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『律條公案』における訟師秘本からの影響について

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Academic year: 2021

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(1)集刊東洋学 第一一三号 平成二十七年六月 四二. 六三頁. ︵. ︶. 堀 川 慎 吾. 類 似 し た も の が あ る。 な お、 ﹁ 訟 師 秘 本 ﹂ と い う 呼 称 は、. 夫馬氏が﹃清會典﹄によった総称であり、本稿でもそれに. 師秘本と呼ばれる同時代の書物からの影響を考察したい。. ある﹃律條公案﹄を取り上げて、﹃律條公案﹄に対する訟. た公案小説集はいくつもあるが、本稿ではその中の一つで. る白話小説のことである。犯罪や裁判を扱った小説を集め. 行元については、一巻巻首に﹁金陵 陳玉秀 選校/書林 師. を欠く︶ 、版面の体裁は上図下文の形式である。編者・刊. いる。全三冊、序文無し、首巻・一∼七巻の全八巻︵二巻. 條公案﹄という。国立公文書館内閣文庫にのみ所蔵されて. ﹃律條公案﹄は、巻首題を﹃新刻海若湯先生彙集古今律. 従うこととする。. 夫馬進氏によると、訟師とは、訴訟を代理したり請け負っ. 倹堂 梓行﹂とあり、また七巻巻末の刊記に﹁書林蕭少衢. ︶. 梓行﹂と記されている。選者と思われる﹁陳玉秀﹂につい. ︵. たりする者のことを指す。訟師秘本とは訟師達が使った訴. ては、よく分かっていない。刊行元の﹁師倹堂﹂とは、明. ︶. 訟文書の書き方を教えたテキストのことである。その出現. ︵. は嘉靖︵一五二二∼一五六六︶頃であり、万暦︵一五七三 ︶. の万暦年間に建陽の蕭騰鴻・蕭少衢らを中心として活動し. ︵. ∼一六二〇︶の初めにかけて広く流布したとされる。訟師. ︶. ていた書坊である。﹃律條公案﹄の刊行年代は万暦二十六. ﹃律條公案﹄の構成は、目録によれば以下の通りである。. 5. 3. 2. 1. 律に関する項目には、﹃律條公案﹄首巻に存在するものと. ︵. ︵一五九八︶∼三十三︵一六〇五︶年とされている。. 4. 秘本には、原告被告双方の訴状とそれに対する判決文や法. ﹁公案﹂とは公案小説を指し、犯罪及び裁判を主題とす. はじめに. ﹃律條公案﹄における訟師秘本からの影響について  . −. 律に関して説明した項目が収録されている。訟師秘本の法. 42.

(2) ︶. また阿部泰記氏は、﹃律條公案﹄を含めた各公案小説集. ︵. 首巻 ﹁六律総括﹂ ・ ﹁八字西江月﹂ ・ ﹁編次納贖則例歌括﹂ ・. の編纂について考察している。﹃律條公案﹄ は三十二話を﹃詳. 一誠賦﹂・﹁執照類﹂・﹁保状類﹂. 則・. 2. ﹁納紙則例﹂・﹁五刑定律﹂・﹁擬罪問答﹂・﹁金科 一巻 ﹁謀害類﹂ 則 二巻︵欠︶﹁強姦類﹂ 則 則・ ﹁除精類﹂. 三巻 ﹁姦情類﹂ 則・﹁強盗類﹂ 則 四巻 ﹁窃盗類﹂ 則・ ﹁淫僧類﹂ ﹁除害類﹂ 則 五巻 ﹁婚姻類﹂ 則・﹁妬殺類﹂ 則 六巻 ﹁謀産類﹂ 則・﹁混争類﹂ 則 七巻 ﹁拐帯類﹂ 則・﹁節孝類﹂ 則. ︵ ︶. の項目が収録され、これらすべての内容は訟師秘本﹃新鐫. 刑定律﹂ ・ ﹁擬罪問答﹂ ・ ﹁金科一誠賦﹂ ・ ﹁執照類﹂ ・ ﹁保状類﹂. さらに龔汝富氏は、﹃律條公案﹄には﹁六律総括歌﹂ ・ ﹁五. 二話を﹃剪灯余話﹄から採ったとする。. を﹃蕭曹遺筆﹄ ︵あるいは﹃廉明公案﹄︶から物語を構成し、. 刑公案﹄から採り、四話を﹃諸司公案﹄から翻案し、二話. 7. 音釈四民要覧蕭曹明鏡﹄と全く同じであると指摘する。. ︶. が、訟師秘本とされる書物である。. ︵. る﹃折獄明珠﹄ ・ ﹃蕭曹遺筆﹄ ・ ﹃新鐫音釈四民要覧蕭曹明鏡﹄. 大塚氏、阿部氏、龔氏が﹃律條公案﹄との関連を指摘す. 8. 5. 4 1. 2. 4. り込まれたものとする。大塚氏が、﹃律條公案﹄首巻が﹃折. 状類﹂は、﹃折獄明珠﹄を媒介として﹃廉明公案﹄から取. ておく。大塚秀高氏は、﹃律條公案﹄首巻の﹁執照類﹂﹁保. まず﹃律條公案﹄と訟師秘本に関する先行研究を整理し. いるが、両者の原文を引いて具体的な類似状況を示しては. また龔氏は﹃律條公案﹄と訟師秘本との共通性を指摘して. 訟師秘本という枠組みで捉えてはいないように思われる。. ている。大塚氏と阿部氏はそれぞれの挙げている書物を、. の関わりについては、まだ検討の余地があると筆者は考え. 部氏・龔氏が既に指摘しているように見える。しかし両者. ﹃律條公案﹄と訟師秘本の関連については、大塚氏・阿. 獄明珠﹄から抽出再構成されたとする根拠は、﹃折獄明珠﹄. いない。 ﹃律條公案﹄について、同種の書物である公案小. ︶. 巻四に収録される執照類︵四則︶、保結類︵三則︶が﹃律. 説集との関係のみならず、訟師秘本との関係からも検討を. ︵. 條公案﹄執照類、保状類に一致すること、また﹃折獄明珠﹄. 加えることで、﹃律條公案﹄ の成立過程をより精確に理解し、. 10. 6. 収められていることである。. ︵ ︶. 巻一上層に﹁六律総括歌﹂等が、下層に﹁六律要規﹂等が. 42. 9. 4. 以上、目録に記載されているのは、合計 則だが、二巻 46. 7. 3. 2. 1. 4. 5. 2. が欠けているため、今見ることが出来るのは計 則である。. 『律條公案』における訟師秘本からの影響について(堀川). 43.

(3) ひいては公案小説集全体の成り立ちについてより深い理解. ﹃律條公案﹄首巻の. 項目が、訟師秘本や日用類書にい. 項目を持つ訟師秘本・日用類書の三者を比較する。これに. ことを目的とする。そのために、﹃律條公案﹄と類似する. た公案小説に対する、訟師秘本からの影響を明らかにする. 本稿は、﹃律條公案﹄首巻の項目と一∼七巻に収められ. 公案﹄の③﹁編次納贖則例歌括﹂・④﹁納紙則例﹂ ・⑥﹁擬. 目全てを収録するものは存在しなかった。第二に、﹃律條. 得た訟師秘本及び日用類書の中で、﹃律條公案﹄首巻の項. る。調査の結果、以下のことが分かった。第一に、調査し. る。使用した書物の書誌情報は本稿末尾にまとめて記載す. ⑧﹁執照類﹂・⑨﹁保状類﹂という. 項目がある︵①∼⑨ 項目は、他の公案小説集. それでは、訟師秘本および日用類書双方に相当する項目. がある①﹁六律総括﹂ ・②﹁附八字西江月﹂ ・⑤﹁五刑定律﹂ ・. ⑦﹁金科一誠賦﹂ ・⑧﹁執照類﹂ ・⑨﹁保状類﹂については、. 検 討 に 当 た っ て、 訟 師 秘 本 は﹃ 新 鍥 蕭 曹 遺 筆 ﹄ ︵万暦. どうか。. 二三︵一五九五︶年刊︶ ・ ﹃新刻校正音釈詞家便覧蕭曹遺筆﹄. ︵以下﹃校正蕭曹遺筆﹄と略す︶を使用する。日用類書は、. 物に収録されている。そこで、﹃律條公案﹄首巻の項目と、. 暦二三︵一五九五︶年に編纂されたことが分かる。一巻巻. 暦乙未歳仲冬穀/江湖散人書于呉東白雪精舎﹂とあり、万. まず﹃新鍥蕭曹遺筆﹄は全四巻で、序の末尾に﹁皇明萬. の書誌情報とそれぞれを用いた理由は以下の通りである。. 訟師秘本・日用類書の記述を比較し、その影響関係を分析. ﹃五車抜錦﹄︵万暦二五︵一五九七︶年刊︶を用いる。三書. する。日用類書とは、日常生活の万般にわたる手引書とな ︶. 首に﹁錦水 竹林 浪叟 輯﹂とある。また四巻巻末には﹁金. ︵. ることを意図した類書のことである。. には見られず、﹃律條公案﹄の特徴と言える。これらの項. の番号は筆者による︶。首巻の. 類書には存在しなかった。. より、 ﹃律條公案﹄と訟師秘本との関係をより精確に理解. 、﹃律條公案﹄首巻の項目と訟師秘本・日用類書. 罪問答﹂に相当する項目は、訟師秘本には存在したが日用. かに収録されているかを調査すると、次頁の表のようにな. 9. 目に類似した文章が、訟師秘本及び日用類書と呼ばれる書. 9. 9. 紙則例﹂ ・⑤﹁五刑定律﹂ ・⑥﹁擬罪問答﹂ ・⑦﹁金科一誠賦﹂ ・. 総括﹂ ・②﹁附八字西江月﹂ ・③﹁編次納贖則例歌括﹂ ・④﹁納. ﹃律條公案﹄首巻には法律に関して説明する、①﹁六律. 1. することができると考える。. を得る一助となると思われる。. 44. 11.

