徹底解説:
SAP
をクラウドで
活用する
3
つのパターン
、最善の選択肢は?
SAP
のプラットフォームとして
IBM Cloud
を
選択すべき理由
ERP
をクラウド
化したいと考える場合、企業システムの中心を担うだけにその実現方法は慎重に検
討したい。
IBM
が
SAP
システム
向けに用意する3
つのサービスラインアップから
、ニーズに合わせた選
択肢を探る。
もはや、企業システムの代表格であ るERPにおいての利用でも一般的に なりつつあるクラウド環境。しかし、 ERPをクラウドに移行する際の課題 やクラウド環境の最適な選択肢やク ラウド固有の制約に悩まれるユー ザーも多いのも実情であろう。 「もともとSAPは、IBM出身者に よって創業された企業で、両社の間に は40年以上にわたる強い協力関係が あります。IBMは数多くの実績を持つ『SAPデリバリーサービス』 『SAPコンピテンシーセンター』を有しており、そのノウハウは 『SAP on IBM Cloud』においても最大限に生かされています。そ して、SAPのクラウド戦略とIBMのクラウド戦略は、エンタープ ライズシステムにデジタルイノベーションを起こすためのプラット フォームをゴールにするという方向性で合致しており、両社の得意 分野を融合し、完全に一体のクラウドとして考えてもよいほどの親 和性があります。クラウドのビッグ4(注)と呼ばれるベンダーの全
てが、SAP認証を取得した現状でも、SAP on IBM Cloud には 特徴的な差別化ポイントとお客さまのニーズに合わせた多様な選 択肢があります」。こう話すのは、IBM クラウド事業本部担当部長 コンサルティング・アーキテクト平山毅氏だ。
IBMは、ユーザー企業のニーズに合わせて大きく3つの選択肢 を提供している。
(1) SAP Cloud on IBM Cloud:SAPとIBMの最新技術を融 合した最先端のデジタルトランスフォーメーションの実現 (2) IBM Cloud for SAP Applications(C4SAP):SAP部分
もマネージドに提供されつつ、プラットフォームの選択肢が多 いPaaS
(3) SAP on IBM Cloud (Bluemix Infrastructure):ベアメタル サーバとグローバルネットワークが活用できる自由度の高い IaaS
そこで本稿では、長年にわたってSAPとパートナーシップを結 ぶIBMが提供する「SAP on IBM Cloud」のサービスラインアッ プから、SAP環境をクラウド移行する上での悩みどころを解決す る3つの解決策を探る。
拡大するクラウド適用範囲、
SAP環境クラウド化の3つのユーザーニーズ
クラウドが登場した当初、企業におけるクラウドの適用範囲は メールやグループウェアなどのコミュニケーションツール、開発・テ スト環境、SoE(System of Engagement)と呼ばれるモバイル に代表されるクラウドネイティブなアプリケーションなどに限られ ていた。だが現在では、かつて「オンプレミスが当然」とされてい たようなミッションクリティカルな業務システムや、ビジネス活動の 根幹を担うSoR(System of Record)と呼ばれるERP(統合 業務)にまで広がりを見せており、SoEとSoRをつなぎ互換性 を保つハイブリッドクラウドも注目されている。ERPの分野で長くマーケットリーダーとしての地位を維持する のが、ドイツに本社を置くSAPだ。代表的なERPパッケージと して知られる「SAP R/3」から展開された「SAP Business Suite」 やその後継で「SAP HANA」をベースにした「SAP S/4HANA」 を含む同社の業務アプリケーション群は、グローバルで事業を展開 する多くの企業で採用されている。SAPは近年、SAP自社クラウ ドサ ービ スとして、エンタープライズ 向けに「SAP HANA
Enterprise Cloud」(以下、HEC)、クラウドネイティブ開発者向 けに「SAP Cloud Platform」(旧SAP HANA Cloud Platform)
IBM 平山毅氏
注:Amazon Web Services、Microsoft、IBM、Google の 4 社。
を提供開始したことに加え、複数のクラウドベンダーとパートナー シップを締結し、ユーザー企業におけるSAP環境のクラウド化を 積極的に支援している。
SAP Cloud on IBM Cloud :
SAPとIBMの先端技術を最大限に活用し
デジタルイノベーションを実現するプラットフォーム
