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乳腺40 各論₂ 化膿性乳腺炎 (suppulative mastitis) 臨床像 授乳の際に乳頭の擦過創や咬傷から細菌が侵入し, 乳房に感染症を生じるものである 乳汁 排出不良によって起こるうっ滞性乳腺炎とは区別する 起炎菌は連鎖球菌や黄色ブドウ球菌である 自発痛, 腫脹, 硬結, 圧痛, 発赤

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各 論

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A.炎症性疾患

A.炎症性疾患

肉芽腫性乳腺炎

granulomatous mastitis

【臨床像】 最終出産より 5 年以内の妊娠可能な年齢の女性に生じ,閉経期以降の高齢者の頻度は極めて 低い。妊娠例以外では経口避妊薬内服や高プロラクチン血症,自己免疫,ウイルスの関与など 様々な報告がなされているが,正確な原因についてはいまだに解明されていない。片側性乳腺 の末梢領域に好発する。皮膚の潰瘍,発赤,疼痛などの症状を伴い,境界不明瞭だが硬い腫瘤 として触知され,乳癌に類似していることも多い。 【病理組織像】 乳腺小葉主体のリンパ球・組織球の炎症細胞浸潤,類上皮細胞,多核組織球よりなる肉芽腫 性炎症を特徴とする。炎症の進行に伴い上皮成分は不明瞭となる(図 75)。多核組織球はどの 病期にも認められるが,炎症細胞の種類は時間経過によって異なり,初期はリンパ球が主体で, 炎症が進行すると形質細胞・好中球・好酸球が出現し,多彩な細胞像を呈する。通常肉芽の中 心に乾酪壊死はなく,血管炎や乳管拡張も伴わない。 【細胞像】 強い炎症性背景のなか,類上皮細胞と多核組織球がみられる(図 76,77)。炎症反応により既 存の上皮や類上皮の集塊に核の腫大や核小体が認められる場合があるが,核異型やクロマチン の増加に乏しい。亜急性期では粘液状物質,フィブリン網状物質,紡錘形の線維芽細胞がみら れ,慢性化するに従ってリンパ球は減少し,好中球や好酸球が多くなる。さらに線維芽細胞や 膠原線維が増加し,これらの間に毛細血管がみられることがある。 【細胞診の判定区分】 正常あるいは良性 【鑑別診断・ピットフォール】 視触診・画像所見が乳癌の特徴と酷似しているため臨床的に鑑別困難になりやすく,乳癌の なかでも炎症性乳癌との鑑別は最も重要である。癌においても皮膚の発赤,浮腫に伴う所見が みられるが,自発痛・圧痛・発熱等はみられない。また,炎症のため変性した腺上皮細胞は, 濃縮状の核や小型の核小体を認めるものもあるが,核異型に乏しく,細胞質内には大小の空胞 や白血球を貪食している細胞がみられることもある。また,肉芽腫形成性疾患(結核,サルコ イドーシス,Wegener 肉芽腫など)との鑑別では通常乾酪壊死巣が伴わないことから好酸菌や 真菌の存在は考えにくいが,好酸菌染色や PAS 反応を行って否定することもできる。サルコ イドーシスは膿瘍をつくらないので細胞像からも鑑別可能である。