(4) 45. 『律條公案』における訟師秘本からの影響について(堀川) 表 :『律條公案』首巻の項目の訟師秘本・日用類書における収録状況. 『律條公案』. ①六律 総括. 『新鍥蕭曹遺筆』. ⃝. ②附八字 ③編次納贖 ④納紙 ⑤五刑 ⑥擬罪 ⑦金科一 ⑧執照類 ⑨保状類 成立年代 西江月 則例歌括 則例 定律 問答 誠賦 萬暦二二(1594)以降 ⃝. ⃝. 『校正蕭曹遺筆』. ⃝ △. ⃝. ⃝. △. △. △. △. ⃝. 萬暦三十(1602). ⃝. 萬暦二三(1595) 清刊本. 『折獄明珠』. ⃝. △. ※. ※. △. 訟『蕭曹致君術』 師 『法筆驚天雷』 秘. ⃝. △. ※. ※. ⃝. △. △. △. △. 不明. ⃝. △. ⃝. △. △. 清刊本. △. △. 清刊本. △. △. 清刊本. △. 清刊本. 本『蕭曹雪案』 『法筆新春』. △. △. △. 『法筆天油』. △. △. △. ※. △. △. 『法家新書』. ※. △. 同治元年(1862). 『萬書萃寶』. △. ⃝. △. △. △. △. 『五車抜錦』. △. ⃝. △. △. 萬暦二五(1597). △. △. 萬暦二八(1600)序. △. △. 萬暦三五(1607). △. △. 『三台萬用正宗』 『萬巻星羅』 日『萬用正宗不求人』 用 類『学海群玉』 書『萬書淵海』. 萬暦二七(1599) △ △. ⃝. △. 萬暦三五(1607). △. ⃝. △. △. △. ⃝. △. △. 萬暦四十(1612). △ (注記無し). ⃝. △. △. 明刊本. 『妙錦萬寶全書』. △. 萬暦三八(1610). 『五車萬寶全書』 『博覧全書』. 萬暦二四(1596). 萬暦四二(1614).  凡例  ⃝ : ほぼ一致する △ : 一致する部分がある ※ : 記述が混在している 空白 : 項目が存在しない. 陵原板刊﹂とある。夫馬氏は該書について、それがかつて. 訟師秘本の代名詞であった蕭曹遺筆を名乗るものの一つで. あること、編纂・出版の年代がわかるもののなかでは今の. ところ最も古いものであること、明末で編纂されたものの. なかでは異例といってよいほど数多く現存しており、これ. ︶. はこの書の重要性を物語っていると考えられることを指摘. ︵. し、これらを根拠としてこの﹃新鍥蕭曹遺筆﹄を訟師秘本. の代表格としている。. 次に﹃校正蕭曹遺筆﹄は全四巻で、台湾の中央研究院に. ︶. 万暦四二︵一六一四︶年序刊本が所蔵されている。今回調. ︵. 査した東洋文化研究室蔵の﹃校正蕭曹遺筆﹄は清刊本であ. るが、中央研究院蔵本の改訂版であるとされるので、今回. 使用することとする。封面に﹁乙卯春鐫﹂ ﹁烟水散人較對 . 蕭曹遺筆 洗冤便覧 本衙蔵板﹂とある。序の終わりには ﹁慶雲主人識﹂とある。﹃校正蕭曹遺筆﹄を使用する理由は、. 成立年代がはっきりしている訟師秘本の中では﹃新鍥蕭曹. 遺筆﹄と﹃折獄明珠﹄に次いで、成立が早いものだからで. ある。. 日用類書﹃五車抜錦﹄は全三十三巻十冊で、 巻首題は﹃新. 鍥全補天下四民利用便観五車抜錦﹄である。封面は欠けて. いて、序の末尾に﹁萬暦丁酉歳季春月吉旦自得生書于︵以. 下欠損︶ ﹂とあり、万暦二五︵一五九七︶年に刊行された. 13. 12.

(5) ことが分かる。一巻巻首題に続き、﹁錦城 紹錦 徐三友 . 六律樞要首名例、吏律職制公式異。戸律有七首戸役、. 田宅婚姻倉庫事。課程錢債與市廛、祀科祭祀并儀制。. 兵律官衛軍政隨、関津厩牧郵驛継。刑律名條首賊盜、. │ ﹃五車抜錦﹄﹁律巻總目條款名歌﹂   名例職制兼公式、戸役田宅與婚姻。倉庫課程接銭積、. 學律之人須熟計。. 終之断獄凡十一、工律營造河防意。律共四百六十條、. 校正/閩建 雲齋 鄭世魁 梓行﹂と刻されている。この 書物を用いる理由は、今回調査した日用類書の中で、完本. ⑦・⑧・⑨の項目を比較検討する。 │ 、①﹁六律総括﹂ ︵ ︶. 訟師秘本﹃新鍥蕭曹遺筆﹄四巻及び日用類書﹃五車抜錦﹄. と推測される。﹃律條公案﹄ ﹁六律総括﹂に相当する項目を、. ﹁ 六 律 総 括 ﹂ は、 明 律 に つ い て の 覚 え 歌 の よ う な も の だ. 1. 市廛祭祀儀制明。宮衛軍政関津密、既牧郵馹盗賊寧。. 人命闘殴連罵詈、訴訟受賍詐偽價。犯姦雜犯捕亡護、. 断獄營造河防成。十句總言三十巻、條有四百六十名。. を見ると、﹃律條公案﹄は、﹃五車抜錦﹄よ. りもはるかに、﹃新鍥蕭曹遺筆﹄に近いことが分かる。﹃律. │ ∼. 條公案﹄と﹃新鍥蕭曹遺筆﹄とでは﹁六律総括﹂という題. 例. 公案﹄と﹃新鍥蕭曹遺筆﹄の間で異同がある箇所を示す。. 名が共通し、共に一句七字で全十六句である。違いも一部. 目 條 款 名 歌 ﹂ で あ る 他、 句 数 も 違 っ て い る。﹃ 律 條 公 案 ﹄. しかし、﹃五車抜錦﹄はそうではない。題名が﹁律巻總. の文字に小さな異同がある程度である。. 田宅婚姻倉庫事。課程錢債算市廛、禮科祭禮并儀制。. 例. │  ﹃律條公案﹄﹁六律総括﹂ 六律樞要首名例、吏律職制公式異。戸律有七首戸役、. 兵律官衛軍政隨、関津厩牧郵驛断。刑律名條首賊盜、. と﹃新鍥蕭曹遺筆﹄では、一句七字で全十六句であるのに. 全 十 二 句 と 少 な く な っ て い る。 ま た 例. の す ぐ 後 に、. 學律之人須熟記。. 次 の よ う な 注 記 が 続 い て い る。﹁ 此 歌 總 言 三 十 巻、 條 有. │. │  ﹃新鍥蕭曹遺筆﹄﹁六律総括﹂ 2. 1. 人命闘毆并罵詈。訴詞受賍詐偽来、犯姦雜犯捕兦結。. 1. 対し、﹃五車抜錦﹄では、一句七字であることは同じだが. 1. 終之断獄凡十一、工律營造河防意。律共四百六十條、 例. 1. この例では異同状況を示すのみで、日本語訳は付さない。. 3. 1. 六巻﹁律例門﹂上段から例として挙げる。傍線部は﹃律條. 3. 1. 14. 1. 1. 以上の三書及び﹃律條公案﹄について、前掲の①・②・⑤・. 人命闘毆并罵詈。訴訟受賍詐偽来、犯姦雜犯捕亡結。. 例. としては、﹃五車抜錦﹄が最も古いものだからである。. 46. 3.

