• 検索結果がありません。

日韓両言語の類似性の認識に関する一考察:大学生のアンケート調査の結果から

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "日韓両言語の類似性の認識に関する一考察:大学生のアンケート調査の結果から"

Copied!
15
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

日韓両言語の類似性の認識に関する一考察:大学生

のアンケート調査の結果から

著者

李 在濬

雑誌名

東北大学言語学論集

23

ページ

33-46

発行年

2014-12-01

URL

http://hdl.handle.net/10097/00130087

(2)

日韓両言語の類似性の認識に関する一考察

大学生のアンケート調査の結果から

李 在 溶

キーワード:言語教育、言語認識、異文化コミュニケーション 1.はじめに 我々は母国語と外国語が類似しているか否かをどのように判断するのだろうか。特に発 音・文字・文法・語棄のような言語の特性の中で、外国語のどの部分が、どれほど似てい れば、母国語と「似ている」と判断するだろうか。 この点に関しては、母国語と該当する外国語に対する知識を持っているか否かによって 意見が分かれると思われる。そして、専門的な知識を持っている人の中でもどの部分を見 るかによって違う意見を述べることも出来ると恩われる。例えば、日韓対照研究の書物や 論文を接する際、次のような表現をたびたび、目にすることがある。「両言語は非常に似 ている言語であると言われており、学習者は他の外国語より学習が容易であると感じる。 1 j・「地球上では多くの言語が話されているが、韓国語にとって日本語ほど似た言語はない 20 jこのように、日本語と韓国語の類似性を強調して述べているものがある。 一方、金田一(2006)3は、同系統の言語を言及している部分で、「日本語と朝鮮語(韓国語) は似ている部分も見られるが、日本語は孤立語の位置にいるJと述べ、類似性よりは違い を強調している。このように日本語と韓国語に対する認識は人によって、多様な意見を持 っていることがわかる。 本研究では、日常で日本語と韓国語に接する機会が多い日韓両国の人々が両言語に対す る認識をどのようにしているかを調べようとする。両言語に対する認識調査はその言語を 支えている社会的背景を知ることであり、ことばに対する意識や意見からはその人の思考 I萎(2006) I韓国入学習者の日本語の文字表現に見られる音声項目の誤用jp. 1 2任(2006) I韓国人とのコミュニケーションjp. 7 3金田一(2006)~日本語(上)~ pp.50-56

(3)

-33-を覗くことができ、特定の言語行動をある程度予測することが出来ると思われる。特に両 言語を学んでいる学習者においては現在の言語教育がどのように進行されているのかを 把握することができるとも息われる。また、今回の結果を通じて両言語に対する認識が明 らかになる部分は言語教育でも活用され、実際の教育の場面で、も役に立つことができると 思われる。本研究はこのような部分を念頭に置いて考察を行おうとする。

2

.

日韓両言語のイメージに関する研究 言語意識調査が必要な理由として、金(2006)は「人々のことばに対する意識や意見から 言語使用者の意識と行動との関係を考えることができ、また、ある意識を持っている人は 特定の社会的属性を持って特定の言語行動をとるということをある程度予測することが できる」と述べている。言語を含めて日本と韓国に対するイメージ調査の代表的な先行研 究としては金(2006)・洪(2010)・金(2012)などがあげられる。 金(2006)は日本で生活している在日韓国人と日本人に対して韓国語に対するイメージ 調査や学習目標などの意識調査を行った。言語に対するイメージ調査には心理学手法とし て

SD

(

S

e

m

a

n

t

i

cD

i

f

f

e

r

e

n

t

i

a

l

M

e

t

h

o

d

)

