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解説 心臓サルコイドーシスへの抗菌薬 心臓サルコイドーシスに対する抗菌薬治療 J-ACNES研究 草野研吾1 田原宣広2 石橋耕平1 朝倉正紀3 中村一文4 高谷陽一4 坂本 央5 中村知久2 野口暉夫1 安田 聡1 矢崎善一6 安斉俊久7 山口哲生8 朝倉こう子9 濱崎俊光9 寺﨑文生10 江石義

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全文

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はじめに

 サルコイドーシスは原因不明の全身性肉芽腫性疾患で ある.古くから心病変合併の有無が生命予後を規定する最 も重要な因子であるとされており,諸外国に比べ,我が国 では,この心病変の合併が多く,死因の3分の2を占めるこ とが報告されている.治療として,ステロイドをはじめと する免疫抑制薬を早期かつ長期にわたって内服すること が勧められているが,長期のステロイド内服による副作用 や,ステロイド内服中の再燃が問題となっており,根本的 な治療が切望されている.サルコイドーシスの原因として アクネ菌(P. acnes)感染が報告されており1),心臓サル コイドーシスに対する抗菌薬を用いた前向き探索研究と

し てJ-ACNES(Japanese AntibaCterial drug maNage-mEnt for cardiac Sarcoidosis)試験,UMIN 000025936) を開始した.

対象と方法(Figure 1,2)

 ステロイド治療導入予定の皮膚あるいは呼吸器病変を 合併した心臓サルコイドーシス患者を対象とする(サルコ イドーシスの診断基準と診断の手引き2015に基づく).対 象被験者として,登録時に下記のすべての選択基準に合致 し,いずれの除外基準にも抵触しない患者を適格症例とし て登録する.

心臓サルコイドーシスに対する抗菌薬治療:J-ACNES研究

草野研吾1),田原宣広2),石橋耕平1),朝倉正紀3),中村一文4),高谷陽一4),坂本 央5),中村知久2),野口暉夫1) 安田 聡1),矢崎善一6),安斉俊久7),山口哲生8),朝倉こう子9),濱崎俊光9),寺﨑文生10),江石義信11)

【要旨】

 心臓サルコイドーシスでは,副腎皮質ステロイドなどの免疫抑制薬を終生内服することが必要とされている.しかし長期 のステロイド内服による副作用の懸念,経過中にステロイド増量が必要であった例が約2割に上ることも報告され,根本的 な治療が望まれている.サルコイドーシスの原因としてアクネ菌の関与が報告されており,抗菌薬(クラリスロマイシンと ドキシサイクリン併用)を用いた前向き探索研究(J-ACNES研究)を開始した. [日サ会誌 2018; 38: 34-39] キーワード:心臓サルコイドーシス,副腎皮質ステロイド,抗菌薬,ドキシサイクリン,クラリスロマイシン

Antibiotics Treatment for Cardiac Sarcoidosis: J-ACNES trial

Kengo Kusano1), Nobuhiro Tahara2), Kohei Ishibashi1), Masanori Asakura3), Kazufumi Nakamura4), Yoichi Takaya4),

Naka Sakamoto5), Tomohisa Nakamura2), Teruo Noguchi1), Satoshi Yasuda1), Yoshikazu Yazaki6), Toshihisa Anzai7),

Tetsuo Yamaguchi8), Koko Asakura9), Toshimitsu Hamasaki9), Fumio Terasaki10), Yoshinobu Eishi11)

Keywords: cardiac sarcoidosis, corticosteroid, antibiotics, doxycycline, clarithromycin

1)国立循環器病研究センター心臓血管内科 2)久留米大学心臓・血管内科 3)兵庫医科大学循環器内科 4)岡山大学循環器内科 5)旭川医科大学循環器内科 6)佐久総合病院佐久医療センター 7)北海道大学循環器内科 8)新宿海上ビル診療所 9)国立循環器病研究センターデータサイエンス部 10)大阪医科大学医学教育センター・循環器内科 11)東京医科歯科大学人体病理学 著者連絡先:草野研吾(くさの けんご)       〒565-8565 大阪府吹田市藤白台5-7-1       国立循環器病研究センター心臓血管内科       E-mail:[email protected]

