサービス の実現など、トレーサビリティーは計り知れないビジネスの可能性 を秘めている。パネリストの話からは、これらの取り組みが今まさ に実現化に向かいつつあることが伺われた。 「オートIDセンター」の中核メンバーとして無線ICタグの実用化 にいち早く取り組んできた米大手スーパーのウォルマート・ストア ーズの取り組みについて、ウォルマートインターナショナル ホール ディングス・シニアバイスプレジデントのジェフ・マカリスター氏は「コ スト削減による利益を消費者に還元することが目標」と明確な指 針を述べた。実験を繰り返しながらサプライチェーンの見直しを 進め、投資効果を見極めているところだという。 森ビルアカデミーヒルズ事務局長の礒井純充氏は、六本木ヒ ルズで、無線ICタグと携帯電話を組み合わせて実験を進めて いる「あなただけ」の情報を提供するサービスや、無線ICタグを 利用した図書館の本の管理システムを紹介。行政サイドからも、 国土交通省は、航空手荷物への無線ICタグ導入が進んでい るという話を披露した。また、農水省ではBSE(狂牛病)対策と して、既に牛の個体識別情報を追跡することを法制化しつつあ り、食の安全を促進するためのトレーサビリティーシステムに力を 注いでいるという報告があった。 一方、議論を進める中で、トレーサビリティー普及のために欠 かせないビジネスモデルの確立、タグの読み取り精度の向上、 標準化、プライバシーへの配慮など、分野を超えた共通の課題 も浮かび上がってきた。「タグ付けのコストを負担するメーカーが 最終的に利益を享受できる仕組みはあるか」「世界標準の技術 が確立されていない間は効率化の効果は限定的なものになる のではないか」「消費者の個人情報が不当に漏れないようなル ール作りは可能か」・・・最前列に座ったデジタルコアの「トレーサ ビリティー研究会」メンバーからの質疑も交えて白熱した議論が交 わされた。 最先端を走るウォルマートも、このフォーラムの直後、消費者団 体からプライバシー保護の懸念を指摘されたことなどを受け、一 部無線ICタグの実験を中止した。しかし、トレーサビリティーを軸 に、今後のIT革命が新たなステージに入っていくことは間違い なさそうだ。 日経デジタルコアでは、3月末の月例会で、國領氏がトレーサ ビリティーに関する議論をなげかけたことから、國領氏を主査と して「トレーサビリティー研究会」を組織。継続的に議論を行い、 可能性と課題について共有すべく、勉強会を重ねてきた。 4月には世界最小の無線ICチップ「ミューチップ」の開発とビ ジネスへの応用を手がける日立ミューソリューションズベンチャーカ ンパニーの井村亮CEOに、様々な用途開発の可能性をレクチ ャーしていただいた。4400件の応用事例が検討されているとい う話には驚かされた。 6月には、流通システム開発センターの流通コードセンター普及 推進部長の斎藤静一氏から、POS、バーコード導入の経緯や 流通業界の動向について伺った。また、経済産業省商務情報 政策局情報経済課課長補佐の村上敬亮氏からは「商品トレー サビリティーの向上に関する研究会」の中間報告を伺った。PO S、バーコード導入の際も、メーカーや小売業界が設備投資に 理解を示すのに相当時間がかかったという。無線ICタグについ ても、普及のためには、業務効率化やマーケティング効果などの メリットのさらなる検証が必要と認識を新たにした。 研究会メンバーには、デジタルコアの有識者、企業内の専門 家の方々14名に就任をお願いし、毎回勉強会の後に論点の 整理を行っている。研究会ではこの問題の全体像を描くことを めざして今後数回勉強会を重ね、最終的には一冊の本にまと めて年内に出版したいと考えている。 (重森 泰平)
研究会で継続議論
各業界の取り組みを議論
−−ビジネスモデル作り急務
