幼稚園,小学校,中学校,高等学校に準ずる教育 + 障害に基づく困難を改善・克服するための指導である自立活動
第 1 章 肢体不自由教育について
~多種多様なニーズに応じるために~1 特別支援教育について
特別支援教育とは,障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視 点に立ち,幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し,その持てる力を高め,生活や学習上の困難を改 善又は克服するため,適切な指導及び必要な支援を行うものです。 これは,特別支援学校のみならず,幼稚園,小学校,中学校,高等学校,中等教育学校の通常の学級に在 籍する発達障害のある子どもを含めて,障害により特別な支援を必要とする子どもたちが在籍する全ての学校 において実施されるものです。 特別支援教育では,次表のような,それぞれの障害に配慮した教育が行われます。 障害種別の教育 対 象 と な る 障 害 の 定 義 視覚障害教育 視覚障害とは,視力や視野などの視機能が十分でないために,全く見えなかったり,見えにくかったりする状態 をいいます。 聴覚障害教育 聴覚障害とは,身の回りの音や話し言葉が聞こえにくかったり,ほとんど聞こえなかったりする状態をいいま す。 知的障害教育 知的障害とは,記憶,推理,判断などの知的機能の発達に有意な遅れがみられ,社会生活などへの適応が難 しい状態をいいます。 肢体不自由教育 身体の動きに関する器官が,病気やけがで損なわれ,歩行や筆記などの日常生活動作が困難な状態をいいま す。 病弱・ 身体虚弱教育 病弱とは,慢性疾患等のため継続して医療や生活規制を必要とする状態,身体虚弱とは,病気にかかりやす いため継続して生活規制を必要とする状態をいいます。 言語障害教育 言語障害とは,発音が不明瞭であったり,話し言葉のリズムがスムーズでなかったりするため,話し言葉による コミュニケーションが円滑に進まない状況であること,また,そのため本人が引け目を感じるなど社会生活上不 都合な状態であることをいいます。 自閉症・ 情緒障害教育 情緒障害とは,情緒の現れ方が偏っていたり,その現れ方が激しかったりする状態を,自分の意志ではコントロ ールできないことが継続し,学校生活や社会生活に支障となる状態をいいます。 LD,ADHD の教育 LD(学習障害)とは,知的発達の遅れは見られないが,特定の能力に著しい困難を示すものです。また,ADHD (注意欠陥多動性障害)とは,発達段階に不釣り合いな注意力や衝動性,多動性を特徴とする行動の障害で す。両者ともに脳などの中枢神経系に何らかの機能障害があると推定され,発達障害に分類されます。 本校は障害種別では,肢体不自由の児童生徒を対象とした特別支援学校です。肢体不自由の児童生徒を 対象とする特別支援学校では,次のような教育が展開されています。 本校においても,教育内容は幼稚園,小学校,中学校,高等学校に“準ずる教育”と“自立活動”を主とする 教育の二つを主軸として構成されています。平成 28 年3月現在,児童生徒の実態に応じて,前者の準ずる教育 としては高等部と中学部の一部で,後者の自立活動を主とする教育は,全学部において広く展開されていま す。 肢体不自由のある子ども一人一人の障害の状態や発達段階を十分に把握した上で,幼稚園,小学校,中学校,高等 学校に準じた教育を行うとともに,障害に基づく困難を改善・克服するための指導である自立活動に力を入れています。 自立活動の指導においては,身体の動きの改善を図ることやコミュニケーションの力を育てる指導などを行っています。 また,病院で機能訓練を行う子どもやたんの吸引などの医療的ケアを必要とする子どもが多いことから,医療との連携 を大切にした教育を進めています。 高等部では,進路指導を重視しています。企業や社会福祉施設と連携し,卒業後の生活を具体的に体験できるような 実習を積極的に取り入れています。近年,福祉施設への入所が多くなっていますが,企業に就職したり大学に進学した りする生徒もいます。 医 療 と の 連 携 文部科学省 TOP>教育>特別支援教育>特別支援教育>4.それぞれの障害に配慮した教育>(4)肢体不自由教育より 肢体不自由特別支援学校で行われる教育の全体像★重複障害とは 盲・聾・知的障害・肢 体不自由・病弱等の 障害から,複数の種 類の障害を併せ有す ることを意味する。