1)Department of Cardiovascular Medicine, National Cerebral and Cardiovascular Center

2)Division of Cardiovascular Medicine, Department of Internal Medicine, Kurume University School of Medicine

3)Division of Cardiovascular, Department of Internal Medicine, Hyogo College of Medicine

4)Department of Cardiovascular Medicine, Okayama University 5)Department of Cardiology, Asahikawa Medical University 6)Department of Cardiology, Advanced Care Center, Saku

Cen-tral Hospital

7)Department of Cardiovascular Medicine, Hokkaido University 8)Shinjuku Kaijo Bldg. Clinic

9)Department of Data Science, National Cerebral and Cardiovas-cular Center

10)Department of Cardiology/Medical Education Center, Osaka Medical College

11)Department of Human Pathology, Graduate School of Medical Sciences, Tokyo Medical and Dental University

(2)

選択基準  1)同意取得時の年齢が20歳以上の患者  2)FDG-PETもしくはGaシンチにて心臓に陽性所見を 有する患者  3)ステロイド治療を導入予定の患者  4)本人から文書による同意を得られた患者 除外基準  1)同意取得時にショックを呈している患者  2)スクリーニング時にASTもしくはALTが正常値上 限の2倍を超える肝機能障害を有する患者(ただし, 心疾患に起因するASTもしくはALTの上昇と判断さ れる場合には,総ビリルビン値が3.0 mg/dl未満であ れば本除外基準に該当しないこととする)  3)スクリーニング時にeGFR 15 ml/min/1.73 m2未満 の重篤な腎機能障害を有する患者  4)活動性のある感染症(結核,B型肝炎,C型肝炎,梅 毒等)を合併している患者  5)ステロイドの禁忌に該当する患者  6)6 ヶ月以内に連続7日以上のステロイド内服治療を施 行された患者  7)心臓サルコイドーシス以外の疾患に対してステロイ ド治療が必要な患者  8)クラリスロマイシンおよびドキシサイクリン塩酸塩 の禁忌に該当する患者(なおドキシサイクリンは高齢 者で慎重投与となっていることに配慮すること)  9)クラリスロマイシンおよびドキシサイクリン塩酸塩 に過敏症の既往を有する患者  10)重篤な糖尿病によりPETが施行できない患者  11)免疫抑制剤投与中もしくは開始が必要な患者  12)妊婦,授乳婦又は試験参加中の避妊に同意できない 女性  13)他の臨床試験に参加もしくは本試験期間中に参加 する予定がある患者  14)その他の理由により,試験責任医師または分担医師 が本試験への参加を不適当と判断した患者

割付

 本試験では,以下の五つの変数を割付因子とし,Pocock and Simonの最小化法を用いて,被験者は抗菌薬追加群, あるいは標準治療群のいずれかに割り付けられる.割付比 は1:1である.  割付調整因子:①性別(男/女),②年齢(60歳未満/ 以上),③左室駆出率(40%未満/以上),④持続性心室頻 拍もしくは心室細動の有無,⑤MobitzⅡ型房室ブロック もしくは完全房室ブロックの有無. Figure 1. 試験の実施手順.登録割付後に,標準治療群と6カ月間の抗菌薬追加群に分け,4年半観察期間を設ける. 同意取得 登録・割付 抗菌薬追加群 試験薬投与期間 6ヶ月 観察期間 4年半 標準治療群 主要評価 Figure 2. 観察・検査スケジュール表 期間 試験薬投与期間 Visit

1 Visit2 Visit3 Visit4 Visit5 Visit6 Visit7 Visit8 Visit9 Visit10 Visit11 12,13,14Visit Visit15 Visit16 スクリーニング ベースライン 2W 4W 8W ± 2W 12W 16W 24W 32W 40W 48W 2Y,3Y,4Y 5Y 試験薬投与 終了時 観察期間 早期中止時 調査項目 転帰情報 有害事象 併用療法 併用薬剤 FDG-PET/CT検 査 ホルター心電図 心臓超音波検査 胸部X線 12誘導心電図 血液検査(特殊) 血液検査(一般) バイタルサイン 試験治療情報 対象疾患情報 被験者基本情報 許容範囲 ± 4W ± 6W ± 3M ± 4W

(3)

