緒 言
生涯にわたり口腔の健康を維持するためには,歯磨き を中心としたセルフケアだけでなく,定期的に歯科診療 所に通院し,歯科医師や歯科衛生士によるプロフェッ ショナルケアを受けることが重要である.少なくとも定 期的に歯科診療所を受診していれば,継続的な歯科健診 により口腔疾患の予防と早期発見が可能である.日本で は,健康寿命の延伸が目標として掲げられ,健康面で日 常生活に制限のない期間をより長く過ごせるように,平 均寿命と健康寿命の差を縮めることが課題となってい る1).近年,口腔の健康,特に歯周病と全身疾患の関係 が明らかとなっており,生涯を通じた歯科健診の充実, 歯科受診が必要な者への受診促進などの方策が重要であ るとされている2).そして定期的な歯科健診を充実させ る歯科医療の提供には歯科衛生士が重要な役割を担って おり,疾病治療型から疾病予防・重症化予防型への転換 が国民の健康の維持のために求められる. 松尾3)の研究によると,歯科治療中の患者は歯科衛生 士よりも歯科医師に対する信頼感が高く,定期歯科受診 患者では歯科医師よりも歯科衛生士に対する信頼感が高 いことが報告されている.この研究では,患者の歯科衛 生士に対する信頼感は,非定期歯科受診群では歯科医師 に対する信頼感より低く,定期歯科受診群では高いこと から,歯科治療後に歯科衛生士が定期的な歯科への受診 を促し,再発予防を行っていることが信頼感の増大に影 響していることを示唆している.また寺岡4)らの研究で歯科診療所における歯科衛生士担当制患者と非担当
制患者の満足度と定期歯科受診に関する検討
A review on the satisfaction and attendance levels of patients
with and without assigned dental hygienists
柴田 幸代,野村 正子
1)SHIBATA Sachiyo, NOMURA Masako
原 著 内 容 要 旨 本研究の目的は,歯科衛生士による定期的なプロフェッショナルケアや歯科保健指導を受けてい る定期歯科受診患者の意識や満足度を歯科衛生士担当制か非担当制かで比較し,患者の定期歯科健 診の継続を促進させる理由を明らかにすることである.さらに患者の満足度を上げるために患者の 要望を調査し,患者の定期歯科受診の充実につなげたいと考える. 調査対象者は,2019 年 7 月~ 8 月に歯科診療所に定期歯科健診の受診を目的として来院した成人 患者 120 人である.内訳は,歯科衛生士が担当制の患者(以下,「担当制患者」)60 人と歯科衛生士 が非担当制の患者(以下,「非担当制患者」)60 人とした.来院時, 対象者に歯科医師または歯科衛 生士が口頭にて研究の要旨を説明し,同意を得られた人のみに無記名自己記入方式による質問紙調 査票による調査を行った. 担当制患者,非担当制患者に関わらず全員が今後も継続して歯科健診を受診したいと回答し,「頼 れる歯科衛生士がいるから」という継続理由では担当制患者のほうが有意に多く,患者の定期歯科 健診の継続を促進させることが示唆された. 本研究の結果から,患者の歯科定期健診の継続を促すために歯科衛生士も患者を担当制にするこ とが効果的であり,かかりつけ歯科衛生士として担当患者の健康寿命の延伸を目指す重要な役割を 果たすのではないかと考える. キーワード 歯科衛生士担当制患者,歯科衛生士非担当制患者,定期歯科受診,患者満足度,歯科診療所 日本歯科大学東京短期大学専攻科 歯科衛生学専攻 The Nippon Dental University College at Tokyo,
Graduate Programs, The major of Dental Hygiene 1)日本歯科大学東京短期大学 歯科衛生学科 The Nippon Dental University College at Tokyo,
Department of Dental Hygiene
は,定期歯科受診者と非定期歯科受診者の満足度の差が 最大となる項目が歯科衛生士の技術であり,歯科医師の 技術の 2 倍であった.この報告からも,定期歯科受診患 者は歯科衛生士によるプロフェッショナルケアを受ける ために受診していることが推測された.これらの報告は, 定期歯科受診の継続には歯科衛生士の関与が大きいこと を示唆するものであるが,歯科衛生士が担当制であるか, 非担当制であるかについての記述はない.そこで,歯科 衛生士が担当制か非担当制であるかも,患者の信頼感や 満足度に関連があるのではないかと考えた. 本研究の目的は,歯科衛生士による定期的なプロフェッ ショナルケアや歯科保健指導を受けている定期歯科受診 患者の意識や満足度を歯科衛生士担当制か非担当制かで 比較し,患者の定期歯科健診の継続を促進させる理由を 明らかにすることである.さらに患者の満足度を上げる ために患者の要望を調査し,患者の定期歯科受診の充実 につなげたいと考える.