まずIBMは、クラウドの戦略的なパートナーシップにおいて、 パートナーのクラウドサービス基盤を支えるクラウドOEMのよう な形態も多く提供している。SAPが自社サービスとして提供する HECも、インフラには「IBM Cloud」をプラットフォームのひと つとして使用しているという。しかも、IBM CloudはHECのプ ラットフォームとして登場当時からの提供ということで、実績も折り 紙付きだ。他にも同様な協業モデルとして、VMwareが提供して いる「VMware Horizon Air」、Boxが提供している「Box Zone」、 Workdayが提供している「HCM」などもIBM Cloudから提供 されているという。SAP CloudとIBM Cloudの間の技術的な親 和性の高さはもちろん、他の協業しているクラウドサービスとの連 動性も高いというわけだ。
「最新のSAP Cloud Platform(旧HANA Cloud Platform) は、先進的で素晴らしく、アプリケーションの実行環境もCloud Foundryをベースにしているため、『IBM Bluemix』とも互換性 があり、『IBM Watson』、SAP HANAといったそれぞれのクラウ ドの特徴的なサービスを使えます。ただし、SAP HANAをベース としたクラウドネイティブアーキテクチャになっているため、マイク ロサービス対応が必要になります。従来型のアプリケーションとの 連携も必要になるでしょう。IBMは、その点でもお手伝いができ ます」と平山氏は言う。 「SAP R/3」はERPのデファクトスタンダードとして長期にわた り利用され、そこからさらに展開された「Business Suite」など の業務アプリケーション群は、ミドルウェア「SAP NetWeaver」、 BIツール「SAP Business Objects」を中心にしつつも、データ ベースとOSは他社製も含めマルチプラットフォームで提供される
という特徴があった。そして、2010年にリアルタイム経営を目指 し開発されたSAP独自の超高速インメモリデータベース「SAP HANA」が登場した。SAP HANAは、ソフトウェアではなくアプ ライアンスとして提供されるという特徴があり、当初はSAP R/3 で選択できる1つのデータベースという位置付けであった。 2014年に東京でHECが利用開始になり、データベースはSAP HANAが前提となった。そして2015年には、実にSAP R/3登 場から23年を経て次世代バージョンのERP「SAP S/4HANA」 が登場した。IBMのコンサルチームのナレッジを蓄積したテンプ レート集である「Global Express」を活用することで簡易に実装 することができ、IBMの次世代コグニティブBIツールである 「Watson Analytics」でもSAP HANAのデータ解析が可能に なっている。そしてSAP S/4HANAもSAP Cloudと同じくデー タベースはSAP HANAが前提となっている。
さ ら に 同 年、SAP S/4HANAを意 識 し た「SAP HANA
SPS11」が登場し、アプリケーション実行環境としてCloud
Foundryにも対応し、Hadoop連携も可能になったため、クラウ ドネイティブアプリケーションからもSAP HANAが使いやすく なった。そして、同時期に登場した「SAP Cloud Platform」は、 このCloud Foundryベースのアーキテクチャを採用し、完全なも のになったといえる。
「SAPのERPをSAP HANAベースで動かすのがHECであ り、SAPが提供するHECはIBM Cloudでも稼働しています。そ こから得られる最大のメリットは、IBM Cloudと同じクラウドイン フラとしてのデータセンターを活用できるため、災害対策(DR: ディザスタリカバリ)設計を合わせられる点、そしてIBM Cloud の各種サービスとのシステム連携が比較的スムーズに実現できる 点にあります。また、SAP Cloud Platformは実行環境として Cloud Foundryをベースしているため、IBM Bluemixと同様に
DevOpsのサイクルをまわすこともできるため、開発運用スタイル
を合わせることもできます」(平山氏)
近年、IoT(Internet of Things)、コグニティブコンピューティ ング、ブロックチェーンといったワードがトレンドとして注目を集め
ている。こうした言葉が表すコンセプトや具体的なテクノロジーを 実際のビジネスに取り入れることで、イノベーションを触発し、企 業として社会により良いインパクトを与えていこうという指向は「デ ジタルトランスフォーメーション」と呼ばれ、多くの企業がその実 現に向けた取り組みに着手しようとしている。IBM Cloud上に展 開されるHECは将来的な戦略の一環としてデジタルトランス フォーメーションの実現を目指す企業にとって効果的な選択肢の1 つとなるはずだ。 業務アプリケーションが生みだすデータは、高速なインメモリ データベースであるSAP HANAに蓄積され、多様なアプリケー ションからリアルタイムに参照や抽出、加工が行われる。HECは、 設計段階からクラウド環境でも本番利用を想定したサービスと なっており、クラウドならではの必要に応じたシステムを柔軟に拡 張、縮退もできる。さらに、モバイルやIoT、コグニティブといっ た最新のデータ活用に発展させることを視野に入れている場合は、 そのために必要な環境であるPaaSが、同じIBM Cloud上にあ るIBM BluemixやSAP Cloud Platformにも用意されている。 「接続性、可搬性という点で、IBM CloudはSAPとの親和性が
