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IRUCAA@TDC : 内科系「肝臓疾患のある患者に対する歯科治療上で注意すべき点,知っておくべき点について教えてください。」

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Academic year: 2021

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Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/

Title

内科系「肝臓疾患のある患者に対する歯科治療上で注意

すべき点,知っておくべき点について教えてください。

Author(s)

西田, 次郎

Journal

歯科学報, 110(6): 791-792

URL

http://hdl.handle.net/10130/2189

Right

(2)

肝臓は「沈黙の臓器」と言われ,病気が進行し肝 硬変や肝がんのような状態になっていても,自覚症 状が全くないといった症例も珍しくありません。肝 疾患の原因としては,ウイルス性,アルコール性, 薬物性,自己免疫性,非アルコール性脂肪性肝炎な どが挙げられますが,日常診療において特に注意が 必要な肝疾患はウイルス性のものです。国内の B 型および C 型肝炎ウイルスの感染者は300万人を超 えており,これらのウイルスによる肝硬変は全体の 約8割を占めています(図1)。歯科治療を行う際に は,患者が肝疾患に罹患している可能性があると考 え,患者から得られた病歴,身体所見および血液検 査所見などから肝疾患の有無について総合的に判断 する習慣をつけることが大切です。 歯科診療上で特に注意が必要な肝疾患および合併 症として以下のものを挙げることができます。 ① B 型・C 型肝炎の感染対策 ②肝硬変に伴う出血傾向 ③薬剤性肝障害 ① B 型および C 型肝炎の感染対策 厚生労働省の推定では,我が国の肝炎ウイルス キャリアは B 型肝炎で110∼140万人,C 型肝炎で 190∼230万人存在し,日常的に観血的治療が行われ る歯科診療においては,感染予防対策は極めて重要 な問題です。 初診時の問診の際には,各患者から肝疾患に関連 する医療機関への受診歴がないかを聞き取り,現在 あるいは過去に受診歴がある場合には,ウイルス肝 炎の有無およびその重症度についての詳細な情報を 受診医療機関から得ることが大切です。さらに肝疾 患の受診歴がない場合でも,輸血や血液製剤使用の 既往歴,入れ墨,健康診断での肝機能障害の指摘な ど肝炎ウイルス感染の可能性がある患者に対して は,治療前に血液検査を行い肝炎ウイルス感染の有 無を確認することが必要です。 感染予防対策の基本は,血液の付着した注射針な どによる針刺し事故を起こさないことですが,誤っ

臨床のヒント

Q&A

内科系

Q&Aコーナーを新設しました。まず東京歯科大学の3 病院の臨床研修歯科医から寄せられた質問に対しての回 答です。回答は本学3施設の専門家にお願い致します。 内容によっては基礎や臨床,あるいは歯科や医科と複数 の回答者に依頼する場合もあります。毎号掲載いたしま すので,会員の皆様もご質問がございましたら,ぜひ東 京歯科大学学会までeメールかファックスで依頼してい ただきたいと存じます。必ずご期待に添えることと思い ます。今号は肝臓疾患のある患者に対する歯科治療に関 する質問です。

Question

肝臓疾患のある患者に対する歯科治療上で注意すべき点,知っておくべき点について教えてく ださい。

Answer

図1 肝硬変の成因別実態(第2回日本肝臓学会大会の 集計:1998年)1) 歯科学報 Vol.110,No.6(2010) 791 ― 41 ―

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て針を刺してしまった場合には,直ちに流水で患部 を十分に洗浄することが重要です。 B 型肝炎ウイルスは感染力が強いため,血液に触 れる機会の多い医療従事者はあらかじめ HB ワクチ ンを接種し,感染防御に有効な抗体価を獲得するこ とが強く勧められます。針刺し事故の発生時に汚染 源患者の HBs 抗原が陽性でかつ被汚染者の HBs 抗 体が陰性であることが判明した場合には,被汚染者 には速やかに HBs 抗体含有ヒト免疫グロブリ ン (HBIG)の投与することによりウイルス感染を阻止 するための治療を行います。 C 型肝炎ウイルスは B 型肝炎ウイルスに比べる と感染力は弱く,針刺し事故による感染率は1∼ 3%程度ですが,C 型肝炎ウイルスに対する特異的 な感染予防策は存在しません。このため針刺し事故 発生時には,その後の定期的な血液検査が極めて重 要であり,不幸にして C 型肝炎ウイルスの感染の 成立が確認された場合には,専門医に依頼しイン ターフェロン療法を開始します。 ②肝硬変に伴う出血傾向 肝硬変患者では,肝での凝固因子の産生能の低 下,脾腫に起因する血小板減少により出血傾向がし ばしば認められます。肝硬変患者に対して抜歯など の観血的治療が必要な際には,治療前に血小板数, プロトロンビン時間 PT の測定を行い,出血傾向の 程度をあらかじめ確認するとともに止血対策を立て ておくことが重要です。 肝硬変患者の抜歯に際しては,血小板数が10万以 上であれば通常の治療で問題はないと考えられ,3 万以上であれば歯科的圧迫止血や縫合処置などによ り抜歯は可能であると思われます。血小板数が3万 以下の場合には,抜歯の適応について再検討すべき で,抜歯以外の治療がないと判断された場合には, 入院の上で治療を行うことが望ましく,血小板輸血 も考慮する必要があります。 ③薬剤性肝障害 あらゆる薬剤が肝機能障害の原因となり,稀では ありますが劇症肝炎の原因にもなるので,処方の際 には十分な注意が必要です。 薬剤性肝障害の起因薬としては,歯科の日常診療 でも多く使われている抗生剤や NSAIDs の割合が 多いですが,近年の特徴として健康食品や民間薬に よる肝障害が増加しており念頭に置く必要がありま す(図2)。 治療としては,先ず起因薬として疑われる薬剤の 投与中止であり,多くの症例では中止により肝機能 は速やかに改善します。しかし,肝機能障害が遷延 し,黄疸を認める,血液凝固因子の低下がある,あ るいは悪心,嘔吐などの臨床症状を伴う場合には, 経過を観察することなく速やかに専門医に紹介する ことが重要であり,その際にはステロイド療法など の治療が必要となります。 Answer:西田次郎 東京歯科大学市川総合病院消化器内科 文 献 1)清澤研道:前肝がん病変としての肝硬変の動向.日本肝 臓学会編:肝がん白書(平成11年度),pp33−37,日本肝 臓学会,1999. 2)滝川 一,向坂彰太郎,相磯光彦,綾田 穣,久持 顕 子,辻 恵二,村田洋介,安田 宏,出口章広:薬剤性肝 障 害 の 最 近 の 動 向−2002∼2006年 の366例 の 検 討−.肝 臓.48:517∼521,2007. 図2 薬物性肝障害の起因薬(第43回日本肝臓学会総会 の集計:2007年)2) 歯科学報 Vol.110,No.6(2010) 792 ― 42 ―

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