対象および方法
1.対象 調査対象者は,2019 年 7 月~ 8 月に東京都 A 歯科診 療所及び埼玉県 S 歯科診療所に定期歯科健診の受診を目 的として来院した成人患者 120 人である.内訳は,歯科 衛生士が担当制の患者(以下,「担当制患者」)60 人と歯 科衛生士が非担当制の患者(以下,「非担当制患者」)60 人とした. 2.調査方法 調査対象者に歯科医師または歯科衛生士が口頭にて研 究の要旨を説明した.調査への協力は任意であり,協力 の有無,回答が対象者に不利益を被ることがないことを 説明し,同意を得られた人のみに無記名自己記入方式に よる質問紙調査票による調査を行った.調査票記入後, 個人が特定されないよう速やかに回収用封筒にて回収を 行った. 3.調査項目 質問紙調査票の項目は,基本属性(性別,年齢),患者 の満足度(歯科衛生士の指導に対する満足度,歯科衛生 士の傾聴に対する満足度),歯科衛生士への要望,定期歯 科受診に関する意識,口腔の健康に関する意識(歯の健 康に関する自信度,歯肉の健康に関する自信度)とした (表 1). 4.統計学的解析方法 まず,調査対象者の回答の全体像を把握するため,調 査票の各項目について単純集計を行った.また,歯科衛 生士の指導に対する満足度では,「1:非常に満足」,「2: やや満足」,「3:やや不満」,「4:非常に不満」の 4 件法 とした.歯科衛生士の傾聴に対する満足度では,「1:と ても思う」,「2:少しそう思う」,「3:あまり思わない」, 「4:思わない」とした.口腔の健康に関する意識では,「1: 自信がある」,「2:やや自信がある」,「3:やや自信がない」, 「4:自信がない」とした.次に,調査対象者を担当制患 者と非担当制患者の 2 群に分け,各調査項目とクロス集 計後,χ2検定を行った.データ解析には,SPSS ver.24 (IBM)を用い,統計学的有意水準は 5%未満とした. 5.倫理的配慮 対象者への依頼は,研究の目的の説明とともに秘密の 保持,データを目的以外には使用しないこと,研究への 参加は協力者の自由意志によるものであり,研究への参 加を随時拒否・撤回できること,また,これによって不 利な扱いを受けないことを文章によって説明し,本研究 の趣旨に理解,同意を得たうえで実施した.また,無記 名による調査結果を処理するため,個人は特定されない と考える.本研究は,日本歯科大学東京短期大学の倫理 審査委員会で承認(承認番号:東短倫 -242)を得て実施 した.結 果
アンケートの回収数は,担当制患者 60 人と非担当制患 者 60 人の計 120 人であった(回収率 100%・有効回答率 100%).データは質問内容によっては複数回答が可能な ものがあるため,各質問項目の合計数は必ずしも一致し ていない. 1.対象者の基本属性 担当制患者の内訳は,男性 15 人(25.0%),女性 45 人 (75.0%),平均年齢(標準偏差)は 52.8(14.8)歳であっ た.非担当制患者の内訳は,男性 24 人(40.0%),女性 36 人(60.0%),平均年齢(標準偏差)は 59.6(13.2)歳 であった. 2.患者の満足度 1)歯科衛生士の指導に対する満足度 担当制患者,非担当制患者に関わらず,120 人中 119 人が「非常に満足」か「やや満足」と回答した.担当制 患者では,「非常に満足」が 44 人(73.3%),「やや満足」 が 15 人(25.0%),「やや不満」が 1 人(1.7%)であった. 非担当制患者では「非常に満足」が 33 人(55.0%),「や や満足」が 17 人(45.0%)であった(図 1). 2)歯科衛生士の傾聴に対する満足度 「歯科衛生士はあなたの話をよく聞いてくれると思うか」については,担当制患者では「とても思う」が 53 人 (88.3%),「少しそう思う」が 7 人(11.7%)であった. 非担当制患者では「とても思う」が 26 人(43.3%),「少 しそう思う」が 33 人(55.0%),「あまり思わない」が 1 人(1.7%)であった.担当制患者では「とても思う」が 最も多く,非担当制患者では「少しそう思う」が最も多 かった(図 2). 3.