50
周 年 記念
シ
ンポ
ジ
ウ
ム「
半
世紀 展 望
一
デ
ザ イ
ン
に
何 が
可
能
か 」
The
SOth AnniverSary MemorialSympOsium
“
AProspect ot Half a
Century…−What
canDESIGN
do ?”
【
第
一
部 】 OrganiZer 黒 川威
人 氏panelist
【第二部 】 organizerpanelist
日本 デ ザイ ン学 会 副 会 長、
金沢美 術工芸 大 学 教 授 坂 村健 氏 :東 京 大 学 教授 竹 村 真
一
氏東北芸 術工 科 大 学 教 授 原田 昭 氏 筑 波 大 学 教 授 川
崎
和男 氏 :名 古 屋 市 立 大 学 教 授 河 北 秀 也 氏 :東 京 藝 術 大 学教 授 栄久庵祥二氏 :日本 大 学 教 授 黒川威
人 氏 :日本 デザイン学会副会長、
金沢美 術工芸 大学教授 金 明錫氏 韓国科 学 技 術 院 教 授 原 田
昭 氏 :日
本
デザイン学 会 会長、
筑 波 大 学 教 授 川 崎 和男 氏名 古屋
市
立大 学 教 授 河 北 秀 也 氏東 京
藝
術 大 学 教 授一
パネ リストか らのメ ッセー
ジー
ユ ビキ タス・
コンピュー
テ ィングの立場から 坂 村 健 ユ ビキ タスは 近 代ラ テ ン語か ら来た英語で 「(神は)あ ま ね く しろ し めす」 とい う意 味の宗教用 語。
それ に 「コ ン ピュー
ティ ング」 をつけて 「コンピュー
タ の能 力があらゆ る場 所に浸 透し ている」 とい う意 味に な る。
すで に直 径 1 ミ リ以下の超 小型コ ンピュー
タ を、
無線で電 力 を送っ て動 作さ せ ること も可 能。 超 小 型コ ンピュー
タ が あ ら ゆ る とこ ろに組み 込 ま れ、
そ れ らが ネッ トワー
クによ り交 信し、
分 散協調して人々 の生活 を 影 か ら攴える一
そ うい う、
まった く新 しいパラダイム の情 報シス テ ム が出現し よう と してい る。
この よ う な情 報 環 境 は従 来の コ ン ピュー
タシ ステムを 越えて よ り リ ア ル ワー
ル ド に密着して いる た め、
よ り多く の ものに影 響を与えること が 考 え ら れる。
ではデザインには どの よ う に影 響す るのか
。
ユ ビキタ ス・
コ ンピュー
ティ ングのキー
ワー
ドは 「lnvisible:イン ビ ジブル (見 えな く なる)」 そ し て 「Context Awareness : コ ンテクスト・
アウェアネス (状 況を意識する こと)」。
コ ンピュー
タ は見え な く な る一
人間に操 作 を意 識 させず に最 適のサー
ビス を行え る。
多くの機 器で操 作 部 が 簡 単 になる ことは ト分 考え ら れ る。
複数の機 器 や 設 備が連 携 するの で一
つ の モ ノ で 機能を完結す る必 要 が な くなる。
む しろ それ ぞ れのモ ノ は単能化し そ の役 割に特 化 する。
ユ ニバー
サ ル・
デ ザイ ン につ いて も新しい解 決 法が可 能になるだろ う。
マ ル チプルの否 定といっ た側 面も考 え られる。
今回の シ ンポジュ ウ ム で はエ ビキタス・
コ ンピュー
ティ ングが与え る影響、
そして どん な 新 しい 口∫能 性が あ る の か 述べてみ たい、
文 科 人 類 学の立 場 か ら 竹 村 真一
た と え ば20世 紀の産 業と文化の象 徴 と しての“
ク ルマ”
を考 えてみよ う。
いま、
そのデ ザイ ン 課題の基軸は、
いか に (HOW )よ い ク ル マをデザイ ンする か ?よ り も、
今後の社 会に おい て ク ルマ とは何か (WHAT )?ク ルマ のデザ インでな く“
ク ルマ 社 会”
をどうデ ザ インするか ? とい う ことに移 行しつ つあ る。
第
1
に、
ク ルマが相互 にネッ トワー
クで接 続 され、
都 市 的 有 機 体の一
.
・
細胞と して協調・
連 動 する よ うなコ ン テ クス トに おいて は、
ク ルマは他のクル マや道 路 環境か ら切り離 して、
単体と して設 計 すべ き もの では ない。
第2に
、
こう し た共 時 的なフェ イズで の人 工環境のネットワ
ー
ク 化 と同 時に、
LCM (LifeCycle
Management ) や部品
・
素材の トレー
サビリティといっ た、
通 時 的なフェ イ ズに お け る社会の物 質 循 環の神経 系 化 とい う課 題がある (も ち ろ んエ ネ ル ギー
の生産 / 消費にお け るLCM もある)。
第
3
に、
そ う し た全 体 観の 可視 化とい う テー
マ も含め、
ク ルマ がいか に私た ちの社 会像と世 界 経験 を“
ブロー
ドバ ン ド化”
するッー
ル と な り う る か ?ク ル マ という まだ幼 年 期の道 具が、
これか ら 人 間 に とっ ていか なる メディ ア と し て進化 し う るのか ?一
単に便 利なだけの現 行のカー
ナ ビ や、
ブラックボックス的な 「自動化i 「安 全 化」 の ビ ジョ ンをこえて、
生き た“
社 会 経 験のデ ザイ ン”
とい う視 点 か8 SPEC匸AL ISSUE OF JSSD Vol
、
12No.