村井純慶應義塾大学教授 坂村健東京大学教授 ◆ミッドイヤー・フォーラム レポート http://it.nikkei.co.jp/it/sp/midyear03.cfm ◆トレーサビリティー研究会 レポート http://www.nikkei.co.jp/digitalcore/report/theme_traceability. htmlインターネットの技術を利用して、安価な音声通信が出来る「IP 電話」が普及を始めている。当初はブロードバンドと一体になっ た個人用の世界で広がり、2002年末頃から、企業の通信費削 減の要請を受けて、法人用にも急拡大の情勢になった。日経デ ジタルコアは、「IP電話の普及は、通信サービス全体にどのよう な影響を及ぼすだろうか」と考え、2002年秋に「IP電話と通信 の未来を考える研究会」(主査:本荘修二氏)を組織し、同年11 月から2003年6月まで、5回の勉強会を開催し、6月末に『IP電 話は“格安音声電話”から脱すべき』−総合的なテレコミュニケ ーションに活路を見いだせ−と題する提言をまとめた。 IP電話が注目を集めたのは、2001年の春、フュージョン・コミ ュニケーションズが中継網にIPを活用して、格安の長距離電話 を提供したことからだった。しかし、ソフトバンクBBが2002年に ブロードバンド契約のオマケとして会員間では無料というIP電話 を提供し始めたのが、推進力になった。これに他のISP(インター ネット接続業者)も追随した。さらに2002年12月には、東京ガス がIP電話を全面的に採用して通信費を大幅カットすると発表し た。この「東ガス・ショック」が法人への普及に拍車をかけた。 当初は通信品質などが問題視されたIP電話も、品質が向上 し、さらに総務省が「050」というIP電話専用の番号を配布する と発表して、「固定電話はIP電話に移行する」というシナリオが 現実のものになった。 ユーザーから見ると「いいことづくめ」のIP電話だが、回線を提 供している既存の電話会社にとっては、電話の需要を食われる わけで、頭の痛い問題だ。 日経デジタルコアは、こういう状況に対して、「当事者から話を 聞く」という姿勢で、勉強会に多くの講師を招いた。フュージョン・ コミュニケーションズの角田忠久社長や鷹山の高取直社長、SIP というIP電話のプロトコルの普及にかけるソフトフロントの村田利 文社長、東ガスショックを演出したNTTデータ法人ビジネス事業 本部第二法人ビジネス事業部ネットワーク企画部長の松田次博 氏、総務省総合通信基盤局電気通信事業部電気通信技術 システム課番号企画室長の田中啓之氏、沖電気工業IPシステ ム企画開発本部長IP電話普及推進センタ長の千村保文氏な ど。 IP電話推進派は、講師依頼を気軽に引き受けていただいたが、 受け身に立っているISPや通信会社からは、講師派遣を何件か 断られた。 そんな中で、NTTコミュニケーションズの澤田純コンシューマ& オフィス事業部企画部長兼IPサービス部長が講師に立ち、「ブ ロードバンド化の進展で、IP電話の需要が大きくなることは当然 のこと」と時代の趨勢を認めた上で、「普通電話は固有の価値 があり、残っていくものと思われるが、IP電話は、普通電話を超 えた、より豊かなコミュニケーション実現の可能性を持っている」 と話されたことは、研究会の方向性に大きな示唆を与えた結果 となった。 確かにIP電話の魅力は、既存の電話に比べて格安であるこ とだ。しかし、それだけだろうか。ソフトフロントの村田社長や、マ イクロソフト製品マーケティング本部Windows Server製品部シ ニアプロダクトマネージャーの内野彰氏などの話を聞くと、音声と 映像の統合サービス、個人にひとつの番号(050)があると、自分 の各種通信機器(会社固定、家庭固定、携帯、ボイス・メール、 電子メールなど)への代表番号のように使える、複数箇所での テレビ会議――など、様々な可能性があることがわかった。 それなら、むしろ日本でまずIP電話のユーザーを増やし、こう した新しい使い方をどんどん開発して、世界に向けて輸出してい けばいいじゃないか――研究会の議論はそうした方向に発展し た。 提言をまとめる過程では、小池良次氏が、米国から重要な発 言を次々に出し、日本側も加わって、本荘氏のたたき台を修正 していく作業が続いた。決定的だったのは、國領二郎慶大教 授が「現時点では欲張らず、基本的なポイントに絞るべき」という コメントを寄せたことだった。このことで議論は収束に向かった。 6月30日に提言を発表し、日経産業新聞に概要を報道した が、その直後、NHKが「クローズアップ現代」でIP電話を取り上 げた。國領教授がNHKに出演したが、番組全体の内容が「安 くて便利」に焦点を当てたもので、日経デジタルコアの議論はほ とんど反映されなかったのが悔やまれる。 (坪田 知己)