歯科衛生士への要望 「歯科衛生士に求めることは何ですか」という問いに 対しては,「丁寧に施術してほしい」が最も多く,担当 制患者が 51 人(85.0%),非担当制患者が 48 人(80.0%) であった.次いで,「説明が分かりやすい」では担当制 患者が 43 人(71.7%),非担当制患者が 37 人(61.7%) であった.また,「手際が良い」が担当制患者で 31 人 (51.7%),非担当制患者が 26 人(43.3%)と回答し,担 当制患者,非担当制患者ともに,それぞれの歯科衛生士 への要望に有意な差はなかった.しかし,「豊富な知識 がある」(χ2=4.596,p<0.05),「親身に話を聞いてくれ る」(χ2=4.728,p<0.05),「施術が心地よい」(χ2=4.881, p<0.05)の 3 項目では,担当制患者のほうが有意に歯科 衛生士への要望が多かった(図 3). 4.定期歯科受診に関する意識 「今後も継続して歯科健診を受診したいと思うか」で は,担当制患者,非担当制患者ともに全員が「受診したい」 と回答した.「歯科健診を継続したいと思う理由」は,担 当制患者,非担当制患者に関わらず,1 位は「歯周病予防」 で担当制患者 49 人(81.7%),非担当制患者 52 人(86.7%) であった.2 位は「歯を守りたいから」で担当制患者 46 人(76.7%),非担当制患者 47 人(78.3%),3 位が「う 蝕予防」で担当制患者 45 人(75.0%),非担当制患者 43 人(71.7%),であった(図 4). 「頼れる歯科衛生士がいるから」という項目において 表 1 アンケート用紙(一部抜粋)
は担当制患者のほうが有意に多かった(χ2=22.547,p < 0.001).「歯科衛生士はいつも同じ人がいいか」について は,担当制患者は「はい」が 43 人(83.4%),「どちら でもよい」が 16 人(15.0%),「いいえ」が 1 人(1.7%) であった.非担当制患者は「はい」が 18 人(30.0%), 「どちらでもよい」が 40 人(66.7%),「いいえ」が 2 人 (3.3%)であった. 5.口腔の健康に関する意識 1)歯の健康に関する自信度 歯の健康に「自信がある」と回答したのは担当制患 者で 1 人(1.7%)だけであった.「やや自信がある」が 担 当 制 患 者 で 23 人(38.3%), 非 担 当 制 患 者 で 15 人 (25.0%)であった.「やや自信がない」が担当制患者で 27 人(45.0%),非担当制患者で 30 人(50.0%)と,と もに最も多かった.「自信がない」が担当制患者で 9 人 (15.0%),非担当制患者で 15 人(25.0%)であった.歯 の健康に関する自信度と歯科衛生士が担当制か非担当制 かどうかに有意差はみられなかった(表 2). 2)歯肉の健康に関する自信度 歯肉の健康に「自信がある」と回答した者が担当制患 者で 1 人(1.7%),非担当制患者で 1 人(1.7%)であっ た.「やや自信がある」は担当制患者で 22 人(36.7%), 図 1 歯科衛生士の指導に対する満足度 図 2 歯科衛生士の傾聴に対する満足度 図 3 歯科衛生士への要望(複数回答) 図 4 歯科健診を継続したいと思う理由(複数回答) 表 2 口腔の健康に関する意識 2 p値 p値 *p<0.05 n=120 * n.s. やや自信がない・自信がない 36人(60.0%) やや自信がない・自信がない 45人(75.0%) 37人(61.7%) 自信がある・やや自信がある 48人(80.0%) 24人(40.0%) 自信がある・やや自信がある 15人(25.0%) 23人(38.3%) 1)歯の健康に関する自信度 担当制患者 12人(20.0%) 非担当制患者 2)歯肉の健康に関する自信度 担当制患者 非担当制患者
非担当制患者で 11 人(18.3%)であった.歯の健康に関 する自信度と同様に「やや自信がない」が担当制患者で 25 人(41.7%),非担当制患者で 30 人(50.0%)と,と もに最も多かった.「自信がない」は担当制患者で 12 人 (20.0%),非担当制患者で 18 人(30.0%)であった.歯 肉の健康に関する自信度は歯科衛生士が担当制患者のほ うが有意に高かった(χ2=4.881,p < 0.05)(表 2).