(6) 四百六十名、乃大明律條款名目也。但律例廣多、茲巻難以 餘情依律。. 其者変於先意、及者事連後隨。即如听訟判真虚、為有. ︶. 例 │   ﹃五車抜錦﹄ ﹁例分八字西江月﹂ 以紀文身合死、准言例免難誅。□無首従罪非殊、□有. 備 載。 斈 者、 見 大 明 律︵ こ の 歌 の﹁ 總 言 三 十 巻、 條 有 四百六十名﹂は、大明律の項目の名前︵について言うもの︶ である。しかし法律は幅広く量が多いので、この巻では全 てを載せるのは難しい。学ぶ者は、大明律を見よ。︶﹂。注. ︵. 記が付されている点も、﹃律條公案﹄・﹃新鍥蕭曹遺筆﹄と は異なる点である。 │ 、②﹁附八字西江月﹂. ﹁附八字西江月﹂は、明律の﹁例分八字之義﹂に基づい. 鍥蕭曹遺筆﹄四巻と﹃五車抜錦﹄六巻上段から挙げる。☓. は対応する文字がないこと、□は判読できなかった文字を. それぞれ示す。以下の例でも同じである。. 例. 2. 彼此同獄。. 彼此同獄。. 其者変於先意、□□□事後隨。即如耻訟判真偽、若有 □情依律。. ︵﹃律條公案﹄の訳 ﹁以﹂とは罪を犯すと入れ墨を入. れ ら れ て 殺 さ れ、 ﹁准﹂は法令を見るに下せない罪が. あることを言う。﹁皆﹂とは首従に差が無く、﹁各﹂と. は双方同じく裁く。 ﹁其﹂とは前文の意思を変え、﹁及﹂. と は 事 が 後 の 文 に 連 な る。 ﹁即﹂は訴訟を聞いて虚実. を 判 断 す る よ う な も の で、 ﹁為﹂は余りの事情があれ │. ∼. の﹁□無首従罪非殊﹂とい. を見ると、三書の間には、ほとんど違いが. ば法律による。 ︶ 例. ・. ・. では欠. の対応する部分と比較すると、例. 無い。しかし、例えば例 │. の﹁罪非殊﹂の﹁罪﹂の字が、例 │. う部分を、例 │ │. 異同は、 ﹃ 律 條 公 案 ﹄ と﹃ 新 鍥 蕭 曹 遺 筆 ﹄ と で は 共 通 し て. けている事が分かる。このように﹃五車抜錦﹄のものとの. 2. 餘情依律。. 1. 2. おり、両者が近いことが分かる。. 其者變於先意、及者事連後隨。即如聽訟判真虚、為有. 3. 1. 15. │   ﹃新鍥蕭曹遺筆﹄﹁附八字西江月﹂ 以犯文身合死、准言例見難誅。皆無首従☓非殊、各有. 2. 1. 2. 3. 2. 1. 3. 2 3. 2. │   ﹃律條公案﹄﹁附八字西江月﹂ 以犯文身合死、准言例見難誅。皆無首従☓非殊、各有. 2 彼此同獄。. 例 2. 2. 2. 1. て作られた韻文と考えられる。これに類似したものを、﹃新. 『律條公案』における訟師秘本からの影響について(堀川). 47.

(7) │. 、⑤﹁五刑定律﹂. ﹃律條公案﹄は、﹃五車抜錦﹄よりも﹃校正蕭曹遺筆﹄の方. 、⑦﹁金科一誠賦﹂. に近いといえる。 │. ﹁ 金 科 一 誠 賦 ﹂ は、 裁 判 を な す に あ た っ て の 心 構 え と、. 十 四 句 で あ り、 二 句 ご と に 注 の 形 で 説 明 が 付 さ れ て い る 。. 事 件 を 裁 く 際 に 誤 審 が な く な る と 説 く も の で あ る。 五 言. 法律の中のいくつかの法則を記し、 その法則を熟知すれば、. │ ﹃律條公案﹄﹁五刑定律﹂   杖刑有五︵※割注 杖者、謂人有罪、用大刑杖決打。. 抜錦﹄六巻﹁律例門﹂下段から例として挙げる。. 例 自六十至一百為五等、亦毎一十為一等加減。︶. 4. 人が罪を犯すと、大きな刑杖で打つことを言う。六十 から百まで五段階あり、十回ごとに一段階増減する。︶︶ ﹃律條公案﹄﹁五刑定律﹂は、﹃校正蕭曹遺筆﹄﹁五刑定律﹂ │. ・ に挙げた文のすぐ後に、刑を贖うための. にほぼ一致している。また﹃律條公案﹄と﹃校正蕭曹遺筆﹄ では例. 2. 車抜錦﹄でも言及されているが、例. │ に挙げた文の直 3. 後ではなく、別に項目を立てて説明している。この点でも. 3. 米と銀の量を示している。この米と銀の量については、﹃五. 1. │   ﹃律條公案﹄﹁金科一誠賦﹂第一句 金科慎一誠. これに相当する項目を、﹃校正蕭曹遺筆﹄一巻及び﹃五車. │  ﹃校正蕭曹遺筆﹄﹁五刑定律﹂ 杖刑有五︵※割注 杖者、謂人有罪、動大刑杖決打。. 例. 金 者、 刑 也、 曹 也。 科 者、 條 也、 斷 也。 謂 刑 曹 之 官、. 例 自六十至一百為五等、亦毎一十為一等加減。︶. 4. ︵ ﹃律條公案﹄の訳 杖刑には五つある︵割注 杖とは、. 例. │  ﹃五車抜錦﹄﹁五刑條例﹂ 杖刑有五。自六十至一百、亦毎下下、為一等加減。. 例. 3. と﹃五車抜錦﹄六巻上段から例として挙げる。. である。この項目に類似したものを﹃校正蕭曹遺筆﹄一巻. 説明し、それを贖うために必要な米・銀の量を示した項目. ﹁五刑定律﹂は、五刑︵笞・杖・徒・流・死︶について. 3 1. │ ﹃校正蕭曹遺筆﹄﹁金科玉律解﹂第一句   金科慎一誠︵※割注 謂之金者、取其剛而断也。 ︶. 無冤抑矣。. 折獄當慎、不可孟浪。尽一心之誠、以應萬事之變、斯. 1. 2. 3. 3. 注. 法令は誠心誠意に従い︵※割. これを金というのは、そのしっかりとして断固た. ︵﹃校正蕭曹遺筆﹄の訳. 無冤抑矣。. 折獄當慎、不可孟浪。盡一心之誠、以應萬事之変、斯. 金 者、 刑 也、 曹 也。 科 也、 條 也、 斷 也。 謂 刑 曹 之 官、. 2. 3. 4. 1 3. 1. 48.

(8) 例. り、裁きである。いうこころは、法官は事件を裁くと. 金とは、規則であり、官職である。科とは、法令であ. の文例である。. あり、﹁保状類﹂は罪の赦免の嘆願とそれに対する判決文. │ 、⑧﹁執照類﹂ ・⑨﹁保状類﹂   ﹁執照類﹂は許可の申請とそれに対する判決文の文例で. る点を取るのである。︶. きには、慎重にし、軽率であってはいけない。心から くなる。︶. 訟師秘本﹃折獄明珠﹄四巻下段・公案小説集﹃廉明公案﹄. して挙げる。これに相当する項目は、﹃新鍥蕭曹遺筆﹄ 二巻・. 科者、法也、断也。謂刑曹之官、推断刑獄之際、惟当 ︵法令は誠心誠意に従い︵※割注 ﹁辯疑﹂に言うには、. の末尾に﹁萬暦壬寅歳孟春之吉/清波逸叟題﹂とあり、万. 版面は上下二層になっている。一冊四巻で、封面はなく序. 慎其一心之誠、否則致罪出入、可不慎與。︶ 金とは、刑罰であり、官職である。科とは、法令であ. ﹃ 廉 明 公 案 ﹄ は 巻 首 題 を﹁ 皇 明 諸 司 廉 明 奇 判 公 案 傳 ﹂ と. 暦三十︵一六〇二︶年に刊行されたことが分かる。. いい、本稿では内閣文庫蔵の萃英堂宗文堂刊本を使用する。. 案﹄と﹃校正蕭曹遺筆﹄とは一致しているが、﹃五車抜錦﹄. では異同が大きい。. 暦三四︵一六〇六︶年前後に新刻された同じく内閣文庫蔵. れており、本稿で使用する萃英堂宗文堂刊を、大塚氏は万. 邑書林 鄭氏 萃英堂刊﹂ ︵鄭は墨書︶とあり、下巻第一     葉には﹁建邑書林 鄭氏 宗文堂梓﹂とある。 ﹃廉明公案﹄     は北京図書館に万暦二六︵一五九八︶年序の刊本が所蔵さ. には﹁皇明諸司廉明奇判公案傳上巻﹂とあり、次いで﹁建. でなければ罪を決めることが不公平になるので、慎重 ∼ を見ると、各本共に注の﹁金者﹂から﹁謂 3. この刊本は上下二巻、全四冊で封面はない。上巻の第一葉. 例 │ 1. でなければならぬ。︶︶. きには、ひたすら心からの誠意を尽くすべきで、そう. り、裁きである。いうこころは、法官は事件を裁くと.  ﹃ 折 獄 明 珠 ﹄ は 内 閣 文 庫 に 所 蔵 さ れ る 刊 本 を 使 用 す る。 巻首題は﹁新刻摘選増補註釋法家要覧折獄明珠﹂であり、. 下巻・日用類書﹃萬書淵海﹄十七巻上段に収録されている。. まず、﹃律條公案﹄﹁執照類﹂から﹁娼妓従良照﹂を例と. 5. │ ﹃五車抜錦﹄﹁金科一誠賦﹂第一句   金科慎一誠︵※割注 辯疑云以、金者、刑也、曹也。. の誠意を尽くし、全ての変化に対応すれば、冤罪は無. 1. 3. 4 4. 刑曹之官﹂までがほぼ一致している。それ以降は﹃律條公. 『律條公案』における訟師秘本からの影響について(堀川). 49.

