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イネのbHLH型転写因子をコードする乾燥ストレス応答性遺伝子OsbHLHaの機能解析

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Academic year: 2021

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審 査 の 結 果 の 要 旨 氏 名 趙 宇 本博士論文は、イネのマイルドな乾燥条件における成長抑制の分子機構を明 らかにする事を目的としている。これまでに厳しい乾燥ストレスに対する植物 の応答機構や耐性の獲得機構に関しては、多数の研究が報告されてきた。厳し い乾燥ストレス下では、種々の転写因子が機能する複雑なシグナル伝達機構が 働き、3千以上もの耐性獲得に働く遺伝子群が誘導されることが明らかにされ ている。しかし、マイルドな乾燥ストレスに対する植物の応答機構は、ほとん ど明らかにされていない。 本論文は6章から構成されており、第1章の序論に引き続き、第 2 章では実 験に用いた材料と方法について述べられている。第3章、第4章および第5章 では、得られた結果、図表および結果に対する考察が述べられている。これま でに土壌水分を自動的に制御する土壌マトリックポテンシャル(SMP)を基準 とした灌漑システムが開発されている。このシステムを用いてマイルドな乾燥 レベルでイネを生育させている。本論文で行ったマイルドな乾燥レベルは 3 段

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階で、SMP 値として-9.8 kPa を Md1、-31.0 kPa を Md2、-309.9kPa を Md3 と表記している。遺伝子発現の変化が十分観察された Md2 および Md3 のレベ ルで処理したイネの幼苗から RNA を調製してマイクロアレイ解析を行ってい る。得られた結果から、Md2 および Md3 処理で発現が上昇するとともに、厳し い乾燥ストレス条件(Sds:潅水が止められイネに明瞭な萎れが観察される条件) で発現が減少する遺伝子として転写因子遺伝子LOC_Os01g01840 を選定した。 この遺伝子がコードする転写因子は、bHLH 型の DNA 結合ドメインを有して いたため、OsbHLHa と命名している。さらに、イネプロトプラストを用いて、 OsbHLHa タンパク質が核内に局在することを示した。また、GUS レポーター 遺伝子を用いて、OsbHLHa の組織特異的発現解析を行い、主にイネの節および 葉鞘において発現していることを示している。 次に、OsbHLHa を植物中で過剰発現する形質転換イネおよび抑制ドメイン (RD)に融合した OsbHLHa を発現することで機能を抑制した形質転換イネ (RD 植物)を作出している。過剰発現イネは、対照イネと比較して成長抑制を 示した。さらに、葉幅、種子の大きさ、種子の重量および数も減少しているこ とを明らかにした。一方、RD 植物の葉幅は、対照植物に比べてより広く、有効 分げつ数、種子数、総収量およびバイオマスも増加していた。これらの結果か ら、OsbHLHa は葉の成長および分げつ数の制御に関与していると結論づけてい

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る。 さらに、標的遺伝子の同定を目指し、OsbHLHa 過剰発現体を用いてマイク ロアレイ解析が行なわれた。その結果、175 個の遺伝子の発現が過剰発現体で変 化することを明らかにしている。この中で、ジャスモン酸(JA)の生合成にお ける重要な酵素として広く認識されているリポキシゲナーゼ(LOX)遺伝子 OsLOX11 に注目して研究を行っている。この遺伝子は定量 PCR により Md2 および Md3 の条件下では発現が上昇したが、Sds 条件下では発現が抑制されて おり、OsbHLHa 遺伝子と同様の発現パターンを示した。また、一過的発現系に より解析することで、OsbHLHa が転写活性化因子として機能し、OsLOX11 の 発現を活性化させることを明らかにしている。 次に、OsLOX11 は JA 生合成経路で機能することが示されていることから、 JA の関連代謝産物を含む植物ホルモン量の分析を行っている。Sds 条件下での 過剰発現植物における JA-イソロイシン含量は、対照植物の含量よりも有意に高 かったが、通常条件下では差異は見られなかった。これらの結果により、JA の 前駆体が過剰発現植物の成長抑制に関与している可能性を提示した。 第6章では、総合討論および結論が述べられている。本論文では、SMP 値を 基準とした灌漑システムを利用することで、Md2 や Md3 処理条件のマイルドな 乾燥で誘導される OsbHLHa 遺伝子を選定した。さらに、形質転換体を用いた

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マイクロアレイ解析及び一過的遺伝子発現系などを駆使して、OsbHLHa の標的 遺伝子を同定した。OsbHLHa はOsLOX11 遺伝子を標的遺伝子としており、そ の発現を制御することにより JA の前駆体を蓄積し、マイルドな乾燥条件下での 植物の成長抑制に機能している可能性があると結論付けている。さらに、 本論 文では OsbHLHa を利用することでマイルドな乾燥ストレス条件下でのイネの 成長抑制を改善する可能性を提示した。 これらの研究成果は、学術上応用上寄与するところが少なくない。よって、 審査委員一同は本論文が博士(農学)の学位論文として価値あるものと認めた。

参照

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