12004 デ ザ イン学研究特集 号ら の ク ルマの再定義 (メタ
・
デザ イン) が 必 要 だろう。
それ は当然、
「人 間」 の側に何を残す か ?人間とい う主 体 を 人 間一
道 具一
環 境の トー
タル システムのな か でいか な る存 在 と して位 置づけ るのか? とい う第4
の根 本 的な課題 を逆照射する。
「人間中 心 主 義」 の顔 をした 「人 間 蔑 視」 と い う近代文明の本質を超 えてい く強い思 想 と意 志 が、
い まデザ インに求め ら れ ている。
そして第5
に、
クルマが一
種の“
メディ ア スー
ツ”
と し て ロボッ ト/サイボー
グ技 術の延 長で構想さ れ る時、
そ の 最 前 線におい て (機 械 技 術 が 人間と共 生し う る柔らか さ と 強さ・
適応性を求め る過 程で) 必 然 的 に ゲノ ム科 学 や 再 生 医学と収斂し て く る口∫能性がある。
それは単 にハー
ドウエ ア と ウエ ッ トウエ ア の融解に とどま らず、
よ り根 本 的な モ ノ づ く り (人工物デザイン)のパ ラダイム転換を予感 させ る。
実際、
“
分解し たクルマ のバックミラー
1個 からクルマ 全体を再生し う る”
よ うな 魔 法を当 た り前に やっているの が、
「生命」 と い う超 機 械の本 質 だ (そ れ を 可 視化し た の が クロー
ン“
ドリー”
)。 そう した 発生的 /創発 的パ ラダイ ム がモ ノづ く りの世 界に浸 出し て く る時 代に は、
人 間の 「デ ザイ ン的 知 性」 の あり方 を 再 測 量せ ざる を得 なく なる はず だ。
と もあれ、
ク ルマは一
つ のシ ンボ リックな例にす ぎない が、
これら5
つのメタ・
デザイン の課 題 が、
今後あ らゆる 領 域で顕 在化してくることは 間違い な いだろ う。発 表で は、
こうしたビ ジョ ンを踏 まえつ つ、
む しろ具 体 的にいま私 た ち が 何 を し うるか、
私 自身の さ さや か な 実 践 例 を紹 介 しつ っ 話 して みたい。
デザイン学の立 場から 原田 昭 人 間は、
理 性 と感 性を併せ持つ存 在である が、20
世 紀 ま で は、
理性を は た らか せ て自然 の中に潜む ルー
ル を発 見 する自然 科 学 技 術の推 進に総 力 を あげてき た。一
方 現 代 日 本では、
産 業シス テムが 疲 弊し閉塞 感に覆 われ ている。
そ の一
因 は、
情報、
技 術、
物 質が人 間の 「こ ころの豊か さ」 に結びつい て いない事にある。
いか に高度 な情報戦 略 と科 学技術を駆使して生産さ れ た 人 工物も 人間の感 性が それを 受 け 入 れ な ければ購 入されず、
人 間 を 満 足さ せ る事は出 来 ない。
現 代 社 会の産 物 は、
人 間の感 性 を 満 たさないが 故に 人 間 に ス トレ ス を与 えて い る もの も少な く ない。
こ のよ う に、
現 代 社 会の抱 える諸 問 題 は、
従 来のよ うに細 分 化さ れ、
専門的に特化 した 分 野のみによっ ては な か な か 解 決 策が見 出せ な い事が多く なって き た。
こ のよ うな 問 題 を解くデザ インの確 立の た め に は、
これ までのデ ザ インのよ うに、
造 形 面での創 造 力のみ で は対 処で きない。 デザイン学が、
社 会 的 問 題の関 連 領 域 間の横断型 研究協 力体 制のも とに、
社 会や 人間の関 連 問 題に協 同して取 り組 む 必 要が あ る。
、
現代 の 日本が直面する産 業の疲 弊 やこ こ ろ の 閉塞 感は、
情 報、
技術、
物質が人間の 「こ ころの豊 か さ」 に結 びつ いていな い事に起 因し て お り、
こ れ ら を打開するデ ザイ ン学の確 立 のため に も、
人 間の ここ ろの働きや感性発現のメカニ ズム をデザイン実 践 者 が 知る事が求め られ て い る。
現 代の諸 問 題 を解 決 するための専 門 分 野を横 断す る 共通 基 盤技術に は 「デ ザイ ン学」 以 外 に も 「感 性 科 学」 「モデ ル学」 「設 計学」 「制 御科 学」 「シ ス テ ム学」 「認 知 科 学」 「広 義の情 報 学」 「技 術 倫 理」 な ど が あ る。21
世紀に おいて はこ のよ うな 基 盤 技 術と し ての デザインが期待さ れ て い る。
これらの共 通 基 盤 技 術 を 総 称して 「横 断 型基幹科学」 と よ ぶ。
上述の趣 旨に沿っ て これか らのデザ イン教 育 プログラ ム と し て、
これ ま での縦 割り型専 門教育と 並 列 し て、
自然科 学 や 人 文 科 学の専 門 的 知 識 と技 術 を 分 野 横 断 的に学 生に修 得さ せ、
人間・
自然・
社 会・
環 境・
産 業にお ける複 雑 な技 術課題を発見し解決に導く た めの全く新しい志向の横 断型 基幹教育プログラ ム を提案し た い。
こ れ に よ り、
共 通基盤 技 術 を提 供して、
異 種 分 野を横 断し、
クロ スディ シプ リ ナ リー
な視 点 か ら、
新 た なソリュー
ションを導 き 出す 能 力 を 持った 人 材 を 産 学 連 携 して育 成 し、
人 間 を 中 心 と し た産 業・
社会を実現すること が で き る。
プロダク トデ ザインの立 場か ら 川 崎 和 男 デザイ ン は、
手法で あ り実務で あ り、
そ し て 思想の表 現で ある。 しかし、
わ が 国におい て、
デザイ ンとい う職 能 は、
「欲 望を刺 激 する装 置」 と して、
職 能の成 立 と と もに、
産 業 経 済の領域で の効 用 と効 果を求め られて き た。
私 自身も、
わ が 国 のデ ザイ ン教 育に おいて、
「産業美術 学科」 と い う実 務 学 を身体 化さ せ ら れ てき た 世 代である。 果 たし て、
わが 国 は 「デザインで豊 かさを築いてき たの だろうか」 というこ とを思い起こされる状 況 下にある。
ま して、
時 代は、
工業 社 会から情 報 社 会へ と大 きな 変 革 を遂 げてしまった。
あ らためて、
私 た ちは職 能 と してのデ ザイ ン、
教育と し てのデザ イン、
社会運動と し てのデザイ ン、
学 問と して のデザ イン、
思想と し て のデザ イン を再考し な け ればな らない。
私は、
デザ イナー
と して、
メー
カー
のイン ハウスデ ザイ ナー、
ロー
カ ル か ら の活 動、
伝 統工芸へ のデ ザ イン導 入、
様々な企業でのデザイ ンコンサ ル タン ト、
コ ンピュー
タに よ るデザ イン、
そ してデ ザイン教 育、
デザイン研 究という 立場での経 歴 というコン テクス トで、
これ か らのデ ザイ ンデ ザ イン学 研 究 特 集 号 SPECtAL 正SSUE OF JSSD Vo1
.
12No.
12004 9一
を概 観で き る と考え ている
。
特に、
デ ザイ ン教 育と研究に 関 し て は、
他の先端 的学 問 領 域と の学 際 的な 関係に よ り、
新しいデ ザイン学の可能 性 を再 考 しな けれ ば なら ない と実感し て い る。
それ は、
これ まで のデザイ ン領 域を逸 脱 すること に な るだろ う。
これ まで のよ う なプロ ダク ト系、
ビ ジュ ア ル系.
