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経済の観点を取り入れた人物評価学習

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Academic year: 2021

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要旨  本稿は,経済の観点を取り入れた歴史学習の方法を提案することを目的とする。  経済の観点を取り入れる意義は,以下の二点である。  第一は,経済の観点で歴史を観ることで,為政者の政策だけでなく,社会構造をより深く,多面的に捉え ることができる。  第二は,政策を分析,評価するための現代にもつながる見方・考え方,つまり思考の型を身に付けること ができる。  以下の手順で論を進める。まず歴史学習に経済の観点を取り入れることの有効性を述べる。次に学習方法 を示す。そして,時代ごとの実践例を提示する。 キーワード:経済の観点,人物評価,見方・考え方

Ⅰ.はじめに

 本稿は,経済の観点を取り入れた歴史学習の方法を 提案することを目的とする。  次期学習指導要領の改訂に向けて,教科等の枠を超 えた汎用的な資質・能力の育成が重視され,「21 世紀 型能力」1)が示された。また,教科等の学習において は,その本質を捉えた「見方・考え方」の育成が,よ り重視されることとなった。「見方・考え方」とは, 「様々な事象を捉える教科等ならではの視点と,教科 等ならではの思考の枠組み」2)である。  これまでの歴史学習では,各時代の社会構造や社会 問題,その背景の理解に重きが置かれてきた。それは, 歴史を時代ごとに別の枠組みで学習するものであった。 そのため,そこで獲得した見方・考え方を,他の歴史 的事象に応用することが十分ではなかった。視点であ り,思考の枠組みである「見方・考え方」は,獲得す るだけでなく,応用することが求められる。  そこで,本稿では,経済の観点を取り入れた人物評 価学習を提案する。この学習には,2 つの意義がある。 第一は,特定の時代を超えて利用可能な分析枠組みを 用いて学習することで,獲得した見方・考え方を他の 場面に応用することができる。第二は,経済の観点を 取り入れることで,社会構造をより深く捉えることが できる。  以下の手順で発表を進める。まず,「21 世紀型能 力」において求められる資質・能力を示す。次に,そ れらを身に付けるための学習の方略を示す。そして, 学習の具体を提案する。

Ⅱ.求められる資質・能力

 「21 世紀型能力」では,思考力を中核とし,それを 支える基礎力と,使い方を方向付ける実践力の三層で 構造化されている。石井氏は,各層と認知システムの 関係を図のように示している。歴史学習において,見 方・考え方を身に付けるには,各時代で学習した概念 的知識を,他の事象に応用することが求められる。  井沢元彦氏は,日本の歴史学について,専門とする

経済の観点を取り入れた

人物評価学習

The Journal of Economic Education No.36, September, 2017

Learning of Evaluating Historical Figures in Terms of Economics

KAJITANI, Masahiro

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範囲を限定的に研究するため,他の時代の出来事と比 較し関連付けて考える点に課題があるため,歴史を十 分に読み取れていないと指摘する。歴史学習において も同様に,時代を超えて比較し,関連付けて考えるこ とで,歴史をより深く学ぶことができ,応用可能な見 方・考え方を育成することができる。  発表者は歴史学習において身に付けるべき「見方・ 考え方」を,以下の 2 つとする。第一は,その時代固 有の,社会構造や社会問題を分析するための見方・考 え方である。第二は,時代を超えて利用可能な,社会 構造や社会問題を分析するための見方・考え方である。 第一はその時代を深く理解するためのものであり,第 二は他の事象や現代にも応用可能なものである。

