155
涌池 の陸水生物学的研究
―特に植物プランクトン及び光合成細菌の基礎生産について―
落
合
照
雄
Hydrobiological studies of the Lake Wakuike.
special reference to the production of phytoplankton
and photosynthetic bacteria
Teruo Ochiai
1. はじめに
涌池 は長野市の西部丘陵地 にあ り,標高565m,湖面積0.023kn2,最大水深10.8mの小池 である。今か ら154年前,弘化 4年 (1847)北信濃 を襲 った善光寺大地震 によって,涌池 地区の凹地が北 の岩倉 山の崩落で堰止め られてで きた池である。 (Figl) この池の湖沼学的研究 は,田中 (1926) によ り 姑め られ, その後,吉村 (1936),上野 (1936)に よる水質、プランク トンな どの調査で 自然状態で の富栄養湖であることが、判明 した。 また、神保 (1939,'40) によ り夏季 を中心 に下層無酸素層 に 光合成細菌が生息 していることが確認 され、光合 1. 1 : Fig1. BathymetricalmapofLake Wakuike.(Tanaka.1926) 成細菌の研究者であったKuznetsovは自著のなか に LakeW akuikeとして記載 している。
156 清泉女学院短期大学研究紀要 (第 19号) 崎 ら
(
1
9
9
5
)
によって も調査 されている。 本稿 は基礎生産力が非常 に高い涌池の植物 プランク トン と、下層 の光合成細菌 の占め るてい る役割 について調査 した ものである。2
.研究方法
筆者 は1
9
6
4
年5
月か ら6
5
年1
2
月 まで原則 として月1
回,湖心 にて採水 ・採集 し,水質, プランク トン,植物 プランク トン及 び光合成細菌 の生産量 の研究 をお こなった。調査項 目は、透 明度,水温
,pH,DO,CO
2,So
宝l,H
2S
,NHI
I
N
,Noを
-
N,N
O言-
N,PO…
ニP,Ca
2+,Mg
2+,Cl,Si
O
2-
Si
,クロロフィルa
量,バ クテ リオ クロロフィルC量 を調べ,植物 プランク トン及 び光合成細菌 の基礎生産量 を測定 した。 プラ ンク ト ンはネ ッ トで採集 した。 この池水 は潅概用水 のため平常 の水深
1
1
m
が、夏季 には6m
程 に低下す る。3
.調査結果
A 一般条件○
透明度 最小値 は0.
3
6
m
,最大値 は1.
1
5
m
で,平均値 は0.
7
3
m
と非常 に小 さな値 を示 した。冬停 滞期 か ら春循還期 にか けてやや値 が大 き く,夏停滞期 は小 さ くなった。秋循還期 は値 の 変動が大 きかった。 ○ 水温 (Fig 2-A) 夏停滞期 は池表面 が最 高値 の3
0
o
C
を越 える こ とが あ り,池底 水 温 は夏期9o
C
,冬期5o
C
で あ った。夏停滞期 の水温躍 層 は水深3m
との間 にみ られ,地表面 との水温差 は1
9
o
C
と非常 に大 きかった。O
pH
(Fig2-B)
春循還期の終 り頃か ら夏停滞期 にか けて池表面 は9.
0
以上 の高 い値 を示 し,その最高値 は9.
7
であった。秋循還期 は7.
6
-8.
0
で上下層間 にあ ま り差 が な く,続 く冬停滞期 はそれ よ りやや低下 して7.
5
-7.
8
の等量値 で地表面か ら池底 まで連続 していた。池底 は秋循還4 5 6 ( tlI ) tPd aG
0
1
2 345
6 7 8 9(≡)LrTdaG
3
4 5 6 7 8 9 (Lu ) tfl d占 落合 :涌池の陸水生物学的研究 1964 19 6 5MayJuneJulyAug Sept.Oct.Nov Dec Jam.Feb. Mar Apr・MayJuneJuly・AUKSept.Oct.Nov.Dec.