環 境 系 な どの区分は時 代 遅れ で あ る。
お そ ら く、
私は次の よ う な 新 た な 革 新に対 応で き う るデ ザイン教育を再 編さ ら に は創 成し な け ればな らないと 提 案 したい。
まず、
コ ン ピュー
テ ィング技 術、
これ も ノイマ ン型 から 解 放さ れ た 人 工知能構築へ のデザ イン参 画、
さ ら に はナノ テ クロジー
か ら遺 伝 子、
バ イ オ、
人工知 能な ど先 端 技 術と の学 際的なデザイ ン学が求め られ な け れ ば な ら ない。
また こう し た世界での空 間論は、
すで にユー
ク リッ ド幾 何 学 的 な 乎 法 か ら位 相幾何学での空間 論で、
新た な形 態 論 や 身体 論をデザ イン に取り込ま なけれ ば な ら なくなる と予 測して いる。
し か し な が ら、
もっ と も深 刻と なる問題は.
エネルギー
問 題、
宗 教と民 族 文 化 問 問 題、
人口問 題 な ど国 際 的 な 政治 とデ ザ インとの関係 学の構 築も 重要と なるはずである。
人 間 は、
誰も が十 分に心 豊か な 生涯を 生 き抜 き たい。
地 球と い う場での幸 運かつ幸 福である統 合 的 な 生 と死 を 見つ め な け ればな らないだろう。
私た ち は さ ら に革 新 的かつ共 有で きるデザイン学を創 出 す る 立場で あ ることを 本 学 会50年の経 緯 と歴 史から、
次 世 代デザ イン学へ の方 向 を確 認しあいたい もの である。
グ ラフィ ックデ ザ イン の立 場 か ら 河 北 秀 也500
年に一
度の大 転 換の時 期 を、
我々はつ いに迎 えた よ うだ。
後ちょ とで、
何も か も が過 去の前 例に関 係な く大き く変わ る だろう。
そ ん な時 代に、
体 制に)r「頁応しなが らの技 術 者 的 態 度のデザインな ど、
な んの意 味 もない。
人 間の存 在の根 本か ら、
発 想し なければ、
何も生れ ないだろ う。
最 近の 口本に話をするな ら ば、
日本はこ の50 数年間 間 違っ た考え で国 を作っ てき たの では ないだろうか。
産 業 重 点 政 策とい うのが、
凵本の国家 方 針 だが、
こ の方針ですべ て の ものが 組 み 立 て られ て き た。
教育も 政治も街も、
デザ イン教 育 ももちろ ん そ うだ。
日本で行わ れ たデザイン教 育 は、
本 来のデザイン教 育ではない。
我々が 受 け たデ ザ イン 教 育は産業重点 政 策の国 家 方 針の も と の、
産 業 デザイ ン 教 育で あ る。
しか し、
日本と 同 じ よ う に戦争に負け た ドイツ (旧西ド イツ)の国家 方 針 は 「豊かな 国民 は 国家の財産である 」だ。
この方 針 で すべて の もの が組み立て られた。
1970 年 代に は、
教 育も 医療も福 祉も国 民の大部 分 が 満 足で き る、
と答lU SPF
.
CIAL ISSUE OF JSSD Vol.
12No.
12004 デ ザ イン学研究 特集号える まで完 成 する
。
いくつ かの都 市に省月:
や役 所を分散さ せ、
食料や花 な どは その都 市の近郊か ら 調達す る。
一
方凵本は産 業 効 率を考え、
巨 人都市東京にすべ て を集 中さ せ、
川 を 高 速 道 路で寒 ぎ、
電 柱を林 立さ せ、
満員 電車 で人を運ぶ、
土 地は投 資の対象と な り、
銀行マ ン は 本 来の 仕 事を し ない。
コ ンビニエ ンスス ト ア が もっ と も進んだ 店 だ など とい う人の意 見が悲 しい。
世 界に はコ ン ビニ などな い国 がいっ ぱいある。
そ れで も 円本よ り豊か な 国 も多いの で ある。
デザ インは産 業のた め で はなく、
自分自身が もっ と幸せ になるため に、
自分 自身を と り ま く社 会が もっ と 豊 か で幸 せ になるた めに行うべ きである。
その方が、
人間の た めの 産 業 世 界になる。
過 去と何のつ なが り の ない、
今だかっ て 経 験したこと が ない時 代に 我々はデ ザイ ナー
と して 生 き よ う と して い る の である。
〈 黒川〉 【第一
部 】記念シ ンポジ ウ ム でございます
。
「半 世 紀 展 望一
デ ザイン に何が可能か」 といさ さ か大上 段 に構え て お り ま す。
少 し お時 間をいただ き まして趣 旨を説明さ せ て いただき ます。
こ の シ ンポジ ウ ム を 企画す る に あ た り ま しては ど ん な形がい い の だろ う と栄 久 庵理 事と 五 十嵐理事と私の3
人で相談いた し ま し た。
そ こ で今 までの 半 世 紀の デ ザイン学の歩みと到 達 点は 美 術 館の 陳 列館で見ていた だ くことにし ま して、
こ の シ ンポジウム では これか らの50
年を展望 し よ うで はないか、
というこ と に な り ま し た.