(9) ︵. ︶. 例. │ ﹃新鍥蕭曹遺筆﹄ ﹁執照類﹂﹁娼妓従良照 安仁縣事﹂. の三台館双峰堂刊本の覆本と推定している。本稿で﹃折獄. ☓☓☓☓☓☓☓☓☓☓⋮︵中略︶⋮懇天賜照張主、庶. が﹃律條公案﹄首巻の項目は、﹃折獄明珠﹄を媒介として﹃廉 ︵ ︶. 明公案﹄から収録されたものとしているからである。 また﹃萬書淵海﹄は三十七巻六冊で、封面中央に﹁萬寶 全書﹂と大書し、その右上に﹁徐企龍先生編輯﹂、左下に﹁蓻 林積善堂梓﹂とやや小さく刻されている。巻首題は﹁新全. 免生為萬人妻、死作無夫鬼。為此銜恩上告。. ︵天に乞うらくは許可を申請者に賜り、生きては万人. の妻となり、死んでは夫のない亡霊となることを免れ. んことを。このために御恩を感じつつ申し上げます。 ︶. │ ﹃折獄明珠﹄﹁執照類﹂﹁娼妓従良照﹂   ☓☓☓☓☓☓☓☓☓☓⋮︵中略︶⋮懇天賜照張主、庶. 免生為無主婦、死作無祭鬼。為此銜冤激切上告。. ︵天に乞うらくは許可を申請者に賜り、生きては夫の. │   ﹃廉明公案﹄﹁執照類﹂﹁余侯批娼妓従良照﹂ 安仁縣娼妓柯翠樓告為⋮︵中略︶⋮懇天賜照張主、庶. げます。 ︶. を免れんことを。このために恨みを含んで切に申し上. 廣寒子 編次/蓻林 楊欽齋 刊行﹂とある。また三十七 巻末葉の蓮牌木記に﹁萬暦庚戌歳孟春月/清白堂楊欽齋繍 分かる。本稿でこの書を使用するのは、調査した日用類書 の中で、唯一﹁執照類﹂を収録した完本だったからである。 傍線部は五書の間で異同がある箇所とそれに対応する部 分、☓は対応する文字がないことをそれぞれ示す。 例. │   ﹃律條公案﹄﹁執照類﹂﹁娼妓従良照﹂ ☓☓☓☓☓☓☓☓☓☓⋮︵中略︶⋮懇天賜照主張、庶. 免生為萬人妻、死作無夫鬼。為此銜恩上告。 ︵天に乞うらくは許可を申請者︵﹁主張﹂は﹁張主﹂の 誤りか︶に賜り、生きては万人の妻となり、死んでは 夫のない亡霊となることを免れんことを。このために. │ ﹃萬書淵海﹄﹁執照式﹂﹁妓従良照﹂   娼婦某☓☓☓☓☓☓☓⋮︵中略︶⋮懇天賜照張主、庶. を。このために御恩を感じつつ申し上げます。 ︶. なり、死んでは夫のない亡霊となることを免れんこと. 乞うらくは許可を申請者に賜り、生きては万人の妻と. ︵安仁県の娼妓柯翠樓が訴えます。⋮︵中略︶⋮天に. 免生為萬人妻、死作無夫鬼。為此銜恩上告。. 4. 5. 1. 5. 5. 5. 御恩を感じつつ申し上げます。︶. 例. ない女性となり、死んでは祭祀のない亡霊となること. 補士民備覧便用文林彙錦萬書淵海﹂であり、次いで﹁雲錦  . 2. 3. 17. 梓﹂とあることから、万暦三八︵一六一〇︶年の刊行だと. 例. 例. 明珠﹄及び﹃廉明公案﹄を比較対象とする理由は、大塚氏. 16. 5 5. 50.

(10) ﹃新鍥蕭曹遺筆﹄﹁脱罪類﹂﹁母脱子軍 楽平縣  . 終作溝殍。一罪而累☓兩☓母子、死各東西、情極可憐。. 例. 例. 2. │ ﹃折獄明珠﹄﹁保結類﹂﹁母脱子軍﹂   ☓☓☓☓☓☓☓☓乞恩☓宥事。阿男遭訪、獲擬軍罪。. 略︶. 終作溝殍。一罪而累☓兩命母子、 死各東西情極可怜。︵後. 痛阿早孀、僅男一脉。男今遠配、與死為隣。阿獨荒居、. ☓☓☓☓☓☓☓☓乞恩☓宥事。阿男遭訪、枉擬軍罪。. 事﹂. │. 免生為萬人妻、死作無夫鬼。九泉感激、萬代陰功。哭. の﹃萬書淵. 例. ︵後略︶. │. │   ﹃律條公案﹄﹁保状類﹂﹁母脱子軍﹂ ☓☓☓☓☓☓☓☓乞恩☓宥事。阿男遭訪、枉擬軍罪。. 6. 告。 ︵娼妓の某は、⋮︵中略︶⋮天に乞うらくは許可を申 請者に賜り、生きては万人の妻となり、死んでは夫の ない亡霊となることを免れんことを。あの世に行って も感謝し、長きにわたって陰功となるでしょう。泣い の﹃廉明公案﹄冒頭の﹁安仁縣∼告為﹂の句は、. て訴えます。︶ 例 │. は各書ほぼ同じである。しかし末尾は例. 例. 訳は欠落部分が最も少ない﹃廉明公案﹄のみに付す。. ﹃折獄明珠﹄四巻下段・ ﹃廉明公案﹄下巻に収録されている。. て挙げる。これに相当する項目は、﹃新鍥蕭曹遺筆﹄二巻・. 次に﹃律條公案﹄﹁保状類﹂から﹁母脱子軍﹂を例とし. では、 ﹃折獄明珠﹄のみ異同が見られる。. 他の三書は﹁張主﹂に作る。その後に続く﹁庶免∼上告﹂. 後の﹁懇天賜照張主﹂が、﹃律條公案﹄のみ﹁主張﹂だが、. に基づいたとは考えにくい。他の四書については、中略の. 海 ﹄ の み 大 き く 異 な る の で、﹃ 律 條 公 案 ﹄ が﹃ 萬 書 淵 海 ﹄. 5. │   ﹃廉明公案﹄﹁脱罪類﹂﹁鄧察院批母脱子軍﹂ 楽平縣張氏状告為乞恩赦宥事。阿男遭訪、枉擬軍罪。. ︵後略︶. 終成溝殍。一罪而累☓兩命母子、骨肉東西、情極可憐。. 痛阿早孀、僅止一脉。男今遠配、與死為隣。阿獨荒居、. 3. ︵後略︶ ︵﹃廉明公案﹄の訳. くに夫を亡くし、血縁者は息子ただ一人です。今息子. 充軍の罪にゆがめられました。痛ましいことに私は早. んことを求めて訴えます。私の息子は追求にあって、. 楽平県の張氏が恩を乞い赦免され. 終作溝殍。一罪而累及兩命母子、死各東西、情極可怜。. 痛阿早孀、僅男一脉。男今遠配、與死為隣。阿獨荒居、. 4. 5. 6. 4. 1. 痛阿早孀、僅止一脉。男今遠配、與死為隣。阿獨荒居、. 6. 6. 5. 他の四書には見られない。中略の後の﹁懇天∼鬼﹂の三句. 『律條公案』における訟師秘本からの影響について(堀川). 51.

(11) の罪が親子二人に及び、それぞれが別の場所で死ぬの. 荒れた家で、遂には溝の餓死体となるでしょう。一つ. が遠くに流され、死と隣り合わせにいます。私は一人. 明珠﹄よりも﹃校正蕭曹遺筆﹄の方が、 ﹃律條公案﹄によ. 筆者の調査によると、﹁金科一誠賦﹂のみを見ても﹃折獄. 師秘本に近いという筆者の調査結果と矛盾しない。 しかし、. する。玉置氏の指摘は、﹃律條公案﹄は日用類書よりも訟. り類似している。また玉置氏は、﹃律條公案﹄首巻に収録. は、心情として極めて哀れなことです。︶ ﹃律條公案﹄の第三句﹁枉﹂ ・第十句﹁作﹂ ・第十二句﹁死. される他の項目に関して言及していない。他の項目におい. 6. 1. 4. 曹遺筆﹄に近いと言える。 、小結. できないと思われる。. さらに﹃律條公案﹄首巻の項目は、﹃新鍥蕭曹遺筆﹄及. び﹃校正蕭曹遺筆﹄の流れを汲む訟師秘本から転載された. 可能性が高いと言える。﹃律條公案﹄の依った訟師秘本が、. 複 数 で あ る 可 能 性 も あ る が、 ﹃律條公案﹄首巻全ての項目. │. 以上のように、﹃律條公案﹄首巻の各項目は、類似する. を網羅した訟師秘本が存在し、それを参照した可能性もな. 、 ﹃律條公案﹄所収の話と訟師秘本. ものが訟師秘本及び日用類書に見られるが、字句を詳細に ことが分かった。 ︶. ﹁金科一誠賦﹂については玉置奈保子氏による研究があ. している。玉置氏は訟師秘本である﹃折獄明珠﹄と﹃律條. 集過程を分析しているが、その中で﹃律條公案﹄にも言及. 巻謀害類﹁蘇侯断打死人命﹂及び六巻謀産類﹁詹推府断覇. を収録している。全七巻に収録された公案小説のうち、一. 首巻を除いた﹃律條公案﹄一∼七巻は、短編の公案小説. る。玉置氏は﹁金科一誠賦﹂の注に着目し、日用類書の編. 18. 公案﹄における﹁金科一誠賦﹂が、近い系統であると指摘. 2. ︵. いとはいえないだろう。. 6. 調査すると、日用類書の各本よりも、訟師秘本により近い. 1. 條公案﹄の二書を、同系統であるかのように論じることは. ても﹃律條公案﹄首巻は﹃折獄明珠﹄よりも﹃新鍥蕭曹遺. から、﹃律條公案﹄﹁執照類﹂ ・. 各﹂が、﹃折獄明珠﹄のみ﹁獲﹂・﹁成﹂・﹁骨肉﹂となって. │ ∼. いる。また冒頭の﹁楽平縣張氏状告為﹂は﹃廉明公案﹄に ∼ ・例 5. 筆﹄や﹃校正蕭曹遺筆﹄に近い。そのため﹃折獄明珠﹄ ﹃律. 例 │ 1. ﹁保状類﹂は、﹃折獄明珠﹄・﹃廉明公案﹄よりも、﹃新鍥蕭. 5. のみ見られる。. 52.