2 障害の実態に応じた教育課程の編成について
近年,特別支援学校(肢体不自由)に在学する児童生徒は肢体不自由のほか,知的 障害,視覚障害等の他の障害を一つ又は二つ以上併せ有している重複障害者が多く在 籍しています。特に本校においては 9 割以上が重複学級に在籍しています。(図1) 図1 本校および全国の特別支援学校(小・中学部)における重複障害学級在籍率の推移 (出典:文部科学省「特別支援教育資料」(平成 26 年度) このようなことから,それぞれの障害に配慮し個々のニーズに応じていくためには,多様な教育課程の編成が 求められ,平成 21 年 3 月に改訂された新学習指導要領においては,障害の重度・重複化,多様化への対応を 主な改善事項のひとつとして掲げています。 その中では,複数の種類の障害を併せ有する児童又は生徒(以下「重複障害者」という)に対して,かつて「重 複障害者等に関する特例」であったものが,新たに教育課程の取扱い規定と時間数に関する事項が含まれた 「重複障害者等に関する教育課程の取扱い」に替わり,より明確にされました。 そして,この中では,重複障害者に対する弾力的な教育課程の編成についての具体的な規定として,各教科 の目標及び内容に関する事項の一部を取り扱わないことができること,目標及び内容の全部又は一部を前各学 年に置き換えることができること,同様に中学部の目標及び内容の全部又は一部を小学部に替えることができる こと,幼稚部教育要領に示す各領域のねらい及び内容の一部を取り入れることができることが記されています。 また,知的障害を併せ有する者については,知的障害者である児童又は生徒に対する教育を行う特別支援 学校の各教科又は各教科の目標及び内容の一部によって,替えることができるものとし,さらに,特に必要があ る場合は自立活動を中心とした指導を行うことができる,とされています。 したがって,この「重複障害者等に関する教育課程の取扱い」を踏まえて,特別支援学校(肢体不自由教育) では,幼稚園,小学校,中学校,高等学校に準ずる教育,下学部(学年)適応の教育,知的代替の教育,自立活 動を主とした教育の四つの教育課程が編成され,児童生徒の実態に応じて展開されることとなります。 本校の教育課程も,これらの「重複障害者等に関する教育課程の取扱い」に基づき,児童生徒の障害実態に 応じて,現在では自立活動を主とする教育課程へ移行しています。特別支援学校における肢体不自由者(重複障害者を含む)を対象とした教育
医 療 と の 連 携
(1)準ずる教育 (2)下学部・下学年適応の教育 (3)知的代替の教育 (4)自立活動を主とした教育
100
95.5
94.7
92.6
93.3
92.8
94.7
64.5
63.8
63.8
61.7
59.7
58
57.2
10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 平成20年 平成21年 平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 平成26年 本校 肢体 視覚(盲学校) 病弱 知的 聴覚(聾学校) %(1) 小学校・中学校・高等学校の各教科を中心とした教育課程(準ずる教育)
意 味 す る こ と この教育課程は,肢体不自由のみの児童生徒や肢体不自由と病弱の重複障害の児童生徒などを対 象とし,原則的には幼稚園・小学校・中学校・高等学校のそれぞれの学年に応じた各教科等の内容を学 び,併せて個々人に応じた自立活動の内容によって編成されています。 また,各教科の目標及び内容に関する事項の一部を取り扱わないことができます。 これは例えば,肢体不自由の児童生徒については,「体育」の内容のうち器械運動などの学習の一部 が困難又は不可能な場合には,当該児童生徒に,この内容を履修させなくてもよいという趣旨です。 学 習 指 導 要 領 の 規 定 ○特別支援学校小学部・中学部学習指導要領(以下「小・中学部指導要領」)第1章第2節第5の1(1)→P48 第 5 重複障害者等に関する教育課程の取扱い 1. 児童又は生徒の障害の状態により特に必要がある場合には,次に示すところによるものとする。 (1) 各教科及び外国語活動の目標及び内容に関する事項の一部を取り扱わないことができること。 ○特別支援学校高等部学習指導要領(以下「高等部指導要領」)第1章第2節第6款の1(1) → P111 第 6 款 重複障害者等に関する教育課程の取扱い 1. 生徒の障害の状態により特に必要がある場合には,次に示すところによるものとする。 (1) 各教科・科目の目標及び内容の一部を取り扱わないことができること。(2) 小学校・中学校・高等学校の下学年(下学部)の各教科を中心とした教育課程
