• 検索結果がありません。

<実践報告>臨床看護技術演習における動画教材による事前学習と相互評価の取り組みと課題 利用統計を見る

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "<実践報告>臨床看護技術演習における動画教材による事前学習と相互評価の取り組みと課題 利用統計を見る"

Copied!
7
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

臨床看護技術演習における動画教材による事前学習と

相互評価の取り組みと課題

Trial and Issue of Prior Learning by Video Educational Materials and Peer Assessment in

the Clinical Nursing Skills Practice

西田 頼子,古屋 洋子,長崎ひとみ,大日向陽子,坂本 文子

NISHIDA Yoriko, FURUYA Yoko, NAGASAKI Hitomi, OOHINATA Yoko, SAKAMOTO Fumiko

要 旨

臨床看護技術演習における動画教材による事前学習と,学生間の相互評価の課題を検討することを目的と した。対象は看護学科 3 年次生 58 名。調査内容は,動画視聴回数と事前学習・相互評価の認識,技術の相互 評価結果である。全員が動画を視聴していた。事前学習の「イメージや流れがわかった」「注意点がわかった」「何 度も確認できた」「効率がよい」,相互評価の「ポイントがわかった」「自己の課題に気づけた」は 9 割以上があ てはまると回答した。一方,「デモンストレーションを見るより理解できた」42.6%,「学生間で評価するのは 難しい」68.1% であった。視聴回数と相互評価には負相関が見られた。動画視聴回数よりも,視聴したことで イメージ化できることが技術の実践・習得には重要であり,相互評価は評価する学生自身の学びになってい ると考えられた。動画内容の吟味やデモンストレーション併用,相互評価の妥当性向上の検討が課題である。 キーワード 臨床看護技術演習,動画教材,事前学習,相互評価

Key Words Clinical Nursing Skills Practice, Video Educational Materials, Prior Learning, Peer Assessment

受理日:2017 年 1 月 11 日

山梨大学大学院総合研究部医学域看護学系:University of Yamanashi,Division of Nursing Science, Faculty of Medicine, Graduate Faculty of Interdisciplinary Research

要項の手順通りに実施することに終始し,ポイントを押 さえた実施による技術習得には至っていない状況であ る。事前学習不足に加え,十分な演習時間の確保が困難 であり,演習方法や事前学習方法を工夫する必要がある と考える。看護実践能力育成のための演習では,iPad 教材や e-learning など,様々な工夫が取り組まれ,一定 の効果が報告されている4)〜 6)。また,学生間の相互評 価は自己評価より客観的で,自らを見直す機会となり7) , 他者を評価することにより技術のポイントの理解,習得 につながると考えた。そこで,実習前の臨床看護技術演 習において,e-learning により動画教材を用いた事前学 習を行い,演習では学生間で相互評価するという反転授 業形式の演習を試みた。反転授業は,授業と宿題の役割 を「反転」させ,授業時間外にデジタル教材等により知識 習得を済ませ,教室では知識確認や問題解決学習を行う 授業形態のことを指し,学習の進度を早め学習効果を向 上させることが期待されている8)。技術演習においても, 学習の主体性や効果を挙げるための方法として有効では ないかと考える。本研究では,3 年次生の領域別臨地実 習前に行っている看護技術演習において,e-learning に よる動画教材を用いた事前学習と,演習時の相互評価を 行い,その課題を検討する。

Ⅰ.はじめに

看護実践能力の強化は,看護基礎教育の課題であるが, 臨床実習の場で看護技術を含めた看護実践経験は少なく なっている。国家資格を有した看護専門職として,卒業 時に一定の看護実践能力を身につけていることが求めら れる1)が,十分に身についているとはいえない現状もあ る。学生が臨地実習で実際に実施できる技術は療養生活 環境調整,ベッドメーキング,バイタルサインや症状の 観察などで,食事介助や移動,清潔援助などの日常生活 の援助も十分に経験できない学生もあり,侵襲を伴う看 護技術は「指導下での実施」も少なく,見学に留まってい る2)3)。一方,講義時間数の減少や,学生が技術を十分に 獲得する機会が不足している現状から講義や演習のあり 方の工夫が必要であり,学生が自ら学ぶことが鍵となる。 我々は,本学 3 年次生の領域別実習前に臨床看護技術 強化をねらい,演習を行っている。しかし実際は,実施