1996 「 T T-・一・丁 J■「 .. 一 丁 :Jr TT LT: ■「 」 「 「 .「 .T -、■ ■ 1 」 ∴ ::I . ___I . 1日 。 l ll1-: lH . ∴ .1∵ 十 ㌦ i _I . t ∴ __ l l 二_ _ - _ _ _ _二 - -= 丁 4 . _ 一二 二Il"二 二 二 _ 」 1964 1965 1966
MayJune July Aug Sept. Oct.Nov.Dec.Jam.Feb.Mar.Apr・MayJune.Jly Aug.Su epL OctNov.Dec Jam
1964 1 9 65 1966
MayJuneJulyAugSepL
O
c
L
No v .De c .Jam.FebMar.AprMayJuneJulyAugSeptOct.Nov.Dec Jam.Feb.157
Fig2.Seasonalchangesofwatertemperature(A),hydrogenionconcentration (B)anddissolvedoxygen(C)inLakeWakuike・
158 清泉女学院短期大学研究紀要 (第 19号) 期,冬停滞期以外 は7.2-7.3を示 していた。
○
溶存酸素量(
DO)(
Fi
g2-C)
パーセ ン トで表示 してある。池表面 は秋循還期か ら冬停滞期 にか けて100%以下の時期 がある外 は,すべて飽和度 を越 え,最多 は夏停滞期の205%であった。 富栄養湖である涌池 は夏停滞期 に,溶存酸素の躍層が形成 される。 そ してその下層 は 無酸素層 となる。その最大の ものは池表面か ら 1mまでは酸素層であ り,それ以下池底 ま での5m間は無酸素層であった。○
二酸化炭素(
C
O 2) 地表面 の夏停滞期 は20-50/J
g・J1程度存在 し,他 の時期 は50以上90/`g・7-1であった。 夏停滞期,秋循還期 は池表面 より池底 の方が多い分布 を示 し,冬停滞期,春循還期 は 上下層等量分布であった。 測定 された値 はすべて光合成 をす る為の条件 としては充分の量であった。○
硫酸 イオ ンSO至
全層 に125FL
g・l1以上含 まれていた。池表面 は140-236pg・l1,池底 は125-265JLg・ J1で、垂直変化では上層 よ り下層の方が多い分布 であったが,時 に等量分布 の ことも あった。なお,1965年1月,冬停滞期の地底直上 に335/`g・7-1の最大量が存在 した。1964 年 よ り1965年の値 はや々下 まわっていた。○
硫化水素H
2S(
Fi
g3-A)
春循還期の終 りか ら秋循還期始 めにか けて下層無酸素層 に硫化水素が生成 され る。 こ れ は含 まれていた硫酸イオ ンが還元 されて生 じた ものである。無酸素層上限か ら池底 に か けて量 は次第 に多 くな り,池底 の最大量 は16-18FLg・l1であったo しか し、冬停滞期か ら春循還期 にか けては消失 して存在 しなかった0(
⊃
カル シウムイオ ンCa
2十 滴池の上層 は38.0-62.9〟g・J1,底部 は44.0-93.5/J
g・J1で、上層か ら池底 にかけて 次第 に多 くなる傾向があった。 これ らの量 は普通の湖沼 に比べてかな り多 い。○
マグネシュウムイオ ン Mg2+ 涌池の上層 は18.0-62.9/Jg・J1,底部 は22.0-58.0/J
g・J1で,上層か ら池底 に向かっ て次第 に多 くなる傾 向が認 め られた。 これ らの量 は普通の湖沼 に比べてかな り多い。 ○ 塩素イオ ン Cl0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 ( u ) t D d a Q
0
1
2 3 4 5 6 7 8 9 ( u ) to d 占0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 (t lI) tP da GFig3.Seasonalchagesofhydogensulphide(A),Ammonia(B)andNitrate(C) inLakeWakuik.
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 ( ≡ ) LP d a o 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 ( ≡ ) 卓 d 占 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 ( u ) 卓 d ヌ ー
Fig4.Seasonalchangesofphosphate(A),chlorophylトa(ち)andbacteriochlorophyll c(C)inLakeWakuike.
落合 :涌池の陸水生物学的研究 161 B 栄養塩
○
ア ンモニ ウムイオ ンーN
,NH.