キーマンを講師に呼ぶ
集中勉強会
「IP電話と通信の未来」
「格安音声電話から脱すべき」
と提言
マルチメディアなどの機能開発をアピール
Report
勉強会でスピーチする田中啓之総務 省総合通信基盤局電気通信事業部電 気通信技術システム課番号企画室長専門家を集め、研究会を開始
熱心な意見が飛びかう勉強 会の質疑応答 ◆レポート: http://www.nikkei.co.jp/digitalcore/report/theme_ ipphone.htmlデジタルコンテンツ流通研究会
著作権制度の抜本的改革を展望
クリエーター育成がポイントに
ナップスターに始まる音楽CDを仲間同士で交換するシステム の横行や、アップルコンピュータが始めた音楽のデジタル流通な ど、インターネットの普及、ブロードバンド化の中で、コンテンツ産業 が揺れている。インフラの整備は大きなビジネスチャンスだが、許 諾の問題や不法な二次流通への防御策がないまま、立ち止ま っているというのが現状だ。 「何度でもコピーでき、劣化しない」というデジタルの特徴は、「コ ピーを繰り返せば劣化する」というアナログ時代の常識が通用 しない。とはいえ、国民の半数以上が使うようになったインターネ ット網を通じてビジネスを拡大したいのは山々。 日経デジタルコアは、この問題に早くから関心を持ってきた。 2002年11月にカナダ・オタワ大学のマイケル・ガイスト教授、12月 には米スタンフォード大学のローレンス・レッシグ教授を招いてレク チャーをしていただいた。 そして2003年6月に、元ミュージシャンで、郵政官僚だったスタ ンフォード日本センター研究所長の中村伊知哉氏を主査に研究 会を立ち上げた。 勉強会(6月3日)のトップバッター、柳原敏夫弁護士は、「著作 権はもともと出版社が複製する権利を独占するための大義名分 で、個人の権利を守るためのものではない」と、クリエーターの権 利が守られていないことを強調した。またインターネットで消費者 が著作物を不正に横流しするというのは、不正という点では影 の部分だが、消費者が流通に関われる部分は光の部分――と 述べた。 内閣官房IT担当室の岸博幸氏は、1)デジタル化以前の問 題が山積していて、メディアごとの縦割り体制を抜けきれない。2) コンテンツ政策は流通業者の下請けを脱していないので、新し いクリエーターが育たない。3)アニメも、コスト管理が甘く産業と して未成熟。4)インターネットという可能性のある媒体が登場し たのだから、それを利用できるよう、法律、慣習などを変えていく べき――などと述べた。 第2回の勉強会(6月30日)は、ソニーミュージックの秦幸雄氏 と、ライターの津田大介氏を講師に呼んだ。秦氏は、日本ではア ーティストのマネージメント側が力を持ち、レコード会社は弱い立場 にあるとした上で、ネット時代にどのような音楽配信が有効かを 模索していると述べた。特に「音楽業界にとっての最大の課題 は、アーティストが創作意欲をかき立てられる業界にしなければ ならないこと」とした。 津田氏は、ファイル交換による不正流通は、ユーザーが簡単 に安く音楽を聴きたいと思っていることに、業界が答えていない ――という面があることを指摘した。 第3回勉強会(7月31日)では、政府の知的財産戦略につい て内閣官房知的財産戦略推進事務局参事官の甲野正道氏 などからレクチャーを受けた後、慶応大学教授の林紘一郎氏か ら、レッシグ教授の「クリエイティブ・コモンズ」など、現在の著作権 管理の考え方の差異について詳細な説明を受けた。 コンテンツ流通について「何とか現状を変えなければ」という 研究会メンバーの熱意は高く、8月末には中村主査を囲んでの ミーティングを行い、メンバーが「コンテンツ流通の改革に必要な 5カ条」をそれぞれメールで発信した。 第4回の勉強会(9月9日)は、デジタルコンテンツ協会理事の 小野打恵氏が、メディア産業とコンテンツ産業の規模について数 字を上げてレクチャーした。