を用いて「聞きやすい・聞きにくしリ「きれい・ きたなしリ「好き・嫌しリなどの項目を調査した。これ以外にも、学習の際に難しく感じ る部分や韓国・韓国人に対するイメージまで、幅広い調査を行っている。 洪(2010)は韓国人大学生と日本人大学生を対象として、両国に対する親近感・言語及び 大衆文化に対する好感度などを調査し、その結果を比較している。 金(2012)は日本人大学生を対象に韓国語を学習する人に韓国及び韓国語に対するイメ }ジ調査を行い、その結果を韓国語教育に生かす方法を提案している。 しかし、これらの先行研究は調査対象は少し差が見られるが、調査分野と方法が似てい る部分が多く、言語に対するイメージ調査も聞かれた時・書く時などの感覚を尋ねる表面 的な調査に留まっている。言語の特性である「発音・文字・文法・語葉Jに関する調査は まだその先例を探し出すことが難しい。 本研究では、両言語に対する認識調査を言語の特性に合わせて、発音・文字・文法・語 葉の4つの部分について調査し、両言語話者の認識を調べることにする。これにより両話 者がどの部分に対して類似性を強く感じているかをわかることができ、この結果から、さ らに言語教育で教授する際にどの部分に注意を行うべきであるかの判断に役に立っと考 えられる。 34

(4)

3.アンケート調査の概要 日 本 語 と 韓 国 語 の 類 似 性 に 対 す る 話 者 の 認 識 を 調 べ る た め に そ れ ぞ れ の 国 の 人 々 を 対 象としてアンケート調査を行った。日本での調査は仙台・東京・関西地域の大学に在学し ている大学生を対象とした。韓国での調査はソウル市・釜山市・世宗市・大郎市の大学生 を対象とした。 調査方法は一人一人の参加者にアンケート用紙を配布し、記入したアンケート用紙はそ の場で回収した。 2013年 10月に予備調査を 2回行った後、本調査を行った。本調査期間 は 2013年 11月 '""-'2014年 7月までである。 調査参加者は日本人大学生 236名と韓国人大学生 450名である。日本人は男性が 56名、 女性が 180名で、韓国人は男性 152名・女性 298名である。 日本人に対する質問の内容は、基本的な質問(国籍・性別・年齢など)を除くと、表1の ようになっている。 表l 両言語の認識調査に対する質問の内容 質問1.あなたは生活の中で韓国語の文字(ハングノレ)を見たり、韓国語を開いたりしたことが ありますか? ① ある ②ない 質問2.あなたは韓国語を勉強したことがありますか? ①ある(勉強歴: 年 ヶ月) ②ない 質問3. あなたは韓国語と日本語が似ていると思いますか?

(鱒軍務

総 税

樹 祭

;

)

① ほ と ん ど 似 て な い と 思 う 。 (0-20%) ② 少ないが似ている部分があると思う。 (21-40%) ③ 半分くらいは似ていると思う。 (41-60%) ④ 多くの部分で似ていると思う。 (61-80%) ⑤ ほとんど一致していると思う。 (81-100%) 質問4.次の中で韓国語が日本語にどれくらい似ているか r%Jにして、直接記入してください。

(綱蹴

総評議

湾 総

)

ア.音声的な部分(韓国語を聞いたり、会話を聞いたりした時の感じ) イ 文字的な部分(文字の形や書いたりする時の感じ) ウ.文法的な部分(日本語の変化とどれ位似ていると思いますか) エ.話し方・表現する方法など(話しのスタイノレ) 韓国人に対する質問では、質問の「韓国語jの部分を「日本語」 問全体を韓国語で作成して調査を行った。 %) %) %) %) に入れ替えたほか、質 に d n ベ U

(5)

4

.

調査結果及び考察

4

.

