Keysight Technologies
CAN
アイダイアグラム・マスク・テスト
アイダイアグラム・マスク・テストは、今日のシリアル・バス・アプリケーションで広く使用されています。 アイダイアグラムは、ビットが有効になっているタイミングを表示するために、オシロスコープで捕捉し たすべてのビットを無限に重ね書きします。これにより、システムの物理層特性の品質に関する複合的な 全体像が得られ、振幅の変動、タイミングの不確かさ、発生頻度の低い信号異常などがわかります。
Keysight 1000/2000/3000T/4000/6000 XシリーズオシロスコープにCAN/LINトリガ/デコードオプ ションとマスク・テスト・オプションを搭載すれば、差動CAN(Controller Area Network)2.0信号に対し てアイダイアグラムテストを実行できます。キーサイトのウェブサイトから、以下のマスクファイルを無 料でダウンロードできます。お客様のUSBメモリに適切なCANアイダイアグラム・マスク・ファイル(ボー レート、プロービング極性、ネットワーク長に基づいたもの)を保存してご利用ください。以下のCANマ スク・テスト・ファイルを使用できます。 –CAN-diff (H-L) 125 kbps-400m.msk –CAN-diff (L-H) 125 kbps-400m.msk –CAN-diff (H-L) 250 kbps-200m.msk –CAN-diff (L-H) 250 kbps-200m.msk –CAN-diff (H-L) 500 kbps-80m.msk –CAN-diff (L-H) 500 kbps-80m.msk –CAN-diff (H-L) 500 kbps-10m.msk –CAN-diff (L-H) 500 kbps-10m.msk –CAN-diff (H-L) 800 kbps-40m.msk –CAN-diff (L-H) 800 kbps-40m.msk –CAN-diff (H-L) 1000 kbps-25m.msk –CAN-diff (L-H) 1000 kbps-25m.msk 3000Tまたは4000 Xシリーズオシロスコープを使用すれば、CAN FD信号に対してもアイダイアグラム・ マスク・テストを実行できます。CAN FDのアイダイアグラムは、すべてのCAN FDフレームのFDフェー ズの最初の10ビットが基準です。しかし、このアプリケーションノートでは、CAN FD信号ではなく従来 のCAN 2.0信号でのアイダイアグラム・マスク・テストを紹介しています。
CANアイダイアグラム・マスク・テストは、差動バス上のすべてのリセ シブビットとドミナントビットを捕捉して重ね書きしたものです。差動 バスは差動アクティブプローブでプロービングする必要があります。キー サイトは、図1のN2818A 200 MHz差動アクティブプローブの使用を推 奨しています。このプローブはKeysight AutoProbeインタフェースに対 応していて、自動的にオシロスコープの入力インピーダンスと減衰比が 設定され、アクティブプローブへ電源も供給できます。 他に、より安価なN2791A 25 MHz差動アクティブプローブも使用でき ます(写真なし)。このプローブを使用する場合は、プローブの減衰比を 10:1(100:1はなく)に設定し、プローブの出力をオシロスコープのデフォ ルト値である1 MΩ入力に終端する必要があります。また、オシロスコー プまたはバッテリーからUSBケーブルで電源を供給する必要があります。 システムのDB9-SubDコネクタに接続する必要がある場合は、CAN/ FlexRay DB9プローブヘッド(パーツ番号:0960-2926)をご利用くださ い。この差動プローブヘッド(図1の写真の挿入部分)は、N2818Aと N2791Aの両方の差動アクティブプローブに対応し、CAN/FlexRay差動 バスに簡単に接続できます。 差動アクティブプローブを使用して、ドミナントビットHIまたはLO フォーマットの差動CANバスの信号を表示できます。プロービングの極 性のうち一方を使用してCANアイダイアグラム・マスク・テストを実行 できます。ドミナントビットHI信号を確認するには、差動プローブの「+」 入力(赤)をCAN_Hに、プローブの「−」入力(黒)をCAN_Lに接続します。 図2は、ドミナントビットHIフォーマットの差動CAN波形です。 ドミナントビットLOフォーマットの信号を確認するには、差動プローブ の「+」入力(赤)をCAN_Lに、プローブの「−」入力(黒)をCAN_Hに 接続します。バスに対してこのように差動プローブを接続するのは直感 とは異なり逆向きに思えるかもしれませんが、CAN信号のタイミングダ イアグラムは一般的にドミナントビットLOフォーマットで表示されま す。このフォーマットでは、バスのアイドルレベルは常にHI(レセシブ) です。また、CANフレームの送信中は、HIレベル信号(レセシブビット) は常に"1"として解釈され、LOレベル信号(ドミナントビット)は常に"0" として解釈されます。図3は、ドミナントビットLOフォーマットの差動 CAN波形です。 図1. N2818A 200 MHz差動アクティブプローブおよびDB9プローブヘッド。 図2. 差動CANバスのプロービングによるドミナントビットHIの表示。 図3. 差動CANバスのプロービングによるドミナントビットLOの表示。
