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村上 ほか:片 麻痺 に対す る短下肢装具 の適応基準 2-2 反張膝 反張 膝 は立 脚 中期 か ら後期 にみ られ,下 肢 の支 持 性 の コ ン トロー ル が不 十 分 な場 合 に,膝 関節 を 最 大 伸 展 し軟 部 組 織 に よ る支 持 性 を求 め る結 果 と して起 こ

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特 集 Vol.17 No.1 2001

片麻痺の短下肢装具の処方

片麻痺 に対す る短下肢装具 の適応基準

-異常歩行 と動作時筋緊張 の観点 よ

り-村 上 忠 洋1) 勝 田 治 己1) 安 江 由 美 子1) 河 尻 博 幸1) 木 村 伸 也1) キ ー ワ ー ド 片麻痺,短 下肢装具,動 作時筋緊張 1. は じめ に 脳 卒 中片 麻 痺 患 者 に対 す る装 具 療 法 は,単 に失 わ れ た機 能 の代 償 的役 割 で な く,早 期 か ら積 極 的 に用 い る こ とで機 能 の 回復 や二 次 的 な機 能 低 下 の 予 防 とい っ た,治 療 的役 割 へ と変 化 して き た1-4). こ う した 装 具 の 役 割 の 変 化 や,近 年 に お け る 材 料,パ ー ッや 加 工 技 術 の進 歩 に よ る装 具 の種 類 の 増 加 は,患 者 に最 適 な装 具 を提 供 す る機 会 を増 し た反 面,処 方 の 判 断 に苦 慮 す る こ と とな った.こ の よ うな 状 況 の 中,片 麻 痺 患者 に最 良 の装 具 を処 方 す る ため に は,(1)装 具 の 構造 と機 能 に関 す る知 識(装 具 側 要 因)と,(2)患 者 の 障害 の把 握 と将 来 的 な 予 測能 力(患 者 側 要 因),の2つ が要 求 され て い る. 片 麻 痺 に 対 す る 下 肢 装 具 の 目 的 と し て 大 川5) は,(1)立 脚 期 の安 定 を得 るた め,(2)つ ま先 が 床 か ら離 れ や す くす るた め,(3)正 常 歩 行 パ タ ー ンへ 近 づ け る た め,(4)変 形 の予 防,の4つ を 挙 げ て い る.(1)∼(3)は歩 行 に 関 した項 目で,(4)で は さ ら に 二 次 的障 害 の予 防 に つ い て も言 及 して い る.ま た 窪 田6)は短 下 肢 装 具 の対 象 とな る片 麻 痺 の異 常 歩 行 と して,足 関 節 の 内反,尖 足,趾 関節 の屈 曲, 膝 折 れ,膝 の 過伸 展 を挙 げ て い る.こ の よ うに装 具 の 主要 な 目的 は歩 行 能 力 の向 上 で あ り,そ の た め に異 常歩 行 を矯 正 す る ことで あ る とい え る.た だ しこの場 合,異 常 歩 行 を 単 に異 常 歩 行 と して 問 題 に す るの で は な く,こ れ が 患 者 の 生 活 場 面 で 具 体 的 に ど う歩 行 能 力 を 低 下 させ るか を,で き るだ け 正 確 に把 握 し変 化 を予 測 す る こ とが 重 要 で あ る. 本 稿 で は理 学 療 法士 の立 場 よ り患 者 側 要 因 を 中 心 に,装 具 の 適 応基 準 に 関 して論 じて い きた い. 2. 異 常 歩 行 か らみ た短 下 肢 装 具 の 適 応 基 準 まず 片 麻 痺 に起 こる異 常 歩 行 と装 具 の適 応 基 準 につ いて,筆 者 らの考 え を述 べ る. 2-1 内 反 尖 足 足 関 節 に 関 す る異 常 歩 行 と して は,尖 足 と 内 反,さ らに両 者 の混在 した 内反 尖 足 が あ り,立 脚 期 に お け る安 定 性 を低 下 させ る.こ れ は急 性 期 か ら回復 初 期 の段 階 に はみ られ な くて も,筋 緊 張 の 亢 進 に伴 つて 多 くの症 例 で 出現 して くる. これ らに対 す る短 下 肢 装 具 は,内 反 と底 屈 運 動