21
世 紀 に 入っ た ば か りでさ ま ざ ま な ところ か ら さ ま ざ ま な2ユ世 紀のビジ ョン が 示 さ れ てい る わけです が、
我々デザ イン学に関 係の 深い 者と し ま しては 日一
本 学 術
会
議に 「人 工物
設 計生 産 研 究 連 絡 委 員 会」 と いう ところ が ございま して、
そ こ の 「設 計工学 専 門 委 員 会」 という ところ が か な り時 間を か け て 「21
世 紀のデ
ザ イン展」 という ものを さ れて い るの です。 そ こで は21
世 紀のビジョンを明確に してお り ま し て、
必 要な ものは何で あ る か を う たっ て あ り ます。
提 言 が5
つ あ り ま して、
例 え ば一
一
つ 目 は 「ポス ト工業 化 社 会では、
デザ イン概 念の 質 的 転換
を 図 るべ きであ る」 と。
そこではいかにつ く るかと い う よ り も、
何 をつ くるか が問わ れる と。
二 つ 目は 「デ
ザイ ン は 『つ くる こと』 と 『使
うこと』が密 接に関係づけ られ た持続
的なプロセス であ り、
その関 心は 『つ く るこ と』から 『育て る こと』へ 広がっていく」 な どと5
項 目に わ たっ て あ り ます。
これ は21
世 紀とい う大き な視野 に立っ てお り ますので、
か な り大々的に言っ て いる わけで す。
そ こで
、
私 ど もはこ の5
人のパ ネ リス トを選 ばせ て い ただ き ま し た。
そ れぞれ独 自の哲 学と手法に基 づい て、
新しい時 代を 切 り 開 きつ つ ある方 たち なの では ないか と思い ます。
そ れぞれご専 門は違います し、
実 績も自信も お あ りの方たちです。 そ れぞれの 立場 か ら、
とにか くこれ か ら先デザイン に何が可 能 なのかということ を語っていただき たいと 思います。
少し
変
則に なっ て お り ますのは、
恐 ら くそれ ぞ れのスタン ス が違 うで しょうから、
それ が収束
す る こと は ないと思いま し て、
第一
部
は そ れぞれ が 明 ら か に違うスタ ン ス を述べ て いただ き たいと思い ます。 それ ぞれを 何 がつ なぐのか は み な さ ん に お考えにな っ て いただき たい と思い ます。
第二 部はいわ ゆ る パ ネルデ
ィ スカ ッシ ョ ン形式で、
私 ども がデ ザイン と 呼ん でい る分野 に関 わ りの深い3
人の方に前 半で聞 いた5
人のお話 を 基にデ
ザ イン を やっ ている立 場の 人 間に構 造 化を図っ ていただ く、
ま とめて いた だく、
とそ ういっ たこと を期 待いたし て お り ま す。
大変
時 間のない中で変 則 的な二 部 構 成に なっ て います。 第一
部
の先 生 方に は た った15
分ですが、
エ ッセ ンス を 語っ てい ただ
き たい と思います。
そ れでは
、
トッ プバ ッター
坂 村 健先生お願い いた します。
〈坂 村 〉ど う も坂 村で す
。
昨日 も少し お話し し たので す け ど、
私が専 門と し ていま すのは、
小 さな、 機 械の 中 に 入ってお ります‘
TORON
”
と書き まし て 「トロ ン 」デ ザ イン学 研究 特集号 SPECIAL
ISSUE
OF
JSSD
Vol
.
12No.
12004 11と読む
、
いわゆる 「組み込みコ ン ピュー
ター
」 をつ くっ て お り ま す。
これ は大 変いろい ろな ものに使 わ れてお りまして例えば、
車のエ ン ジ ンの コ ン トロー
ル で す とか、
レー
ザー
プ リンター
ですと か、
みなさ ん お使い の フ ァ ックスやデジ タ ル ビデオやカメラ とか、
携
帯電 話とか い ろ い ろなも の に入っ て お り ます。
左に写って いるの はボ
ー
ドコ ンピュー
ター
(図1
) で す が、
こういっ たものが携 帯 電 話に 入ってい ます。
こ のボー
ドの中に乗っ かっ ている黒い点 が、
いわ ゆ る マ イクロ プロセ ッサー
といわ れ ている もので す。
こ の マイクロプロセ ッサー
は 今、
全 世界で53
億 個 ぐ らい生 産さ れ ていま し て、
パソ コ ンに入っ て い る も の も、 携 帯 電 話に入っ て い る ものも ほ と ん ど 全部 同 じ もので す。
違いは、
機 能 は 同じなの ですが消 費 電 力で、
携 帯に 入っ ている ものはスピー
ド も遅い けれ ど も消 費電 力も少な くて長 持 ち する ものに なっ てい ます。
そのう ち、
パ ソコ ンに入っ てい る ものはL3
億 個く らい ですか ら98
% の も のは 組 み込み と呼 ばれる コ ン ピュー
ター
です。
デ ザイ ン の視 点か ら い うと、
図1 トロ ンコ ン ピュー
ター
12 SPEC 【A凵 SSUE ⊂)1, JSSDVoL12No
.
120D4 デ ザ イン学研究 特集号 組み込みコ ンピュ
ー
ター
とは 機 械の中に入っ て いる わ けですか ら 目立た ない もの が いい とい うこと にな っ て います。 これはPC
用コ ン ピュー
ター
の 「どん ど ん速く」 という流れ と は断 然別な わけです。で
、
ど んどん 小 さ く し てい っ た方
がい い というこ と ですが右 から二 番 目の もの (図)は500
円 玉ぐらい の も の で、今一
番小 さい もの は一
番 右の もの です。 これ が世 界で…
番小 さいコ ン ピュー
ター
になって い ます。
も う見え ない く らい で爪に貼る ことが で き る く らい小さい もの です。
こ うい った もの が 先端の研究所
で で き ていま す。
つ ま り何が言いたいか とい う と、
コ ンピュー
ター
は ど ん ど ん ど ん ど ん 小 さくなっ て、
見え な く なって いく ということ なので す。
そ れで、
「デ ザ イン に何が 可 能か」 とい うこと で、
結 論か ら言う と も う、
な ん で も で き ます。 今まで は 機 械の制 約で どう し て も条 件があっ て でき な かった い ろい ろなことが な くな り ま す。
機 械がわ き役になる こと に よってデ
ザ インは 自 由、
フリー
に なって いっ て しまいます。
そ うい っ た 制 約 を な く して い くこ と が、私
はひ とつ に はある と 思 い ま す。
技 術 的な制 約 はど んどんなく なっ てい く ということ です。
も うひ とつ
、 15
分 しかあり ま せ んの で細かい話は で き ま せ ん が、
こ の ぐらい小 さいと 自立 電 源を持た せ るのが苦し く なっ て き ま す。
そこ で外 部 か ら、
例 えば電 波で もっ て電 源を供 給し ます。
そのた め につ く られ ている ものが、
今 私 が 持っ て います、
ユ ビ キ タスコ ミュニ ケー
ター
(図2
)といわ れて い る もの で す。
携 帯 電 話 が 非 常に進 化し た もの だと思って い 図2 ユ ビ キ タス コ ンピュー
ター
一
た だい てかまいま せ ん
。PDA
のよ う な電 話のよ うな もので、
ま あ 動 画 も映る電 話 なの です が微 弱 電 波が で て いまして、
小さ なチップに近 づけ ていただく と エネルギー
を (チッ プに) 供 給して、
チッ プの中に 入っ ている内容を読み とるこ とができるのです。
こ れが最 近 話 題になっ て いるユビキタス コ ン ピュー
テ ィ ングですね。
ユ ビ キ タスと は ラ テ ン 語 か ら で きて いる英語 で し て、