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乳腺 各論

化膿性乳腺炎

suppulative mastitis

【臨床像】 授乳の際に乳頭の擦過創や咬傷から細菌が侵入し,乳房に感染症を生じるものである。乳汁 排出不良によって起こるうっ滞性乳腺炎とは区別する。起炎菌は連鎖球菌や黄色ブドウ球菌で ある。自発痛,腫脹,硬結,圧痛,発赤,熱感などの局所症状が強く,腋窩リンパ節の腫脹や 発熱・悪寒などの全身症状を認めることもある。 【病理組織像】 好中球を主体とする炎症性病変である。実質が崩れ,好中球集簇からなる膿瘍を形成するこ ともある。周囲には肉芽組織を生じ,やがて瘢痕治癒に至る。 【細胞像】 著しい好中球の出現からなり,組織球,粘液状物質,フィブリン網状物質,裸核細胞,紡錘 形の線維芽細胞,および乳管上皮が種々の程度に混在する(図 78)。 【細胞診の判定区分】 正常あるいは良性 【鑑別診断・ピットフォール】 多量の好中球が確認できれば診断は比較的容易である。上皮が目立たない場合にも検体不適 正とはしない。また,上皮細胞が混在する場合,結合性良好な,異型に乏しい細胞からなる集 塊としてみられる場合以外に,細胞境界が不明瞭な例,細胞質に泡沫状変化を来す例,核小体 が目立つ例,孤立細胞として出現する例などがある。好中球の存在から診断に迷うことは少な いが,過剰判定とならないよう核異型を認めないことを丹念に観察する必要がある。診断後は 状況により細菌培養を勧める。肉芽腫性乳腺炎とは組織球の混在などから鑑別するが,授乳中 か授乳後かなどの臨床所見も参考になる。

B.乳腺症

(mastopathy)

【乳腺症の臨床像】 乳腺症は,一つの疾患あるいは一つの像を指すのではなく疾患群である。乳腺症は様々な名 称で呼ばれており,fibrocystic disease, mammary dysplasia などが同義である。WHO ではそ の一部を良性上皮増殖性病変(benign epithelial proliferation)としてまとめている。これらの 基本像は terminal-duct lobular unit(TDLU)に起こる乳管内上皮の増殖性変化である。通常, 30〜50 歳代の女性に頻発する。女性ホルモン(主にエストロゲン)の相対的過剰に起因すると 考えられている。日常的に遭遇する疾患であるが,悪性所見との鑑別が困難な所見もあり,細 胞病理学的にその鑑別は極めて重要である。通常,病理像は単一であることより多彩な像を示 すことが多い。以下,代表的亜型の病理・細胞像を記す。

腺症

閉塞性腺症:

blunt duct adenosis

,硬化性腺症:

sclerosing adenosis

【病理組織像】

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B.乳腺症 のない中小の腺管の密な増生からなる(図 79)。一方,硬化性腺症は異型のない小型の腺管の 密な増生および周囲線維結合織の増生を伴っている(図 80)。しばしば硬癌との鑑別が必要と なるが,乳管上皮細胞は筋上皮細胞との二相性を示す。また,エオジン好性の基底膜に覆われ ていることに気づくことが重要である。 【細胞像】 乳管上皮細胞とシート状配列を示す細胞を認める。細胞集塊周辺には筋上皮細胞の介在がみ られる。閉塞性腺症では,背景に貯留分泌物由来のライトグリーン好性無構造成分を認めるこ とが多い(図 81)。硬化性腺症は,細胞集塊の配列は不規則であり,双極裸核状の間質細胞と ともに核濃縮状,紡錘形を示す乳管上皮細胞がみられる(図 82)。

乳管過形成

(〔

usual

ductal hyperplasia

/乳管乳頭腫症

duct papillomatosis

【病理組織像】 乳管内における篩状構造の腺腔の形状は様々で極性に乏しい。また,細胞増殖部の細胞は重 積し,不均一であり,細胞も不規則な配列を示す(図 83)。 【細胞像】 重積した集塊状の出現を示す。集塊を構成する細胞は異型に乏しく不揃いで,方向性は不均 一である(図 84)。ときに細胞密度が高くなり,篩状構造や微小乳頭状構造を認めるが,癌に 比較すると均一性に乏しく篩状構造も不完全である。

アポクリン化生

apocrine metaplasia

,アポクリン囊胞

apocrine cyst

【病理組織像】 乳腺症の上皮細胞はしばしばアポクリン化生を示し,細胞質にはアポクリン顆粒を認める。 嚢胞状形態を示す場合,アポクリン嚢胞と呼ばれる(図 85)。 【細胞像】 通常の乳管上皮細胞に加えて,シート状配列を示す異型に乏しいアポクリン化生上皮を認め る(図 86)。