Clinical consideration on the choice of short leg brace for hemiplegic patients-in terms of walking pattern and abnormal muscle

tone-1) 愛 知 医 科 大 学 附 属 病 院 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 部 〒480-1195 愛 知 県 愛 知 郡 長 久 手 町 大 字 岩 作 字 雁 又21 Department of Rehabilitation Medicine, Aichi Medical University

21 Yazako-Karimata, Nagakute-cho, Aichi-gun, Aichi, 480-1195 Japan

Tadahiro MURAKAMI(RPT), Harumi KATSUTA(RPT), Yumiko YASUE(RPT), Hiroyuki KAWAJIRI (RPT),Shinya KIMURA(MD)

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村上 ほか:片 麻痺 に対す る短下肢装具 の適応基準 図1 継 手 付 き プ ラ ス チ ック短 下 肢 装 具 足継 手 は タマラ ッ クを使 用 し,足 関 節後方 の ス トッ パ ー機構 により,底 屈制動 を付 けて いる. を 制 動 す る装 具 が 適 応 と な る.慢 性 期 にお いて拘 縮 が な く遊 脚 期 にの み 軽 度 な 内 反 が 出 現 す る よ う で あれ ば,制 動 の 弱 い装 具 で 十 分 で,既 製 品 で 簡 便 な 「オル トップAFO」(パ シフ ィ ックサ プ ラ イ 社製)を 筆者 ら は用 い て い る.立 脚 期 に内 反 尖 足 が あ る(あ るい は将 来 出現 して く る こ とが予 想 さ れ る)症 例 に は,制 動 の 強 い装 具 が適 応 とな り, 両 側 支柱 付 き短 下 肢 装 具 や靴 べ ら式 プ ラス チ ッ ク 短 下 肢 装 具,最 近 で は継 手 付 きプ ラス チ ッ ク短 下 肢装 具 が選 択 の対 象 とな る、 両 側 支 柱 付 き短 下 肢 装 具 は足 継 手 の調 節 が可 能 で,最 も制 動 が強 く,将 来 の 内反 尖 足変 形 の悪 化 に も対 応 しや す い とい う利 点 が あ る.靴 べ ら式 プ ラス チ ック短 下 肢 装 具 は,材 料 の厚 さ や ト リム ラ イ ンの調 節 に よ り可撓 性 を調 節 で き る7-9;-しか し 底 屈 制 動 を強 くす る と背 屈 制 動 も同 時 に強 くな る た め,し ゃが み動 作 や1足1段 で の 降 段 な ど大 き な背 屈 運 動 を 必 要 とす る動 作 で は,動 作 を制 限 し た り装 具 を 破 損 す る こ とが あ る と い った,生 活上 の 問 題 点 を 考 慮 して適 応 を 検 討 す べ きで あ る.継 手 付 きプ ラ ス チ ック短 下 肢 装 具 は この よ うな 問題 が な く,装 具 後 方 にス ト ッパ-を 用 い る こ とで, 底 屈 制動 の み を 強 くす る こ とが可 能 で あ り有 用 で あ る(図1)。 