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冬季の自然換気における室内汚染物質除去性能と室内温度低下との関係

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冬季の自然換気における室内汚染物質除去性能と室内温度低下との関係

The relationship between indoor pollutant removal performance and indoor temperature change

during the natural ventilation in winter season

○森永祐生(豊橋技術科学大学) 正会員 島崎康弘 (豊橋技術科学大学) 1 研究背景・目的 先進諸国では生活時間の約90%を室内空間内 で過ごすため,室内環境の良否が居住者の公衆 衛生に支配的な影響を与える.一般的に室内環 境を良好にするために,新鮮で清浄な外気と室 内空気を交換する「換気」が行われる.地球温 暖化など,環境問題への対応が求められる中で, 省エネルギー性の観点から普及が進む高断熱・ 高気密住宅では,室内換気量の減少により,室 内空気汚染が問題視されている.一方で,近年 の新型コロナウイルスの影響により,室内にお ける換気の重要性が見直されてきている. 世 界 の エ ネ ル ギ ー 消 費 量 の う ち 建 築 分 野 の 消費量は約 40%1)と高い割合を示す.住宅部門 の 用 途 別 エ ネ ル ギ ー 消 費 量 は , 暖 房 負 荷 が 25.4%であり冷房負荷の 3.2%の約 8 倍を占め, 暖房負荷の寄与は大きい.エネルギー消費を考 慮すると換気量は最小限度に抑制することが望 ましい.このように室内空気質や省エネルギー の 両 面 を 踏 ま え た 冬 季 の 自 然 換 気 に つ い て 解 析・実験を行い,詳細に説明することは,重要 である. そこで本研究では,室内温度低下を防ぐため 自然換気が不十分となりやすい「冬季」に焦点 を当てる.自然換気時に,開口部の位置・個数 や部屋の形状等の各種建物条件が空間内に存在 する室内汚染物質の除去性能と室内温度低下に 与える影響をPIV 実験・CFD 解析を用いた感度 解析によって明らかにし,換気性能と室内温度 低下の両面を踏まえた最適条件を検討する. 2 PIV 実験 2.1 実験目的 本実験は,Fig. 1 に示す Case(a)~(e)の 5 種類 の開口条件を持つ模型の,開口部付近のガス状 物質の可視化実験及び PIV による風向・風速測 定を行うことによって,ガス状物質の拡散分布・ 除去性能と開口部付近における基礎的気流性状 の把握を目的とするものである.

Fig. 1 Schematic view of 5 cases model 2.2 模型概要 愛知県豊橋市の2019 年 11 月〜2020 年 3 月の 気象庁観測による冬季期間の平均風速 2.65 m/s が流れる状況の下,寸法 5 m(長さ)×5 m(幅)×3 m(高さ)の 1 m(高さ)×1m(幅)の開口部を有する 住宅モデルを再現した.模型スケールは,実際 スケールの 1/17 とし,模型寸法は 0.3m(長さ)× 0.3 m(幅)×0.18 m(高さ),窓寸法は 0.06 m(高さ) ×0.06 m(幅)とした.模型スケールでの風速の決 定は,次式(1)に示す,流体の流れに関する無次 元 数 で あ る フ ル ー ド 数 Fr を 一 致 さ せ る こ と で 風速を決定した. 𝐹! = 𝑈 $𝐿𝑔 (1) ここで,U は流速[m/s],L は代表長さ[m],𝑔は 重力加速度[m/s2] である.上式により,本モデ ルの風速の設定値は,0.649 m/s と設定した. 2.3 実験方法 模型中央部(x=150 mm,y=150 mm) からトレ ーサー粒子を発生させ,模型内部全体に充満さ せる.充満させた後,気流を送風機により模型 方向へ流す.その後,レーザー光を照射させる. Unit [mm] z x y Wind direction 空気調和・衛生工学会中部支部 学術研究発表会論文集 第22号 2021年3月 -127-

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高速度カメラの設定は200 fps とし,各 Case に

つき5 秒間撮影した.平均速度の算出する際の

検 査 領 域 は , 開 口 部 の 中 心 か ら 上 下 方 向 に 5 pixel,風下方向に 10 pixel の 10×10 pixel の範 囲とした.