またサイバード次世代戦略室長の寺 田眞治氏が、携帯コンテンツの実情をレクチャーした。 小野打氏の「パッケージメディアがビジネスになってまだ100年 にもならない。人間は本来コミュニケーションをしてきた。メディア が異常に発達したのが今の時代」という指摘は、コンテンツをプ ロが作る特殊なものと考えるべきではないとの示唆になった。 コンテンツ産業は消費者がコンテンツを受信するなどで、買う ことにより成り立っている。しかし携帯メールなどに多額のお金 が支払われているのは、「自分のメッセージを他人に伝えるのに はお金を払っていい」と考える人が多いということだ。ということ は、コンテンツ産業とコミュニケーション産業は実は同列に考える べきものかもしれない――ということが研究会での認識になっ た。つまり、コンテンツ産業の幅を大きくとらえるべきだという考え 方だ。 研究会の論点は、1)クリエーターが育つ環境を作ろう、2)誰も が創造を愉しもう、3)発表のツールとしてインターネットを役立て よう――という方向で、今秋には何らかの提言を発表し、さらに 議論を続けていく方向だ。 (坪田 知己) ◆レポート: http://www.nikkei.co.jp/digitalcore/report/theme_ copyright.html 研究会主査の中村伊知哉 スタンフォード日本センタ ー研究所長 7月31日 研究会の講師陣貧しいクリエーターを救いたい
コンテンツ産業の幅を大きくとらえよう
総務省が競争促進のために、矢継ぎ早に法律の改正など新 規の政策を打ち出している。日経デジタルコアは、重要政策につ いて、担当官にレクチャーをお願いした。5月23日には、総務省 総合通信基盤局の鈴木康雄電気通信事業部長から、電気通 信事業法改正についての解説を聞いた。 電気通信事業法は、NTT民営化と平行して85年に制定さ れたもので、事業者を、NTTなど回線を自社で所有する「第一 種」と、この回線を借りて通信事業を営むISP(インターネット接続 業者)などの「第二種」に分けていた。ところがIP電話サービス などで、第一種と第二種の業者が同じ市場で競争する例が多 くなり、事業区分をすることが、むしろ競争阻害になっていたこと から改正に踏み切った。 7月29日には、「電波開放戦略のすべて」と題して、総務省総 合通信基盤局の炭田寛祈企画官に概要を聞いた。 携帯電話の普及、無線LANの登場などで、「いつでも」「どこ でも」通信できる手段として無線の重要性が高まり、さらに高速・ 広帯域サービスの期待も高まっている。そこで総務省は従来の 既得権を守るという保守的な政策から、「ユビキタス社会に備え、 最先端の無線ブロードバンドネットワークを作るために、必要な周 波数を迅速に開放していく」(炭田企画官)政策に転換した。 このために、1)3年ごとに電波の利用状況調査を行って、機 動的に「電波の引っ越し」を実施し、その際は、事業者に対する 給付金で補償する。2)無線LANのように幅広く使われるものに ついては、使用電力が小さければ、免許でなく登録制で使用で きるようにする――などとした。 また、欧州では価格が高騰して通信会社に大打撃を与えた オークションについて、日本は「市場原理活用型比較審査方式」 を考えていることも明らかにした。 技術の進歩で、今後10年間に現在の100倍の電波資源が 利用可能とも言われており、総務省の大胆な戦略転換は、聴 衆には好評だった。 (坪田 知己) ◆レポート: http://it.nikkei.co.jp/it/sp/digitalcore.cfm?i=20030805vs 000vs
月例会
「電波資源開放でITに活力を」
競争促進の考え方を聞く
Report