(2)

Ⅱ . 目的

より効果的な臨床看護技術演習および技術の習得を目 指して取り組んだ,e-learning による動画教材を用いた 事前学習と学生間の技術相互評価に対する学生の認識 と,技術相互評価の内容から,今後の効果的な技術演習 の課題を検討する。

Ⅲ . 方法

1. 対象:A大学看護学科 3 年次生 58 名 2. 事前学習および相互評価の方法 1)動画教材による事前学習 動画教材は 5 〜 10 分程度で,手順の他,留意事項や ポイントを示してある実施要項とともに学習すること で,具体的にイメージしながら各技術の動きも含めた手 順・ポイントを理解できるよう教員が作成した。デモン ストレーションでは見えにくい手元の動きがわかるよう に,カット割りや撮影方法を工夫した。作成した動画教 材は,血糖測定,CV(Central Venous)カテーテルの消毒, 輸液ポンプの操作,経管栄養,創傷処置,褥瘡部の処置 の 6 項目である。学生は e-learning(moodle)で事前に視 聴し,配付してある実施要項とともに事前学習する。 e-learning による動画教材の提供は,演習が夏季休業明 けであり,十分に事前学習の時間を確保できるよう,夏 季休業開始時(演習の約 1.5 ヶ月前)に開始した。 2)学生による技術の相互評価 評価のポイント(実施のポイントと同一)を理解するこ とで技術の理解・習得につなげ,自らを見直す機会とし, 被評価者も客観的に振り返ることができるよう,相互評 価を実施した。演習時は,デモンストレーションは実施 せずに演習時間を確保した。上記の動画教材を作成した 技術に,輸液準備,口腔ケアの 2 項目を加えた 8 項目に ついて,学生間でチェックリストを用いて相互評価し, よかった点と改善点をフィードバックする。チェックリ ストは,技術の手順,安全や患者への配慮の項目とその 実施(評価)ポイントで構成し,できた・不十分・できな い,の 3 段階でチェックする(表 1 参照)。 表 1 「創傷処置」の学生による相互評価(N= 46) チェック項目 ポイント 評価 n(%) できた 不十分 できない 欠損 1 説明と同意 ①対象者に対して,わかりやすく丁寧に,処置の説明を行う 45(97.8) 1(2.2) 0(0.0) 0(0.0) 2 医療用テープを安全にはがす ①皮膚を押さえながらはがす 40(87.0) 6(13.0) 0(0.0) 0(0.0) ②テープをできるだけ水平に近い角度でゆっくりはがす 40(87.0) 6(13.0) 0(0.0) 0(0.0) 3 ガーゼをはがし膿盆におく ①滲出液に触れないように非利き手でガーゼをはがす 40(87.0) 3(6.5) 2(4.3) 1(2.2) ②付着している滲出液を観察し,周囲が不潔にならないように膿盆に置く 39(84.8) 6(13.0) 1(2.2) 0(0.0) 4 鑷子を受け取り把持する * ①清潔域(先端より 1/2)に触れないように受け取る(上部 1/3 を握持する) 42(91.3) 4(8.7) 0(0.0) 0(0.0) ②先端は常に下に向け閉じた状態で把持する 31(67.4)15(32.6) 0(0.0) 0(0.0) 5 切れ込みガーゼをはずし,膿盆におく ①鑷子の先端が皮膚・ドレーン等に触れないように行う 41(89.1) 5(10.9) 0(0.0) 0(0.0) ②滲出液を観察し,周囲が不潔にならないようにガーゼ・鑷子を膿盆に置く 42(91.3) 4(8.7) 0(0.0) 0(0.0) 6 綿球をうけとる ①介助者役の鑷子より下方位置で,鑷子同士が触れないように受け取る 44(95.7) 2(4.3) 0(0.0) 0(0.0) ②鑷子の先端を上方に向けず,綿球を把持する 43(93.5) 3(6.5) 0(0.0) 0(0.0) 7 ドレーン挿入部を消毒する ①ドレーンの挿入部を中心に,中心から外側に向かって消毒する 43(93.5) 3(6.5) 0(0.0) 0(0.0) ②綿球の消毒面を変えながら消毒する(または綿球をかえる) 40(87.0) 6(13.0) 0(0.0) 0(0.0) 8 ドレーン挿入部に切れ込みガーゼを あてる ①切れ込み部の清潔を保持しながら,皮膚と安全ピンの間にいれる 40(87.0) 6(13.0) 0(0.0) 0(0.0) ②ドレーンが切れ込み部にしっかりあたるように深くいれる 44(95.7) 2(4.3) 0(0.0) 0(0.0) 9 ドレーンの上に4 つ折りガーゼを のせる ①ガーゼの清潔を保持しながら,ドレーンが強く屈曲しないようにのせる 44(95.7) 2(4.3) 0(0.0) 0(0.0) ②ドレーンの先端がガーゼの中心にくるようにのせる 43(93.5) 3(6.5) 0(0.0) 0(0.0) 10 医療用テープでガーゼを固定する ①テープを適切な長さか確認して貼付する 40(87.0) 5(10.9) 0(0.0) 1(2.2) ②皮膚とガーゼに沿わせ,隙間がないように密着させながら貼付する 39(84.8) 6(13.0) 0(0.0) 1(2.2) 11 処置後の説明 ①創部の状態と,処置が終わったことを患者に説明する 37(80.4) 5(10.9) 1(2.2) 3(6.5) 12 安全に配慮した行動をする * ①清潔域を確認しながら行動している 38(82.6) 7(15.2) 0(0.0) 1(2.2) ②落ち着いて実施している 41(89.1) 4(8.7) 0(0.0) 1(2.2) 13 患者への配慮 * ①患者に声をかけながら実施している 29(63.0)16(34.8) 0(0.0) 1(2.2) 留意点:*4・12・13 の項目は全体を通してチェックする