1

日常で両言語に接する機会 調査結果では韓国人大学生450名のうち35名だけ、日本人大学生では236名中 15名 だ けが日常生活でそれぞれの言語に接したことがないと答えた。つまり、回答者の9割以上 の両言語話者が日常でそれぞれの言語に接したことがあると答えた。調査地域がすべて大 都市であることもあるが、現在、両言語の話者にとって実生活で両言語に接する機会が多 くなっていることは確かなことである。 韓国では日本語・白本文学・日本文化に関する幅広い教育が随分まえから実施されてき た。教育分野以外には韓国政府が 1998年に日本映画を開放したことをはじめ、 2004年に は「苅

14

見裂星印吾皇畠

J

H

出亙丈

1

(第

4

次日本大衆文化開放措置)Jにより、日本の映画 やドラマ、音楽、家庭用TVゲームのソフトも購入が可能になった。 日本の国内でも在日韓国人のために韓国語教育が長い間、実施されてきた4が、段々衰退 している傾向だった。しかし、 2002年度の日韓サッカーワールド・カップをきっかけに韓 国に対する関心が多くなった。さらに、 20031:]三4月から NHK衛星チャンネルを通じて日本 全国に放映された「万量白川(冬のソナタ)Jをはじめ、 ドラマや映画・音楽が流入され、 「韓流Jという新しい言葉が作られる程、韓国ブームの現象が起こった。この波及効果は 言語教育でも大きく影響を与え、書庖では韓国語と関連した教材のコーナーができるなど、 書物の量も増えている。 現在は日常生活の中でも自然に両言語に接する機会が多くなっている。韓国では空港や 駅のような人々の往来が多い場所では案内標識に日本語が併記されており、一部の公共交 通機関(列車・地下鉄)の案内放送でも日本語案内が行われている。日本でも案内標識に韓 国語を見掛けることは難しいことではない。特に韓国語にたくさん接する場所は韓国料理 をメニューの中で扱っている飲食庖である。食べ物の名前をハングル名のカタカナ表記を している処も多く見かけることができる。 このように現在では、教育の分野以外の場所でも、両言語を接する機会が増えている。 このようなことが調査結果にも反映されていると考えられる。 4 Mi tchell(1967 : 113)によれば、 1946年には日本全国で525校の韓国人学校があったと いう(金(2006)から再引用)。 -36

(6)

4. 2 両言語の類似性に対する認識結果 まず、日本人大学生と韓国人大学生は両言語の類似性に対してどのように認識している かを全体の結果から見て見ょう。 表2 両言語の類似性に対する認識の分類一日本人と韓国人全体の分析 両 言 語Lこ対する認識(名) 分室重 調査人員(名} 金〈似てない 少し似ている 似ている 多〈の部分が似ている 殆~ー鼓 費量回答 している 緯国人 450 12 91 119 146 14 E 大学生 (10日%) (2.61%) (21.56%) (39.18%) (32.44%) (3.11%) {日.44%) 日本人 236 20 51 78 14 B 大学生 (100%) (8.4'1%) (24.15%) (33.05%) (31.36%) (2.54%) (0. 42%

_

1

_

J

表 2では、調査回答を韓国人と日本人に区別し、その結果をまとめ、集 計 し た も の で あ る。表2の結果を見ると、両国の人々は互 いの言語を「似ている」と認識している人が多 いことがわかる。この結果は学習有無とは関係なく一般的に持っている認識である。 この結果を学習の有無によって区別してまとめたものが次の表である。 表3 両言語の類似性に対する認識の分類の分類一学習の有無による分析 両言語Lこ対する認鎗(名) 分類 学 習 経 験 調 査 人 員 有 無 (名} 金〈似てなv少し似ている T 多〈の宮F分か 殆E-窓 似てνる してL、る 蟹 回 答 鍵 国 人 有 34Z 5 57 141 129 10

大 学 生 (1日目%) ( 1.46%) (16.67%) (.41.23%) (37.72%) (2.92%) (0%) (447名 } 時 人 陰 程 醗 105 7 39 36 18 4 骨 膏 聾 奄 無 (100%) (6.67%) (37.14%) 【34.29%) (17.14%) (3.81%) (0.95%) 事えてなU 17日 10 31 62 61 B

日 本 人 有 (100%) (5.88%) (18.24%) (36.47%) (35.88%) (3.53%) (0%) 大 学 生 (236名 ) 量E 66 10 26 16 13

