特別講演
1.脳疾患治療等に対する超音波機器の開発
株式会社上山製作所 霜鳥 良雄 [はじめに] アテネオリンピック直前(2004 年)に長嶋茂雄監督(巨人軍名誉監督)が倒れ、その後にハー ドワークなリハビリ治療が放映された。それに影響され、脳血流促進が治療に効果を及ぼすと思 い、電子工学技術者の私は頭蓋骨内部をマッサージする機器の開発に取り組んだ。 2006 年、モーツアルト生誕 250 年祭に出会い、音楽の癒し効果が脳疾患系の治療に使われるこ とを知って超音波治療器の付録機能に組込むことにした。 2007 年にスウェーデン王国のシルビア王妃が国賓として来日し、「財団法人シルビアホームの 活動」について講演され、ここで関連者のレビー小体型認知症発見者である小阪憲司先生とお目 にかかり、超音波機器の開発でご指導頂いた。 2008 年、超音波マッサージ機が完成した。サンプル機を近親者に試し、治療器としての確信を 持つに至った。当該機器が「超音波の熱および非熱的生理学的反応による微小マッサージ作用」 とし、医療機器として認証された。しかし販売 5 年後に認証機関から、本機器は新しい治療器と しての要素があり、臨床試験が必要と指摘され、その旨 PMDA に報告し自ら認証を取り下げた。 なお、現在までに約 1000 台以上が販売されており、副作用はみられていない。 基礎研究として都立産業技術センターの協力を得て、Ultra-Ma で使う超音波振動子の特性測定 を実施し、さらに頭蓋骨モデルを使って内部の音場測定を行った。この結果、安全レベルであ り、微弱であるが頭蓋骨の中心部に音響が集まる様子を確認することができた。(医療機器学第 85 巻第 1 号:超音波頭部マッサージ器による頭蓋骨モデル内の音場測定) 一方でヒトに対する超音波刺激が脳血流に及ぼす影響については、本装置(商標名:Ultra-Ma) で健常成人における経頭蓋微弱超音波振動による脳血流の変化を測定した。1 回の治療の前と後 で、脳内全体の血流量が平均 10~15%上昇したことを確認した(日本補完代替医療学会誌 第 12 巻第 2 号)。 2017 年、中等度以上のレビー小体型認知症患者 3 名に対するパイロット研究で、認知症関連の 薬剤を継続服用しながら Ultra-Ma の効果を確認した。在宅で 1 日 2 回/20 分間を 3 か月間行い、 MMSE と NPI-Q で評価した結果 BPSD に対して効果がみられた。なお、カプクラ症状に効果が ないことも分かった。 2019 年、令和元年の新しい薬機法の下で特定臨床研究「レビー小体型認知症患者を対象とする 頭部超音波刺激装置 Ultra-Ma の有効性及び安全性に対する臨床研究」を開始した。臨床的有用 性については令和 3 年春に報告される予定になっている。 [超音波特性] JIS 規格において超音波電磁規格では、「超音波周波数はヒトに聞こえない可聴周波数の上限を 16,000 ヘルツ以上の音響振動」としている。現状の医療機器は 500,000~5000,000 ヘルツが採用さ れており、超音波強度は、3.0 ワット/cm2 を超えてはならないとされている。超音波の伝搬は縦 波で空気中 340 メートル、水中 1500 メートル(筋肉:1550 メートル)の速度であり、媒体内を 密度の強弱で伝搬する。 特定臨床研究で用いた Ultra-Ma の周波数は 30,000 ヘルツ(イルカやコウモリが発する音波)、 Ultra-Ma は最大超音波強度は 0.0016 ワット/cm2 で、1.5 秒間隔のパルス比は 10%と極めて微小 エネルギーの機器である。 参考までに、他の研究機関でアルツハイマー型認知症患者を対象に行われている治験の超音波ある。Ultra-Ma は強度比較をすると 625 分の 1、また JIS 規格とでは 1875 分の 1 であり、Ultra-Ma は極めて安全な微弱波動装置になる。 なお、海外で行われた研究報告ではヒトに対する頭部超音波刺激は、強度および周波数が高い ことで脳内に障害が発生したことにより、ヒトへの脳に対する使用は中止との報告がある。 [今後の展開] 現在進めている特定臨床試験では効果に対して良い感触を得ており、次のステップとして治験 を行う予定である。 アルツハイマー型認知症、パーキンソン症状を有する認知症などの患者に及ぼす効果は今後の 課題にすることとした。