(12) は弟. 断打死人命﹂の訴状・判決文と、﹃新鍥蕭曹遺筆﹄ ﹁告打死. 7. 1. 2. はそれに反論する被. ・. 占家産﹂は、﹃新鍥蕭曹遺筆﹄又は﹃廉明公案﹄︵上巻﹁夏. 2. 2. ︵ ︶. 弟命﹂の訴状・判決文の一部を挙げる。例 │. 1. は裁判官の判決文である。. を殺された原告の訴状、例 │ ・ ・. 8. 侯判打死弟命﹂︶に依拠していると阿部氏が指摘している。. 告の訴状、例 │. 1. 例 │  ﹃律條公案﹄原告訴状 告状人馬孔佳、為磊債殺弟事。富豪史魯、家財巨萬、. 9. 本節では、この二則の内、﹁蘇侯断打死人命﹂を取り上げて、 訟師秘本との影響関係を検討する。﹃廉明公案﹄との異同 は後述する。また加えて、﹃律條公案﹄七巻﹁彭守道旌表. 、﹃律條公案﹄﹁蘇候断打死人命﹂. ︵ 原 告 人 の 馬 孔 佳 は、 借 金 を 積 ま さ れ て 弟 を 殺 さ れ た. と気炎は天に満ちるかのようです。私の弟の馬孔昭は. ︵史魯は︶重ねて加えて︵利息を︶多く計算しました。. 銀十両を借り、法律に従って返済しようとしましたが、. 孔昭の兄である馬孔佳は事件を知って訴状を出し、史魯も. 弟は不服に思い、虎のような悪人を怒らせ、 ︵史魯は︶. 家人の某達に命じて︵弟を︶滅多打ちにさせ、 ︵弟は︶. すぐに息が絶えてしまいました。︵後略︶ ︶. │  ﹃新鍥蕭曹遺筆﹄原告訴状 為 磊 債 殺 弟 事。 土 豪 某、 家 財 累 万、 行 止 蓋 都、 力 挙. ︵借金を積まされて弟を殺されたこと︵を訴えます︶ 。. 犯虎怒、喝僕某乱棍乱石叢打、立時氣絶。 ︵後略︶. 四百余斤、自號小覇王。弟因借債十兩、不服磊算、觸. 2. 訴えが正しく、史魯の訴えは虚偽であると断じ、史魯を死. 刑とした。 ﹃律條公案﹄﹁蘇侯断打死人命﹂の中では、原告被告双方. の訴状と裁判官の判決文が記載されている。これらに類似. した文書が、訟師秘本﹃新鍥蕭曹遺筆﹄一巻人命類に収録. される﹁告打死弟命﹂である。以下に、﹃律條公案﹄﹁蘇侯. 7. は、双方の訴状を吟味し、証人を尋問した上で、馬孔佳の. 被告として馬孔佳に反論する訴状を出した。裁判官の蘇侯. り、馬孔昭は史魯の家人によって殴り殺されてしまう。馬. 五分の違法な利息を取ろうとした。そのことから争いにな. である。高淳県の史魯という男から十両を借りた馬孔昭が、. 絶。︵後略︶. 弟心不服、觸犯虎賊、喝令家人某等亂棍叢打、登時氣. 勢焔彌天。身弟孔昭與借銀十兩、照例交還、重行磊算。. 1. ことを訴えます。富豪の史魯は、財産が豊かで、勢い. 例. 7. 19. 黄烈女﹂も取り上げ、訟師秘本との関わりを見てみたい。 │ 1. ﹃律條公案﹄﹁蘇侯断打死人命﹂のあらすじは以下の通り. 2. 雑貨を商って三十両余りを儲けた。史魯はそれを知ると、. 『律條公案』における訟師秘本からの影響について(堀川). 53.

(13) 土 豪 の 某 は、 財 産 が 豊 か で、 行 い は 都 を 覆 い、 力 は. 磊債殺命、誑台誣陷。 ︵後略︶. 某は悪事の常習犯で民を害し、土地の大害でした。あ. る夜中に、部屋の中に潜入し、財物を盗もうとしまし. ︵︵被告︶ 訴状。冤罪を見通し命を救う事 ︵を訴えます︶。. ため、虎のような相手を怒らせ、︵彼は︶家人の某に. た。私めは捕らえ、そこで打ち殺してしまいました。. 四百斤余りを持ち上げ、自ら小覇王と名乗っています。. 命じて︵弟を︶滅多打ちにさせ、︵弟は︶すぐに息が. どうして狡猾で悪人の某が、軽率にも借金を重ねて人. 凌虐小民。雖握髮、豈足以數其罪哉⋮︵中略︶⋮豈知. ︵ ︶. │  ﹃律條公案﹄判決文 審得史魯乃萬金蟒悪、素為不軌。貪財無厭、横霸一方、. を殺したと捏造し、役所を騙して誣告をしました事に. 絶えてしまいました。︵後略︶︶. 応じましょう。︵後略︶︶. 弟は銀十両を借り、計算を重ねたことを不服に思った. 例. │ ﹃律條公案﹄被告訴状   訴状人史魯、為燭冤豁命事。慣賊馬孔昭、竊盜害民、. 一郷大蠹。本月某夜半、潛入廚房、偸盜財物。僕見作 獲、是行打死。不期賊兄孔佳飄捏磊債殺命情由、誑臺 誣陷。︵後略︶。 ︵被告人の史魯は、冤罪を見通し命を救う事を訴えま す。悪事の常習犯である馬孔昭は、盗みを行って民を. ︵裁いたところ、史魯は財を持っている蟒蛇のような. 中、偸盜財物。僕見捉獲、是行打死。豈應刁悪某飄捏. 昼に借金を重ねたことで殺したことが事実で、夜に盗. り、友人の中には証人がいた。皆は口をそろえて、白. ろうか、いや知っていない。土地には公正な議論があ. うか。⋮︵中略︶⋮だがどうして人が愚かで無いと知. る。仲間をよく集めたとしても、その罪を数えられよ. く貪り、横暴である一方で、弱いものいじめをしてい. 夜中に、厨房に潜入し、財物を盗もうとしました。私. │   ﹃新鍥蕭曹遺筆﹄被告訴状 訴。燭冤豁命事。某慣賊害民、一郷大蠹。某夜潛入室. 役所を騙して誣告をしました。︵後略︶︶. ねて人を殺したという原因と経緯を軽率にも捏造し、. た。思いがけなくもその賊の兄の馬孔佳が、借金を重. 悪人で、もともと法律に従わない。財を飽きること無. 魯之罪不可赦。擬以主死大辟、用答地下冤魂。 ︵後略︶. 晝磊債所殺事真、黒夜竊盜乃死事假。魯之悪不可言、. 人心不昧、郷有公評、黨裡干証。衆口一詞、倶称、白. 20. めはそれを見て捕らえ、そこで打ち殺してしまいまし. 苦しめ、土地の大害でした。︵馬孔昭は︶今月のある. 1. 1. 2. 例. 例. 9. 8 8. 54.

(14) みに入って死んだことは嘘だ、といっている。史魯の 罪悪は言葉に表しようもなく、罪は許すべきでない。. 例 例. │  ﹃新鍥蕭曹遺筆﹄被告訴状 豈應刁悪某、  飄捏☓磊債殺命☓☓、誑台誣陷。. │  ﹃廉明公案﹄被告訴状 豈應刁悪仲進、☓捏裡磊債殺命☓☓、誑台誣陷。. │  ﹃律條公案﹄被告訴状 不期賊兄孔佳、飄捏☓磊債殺命情由、誑台誣陷。. 土豪であり、することは法律に従わない。思うに西山. ︵夏侯が裁きを下して云う。沈某は、財を持っている. 晝、豈行竊之時乎。人命重情、合擬大劈抵罪。. 訟師秘本の﹃新鍥蕭曹遺筆﹄と一致しており、公案小説集. 二句目の冒頭三字﹁飄捏☓﹂に注目すると、﹃律條公案﹄は、.  例 │ ∼ の一句目では、固有名詞に違いが見られる が、これは﹃律條公案﹄が書き換えたものと考えられる。. 例. 10. 土地には公正な議論があり、人々の中の意見をはかる. 尽くせない。⋮︵中略︶⋮しかし人心は愚かでは無く、. 東海の波を決壊させて、その罪を流そうとしても流し. の竹を尽くして、その罪を書いたとしても書ききれず、. は異なる点である。では、物語部分はどのように叙述され. されている。その点が、訴状や判決文しかない訟師秘本と. ﹃ 律 條 公 案 ﹄ に は、 訴 状・ 判 決 文 の 間 に 物 語 部 分 が 収 録. である﹃廉明公案﹄とは異なっている。. は﹃律條公案﹄が、訟師秘本﹃新鍥蕭曹遺筆﹄原告. では、人物名に波線を付し、訳は物語部分. 訴状に基づいて、話を膨らませていると推測される部分で. 例. ているのか。以下、訟師秘本﹃新鍥蕭曹遺筆﹄の訴状や判. 対照した結果、固有名詞に異同があることを除けば、両. 例. ある。例 ∼. の傍線部は異同のある箇所とそれに対応する. 者は似ていることが分かる。ここで、阿部氏が指摘する公 ∼. 14. ﹃新鍥蕭曹遺筆﹄原告訴状   弟因借債十兩、. のみ挙げる。. 例 │. 3. 部分、☓は対応する文字がないことをそれぞれ示す。. 1. 11. か。人命は重大であり、死刑に擬し罪を定める。︶. と、みな白昼といっている。白昼に打ち殺したのであっ. 3. 決文に対応する﹃律條公案﹄の原文を挙げて考察する。. 1. て、どうして窃盗の時︵に死んだことになる︶だろう. 人心不昧、郷有公評、約黨里地、倶称、白晝。打死白. 1. 2. 3. 主犯は死罪に擬し、黄泉の死者と話させよう。︵後略︶︶ 21. 10 10. 10. 11. 例. │ ﹃新鍥蕭曹遺筆﹄判決文   ︵ ︶ 夏侯審云。沈某、以萬金土豪、所為不軌。蓋磐西山竹、 2. 而書罪無究、決東海波、而流悪不尽者⋮︵中略︶⋮但. 9 10. 案小説集﹃廉明公案﹄との異同について確認しておきたい。. 『律條公案』における訟師秘本からの影響について(堀川). 55. 11.