神 様はどこ に で もい る、 「神はあま ね くしろ し めす」 とい う意 味なの で す が、簡単
に言
い ま す と、
「どこ で も ある 」 と い う意 味で、
そ の後ろ にコ ンピュー
テ ィ ングがつ き ま すの で、
「い つで もど こ で もコ ンピュー
ティ ング」 という意 味にな ります。
まあ、
どこで もコ ン ピュー
ター
ということです。 こ れ は 勘 違いさ れや すい のです けど、
どこで もコ ン ピ ュー
ター
と いいますと み な さ ん携 帯 電 話や ノー
トパ ソコ ン を持っ て い る の で、 そういう社 会 現 象の ひ と つ の こと を い うのだろ う と言わ れ るのですが、
そ う い うのは勘 違い で して、
こ の ようにみなさ ん が見 た ことも ないような 小さなコ ンピュー
ター
をい ろい ろ なモ ノの 中に入れ てい ろいろ なこ と を や ろ う とい う、
そ うい う分野 なの です。
例えばこ こ に 「風 邪 薬」 と書い てあ り ますが
、
こ れ ら は 「モ ノ 」ですよ ね。
食品 があっ た り、
医 薬 品 があっ た り、
洋 服 が あったり。
こういっ たモ ノの中 に超 小型 チ ップを 埋 め込み ま す。
そ こにコ ミュ ニ ケー
ター
を 近 づ け てい くの です。
する と、
コ ミュ ニケー
ター
が チップ を 認 識 するのですよ。
近 づけ るだけ で。
今 風 邪 薬の箱にコ ミュ ニ ケー
ター
を近づ け ます よ。
ほ ら音声
が流
れ ま し た ね。
これは、
近づけ た だ け ですが、
超小型チ ッ プの内容 を機 械 が 認 識し て音 声を流 したの です。 では、
今 度こっ ち は鼻炎薬
なの です が、
近づけて み ま す (図3
)。
よく聞こえ なかっ た か も しれ ませ ん 献 要するに 「風 邪 薬と鼻
炎 薬 両方 飲 むのは薬の飲 み過 ぎだか らや め なさ い 」 と言った わ けです。
そ ういっ た警 告な ん か もできるわ けです。
「技 術が
デ
ザ インを解
放 する1 というお話 を先ほ ど し ま し た が、 2
番 目に言いたい のは、
「応 用 は 上 に広 がる 」 という話で す。
最 近のイ ンダス トリアルデ
ザ インはどんどん変わって き て、
ものづ く りの仕 方 が コ ンピュー
ター
のある とき と ない と き と 全 然 違っ て 図 3 1Cチッ プ 実演 き たとい うこと です。 モノ にコ ンピュー
ター
がつ く こと に よっ て今
ま で な かっ たディスプレイ がつ い て、
そのデザイ ン をどうしよ う かという話 がで てき たわ けです。 そん なのは 昔のものづ く り に は な かった わ け で す。
コ ンピュー
タ な ん て ないわ け ですか ら。
いわゆる
GUI
(Graphical
User
lnterface
) な んて概 念はな かっ たわけです。 今はコ ンピュ
ー
ター
が あ る か ら そ うい うこ と ができ る。
これ か ら超小 型コ ンピュー
ター
が広まる と、
もっ と可 能 性がいっ ぱい広まっ て い ろん なことができる のです。
例えばこ こ に、
ペ ラペ ラのうすいマ ッチ 棒 ぐらい の モ ノが あり ます。 これ は水につ けて も大 丈 夫で、
服につ け て も洗
っ て も大 丈 夫。
し か もこれに は セ ン サー
がつ い て い る の です ね。
センサー
がつ いている ということ は、
世の 中のい ろ ん な状況 をコ ンピュー
ター
が わ か る言 葉に変えて くれるの です。 いわゆる、 アナログ デー
タ を デジタルデー
タに変え て く れ るの ですね。 センサー
で採っ た温度
ですと か、
光の強 さ で す と か、
風 の 通 り と か、
そうい った ものをデジタ ル に変えて くれるわ けですね。 そ う す る と、
例えば この コンピュー
ター
を 服につ ける と、
体 温が直 接わ か り ますから、
そ の情 報をエ ア コ ンに送る と、
今は リモコ ンで操
作し ていますが、
リモコ ンがい ら な い とい うことになります。
そ う す る とコ ン ピュー
ター
とのつ き あい方も変 わってき ます。 も ちろん、
そ うい うこ と を や る た めにはセキュ リ ティー
やプライバシー
の 守り方、
自分の情 報をど う い う と き に 出し入れする のか とい っ たこ と も、
も ち ろ ん ちゃ ん とデ ザイ ンし ない といけ ない の ですが、
デ ザ イン学 研 究 特 集 号 SPECIAL ISSし兀 OF JSSDVoL12No
.
12004 13一
そ う い うこと をやった上で周りの環 境にコ ン ピュ
ー
タ が 入 り込 ん で 状況を認 識して くれ ます。 これをユ ビキ タス・
コ ンピュー
ティングの世 界で は 「コ ンテ クス ト・
アウェアネス」 といっ て 「状 況を認識
する」 という意 味で と ら えて い ます。 人が どこにいるのか と か、
モ ノがどこ にあ るの か と か、
モ ノ の情 報、
い つ つ く ら れ た と か どこ でつ く ら れ た と か、
モ ノだ け じゃ なく て光と か 風の流れ と か、
そうい うも のをコ ンテクス ト (context )=
状況、
と呼 び、
そ れ をアウェ ア ネス (awareness )= 認 識 する。
というこ と なので す。 自
動 的に そ う いっ たこと ができる。
これが未 来 の21
世 紀の ものづ く り に影響
を 与え な い わ け が な く て、
今 研 究 室で で きるよ うになっ た段 階です。
です か らふつ う に み な さ ん が こういっ たことを使おうと 思 う と10
年 ぐらいは か か り ますが、
いき な りモ ノ は で き ま せ んから準 備 をしておかないといけ ま せ ん。
携 帯電話な んて20
年 以上前か らやられていたし、
こ の小 さ なコ ンピュー
タ も基 礎の研究
か ら20
年 ぐらい の歴史が あるわ けです。
デ ザイ ン や る 人 に 言いたい の は
、
これ はデ
ザイン じゃな くてコ ンピュー
ター
の人 間 もみ んな 感じ てい るのですが、
これ か らのものづ く り は トー
タ ル な意 味で アプロー
チ を かけ ないとでき な く なっ て き てい て、今
ま でのよ う に機 械つ くる人、
デ ザイ ンの 人、
売る人、
では な く て一
緒に や ら な い と ものづ く りが で き な くなっ てきて いると思います。私
は大 学で電 子 工学を専 攻し たのです が、
住 宅の設計 も しますし、
建 物のデザイ ン もする し、
パ ッケー
ジや グラ フ ィッ クデ
ザ インと かい ろ いろ し ますが、
デ ザイ ン は すべ て を制して い る の です。
逆にいえ ば、
デザイ ナー
は 積 極 的にコ ンピュー
タを使う よ う な こ とを し た ほ う がい い です。
GUI の デ ザインな んて既にそ うですよ ね。
私がデ ザイ ン学 会を見て驚 きま し たの は、
だい ぶwebデ
ザインと かの話もで てき ていま す よ ね。
こん なこ とは50
年 前にはデザイン学 会と して は思い も よ ら なか っ たの では ない ですか。50
年 前は ちょ う ど 「エ ニ アック」 とい うコ ンピュー
ター
が で き た ばっ か り ですか ら、
web デザインなんて想像もつかなか った で しょ う。
トー
タル にデ ザイ ン す る、
と なるとデ ザ イ ナー
が下 (技 術 側 )に 行 く か下が デ ザ イン に行く14 SPECIAL ]9SUE OF JSSDVol
.