(3)

3. 調査内容 1)事前学習動画の視聴状況 演習前の動画視聴の有無・回数と,実施要項を確認し ながらの視聴および演習後の動画視聴の有無・回数も問う。 2)動画教材による事前学習および技術の相互評価の認識 動画教材による事前学習の効果について,「イメージ や流れがわかった」「何度も確認できた」など 7 項目,技 術の相互評価の効果について,「自己の課題にも気づけ た」「ポイントがわかった」など 4 項目で,非常にあては まる,から,全くあてはまらない,の 4 段階で回答を得 た。また,改善点等の意見を自由回答とした。 3)相互評価による技術評価 教員作成動画を提供した技術のうち,本調査では,創 傷 処 置 の 相 互 評 価 の 結 果 を デ ー タ と し て 収 集 し た。 チェックリストの項目は 23 項目,できた・不十分・で きない,の 3 段階評価で,フィードバックのための自由 記載欄も設けた。 4. データ収集方法 演習前に調査の説明を行い,複写式のチェックリスト を用いて技術の相互評価を実施し,評価者は正・複 2 枚 とも被評価者に渡す。チェックリストは,評価者・被評 価者とも無記名で行った。演習期間最終日(該当演習の 2 日後)に調査内容の 1)および 2)についてのアンケート 調査を無記名で実施し,自身の技術についてのチェック リストの複写とともに提出してもらった。 5. 分析方法 調査結果は単純集計し,自由回答は内容ごとに分類す る。動画の視聴回数,動画による事前学習・相互評価の 認識と相互評価による技術評価の関連には,Spearman の順位相関係数を算出した。分析には,統計解析ソフト SPSS ver.21 を用いた。 6. 倫理的配慮 調査の主旨および協力依頼,拒否できることと協力し ないことによる不利益のないことを文書及び口頭により 十分な説明を行い,対象者の自由意思による同意を得た。 調査に参加しない場合にも,相互評価は実施することの 説明も加えた。調査は無記名で実施し,調査用紙の提出 を持って,同意を得られたものとした。なお,本調査は 山梨大学医学部倫理委員会の承認を得て実施した(承認 番号 1560)。