(15) ﹃律條公案﹄原告訴状 身弟孔昭與借銀十兩、. は﹃新鍥蕭曹遺筆﹄判決文に見える句を、判決文で. い、すぐに死んでしまった︶ 例. われる部分である。. は対句の形にして取り込み、物語部分にも反映させたと思. ⋮︵前略︶⋮托保辛金前去史魯處揚借本銀十兩、販賣 例. ﹃新鍥蕭曹遺筆﹄判決文   倶称、白晝。打死白晝、豈行竊之時乎。 ﹃律條公案﹄判決文. 衆口一詞倶称、白晝磊債所殺事真、黒夜竊盜乃死事假。. ︵ 皆 が い う こ と に は、 孔 昭 が 昼 間 に 借 金 を 返 そ う と し. 皆曰、孔昭白日還債是真、未聞其黒夜竊盜。. ﹃律條公案﹄物語部分. る。また、仲介者に﹁辛金﹂という名前を与えている。辛. たのが本当で、夜に盗みに入ったとは聞いていない︶. は﹃新鍥蕭曹遺筆﹄では登場しない仲介者の﹁辛金﹂. 原中某等見証。. ﹃律條公案﹄原告訴状. 例.  ﹃新鍥蕭曹遺筆﹄判決文 郷有公評、約黨里地. と隣人の﹁楮華﹂を追加したと推測される部分である。. 例. より読みやすく言い換えたのだと考えられる。. 竊盜﹂という対句としている。 ﹃律條公案﹄は物語部分で、.  ﹃新鍥蕭曹遺筆﹄の﹁打死白晝、豈行竊之時乎﹂の二句を、 は訟師秘本﹃新鍥蕭曹遺筆﹄原告訴状に見える句を、 ﹃律條公案﹄判決文では﹁孔昭白日還債是真、未聞其黒夜. 喝令家人将孔昭扭打于地、遍身重傷、登時氣絶。. ﹃律條公案﹄物語部分. 喝令家人某等亂棍叢打、登時氣絶。. ﹃律條公案﹄原告訴状. 例. ﹃新鍥蕭曹遺筆﹄原告訴状   喝僕某乱棍乱石叢打、立時氣絶。. 物語部分に取り込んだと考えられる部分である。. 12. 12. ︵家人に命じて孔昭を地に打ち倒すと、全身に傷を負. 14. 14. 例. 見える。. 金という仲介者の名前は、﹃律條公案﹄の中の判決文にも. 売をして三十両余りの儲けを得たという物語を作ってい. ﹃律條公案﹄は、元手を借りるときに仲介者に頼り、商. けを出し、三十両余りであった︶. 借り、雑貨を売った。一年間︵商売をし︶、大いに儲. ︵辛金に仲介人を頼んで史魯の所へ行き元手銀十両を. 襍貨。一年之間、已獲大利、幾三十餘兩。. ﹃律條公案﹄物語部分. 13. 13. 56.

(16) ﹃律條公案﹄判決文. とし、ここでは﹃律條公案﹄を含む、公案小説集に対する. との関わりについての詳しい考察は稿を改めて論じること. の訴状は使用していない。同じく﹃新鍥蕭曹遺筆﹄から題. し、物語部分は、原告訴状と判決文に基づいており、被告. 下敷きにして物語部分を追加していることが分かる。ただ. 師秘本﹃新鍥蕭曹遺筆﹄﹁告打死弟命﹂の訴状と判決文を. 断って父の棺の傍で縊死した。その死体は倒れず容色も生. しいけれども美しいことを聞いて婚姻を求めたが、淑貞は. い、富豪の娘と結婚してしまった。士大夫たちは淑貞が貧. 一五歳になると、家は貧しくなり、林夔はその貧しさを厭. 死んでしまったが、葬らずに棺を家に置いていた。淑貞が. 淑貞は林夔という男と婚約した。淑貞が三歳の時に黄道は. で四日後に死んでしまったので、 淑貞は叔母に育てられた。. の東升と娘の淑貞をもうけた。しかし、陳氏は淑貞を産ん. りである。漳州府龍渓県の民黄道は妻陳氏との間に、息子. ﹃律條公案﹄ ﹁彭守道旌表黄烈女﹂のあらすじは以下の通. 訟師秘本の影響を指摘したい。. 干証人等 ﹃律條公案﹄物語部分 乃呼原中辛金、里鄰楮華等、細細鞫審。 ︵そこで元の仲介人辛金と、隣人の楮華らを呼び、細 かく尋問した︶. 材を取ったと思われる六巻謀産類﹁詹推府断覇占家産﹂も、. きているかのようであったため、族長や近隣のものは彼女. 以上のことから、﹃律條公案﹄﹁蘇侯断打死人命﹂は、訟. 物語部分には原告訴状と判決文を用い、被告訴状は使用し. の貞淑を知った。族長たちは、死体を林夔の家に運び葬ら. に申し出たところ、県から府、府から道へ伝わり、分巡道. と黒い霧が空を覆い、天地が震えた。族長たちが連名で県. せようとしたが、林夔が拒否したため黄家に戻った。する. ﹃ 律 條 公 案 ﹄ 第 七 巻 節 孝 類 の﹁ 彭 守 道 旌 表 黄 烈 女 ﹂ も、. │ 、﹃律條公案﹄﹁彭守道旌表黄烈女﹂. 訟師秘本の文書に基づいている可能性がある。﹁彭守道旌 ︶. に任じられていた彭守道は淑貞を旌表し、林夔を懲戒する. ︵ ︶. ︵. 表黄烈女﹂は﹃詳刑公案﹄八巻にも同じタイトルで採録さ. ﹃律條公案﹄ ﹁彭守道旌表黄烈女﹂にある判決文と似たも. 判決を下した。 23. 22. はない可能性を示すものである。﹃詳刑公案﹄と訟師秘本. のが、﹃新鍥蕭曹遺筆﹄三巻に収められる﹁表烈女分守道扁﹂. れ、 それを﹃律條公案﹄が転載したとされる。このことは、. 2. 訟師秘本からの影響は﹃律條公案﹄のみに見られるもので. 2. ていない。. 『律條公案』における訟師秘本からの影響について(堀川). 57.

(17) 1. 例 │ ﹃律條公案﹄巻七 節孝類 ﹁彭守道旌表黄烈女﹂     節烈関係綱常、禮宜旌表。薄悪大壊風俗、法當重懲。. 公案﹄のみを挙げる。. 公案﹄ ﹃新鍥蕭曹遺筆﹄共にほぼ同文なので、訳は﹃律條. である。以下に双方の文書を並べて記載する。なお﹃律條. 略︶⋮また県には額を作らせ、一つには﹁烈女之門﹂. まま倒れず、容貌は生きているかのようだった⋮︵中. ると、彼女の父の柩の側で首を吊った。死体は立った. なり、林夔は別の嫁を娶った。烈女は人々の求婚を断. になった。三年もしないうちに父が死んで家が貧しく. させよ。もう一つには﹁不義之家﹂と書き、林夔の門. と書いて、彼女の兄の黄東升を召し出して与えて掛け. │ を見比べると、ほとんど同じであるこ. 龍溪縣黄烈女、許事林夔、生纔四日、就乳于姑。比及. と. 三年、父死家貧、林夔別娶。烈女謝諸人之請婚、縊伊. │. 15. 2. て旌表するべきである。軽薄であることは風俗を大い. ︵節を守って殉じることは道徳規範に繋がり、礼とし. 義之家、發釘林夔門首、以昭懲勧。. 扁、一面書貞烈之門、喚給伊兄黄東升懸掛。一面書不. 父之柩側。屍立不仆、容色若生⋮︵中略︶⋮仍行縣造. 三年、父死家貧、林夔別娶。烈女謝諸人之請婚、經伊. 龍溪縣黄烈女、許事林夔、生纔四月、就乳于姑。比及. 例 │ ﹃新鍥蕭曹遺筆﹄巻三 表烈女分守道扁   節烈関係綱常、礼宜旌表。薄悪大壊風俗、法當重懲。. た判決文以外に、物語部分が加えられている。以下にその. ﹃律條公案﹄﹁彭守道旌表黄烈女﹂には、例 │ に示し. ているのはおそらく﹃新鍥蕭曹遺筆﹄側の誤りであろう。. で﹁縊﹂とある所を、﹃新鍥蕭曹遺筆﹄の方で﹁經﹂とし. は物語の筋には大きく関わりないがない。また ﹃律條公案﹄. ﹃新鍥蕭曹遺筆﹄では﹁貞烈之門﹂としている。この二点. えられた額の文面を、 ﹃律條公案﹄では﹁烈女之門﹂とし、. 月︵生まれてたった四ヶ月︶﹂とする。また烈女の家に与. まれてたった四日︶﹂とし、﹃新鍥蕭曹遺筆﹄では﹁生纔四. 例. 物語部分を挙げ、物語部分と判決文との類似を考察する。. 生まれてたった四日で、叔母によって育てられること. に駄目にするので、法としてまさに重く懲らしめるべ. が母に死に別れた時点を﹃律條公案﹄では、﹁生纔四日︵生. とが分かる。両者の違いは、わずか四字にすぎない。烈女. 例. 前に釘で打ち付け、勧善懲悪を明らかにせよ。 ︶. 扁、一面書烈女之門、喚給伊兄黄東升懸掛。一面書不 義之家、發釘林夔門首、以昭懲勧。. 1. きである。龍渓県の黄姓の烈女は林夔と婚約したが、. 2. 15. 父之柩側。屍立不仆、容色若生⋮︵中略︶⋮仍行縣造. 15. 15. 58. 15. 1. は﹁ 彭 守 道 旌 表 黄 烈 女 ﹂ の 冒 頭 の 部 分 で あ る。 例 16.