LN
(
Fi
g3-B)
春循還期 の終 りか ら冬停滞期 の始 めにか けて、池表面 で は5-820〟g・J1が存在 し,下 層 は510-4350JL
g・lllと非常 に多量 に蓄積 していた。下層 の上 限 は無酸素層 の上 限 と一 致 し,池底 に向か って次第 に濃度 を増 していた。冬停滞期 には,710-950/Jg・J1の量 で 全層 に等量分布 していた ものが,春 に向か って三分 の一程度 の170-330〟g・J1濃度 とな る。 これ は光合成 に活用 され る ものの外 に,地表面か ら放 出 され るのが その理 由 と思わ れ る。○
亜硝酸 イオ ン-
N,
N
O
貢
-
N
秋循還期 の終 りか ら冬停滞期 の始めにか けて出現 した。 1- 4〟g・J1で,ほぼ全層 の 等量分布 であった。 1965年10月の分布量 は違 っていた。地表面 か ら水深4mまで は0.5- 3/J
g・J1で あっ たが, 5m層 か ら次第 に増 え,池底部7mで は3890/J
g・7-1と多量であった。 この ことは 底泥か らのN0
2の溶 出の様子 を示 してい る もの と考 え られ る。 春先か ら秋循還期 にか けては,全層tr.∼0.3JJ
g・7-1とわずかな量であった。○
硝酸 イオ ン-
N,
N
O
訂
-
N
(
Fi
g3-C)
秋循還期 の終 り頃か ら冬停滞期 にか けて2-30pg・l1で,全層等量分布 の傾 向 を示 し ていた。 1965年10月の分布量 は,池表面か ら水深3mまで はtr.か ら19/J
g・J1まで増減 しなが ら下降 し,4,5m層で156-237〟g・Jrlと大量 に出現 し, それ以下で は消失 した。 夏の停滞期 で は0.1/Jg・J1程度 の出現 の時 と,1- 5/J
g・J1の場合が あったが,いずれ も池表面 とその直下 のみに認 め られた。○
リン酸 イオ ンーP,PO3
㌦P (
Fi
g4-
A)
春循還期 の終 りか ら秋循還期 にかけて,池表面付近 で は1-24FL
g・l1が含 まれ ていた が,下層 は48-450/Jg・J1と非常 に多量 に蓄積 されていた。 下層の上 限 は無酸素層の上限 と一致 し,池底 に向か って次第 に高濃度 となっていた。 冬停滞期 は初期15-20pg・l1で,全層等量分布 であったが,次第 に1- 6pg・l11位 の 低濃度 となっていった。162 清泉女学院短期大学研究紀要 (第 19号)
○
ケイ酸Si
O
2-
Si
池の上層は3-10pg・l1,底部 は6-14JLg・l-1で,上層か ら底部 に向かって濃度 を増 していた。 C クロロフィル,バ クテ リオ クロロフィル と生産量○
クロロフィルa
量 (Fig4-B) 植物 プランク トンの分布域 と分布量 について調べた。 池表面のクロロフィルa量 は常 に20〟g・7-1以上であった。 秋循還期か ら冬停滞期 にかけては池底 まで酸素層であるので,植物 プランク トンが生 息 しているが, その外の時期 は酸素層が上部 に限 られているので, ある程度の深度 まで しか分布が認 め られなかった。 夏停滞期 は池表面ではな く,その直下の1- 2m層 に多量 なクロロフィルa量が存在 した。年 により異 なるが,60JJg・J1,12011g・7-1が最大量であった。 冬停滞期では,最多100JL
g・
l
l
lが水深1- 4m間 に認 め られ,80pg・l-1とい うかな りの 量が7.5mの底部 まで分布 していた。○
バ クテ リオクロロフィルC量 (Fig4-C) 涌池の下層 には光合成細菌が生息 している。 以前 は紅色硫黄細菌Chr
o
mat
i
um
であったが,現在 は緑色硫黄細菌Chl
o
r
o
b
i
um
に変 わっている。 この緑色硫黄細菌の光合成色素 はバ クテ リオ クロロフィルC (Bacteriochlorophyll.C)
で,分布量 を調べた。 バ クテ リオクロロフィルCの分布 は水深2- 3mを中心 に最大量が測定 され, これ を 上限 として,以下,池底 に向か って減少 していた。緑色硫黄細菌 は酸素層 には生息せず, 上部の酸素層の下限,無酸素層の上限近 くの薄い硫化水素層 に最大量分布 しているので ある。 ちなみに、硫化水素 はこの細菌の光合成の素料である。 春循還期か ら秋循還期 まで形成 され る下層の無酸素層 は,また硫化水素含有層 と一致 す る。 最大量 は1964年140〟g・l1,1965年 は111〃g・l1で,冬 ・春期 の分布 は認 め られない.0
植物 プランク トンの基礎生産 湖表面 1m2で補償深度 までの柱状 内容積 を生産層の単位 とす る.涌池ではこの深度 は落合 :涌池の陸水生物学的研究 163 May. June.July・ Aug. Sept. Oct. Nov. Dec. Jam. Feb. Mar. Apr O2gm-2・day' 10 8 6 4 2
0
May. Jtme.July・ Ang. sept. Oct・ Nov・ Dec・ Jam. Feb. Marl Apr・ Fig5.Seasonalchangesofchlorophylトa(A)andgrossproduction(B)inthewatercolumnfrom surfacetocompensationdepthin1964-1965.