囊胞

cyst

,濃縮囊胞

concentration cyst

,乳管拡張症

duct ectasia

【病理組織像】 しばしば乳腺症では乳管の通過障害によると考えられる大小の嚢胞を形成する。乳管が拡張 し,分泌物が貯留することがあるが,拡張した乳管内外に組織球が集簇した場合は黄色肉芽腫 ともいわれる。 【細胞像】 分泌物や泡沫細胞を背景に,乳管上皮細胞やアポクリン化生を認めると嚢胞形成や拡張乳管 が示唆される(図 87)。ときに嚢胞内容は停滞,濃縮し,濃縮嚢胞となる(図 88)。その場合, 細菌や分泌が結晶化した石灰化などが認められる。嚢胞をターゲットとして穿刺吸引がなされ た場合,上皮成分が標本にみられず,上記のような所見のみの場合でも検体不適正とせず,検

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乳腺 図 75 肉芽腫性乳腺炎 30 歳代,女性 切除標本,HE 染色,対物 20 倍 小葉中心性の炎症細胞浸潤と類上皮細胞と多核組 織球の増生が認められる。 図 77 肉芽腫性乳腺炎 30 歳代,女性 穿刺吸引,Pap. 染色,対物 40 倍 多数のリンパ球,多核組織球が出現している。 図 76 肉芽腫性乳腺炎 30 歳代,女性 穿刺吸引,Pap. 染色,対物 40 倍 多数のリンパ球,好中球を背景に類上皮細胞,多 核組織球が出現している。 図 78 化膿性乳腺炎 30 歳代,女性 穿刺吸引,Pap. 染色,対物 40 倍 多数の好中球,リンパ球,フィブリン網状物質, 多核組織球が出現。写真中央に乳管上皮を認める。

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図譜

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図 79 乳腺症 40 歳代,女性 針生検,HE 染色,対物 40 倍 閉塞性腺症。分泌結晶物を容れた,異型のない細 胞からなる,拡張した中小乳管の増生を示す。 図 81 乳腺症 40 歳代,女性 穿刺吸引,Pap. 染色,対物 40 倍 閉塞性腺症。異型のない乳管上皮細胞がシート状 配列で出現し,ライトグリーン好性の貯留分泌物 成分も混在する。 図 80 乳腺症 40 歳代,女性 針生検,HE 染色,対物 40 倍 硬化性腺症。腺房と終末乳管が線維成分を伴い, 不規則な増生を示す。 図 82 乳腺症 40 歳代,女性 穿刺吸引,Pap. 染色,対物 40 倍 硬化性腺症。双極裸核状の間質細胞とともに核濃 縮状,紡錘形を示す乳管上皮細胞がみられる。

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乳腺 図 83 乳腺症 40 歳代,女性 針生検,HE 染色,対物 20 倍 乳管過形成(乳管乳頭腫症)。乳管内に細胞が重積 し不規則な方向性を示す。乳管内の腺腔も張りが なく,均一性に乏しい。 * 図 85 乳腺症 40 歳代,女性 針生検,HE 染色,対物 40 倍 アポクリン嚢胞(アポクリン化生)。嚢胞性に拡張 した,過形性な好酸性細胞からなる乳管。細胞は アポクリン顆粒を認める。下方(*)は化生を伴わ ない通常の拡張乳管。 図 84 乳腺症 40 歳代,女性 穿刺吸引,Pap. 染色,対物 40 倍 乳管過形成。細胞密度が増加した小乳頭状集塊を 呈し,集塊内には腺管構造を認める。 * 図 86 乳腺症 40 歳代,女性 穿刺吸引,Pap. 染色,対物 40 倍 アポクリン化生。異型のない乳管上皮細胞(*)と シート状配列のアポクリン化生細胞を認める。

参照

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