12N {,.
1200vL デ ザ イン学研究 特 集 号か
、
そ れ し かない の ですよ。
そ ういっ た トー
タ ルデ ザイ ンカみ たいな ものが 今ほ ど要 求 され ている時 代 はない ので は ないか と思い ま す。 その時 デ ザイ ンと は 何 かと考 えると、
や は り想像
力じゃないか と思 う ので す。
こうい うモ ノ があっ た らどう な るのか、
と い うのをいろいろ と ものす ご く考え ないとデ ザイン はで き ない の で はないか と 思います。
残酷
な言い方 をすればいく ら考えて もダメ な人 もいますが、
や は り考える と いうこと が非常
に重 要で機 械と人 間との 関 係や、
社 会との関 係で た くさん行
き わ たっ た と き にどう な るの か などと、
と にか く あ らゆる こ とを、
た くさん 想像 力を働か せ て考え ない といけ ない の です。
さ て、
も うすぐ時 間と な りま すが、
結局デ ザイン も技 術も是 非 考え、
いろいろ なこと を考えて21
世 紀 に ふ さ わ しい良いデザ イン を やっ て いただき たいと 思います。
15
分とい う非 常に短い時 間で し た が 「ユ ビキ タス コ ンピュー
テ ィングで制 約がなく な る よ。
」 という お 話と、
「トー
タ ル にい ろい ろしな きゃ いけ ない。
とい う こ と で是非いろいろ な とこ ろ に目を向 けられるデ ザイ ナー
に なっ て い ただきたい。
」 と い うこと を お話 しさせて いただき ま し た。
あ りが と うございま し た。
〈 黒 川 〉あ りがと うござい ま し た
。
ぴっ た り15
分で した。
さすが はコ ンピュー
ター
学 者です。本
当 は もっ と聞 か せ ていただきたい の です が、
坂 村 先 生は著書
も た く さ ん ござい ま し て、
今のお話 は 著 書であり ます 「ユビキタスコ ン ピュー
ティング」 とい う本に大 概の こと は書
か れ ていたかと思います。それでは引き続き ま し て
、
竹 村 先生 お願い いた し ま す。
〈 竹 村〉こん に ち は
。
私 紹 介のパ ン フ レッ トに は文化 人 類 学とあり ま し て、
い わ ゆる文 化 系の 文化 と して書 か れ てい ま して、
これ は文化 系 を 代表して語れ、
と いうこ と か な と思いま し て 坂村 先生 と はある意 味で 対 照的な分野を ベー
ス に して い ま して、
そ こか らデ ザイン につ い て何が 言 える の か と い うこ と を お話し一
し て いき たい と思い ます
。
と はいえ、
坂 村 先 生は非 常に重 要 な お話 を 提 供し て くださっ て私 な りに理 解しますと、
例えば 今ま で はパ ッケー
ジデザインで す とハー
ドの制 約があっ た か ら最 低限の ハー
ドの上 にのるようなパ ッケー
ジの デザイ ン を して いたというのが ど ち ら か という と メ ジャー
だっ た か と 思いますが、
これ か らハー
ドの制 約が な く なっ て く る と 「HOW のデザイン 」 では な く 「WHAr のデ ザ イン 」 に なっ て く る と思います。
いか に、
ど う、
美し くデ
ザイ ンするかで は な く、
そ もそ も何
をデ ザインする の か、デ
ザ イン の対象
と は何な の か、
ということ に なっ て く る と思います。
その時 にい わゆる従 来の モノ とか 機械と か道 路と か で は な くて、
そういっ た既 存のwhat の概
念を はず してか か ら ないとデ
ザイ ンの領 域が見えて こない の です。 そ の一
つ の例として 「車のデ ザ インよ り も車 社会
のデ
ザインを」 みたいな もの を レ ジュ メ にあ げたわ けで す。
そ う い う 「what のデ ザイ ン」が 大 事 だな と まず
思いま し た。
それか ら も うひ とつポイ ン トだと 思っ たのは
、
コ ンピュー
タ がどん どん見 えな くなる、
不 可 視に な る、
そ れ で 「不可 視になっ たコ ンピュー
タの力を 通 じて 何 を可 視 化 するのか 」 と い う こ と です。
ど んどんブ ラッ クボック スになっ て いくばか り で は ます ま す 個 人と社 会、
人 間と世 界のか かわりが見に く く なっ て き ます。
ただでさ え、
こ の100
年、200
年の 工業 化 社 会の 中で人 間と社
会の関係はブラックボッ クス化 し て き たの です。 さ ら にコ ンピュー
ター
が微 少に な り 全く意 識せずに使え る ように なっ てくる。
し かし、
そ こ で止 まっ てはい け ませ ん。
不 可視化 さ れ たコ ン ピュー
タ をベー
ス に何を 可視 化 するのか。
・
個 人 と社 会の有 機 的な関 係を もっ と ビ ジュ ア ルにしたい。
自 分と世 界とのか かわりをもっ と センシ ティ ブに実 感 できるよ う な構 造を作っ ていき たい。 それ がこれ か らのデザイ ンの仕 事ではないかと思い ます。
ですか ら 不可視 なこと と可 視 化の バ ラ ンス、
そし て 坂 村 先 生 か ら 「技術1
という命題をいただ
き ま し たので言
わ せて いただき ますと、
技 術の上 にいか な るコ ン テ ンツ、
コ ン テクス トをデ
ザイ ンするのか。
そこに お いて文化学、
デ ザイ ン学、
美 術、
トー
タル な アプロー
チ が必 要か と思います。
私な りの
デ
ザイ ン は何か と申 します と 「ある種の 世界の見方を組み変 える装 置」 「世 界と自分のか か わ り方や世 界との距 離 感を計り直す メデ
ィ ア」 であろ う と思い ま す。
そ う な る と世 界を見る解 像 度 を上げ る仕 組み をど うつ くるかとか、 最 近 ブロー
ドバ ン ド 化 が 言わ れ てい ますが動 画が送
れ る といっ た狭い意 味での ブロー
ドバ ン ド化で はな く 生活全体のブロー
ドバン ド化は ど う する のか。
例えばわ れわ れは 日々 地球
を食
べ てい ます。
天ぷ らそば を食べ ればエビ は マ レー
シアから き ている か も し れ ない、
で も そ うい うこと を わ れ わ れ は実 感できない。
そ ういうこと に 関 し て何で もか んでもわ かれ ばい い という もので は あ り ませ ん が、
もっ と自分た ち が 日々食べ、
飲み、
町を歩く ということ に関 して世 界との関わ りをもっ と もっ と向一
ヒして いっ てほ しい です。
「世 界の解像度
を上げる」 とか、
「生 活全 体の ブロー
ドバ ン ド化」 と いうこと で私がい いたい のは そうい うこと で す。
さて、 抽 象 論はこ の く らい にし まし て
、
具 体 的に 私の 場 合はどう なのかと いうのをご紹介
し たい と 思 います。
これ は7 〜8
年 前に仲 間とつ くっ たweb サイ ト (図4
)ですが、
インター
ネッ トを通じ てこん な こ と ができるよ、
というこ と を 示 し た一
例です。 地 球が で て き て ところどころボコボコと泡 立っ ていま すが、
世 界 中で起き ている 地震計のデー
タ を集めて ラ イブ的 に見える ように し た ものです。
世界 中に地 震 計は あ り ま す が、
今ま で は ほぼバ ラ バ ラに研 究さ れて い まし た。
ところ がいま や インター
ネッ ト を通 じて、
地 球 大のデー
タ がす ぐに集め られ ま す。
そのデー
タ をコ ンパイル して画像 に して います。 実 際はデ ザ イ ン 学 研 究 特集号 SPECIAL ISSUE OF JSSD Vol
.