ほぼ 2mにあた る。 この生産 層 に含 まれ る植物 プランク トンの ク ロロ フ ィルa量 をみ る と, (Fig5-
A)
秋循還期 の終 り頃か ら冬停滞期 中頃 にか けて は100mg・m 2で あ り, この池 の最大量 は 158mg・m12であった。夏停滞期 は50mg・m-2で、か えって減少 していた.なお最低量 は 9月の24mg・m-2であった。 植物 プランク トンの基礎生産量 (総生産量) は,深度別 に採取 した池水 を酸素 ビンに 入れて1日現場 につ るす明暗 ビン法で,測定 は酸素法 (酸素滴定) によった。ただ し, 1965年 7月か ら10月 までの 4回は1
4
C
O 2法 に よった ので結果 を0 2に換 算 して用 いた。 (Fig5-B) 高い生産量 は夏停滞期 にみ られ,4.5-10.402g・m 2・day lで,最大量 は8月 にみ られ清泉女学院短期大学研究紀要 (第 19号)
May. June.July. Aug. Sept. Oct. Nov. Dec. Jam. Feb. Mar. Apr. Fig6.SeasonalchangesofassimilationnumberinLakeWakuike.
た.春循還期 が6.5-7.002g・m 2・day-1と続 き,秋循還期,最後 に0.9-5.202g.m-2・ day-1の冬停滞期の順であった.なお,総生産量 に含 まれ る呼吸量 は,秋 ・冬期 は50%程 度 とやや多い傾 向を示 した。 植 物 プ ラ ンク トンの光 合成活性 を調 べ るた め湖 表面水 を酸素 ビンに取 り,池 面 に並 べ て現場 で正午前後数時間 自然光 にあてた。この結果得 られた同化指数 を示 した。(Fig6) 指数 は 7月 と9月に高 く, 8月は低下す る 2山型 を示 し,冬期 を中心 に低下 していた。 最大値 は39.002mg・Chl/aJl・hr1.,最少値 は5.502mg・Chl.-a 1・hr1.・であった。
Table1 MainPlankton
タロオ コックス ノ/ アナベ ノブシス ムシモ ツノモ クラ ミドモナス ミタラクティニウム ホル ミデ ィウム ツボワムシ アカツボワムシ ツノワム シ コシボソカメノコワム シ シボ リフタロワムシ ニセカメノコワムシ タイホクケンミジンコ ケンミジンコの幼生 Ch7100COCCuSdispe71SuS Ch.minutus Anabaenopsis71aCibwskii Peridinum sp. Ce71atium hirundinella Chlamydomonascingulata Micractinium pusillum Hormidium subtile BylaChionuscalycljlorus B.rubens B.diuersicornis Keratellaualga Asplanchnasieboldi Anuraeopsisjissa Thermocyclopstaihokuensis Naupliuslarvae
落合 :涌池の陸水生物学的研究 165 D プランク トン 主 なプランク トンを示す。 (Tablel) 植物 プランク トンで は藍藻類,緑藻類が多 く,珪藻類 は必ず しも多 くなかった。上野 (1938)が記録 した藍藻の
Anab
e
no
ps
i
sy
l
a
C
i
b
ws
ki
i
はず っ と生息 し続 けている. この種 は熱帯系種 といわれ,生産力 も大 きい。 動物 プランク トンは榛脚類 のほか,輪虫類が多かった。生息 している種か らみて も涌 池 は富栄養湖であることがわか る。4
考察
涌池 は以前か ら無機成分の大変多い池 として知 られ,吉村(1938)は伝導度788J
L
S・
c
m-
1 を観測 した。非火山系水域 としては, これ は非常 に高い値である。 今 回の調査 で は未測定で あったので,1981年 の伝導度 デー タ を示 す。 (Fig7)年 間 500-700J
L
S・
c
m-
1と変動 した.水位 の下が る夏期 はやや低 く,秋 ・冬 は高 い値 で あ っ て, この値 は県内湖沼では最高の値であった。 この多量 な無機成分 は,当然植物プランク トン ・光合成細菌 の生産 を高める条件 とし て有利 に働 くわけである。 涌池の多量 な無機成分 は付近 の湧水等か ら地中に注入 され る と考 えられていたが実証 データはなかった。 小林 (1999)は,涌池周辺の湧泉,地と り跡崩落積土か らの溶出実験,お よび地と り May. June.July・ Aug. Sept. Oct. Nov. Dec. Jam. Feb. Mar. Apr・ Fig7.Seasonalconductancein thesurfacewaterin1981.166 清泉女学院短期大学研究紀要 (第19号)
防止対策集水井排水 を調べ,高い値の硫酸 イオ ン,カル シウムイオ ン,マグネシウムイ オ ン等 を測定 し, これ らが無機の主成分であることを示 した。 ここの基盤土壌 に硫酸 カ ル シウム,硫酸マグネシウム として存在 してた ものが溶 け出 した ものである。(Table2)
Table2 Watergeneralfeature(inorganicionmatters)ofLakeWakuikeanditsaround area.