差動
CAN
バスのプロービング
CAN
アイダイアグラム・マスク・テストを
実行するための詳細な手順
CANアイダイアグラム・マスク・テストを実行するには、最初に、オシ ロスコープでCAN差動バスに接続されている入力チャネル以外のすべて のチャネルをオフにします。Default Setupを使用して開始する場合は、 チャネル1のみをオンにします。または、すでにセットアップ済みのオシ ロスコープで差動CANバスにトリガがかかっている状態でも開始できま す。CANアイダイアグラム・マスク・テストは、以下の手順で実行でき ます。 1. USBメモリデバイス(適切なマスクファイルが保存されているも の)をオシロスコープのフロントパネルのUSBポートに挿入し ます。 2. [Save/Recall]フロント・パネル・キーを押してから、[Recall]ソフ トキーを押します。 3. [Recall:XXXX]ソフトキーを押してから、リコールするファイルタ イプとしてMaskを選択します。4. [Location](または[Press to go]または[load from])ソフトキーを押
してから、ボーレートおよびプロービング極性(L-H=ドミナント ビットLO、H-L=ドミナントビットHI)に対応する適切なマスク ファイルに移動します。 5. [Press to Recall]ソフトキーを押して(または入力ノブを押して) CANアイダイアグラム・マスク・テストをロードします。 6. マスクファイルをリコールすると、オシロスコープのタイムベー ス、垂直軸、トリガ設定が自動的にセットアップされ、ディスプ レイの中央の6 divに渡ってCANビットが重ね書きされます。この 特殊なシーケンステスト中は、タイムベース設定とタイミング カーソルの使用はできません。CANアイダイアグラム・マスク・ テストを終了するには、マスクテストをオフにするか、オシロス コープの[Analyze-Mask]メニューの[Clear Mask]を押します。テス トを終了すると、オシロスコープのほとんどの設定がテスト開始 前の状態に復元されます。
アイの解析
CAN 2.0アイダイアグラムテストでは、CANレシーバーのワーストケース のハード同期/再同期/サンプリングをエミュレートする独自のクロッ ク・リカバリー・アルゴリズムを使用して、すべてのCANフレームのすべ ての差動ビットをランダムに捕捉して重ね書きします。図4は500 kbpsの システムボーレートに基づいたCANアイダイアグラム・マスク・テスト で、差動プロービングを構成してドミナントビットLOフォーマットの波 形を確認したものです。このテストは基本的に、ドミナントビットおよ びレセシブビットがレシーバーのサンプリングより前に有効(すなわち、 規定レベルで安定している)かどうかを示すものです。これらは、通常、 約75 %のビットタイムポイントで安定します。すなわち、CANアイダ イアグラムは、オシロスコープの収集と表示タイミングをCANレシー バーのタイミングに同期させて、CANレシーバーでの信号を表示してい ます。結果として、1回の測定でCAN物理層ネットワークのシグナルイ ンテグリティー全体に関する詳細な情報が得られ、ワーストケースのタ イミング、ワーストケースの垂直方向の振幅変動がわかります。 アイダイアグラムの無限に重ね書きされたビットは、六角形の合否判定 マスクと比較されます。このマスクはCAN 2.0の物理層規格に基づくも のです。アイダイアグラムのテストレートを決定する要素は多くありま すが、Keysight InfiniiVision Xシリーズオシロスコープでは、概算バス負 荷が33 %の500 kbpsで動作するCANシステムに基づいて、約10,000ビッ ト/sでテストできます。 図4. 500 kbpsの差動バスをドミナントビットLOフォーマットで表示したCANア イダイアグラム・マスク・テスト ネットワーク遅延×2 1ビットタイム 75 %のサンプリングポイントアイダイアグラムは、垂直軸にさまざまなピークツーピーク振幅を表示 します。差動CANバス上の信号振幅の変動は、主に以下の要因によるも のです。 – システムノイズ/干渉/結合 – 独自の出力特性を示す差動トランスミッター(システムのノード) – ネットワーク長と反射による振幅の減衰 – 複数のノードがドミナントビットを同時(または、ほぼ同時)に送信 したときのアービトレーション/確認応答タイミングフェーズ中で の、ドミナントビット振幅の増加 ピークツーピーク振幅の変化は、図3のようなビットとフレームの連続表 示(アイダイアグラムではない表示)でも確認できますが、アイダイアグ ラムでは、1つの重ね書きされた画像でこのような変動(終端での問題を 明らかにする詳細なパルス形状)を表示できます。したがって、捕捉波形 の始めから終わりまでをスクロールして、1つずつ各ビットを解析しなが ら振幅の問題があるかどうかを確認する必要はありません。 アイダイアグラムの水平軸上に表示されるタイミングの不確かさは、主 に、以下に起因します。 – ワーストケースのクロックジッタ – システム内の異なるノード間のワーストケースのクロック耐力 – ビット時間の量子化(通常、1ビットタイムの1/8∼1/25) – 物理的なネットワーク遅延 このようなワーストケースのタイミングエラーを、共通のトリガポイン トに基づいて連続的な波形(アイダイアグラム表示以外)で確認するのは 極めて困難です。 多くの他のシリアルバス規格では、タイミングの不確かさによって決ま るエッジ遷移位置はゼロ交差ポイント(各ビットタイムの開始と終了) を中心に対称になりますが、マルチノードCAN 2.0ネットワークのエッ ジ遷移位置は、CANアイダイアグラムテストでは非対称になります(図4 参照)。これは物理的なネットワーク遅延がタイミングの不確かさの主な 要因になっているからです。エンジニアによってはこれをランダムなタ イミングジッタと解釈してしまう場合がありますが、実は、CAN物理ネッ トワークを通過した信号のデターミニステックな遅延が表示されたもの です。このようなタイミングシフトの表示は一般的なものなので予測で きます。ただし、これは、シフトしたエッジが被試験CANネットワーク の物理長の仕様範囲内にある場合に限ります。ビットタイム境界の右側 に「エッジがシフトする」現象(常に正の遅延)は、ビットが1つのノー ドから次のノードに送信されてから再度戻ったときの、CANフレームの アービトレーション/確認応答タイミングフェーズ中に発生します。 CANネットワークが長くなるほど遅延も長くなります。
アイの解析(続き)
さまざまなCANに関するアプリケーションノートや仕様書でよく見られ るタイミングダイアグラムは、図5のノードAのCANビットタイミングダ イアグラムです。多くのドキュメントではシングルノードのダイアグラ ムしか掲載していませんが、間隔が広い2つのCANノードをベースにし たこのようなタイミングダイアグラムの図を示すことにより、伝搬セグ メントの重要性を説明できます。 今日のシリアルバス規格の多くで、レシーバーは信号ステートを約50 % のビットタイムポイントでサンプリングしています。しかしCANネット ワークは、非対称にビットを送信するため、各レシーバーのサンプリン グポイントが各ビット周期の終了方向にシフトします。ネットワーク遅 延を補正するために、多くのCANレシーバーのサンプリングポイントは、 通常、約75 %のビットタイムポイントにプログラムされています。これ は"PHASE_SEG1"と"PHASE_SEG2"の間です。以下で具体的な例を考 えてみます。 ノードAがアイドルバスを検出してフレーム開始(SOF)のドミナントビッ トを送信する決定をした場合、そのドミナントビットはCANネットワー クを通じて、離れている多くのノード(ノードB)まで到達する必要があ ります。このビットがネットワークを移動する時間は図5に"tPROP(A,B)" と示されています。しかし、ノードAのドミナントビットが受信される 前にノードBもアイドルバスを検出した場合を仮定してみましょう。ノー ドBには優先順位の高いフレームID(引き値)が割り当てられているとし ます。
CAN
ネットワーク遅延
このノードはもう1つのSOFドミナントビットを送信できます。このビッ トはCANネットワーク(tPROP(B,A))を通過して戻ります。このとき、ノー ドAはこのビットを受信してから、自身のハード同期ポイントに基づい てバスステートをサンプリングする必要があります。ここがノードAが 出力するSOFの始まりになります。これらの2つのノード間でビットを やりとりするアービトレーションフェーズ中のある時点で、ノードBに よって出力されたドミナントビットをサンプリングし、ノードBのフレー ムIDが低い値なので、ノードAはノードBが高い優先順位でバスを制御し ていることを認識します。その後ノードAはレセシブビットを出力して、 差動バスの制御を放棄しノードBに渡します。 このアービトレーションプロセスが適切に動作するには、システム内の 各ノードのサンプリングポイントの位置がワーストケースのネットワー ク伝搬遅延(tPROP)を許容できる必要があります。この伝搬遅延はネッ トワークの片道の伝搬遅延の2倍になります。このような伝搬遅延によ り、CANネットワークで許容される物理的なノード間の最大距離も制限 されます。最大距離はシステムのボーレートの関数になります。また、 実際にはtPROPに複数のタイミング遅延成分が含まれることにも注意が 必要です。これについては次に説明します。 図5. 間隔が広い2つのノードのCANビットタイミングダイアグラムMCU