Ⅲ.学習の方略

 本項では,前項で示した歴史学習で求められる資 質・能力を育成するための学習方略を示す。  求められる資質・能力を育成する方略として,歴史 学習に経済の観点を取り入れ,生徒が学んだことを活 かして歴史上の人物を評価する学習を提案する。各時 代の人物の政策を,経済・福祉・軍事など,観点別に 評価する。この学習において身に付けられる「見方・ 考え方」は,現代の政党の政策を評価し,意思決定す る思考の枠組みと合致する。  経済の観点を取り入れた人物評価学習は,以下の手 順で行う。 ①資料の読み取りなどから,当時の時代背景や人物 のしたことを理解する。 ②経済を含む複数の観点から,人物を 5 段階評価し, 理由を記述する。(表 1) ③人物の総合評価を,5 段階評価し,200 字で理由 を記述する。 ④クラス全体で交流する。 表 1 観点別評価表 観点 採点 理由 経済 軍事 外交 その他 (筆者作成)  人物の政策を,経済,軍事,外交など,観点別に評 価する。各観点の得点を通知表と同じように 5 段階で 評価し,その理由を記述する。次に,武士・貴族・商 人など,立場別に 5 段階で評価し,その理由を記述す る。そして,総合評価を 5 段階で表し,理由を 200 字 程度で記述する。先に観点別・立場別に記述している ので,その記述を利用することで負担感なく記述する ことができる。現代にも通じる観点から歴史人物を評 価することで,歴史を現代の視点で捉えたり,現代の 政策の判断に応用したりする力を育成できる。  石井氏の示す,認知システムの各階層に,人物評価 学習の方法を当てはめると,表 2 となる。まず, 「知っている・できる」階層で,個別の資料から情報 を読み取ることを通して,読解の技能と歴史的な個別 の知識を獲得する。次に,「わかる」階層で,複数の 図 能力の階層性を捉える枠組み(石井英真『今求められる学力と学びとは』p.22 を引用)

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資料から情報を選択し,それらを比較・分類関連付け る方略を身に付け,各時代の特徴を理解し,概念的知 識を獲得する。そして,「使える」階層で,獲得した 概念的知識を応用し,経済・福祉・軍事などの観点別 に人物を評価する。  経済の観点を取り入れた人物評価学習の意義は,以 下の 2 つである。  第一は,経済の観点で歴史を観ることで,為政者の 政策だけでなく,社会構造を捉えることができる。社 会は経済を抜きには語れないものであり,経済の観点 を取り入れることでより当時の社会を深く観ることが できる。人々の選択には,経済的な要因が大きく影響 する。そのため,経済の観点から歴史を考え,人物の 行動・判断の理由・背景を捉えるようにする。また, 経済の観点を取り入れることで,為政者の歴史に留ま らずに庶民や社会構造にまで迫ることができる。歴史 学習では,為政者の政策や判断が学習の中心となるこ とが多いが,経済の観点を取り入れることで,当時の 社会や庶民の生活を多面的に捉えることができる。  第二は,政策を分析,評価するための見方・考え方, つまり思考の型を身に付けることができる。現代にも つながる観点で歴史を観ることができる。現代の政策 を判断する場合でも,経済の状況や経済政策は判断に 欠かせないものである。歴史学習においても,同様の 枠組みで社会を捉えることで,「見方・考え方」を養 うことができる。 表 2 認知システムの各階層における学習方法 階層 内容知 方法知 使える 【見方・考え方】 人物評価学習(獲得した概念的知識を応用 する)観点別に人物を評価する。 わかる 【概念的知識】 各時代の特徴を理解し, 概念的知識を獲得する。 【方略】 複数の資料から情 報を選択し,それ らを比較・分類関 連付ける。 知っている できる 【事実的知識】歴史的な個別の知識を 獲得する。 【技能】 個別の資料から情 報を読み取る。 (筆者作成)