意 味 す る こ と 障害の状態により特に必要のある場合には,各教科の目標及び内容の一部を取り扱わないことがで き,また,当該学年より下の学年(学部)の目標・内容に置き換えることによって編成するものです。これら に加え個に応じた自立活動等の内容によって構成されます。 例えば,小学部5年生の児童の場合は,小学部4年生以下の学年を指します。また,中学部の「数学」 に対する小学部の「算数」を指すものです。しかし,教科の名称までを替えることはできないことに留意す る必要があります。 学 習 指 導 要 領 の 規 定 ○小・中学部指導要領(第1章第2節第5の1(2)(3)(4)(5) → P48~P49 第 5 重複障害者等に関する教育課程の取扱い 1. 児童又は生徒の障害の状態により特に必要がある場合には,次に示すところによるものとする。 (2)各教科の各学年の目標及び内容の全部又は一部を,当該学年の前各学年の目標及び内容の全部又は 一部によって,替えることができること。 (3)中学部の各教科の目標及び内容に関する事項の全部又は一部を,当該各教科に相当する小学部の各 教科の目標及び内容に関する事項の全部又は一部によって,替えることができること。 (4)視覚障害者,聴覚障害者,肢体不自由者又は病弱者である生徒に対する教育を行う特別支援学校の中 学部の外国語科については,外国語活動の目標及び内容の一部を取り入れることができること。 (5)幼稚部教育要領に示す各領域のねらい及び内容の一部を取り入れることができること。 ○高等部指導要領(第1章第2節第6款の1(2)(3) → P111 第 6 款 重複障害者等に関する教育課程の取扱い 1. 生徒の障害の状態により特に必要がある場合には,次に示すところによるものとする。 (2)高等部の各教科・科目の目標及び内容の一部を,当該各教科・科目に相当する中学部又は小学部の各 教科の目標及び内容に関する事項の一部によって,替えることができること。 (3)視覚障害者,聴覚障害者,肢体不自由者又は病弱者である生徒に対する教育を行う特別支援学校の外 国語科に属する科目については,小学部・中学部学習指導要領に示す外国語活動の目標及び内容の一 部を取り入れることができること。(3) 知的障害者である児童生徒に対する教育を行う特別支援学校の各教科を中心とした教育課程
意 味 す る こ と 肢体不自由と知的障害を併せ有する児童生徒が在籍している場合には,これらの児童生徒の実態に 応じた弾力的な教育課程の編成ができます。 例えば,肢体不自由に加えて知的障害を併せ有する児童生徒を対象に,特別支援学校(知的障害)の 各教科の目標及び内容の一部によって編成されるもので,これに加え自立活動等の内容を学びます。こ の場合も,教科の名称を替えることはできないことに留意する必要があります。なお,小学部の児童につ いては,外国語活動及び総合的な学習の時間(中学部においては外国語科)を設けないこともできます。学 習 指 導 要 領 の 規 定 ○小・中学部指導要領の第1章第2節第5の2 → P49 第 5 重複障害者等に関する教育課程の取扱い 2. 視覚障害者,聴覚障害者,肢体不自由者又は病弱者である児童又は生徒に対する教育を行う特別支援 学校に就学する児童又は生徒のうち,知的障害を併せ有する者については,各教科又は各教科の目標及 び内容に関する事項の一部を,当該各教科に相当する第 2 章第 1 節第 2 款若しくは第 2 節第 2 款に示す 知的障害者である児童又は生徒に対する教育を行う特別支援学校の各教科又は各教科の目標及び内容 の一部によって,替えることができるものとする。なお,この場合,小学部の児童については,外国語活動及 び総合的な学習の時間を設けないことができるものとする。また,中学部の生徒については,外国語科を設 けないことができるものとする。 → 資料②知的代替となる目標と内容一覧 P12 ○高等部指導要領の第1章第2節第6款の2(1)(2) P111~P112 第 6 款 重複障害者等に関する教育課程の取扱い 2. 