考 察
1.患者の満足度 歯科衛生士の指導に対する満足度では,担当制患者, 非担当制患者に関わらず,「非常に満足」が最も多かっ た.一般的に,歯科衛生士が行う情報収集は,歯科医師 と比べて患者と接する時間が長いので,患者が心を開き やすく,会話をする機会も多い5)ことから,歯科衛生士 のほうが患者との信頼関係を構築しているのではないか と考える. 歯科衛生士の傾聴に対する満足度では,担当制患者で は「とても思う」が 53 人(88.3%)と最も多く,非担当 制患者では「少しそう思う」が 33 人(55.0%)と最も多 かった.歯科衛生士は良好なコミュニケーションを取る ために,患者の話をよく聞くことを心がけるように教育 されている.さらに,担当制患者は毎回同じ歯科衛生士 と接するため,コミュニケーションが経時的に深まり, 信頼関係とともに患者の満足感も高くなるのではないか と推測する. 2.歯科衛生士への要望 寺岡ら4)の研究では,歯科衛生士の技術と患者の満足 度に相関があった.今回の調査では,歯科衛生士に対す る要望の中で「丁寧に施術してほしい」,「説明が分かり やすい」,「手際がよい」が担当制患者,非担当制患者と もに多く,歯科衛生士としての能力や技術面の高さを求 められていることが分かった. 「豊富な知識がある」,「親身に話を聞いてくれる」,「施 術が心地よい」の 3 項目は,担当制患者からの要望が有 意に多かった.これは,自分を担当する歯科衛生士には 期待値が高く,患者自身も要望を表出しやすいのでは ないかと考える.患者は,口腔の健康に関心を持ち始め ると,自分の口腔内の状態やセルフケアについて疑問が 生まれ,歯科衛生士によく質問するようになる.担当制 患者は,非担当制患者よりも担当した歯科衛生士とのコ ミュニケーション量が多く,患者は積極的にその歯科衛 生士に質問を行うため,「豊富な知識」や「親身に話を聞 いてくれる」姿勢を求めるのだろうと考える. 角舘ら6)は,「プロフェッショナルケアを受けてもら うことは,セルフケアへの動機付けにもなり,患者が望 ましい歯科保健行動を獲得する一助になる」と述べてい る.さらに,「歯科衛生士の技術は患者の満足度と相関す る」とも報告されている.プロフェッショナルケアにお ける技術面においても,担当制患者のほうが歯科衛生士 に対して施術中の痛みや不快感を表出しやすく,担当す る歯科衛生士も患者の性格や要望を記憶し,施術を行っ ていることが「施術の心地よさ」につながり,患者の満 足度を上げることに寄与するのではないかと考える. 3.定期歯科受診に関する意識 「今後も継続して歯科健診を受診したいと思うか」で は,担当制患者,非担当制患者に関わらず全員が「受診 したい」と回答した.歯科健診を継続したいと思う理由 では,担当制患者,非担当制患者ともに「歯周病予防」, 「歯を守りたいから」,「う蝕予防」という順であった.歯 科衛生士によるプラークコントロールなどの歯科保健指 導やクリーニングを受けたことで患者自身が口腔内に関 心を持ち,歯周病やう蝕にならないように予防していき たいという意識が高まったと考えられる. 「頼れる歯科衛生士がいるから」という継続理由では, 担当制患者のほうが有意に多く,患者の定期歯科健診の 継続を促進させることが明らかとなった.