世界情報通信サミット2003は「ネットからメッシュへ−次世代 ビジネス基盤の構築」をテーマに、2月18−19の2日間、東京・有 楽町の東京国際フォーラムで開催した。 東アジアでのIT(情報技術)の発展の目覚ましさに注目し、基 調講演には、韓国KT社長の李容 氏と中国電子情報産業 発展研究院会長の董雲庭氏を招いた。日本側は和田紀夫 NTT社長。NTT持ち株会社の社長が登壇したのは初めて。 タイトルの「メッシュ」は、これまでのインターネットに比べて、今後 は網の目がより細かくなり、より高度なサービスやビジネスが登場 してくる。その象徴が、無線LANの「メッシュ・ネットワーク」だとい う認識からだった。 セッション1では、ワイヤレス技術の将来を議論した。ポイントは、 将来の高速・広帯域サービスの主役は、携帯電話の発展形な のか、無線LANの発展形なのか――という点だった。NTTドコ モの津田志郎副社長は、「第3世代携帯電話と無線LANは補 完関係」と述べ、移動に強い電話系と、高速な無線LANの両 睨みで将来を考えていると述べた。 もう一つのポイントは、メッシュ型ネットワークの将来性で、スカ イパイロット・ネットワーク会長のダンカン・デイビッドソン氏は、「全米 を光ファイバーで結べば2000億ドル以上のコストがかかるが、メ ッシュ型だと2億ドル程度ですむ。基地局が近くになくても、利用 者経由でインターネットに繋がる利点もある」などと、将来性を熱 弁した。 セッション2は「ユビキタスネットワーク産業の創出」というテーマ で、サムスン電子、マイクロソフト、トヨタ自動車、松下電器産業と いう豪華な顔ぶれで、司会はこの分野に詳しい野村総合研究 所の村上輝康理事長が務めた。 ユビキタス社会の到来については、「2007年頃」(松下・櫛木 好明常務)、「2010年頃」(サムスン・朴魯柄総括副社長)と分か れたが、近い将来の実現では一致した。このセッションでは、聴世界情報通信サミット2003
「ネットから
『メッシュ』へ」
ブロードバンドの次の戦略を議論
Report
ユーザー参加で作るユビキタス社会
世界情報通信サミット会 場風景日経デジタルコアは、政府のIT戦略本部が「e-Japan戦略II」 を取りまとめたことを受け、パブリックコメントの募集期間中であ る5月29日に「e-Japan戦略IIを検証する」と題した緊急討論会 を開催した。民間側の識者として実際に戦略立案に携わって こられた、慶應義塾大学の國領二郎教授と野村総合研究所 の村上輝康理事長、そして内閣官房IT担当室のお二人を招 き、デジタルコアメンバーなど、100人を超える参加者と意見交換 を行った。 高速インターネット回線の普及などインフラ整備に主眼を置い た「e-Japan戦略」から2年が経過。今回の戦略では「わが国の ブロードバンド環境は回線速度、価格ともに世界最先端になり つつある」(内閣官房IT担当室の上田隆之内閣参事官)との 認識をふまえて、IT基盤の利活用の促進に重点が大きく移って いる。 「世界最先端のIT国家」を目指すとした前回の「e-Japan戦 略」には「目指すべき具体的な社会像が見えない」との批判もあ ったが、今回は利活用のシーンを具体的に描き出すことでビジ ョンを明確に示した形になっている。最大の特徴は「医療」「食」 「生活」「中小企業金融」「知」「就労・労働」「行政サービス」の7 つの「先導的取り組み」分野を示し、それぞれ具体的な変化の 方向性、課題、実施時期や数値目標を盛り込んだ点だ。
緊急討論会
「e-Japan戦略II」
デジタルコアからパブリックコメントを提出
Report
IT利活用、裾野の広がりに期待
慶應義塾大学 國領二郎教授 野村総合研究所 村上輝康理 事長 内閣官房IT担当担当室 上田隆 之内閣参事官 ントが出された。特にデータメディアの唐澤豊社長が、「通信をユ ーザーに開放すべき」とコメントしたのに対し、マイクロソフトの藤 井照穂氏は「コンピューターの専門家でなくても自由に作業でき るプラットホームを提供し、消費者と一緒にソフトウエアを開発す るのが大事」と述べるなど、質の高い議論が交わされた。 セッション3の「IT新ビジネスへの挑戦」では、世界最大のBtoB マッチングサイトを運営する中国アリババ・ドット・コムのジャック・ マーCEOらが、今後の展望を熱っぽく語りかけた。DSL向け半 導体開発会社、センティリウムのファラジ・アラエ社長は「技術の 転換点をうまく見つけることが肝要。3年後のビジネスを見据えて 現在の投資を考えている」と述べ、グローバル・カタリスト・パート ナーズ共同創設者の大澤弘治氏は「バブル崩壊後、投資コス トが下がり、この20年で最高の投資機会になっている」と指摘 した。 