C A N C E R 9 (2000), p. 17-20 17
節 足 ら ず な カ
伏屋玲子・渡逢精一 手iJ主されたカニは軽くてカチカチで,いわゆる スベマンだった . 最初の印象はこの程度である . しかし , よく見 るとこのカニは インパク トカfあっていろいろな 思 いをはせらせてくれるのであった . 「スベマン」と 呼 ばれるこのカニは,千葉県に ある東京水産大学坂田実習場地先で1996年8 月28 日 に 採 集 さ れ た 雄 の ス ベ ス ベ マ ン ジ ュ ウ ガ ニ Atergatis floridus である. 当時4年生であった 山 田達也氏が採集した後,乾燥させニスを塗って標 本にしたものである . 彼の甲長は26 .78mm,甲幅 は37. 08mmで,い たって普通の大きさである. ハ サミもいわゆる右優性で、あ り,右は鉛長21. 11mm, 鉛高 1l.35mm,左は錯長20. 17mm,主l
:t高10 .71mmで ある . 何気なく乾燥標本にされてしま った彼は,観察 するとすぐに気づくのだが,右の歩脚が1 本たり ないのである( 同 1 A ) . ふつうならば不幸な彼 はき っと自 切しなければならないほどの事故にで も遭 ったかわいそうなカニですむところである . しかし,ふとひ っ くり返して腹面を見ると ,今度 は足の数よりも気になる 何 か が 目 に 入 札 直 感的 におかしいと感じるのである( 図1 B ). そこに は微妙にゆがんだ胸部腹甲と腹節があり ,それと ともに体が少しゆがんだ彼のお腹があった. こん なに長い前置きがあ ったが,そう ,彼は歩!闘 がl 本欠けていて , しかも腹甲ごと欠けているため全 体もゆがんでしま って いるのだ. したが って 不自 然であるが自然にゆがんでし まっているため ,見 た目には漠然と「なにかがおか しい」としか思え ないのである . そこで,こ んな体で襟本にされて しまった彼のこれまでについて勝手に考えてみ る.│直j
図1 スベスベマン ジュウガニ A 背面 s :腹 面Reiko F'USEYA Seiichi W A T A N A B E: Segm ent loss in
18 節 足 ら ず な カ ー ちゃんと歩けたの7 脚が欠けた状態で歩け たのだろうか. もちろん 歩けたのだろう . 繁殖期 には闘争中に ,ま た静か な生活を好んでいても捕食者に狙われて命からが ら逃げるときに,などさまざまシチュエーション が考えられ,実際自切によって歩胸lが欠けた個体 はときどき見かける. 彼の場合は歩
l
拘lの欠損だけ ではなく ,体に歪みを生じているため全体的にバ ランスは悪かったとは思うが,そのような体勢で も歩行は可能だったろうと想像できる. どの脚が無いの? これは欠損が発見されてからず、っと気になると ころである . 胸部腹甲を観察すると第3歩脚とつ ながる部分から消失している 左の第4歩脚の底 節と 比較して右のそれに当たる部分の位置は異な っている (図 2 ,A ,8 ). 分もご っそり欠損しているのである . 観察できる 腹申とそれぞれの歩脚 の底節を 比較す ると第3, または第4歩脚がなくなっているのではないかと 考えられた . 腹 甲だけ の形態を見比べると第 4 歩 胸lの可能性が高い. それでは 4 つ全部が残ってい る左の歩脚と右の 3 つの歩胸lの長さを比較すれ ば,だいたいの想像がつくのではないかと考え計 測を行った . 計測を行うときはやはりせ っかく作 ってくれた乾燥標本であるため , カニを壊さない よう, しかしながらすべての言十i
J!lJ部位をt
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右統ー できる部分を選んで行った. 表1にそれぞれの歩A
脚の長節 ,J腕節,前節,指節を計測IJした値を示し である. 比較すれば簡単にわかりそうだという考 えは甘く,なんとも不ぞろ いな 結果が/1¥た. それ ぞれの値を 比較すると左の第2,第3歩胸lの各節 はどうも短いような気がする. 第4歩脚よりもこ んなに短くなるのだろうか? とはいえ,左の第3 歩脚と右の3番目の歩脚を比較すると少しずつ値 は異な っていてもパランスがとれているように思 える. 一応,右の3番目の歩脚と左の第4歩脚も 比較すると腕節から指節のそれぞれの長さがどう もうまく当てはまらない. 正常な歩脚のスベスベ マンジユウガニと比較すると ,歩脚が4っともそ ろっている左側では第2,第3の腕節,前節,指 節が短かか った.3
つしかない右側では,1
,2
番目の歩脚がどの脚か特定はできなくてもパラ 表1 スベス ベマンジュ ウガニの左右の歩脚を節ごと に比較 した長さ (mm) 歩 脚 長節 腕節 前節 左 10.08 7.64 6.78 7 .16 2 7.05 5.57 5.48 6.19 3 6.90 5.83 5. 17 5.88 4 7.37 7.43 5.34 6.01 右* I 9.15 7.71 6.84 7 .08 2 8.82 7.47 6.69 6.84 3 7. 13 5.49 4.58 6.14*
才i)j . ,脚については紺脚に近いほうからI11目に需ぢを つけてあるB
図 2 スベスヘマン ジュ ウガニ腹菌 A :正面 から s :後縁から伏屋玲子 . i.度透秤j- -