Locality pH ED Na+ K+ Ca2+ Mg2+ C1
S
o宝
l HCO3-Bentensprlng 6.8 769 19.1 0.9 79ー8 42.0 6.8 247 80.6
Farm pond 9.5 518 15.6 2.2 52.6 24.0 9.1 173 67.0
LakeWakuikeA 6.8 496 12.3 0.8 44.4 26.3 15.3 117 84.4
ED--F
L
S・cm-1,ion・・・・・・FE
g・
l1
(afterKobayashi1999)0
0
0
5 10 50 100 NO盲-NFLgI 0 1000 1 0NO盲-N〟gI-. NHi-N〟gl
-
】0
2000 3000 4000 A' > hNO盲-N
●
lJ
A I●
2 3 4 5 6 7 ( E ) 占 d 占 5 10 501
0
0
Fig8.Verticaldistributionofnitrate,nitriteandammonia.A:November1964,
落合 :涌池の陸水生物学的研究 ここで,植物 プランク トンの生産 にかかわ る栄養塩 NとPの動態 について考 えてみる。 N化合物で は秋循還期 (1964年11月)では (Fi
g8-A)
水温躍層が5mにあ り,NH4+-Nは湖表面 か ら躍層 1 ま で は340-530J
Lg・l 1で あ っ た が, そ れ 以 下 は 270-4350〃
g・才一1と大量 に増加 したoNOを-Nは5mま 2 では2- 4FLg・l 1,.NO31-Nは5-26JLg・lJJlであった が,躍層以下で は減少 していた。 3 冬停滞期 (1965年2月) に入 ると水温躍層 は消失 し, NH4'-Nは上層か ら湖底へ190-400〟
g・l-1と直線的 に 盲 〉4
変化 し,NO21-Nは2- 5J
L
g・lJl,NO3-Nは湖表面111 号二 JLg・l 1か ら湖底59p
gJl-1と変化 した。(Fig8-B) つ ま り,秋循還期か ら冬停滞期 になる と水温躍層が 5 消失 して還元層がな くな り,下層のNH。-Nは,安定型 のNO3--Nに変化 した ことを示 しているo P02一Pの場合,(Fig9)1964年11月で5mの躍層以 下では152-267JLg・lLLlと大量 であったが,12月になる と躍層消失 とともに全 層15-20〟g・l 1と直線 的分布 に変化 していた。 クロロフィルa量か らみて生産層中の植物 プランク トン量が,夏期停滞期でな く秋循還期の終 り頃か ら冬 停滞期 にか けて,最多量 になるのは何故であろうか。 167 POミニPFJgl1 100 200 300 Fig9.Phosphatechangefrom NovembertoDecember 1964. 還元層 に蓄積 されていたNH「N,PO…-Pな ど栄養塩が,冬循環期 にな り上層 に拡散 して全層 に分布 し,植物 プランク トンが これ を有効 に利用 したためである。 生産層中の植物 プランク トンの生産量が,夏停滞期 に必ず しも最多量の植物 プランク トン量でないに もかかわ らず最大量 とな り,秋循還期 の終 りか ら冬停滞期 には,植物 プ ランク トン量が最多量 を占めているのに,生産量が少量 なのは何故であろうか。 それ は水温が限定要因 となってお り,夏期 には高温で植物 プランク トンの活動が高 ま り,秋 ・冬期 は低温で低下 したためである。168 清泉女学院短期大学研究紀要 (第
1
9
号) 下層無酸素層 (還元層) には光合成細菌が生息す る。神保(
1
9
3
9
)
は,夏期下層水が 紅色硫黄細菌Chr
o
ma
t
i
um
で ピンク色 をしているのをみてい る.顕微鏡下で これ に緑色 硫黄細菌Chl
o
r
o
b
i
um
が混生 しているの を確認 している。冬期 には池水 中に認 め られな か ったが,底泥 を ビンに入れ窓辺 に置 いた ところ,両菌が出現 した とい う。 筆者(