日本歯科医師 会では,「生涯を通じて口腔の健康を維持するために,継 続的に治療や管理を提供し,いつでも相談に応じてくれ る身近なかかりつけの歯科医師がいることは健康寿命の 延伸に資することになる」と,かかりつけ歯科医を持つ ことを推奨している7).今後,かかりつけ歯科医だけで なく,些細なことでも相談することのできるかかりつけ 歯科衛生士の存在が患者の継続的な歯科受診を促すため に重要であろうと考えた. また,「歯科衛生士はいつも同じ人がよいか」では,担 当制患者では「はい」が 43 人(83.4%),非担当制患者 では,「どちらでもよい」40 人(66.7%)が最も多かっ た.しかし,非担当制患者でも,18 人(30.0%)が「い つも同じ歯科衛生士がよい」と回答していることから, 非担当制患者にも歯科衛生士が担当制であることを希望 する患者が潜在することは明らかである. 4.口腔の健康に関する意識 歯の健康に関する自信度では,「やや自信がない」が担 当制患者,非担当制患者ともに最も多く,半数を占めて いた.また,歯肉の健康に関する自信度でも,担当制患 者,非担当制患者で同様に「やや自信がない」が最も多 く半数を占めていた.しかし,歯の健康に関する自信度と担当制の有無に有意差は認められなかったが,歯肉の 健康に関する自信度と担当制の有無では,担当制患者の ほうが有意に歯肉の健康に自信を持っていた.歯の治療 と歯周組織の治療では,一般的に歯周組織の治療のほう が来院回数も多く時間がかかる.歯科衛生士は,う蝕治 療よりも歯周治療で来院する患者と付き合う期間のほう が長い.歯科衛生士が担当制ならば,歯周治療後も定期 歯科健診に積極的に来院し,その効果を実感した結果が 歯肉の自信につながっていると推測する.また,担当す る歯科衛生士が患者の口腔内の変化によく気づき,以前 よりも改善した点を患者に伝え,その努力を誉め,患者 のモチベーションや自己効力感のアップにつなげれば, 定期歯科健診が継続するのではないかと考える.人見 ら8)は「健康な口腔内環境を長期に維持するには,望ま しいプラークコントロールに加え,生涯にわたる歯周病 治療へのコンプライアンスを患者に受け入れてもらう必 要がある.そのために歯科衛生士の役割が効率よく発揮 される体制づくりが喫緊の課題である」としている.今 回の研究で,生涯を通じて口腔の健康を維持するために は,かかりつけ歯科医とともに,かかりつけ歯科衛生士 の必要性が示唆された.かかりつけ歯科衛生士の役割は, 歯科治療後に患者の定期歯科受診を促し,継続的な口腔 健康管理を提供することである.患者とのコミュニケー ションや患者のモチベーション維持を継続して行うには, 歯科衛生士も患者を担当制にすることが必要であり,か かりつけ歯科衛生士として担当患者の健康寿命の延伸を 目指すために重要な役割を果たすのではないかと考える. 本研究は 2 か所の歯科診療所で 120 人の患者を対象と した小規模の調査ではあったが,いくつかの示唆を得る ことができた.しかし,歯科衛生士担当制か非担当制か は患者の要望よりも,それぞれの歯科医院での歯科衛生 士の勤務体制や業務内容,さらに歯科医院の方針など多 くの要因が影響する問題であると考えた.今後,より多 くの歯科診療所の協力を得て,これらの量的調査を継続 したいと考えている.その分析結果より,歯科衛生士が 担当制であることが患者の継続的な定期歯科受診を促す ことが明らかになれば,歯科診療所の歯科衛生士業務の 専門性が,より高まるのではないかと期待している.