システムクロック
(ノード
A
)
CAN
システムクロック
(ノード
A
)
CAN
ビット周期
(ノード
A
)
ボーレートプリスケーラー(プログラマブル)
SYNC
SEG
PROP_SEG
PHASE_SEG1
PHASE_SEG2
サンプルポイント
t PROP (B,A)
PROP_SEG
PHASE_SEG1
PHASE_SEG2
サンプルポイント
CAN
ビット周期
(ノード
B
)
SYNC
SEG
tQ
PROP (A,B)
t
t
図6. 一般的なマルチノードCAN 2.0ネットワーク
CAN
ネットワーク遅延(続き)
図6は一般的なCAN物理ネットワークで、ノードAのトランシーバーの入 力/出力にオシロスコープの差動アクティブプローブが接続されていま す。ここではネットワーク伝搬遅延(tPROP)の個々の成分を検討します。 ここでも、ノードAがSOFドミナントビットを出力したと仮定します。こ のビットは、必ず、ノードAのトランシーバー(tXCVR)を通過してから物 理ネットワーク(tBUS)とノードNのトランシーバー(tXCVR)を通過し、ノー ドNのコントローラー(tCONTROLLER)によって処理されます。しかし、こ こでは、このビットが処理/サンプリングされる前に、ノードNが自身 のSOFドミナントビットを出力したと仮定します。このビットはノード Nのトランシーバー(tXCVR)を通過してから物理ネットワーク(tBUS)、ノー ドAのトランシーバー(tXCVR)を通過し、最後にノードAのコントローラー (tCONTROLLER)によって処理/サンプリングされます。このネットワーク で加算しなければならないネットワーク伝搬遅延の合計(tPROP)は以下の ようになります。 物理的なバス遅延成分(tBUS)は、通常、5 ns/mの乗数を使用して計算され ます。トランシーバー遅延(tXCVR)とコントローラーの応答時間(tCONTROLLER) は、選択したデバイスに依存します。CANドキュメントの中には、ルー プ遅延パラメータ(tLOOP)を参照しているものもあります。これは、上記 の遅延成分の一部を組み合わせたものです。ノードのループ遅延には、 ビットがトランシーバーの受信側まで伝搬する時間、コントローラーの 応答時間、もう1つのビットがトランシーバーの送信側に戻ってくる時 間が含まれます。すなわち、以下のように表されます。 したがって、CANネットワーク遅延の合計(tPROP)は以下のように簡単に なります。 ノードA
ノードB
ノードC
ノードN
トランシーバー 最も遠いノードの下りと戻りCAN_H
R
L マイクロコントローラーR
LCAN_L
CAN_H
CAN_L
ワーストケースの遅延は、ネットワークの両端をプロービングすればオ シロスコープで確認できます。中間のネットワークノードをプロービン グした場合は、確認される遅延は小さくなります。CANネットワークで はワーストケースのtPROPを考慮するべきですが、これはオシロスコー プのアイダイアグラムに表示されるものと完全に同じものにはなりませ ん。図6の物理的な図では、オシロスコープの差動アクティブプローブが ノードAの差動バス側に接続されていることに注意してください。つま り、このオシロスコープにはノードAのループ遅延は表示されません。そ れ以外のすべての遅延が捕捉/表示されることになります。 ここまでのCANネットワークのタイミングの不確かさの解析では、単な る物理ネットワークの伝搬遅延に焦点を当てていましたが、タイミング の不確かさのその他の成分として、クロックジッタ、垂直軸雑音に起因 するタイミングジッタ、ワーストケースのノード間クロック耐力を考慮 しなければなりません。 図7は、プロービングしたノードに関するシステムクロック耐力が合計 +1 %(±0.5 %)の場合の例です。このケースでは、エッジ遷移が、最適 なビット境界ポイントに対して左側にシフトしていることがわかります。 すなわち、オシロスコープによって検出されるビット周期は短くなりま す。オシロスコープでマスク違反が検出されていることにも注意が必要 です。これはマスクの右側に赤色で強調表示されています。10ビットタ イムの再同期周期(2つの連続スタッフビット)を積算した場合、+1 %の クロック耐力は、500 kbpsのシステムで200 nsのワーストケースのエッ ジシフトに相当します。 システムのクロック耐力が−1 %の場合は、エッジシフトはビット境界の 右側に現れます。オシロスコープのディスプレイ上には、ネットワーク 遅延成分とは別にクロック耐力エラー成分が表示されます。このケース では(図なし)、マスク違反がマスクの左側に表示されるはずです。この ようなシフトを抑えるために、今日の高速CANシステムの多くは、非常 にクロック耐力が厳密な水晶発振器をベースにしたものになっています。 図7. システム伝搬遅延と、積算されたクロック耐力エラーによるエッジシフトを 示すアイダイアグラム