(18) ・. では、物語部分のみ訳を挙げる。. ﹃律條公案﹄物語部分. 淑貞不甘他適、謝絶諸人請婚、自縊于父柩之側。屍立 不仆、容色若生。. り、父の柩の傍で首をつった。死体は立ったまま倒れ. ︵淑貞は他の者に嫁ぐことを願わず、人々の求婚を断. 漳州府龍溪縣民黄道、娶妻陳氏、生子東升。継生一女. ず、容貌は生きているかのようだった。︶. 判決文の﹁烈女﹂から﹁父柩之側﹂までの 字が、物語. 部分では﹁淑貞﹂から﹁父柩之側﹂までの 字に敷衍され 部分も同じである。. ている。後半部分﹁屍立不仆、容色若生﹂は判決文も物語. で引いた﹃律條公案﹄の物語部. オ リ ジ ナ ル で は な く、 ﹃詳刑公案﹄から転載された可能性. 右の﹁彭守道旌表黄烈女﹂という話は、 ﹃律條公案﹄の. 升を授かった。続いて娘の淑貞が生まれたが、生後四. 彼女が三歳の時に、父もまた死んでしまった︶. が高い話である。例 ・. 分を、﹃詳刑公案﹄の同じ部分と校勘したところ、例 の﹁哺. 判決文では、林夔との婚約、母との死別の順になってい. るが、物語部分では逆になっている。これは﹃律條公案﹄. 四日而陳氏卒﹂の部分を、﹁甫四日而陳氏卒﹂と作る以外に、. 例. 例. は淑貞が、士大夫達の求婚を断り、自殺する場面で. ﹃律條公案﹄判決文   烈女謝諸人之請婚、縊伊父之柩側。屍立不仆、容色若. 生。. 17. ある。. 17. 16. ・. で傍線を引い. しかし﹃詳刑公案﹄の判決文を﹃律條公案﹄及び﹃新鍥. 蕭曹遺筆﹄と校勘したところ、例 │. 1. 2. このことから考えると、まず﹃詳刑公案﹄﹁彭守道旌表. ていた。. ﹁生纔四月﹂・﹁經伊父之柩側﹂ ・ ﹁一面書貞烈之門﹂と作っ. た箇所は、全て﹃新鍥蕭曹遺筆﹄と一致していた。つまり. 15. だと考えられる。. では、生まれてから四日で母親と死に別れたことにしてい. 17. なった。父は淑貞を林夔と結婚させることにしたが、. 日で陳氏が亡くなり、淑貞は叔母に育てられることに. ︵漳州府龍溪県の民黄道は、陳氏と結婚し、息子の東. 14. 19. 夔、至三歳時、而父亦死焉。. 淑貞、哺四日而陳氏卒、淑貞就乳于姑。父許淑貞事林. ﹃律條公案﹄物語部分. ﹃律條公案﹄判決文   龍溪縣黄烈女、許事林夔、生纔四日、就乳于姑。. 17. 異同はなかった。. 16. 例. 16 16. るため、四日間で婚約を決めたとすると無理が生じるから. 『律條公案』における訟師秘本からの影響について(堀川). 59.

(19) にして、判決文以外の物語部分を加えて創作され、それを. 黄烈女﹂が、﹃新鍥蕭曹遺筆﹄﹁表烈女分守道扁﹂を下敷き していきたい。. 決文がどのように公案小説化されていったかについて検討. 更に﹃律條公案﹄が判決文に手を加えて話を整えた上で転 載した可能性が高いことが分かる。このことは、﹃律條公案﹄ のみではなく﹃詳刑公案﹄においても訟師秘本からの影響 が見られることを示唆するものであろう。.  注 ︵ ︶   夫 馬 進﹁ 明 清 時 代 の 訟 師 と 訴 訟 制 度 ﹂、 梅 原 郁 編﹃ 中 国 近 世 の 法 制 と 社 会 ﹄ 所 収︵ 京 都 大 学 人 文 科 学 研 究 所、 一九九三年︶四五二頁。 ︶  夫馬進﹁訟師秘本﹃蕭曹遺筆﹄の出現﹂史学研究会﹃史林﹄ 七七︵二︶号、一九九四年、二︵一五八︶頁。 ︵. │. 三 十 年 以 降 と す る︵﹁ 公 案 話 本 か ら 公 案 小 説 集 へ │﹁ 丙 部 小説之末流﹂の話本研究に占める位置│﹂、﹃集刊東洋学﹄ 四七号、一九八二年、六七頁︶ 。. 編纂﹂ ﹃日本中国学会報﹄第三九集、一九八七年︶。大塚秀 高 氏 は、 ﹃ 折 獄 明 珠 ﹄ か ら の 転 載 が あ っ た と し て、 萬 暦. 節﹁ 説 話 集 の 再 編 小 説﹃ 龍 図 公 案 ﹄ ﹂︵ 汲 古 書 院、 二〇〇四年︶二六〇頁。初出は阿部泰記﹁明代公案小説の. 2. まとめ. ︵ ︶ 注︵ ︶夫馬氏前掲論文、二七︵一八三︶頁。   ︵ ︶  夫馬氏は注︵ ︶前掲論文の三︵一五九︶頁に﹃光緒欽 定大清會典事例﹄巻八百十九、十四葉の﹁一、坊肆所刊訟 師秘本、如驚天雷・相角・法家新書・刑臺秦鏡等、一切構 訟之書、盡行査禁鎖毀、不許售賣。⋮︵後略︶⋮﹂を引く。 ︵ ︶ ﹃律條公案﹄を含む諸公案小説集の編纂  阿部泰記氏は、 時期を万暦二十六︵一五九八︶∼三十三︵一六〇五︶年と している︵阿部泰記﹃包公伝説の形成と展開﹄第三章第二 2. ﹃律條公案﹄首巻の各項目は、訟師秘本から強く影響を 受けており、更に、訟師秘本の﹃新鍥蕭曹遺筆﹄や﹃校正 蕭曹遺筆﹄に近いことが分かった。また訟師秘本から影響 を受けたとされる二作品については、訴状・判決文から物 語部分を追加する際に、原告訴状と判決文に基づき、被告 の訴状は使用していないことが分かった。 首巻の項目は、他の公案小説集には見られず、﹃律條公案﹄ の特徴である。首巻の項目が訟師秘本から取られたとすれ ば、何を目的にしたのだろうか。可能性の一つとしては、 他の公案小説集との差別化を図ったものと考えられる。 本稿では、﹃律條公案﹄と訟師秘本との関連について明 らかにしたが、今後は対象を他の公案小説集に広げ、それ らにも訟師秘本からの影響が見られるかどうか、訴状・判. 1. 2. 4 3. 5. 60.