視覚障害者,聴覚障害者,肢体不自由者又は病弱者である生徒に対する教育を行う特別支援学校に就 学する生徒のうち,知的障害を併せ有する者については,次に示すところによるものとする。 (1) 各教科・科目又は各教科・科目の目標及び内容の一部を,当該各教科・科目に相当する第 2 章第 2 節第 1 款及び第 2 款に示す知的障害者である生徒に対する教育を行う特別支援学校の各教科又は各教科の目 標及び内容の一部によって,替えることができること。この場合,各教科・科目に替えて履修した第 2 章第 2 節第 1 款及び第 2 款に示す各教科については,1 単位時間を 50 分とし,35 単位時間の授業を 1 単位とし て計算することを標準とするものとすること。 (2) 生徒の障害の状態により特に必要がある場合には,第 1 章第 2 節第 3 款に示す知的障害者である生徒に 対する教育を行う特別支援学校における各教科等の履修等によることができること。
(4) 自立活動を主として指導する教育課程
意 味 す る こ と この教育課程は,重複障害者のうち,障害の状態により特に必要がある場合についての取扱いの規 定(学習指導要領;重複障害者等に関する教育課程の取扱い)によるものです。重複障害者は,一人一 人の障害の状態が極めて多様であり,発達の諸側面にも不均衡が大きいことから,教科を中心とした教 育ではなく,特に心身の調和的発達の基盤を培うことを指導のねらいとする必要があります。こうしたね らいに即した指導は,主として自立活動において行われ,このような児童生徒を指導するうえで重要な 意義を有することから,この規定があると言えます。 自立活動を主として指導する教育課程では,各教科,道徳,外国語活動若しくは特別活動の目標及 び内容に関する事項の一部又は各教科,外国語活動若しくは総合的な学習の時間に替えて,自立活 動を主として指導を行うことができます。具体的には下図にあるようなパターンが考えられます。編成す るにあたって,全授業時数の何%を自立活動が占めていれば「自立活動を主とする教育課程」と呼べま すか,という質問が時々あります。「主とする」のですから,一般的には,総授業時数の半分を超える程 度の時数を自立活動に充てると考えられますが,時間の長さで決めるのではなく,児童生徒の必要性 に応じて編成されることが必要です。自立活動のみで児童生徒の学習内容をすべて網羅できるもので はありません。他の教科や領域で取り扱う内容を含めて授業を展開することになります。 また,道徳と特別活動の全てを自立活動に置き換えることはできないことに留意する必要があります。 自立活動を主とした教育課程(小・中学部) 各教科の一部 道徳 特別活動 自立活動 外国語活動 総合的な学習の時間 各教科の一部 道徳 特別活動 自立活動 道徳 特別活動 自立活動 総合的な学習の時間 道徳 特別活動 自立活動 図2 自立活動を主とした教育課程のパターン例(一部)学 習 指 導 要 領 の 規 定 ○「小・中学部学習指導要領」の第1章第2節第5の3 → P49 第 5 重複障害者等に関する教育課程の取扱い 3. 重複障害者のうち,障害の状態により特に必要がある場合には,各教科,道徳,外国語活動若しくは特 別活動の目標及び内容に関する事項の一部又は各教科,外国語活動若しくは総合的な学習の時間に替 えて,自立活動を主として指導を行うことができるものとする。 → 資料①自立活動の内容一覧 P10 ○「高等部学習指導要領」の第1章第2節第6款の3(1)(2) → P112 第 6 款 重複障害者等に関する教育課程の取扱い 3. 重複障害者のうち,障害の状態により特に必要がある場合には,次に示すところによるものとする。 (1) 各教科・科目若しくは特別活動(知的障害者である生徒に対する教育を行う特別支援学校においては, 各教科,道徳若しくは特別活動)の目標及び内容の一部又は各教科・科目若しくは総合的な学習の時間 に替えて,自立活動を主として指導を行うことができること。この場合,実情に応じた授業時数を適切に定 めるものとすること。 (2) 校長は,各教科,科目若しくは特別活動(知的障害者である生徒に対する教育を行う特別支援学校に おいては,各教科,道徳若しくは特別活動)の目標及び内容の一部又は各教科,科目若しくは総合的な 学習の時間に替えて自立活動を主として履修した者で,その成果がそれらの目標からみて満足できると認 められるものについて,高等部の全課程の修了を認定するものとすること。