結 論
歯科診療所における歯科衛生士担当制患者と非担当制 患者の歯科衛生士に対する満足度と定期歯科受診につい て調査し,以下の結論を得た. 1.担当制患者,非担当制患者ともに全員が今後も継 続して定期歯科健診を受診したいと回答した. 2.歯科衛生士への要望の中で「豊富な知識がある」, 「親身に話を聞いてくれる」,「施術が心地よい」の 3 項目は,担当制患者のほうが有意に多く,患者の要 望が表出しやすいことが示唆された. 3.定期歯科受診の継続理由で「頼れる歯科衛生士が いるから」という項目で,担当制患者のほうが有意 に多かったことから,歯科衛生士が担当制であるこ とが患者の定期歯科健診の継続を促進させることが 示唆された. 本研究は,利益相反に相当する事項はない. 文 献 1) 厚生労働省:健康日本 21(第二次),https://www.mhlw. go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000166300.pdf(2019 年 9 月 27 日アクセス) 2) 厚生労働省:健康寿命延伸プラン,https://www.mhlw. go.jp/content/12601000/000514142.pdf(2019 年 9 月 27 日 ア クセス) 3) 松尾 文:歯科診療所における患者の歯科医療従事者に対 する信頼感と定期歯科受診行動との関連性,日衛学誌,9(1): 32-40,2014. 4) 寺岡加代,野村義明,山田里奈,五十嵐 公,川添孝一: 歯科診療所における定期管理に関する患者の意識調査,口病 誌,70(3):17-22,2003. 5) 高阪利美ほか:最新歯科衛生士教本 歯科予防処置論・歯 科保健指導論,医歯薬出版株式会社,東京,第 1 版,2018, 80-82 頁. 6) 角舘直樹,千葉逸朗:オーラルケアにおける行動変容を科 学する(2)プロフェッショナルケアにおける患者満足度の検 討,歯界展望,113:758-762,2009. 7) 厚生労働省:歯科医師の資質向上に関する検討会(第 7 回) 資 料 3,https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000180629.pdf(2019 年 9 月 27 日アクセ ス) 8) 人見早苗,石幡浩志,猪股裕士,島内英俊:一般歯科医院 におけるメインテナンス治療の長期効果に関する研究,日歯 周誌,48(2):123-134,2006. Corresponding author・指導者への連絡先 野村正子 NOMURA Masako 日本歯科大学東京短期大学歯科衛生学科 〒 102-0071 東京都千代田区富士見 2 - 3 - 16 TEL:03-3265-8815(内線 5752) FAX:03-3265-8928 E-Mail:[email protected]A review on the satisfaction and attendance levels of patients
with and without assigned dental hygienists
SHIBATA Sachiyo, NOMURA Masako
Abstract The aim of this study is to compare the attitude and satisfaction of patients who regularly visit dental clinics and receive regular professional care and guidance from dental hygienists, depending on whether or not they have assigned dental hygienists, and to determine the reasons patients engage in regular dental checkups. In addition, to improve patient satisfaction, we wish to investigate patient requests and to link them to improving patients’ regular checkups.
The study subjects were 120 adult patients who visited the dental clinic in July and August 2019 for a regular dental checkups. This included 60 patients with an assigned dental hygienist, and 60 patients with no assigned dental hygienist. At the time of the visit, a dentist or dental hygienist verbally explained the purpose of the study to participants, and only those who gave consent were surveyed, using an anonymous, self-administered questionnaire.
All respondents, whether they had an assigned dental hygienist or not, indicated that they would like to receive a dental checkup in the future. However, significantly more patients with an assigned dental hygienist gave “there is a reliable dental hygienist” as a reason for continuing, suggesting that assignment encourages patients to continue regular checkups.
The study results reveal that not only does the assignment of dental hygienists encourage patients to continue regular dental checkups, but it is also effective for dental hygienists. Furthermore, it may play an important role in aiming to extend the healthy life expectancy of assigned patients as their regular dental hygienist.
Key words patients with assigned dental hygienists, patients without assigned dental hygienists, regular dental checkups, patient satisfaction, dental clinics