Ⅳ . 結果

1. 事前学習動画の視聴回数 3 年次生 58 名に配付し,49 名から回答を得た。回答 に欠損のあるものを除き,47 名を分析対象とした(有効 回答率 81.0%)。 全員が演習前に e-learning で動画教材を見ていた。視 聴回数は 1 回が最も多く,21 名(44.7%)で,次いで 2 回 が 11 名(23.4%)であった。半数以上の学生が複数回視聴 しており,4 回以上視聴した学生も 5 名(10.6%)あった。 動画視聴時,実施要項の実施手順・留意事項を確認した 学生は 45 名(95.7%)で,ほとんどの学生は確認しながら 視聴していた(図 1)。 2. 動画教材による事前学習と相互評価についての学 生の認識 動画教材による事前学習の効果について,「非常にあ てはまる」「あてはまる」をあわせると学生全員が「イメー ジや流れがわかった」と回答していた。「注意点がわかっ た」「何度も確認できた」「効率がよい」も約 90% の学生 が当てはまると回答している。一方で,「当日にデモン ストレーションを見るよりも理解できた」という学生は 「非常にあてはまる」「あてはまる」あわせて 20 名(42.6%) 0% 20% 40% 60% 80% 100% 演習後 演習前 演習前 4回以上 3回 2回 1回 0回 n(%) 21(44.7) 21(44.7) 11(23.4)11(23.4) 10(21.3)10(21.3) 5(10.6)5(10.6) 4(8.5) 4(8.5)5(10.6)5(10.6) 15(31.9) 15(31.9) 21(44.7) 21(44.7) 29(61.7) 29(61.7) 9(19.1)9(19.1) 5(10.6)5(10.6)4(8.5)4(8.5) 0(0.0) 0(0.0) 2(4.3) (要項を確認しながら) 図 1 動画教材の視聴回数(N=47)

(4)