CAN
ネットワーク遅延(続き)
最適なビット境界 ネットワーク遅延×2 クロック耐力エラー マスク違反オシロスコープのディスプレイ上のマスクは、信号が侵入してはいけな いと定められている範囲を不合格領域として定義しています。オシロス コープディスプレイ上のこのゾーンは、「立入禁止」区域とみなすことが できます。捕捉された波形がオシロスコープのディスプレイのこの領域 に侵入すると、オシロスコープは波形トレースのその部分を赤色で表示 するだけでなく、テストに不合格になったビット数もカウントします。 キーサイトが提供するCANの合否判定マスクは六角形をベースにしたも のです。これは多くのシリアルバス規格で一般的に使用されるものです。 図8は、ネットワーク長(片道)が約10 mの500 kbpsのシステム用のマス クです。このマスクに使用した差動プロービング構成は、ドミナントビッ トLO用です。マスクの上限/下限は、ワーストケースのレシーバーのし きい値レベル仕様に基づき、それぞれ−0.5 V/−0.9 Vに設定されていま す。ドミナントビットHIフォーマットを表示するプロービング向けに、 キーサイトは、マスクの上限/下限レベルが+0.9 V/0.5 Vに設定されて いるマスクも提供しています。 10 mのシステムの場合は、マスクの左側はユニットインターバル(UI)の 30 %に配置されます。1UIはCANシステムのビット周期と同じです (500 kbpsで2 μs)。受信ビットの開始に対してUIタイミングポイント が30 %の場合は、600 nsというワーストケースのシステム遅延を(タイ ミングの不確かさとは別に)テストできます。マスクの右側はUIの90 % に配置されます。 図8. 500 kbpsで動作する10 mのネットワーク用合否判定マスク 図9. 500 kbpsで動作する80 mのネットワーク用合否判定マスク 図9は、ネットワーク長が約80 mのCANシステム用の500 kbpsのマスク の例です。これは、このボーレートで動作するシステムの最大許容ネッ トワーク長の概算値です。このマスクの左側はUIの60 %に配置されます。 これにより、タイミングの不確かさに加えて最大1.2 μsのシステム遅延 をテストできます。 テストマージンを増やすために、10 mのシステムで80 mのマスクを使 用したくなることがあるかもしれません。しかし、10 mのシステムでUI の約50 %にエッジ遷移が生じて、それが図9の画面中央の格子線上に表 示された場合はどうなるでしょうか?この場合は、一般的な75 %のサン プリングポイントで正確にビットをサンプリングするCANレシーバーに 対しては十分過ぎるほどのマージンがあります。しかし、10 mのシステ ムで1 μsというような大きな遅延が生じてはいけません。10 m用のマ スクを使用すれば、システムの潜在的なコンポーネントの問題を検出で きます。例えば、トランシーバーの1つに過剰な遅延がある場合などです。
合否判定マスク
ビット境界 ビット境界 ビット境界 ビット境界まとめ
CANシリアル・バス・プロトコル・アナライザは、CANバスの上位アプ リケーションレベルのデータ転送情報を提供できますが、システムエラー の原因になる個々のビットのシグナルインテグリティーに関してはほと んどわかりません。このような理由で、多くの場合、エンジニアは、 CANトリガ/デコード機能を備えたオシロスコープを使用して、差動 CANネットワークの物理層特性をテストしています。CANアイダイアグ ラム・マスク・テストは、1つの複合測定で物理層全体の品質を評価でき るオシロスコープの重要な測定機能です。オシロスコープのディスプレ イ上で適切なCANアイダイアグラム測定を実行するには、立ち上がり/ 立ち下がりエッジでトリガするだけでなく、より多くの機能が必要にな ります。例えば、再同期(連続した2つのスタッフビット)後のワーストケー スの10番目のビットタイムを捕捉して重ね書きするには、CANレシー バーのハード同期とワーストケースの再同期をエミュレートできる特殊 なトリガとクロック・リカバリー・アルゴリズムが必要です。Keysight InfiniiVision Xシリーズオシロスコープは、差動CANバス信号 のアイダイアグラム・マスク・テスト測定のトリガ、デコード、実行が 可能なだけでなく、FlexRay、SENT、LIN、I2C、SPI、RS-232C/UART