第7回認知症治療研究会 脳疾患治療等に対する超音波機器の開発 -医療機器への挑戦 -株式会社上山製作所 霜鳥良雄 1 1 Ultra-maの装着 前頭部 後頭部 後頭部超音波振動子 前頭部超音波振動子 3 3 振動子と微弱超音波レベル --1122 --88 --4400 4488 1122 00..0000 00..2200 00..4400 00..6600 00..8800 11..0000 11..2200 11..4400 11..6600 11..8800 --1122 --1100 --88 --66XX軸軸のの中中心心かかららの--44の距--22距離離 (00(mmm22m))44 66 88 11001122 Y Y軸軸距距離離 ((mmmm)) 音音 のの 強強 ささ (( mm WW // cc mm 22)) 振動子面音響分布 振動子面直径28mm、30kHz、4.4mW駆動 振動子 4 4 モーツァルト 小坂憲司先生 長嶋茂雄 名誉監督 シルビア 王妃 機器の開発で影響を 受けた方々 2 2 1 超音波マッサージャ Ultra-Ma 装着例 振動子波形(100ms/div.)と拡大波形(10us/div.) 00..0000 00..2200 00..4400 00..6600 00..8800 11..0000 11..2200 11..4400 11..6600 11..8800 深 深度度((mmmm)) 音音 のの 強強 ささ ((mm WW //cc mm 22)) 水中超音波伝搬減衰測定 水中波長 50mm 5 5 1.5秒周期の パルス刺激
5
6
3
4
1
2
石膏水槽(写真)の特性グラフ 0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10 0.12 0.14 -45-40-35-30-25-20-15-10 -5 05 10 15 20 25 30 35 40 45 50 中 中心心かかららのの距距離離((mmmm)) 音音 のの 強強 ささ ((mm WW // ccmm 22)) 振動子面から50mm前方の横軸分布 6 6 前頭部刺激による脳内血流のXeガスX線CT画像 (振動子2個) 50歳代男性 60歳代女性 刺激前 刺激後 脳血流の変化率:10%上昇 8 8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10 重重 症症 度度 XX 11 負負 担担 度度 YY 11 重重 症症 度度 XX 22 負負 担担 度度 YY 22 重重 症症 度度 XX 33 負負 担担 度度 YY 33 C
Caassee 11 CCaassee22 CCaassee33
DLB患者NPI-Q改善 0 5 10 15 20 25 30 0 0WW 44WW 88WW 1122WW DLB患者MMSE改善傾向 C
Caassee11 CCaassee22 CCaassee33
DLB患者3名を対象としたパイロット試験 1100 頭蓋骨(写真)の特性グラフ 0.00 5.00 10.00 15.00 20.00 25.00 中 中心心かからら前前後後方方向向へへのの距距離離 音音 のの 強強 ささ ((μμ WW // cc mm 22)) 樹脂製頭蓋骨モデル内音響分布 1 1 前頭部+後頭部の刺激による脳内血流のSPECT画像 (振動子4個) 60歳代女性 60歳代男性 刺激前 刺激後 前後の差 刺激前 刺激後 前後の差 脳血流の変化率:15%上昇 9 9 異常たんぱく質の顕微鏡写真 αシネクレンの存在 (シナプスに付着の例) 異常たんぱく質の付着 (推定:超音波で溶解/分離?) レビー小体病は全身病であり、脳・脊髄・血管・腸・膀胱・皮膚にレビー小体や レビー小体突起が全身にみられる。(2020年レビー小体型認知症研究会での報告か ら抜粋) 2 2
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付録:超音波による作用のアニメーション 1 144 展示場で体験デモを行いますので、 宜しくお願いします。 左記の小冊子にご興味のある方には 後方に資料がございますので、お持 ち帰りください。 ご清聴まことに、 ありがとうございました! 1 133 頭部超音波刺激に関わる特定臨床研究の依頼 <研究名称/jRCTs032190012> レビー小体型認知症と臨床診断された患者を対象とする頭部超音 波刺激装置Ultra-Maの有効性および安全性に対する臨床研究 <プロトコル> 被験者に対し、プラセボ機で4W・実機器で12W・観察4W <研究期間> 令和元年6月~令和2年12月データ確定予定 12