Fig. 2 Schematic view of PIV measurement 2.4 実験結果及び考察

上述した 5 つの Case の中で特徴的な結果が

得 ら れ た Case(a), Case(b)を 抜 粋 し , Case(a)と Case(b)の PIV 解析画像と 0~5 秒間の開口部外側

の平均風速推移をそれぞれ Fig. 3,4 に示す.

Fig. 4 PIV analysis image and velocity of Case(b) Case(a)は,気流方向に向いている風速ベクト ルが多くあることから,適切に模型内部から外 部に気流が流れ,トレーサー粒子が排出されて いることが分かる.さらに Fig. 3 より,5 秒間 を通して開口部外側では平均風速 0.43 m/s であ り5 Case の中で最も大きな値を示した.対して Case(b)は,模型内の風速ベクトルが様々な方向 に向いており,トレーサー粒子が模型内で滞留 し,開口部外側には排出されないことが分かる. さらに Fig. 4 の平均風速値を見ても 5 秒間を通 して開口部外側の粒子の速度は微小である. これらのPIV 解析結果から,開口部を 1 つ設 けるだけでは,気流の流出入が適切に行われず, 汚染物質が外部に排出されないことから,開口 部は 2 つ設ける場合の方が汚染物質除去の効率 は良く,有効な手法であると分かった. 3 CFD 解析 3.1 解析目的 PIV 実験による模型内のスモーク拡散分布及 び気流性状をもとに,CFD 解析を行う.建物条 件をさらに増やし自然換気の流れ場解析と空気 汚染物質の非定常・不均一濃度分布の解析を行 い,自然換気による室内温度低下量を算定する. 3.2 解析方法 本研究では, 英国 CHAM 社が開発した汎用の 熱流体解析ソフト「PHOENICS」を用いた. 乱流 モデルは Chen- Kim k-ε モデルを採用し,各時間 1000 回の繰返し計算によって,解を算出した. Table1 に,本項で記す様々な解析全てに共通す る条件を示す.

Table 1 CFD Analysis condition

3.3 解析条件 Table 2に解析条件を示す.本解析では,Fig. 5, Table 3に示す窓の位置・個数(11 Case),Table 4 に示す窓のアスペクト比(8 Case),部屋のアスペ クト比(9 Case) の計28 Caseの建物条件における 室内汚染物質除去効率及び室内温度低下量を算 出し,両面を踏まえた最適値を感度解析によっ て導く.汚染ガスとして,一般的に換気指標の基 準に用いられている二酸化炭素(以降C1)を対象 とした. C1の分子量は44とし,初期濃度は1.0, 発生位置は室内中央,発生時間は0~1s,解析時 Caluculation code Turbulence model Analysis lattice Analysis time Analysis region PHOENICS Chen-Kim k-ε model 56(x )×56(y )×36(z )=112896 mesh 60 sec (un-steady/transient:60step) x =10, y =10, z =10 m (a) (b) 0 10 20 30 40 50 60 V el oc it y(c m /s ) Time(s) 0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 Time(s) 0 1 2 3 4 5 6 V el oc it y(c m /s ) 0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 Time(s) 0.74 m 0.18 m 0.3m 0.2m 0.15m Laser High speed camera Smoke Model Fan Wind 0.49m/s0.649m/s

Fig. 3 PIV analysis image and velocity of Case(a)

(3)

間は60秒間の非定常解析を行った. Table 2 Analysis condition

Table 3 Position and number of windows

Fig. 5 Pattern of the position of windows Table 4 Pattern of the aspect ratio of windows

and rooms 3.4 解析結果 3.4.1 窓の位置・個数による影響 Table 5 に Case(a)~(k)の 60 秒間における空間 内平均である C1 値,平均温度と初期室内温度 との差ΔT を示す.Table 5 より,窓無しである Case(k)の室内平均 C1 値 2.27×10-2,平均温度 22 ℃を基準とし,比較すると,C1 値が 1/2 以 下となるのは,Case(a),(b),(c),(h),(i),(j)が 挙げられ,その中でも温度低下が 5 ℃以下に抑 えられているのが Case(a),(b),(c)であった.こ れらの Case の共通点は 2 つの開口部が対面で 設けられていることである. 対してCase(k)と室内最大 C1 値が概ね同じ値 を示したのが,開口部が 1 面しか設けられてい ない Case(d),(e)であり,Fig. 6 に示すように, Case(a)と比較して Case(d)は室内に気流が流れ ていないことが原因であると考えられる.