評価項目

主要評価項目  FDG-PET/CT検 査 に よ る 合 計SUV(standardized uptake value)値のベースライン時からの変化量(投与後 6 ヶ月時)(なお6 ヶ月以内にステロイド再増量が必要で あった症例においては,再増量前に施行した最終のFDG-PET検査による値を使用する) 副次評価項目  1)ステロイド再増量の割合(投与後6 ヶ月間)  2)ステロイド再増量の割合(投与後12 ヶ月間)  3)FDG-PET/CT検査による合計SUV値のベースライ ン時からの変化量(投与後12 ヶ月時)  4)FDG-PET/CT検査による最大SUV値のベースライ ン時からの変化量(投与後6 ヶ月時,12 ヶ月時)  5)FDG-PET/CT検査によるBull’s eye map解析におけ

る平均SUV値のベースライン時からの変化量(投与 後6 ヶ月時,12 ヶ月時)

 6)FDG-PET/CT検査によるBull’s eye map解析におけ るSUV値の分散値のベースライン時からの変化量 (投与後6 ヶ月時,12 ヶ月時)

 7)FDG-PET/CT検査によるBull’s eye map解析におけ る平均SUV値の変動係数のベースライン時からの変 化量(投与後6 ヶ月時,12 ヶ月時)  8)複合エンドポイント(心血管死または致死性不整脈 または心不全による入院)の発生率(投与後6 ヶ月時, 12 ヶ月時,36 ヶ月時,60 ヶ月時)  9)心血管死の発生率(投与後6 ヶ月時,12 ヶ月時,36 ヶ 月時,60 ヶ月時)  10)致死性不整脈の発生率(投与後6 ヶ月時,12 ヶ月時, 36 ヶ月時,60 ヶ月時)  11)心不全による入院の発生率(投与後6 ヶ月時,12 ヶ 月時,36 ヶ月時,60 ヶ月時)  12)心臓超音波検査による左室駆出率のベースライン 時からの変化量(投与後6 ヶ月時,12 ヶ月時)  13)ACE値のベースライン時からの変化量(投与後6 ヶ 月時,12 ヶ月時)  14)リゾチーム値のベースライン時からの変化量(投与 後6 ヶ月時,12 ヶ月時)  15)可溶性IL-2受容体のベースライン時からの変化量 (投与後6 ヶ月時,12 ヶ月時)  16)抗ACNEX抗体価のベースライン時からの消退率 (投与後6 ヶ月時,12 ヶ月時)  17)FDG-PET/CT検査による他臓器における集積変化 の定性的評価(投与後6 ヶ月時,12 ヶ月時) 安全性評価項目  1)有害事象の発現割合(投与後6 ヶ月間,12 ヶ月間)  2)有害事象によると考える試験薬投与の中止割合(投 与後6 ヶ月間,12 ヶ月間)  3)試験薬との因果関係が否定できない皮疹の発現割合 (投与後6 ヶ月間,12 ヶ月間)  4)試験薬との因果関係が否定できない下痢の発現割合 (投与後6 ヶ月間,12 ヶ月間)  5)試験薬との因果関係が否定できない致死性不整脈の 発現割合(投与後6 ヶ月間,12 ヶ月間)

薬剤の投与(Figure 3)

 標準治療群としてプレドニゾロンは,1日1~2回30 mg (0.5 mg/kg)を開始する.30 mg(0.5 mg/kg)の経口投 与は,原則1 ヶ月間継続する.その後,2-4週間の間隔で25 mg,20 mg,15 mg,10 mgの順に,減量を行う.最終的 に1日1回7.5 mgの維持量で経過を観察する.  抗菌薬投与群では上記の標準的なステロイド治療に加 えて,クラリスロマイシン1回200 mgを1日2回経口投与 し,24週間継続する.クラリスロマイシン2週間投与後, クラリスロマイシンの副作用による試験中止の必要性が Figure 3. 抗菌薬+ステロイド治療の代表的な減量パターン(減量が2週おきの場合). 1W 2W 3W 4W 5W 6W 7W 8W 9W10W 11W 12W 13W 14W 15W 16W 17W 18W 19W 20W 21W 22W 23W 24W PSL 30mg PSL 25mg PSL 20mg PSL 15mg PSL 10mg PSL 7.5mg クラリスロマイシン ドキシサイクリン 比較群:抗菌薬+ステロイド標準治療群

(4)

ないことを確認して,ドキシサイクリン塩酸塩水和物を1 回100 mg,1日1回投与開始し,22週間継続する.有害事 象の発現等の理由で,どちらか一方の薬剤の継続投与が困 難な場合には,単剤の抗菌薬追加も可能とする.