1
9
6
0
)
の調査で も下層か ら硫化水素臭 とともに ピンク色 の水が取れたが,水 を 満 した ビンを日光 にさらした ところ緑色 となった。 この時 は両菌が生息 していた。 とこ ろが本研究 を始 めた ところ,すべ て緑色硫黄細菌 のみに変わ っていた。高橋(
1
9
6
8
,'
7
0
)
の調 査 で も緑 色 硫 黄 細 菌 で あ った。pH
が 変 化 す る と この よ うな 交 代 が 起 き る とKu
z
une
t
z
o
uが述 べてい るが,pH
の変化がなか ったので, ここで は説明 にな らない。 この緑色硫黄細菌 はバ クテ リオ クロロフィルCを含んでいる。バ クテ リオクロロフィ ルC
は春循還期 の終 り頃か ら秋循還期 の間 に出現 し, その最大量 は1
9
6
4
年 は1
4
0
〟g・
J
1
,1
9
6
5
年 は1
1
4
F
L
g・
1
lであった。冬期 か ら春先 まで は見 られない。垂直分布 では無酸素層の 最上部 に集中的 に分布 し,底部 に向か って分布量 を減 らしていた。1
9
6
5
年7
月か ら1
0
月の4
回1
4
CO2
法で,上層の植物 プランク トンと共 に緑色硫黄細菌 の光合成量 を測定 した。 植物 プランク トンと緑色硫黄細菌の動態 について若干 の要因 とともに関連 をみ る。1
9
6
5
年8
月(
Fi
g
l
O
-
A)
で は,水温躍層が水深1- 2m
間 にあ り,酸素分布 は1.
5
m
で 消失 し, これ以下 では硫化水素が湖底部 に向か って増加 していた。 C0 2は上層 よ り下層が2倍 も含 まれている。pH
は湖表面8.
7
と高 アルカ リ性 を示すが,変水層下で は7.
4
と減少 してい る。 クロロフィルa量 は池表面 よ り水深1m
では2
倍量 となったが,分布 は ここまでで,1.
5
m
以下 はバ クテ リオ クロロフィルCの分布域 となる。 分布量 は1.
5
m
で5
6
J
J
g・
/
1と大 きな値 で ピー ク とな り,以下,次第 に減少 していた。 総生産量では,植物 プランク トンは池表面 か ら1m
の間で2.
2
-4.
2C
g・
m
-2・day1で あったが,1.
5
m
で は緑色硫黄細菌 の活動域 とな り途端 に0.
3
5C
g・
m
2・day1と上層の1
0
% に減少 した。 緑色硫黄細菌 の場合,特 に水深5- 6m
で明 ビン内でかな りの光合成 を示 したが,暗 ビ ン内で もCOの取 り込 みが あ り, これ は化学合成 である と推測 された。 冬停滞期の1
9
6
5
年1
2
月で は(
Fi
g
1
0
-B)
水温,溶存酸素量,pH
は殆 ど等量分布 を示0 50 90 100 180 10 20 30 CO盟FLgI 02% wワ℃ H2SFLgI 落合 :涌池の陸水生物学的研究 7 8 9 10_I,
20 40 60 Chl.a FLglll 14CO2uptake BIChl.c o.1 0.2 0.3 0A 169 A CgmZday1 1 2 3 4 3 4 ( u z ) t f l d a 凸
3
4 5 ( Lu ) tO d ズ ー . 1 . ▲ l ︰ ・ ・ t I S )( ・ _ p-H x -‖ = ・ . ; j J x . 30 50 70 00 180 0 20 30 0 20 CO2FLgI 02% 7 8 9 10 pH GrossprOdact10n August.1965 wrc 20 40 60 80 109日 '4CO2uptake H占FLg「lB
-
C
mc
O 0.1 0.2 0.3 0.4-+
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I
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I-・
l
-II.