Ⅳ.学習の具体

 本項では,2 つの実践事例をもとに,学習の具体を 示す。経済の観点を取り入れた人物評価学習において 取り上げる人物は,表 3 の通りである。ここでは,平 清盛と徳川吉宗の人物評価学習を提示する。 表 3 取り上げる人物一覧 時代 人物 経済に関する内容 平安時代 平清盛 経済重視の政策によって権力を掌 握したが,飢饉によって農業重視 の源氏に敗れた 戦国時代 織田信長 戦国大名の領国支配を比較し,経 済重視の政策により,武力強化, 領国民の支持につながった 江戸時代 淀屋常安 河村瑞賢 など 上方や江戸の商人の活躍により, 現代につながる経済・流通システ ムができた。 江戸時代 徳川吉宗 田沼意次 松平定信 水野忠邦 財政状況の悪化を受け,幕政改革 が行われた。市場経済が発展して いたにもかかわらず,幕府の政策 の多くは農業重視政策であったた め,根本的な改革にはならなかっ た。 明治時代 田中正造 伊庭貞剛 富国強兵,殖産興業政策で,欧米列強に追いつこうとする状況で, 産業の発展とともに公害問題など の問題も発生した。 (筆者作成) 1.単元「源氏と平氏,明暗を分けたのは?」(詳細 は,別紙①参照)  歴史学習における源平の合戦は,『平家物語』の影 響を大きく受けている。『平家物語』は,盛者必衰の ストーリーとして描かれ,栄華を誇った平氏が衰退し ていく流れとなっている。しかし,一時日本のほぼ半 分の領地を支配した平氏が,そのわずか 5 年後に滅び たのはなぜだったのか。この問いに十分に迫ることは できていない。そこで,経済の観点で当時の社会構造 を読み解く。  平安時代末期は,院政のもと,政府が宋との貿易を 管理する形式で行われていた。政府は,この貿易に対 して積極的ではなく,利益も少なかった。平清盛の父, 忠盛は,宋との密貿易によって珍重品を手に入れ,そ れを上皇に貢ぐことによって信頼を得て,豊かな知行 国の国司に任命され,富と地位を高めていった。後を 継いだ平清盛は,日宋貿易に力を入れ,宋商人中心の 博多でなく,平氏の力の及ぶ神戸に大輪田泊を整備し た。そして,宋銭を輸入し,貨幣経済を広めた。貨幣 経済が広まると,日本で一番宋銭を持つ平氏の力は強 大なものとなった。  しかし,養和の飢饉によって西日本が大打撃を受け, 不作の米の価値が高まり,宋銭の価値が暴落した。平 氏の富は減少し,さらに食糧不足も深刻であった。そ こに,平氏打倒で結束した農業重視派の源氏・貴族・ 仏教勢力が兵を挙げ,商業を重視した平氏は敗れた。  源平の合戦を,単に源氏と平氏の争いとしてだけで

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なく,経済政策の違いによる諸勢力の対立と捉えると, 当時の社会構造をより深く捉えることができる。 2.単元「吉宗は名君か」(詳細は,別紙②参照)  江戸時代は,近年の研究により時代像が大きく変化 している。これまでの江戸時代の時代像は,①身分制 のもと,庶民は支配される存在として搾取され,苦し い生活を送っていた時代,②幕藩体制,鎖国体制に よって,社会は未発達の遅れた時代,というもので あった。しかし,近年の研究により,①武士と庶民の 身分差はあったものの,庶民は多様な職業生活を営み, 大きな力をもつものもいた,②商業,流通システムの 発達により,経済活動が活性化され,先物取引に代表 されるように当時の最先端の経済システムであったこ とがわかっている。  このような時代背景の中,幕府の政策は,次のよう に捉えることができる。米による徴税という欠陥,そ して幕府の徴税権が全国に及んでいなかった(多く見 積もっても全国の 4 分の 1 程度であった)という欠陥 により,直轄地の金山の枯渇以降,深刻な財政難に陥 る。幕府は,この課題に対して,根本的な解決を行う ことができなかったことが一因となって崩壊すること になるが,江戸時代を通じて何度も改革が行われた。 これらの財政難への対策として,幕府の政策を比較し, 観点別に評価する学習を行うことで,時代固有の社会 構造を理解し,現代にも通じる観点で歴史を捉えるこ とができる。