試験薬の減量・中止基準

 試験薬の減量もしくは中止に関しては,有害事象の重症 度でGrade 2以上の有害事象が発生した場合,投与量の減 量もしくは中止を検討する.有害事象による症状の消失や 検査結果の改善を確認したのちに,試験責任医師の判断の もと,試験薬の再開もしくは増量をすることを可能とす る.有害事象の重症度を以下に示す. Grade 1軽度;症状がない,または軽度の症状がある;臨 床所見または検査所見のみ;治療を要さない Grade 2中等度;最小限/局所的/非侵襲的治療を要す る;年齢相応の身の回り以外の日常生活動作の制限 Grade 3重度または医学的に重大であるが,ただちに生命 を脅かすものではない;入院または入院期間の延長を要 する;活動不能/動作不能;身の回りの日常生活動作の 制限

目標症例数

 目標解析症例数:80例([抗菌薬追加群]40例 [標準 治療群]40例)

目標解析症例数の設定根拠

 本試験の開始にあたり,クラリスロマイシンとドキシサ イクリン塩酸塩の2剤併用療法追加の心臓における臨床的 有用性に関して,先行研究の結果や参照できる利用可能な データが十分でない.そのため本試験において追加療法の 効果を評価するにあたり,まずは実施可能な最小症例数で ある80例を目標解析症例数とするが,約75%の症例につ いて投与後12 ヶ月時の主要評価項目を観察した時点で中 間解析を実施し,結果に関してどの程度見込みがあるかを 評価し,必要に応じて症例数の変更を検討する.

ステロイド再増量の基準

 下記のいずれかの所見を認めた場合には,ステロイド再 増量判定委員にてステロイドの再増量の可否を判断し,ス テロイドの再増量を行う.被験者の安全性の観点から,ス テロイド再増量判定委員の判断を待つことができない場 合には,その理由を記載し,ステロイド再増量を行うこと を可能とする. ① FDG-PET/CT検査による心臓における最大SUV値が ベースラインと比較して10%以上改善していない症例. ② 心臓超音波検査による左室駆出率がベースラインと比 較して10%以上低下した症例. ③ 心臓超音波検査による心室筋の菲薄化もしくは肥厚が 新たに出現もしくは進行した症例. ④ 血清マーカー(CRP,sIL-2R,ACE,リゾチーム等)の 増悪した症例. ⑤ ステロイド維持量の時期以後に生じた持続性心室頻 拍/心室細動が新たに出現もしくは増悪した症例. ⑥ 研究責任者もしくは研究分担者がステロイド再増量が 必要であると判断した場合.

後治療

 試験治療終了後はガイドライン等に従い,サルコイドー シスに対する通常の治療を実施する.

検査

血液検査(一般)  白血球数,ヘモグロビン,血小板,総蛋白,アルブミン, 総ビリルビン,AST,ALT,クレアチニン,LDH,カル シウム,ナトリウム,カリウム,CRP,FBS,HbA1c 血液検査(特殊)  ACE,リゾチーム,可溶性IL-2受容体(sIL-2R),BNP, FT4,TSH,抗ACNEX抗体価[中央測定] FDG-PET検査  下記の項目を記載したFDG-PET検査の手順書に従って 行う.FDG-PET検査の評価は,コアラボに電子データを 集積し,中央解析を行う. 抗ACNEX抗体価測定  抗ACNEX抗体は,東京医科歯科大学にて一括して中央 測定を行う.