にとどまった(図 2)。 相互評価については,「ポイント(注意点)がわかった」 「他者の技術をチェックすることで自己の課題にも気づ けた」が「非常にあてはまる」「あてはまる」をあわせてそ れぞれ 46 名(97.9%),45 名(95.7%)で,相互評価するこ とで自身の学びにもなっていると認識していた。しかし, 「学生間で評価するのは難しかった」と認識している学生 も 32 名(68.1%)あった(図 3)。 自由回答による意見では,「学外でも見られるように して欲しい」という視聴環境に関する意見が 6 件と最も 多かった。動画の撮り方や見易さの改善への意見はあっ たが,e-learning の動画教材による事前学習への否定的 な意見は見られなかった。相互評価に関する意見は 1 件 のみで,演習時間に余裕を持って評価できることを望む 意見であった。 3. 学生の相互評価による技術評価 演習時に学生が相互評価を行った技術項目のうち,「創 傷処置」の相互評価の内容について表 1 に示す。アンケー トとともに提出のあったのは,46 名であった。23 項目 中 21 項目で 8 割以上が「できた」と評価していた。全て の項目で,「不十分」という評価もあり,実施の有無だけ ではなく,実施の内容を評価していた。「不十分」が多かっ た項目は,「患者に声をかけながら実施している」16 名 (34.8%),「(鑷子の)先端は常に下に向け閉じた状態で把 持する」15 名(32.6%)であった。フィードバックのため の自由記載欄には,よかった点だけではなく気づいた点 や改善点の記載が全員あった。改善点は,鑷子の持ち方, 消毒方法,ガーゼ等の観察,声かけなどについて具体的 に記載されていた。 動画視聴回数,事前学習および相互評価の認識と創傷 処置の相互評価による技術評価の結果の関連をみたとこ ろ,動画視聴回数と相互評価に負の相関(r= - 0.29 〜 - 0.41,p<0.05)が見られた。動画教材による事前学習 の「イメージや流れがわかった」と評価項目の「ガーゼを はずす」,「消毒」,「声かけ」,事前学習の「注意点がわかっ た」と評価項目の「消毒」,相互評価の「評価できるよう十 分に事前学習をして臨んだ」と評価項目の「鑷子の持ち 方」に正の相関(r=0.31 〜 0.46,p<0.05)が見られた。し かし,事前学習の「注意点がわかった」と評価項目の「皮 膚を押さえながらテープをはずす」,事前学習の「注意点 がわかった」,「わからないことが明確にできた」,と評 価項目の「ガーゼの清潔を保持しながらドレーンが屈曲 しないようにのせる」には負相関(r= - 0.30 〜- 0.34, p<0.05)が見られた(表 2)。 イメージや流れがわかった 注意点がわかった 何度も確認できた 効率がよい 今後もe-learningで動画を用いた事前学習をしたい わからないことが明確にできた 当日にデモンストレーションを見るよりも理解できた 非常にあてはまる あてはまる あまりあてはまらない 全くあてはまらない 29(61.7%) 29(61.7%) 14(29.8%) 14(29.8%) 22(46.8%) 22(46.8%) 18(38.3%) 18(38.3%) 16(34.0%) 16(34.0%) 8(17.0%) 8(17.0%) 22(46.8%)22(46.8%) 16(34.0%)16(34.0%) 6(12.8%) 6(12.8%) 14(29.8%)14(29.8%) 25(53.2%)25(53.2%) 2(4.3%)2(4.3%) 20(42.6%) 20(42.6%) 10(21.3%)10(21.3%) 1(2.1%)(2.1%)1 24(51.1%) 24(51.1%) 5(10.6%)5(10.6%) 20(42.6%) 20(42.6%) 5(10.6%)5(10.6%) 30(63.8%) 30(63.8%) 3(6.4%)3(6.4%) 18(38.3%) 18(38.3%) 0% 20% 40% 60% 80% 100% n(%) 図 2 動画教材による事前学習に対する認識(N=47) ポイント(注意点)がわかった 他者の技術をチェックすることで自己の課題にも気づけた 相手を評価できるように,十分に事前学習し演習に臨んだ 学生間で評価するのは難しかった 26(55.3%) 26(55.3%) 30(63.8%) 30(63.8%) 10(21.3%) 10(21.3%) 7(14.9%) 7(14.9%) 25(53.2%)25(53.2%) 12(25.5%)12(25.5%) 3(6.4%)3(6.4%) 27(57.4%) 27(57.4%) 10(21.3%)10(21.3%) 15(31.9%) 15(31.9%) 2(4.3%)2(4.3%) 20(42.6%) 20(42.6%) 1(2.1%)1(2.1%) n(%) 0% 20% 40% 60% 80% 100% 非常にあてはまる あてはまる あまりあてはまらない 全くあてはまらない 図 3 学生による相互評価に対する認識(N=47)

(5)