しか し歩 行量 が 多 くな る症 例 に お い て,十 分 な装 具 側 の耐 久性 が あ るか ど うか は必 ず し も明 確 にな って い な いの で,適 用 に は 注意 が必 要 で あ る. 2-2 反 張 膝 反張 膝 は立 脚 中期 か ら後期 にみ られ,下 肢 の支 持 性 の コ ン トロー ル が不 十 分 な場 合 に,膝 関節 を 最 大 伸 展 し軟 部 組 織 に よ る支 持 性 を求 め る結 果 と して起 こ る-ま た慢 性 期 で は尖 足 拘 縮 の ま ま歩 行 を行 う こ とに よ って 反張 膝 が 出現 す る こ と も少 な くな い.著 明 な反 張 膝 は膝 装 具 や長 下 肢 装 具 の適 応 とな る が,短 下 肢 装 具 で も足関 節 の底 屈 を制 動 す る こ とで反 張 膝 が 改 善 で きる. しか し慢 性 期 に な って 出現 した反 張 膝 に新 し く 装 具 を作 製 した り,制 動 の弱 い プ ラス チ ック装 具 か ら両 側 支 柱 付 き短 下 肢 装 具 の よ う な,患 者 に と って 大 袈 裟 な装 具 に変 更 す る場 合 に は,し ば し ば 理 解 が 得 られ に くい こ とが あ る.こ れ らの 問題 を 解 決 す る ため に は,二 次 的 な 障 害 を予 防 す るた め の 装 具 の 必 要 性 につ いて 理 解 を 得 て も ら い,新 しい装 具 の 使 い こな しを 十 分 に訓 練 す る こ とが必 要 とな る.本 来 発 症 早 期 に反 張 膝 の 発生 を 予 測 し て予 防 す る こ とが 重要 で あ るが,的 確 な 予 測 はむ ず か し く早 期 に は制 動 性 の 高 い 装具 を作 製 して お い た ほ うが,そ の 後 の 対 応 が容 易 で あ る と考 え ら れ る. 2-3 膝 折 れ 立 脚 中期 に 出現 す る膝 折 れ に よ って,麻 痺 側 へ の十 分 な荷 重 が困 難 とな る.著 しい膝折 れは長下 肢 装 具 の適 応 とな るが,立 脚 期 に麻 痺 側 へ あ る程 度 の荷 重 が で き れ ば,短 下 肢 装 具 の足 関 節 の背 屈 を制 動 す る こと で下 腿 の前 方 へ の傾 斜 を制 限 して 膝 折 れ を軽 減 させ る ことが 可 能 で あ る.膝 折 れ は 発 症 早 期 の弛 緩 性 麻 痺 の状 態 で は比 較 的 多 くみ ら れ るが,麻 痺 の回 復 や 筋 緊 張 の亢 進 に よ って 多 く は改 善 され る.慢 性 期 にお いて も改 善 され な い症 例 に は,両 側 支 柱 付 き短 下 肢 装 具 の ダ ブ ル ク レ ン ザ ック継手 や,靴 べ ら式 プ ラ ス チ ック短 下肢 装具 によ る背 屈制 動 が適 応 とな る. 2-4 足 趾 の屈 曲 筋 緊張 の亢 進 に よ り立脚 期 に 足趾 の屈 曲 が強 く な る と,し ば しば疼 痛 を 発生 さ せ歩 行 能 力 を低 下 させ る1。〉.筋 緊張亢 進 に よ る足趾 屈 曲 は立 脚 期 に の み 出現 す るの で な く,遊 脚 期 か らす で に足 趾 が 屈 曲 して お り立 脚 期 に さ らに著 明 に な る こ とが多 い.こ の よ うな症 例 で,プ ラス チ ッ ク装 具 の足 底