(100%) (15.15%) (39.39%) (24.24%) (19.70%) (0%) 表3では韓国人のうち 3人が学習経験有無に回答してないため、表2と異なり、全員で 447名の結果となっているe 表 3の結果を見ると、相手の言語を学習した経験が有る人の 方が経験が無い人より「似ている側(韓国人:81.87%/日本人:75.88%) Jの 答 え を 多く チェックしていることがわかる。つまり、日本人も韓国人も相手の言語を学習した経験が ある場合、両言語が似ていると判断しやすい結果となっている。 -37

(7)

-しかし、学習経験が無い人の答えを比較すると日韓の違いが見られる。韓国人大学生の 場合は「似ている側(55.24%)Jの答えを多くチェックしているが、日本人大学生の場合 は 「似ていない側(54.54%)Jの答えが多く、相違の結果が見られた。 表2と3の結果から韓国人話者は日韓両言語を「似ている」言語と認識する人が多いこ とがわかった。しかし、日本人話者は学習有無によって、学習経験者は「似ている側」の 答えが多かったが、学習未経験者は「似ていない側Jの答えが多かった。全体的に学習し た人が多いので、表 2の結果は 「似ているJと認識している人が多いことになっている。 次は、「発音 ・文字・文法 ・語葉」の部分の類似性に対する調査の結果である。

4

.

3

両言語の音声に対する結果 日本語と韓国語の語葉にはともに固有語(和語)と漢字語が存在している。漢字語には単 語 に よ っ て 音 読 み が 非 常 に 似 て い る よ う に 聞 こ え る も の も あ る 。 「 家 族 [kazoku]・ 刀杢[kazok)J・「約束 [yakusoku]・件全[yaksok)Jなどがその例である。両言語の話者は 互いの言語を聞いたり、話したりする場合に類似しているかどうかを尋ねてみた。その結 果が次の通りである。 表4 両言語の音声面での類似性に対する認識の分類一日本人と韓国人全体の分析 両言語の発音Lこ関して(名) 分類 調査人員 {名} 金〈似てない 少し似ている 似ている 多〈の音F分1i' 殆E一主主 似ている している 貴重回答 韓国人 45日 113 130 89 84 4 30 大 学 生 (100%) (25.11%) (28.89%) (19.78%) (18.67%) (0.89%) (6.67%) 日本人 236 83 68 50 17 17 大 学 生 (100%) (35.17%) (28.81%) (21.19%) (7.20%) (0.42%) (7.20%) 表1の中で質問4の 「両言語のある部分(音声・文字・文法・語葉)がどれくらい似てい るか」の調査では回答者に直接数値を記入するように指示したため、それを質問3のよう に5段階に分類してまとめた。表4の結果から、音声的には両言語は「似てなしリと認識 している人が多いことがわかった。 洪(2010)の調査では、両言語の話者は互いの言語が早くて聞き取れにくいと認識してい る人が多く、金(2012)の調査では、日本人は韓国語の 「官自(パッチム)Jが発音しづらい と認識している人が多いので、このような結果が音声的に「類似してない結果j と繋がっ ていると考えられる。次は学習経験の有無による分析結果である。 n 6

(8)

表5 両言語の音声面での類似性に対する認識の分類一学習有無による分析 両言語の発音Lζ関して{名) 分類 学 習 経 験 調査人員 有 無 (名} 金〈似てない 少し似ている 似ている 争〈の部分か 量事E一望量 費 回 答 紙τいる している 韓国人 有 342 75 1日1 78 70 3 15 大 学 生 (100%) (21.93%) (29.53%) (22.81%) (2日.-47%) (0.88%) (4.39%) (44'7名} 時人陰渥聖書 105 37 27 14 12 14 崎有望書を 量E (100%) 35.24%) (25.7lX) (13.33%) (11.43%) {.95%) (13.33X) 蓄 え て なU 有 17日 47 S5 40 13 1 14 日本人 (100%) (27.65%) (32.35%) (23.53%) (7.65%) (0.59%) (8.24%) 大 学 生 (236名} 皇霊 66 36 13 10 4

3 (10日%) (54.55%) (19.70%) (15.15%) (6.日6%) (0%) (4.55%) 学習経験の有無を考慮に入れた場合、 両国の大学生は学習経験が有る人の方が無い人よ りも「似 ているJろ回答する傾向が高くなっているが、全体的には両国の人々は日常で相 手の言語を聞いた場合に 「あまり似てなし、」と判 断していることがわかった。 この結果から言語の音声的な特徴は全体の 「両言語が似ているJという認識とはあまり 関連がないと考えられる。

4

.