12No.
12004 15図4 地 震 計の 可視化web サイ ト ネッ トのライ ブ 映 像ですの で、 画 面の
一
ドに は時計 が あり まして2
週間 く らいでこん なこと が起こっ て い る とい うことをルー
プで示 しています。
これ を見る こ と によっ て 「あ あ、
地 球っ てものはこんなにボコ ボコ と 日々 これだけの こ とが 起 こっ てい るの だな。」 と初め て わ かっ た わ けです。
これはインター
ネッ ト時 代に おいて できる ように なった わ け で す が、
私はこれを 「感 性の 社 会イ ン フ ラ」 と呼んで います。
水 と か電 気がインフ ラと して 社 会に提 供さ れるようになったのと 同 じ よ う に、
地 球 自体が 地球
な ら で はの形で 「地 球に生きて いる」 という実 感を広く提 供し よ う と い うことです。
今ビ
デ
オ を見て いた だ きま し た が、
こういっ た形 で先ほど 「what のデザイ ン 」 と申し ま した けれ ども、
技
術と してインター
ネッ トやパ ソコ ン が あ る。
その 上で どの よ う な表現 を通じて どのような 社 会 的イ ン フラ を構 築して い くか。
どの よ う な社 会 的な感 性の 回路をデザインしてい く か。
ひ とつ の さ さや か な例 ですけ れ ど も示させ て いただき ま し たD な お、
お台 場では1m
の立体の リ ア ル な地 球 儀の上で先ほ ど見 ていた だいたよ うな 状 態が 再 現 さ れ ていま すの で、
是 非ご興 味のあ る 方 は 見 に行か れて くださ い。
そ う い った地 球全 体 を 可視 化し、
実 感 する よ う な こと も こういう時 代は 可能だ とい う こ とを 示 した事 例です。
同時に 現実に豊か な地 球を歩く とい うの は どう な の か ということですが
、
私は文 化 人 類 学 者で すので も と も と はフ ィー
ル ドワー
カー
で山に登っ た り歩い た りす るのが 大好き な人 間 なの です。
先 ほ どの もの は衛星 時 代、
インター
ネッ ト時 代、
こういっ た時 代、
16 SPECIAL ESSUEOFJSSDVel
.
12N【)12eO4 デ ザ イン学研究 特集号20
世 紀 後 半か らの人類にのみ可 能な地 球 認 識ですよ ね。
し か し もう一
方で現 実に地球
を歩く というアナ ロ グな行 為もデ
ジ タ ルネッ トワー
クにオー
ギュ メ ン トさ れる ことによっ て、
もっ と豊か なプロセスにな るので は ないか とい うこと を考 えて、私
は一
方で は 「地 球 博 物 館 構 想」 というのを進めて います。 これは 何も建 物 を造っ て地 球を展示する、
と い う わけでは な くて、
逆に あ りのままの地 球を生き た博物館
に し てやろ う、
と いう ものです。
そ こでイン フラを提 供 し て くれる のが坂 村 先生の トロ ンが 入っ た携 帯 電 話 などの ツー
ル なの です。
それ を使っ て例えばこん な こと が で き る とい う例を それで は一
つ御
覧一
ドさい。
〈VTR
:ナレー
ション〉尾道は街 全体が博 物 館のよ うなところ
。観光名
所 は もと よ り ちょっ と し た坂 道 や 名もない路 地にもい っ ぱい 物 語 が 詰 まっ て います。
そ れ な ら本 当に街 全 体を博
物館
に し て し ま お うとい うのが こ の プロ ジェ ク トのね ら いなの です。
街を歩いて いて
、
「あ れ、
こ こは どこだろ う、
不 思 議な坂 道 だ な」 と 思った ら、
目印を探して くださ い。
こ の梟のアイコ ンを 目印にして ください (図5
)。
そ して ア イコ ン が持つ番 号を、
携 帯 を使って 入 れ ます。
そうするとこ の場 所の観 光情
報 や 街の記 憶 が 自 由に 引 き 出 せ るの です。
例えば 歌
舞伎
や美術 館な どでイ アホンガイ ド を 聴き ながら見るとよ く理解
で き る とい うこと があり ます。
そ れ と同じでそ れぞ れの場 所の記憶
や物 語が あなたのケー
タ イ を 通 し て読む こと ができ る という 図5 梟のア イコ ン一
わ け なのです
。
尾道という街に は隠れ た 魅 力 がいっぱいあります
。
その 魅力 を もっ ともっ と伝 え たい。 そ れ を 可能にす るのが、
モバイル時 代の新し い ナ ビ シ ス テ ム、
「どこ でも博 物館」なのです。
ガイ ドブッ ク を調べ る の って結 構 大 変で す よ ね。
その場でほ しい情 報が すぐに見つ か らないというこ と が あ り ます。
ま た、
看 板を見て も自分の位 置を確 認 する のが 大 変です。
さ ら に看
板は景観
を損ねて し ま う とい うこ と が あ るの です。
そこ で こ の 「ケー
タ イ ナ ビ 」 を使えば、
街 全 体も 生 き た 歴史
の博物
館に 変え、
それぞれの場所の隠れ た情 報を必 要 なときに 必要な とこ ろで簡 単に引 き 出せ ます。 例えば 観光 情 報 やバス停の位 置 や トイレの場所
など、
これ ら は自 己中マ ッ プを使う とす ぐに見つ かる の です。 便 利で すね。ケ
ー
タイナ ビ システ ムの い い ところ は それ だ けで は ない のです。
実は私が今 歩い てい る坂 道は志 賀 直 哉が同 じよ うに歩い ていた とい うの です。彼
は その 体 験を暗夜 行 路につ づって います。
(図6
) (中略 ) 見晴らし の良い と こ ろ にやって き ま した。
そ し て、
こ こ にもいま し た。
梟の ア イコ ンです。
こ の梟は ど んな 情 報を持っ て い る の で しょ う か。
番 号を携
帯に 入 力し て み ま す。
「空 中 美 術 館」 というのがで てき ま し た。
これ は、
私が今 見て い る風 景 を画 家が どのよ う に描いたのか、