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部 分 がMP関 節 部 で カ ッ トされ て い る と,足 趾 屈 曲 が よ り著 し くな る.し た が って装 具 の 足底 部 分 は足先 ま で被 うよ う に作製 す る.足 趾先 端 に疹 痛 の あ る場 合 に は,装 具 の 中 敷 の 前 足 部 に軟 性 の ウ エ ッ ジを 装着 す る と癒 痛 が 軽 減 し歩 行能 力 も向上 す る.ま た靴 型 装 具 の場 合 に は,toe box に ゆ と りを もた せ る こと も必 要 で あ る. 2-5 遊 脚期 の 足 先 の 引 きず り 足 関 節 の尖 足 や 足 趾 の屈 曲が 原 因 で,遊 脚 期 に 足 先 を引 きず る こ とが あ る.こ の と きに は足 関 節 の底 屈 や,足 趾 の屈 曲 を制 動 す る こ とで 改 善 が 得 られ る.し か し発 症 早 期 で遊 脚 期 に膝 や 股 関 節 の 屈 曲 が不 十 分 な例 で は,初 期 背 屈 角 度 を大 き く し て も足先 の 引 きず りが改 善 しな い こ とが あ る.し か し非 麻 痺 側 の代 償作 用 の習 得 に よ り,多 くは改 善 す る.改 善 しな い場 合 に は非 麻 痺 側 へ の補 高 も 考 慮 す る とよ い. 3. 異 常歩 行 に影 響 を 及 ぼ す動 作 時筋 緊 張 と短 下 肢装 具 の 適 応 歩 行 時 に観 察 され る内反 尖 足 な どの異 常 歩 行 の 要 因 の 一 つ と して,下 腿 筋 群 の筋 緊 張 異 常 が あ るID.岩 谷12)は脳 卒 中 片 麻 痺患 者 の 内反 尖 足 の要 因 と して,(1)前 脛 骨 筋 の過 剰 な 活動,(2)下 腿 三 頭 筋 の 過剰 な 活 動,(3)腓 骨 筋 の活 動 の 欠如 とい った 筋 緊 張 の 異 常 を 挙 げて い る.し た が って装 具 処方 の際 に は,異 常 歩 行 出 現 の 要 因 とな る筋 緊 張 異常 にっ いて 考 慮 しな けれ ばな らな い.筋 緊 張 は,安 静 時 にお いて は腱 反 射 や 関 節 を 他 動 的 に動 か した と き の抵 抗 感 か ら評 価 され るが,装 具 処 方 の 際 に は安 静 時 のみ で な く,動 作 時 の 筋 緊 張 の 異 常 を観 察 す る こ とが 重 要 で あ る13).動 作 時 の筋 緊 張 は患 者 の 身 体 機 能 的 要 因 や,患 者 を取 り巻 く環 境 的要 因 な ど に よ つて も大 き く影 響 を 受 け る こ と に注意 しな くて はな らな い. 3-1 身 体 機 能 的要 因 動 作 時 筋 緊 張 に影響 を及 ぼす 身 体 機 能 的 要 因 の 一 つ と して,立 位 の安 定 性 が 重 要 で あ る と考 え る.筆 者 ら14)は非 麻 痺 側 下 肢 に よ る立 位 安 定 性 が,動 作 時 筋 緊 張 に 及 ぼ す 影 響 に っ い て 調 査 し た.脳 卒 中 片 麻 痺 患 者19名 を対 象 と し,麻 痺 側 下 肢 挙 上 動 作 時 の前 脛 骨 筋 と腓 腹 筋 の筋 活 動 を,表 図2 測 定 動 作 麻 痺 側 下肢 を,で きる だ け足 部 を リ ラ ック ス した状 態 で挙 上 さ せ た. 面 筋 電 図 を用 いて 評 価 した (図2).足 部 をで き る だ け リ ラ ック ス させ て 麻 痺 側 下 肢 挙 上 動 作 を 行 わ せ,非 麻 痺 手 で 平 行 棒 を 支 持 した 立 位 とT字 杖 を 支 持 した立 位 で比 較 した.健 常 者 を 対 象 と した場 合 で は前 脛 骨 筋,腓 腹 筋 と もに筋 活 動 は認 め られ な か った が,片 麻 痺 患 者 で は両 筋 と もに活 動 を認 め な か った者(以 下 「な し群 」),前 脛 骨 筋 の み に 活動 を認 め た者(以 下 「前 脛 骨 筋 群 」),両 筋 と も に活 動 を認 め た者(以 下 「同 時収 縮 群 」)の3つ に 分 類 され た(図3).片 麻 痺 患 者 で見 られ た前 脛 骨 筋 や 腓 腹 筋 の 筋活 動 は 健常 者 で はみ られ な か った こ とか ら異 常 筋 緊 張 と考 え られ る.平 行 棒 立 位 で は 「な し群」3例,「 前 脛 骨 筋群 」11例,「 同 時収 縮群 」5例 だ った の が,T字 杖立 位 で は 「な し群 」 3例,「 前 脛 骨 筋 群 」8例,「 同 時 収 縮 群 」8例 と, 平 行 棒 か らT字 杖 へ と立 位 が 不 安 定 に な る こ と によ って,腓 腹筋 の異 常 活 動 を 引 き起 こす症 例 が 増 した.ま た筋 活動 の積 分 値 を比 較 す る と,前 脛 骨 筋,腓 腹 筋 と も平 行 棒 に比 しT字 杖 の方 が増 加 した (図4).以 上 の結 果 よ り,非 麻 痺側 下 肢 で の 立 位 が 不 安 定 にな る と麻 痺 側下 腿 筋 群 の 筋 緊 張 が 亢 進 し,と くに腓 腹 筋 の活 動 が 強 くな る こ とが示 唆 され た15). したが って理 学 療 法 士 の 立 場 か らは,非 麻 痺 側