(20) ︵ ︵ ︵. ︶ 注︵ ︶大塚氏前掲論文、六七∼六八頁。 ︶ 注︵ ︶阿部氏前掲書、二五二頁。 ︶  龔 汝 富﹃ 明 清 訟 学 研 究 ﹄ ︵ 商 務 印 書 館、 二 〇 〇 八 年 ︶ 一六六頁。 ︶ この三書は注︵ ︶夫馬氏前掲論文、四︵一六〇︶∼六 ︵一六二︶頁の表に存在する。 ︶ ﹃折獄明珠﹄を訴訟  大 塚 氏 は 注︵ ︶ 前 掲 論 文 の 中 で、 文例集・判例集として見ており、それ以上の考察を加えて いない。また阿部氏は注︵ ︶前掲書の中で、 ﹃蕭曹遺筆﹄ の文例を現実の裁判文書としているが、その文例は完全な フィクションであることが、夫馬氏によって指摘されてい る︵注︵ ︶夫馬氏前掲論文、三三︵一八九︶頁︶ 。 ︶ ︵研文出版、  小川陽一﹃日用類書による明清小説の研究﹄   一九九五年︶一頁。 ︶  注︵ ︶夫馬氏前掲論文、七︵一六三︶頁。 ︶  注︵ ︶夫馬氏前掲論文の六︵一六二︶頁によると、本 稿で使用する清刊本の東洋文化研究所所蔵﹃校正蕭曹遺筆﹄ は、万暦四十二年序刊本の改訂版である、とある。また中 央研究院所蔵の刊本の序を調査︵佐々木聡氏より序文のメ モをご提供頂いた︶したところ、今回使用する清刊本と殆. ︵ ︵. ︵. ︵ ︵. ︵. ︵. 懐效鋒點校﹃大明律﹄ ︵法律出版社、 一九九九年︶による。 ︶   ︶ 懐 效 鋒 點 校﹃ 大 明 律 ﹄ ︵ 法 律 出 版 社、 一 九 九 九 年 ︶   四六六頁。. ど同じであったため、今回便宜的に使用することとする。. 5. ︶  注︵ ︶大塚氏前掲論文、六八∼七〇頁。. ︵ ︵. ︵ ︵. ︵ ︵. ︵. ︶  注︵ ︶大塚氏前掲論文、六八頁。 ︶ ﹁金科一誠賦﹂注に見る明代日用類書の構  玉置奈保子﹁ 成方法について﹂︵京都府立大学国中文学会﹃和漢語文研究﹄ 第一二号、二〇一四年︶ 。 ︶ 注︵ ︶阿部氏前掲書、二五二頁・二七一頁。   ︶ ﹁擢髪﹂  ﹃律條公案﹄原文では﹁握髪﹂となっているが、 の誤字の可能性もある。なお、これは土屋育子氏のご教示 による。 ︶  ﹃ 新 鍥 蕭 曹 遺 筆 ﹄ の こ の 部 分 に は﹁ 尽 ﹂ と 注 が あ り、 訳 はそれに従った。 ︶﹃ 詳 刑 公 案 ﹄ は 全 四 冊、 一∼ 八 巻 の 全 八 巻 で 序 と 目 録 は   無 い。 劉 世 徳・ 陳 慶 浩・ 石 昌 渝 主 編﹃ 古 本 小 説 叢 刊 第 四 20 19. 18 17. 5. 5. 21. 太 華 梓 ﹂ と 刻 さ れ て い る。 ま た 八 巻 末 葉 の 蓮 牌 木 記 に は 二行で﹁南閩潭邑執林/劉氏太華刊行﹂とある。 ︶ 莊 司 格 一 氏 は﹃ 詳 刑 公 案 ﹄ 収 録 の 説 話 を、﹃ 律 條 公 案 ﹄   所 収 の 共 通 す る プ ロ ッ ト を 持 つ 話 と 比 較 し、 ﹃律條公案﹄ が﹃ 詳 刑 公 案 ﹄ か ら 説 話 を 選 択 し て 収 録 し た と し、 ﹁彭守 道旌表黄烈女﹂も﹃律條公案﹄が収録した説話のリストに. 輯 第三冊﹄ ︵中華書局、一九九九年︶所収の日光慈眼堂蔵 の版本を底本とする。封面は上図下文の形式で、下半分に は三行で﹁新鐫詳/明徳堂梓/刑公案﹂と刻されている。 な お、 ﹁ 明 徳 堂 梓 ﹂ の 四 字 は や や 小 さ く 刻 さ れ て い る。 一 巻第一葉の初めには、﹁新鐫國朝名公神斷詳刑公案巻之一 /京南 歸正 寧静子 輯/呉中 匡直 淡薄子 訂/潭陽 書林 劉. 22. 2. 5. 8 7 6. ︵. 5. 入 っ て い る。 ︵ 莊 司 格 一﹃ 中 国 の 公 案 小 説 ﹄ ︵ 研 文 出 版、. 23. 5 5. 2. 2 2. 9 10 11 13 12 15 14 16. 『律條公案』における訟師秘本からの影響について(堀川). 61.

(21) 62.  一巻巻首に﹁新刻法家新書﹂とあり、全五巻、封面に﹁同 治元︵一八六二︶年新鐫﹂とある。  続いて使用した日用類書の書誌情報を挙げる。 ﹃萬書萃寶﹄  中国社会科学院歴史研究所文化室編﹃明代通俗日用類書集 刊  第 冊 ﹄︵ 西 南 師 範 大 学 出 版 社、 二 〇 一 一 年 ︶ 所 収。 十二巻巻首に﹃新鍥天下備覧文林類記萬書萃寶﹄とあり、萬 暦二四︵一五九六︶年刊行、原書は四十三巻だが、現存する のは十二∼十四巻、及び十六∼二十一巻の計九巻である。 ﹃三台萬用正宗﹄.  坂出祥伸、小川陽一編﹃中國日用類書集成 ∼ 巻﹄︵汲 古書院、二〇〇〇年︶所収。一巻巻首に﹁新刻天下四民便覧 三台萬用正宗﹂とあり、四十三巻十冊、萬暦二七︵一五九九︶ 年刊行。 ﹃萬巻星羅﹄  中国社会科学院歴史研究所文化室編﹃明代通俗日用類書集   刊 第 冊 ﹄︵ 西 南 師 範 大 学 出 版 社、 二 〇 一 一 年 ︶ 所 収。 一   巻巻首に﹁新鍥燕臺校正天下通行文林聚寶萬巻星羅﹂とある。 全三十九巻。萬暦二八︵一六〇〇︶年の序がある。 ﹃萬用正宗不求人﹄   坂出祥伸、小川陽一編﹃中國日用類書集成 ∼ 巻﹄︵汲   古書院、二〇〇三年︶所収。一巻巻首に﹁鼎鋟崇文閣彙纂士. 5. 10. 3. 11. 5. 民 萬 用 正 宗 不 求 人 全 編 ﹂ と あ り、 三 十 五 巻 六 冊、 萬 暦 三 五 ︵一六〇七︶年刊行。 ﹃学海群玉﹄ . 7. 一九八八年︶三一九∼三二四頁︶  四五頁の表で使用した訟師秘本及び日用類書の書誌情報は 次の通りである。  以下に使用した訟師秘本の書誌情報を挙げる。 ﹃蕭曹致君術﹄    首巻の巻首に﹁新刻平治館評釋蕭曹致君術﹂とあり、その 後 に﹁ 琴 堂   臥 龍 子 彙 編 / 古 潬   知 本 甫 梓 行 ﹂ と 刻 さ れ て い る。首巻・一∼六巻の全七巻、成立年代は不明。 ﹃法筆驚天雷﹄ 全四巻。封面に﹁内  一巻巻首に﹁新刻法筆驚天雷﹂とあり、 附大清律例﹂と刻されていることから、清刊本と思われる。 ﹃蕭曹雪案﹄  楊一凡主編、關志國副主編﹃歴代珍稀司法文献 第十一・ 十二冊 明清訟師秘本八種匯刊︵上・下︶ ﹄ ︵社会科学文献出 版社、二〇一二年︶所収。一巻巻首に﹁新刻法家蕭曹雪案鳴 冤律﹂とあり、全四巻、孫家紅氏の整理説明によると、清刻 本とされる。 ﹃法筆新春﹄ 一巻巻首に﹁新刻法筆新春﹂とあり、全二巻、封面に﹁内   附大清律例﹂と刻されていることから、清刊本と思われる。 ﹃法筆天油﹄ 上巻巻首に﹁新刻法筆天油﹂とあり、全二巻、夫馬氏は注   ︵ ︶夫馬氏前掲論文にて清刊本としている。 ﹃法家新書﹄   2.

(22) 『律條公案』における訟師秘本からの影響について(堀川). 63.  中国社会科学院歴史研究所文化室編﹃明代通俗日用類書集 刊  第 冊 ﹄ ︵ 西 南 師 範 大 学 出 版 社、 二 〇 一 一 年 ︶ 所 収。 一 巻巻首に﹁新刊翰苑広記補訂四民捷用学海群玉﹂とあり、原 書は二十三巻だが、現存するのは一∼十四巻、及び二十一∼ 二十三巻の計十七巻である。萬暦三五︵一六〇七︶年刊行。 ﹃妙錦萬寶全書﹄. されたとしている。. ︵汲  坂出祥伸、小川陽一編﹃中國日用類書集成 ∼ 巻﹄ 古書院、二〇〇三∼二〇〇四年︶所収。一巻巻首に﹁新板全 補天下便用文林玅錦萬寶全書﹂とあり、三十八巻十冊、萬暦 四十︵一六一二︶年刊行。 ﹃五車萬寶全書﹄    坂出祥伸、小川陽一編﹃中國日用類書集成 ∼ 巻﹄ ︵汲   古書院、二〇〇一年︶所収。一巻巻首に﹁新刻捜羅五車合併 萬寶全書﹂とあり、三十四巻八冊、萬暦四二︵一六一四︶年 刊行。 ﹃博覧全書﹄      目録の始めに﹁新刻四民便用博覧全書﹂ 、一巻巻首に﹁龍   頭一覧學海不求人﹂とあり、表題が統一されていない。二十 巻 四 冊、 刊 行 年 は 不 明 だ が、 坂 出 祥 伸 氏︵ ﹃本邦公藏明代日 用類書目録初稿 附・明代﹁日用類書﹂醫學門について﹄ ︵関 西 大 学 文 学 部、 一 九 八 八 年 ︶ ︶ 、 小 川 陽 一 氏︵ ﹃日用類書によ る明清小説の研究﹄ ︵研文出版、一九九五年︶ ︶は明代に刊行. 8. 8. 12. 9. 14.

(23)

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