考察

 心臓サルコイドーシスに対する免疫抑制治療の限界.  サルコイドーシス(サ症)は,乾酪壊死を認めない類上 皮細胞肉芽腫が形成される全身性の肉芽腫性疾患であり, 侵される臓器は多岐に渡る.本症の原因として,何らかの 抗原物質に暴露されて誘導されるTh1型の過敏性免疫反 応が関連していることが提唱されている2).この免疫反応 により,活性化したマクロファージとT細胞が局所に集簇 し,結果として肉芽腫が形成され,その後消退の過程で類 上皮細胞が消失し巨細胞が瘢痕化や線維化された組織の 中に残存するとされている.心臓病変の有無が患者の予後 を規定する最も重要な因子であり,我が国では心病変の合 併が死因の3分の2を占めるとされ,心臓サルコイドーシ ス(心サ症)への積極的な治療が重要である.心サ症に対 する現在の治療の中心は過敏性免疫反応に対する副腎皮 質ステロイドを中心とした免疫抑制薬である3)が,ステロ イドの中止が予後悪化に関連することも報告され4),終生 内服が推奨されているが,長期内服による様々な副作用が 懸念される.また我々が2015年に行った心サ症の全国ア ンケート調査では,平均7.4 mgと比較的高用量のステロイ ドが内服されているにもかかわらず,390名中55名(19.9%) が経過中にステロイド増量が必要であったことが明らか となり5),致死的な疾患である心臓サルコイドーシスへの

(5)

免疫抑制治療の限界と考えられ,根本的な治療が切望され ている.

サルコイドーシスに対する抗菌薬治療

 江石らは,サルコイドーシス患者の肉芽腫組織やリンパ 節からPropionibacterium acnes(P. acnes:アクネ菌)が 分離された一方,結核菌を含む他の細菌やウイルスが検出 されなかったことを報告した1).さらにアクネ菌を用いた サ症のモデルマウスにおいて抗菌薬投与で肉芽腫が改善 すること6),心サ症においても免疫染色にて心組織内のア クネ菌の存在を報告した7).こうした報告は,サルコイ ドーシスを惹起する抗原としてアクネ菌感染の重要性が 考えられる.  サ症に対する抗菌薬効果は, いくつか報告があり, Bachelezらは,皮膚サ症患者12名に対してミノサイクリ ン200 mg/日を12 ヶ月間(中央値)投与したところ,10名 の患者で改善(8例が完全寛解)を認め,有効例では約3 ヶ 月で効果発現がみられたと報告している8).ミノサイクリ ン中止後に3名が皮膚病変の再発を認め,ミノサイクリン の再投与により軽快した.ミノサイクリンによる有害事象 は,薬剤過敏症を1名に認め,皮膚の軽度の色素沈着を2名 に認めた.厚生省難治性研究班による折津らの報告による と,サ症に対する抗生物質の内服投与が行われた患者にお いて,ミノサイクリンやクラリスロマイシンなどが87例 中36例に有効であったとされている9).一方,平賀らはサ 症12例(うち肺病変が11例)に対してクラリスロマイシン の6 ヶ月間投与で,1例のみに軽度改善を認めたと報告し ている10).山口らは,サ症患者51例に対して,テトラサイ クリン(ミノサイクリン49例,ドキシサイクリン2例)100 mg/日から投与を開始したところ,副作用のため3 ヶ月以 内に服薬中止に至った症例を22例(43.1%)に認めた.3 ヶ 月以上のテトラサイクリンの服薬が可能であった症例に お い て, 有 効 性 あ り と 判 断 さ れ た 症 例 は29例 中6例 (20.7%)であり,有効性発現は2 ヶ月以内に認めたと報告 している11).さらに山口らは,サルコイドーシス患者に対 して,ドキシサイクリンとミノサイクリンの安全性と有効 性に関して報告している.ドキシサイクリン100 mg/日で 投与を開始したところ,3 ヶ月以内に副作用で中止が必要 となった症例は14例(25.5%)とミノサイクリンと比較し て少ないことを報告している.また有効性においても,ド キシサイクリンの方がミノサイクリンより高い傾向にあ ることを示している12)  多剤併用に関しては,肉芽腫性疾患には,結核やらい病 がある.結核の標準治療は,リファンピシン,イソニアジ ド,ピラジナミド,エタンブトールの4剤併用療法で2 ヶ月 間治療後,維持期はリファンピシンとイソニアジドの2剤 併用療法を4 ヶ月間継続し,少なくとも6 ヶ月間行う.ら い病の標準治療は,リファンピシン,ジアフェニルスルホ ン,クロファジミンの3剤併用療法を6 ヶ月から1年間継続 する.従って肉芽腫性疾患では,多剤併用の抗菌薬を6 ヶ 月から1年間の継続投与を行うことが必要であると考えら れている.  これらの過去の臨床研究や他の肉芽腫性疾患の治療を 考慮して,本試験では,心サ症患者に対して,6 ヶ月間の クラリスロマイシンとドキシサイクリンの2剤併用療法を 標準治療である副腎皮質ステロイド治療に追加すること で,心サ症の臨床的有用性を検討することとした.クラリ スロマイシンとドキシサイクリンの2剤併用療法の安全性 に関しては,山口らの自験例で,クラリスロマイシン200-400 mg/日+ドキシサイクリン100-200 mg/日を使用した4 例(その中でクラリスロマイシンは3例で400 mg/日使用) では,薬剤の直接的な副作用は認めなかったため,本試験 では,クラリスロマイシン400 mg/日+ドキシサイクリン 塩酸塩100 mg/日の投与を行うこととした.2剤を同時に 開始すると,安全性評価が困難なため,クラリスロマイシ ンを2週間先行投与し,安全性を確認したうえで,ドキシ サイクリン塩酸塩を開始する試験デザインとした.