--1
‖p
B Cgm21dayI December.1965Fig10・VerticalprofileinsituCarbonassimilationactivityinLakeWakuike. A:August 1965,B:December1965.
した。C0 2は1.5mに,クロロフィル a量 は上層か ら0.5-1.5m間に多量 な分布帯 が出現 した外 は,同様 に等量分布であったが,CO2,クロロフィル a量 は夏期 よ りかな り増加 し た。冬期 のため硫化水素層,緑色硫黄細菌 は出現 しなかった。総生産量 は池表面か ら水 深1mまでの間で,1・80Cg・m2・day1と,夏期 の400/.程 に減少 し,1.5mでは0.43Cg・ m2・day11と低下 した。 上層の植物 プランク トンの光合成量 に,下層 の緑色硫黄細菌の光合成量 と化学合成量
170 清泉女学院短期大学研究紀要 (第19号)
Table3 Grossproductionofphytoplankton,greensulphurbacteriaandtotalamount. Cg・m 2・day 1
Date Phytoplankton
*
GreenSulphurBacteria*
*
Tatal Photosynthesis Photosynthesis Chemosynthesis amount July 1965 3.136 0.080 0.025 3.241 August 〃 1.537 0.074 0.023 1.634September〃 2.092 0.044 0.109 2.246
*
inthewatercolumnfrom surfscetocompensationdepth** inthewatercolumnfrom thetopofanoxiclayertobottom
を加 えた涌池の総生産量 を示す。 (Table3) 1965年の夏か ら秋の結果であるが,植物 プランク トンの光合成量 は次第 に低下 してい る。緑色硫黄細菌の光合成量 は夏か ら秋へ減少 し,10月 は 0であった。化学合成量 は逆 に増加 して,10月は化学合成のみであった。 そ して緑色硫黄細菌の全同化量 は夏 ・秋 と もほぼ同量であった。涌池の総生産量 に占める光合成細菌の役割 は,夏 よ り秋の方が大 きいが, その割合 は最大で
7%
とあ まり多 くはなかった。 松 山 (1978)によると水月湖で も下層の光合成細菌が冬期では同化量が化学合成のみ であったて,涌池 と同 じ現象が起 きていた。 涌池 と池の大 きさが よ く似 ていて,下部無酸素層 に緑色硫黄細菌が生息 している富栄 養湖の深見池 (長野県下伊那郡阿南町)を調査 した八木 ら (1983)の報告 と涌池の状態 を 比較 してみると, クロロフィルa量 は深見池が多 く,透明度,水温,バ クテ リオクロロ フィルC量な どは大差がないが,H2S,NH4'-N,NO2--N,NO3一一N,P02--P,生産量 な どは 涌池の方がかな り多い ことが判明 した。 本研究 についてご懇篤 なるご指導 を賜 りました名古屋大学名誉教授西候八束先生,浴 忙 しいなか本稿の ご校閲 を頂 いた筑波大学名誉教授安藤裕先生, 日頃 ご指導 を賜 ってい る藻類研究所長福島博先生以上の方々に深 く感謝 いた します。落合 :涌池の陸水生物学的研究 171
Resume
ThelakeWakuikeinNaganoCityisaremarkablesaltwaterlakewichisa0.023km2
areaandamaximum depth10.8m. Thelakewaterwasstratifiedfrom Decemberto Febrary,from JunetoAugust,andcirculatedfrom SeptembertoNovember,from March toMay.Theamountofchlorophylトaintheeuphoticlayerwaslowduringthecirculated periodandhigh duringthestagnationperiodinwinter.
Theeuphoticlayerwithphytoplanktonwas1.5-2m depthunderthesurfaceoflake andthelayerbelow 1.5-2m wastheanaerobicconditionwithhydrogensulphitegasin whichthegreensulphurbacteriasuchasChloyvbium livedatthesummerstagnation period.
From theGrossproductioninthislake,CO2uptakebecomeclearanditsuptake
measuredmonthlyfrom JulytoOctoberin1965.Ahighcarbonuptakebyphytoplankton
(1.2-3.1Cg・m-2・day1)andaverylowbygreensulphurbacteria(photosynthesis)0-0.08
Cg・m 2・dayJl,(chemosynthesis)0・025-0・109Cg・m 2・day l・Totalassimilation was 1.3-3.2Cg・m12・day-i.
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