表 2  「創傷処置」 演習における動画教材視聴回数,事前学習・相互評価の認識と相互評価による技術評価との関連 (N =46) 技術評価項目 2-① 皮膚を押さえ ながらテープ をはがす 3-② 滲出液を観察 し, 周 囲 が 不 潔にならない ようにガーゼ を膿盆に置く 4-② 鑷子の先端は 常に下に向け 閉じた状態で 把持する 5-① 鑷子の先端が 皮膚 ・ ド レ ー ン等に触れな いよう切れ込 みガーゼをは ずす 5-② 滲出液を観察 し, 周 囲 が 不 潔にならない ように切れ込 みガーゼを膿 盆に置く 7-① ドレーンの挿 入部 を 中 心 に , 中 心 か ら 外側に向かっ て消毒する 7-② 綿球の消毒面 を変えながら 消毒する 9-② ガーゼの清潔 を保持しなが ら, ド レ ー ン が強く屈曲し ないようにの せる 13-① 患者に声をか けながら実施 している 動画視聴 回数 演習前 -0.323* 要項を 確認しながら -0.407** -0.305* 終了後 -0.293* 動画による 事前学習の 認識 イメージや 流れがわかった 0.311* 0.345* 0.321* 注意点が わかった -0.303* 0.464** -0.303* わからない ことが明確に できた -0.335* 相互評価 の認識 評価できる よう十分に 事前学習を して臨んだ 0.312* 注) Spearman の順位相関係数,*p<0.05,**p<0.01 有意なもののみ示す   技術評価項目の数字は表 1 のチェック項目とポイントの番号を示す

(6)

Ⅴ . 考察

1. 事前学習動画による学習効果と課題

事前学習動画を全員が視聴しており,その評価も概ね 好評であった。e-learning や VOD(Video on Demand ) は,看護実践力の中でも,看護技術力に対しての効果が 高く,その効果は学生も実感している9)10)ことが報告さ れている。技術演習の事前学習として要項に示したポイ ントとともに動画で学習することは技術の理解を助け, より効果的な演習のために有効であると考える。 しかし,動画による学習の効果は限定的であることも 考えられる。学習課題を提示し,学生が主体的に学習で き る 環 境 を 整 備 し て OSCE(Objective Structured Clinical Examination)で評価する学習プログラムの検証 では,看護シミュレーションセンターでの練習を行った 学生の OSCE の総合得点は有意に高く,その練習回数 が 1 回より 3 回の学生の方が高かったが,VOD コンテ ンツの視聴の有無および回数と OSCE の評価得点に有 意差は見られなかった11) 。動画で学習した上で,実際 に練習することは欠かせない。今回の調査では,動画視 聴回数と相互評価による技術評価結果には負相関が見ら れており,技術の手順やポイントの理解が不十分,自信 がない学生が繰り返し動画を見ていたとも考えられ,視 聴回数よりも,視聴したことで具体的にイメージできる ことが技術の実践・習得には重要であると考える。視聴 した上で,イメージ化できた,ポイントが理解できたと いうことと相互評価による技術評価結果に正相関が見ら れたことからも推察できる。 e-learning による動画がきっかけで事前学習を行い, 正しい方法で技術を実施でき,効果がある一方で,ビデ オを確実に模倣することにとらわれ,なぜそのように行 うのかという意味を理解できていない学生もいた6)との 指摘もある。演習中の学生とのやり取りから,同様の傾 向を感じる場面もあった。動画では流れや動きの実際を 見せることを重視し,根拠やポイントは実施要項に示す ことで意味を理解できるように工夫したが,動画視聴以 外の事前課題や事前学習動画の内容の吟味,精選は重要 であり,課題である。初回は動画教材と同じ事例の演習 を実施し,2 回目以降は動画教材とは異なる事例や状況 として,ポイントや根拠を理解していないと実施困難な 演習課題とするなど,自主トレーニングも含め演習を複 数回実施することや内容・方法をさらに検討する必要も ある。 動画教材の限界として,「創傷処置」の技術では,評価 項目のテープのはがし方やガーゼののせ方は,「注意点 がわかった」「わからないことが明確にできた」という事 前学習効果の認識とは負相関が見られ,事前学習動画で はわかりにくい部分であった可能性がある。動画で事前 学習していても,部分的にデモンストレーションを実施 し,実際に見るほうが効果的なものもあると考えられる。 動画とデモンストレーションの併用を望む意見もあり, それらの併用や使い分けが必要であると考えられた。真 嶋12)は,映像は具体的なイメージが固定化されるため, 個々の認識に齟齬が生じにくいメリットがあるが,想像 性や創造性を重視する場合には,映像教材は返ってデメ リットになる,と指摘している。何を動画で示すのか, 他の方法での示し方,伝え方や,演習時のデモンストレー ションの有無とその内容,注意事項の確認,演習時の指 導やコメントにも工夫が必要であろう。 2. 学生による相互評価の学習効果と課題 相互評価の結果については,全体に高い傾向が見られ た。藤原ら13)は実験の結果,学習者間での評価をする 時に,評価する相手も評価者を評価する場合は,そうで ない場合に比べて,高い評価値をつける場合があること, また,教員の評価と比較し,評価する相手に評価されな い場合の方がより適正であり,自由記述のコメントも否 定的なコメントは,評価する相手に評価される場合には, 抑制されると報告している。今回,この点を配慮できて おらず,評価される学生が評価者となっている場合が多 かったと推測される。ほとんどの項目で「できた」という 評価が 80% 以上であり,高く評価している可能性は否 定できない。また,学生は相互評価に慣れていないため, 「できた」という評価の割合が高かった可能性も考えられ る。学生の評価の精度については,相互評価と教員評価 の結果を学生にフィードバックすることで相互評価の ばらつきがなくなり教員評価と高い相関を示すようにな る14)との報告もある。グループで演習を行う場合は複 数の学生が評価者となる,実施者と評価者をローテート させるなど特定の評価者・被評価者関係にならないよう な工夫や,より客観的で妥当な評価ができるように検討 していく必要がある。 学生の評価は教員評価に比べ高い傾向にある14)〜 16)が, 相互評価では相手の努力を讃えているという点で意味が 大きい16)との意見もある。相互評価の効果として,評 価結果を最も受け入れやすく,学習者の内省を引き出し, 結果として知識の内化や深化を導くことや,学習動機の 向上が期待される7)。自己評価と比較すると,客観的に 評価でき,複数の学習者を評価し,他の学習者が行った 評価を見ることで,他者を評価することを学べ,自らを 見直す機会となり,評価すること自体が自己へのフィー ドバックにつながる17),ことが挙げられている。実際 に学生は,相互評価に難しさを感じながら,ポイントの 理解や自己の課題に気づけたと自身の学びになっている と認識していた。また,評価できるように事前学習して 望んだことと,相互評価結果に正相関も見られ,相互評