4

両言語の文字に対する結果 日本語の表記方法には①平仮名 ・カタカナ、②漢字、③アラビア数字、④ローマ字とい った多くの違った体系のものが用いられているが、韓国語も①ハングル(告量)、②漢字5、 ③ ア ラ ビ ア 数字、④ローマ字と、 固有語(和語)以 外 は同じような文字 体系を用いている。 日本では漢字と和語(固有語)を読み書きの場合に多く用いられているが、韓国で は固有語 であるハングルが多くなっている。次はこの文字的な部分に対する結果である。 表6 両言語の文字形態の類似性に対する認識の分類一日本人と韓国人全体の分析 両言語の文字の形態{名〕 分類 調査人員 (名} 全〈似てない 少し似ている 似ている 多〈の部分か 殆E一重量 祭 回 答 似ている している 韓国人 45日 248 '12 36 E日 3 71 大 学 生 (100%) (55.11%) (16%) (8%) (4.44%) (0.6n) (15.78%) 日本人 236 137 26 19 5 l 48 大 学 生 (l00%) (58.05%) (11. 02%) (8.05%) (2.19%) (0.42%) (20.34%) 5日本では昔の漢字を略した形で、使っているが、韓国ではまだ昔の漢字をそのまま使って いる。例えば、日本では「学をで一般的に使っているが、韓国では「皐」を使っている。 円 H U ﹃ U

(9)

両言語の話者は両言語の文字の形に対しては「全く似ていなしリと答えた人が最も多い 結果で、あった。 表7 両言語の文字形態の類似性に対する認識の分類一学習有無による分析 河言語の文字の形態{名) 分室重 学 習 経 験 調 査 人 員 有 無 {名} 金〈似てない 少し似ている τ1 多〈の苦F分が 治ど一致 費量回答 鉱ている しτいる 緯 国 人 有 342 179名 61名 31名 19名 2名 S日名 大 学 生 (100%) (52.34%) (17.84%) (9.06%) (5.56%) (0.58%) (14.62%) (447名 } 同人はま董鞭 105 69 11 4 。名 1~ 20 的 有 里 を 無 (100%) (65.71%) (10.48%) (3.81%) (0%) (0.95%) (19.05%) 蓄 え て な い 有 170 88名 23名 10名 3名 1名 45名 日 本 人 (100%) (51. 76%) (13.53%) (5.88%) (1.76%) (0.59%) (26.47%) 大 学 生 (236名 } E 66 49名 3名 自名 2名 B名 3名 ( 1日0%) (74.U:U (4.55%) (13.64%) (3.03%) {日%) (4.55%) 学習経験の有無を考慮に入れた場合、両言語の話者は経験の有無によって 10%程度の差 が見られるが、全体的には日常で相手の言語の文字を接した場合に「あまり似てなし、」と 判断していることがわかった。 両言語の固有文字に対しては、日本語は長い年月をかけて徐々に形成された文字である し、韓国語は新たに創られた文字6で、その形成ルーツも違うし、このような知識がなくて も同じ発音である「あJと f