高いだけでなく、SAPとIBMのクラウドは、開発・テストを中心 にした用途のクラウド環境と本番運用を想定したクラウド環境の2 種類を提供しているので、合わせて使い分けもできます。SAPア プリケーションは、SAP Cloud PlatformからHECに、IBM BluemixアプリケーションであればPublicからDedicatedに移 行することが可能です。双方ともマネージドに提供されるため、お 客さま側でインフラ運用の考慮は不要です」(平山氏) 最新のテクノロジーをベースとした新たなビジネスモデルやイノ ベーションを、旧来の環境やアプリケーションの中だけから生みだ すことは難しい。デジタルトランスフォーメーションの実現を目指す のであれば、イノベーションを促進するクラウドプラットフォームで あるかどうかも、移行先のクラウドを選択する際の重要な要件とな る。SAP on IBM CloudにおけるHECは、その意味での発展性 に期待が持てると考えてよいだろう。SAPとIBMのデジタルイノ ベーションを促進するパートナーシップについては、以下のような プレスリリースを発表しているため、合わせて参照されたい。 1. 「SAPとIBM、エンタープライズ・クラウドの導入を加速する パートナーシップを提携」 http://www-03.ibm.com/press/jp/ja/pressrelease/48691. wss
2. 「IBM Global Express、SAP® S/4HANAとのモバイ ル連携やアナリティクス連携を強化」 http://www-03.ibm.com/press/jp/ja/pressrelease/48385. wss 3. 「IBMとSAP、顧客のデジタルトランスフォーメーションを促進 する大規模な投資計画を発表/日本IBMとSAPジャパン、デ ジタル変革への支援を強化するため日本国内での協業を深化」 https://www-03.ibm.com/press/jp/ja/pressrelease/50251. wss
4. SAP AribaとIBM、コグニティブ調達ソリューションで提携− 「Leonardo」と「Watson」活用(英語)
http://www-03.ibm.com/press/us/en/pressrelease/52405. wss
IBM Cloud for SAP Applications:
SAP部分もマネージドに提供されつつ
プラットフォームの選択肢が多いPaaS
SAP on IBM Cloudのメニューの1つとしてIBMが提供する 「IBM Cloud for SAP Applications」(以下、C4SAP)は、一 言で言えば、ユーザー企業の希望に合わせたSAPアプリケーショ
ンをIBMがマネージドに提供することで、その運用管理までを行 うサービスである。 オンプレミスで大規模にSAPアプリケーションを運用している 既存のユーザー企業にとって喫緊の課題は、ハードウェアリプレー スのコスト、運用コストを削減しつつ、DR要件を満たすことにあ る。C4SAPではこうしたニーズに対応するために、クラウド環境 において、ハードウェアやSAPも含めた運用管理全般をIBMが マネージドに担う。そのため、ハードウェアや運用の課題を解決で き、かつユーザー企業はシステムの利用やカスタムアプリケーショ ン部分の保守運用にリソースを集中できる。
また、従来はIBMが提供するCloud Managed Servicesの データセンターのみで提供していたが、最新のC4SAPでは、 Bluemix Infrastructure(旧SoftLayer)のデータセンターでも 同サービスを受けることができ、グローバルデータセンターの場所 の選択肢も増えているという。 平山氏は「既存SAP環境をオンプレミスからクラウドに移行し たいというお客さまにフォーカスした場合、SAP部分も含めてマ ネージドにクラウドサービスとして提供を受けたいというニーズが 多くあり、引き合いが急増しています。さらに、SAPの必要とさ れる運用対応範囲に応じて、3段階のメニューをお客さま要件に 合わせて選択できる点もポイントです」と語る。C4SAPは、こう したユーザーニーズに合わせたサービスなのである。
3段階のメニューとは「Base」「Standard」「Full」の3つだ。 「Base」はSAP導入のみが含まれ、「Standard」にはSAP監