(7)

価の実施が事前学習を促し,技術習得にも繋がる可能性 が示唆された。 相互評価の方法について,藤原ら17)は,学習者が他 の学習者が行った評価に納得して,はじめて相互評価の 教育的効果が期待できることから,学習者が納得できる ように相互評価を計画することが必要で,評価の公平性 の確保や評価への観点への同意が必要である,と述べて いる。今回は,チェックリストにより具体的な評価のポ イントを示し,公平性を確保し,評価の観点が明確であ り,事前に実施要項にも示されていた。しかし,自身の 技術のどこに課題があるかわかりやすい反面,チェック リストにある項目以外の良い面や改善点が振り返りにく い。自由記載欄を設けることでその点を補い,全員が何 らかのコメントを記載していたが,内容はチェックリス トと重複することが多かった。学生間でどこに課題があ り,改善が必要かを指摘しあうことの重要性を体験的に 学習できる機会を増やす必要があると考える。また, フィードバックでは良かった点と改善点の両方の視点で コメントすることが重要である。演習時の学生他者評価 は,実施状況から積極的にできている内容を抽出してい た16)との指摘もあり,自由記載には良かった点も多く 記述されていたことから,学生は学生の良い面を見つけ ることが上手であり,他者の良い面を見つけることは自 身の振り返りにもなると思われる。相互評価は高くなる 傾向はあるが,ポジティブなフィードバックはやる気に もつながるため,今後も演習で取り組んでいくことが重 要であると考える。