その場です ぐに見ること が で き る の です。
〈竹 村 〉すみ ま せ ん
。
実は、
こ の プロモー
ショ ンビデ オは か な り初 期につ くっ たもの ですの で梟がずいぶ ん 小 さ かったですけれ ど も、
仮オー
プン し て か ら大人気 で た ち ま ち盗ま れて し ま ったの で、今
は 設営が大 変 なの ですが 人間の頭く らい の簡 単に は運べ ない大き さ に し て いま す。
街に200 〜300
箇 所設 置す る予 定で、
既に200
箇 所 以上設置し てい ますが、
まだ 盗 まれるも ので行か れ て もある はずのところ に ない ということ もあるか も しれ ま せ ん。
と も か く、
こ の シ ス テ ムの ポイン トは 「場 所に番 号をつ け た。
その番 号を入 力 するだ けで情 報 が と れ る 」 とい うコ ロ ンブス のタマ 図 6 「暗 夜 行 路」配 信 ゴ み たいな発 想で す ね。
技
術の成 熟や普及 を待つ よ りも、
一
方では文 化 系 なら文 化 系の考え方でコ ン テ ン ツやコン テ ク ス トを 作る ところ か ら始
め てい く、
そ して技 術の普 及・
成 熟とうまく合 流して いけ ばい い のだと思い ま す。今
の 日本は ど ち らか とい う と も技
術主導で、
「どこ で も ドア」だと言
っ て いますが、
「どこ で も ドア 」 を作
っ て もドア の先には何も ない とい う状 態が多
い の では ない か と 思い ます。
ドア を開 け た らちゃんといろい ろな ものがあるよ、
とい う世 界を先 取り していろい ろデ
ザ インし てい くぐらい の、
技 術を追い越して い くぐらい の感 じでデ ザ イ ナー
やコ ン テ ン ツを持っ て い る方が ク リエイテ ィブワー
ク を して いただ くと、
そのく らいで ちょう ど 良い、
バ ラン ス の良いデ
ザ イ ン社 会が実 現 する の で は ないか とので は ないか とそ う思っていま す。
先 ほど尾道の例をお 見せ しましたが江 戸 版で は、
自分 が 中心の地 図が で るのですが、
それ をもう一
度 ク リック し ますと150
年 前の江 戸 時代の地 図 が 再現さ れ るとい う もの も あ り ます。
そういっ たいろんな形 で 場所の 記 憶を引 き出して い く といっ た こと を し て います。これ も時間の制 約でお 見せ でき ま せ ん が
、
「食
の ト レー
サビリティー
」 と今いわ れ て います。 例 えば店 頭で お肉を 買 うとIO
桁の番 号が あっ て 「お う ち で検 索し て ください 」な どとありま す。一
部で は その場 に テ ンキー
が あ るこ と もあ りま す が、
要す る に情 報 とモ ノ が分 離し ているの です.
もっ と もっ と情 報と モ ノ を 体 化させなければいけ ない。
そういっ たとデ ザ イン学 研 究 特集号 SPECIAL ISSUE OF JSSD Vol
.
T2 No.
1 2004 17き に
、
チ ップを埋め込んで のユ ビキタ ス も あ り ま す が、 例 え ば 紙 媒 体で携帯
と か とインター
ネッ トがダ イレ ク トに連 動して いる、
これ も私来
月 か ら あ る雑 誌でや り ま す け ど、
本を め くっ て い て素 晴ら しい写 真が あっ た、
もっ とこの 写 真の 舞 台 裏 を知 りたい。
その絵に番
号がつ い て い て、
携 帯で 入力す る と その ヒロインの話と か その作家
の ライブ
な話が情 報と し て取り出せ る の です。
そ う いっ た よ う な紙 媒 体と か、
食 品と か衣 類と か を含 めた モ ノ、
そ れ か ら都 市空間と情 報 空 間 を ダイ レ クトにつなげて い く。 そ れ に よっ て、
最 初か ら申 し 上げた よ う に世 界の解 像 度 を上げて い く。 私た ち が日常 生 活で経 験 する 世界 構造
を もっ と もっ と深め て い く。
生活 全 体 を ブロー
ドバ ントに し ていく。
そ うい う こ とが 可能
なの では ないか と思い ます。し か も
、
知 識を提 供 するだけでは な くて モ ノの 背 後に作り 手 が あ る と か、
場 所の背 後にある何かの記 憶な どのそ ういっ たモ ノの背 後へ の想像
力を高めて い く という メデ
ィアデザインが 大 事 なの では ない か と思います。
レ ジュ メで書いたような 他の いろいろ な 展 開 につ い て、
お 話し し ている と他の先生の時 間 を 食っ て し まいますの で、
それは次の会に さ せ ていただき ま し て、
キー
ワー
ドだ けお話し させ て いただく と、
コ ン ピュー
ター
がどんどん 小 さ く なっ てユ ビキタスが進 ん で便 利に なる。 車もネッ トワー
ク 化 し てい く。
そ れはオー
ケー
なの です が、
そ れ に よっ てブラックボ ッ クスが よ り進 行してしまっ てはし ょう が ない。
主 体は人 間 なの ですか ら 人間と社 会、
人間と車を 通 じ ての体験 をブラ ッ クボッ クス になる方 向で自動化し て はいけ ないと 思 います。
そ う で は な くて 「感 性の イ ンフラ」 とい い ますか、
私た ち が 世界と か か わる 「か か わ り方の向.
ヒ化」 といい ま しょ う か 、 そ ういう 意 味で私は こ れを 「新人間主義 デ ザイ ン」 と 呼 んで お ります。
脱・
ブラ ックボックス 型の デ ザ インとい うこと で ござい ま す。
〈黒川〉 はい。
あ りが と う ご ざい ました。
時 間 が や や オー
バー
し て い ま すの で これまでに さ せ ていた だ きます。18 SPEC ]A凵 SSUE OF JSS
.
D VoL12 No、
12004 デ ザ イン学研究 特 集 号竹 村 先 生には大 変具体 的な提 案を し ていた だ き ま し た