Ⅴ.おわりに

 本発表では,経済の観点を取り入れた人物評価学習 を提案した。  経済の観点を取り入れることで,当時の社会構造を より深く,多面的に捉えることができる。また,経済 の観点を取り入れることで,各時代で学んだ概念を応 用して,現代に応用することができる。  課題は,以下の 2 点である。第一は,歴史学習全体 を通して,どの時代のどの人物を取り上げることが妥 当であるか,また取り上げる経済の観点が妥当である かの吟味が不十分な点である。第二は,経済の観点を 取り入れた人物評価学習によって,真に応用可能な見 方・考え方を獲得できるのか,実証できていない点で ある。これらの課題は,今後の発表者の研究に委ねた い。 註 1) 石井英真『今求められる学力と学びとは』日本標準, 2015 年, 2) 教育課程 社会・地理歴史・公民ワーキンググループ (閲覧日 2016.7.20) http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/071/ siryo/1371619.htm 主要参考文献 [1] 網野善彦他『「商い」から見た日本史』PHP 研究所,2000 年 [2] 井沢元彦『逆説の日本史 15 -近世改革編-』小学館, 2012 年 [3] 石井英真『今求められる学力と学びとは』日本標準, 2015 年 [4] 大石学『規制緩和に挑んだ「名君」徳川宗春の生涯』小 学館,1996 年 [5] 鬼頭宏『人口から読む日本の歴史』講談社学術文庫, 2000 年 [6] 国立教育政策研究所『資質・能力―理論編―』東洋館, 2016 年 [7] 山口慶一『気象と食糧から見た 21 世紀版日本の歴史読む 年表』アイシーアイ出版,2010 年 [8] 山田真哉『経営者・平清盛の失敗』講談社,2011 年 [9] R. J. マルザーノ他『教育目標をデザインする』北大路書 房,2013 年

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別紙①単元「源氏と平氏、明暗を分けたのは?」 1.『平家物語絵巻』の並べ替え  『平家物語絵巻』の各場面を、ストーリーに合うように並べ替えよう。 『平家物語』のストーリーを通して、歴史の大まかな流れを捉えさせる。「『平家物語』ストーリー」に合うよう に、平家物語の絵を並べ替える。時間や状況によって場面数は調整する。 『平家物語』ストーリー 2.平氏は、どうやって力をつけたのか。  清盛の父、忠盛はどうやって上皇に気に入られたのだろう?  宋との貿易を重視していた忠盛は、貿易で得た珍しい品物を上皇に貢いで気に入られ、上皇のそばに仕える存 在となった。そして、豊かな国の国司に任命してもらい、富を蓄積した。  平氏の全盛期の領地(知行国)を色塗りしよう。  平氏は 32 か国を領地とし、全国のほぼ半分を支配したことを、作業を通して実感する。  平清盛は、どうやってこのように力をつけることができたのか。教科書から探そう。  朝廷の権力争いに加担する中で、武士、特に平氏が力をつけてきたこと、そして、日宋貿易によって富を得た ことを教科書から確認する。  当時の日宋貿易では、次の工程をだれが行っていただろう? 宋から輸出する人 → 運ぶ人 → 日本に輸入する人 ? → ? → ?  正解は、すべて宋商人である。当時の貿易は朝廷が独占し、規模も小さなものであった。朝廷はリスクを避け るために、すべての工程を宋商人に任せていた。そのため、一番利益を得ていたのは宋商人である。忠盛は朝廷 に見つからないように密貿易によって珍重品を得ていた。 清盛は、日宋貿易の仕組みを変えるために、大輪田泊を修築し、博多の宋商人を介さずに取引し、自分たちが利 ①平家の栄華 戦での活躍と経済力によって、平 清盛は太政大臣となる。平家一 族は朝廷の官職を独占し、栄華を 誇った。 ⑥源氏の猛攻 源氏の勢いはすさまじく、巻頭か ら攻めのぼり、京都に近づく。 ⑦都落ち 源氏の猛攻を受け、平氏は都を離 れ、西へ逃げる。 ②安徳天皇、福原を都に 力をつけた清盛は、独断的な政治 を行う。自分の孫である安徳天皇 が即位し、都を福原に強引に移し た。 ⑤清盛死去 清盛が病で急死する。遺言は、「頼 朝の首をはねてわが墓の前へ置き なさい。」であった。 ⑧一ノ谷の戦い 源義経ががけを馬で一気にかけお りるという奇襲をしかけ、平氏に 圧勝する。平氏は、さらに西に逃 げる。 ③源頼朝挙兵 源氏のリーダーで、伊豆に流され ていた源頼朝が、平家打倒をかか げて挙兵する。 ④富士川の戦い 平氏 VS 源氏の初戦。平氏は水鳥 の羽音を敵の奇襲とかんちがい し、逃げ去ってしまった。 ⑨壇ノ浦の戦い 源平最後の戦い。とうとう負けの 決まった平氏。幼い安徳天皇と女 性たちが次々と海に飛び込んだ。