Ⅵ . 結論

動画教材を学生全員が事前に視聴し,半数以上は複数 回視聴していた。動画教材を用いた事前学習は,イメー ジ化や流れ,ポイントの理解に効果的であり,イメージ 化がされることが技術習得につながっていた。学生の相 互評価による技術評価は高い傾向で,学生は難しさも感 じていたが,自身の学びになっていた。事前学習動画の 内容の吟味,デモンストレーションとの併用や使い分け の検討,学生による相互評価の妥当性を高めることが課 題である。 引用文献 1) 看護学教育の在り方に関する検討会(2004)看護実践能力育成の 充実に向けた大学卒業時の到達目標.文部科学省 2) 佐々木秀美,松井英俊,金子潔子,他(2008)成人看護学臨地実 習における看護技術習得状況の実態調査報告.看護学統合研究, 9(2):19-29. 3) 西田頼子,佐藤一美,西田文子,他(2008)本学成人看護学実習 における学生の看護技術習得状況と課題-効果的な技術教育展 開のために-.山梨大学看護学会誌,7(1):19-25. 4) 高橋甲枝,相野さとこ,村山由起子,他(2015)『手術直後の観 察技術演習』に iPad 教材を導入した教育効果.西南女学院大学 紀要,19:7-14. 5) 中村裕美,神谷潤子,堀田由季佳,他(2015)急性期看護学にお けるシミュレーション教育プログラムの作成.日本赤十字豊田 看護大学紀要,10(1):177-181. 6) 松井聡子,政時和美,杉野浩幸,他(2015)視聴覚教材が成人看 護技術演習に及ぼした効果- e ラーニングシステムを使用して -.福岡県立大学看護学研究紀要,12:63-71. 7) 植野真臣(2005)先端的 e - Learning の理論と実践.教育心理 学年報,4:126-137. 8) 重田勝介(2014)反転授業 ICT による教育改革の進展.情報管 理,56(10):677-684. 9) 吉川彰二,細田泰子,古山美穂,他(2008)臨地実習終了時の看 護実践力における e ラーニング導入の効果.大阪府立大学看護 学部紀要,14(1):45-50. 10) 末廣久美子,百田武司,森本千代子,他(2013)看護実践力を育 成するための VOD システム活用の効果に関する調査.日本赤 十字広島看護大学紀要,13:49-57. 11) 松本由恵,岡田淳子,百田武司,他(2015)看護実践能力育成の ための学習プログラムの評価‐学生の学習環境の活用状況と OSCE の評価得点の比較‐.日本赤十字広島看護大学紀要, 15:43-50. 12) 真嶋由貴恵(2012):看護技術のスキル学習とノウハウ集約にお ける映像活用.映像情報メディア学会誌,66(8):645-649. 13) 藤原康弘,大西仁,加藤浩(2007)公平な相互評価のための評価 支援システムの開発と評価-学習成果物を相互評価する場合に 評価者の選択で生じる「お互い様効果」‐.日本教育工学会論文 誌,31(2):125-134. 14) 後藤義友(2009)学生による記述課題の相互評価と教員評価との 相関.別府大学短期大学部紀要,28:67-70. 15) 桑原千幸(2010)キャリア教育における Moodle を利用した相互 評価の実践と考察‐自己肯定感の観点から‐.京都文京短期大 学研究紀要,49:107-115. 16) 寺田麻子,松谷美和子,高屋尚子,他(2008)新人看護師への移 行演習プログラムの試行と評価(3)-多重課題シナリオによる 演習‐.聖路加看護学会誌,12(2):58-64. 17) 藤原康弘,大西仁,加藤浩(2007)学習者間の相互評価に関する 研究の動向と課題.メディア教育研究,4(1):77-85.

参照

関連したドキュメント

★分割によりその調査手法や評価が全体を対象とした 場合と変わることがないように調査計画を立案する必要 がある。..

具体的な取組の 状況とその効果 に対する評価.

具体的な取組の 状況とその効果 に対する評価.

具体的な取組の 状況とその効果 に対する評価.

実効性 評価 方法. ○全社員を対象としたアンケート において,下記設問に関する回答

6 他者の自動車を利用する場合における自動車環境負荷を低減するための取組に関する報告事項 報  告  事  項 内    

より早期の和解に加え,その計画はその他のいくつかの利益を提供してい