Table 5 Average C1value and ΔT for Case(a)~(k)

3.4.2 窓・部屋のアスペクト比による影響 Table 6,7 に Case(A)~(H)と Case(1)~(9)の 60

秒間における空間内平均値である C1 値,平均

温度と初期室内温度との差 ΔT を示す.

窓のアスペクト比に関しては,Table 6 より,

Case 全体を通して,Case(H)を除く Case(A)~(G)

の C1 値に大きな差はなかったが,初期室内温

度との差 ΔT には大きな差がみられた.Case(A)

の正方形の窓と比較して,窓の形状が縦長にな

る程 ΔT が大きくなり,横長の場合も正方形よ

りも2〜3℃ ΔT が大きくなることが確認された.

Table 6 Average C1value and ΔT for Case(A)~(H) C1 value [-] Temperature[℃] C1 value [-] Temperature[℃] (A) 1.12×10-2 18.9 3.1 (E) 1.13×10-2 15.4 6.3

(B) 1.04×10-2 16.9 5.1 (F) 1.32×10-2 15.8 6.2

(C) 1.38×10-2 17.2 4.8 (G) 1.49×10-2 16.8 5.2

(D) 1.09×10-2 15.4 6.6 (H) 2.24×10-2 21.5 0.5 Case Average ΔT [℃] Case Average ΔT [℃]

Caluculation code Turbulence model Analysis lattice Analysis time Analysis region Size of model Opening area Wind velocity Atmospheric pressure

Room air temperature 22 ℃ Outside air temperature 10 ℃ Inlet velocity 2.0 m/s

1.0 m2

2.65 m/s 101325 Pa Boundary condition

Floor area:25 m2,Room Volume:75 m3

PHOENICS k-ε model 56(x)×56(y)×36(z)=112896 mesh 60sec (un-steady/transient:60step) x=10, y=10, z=10 m Wind direction Unit [mm] z x y

Case Position of windows Number of the window

(a) The windward and leeward walls (Center) 2

(b) The windward and leeward walls (Upper) 2

(c) The windward and leeward walls (Lower) 2

(d) The windward 1

(e) The leeward 1

(f) The diagonal line1 2

(g) The diagonal line2 2

(h) The side line (near) 2

(i) The side line (middle) 2

(j) The side line (Far) 2

(k) No window 0

Case Aspect ratio Case Aspect ratio (A) 1:1 (1) 1:1 (B) 1.5:0.67 (2) 6:4.177 (C) 2:0.5 (3) 7:3.571 (D) 2.5:0.4 (4) 8:3.125 (E) 0.666:1.5 (5) 10:2.5 (F) 0.5:2 (6) 4.177:6 (G) 0.333:3 (7) 3.571:7 (H) 0.25:4 (8) 3.125:8 (9) 2.5:10 Window Room

Fig. 6 Velocity of Case (a) and (d)

(a) (d)

C1 value [-] Temperature[℃] C1 value [-] Temperature[℃] (a) 1.12×10-2 18.9 3.1 (g) 1.42×10-2 16.0 6.0 (b) 1.16×10-2 17.8 4.2 (h) 8.82×10-3 15.9 6.1 (c) 1.09×10-2 17.9 4.1 (i) 8.29×10-3 15.3 6.7 (d) 2.23×10-2 21.6 0.4 (j) 9.72×10-3 17.0 5.0 (e) 2.21×10-2 21.6 0.4 (k) 2.32×10-2 22.0 0.0 (f) 1.46×10-2 15.4 6.6 Average

Case ΔT [℃] Case Average ΔT [℃]

空気調和・衛生工学会中部支部 学術研究発表会論文集 第22号 2021年3月

(4)

部屋のアスペクト比に関しては,Table 7 より, Case(1)の 正 方 形 と 比 較 す る と Case(2)~(5)の 気 流に対して縦長の場合,C1 値は小さく,さらに ΔT は 0.5~1.5℃程度であることが明らかになっ た.しかし Case(6)~(9)の横長の場合,C1 値は小 さいが,ΔT が 3.2~5.5 ℃,正方形よりも大きく なることが確認された.