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益を得られるようにした。また、清盛は宋銭を大量に輸入し、貨幣経済を日本に浸透させようとした。物々交換 から貨幣経済に変わることで、便利で商業が活性化され、富を蓄積できるようになった。また、貧富の差が拡大 し、一番貨幣を持っている平氏の栄華が絶対的なものになった。 3.経済政策をめぐる争い  源氏と平氏、どちらに味方しただろう?  武士、貴族、商人、農民が、それぞれどちらに味方したかを考えさせる。正解は、下の通りである。実際には このように単純に分けられないが、政策を理解しやすくするために単純化している。  源氏…(農業を重視)武士、貴族、農民  平氏…(経済を重視)商人  平氏の政策は、商業重視の政策であった。そのため、商人が賛成した。しかし、米や絹を中心とする物々交換 のシステムで利益を得ていた人々は、平氏の政策に反対した。貴族や寺社、在地領主たちである。そして、農業 を重視するこれらの勢力の代表として、源氏が兵を挙げた。源平の合戦は、単なる源氏と平氏の争いではなく、 経済政策をめぐる争いも含んでいた。そのため、農業重視政策の代表者である鎌倉幕府は、土地を仲立ちとした、 農業重視の政策をとっていくことになる。 4.平氏滅亡の謎  平氏が大敗を喫した富士川の戦い。『平家物語』では、平家の臆病さが原因と描かれているが、本当の原因 は何だったのだろう?  正解は、西日本の大飢饉である。当時、西日本は大飢饉であり、まともに兵力を確保することができなかった。 大飢饉の際には、貨幣の価値が下がり、米の価値が上がる。貨幣を大量に持っていた平氏には大打撃であった。 一方の東日本は豊作であり、こうした背景が影響した。一説では、源氏 4 万騎に対し、平家は 2 千騎の戦力差が あったと言われている。  平氏は、全国のおよそ半分の領地を支配した 5 年後に滅亡した。滅亡の一番の原因は何だったのだろう?   1.武力が弱かった(源氏が強かった)から。   2.武士の支持を得られなかったから。   3.経済政策に失敗したから(飢饉を含む)。   4.清盛の死が早かったから(後継者問題)。   5.その他  学習したことを用いて、平氏滅亡の原因を考える活動である。まず、個人で意見を決める。次に、グループで 議論し、意見を 1 つに決める。そして、グループの代表者がパネルディスカッション形式で議論し、最後に一番 説得力があったのはどの意見かを挙手、もしくは投票する。社会背景を理解した上で、歴史的事象の因果関係を 解釈し、自分の意見を構成するための学習である。 5.平清盛の政策を評価しよう  平清盛の政策を、観点別、立場別に評価しましょう。   1.観点別評価(5 段階評価+その理由を記述)(経済、軍事、外交など)   2.立場別評価(5 段階評価+その理由を記述)(武士、貴族、商人など)   3.人物の総合評価(5 段階評価+その理由を 200 字程度で記述) 表 1 平清盛の観点別評価(例) 観点 採点 理由 ①経済 5 貨幣経済を実現したから。 ②軍事 3 保元の乱や平治の乱に勝って力をつけたから。 ③外交 4 日宋貿易を整えたから。 (筆者作成)