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村上 ほか:片 麻痺 に対す る短下肢装具 の適応基準 図3 挙 上 動 作 時 の 筋 活 動 パ タ ー ン 上 段 は前 脛 骨 筋,下 段 は腓 腹 筋 の筋 活 動 を示 す.Aを 「な し群 」,Bを 「前 脛 骨 筋 群 」,Cを 「同 時 収 縮 群 」 と 分 類 した. 図4 各 筋 の 平 均 積 分 値 の 比 較 Aは 「な し群 」 を 除 く16名 の 前 脛 骨 筋 の 挙上 時間 あ た りの 平均 積 分 値 を示 す.BはT字 杖 立 位 で腓 腹 筋 の活 動 の み られ た8名 の 挙 上 時 間 あ た りの平 均 積分 値 を示 す.い ず れ の筋 も平 行 棒 立 位 に比 べT字 杖 立 位 の ほ うが, 有 意 に平 均 積 分 値 が増 加 した(*p<0.05). で の立 位 安 定 性 に有 益 で あ る ア プ ロ ーチ,と くに 廃 用 性 筋 力 低 下 や 体 力 低 下 の 予 防 と改 善 を 十 分 図 って お く ことが まず 重 要 で あ る.そ して そ の効 果 に よ つて 装 具 の適 応 基準 も変 化 して く る と考 え られ る.同 時 に これ らの所 見 か ら,非 麻 痺 側 の靴 につ いて も十 分 な 配 慮 が必 要 で あ る.す な わ ち非 麻 痺 側 の靴 が 大 きす ぎて適 合 が悪 か った り,月 形 が しっか り して いな い靴,あ るい は底 が 柔 らか す ぎ る靴 な ど は,結 果 的 に非 麻 痺 側 下 肢 に よ る立 位 バ ラ ンス を悪 くす るお そ れが あ る ので 避 けた ほ う が よ い と考 え る. 3-2 環 境 的 要 因 自宅環 境 と して,手 す りや家 具 な どを 利用 して つ た い歩 きす る こ とに よ つて,立 位 バ ラ ンス が安 定 し過 剰 な筋 緊 張 が 抑 制 で き う る.し た が って患 者 の歩 行 自立 に適 した整 備 が な され た 自宅 環 境 に お い て は,歩 行 の習 熟 に よ つて装 具 の必 要 性 は減 少 す る.実 際 に退 院 後 しば ら くす る と屋 内で は装 具 を使 用 しな くな る症 例 を しば しば経 験 し,高 岡 ら16)の報 告 に お い て も屋 外 装 具 に比 べ屋 内 装 具 の退 院 後 に お け る装 具 装 着 率 は低 い と され て い る.し た が って屋 内用 装 具 を処 方 す る際 には,こ