など、車載アプリケーションと産業アプリケーションの両方のシリアス バス規格の解析も可能です。
関連カタログ
タイトル カタログ番号
『InfiniiVision 1000 Xシリーズオシロスコープ』 - Data Sheet 5992-1965JAJP
『InfiniiVision 2000 Xシリーズオシロスコープ』 - Data Sheet 5990-6618JAJP
『InfiniiVision 3000T X-シリーズオシロスコープ』 - Data Sheet 5992-0140JAJP
『InfiniiVision 4000 Xシリーズオシロスコープ』 - Data Sheet 5991-1103JAJP
『InfiniiVision 6000 Xシリーズオシロスコープ』 - Data Sheet 5991-4087JAJP
『InfiniiVision Xシリーズオシロスコープ用シリアル・バス・オプション』 - Data Sheet 5990-6677JAJP
『Keysight InfiniiVisionシリーズオシロスコープ用マスク波形リミットテスト』 - Data Sheet 5990-3269JAJP
『N2790A 100 MHz, N2791A 25 MHz and N2891A 70 MHz High-voltage Differential Probes』 - Data Sheet 5990-3780EN
『Debugging LIN, CAN, CAN FD, SENT and FlexRay Serial Buses』 - Application Brief 5990-9275EN
『FlexRay物理層のアイダイアグラム・マスク・テスト』 - Application Note 5990-4923JAJP
『Evaluating Oscilloscope Mask Testing for Six Sigma Quality Standards』 - Application Note 5990-3200EN
『Using Oscilloscope Segmented Memory for Serial Bus Applications』 - Application Note 5990-5817EN
『オシロスコープ測定ツールによる車載用シリアルバスの効果的なデバッグ』 - Application Note 5991-0512JAJP
これらのカタログをダウンロードするには、以下のURLにカタログ番号を挿入してください。 http://literature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/XXXX-XXXX.pdf
製品ウェブサイト
最新の詳細なアプリケーション/製品情報については、以下の製品のウェブサイトをご覧ください。 www.keysight.co.jp/find/morescopeシステム要件
CANアイダイアグラム・マスク・テストには、差動バスをプロービング するN2818A差動アクティブプローブ(あるいは同等のプローブ)の他に、 Keysight InfiniiVision 2000/3000T/4000/6000 Xシ リ ー ズ オ シ ロ ス コープにCAN/LINシリアルトリガ/デコードオプション(DSOX2AUTO/ DSOXT3AUTO/DSOX4AUTO/DSOX6AUTO)およびマスク・テスト・オ プション(DSOX2MASK/DSOX3MASK/DSOX4MASK/DSOX6MASK)が 必要です。さらに、2000 Xシリーズの場合はバージョン2.30以降、3000 Xシリーズの場合はバージョン2.11以降のファームウェアが必要です。www.axiestandard.org
AXIe(AdvancedTCA® Extensions for Instrumentation and Test)は、
AdvancedTCA®を汎用テストおよび半導体テスト向けに拡張したオープン規格 です。Keysightは、AXIeコンソーシアムの設立メンバーです。 www.lxistandard.org LXIは、ウェブへのアクセスを可能にするイーサネットベースのテストシステム 用インタフェースです。Keysightは、LXIコンソーシアムの設立メンバーです。 www.pxisa.org
PXI(PCI eXtensions for Instrumentation)モジュラー測定システムは、PCベー スの堅牢な高性能測定/自動化システムを実現します。
キーサイトのオシロスコープ
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