Table 7 Average C1value and ΔT for Case(1)~(9)

3.4.3 開口部が 1 面の場合の換気高効率化 3.4.1 項で,C1 低下量の小さい Case(d)を対象 とし,送風機により,強制的に気流の流れを生 み出すことにより,どの程度除去性能が向上す るのか,解析を行った.Fig. 7 に送風機の位置条 件を,Table 8 に解析結果を示す.

Fig. 7 Layout of the fan in Case(d)

Table 8 より,送風機を設けた場合,場所や向 きにかかわらず室内平均 C1 値は,設ける前の C1 値 2.23×10-2と比較して,大幅に小さくなっ た.これは 3.4.1 項に示した開口部が 2 面設け てある Case(a)~(c),(f),(g)と比較しても近い値 を示した.さらにΔT はどの Case も約 1.5 ℃で あり,これまで上述したどのCase よりも室温低 下を抑えることができる結果となった. 3.4.4 ガス状物質と粒子状物質の挙動の違い ガ ス 状 物 質(C1), 粒 子 状 物 質 (エ ア ロ ゾ ル )の 挙動の違いを観測した.粒子径 5 μm,粒子数 100 個とし,ラグランジュ法により抗力,重力,浮 力,圧力勾配を考慮した.両物質の挙動の比較 をFig. 8,9 に示す.C1 の場合,気流により C1 が適切に室外に排出されているが,エアロゾル は,水分を含んで重いため,重力により,約 6 秒で沈降し,流出口から排出される挙動を示さ なかった.

Fig. 9 Behavior of particles 4.まとめ (1)自 然 換 気 に よ る 室 内 汚 染 物 質 濃 度 と 室 内 の 暖房負荷増加量の両観点を考慮した最適値を示 した建物条件は,風上・風下両壁面にアスペク ト比が 1:1 である正方形の窓を設け,部屋の形 状もアスペクト比が 1:1 の正方形もしくは縦 長である場合であった. (2)窓が 1 つのみの場合,気流の流出入が適切に 行われない.改善方法として,窓を開けた状態 で,送風機等により強制的に気流を流す.これ により,室内汚染物質濃度は低下し,さらに温 度低下量も最小限であり,有効性が示された. (3)ガス状物質については,自然換気の効果が示 された.一方,エアロゾルについては,室外に は排出されず,重力により沈降する挙動を示し, 自然換気が有効的ではないことが確認できた. 参考文献 1) 経済産業省, 資源エネルギー庁 <https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_a nd_new/saving/general/what/> (参照年月日 2021 年 2 月 18 日) C1 value [-] Temperature[℃] C1 value [-] Temperature[℃]

(1) 1.12×10-2 18.9 3.1 (6) 1.13×10-2 15.7 6.3

(2) 9.20×10-3 17.4 4.6 (7) 1.32×10-2 15.0 7.0

(3) 7.88×10-3 17.8 4.2 (8) 1.49×10-2 14.5 8.5 (4) 7.12×10-3 18.0 4.0 (9) 2.24×10-2 14.4 8.6

(5) 7.76×10-3 18.4 3.6

Case Average ΔT [℃] Case Average ΔT [℃]

INLET OUTLET

Fig. 8 C1 concentration

Table 8 Average C1value and Temperature for Case①~⑤

C1 value [-] Temperature[℃] ① 1.41×10-2 20.5 1.5 ② 1.47×10-2 20.5 1.5 ③ 1.48×10-2 20.6 1.4 ④ 1.38×10-2 20.6 1.4 ⑤ 1.44×10-2 20.6 1.4 Case Average ΔT [℃] INLET -130-

Fig. 1 Schematic view of 5 cases model  2.2 模型概要  愛知県豊橋 市の 2019 年 11 月〜 2020 年 3 月の 気 象庁観測 による冬季期間の平均風速 2.65  m/s が 流れる状 況の下, 寸法 5 m(長さ)×5 m(幅)×3  m(高さ )の 1  m(高さ)×1m(幅)の開口部を 有する 住宅 モデルを 再現した. 模型ス ケールは,実際 ス ケールの 1/17 とし, 模型寸法 は 0.3m(長 さ)× 0.3 m(幅)×0.18 m(高
Fig. 2 Schematic view of PIV measurement  2.4 実験結果及び考察
Table 2 Analysis condition
Table 7 Average C1value and ΔT for Case(1)~(9)

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