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別紙②単元「吉宗は名君か」 1.大奥の○○をリストラ?  徳川吉宗の肖像画を提示し、次のように問う。  徳川吉宗は、幕府の財政を立て直すために、大奥の大リストラを実施しました。リストラされたのはどんな 女性?  正解は、美人な女性である。倹約政策の一環として実施された。大奥を出ても働ける女性をリストラした。子 どもが興味をひくネタから、徳川吉宗の政策のポイントを捉えさせる。 2.資料から時代背景を捉える  徳川吉宗が行った政策を、教科書から探しましょう。  目安箱や公事方御定書、農業の奨励など、徳川吉宗の主な政策を、教科書の記述をもとに整理する。  徳川吉宗の時代、人口の推移はどのように変化しましたか。  人口増加が止まり、人口が停滞し始める時期だった。また、金の産出量が減り、景気が悪くなっていった。徳 川吉宗は、このような状況を受けて、庶民を大切にした政策(福祉政策)を行い、倹約に努めたことを確認する。 3.目安箱に投稿された内容とは・・・  目安箱には、幕府の政策を批判するものもありました。その内容はどんなものだったでしょうか?  元紀州藩士の浪人(という説が有力)の山下幸内は、次のような内容を投稿した。 資料 1 山下幸内の目安箱への投稿内容 天下を治める人が、金銀を集めることに精を出し、金銀が将軍のもとに集まったならば、天下の万民は皆困 窮してしまう。(中略)贅沢品や無益の物を買うのは、裕福な者であり、困窮者ではない。裕福な者が贅沢 品を買うから金銀が社会に出回るのであり、これを禁止すれば、職人や商人はなにをつくっても売れなくな り、金は裕福な者のところに溜まるばかりである。金持ちから金銀を社会に流通させ、経済を活性化させる べきである。 (大石学『規制緩和に挑んだ「名君」徳川宗春の生涯』小学館、1996 年をもとに、筆者作成)  山下幸内は、徳川吉宗の倹約令を批判し、経済を活性化させるべきだと主張した。 4.徳川宗春との政策比較  徳川吉宗と同時代の尾張藩主であった徳川宗春の肖像画を提示する。  徳川宗春は、徳川吉宗と正反対の政策を行い、小都市であった名古屋を発展させた。徳川宗春の政策を資料 から読み取りましょう。  ・芝居見物の自由、芝居小屋の常設を認める。  ・藩士の門限の廃止  ・遊郭の自由営業  ・自身が華美な服装、行列で積極的に商業地を訪れ、積極的に消費する。  徳川宗春は、商業重視、規制緩和の政策で、名古屋を大都市に発展させた。  徳川吉宗と徳川宗春、どちらの領地に住みたいですか。  福祉重視の徳川吉宗の領地がよいか、経済重視の徳川宗春の領地がよいかを考えることで、それぞれの政策を 庶民の視点から考えさせる。

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5.徳川吉宗の政策を評価しよう  徳川吉宗の政策をダイヤモンドランキングで表しましょう。  徳川吉宗の政策を順位付けし、その理由を記述させる。その後、グループで交流する。  徳川吉宗の政策を、観点別、立場別に評価しましょう。  1.観点別評価(5 段階評価+その理由を記述)(経済、福祉、リーダーシップなど)  2.立場別評価(5 段階評価+その理由を記述)(武士、庶民、商人など)  3.人物の総合評価(5 段階評価+その理由を 200 字程度で記述) 表 1 徳川吉宗の観点別評価(例) 観点 採点 理由 ①経済 1 経済を活性化できず、財政を立て直せなかったから。 ②福祉 5 庶民のことを考えて、様々な政策を行ったから。 ③リーダーシップ 4 改革のためのたくさんの政策を実施したから。 (筆者作成)

参照

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