期待されること

 抗菌薬の有効性が確認されれば,現在比較的高用量のス テロイド量を,将来減量・中止できる可能性がある.さら にサ症の原因としてのアクネ菌説を支持するものとなり, 抗菌薬治療が難治性のサ症の根本的な治療となる可能性 がある.

結論

 心臓サルコイドーシスに対する新しい治療法として, J-ACNES研究のプロトコールを紹介した.

後治療

 試験治療終了後はガイドライン等に従い,サルコイドー シスに対する通常の治療を実施する.

引用文献

1)Ishige I, Usui Y, Takemura T, et al. Quantitative PCR of myco-bacterial and propionimyco-bacterial DNA in lymph nodes of Japanese patients with sarcoidosis. Lancet. 1999; 354: 120-3.

2)Gerke AK, Hunninghake G. The immunology of sarcoidosis. Clin Chest Med. 2008; 29(3): 379-90.

3)Grutters JC, van den Bosch JM. Corticosteroid treatment in sarcoidosis. Eur Respir J. 2006; 28(3): 627-36.

4)Nagai T, Nagano N, Sugano Y, et al. Effect of discontinuation of prednisolone therapy on risk of cardiac mortality associated with worsening left ventricular dysfunction in cardiac sarcoid-osis. Am J Cardiol. 2016; 117(6): 966-71.

5)Nagayama T, Ishibashi K, Kamakura T, et al. Long time clini-cal course of cardiac sarcoidosis: retrospective cohort analysis in Japan. Eur Heart J. 2016; 37(Abstract Supplement): 1010. 6)Nishiwaki T, Yoneyama H, Eishi Y, et al. Indigenous

pulmo-nary Propionibacterium acnes primes the host in the develop-ment of sarcoid-like pulmonary granulomatosis in mice. Am J Pathol. 2004; 165(2): 631-9.

(6)

7)Asakawa N, Uchida K, Sakakibara M, et al. Immunohistochem-ical identification of Propionibacterium acnes in granuloma and inflammatory cells of myocardial tissues obtained from cardiac sarcoidosis patients. PloS one. 2017; 12: e0179980.

8)Bachelez H, Senet P, Cadranel J, et al. The use of tetracyclines for the treatment of sarcoidosis. Arch Dermatol. 2001; 137(1): 69-73. 9)折津 愈.サルコイドーシスに対する抗菌薬使用経験(全国アン ケート調査より).厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服事 業びまん性肺疾患調査研究班 平成16年度研究報告書.2005: 210-3. 10)平賀洋明,大道光秀,山田玄.サルコイドーシスに対する抗生物 質の効果.厚生省特定疾患びまん性肺疾患調査研究班平成6年度 研究報告書.1995: 174-5. 11)山口哲生,山田嘉仁,田中健介,他.テトラサイクリンによるサ ルコイドーシスの治療.日サ会誌.2008; 28: 41-7. 12)山口哲生,山口陽子,鈴木未佳,他.ドキシサイクリンによるサ ルコイドーシスの治療.日サ会誌.2014; 34: 31-3.

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