視が追加され、「Full」にはSAP運用管理において必要となるさ まざまな拡張サービスまでが追加されるという。また、SLA(サー ビスレベル保証)もこの3段階に合わせて共通で定義され、SAP サービスの稼働有無の観点で測定されるという。一般的にはIaaS (Infrastructure as a Service)上でSAPを構築した場合は、ク ラウドのSLAはIaaS部分までになるため、SAPサービスでSLA を保つためには、構築者側で担保する必要が出てくるが、C4SAP であれば、SAPシステムとして一体的にクラウド側でSLAが定義 される点も安心だ。
C4SAPが、他のIaaSとしてSAP認定を受けているクラウド サービスと決定的に異なる点は、ユーザー企業が希望するSAP環 境の「提供」と「運用管理」の双方について、IBMが引き受けて くれる点にある。一般的なクラウドサービスにSAPシステムを構 築する場合、必要なITインフラを調達するIaaS形式で仮想サー バを立て、その上にSAP環境を構築する必要がある。この際、環 境構築と構築後のSAP環境の運用管理は基本的にユーザー企業 側の仕事になる。ここで削減できるのは物理的なサーバの調達コス トと、インフラ部分の運用管理コストに限られてしまうのだ。 C4SAPは、IaaSではユーザー企業側の仕事として残ってしまう SAP環境の構築と運用管理の部分も含めてIBMにアウトソースで きる点が、IaaSベースのクラウド移行との大きな違いになる。 また、IBM Cloudでは、SAPを部分的に自由に構成したい、 SAP周辺システムをサーバ上に構成したい、クラウドでは人気の 高いマネージドデータベース(DB)だけにしたい、といったニーズ に合わせてメニューも同じデータセンターで選択できるように用意 しているのだ。その場合、運用サービスの範囲のレイヤーは下がっ ていく。 「SAPシステムは、基幹業務を受け持つという性質から非常に 複雑な構造であり、同時にミッションクリティカルな運用管理が求 められたため、C4SAPのようなミッションクリティカル要件を満た したマネージドサービスへの期待値は非常に高くあります。一方 で、SAPシステムには、お客さま環境固有の独自のジョブ制御や 周辺の連携システムや帳票システムもあり、このようなシステムは IaaS上に構成し、C4SAPと連携する必要があります。IBM Cloudであれば、C4SAPとIaaSが同じデータセンターで提供さ れ、シームレスに連携できる点もポイントです」(平山氏)。 一般的なマネージドサービスは、選択できるOSやミドルウェア に制約があったり、ユーザーがそれらを意識する必要がなかったり する。しかしながらSAPシステムの場合は、選択するOSやデー タベースによって、信頼性、セキュリティ、性能といった部分に影 響が出てくる。また、既存システムからクラウドに移行したい場合、 OSやデータベースを変えたくないというケースも多いだろう。 図4 C4SAPプランごとの対応範囲(2017年6月時点)
C4SAPはマネージドであるにもかかわらず、データベースや OSのコンポーネントを柔軟にカスタマイズできるという。OSは 「IBM AIX」、データベースには「Oracle Database」やSAP
HANAまで選択できる。特にSAP HANAはSAPからアプライ アンスで提供される特徴があるが、物理、仮想の両方に対応し、 18TBまで標準でスケールアウトが可能である。比較的規模が大き
いSAP HANAベースのSAPシステムへの切り替え時には、
C4SAPは有力な候補になるはずだ。
また、ミッションクリティカルなDRも構成しやすいという。 「C4SAPは、IBM CloudにおけるCMSとBluemix Infrastructure
の両方から提供されているため、グローバルに豊富なデータセンター が選択できます。また、これらのデータセンター間は、専用線で全て 接続されているため、DRで求められるデータレプリケーションや切り 替えが行いやすく、それらもマネージドに提供されるため、複雑なDR 設計やDR運用の考慮が不要なのは、お客さまにとって大きなメリッ トになるはずです」と平山氏は説明する。 C4SAPを利用することで、ユーザー企業は従来型のSAPアー キテクチャや、その環境で蓄積したデータ資産などを生かしなが ら、そのインフラをクラウドへ移行し、かつ手間の掛かる運用管理 をアウトソースできるようになる。「コスト削減」に加え「既存要件 の踏襲」、「グローバル展開」にも主眼を置いてクラウド移行を検 討している多くのユーザー企業にとって、そのメリットを最大化で きるのがIBM CloudのC4SAPというわけだ。
図5 C4SAPとIaaSの組み合わせ
SAP on IBM Cloud:
ベアメタルサーバやグローバルネットワークも
活用できる自由度の高いIaaS