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れ らの環 境 面 の整 備 状 況 と,そ の中 で 患 者 が どれ ほ ど安 定 して歩 行 が で き るか を,よ く見 極 めて か ら決 定 す べ きで あ ろ う. これ に対 して 屋 外 で は入 や 車 が 行 き交 った り, 道 路 が 平 坦 で な い な ど 種 々 の 外 乱 が 生 じ う る の で,患 者 を 取 り巻 く環 境 は厳 しい.退 院後 屋 外 を 積 極 的 に歩 くこ と が予 想 され る症 例 で は,こ の よ うな厳 しい環 境 で 筋 緊 張 が 充 進 し足 部 変 形 が 強 く な りう る.し たが って,入 院 中 の訓 練 歩 行 で必 要 と され る よ り も,制 動 の強 い装 具 の適 応 を考 え る べ きで あ る.筆 者 らは装 具 の耐 久性 も考 え,こ の よ うな 症 例 に は両 側 支 柱 付 き短 下 肢 装 具 を用 い て い る. 4 .お わ りに 片 麻 痺 患 者 に 対 す る短 下 肢 装 具 の主 要 な 目 的 は,歩 行 能 力 を 向 上 させ る こ とに あ る.し か し歩 行 能力 を 向上 させ るた め に は立 脚 期 で は安 定 性 を 基 本 と しつ つ も,同 時 に推 進 力 と して の運 動 性 も 要 求 され て く る.そ して そ の た め の装 具 に求 め ら れ る機 能 は,安 定 性 や支 持 性 を 向上 させ る ため の 関 節運 動 の制 限 と,運 動 性 を 向上 させ る ため の 関 節 運 動 の補 助 とい う相 反 す る2面 が あ る.そ れ ゆ え,そ れ ぞ れ の患 者 の機 能 に及 ぼす 利 得 と損 失 に 関 す る予 測 が重 要 で あ る.ま た歩 行 能 力 に影 響 す る機 能 障 害 レベ ル の 問題 点 と同 時 に,能 力 レベ ル や環 境 因 子 を把 握 し予 測 す る こ とが,長 期 的 に有 効 な短 下 肢 装 具 の処 方 の前 提 と な る と考 え る. 文 献 1) 上 田 敏:脳 卒 中 リハ ビ リテ ー シ ョ ンの再 検 討 一 リハ\ビ リテ ー シ ョ ン ・プ ログ ラム の層 別 化 を中 心 に一,理 ・作 ・療 法,21(11):716-726, 1987 2) 石 神 重 信 ほ か:片 麻 痺患 者 へ の装 具 処 方 一 急 性 期 の処 方 の 実 際 一,総 合 リハ,16(10):765-771,1988 3) 梶 原 敏 夫:装 具 療 法 の進歩,医 学 の あゆ み, 147:939-942,1988 4) 大 竹 朗 ほか:片 麻 痺 に対 す る 「治 療 用 」 装 具 と運 動 療 法,PTジ ャー ナ ル,28(5):300-305,1994 5) 大 川 嗣 雄:脳 卒 中 片 麻 痺 患 者 に 対 す る 下 肢 装 具 の 処 方,日 本 義 肢 装 具 研 究 会(編):脳 卒 中 片 麻 痺 患 者 の 下 肢 装 具,1版,49-60,医 歯 薬 出 版, 1981 6) 窪 田 俊 夫:片 麻 痺 の 歩 行 訓 練 プ ロ グ ラ ム と下 肢 装 具,日 本 義 肢 装 具 学 会(編):下 肢 装 具 の バ イ オ メ カ ニ ク ス-片 麻 痺 歩 行 と 装 具 の 基 礎 力 学-,1版,83-92,医 歯 薬 出 版,1996 7) 岩 崎 満 男 ほ か:各 種 プ ラ ス チ ッ クAFOの 特 性 比 較 一 下 肢 に 装 着 し た 状 態 で の 可 擁 性 の 計 測 一,日 本 義 肢 装 具 学 会 誌,7(3):313-320, 1991 8) 長 屋 政 博 ほ か:靴 べ ら式 短 下 肢 装 具 の 可 擁 性 -多 変 量 解 析 に よ る可 擁 性 の 予 測-,日 本 義 肢 装 具 学 会 誌,7(3):307-311,1991 9) 長 屋 政 博 ほ か:靴 べ ら式 短 下 肢 装 具 の 可 擁 性 (第2報)-プ ラ ス チ ッ ク 材 料 が 可 擁 性 に 与 え る 影 響-,日 本 義 肢 装 具 学 会 誌,8(4):297-301,1992 10) 檀 辻 雅 広 ほ か:脳 卒 中 片 麻 痺 患 者 の 歩 行 時 に お け る足 趾 の 形 状 変 化 の 実 態,理 学 療 法 学,20 (8):493-498,1993

11)Perry, J.etal. :Electromyographic analy-sis of equinovarus following stroke, Clin. Orthop. Related Res., 131:47-53,1978

12) 岩 谷 力:脳 卒 中 片 麻 痺 患 者 に み ら れ る 痙 性 内 反 尖 足 の 動 作 筋 電 図 学 的,解 剖 学 的 検 討,日 本 整 形 外 科 学 会 雑 誌58(10):961-973,1984

13) 土 肥 信 之:痙 縮 の 運 動 療 法 と装 具 療 法,臨 床 リハ,2(7):536-540,1993

14) Murakami, T. et al.: The influence of standing stability on abnormal muscle activ-ity of the lower leg in spastic hemiplegia, 13th International Congress of the World Confederation for Physical The rapy(Pro-ceedings),457,1999 15) 村 上 忠 洋 ほ か:脳 卒 中 片 麻 痺 患 者 の 動 作 時 筋 緊 張 に 対 す る 訓 練 効 果,理 学 療 法 学,27 (Supply:4,2000 16) 高 岡 徹 ほ か:慢 性 脳 卒 中 片 麻 痺 患 者 の 下 肢 装 具 の 使 用 状 況,日 本 義 肢 装 具 学 会 誌,14(特 別 号):120-121,1998

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