また、ジャック・マー氏は「今年は日本に集中して事業を拡大し たい」と述べるなど、日本市場の重要性も述べられた。 中国、韓国の携帯電話やブロードバンドの進展に着目し、今 回のサミットでは、「e-アジア発展への競争と協調」と題した特別 セッションを行った。 このセッションに先立って、片山虎之助総務相が特別講演し、 競争促進のために規制緩和政策を推進すると述べ、特に「中 させることが重要」と強調した。 セッションでは、日中韓に電子商取引のプラットホームを作り出 せるかどうかが論点になった。中国の董雲庭氏は「日中韓で電 子署名の認証や基準について調整していく必要があるだろう」と 初めの一歩を提案した。また韓国電子通信院客員研究員(元 情報通信大臣)の梁承澤氏は「中韓は日本に比べて若い経済 国だ」と慎重さを見せながらも「オンラインショッピングの返品時の 施策などを手掛かりに、日中韓で対話を持つことが重要」と述べ た。 また、総務省顧問の月尾嘉男氏は「電子商取引の拡大は、 分散型の社会を作るためだ」という点を強調、一方、「電子商取 引をブレークスルーとして広域経済圏作りへ、日中韓がぜひ協 力すべき」と述べた。 今年から、会場を日経ホールから東京国際フォーラムに移した が、1500人の定員がいっぱいになる盛況で、聴衆からの評価も 高かった。 また、恒例のネット会議も1月下旬から約3週間開いた。話題 は「無線ICタグ」で、物流の進化や、生活の中での応用で議論 が広がった。またITの進歩が過剰な刺激を生み出していること を懸念し、「落ち着きのある社会」を求める議論にも多数の投稿 があった。 (坪田 知己) ◆レポート: http://www.nikkei.co.jp/summit/日中韓の電子商取引拡大も議論
谷脇 康彦 (在米国日本大使館 参事官) ワシントンの日本大使館に情報通信政策担当として赴任し て早や1年が経ちました。それまで東京では総務省で通信分 野の競争政策に長年携わってきましたが、やはり米国の政策は 何かにつけて話題になるところ。今回の滞在をこれ幸いと、数 限りなく開催されるコンファレンスやセミナーを求めて右往左 往しています。ご承知のとおり、米国のブロードバンド政策は まさに岐路に立っており、接続ルールやメディア所有規制の見 直しをはじめ、議論も試行錯誤の連続です。情報通信のパラ ダイムが転換期を迎えている今、こうした米国の議論をインタ ーネット経由でなく直接見聞できるのは貴重な体験。日米の市 場構造の違いがある以上、米国の政策を直ちに日本に導入で きるものではないものの、米国の議論の多様性や新規性は日 本の政策の在り方を考える上で新たなヒントになります。今後 こうした「議論の息遣い」のようなものを、いろんな場を通じて 日本に少しでも発信していければと考えています。 さて、ひるがえって日本のブロードバンド事情は当地ではほ とんど知られていないのが実態です。言語の違いという問題 も大きいのですが、「日本ではデジカ メがほとんどの携帯についているんだ って?」といった断片的な情報が多す ぎるのです。日本のブロードバンド政 策や新たなビジネスモデルの現状、直 面している悩みや問題点などを体系的 に情報発信していくことも大使館の役 割の一つだと実感しております。 私は昔パリで生活した経験がありま すが、米国東海岸で生活するのは初めて。最初にびっくりした のが「働くこと」と「食べること」の一体化したアメリカ人の仕事 振り。冬ならまだ暗い7時半にはべーグルをかじりながらコンフ ァレンスが始まり、はたまた昼のサンドイッチを食べながらのセ ミナーだったり。パリの仕事のテンポや長い昼食時間を思い 出すにつけ、その精力的な仕事振りに感心します。しかも、よ くしゃべるし、よく食べること。そのエネルギーとその明るさ、 見ず知らずの外国人も議論の輪に加えてくれるオープンさも魅 力です。 春先は対イラク戦下で近所の木々にも家族の無事を祈る黄 色いリボンをよく見かけ、ここが戦争当事国なのだと改めて実 感したりしました。あの時のなんとなく重苦しい感じも少しずつ 薄れてきたような気がします。デジタルコアメンバーの皆さまの DCへのお越しを心よりお待ちしております。