ERPをはじめとする業務アプリケーション群のクラウド移行に は、常に多くの技術的な課題がつきまとう。基本的に「パブリッ ク」な環境であるクラウドに基幹システムを置くことで直面する、セ キュリティやガバナンスの課題、性能問題、さらには可用性を維持 するためのバックアップ構成をどのように確保するか、オンプレミス のシステムや他のクラウドサービスと相互に連携できるハイブリッ ドなアーキテクチャをいかに構築していくかといったことは、クラウ ドの活用に当たって避けて通れない課題だ。HECやC4SAPでは これらをクラウドサービスでマネージドに対策してくれたが、IaaS ベースのIBM CloudでSAPアプリケーションを利用した場合には、その点もユーザー企業側で担保しなくてはならない。 IBM CloudのIaaSであるBluemix Infrastructure(旧 SoftLayer)は、他社とは違いベアメタルサーバに対してSAP認 証があるという点は特筆したい。ベアメタルサーバ上でSAPシス テムを構成するため、実質的には専有(シングルテナント)で利用 でき、リソース共有と仮想化によって影響を受ける、性能やセキュ リティというパブリッククラウド固有の問題からも解放されるとい う。また「IBM Cloudが、SAPアプリケーションを稼働させる場 合に重要なサーバインスタンスベースのSLAを提供している点も 重要なポイントだ」と平山氏は言う。従来のSAPプラットフォー ムは、サーバの状態に強く依存したアーキテクチャになっており、特 定のサーバに起きた障害がシステム全体に甚大な影響を及ぼす ケースも少なくなかった。Bluemix Infrastructureではベアメタル サーバ単位で2時間以内復旧のSLAを出している。「ベアメタル
図7 SAP on IBM Cloudの提供データセンター
サーバを使うことで、NICやケーブルネットワークも専有できるた め、トラブルシュートもしやすい。SAPプラットフォームのIaaS 運用に当たって、より分かりやすく信頼できるサービスを提供でき、 従量課金、スケールアウト、グローバル展開といったクラウドなら ではのメリットも享受できます」(平山氏) もう1つ、C4SAPでのメリットでも伝えた通り、特にグローバル 展開をする企業にとっては、グローバルで拠点を持つBluemix Infrastructureのデータセンター間が専用線の安定したネットワー ク環境で接続されていることも大きなメリットとなるだろう。グロー バルリージョンをまたいだDR構成、可用性を高めるためのアクティ ブ−アクティブ構成などを取りたい場合、Bluemix Infrastructure は信頼性の高いバックボーンを提供してくれる。
Bluemix InfrastructureでSAPシステムを構成する場合は、 SAP認定サーバを選択する。サーバの選択画面で「SAP認定サー バ」と表示されるため、分かりやすいはずだ。アプリケーションサー バであるSAP NetWeaver用とSAP HANA用でそれぞれ3つ のサーバタイプが選択できるようになっている。
アプリケーションサーバとデータベースサーバを一体にした 2Tier構成は、RDBに対して行えるが、スケールアウトはできず、 HANAの場合は構成ができない。アプリケーションサーバとデー タベースサーバを分離した3Tire構成にすると、SAP HANAが対 応でき、SAP NetWeaverのスケールアウトも可能になる。現在 では、ベアメタルサーバに対する認証だけであるが、Bluemix
Infrastructureには、VMwareやIBMプロセッサーであるPower も提供されているため、将来的にはSAP環境の選択できるように なる可能性もある。
以上で述べてきたように、SAP on Bluemix Infrastructureで は、企業レベルでクラウドを活用していくに当たって見逃すことが できない多数の優位性を有していると言えるだろう。
高い信頼性が求められるSAP環境の
クラウド移行に向けた「最善の選択肢」
今回紹介したSAP on IBM Cloudの3つのサービスラインアッ プは、「デジタルトランスフォーメーション」「既存環境の移行と運 用のアウトソースによるコスト削減」「ITインフラの合理的な調達」 といった、ユーザーが基幹システムのクラウド移行に当たって最も 重視する要素に応じて、自由に選択可能だ。 いずれのサービスを選択した場合でも、SAPとIBMとの緊密 なパートナーシップの中で蓄積されてきた信頼関係と実践ノウハウ が反映されることは間違いない。 基幹システムに求められる高い安定性と可用性、さらに耐障害 性といったニーズを犠牲にすることなく、クラウド環境ならではのコ スト合理性や柔軟性、さらにはデジタルイノベーションの創出とい うメリットを最大限に享受したいと考えているのであれば、IBM Cloudは、SAPシステムをクラウドで稼働させる有力な選択肢と なるはずだ。
図9 SAP on Bluemix Infrastructure
日本アイ・ビー・エム株式会社
電話:0120-550-210 Eメール:cloudedm@jp.ibm.com
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IBM
クラウドに関する詳細はこちら・IBM Cloud