o

f

Jを単純に比べても類似する部分を見つけ出すことは難し いと思われる。そして、この結果から、音声面と同様に、文字の形の類似性に関する話者 の認識は「両言語が似ている J と認識している結果とは繋がりがないことがわかる。 4. 5 両言語の語形変化の類似性に対する認識調査の結果 語形変化に対してはその範囲を決めることに難しい部分が多いと思われる。しかし、今 回の調査では、詳細な変化の質問ではなく、一般的に持っている認識に関する調査なので、 学習有無に関する部分と学習期間による結果に注目して考察を述べることにする。 6ハングルの基本子音は14種類があり、それは次のように f---,[g], L [n], C [d], <2 [r, 1,] 口 [m],回 [b],人 [S],0 [の],x[j,z],天[ch],=i [k], E [t],五[p],き[h]J と構成されてい る。これらは①舌②口(唇)③喉④歯の部分から形を取って作られている。「①舌の形」の ほうからは舌が動かない f---,→=iJのものと動く fL. C→e ・<2Jのものになっている。 「②口(唇)の形jのほうからは「ロ,出,立」を、「③喉の形Jのほうからは fo,き」を、 「④歯の形Jほうからは「人 ,x,夫」のように体系的に作られた文字である。

4

0

(10)

表8 両言語の文法変化の類似性に対する認識の分類一日本人と韓国人全体の分析 両言語の文法の仕組み(語形変化)(名) 分類 調査人員(名} 会〈似てない 少し似ている 似ている 多〈の節分が似ている 殆 ~-J聖している 費量回答 韓国人 450 g日 86 96 126 31 21 大学生 (100%) (20%) (19.11%) (21.33%) (28%) (6.89%) (4.6'1%) 日本人 236 36 28 44 '16 40 大学生 (100%) (1!i.25%) (11. 86%) (18‘64%) (:J2.20%) (16.95%) (5.日8%) 表8の日本人と韓国人全体の分析では両言語の話者は文法的な変化に対して両言語には 「似ている部分が多しリと答えていることがわかった。次は学習有無による結果である。 表9 両言語の文法変化の類似性に対する認識の分類一学習有無による分析 両言語の文法の仕組み(語形変化)(名) 分豊富 学習経験 調 査 人 民 有 無 【名} 会〈紙τ少し似ている 似ている 多〈の節分tfi. 殆どー虫 組τ、、る しτ¥る, 望E回答 事軍国人 有 342 48 71 81 108 26 10 大学生 (100%) (1.4. 0,(%) (20.76%) (23.68%) (30.99%) (7.6日!日 (2.92%) (447名} 時λ肱11. 105 41 15 17 17

s

10 町 有 震 を (100%) (39.日5%) (14.29%) (16.19%) (16.19%) (4.76%) (9.52%) 答 え て な い 有 170 15 15 29 63 39 自 日 本 人 (100%) (8.82%) (8.82%) (17.06%) (37.06%) (l!2.94%) (5.29%) 大学生 (236名} 祭 66 21 13 15 13 1 3 (100%) (31.82%) (19.70%) (22.73%) (19.70%) (1.5IX) (.(.55%) 表9の学習経験の有無による分析では、学習経験によって類似性に対する認識の違いが はっきりと分かれている。学習経験が無い人には両言語が「全く似てなし、」と認識してい る人が多いが、学習経験が有る人には「多くの部分が似ている」と認識している人が最も 多かった。そして、調査対象者が学習した経験が有る人が多いので、この結果が表8の 結 果にも影響を与えていることになっているし、「両言語が似ているJと認識している表 2 の結果とも関連性がみられた。 我々の思考がことばとして話されるとき、頭の中では語順や用言の変化などの文法的な 構造が、大きな割合を占めているので、両国の言語話者は両言語ではこのような部分が「似 ているJと認識している人が多いことがわかる。 次は、学習経験者の中でも学習期聞がどれくらいなっているかをみてみよう。 -41

(11)

-表 10 両言語の文法変化の類似性に対する認識の分類一学習期間による分析 両言語の文法の仕組み(文法的な変化)一緒国人大学生出) 学習期間 調査人員 {名} 会〈似てない 少し似ている 似ている

<o

節分tfi. 殆芝一致 似ている している 1~12 ヶ月 117 23 28 2日 28 3 B (34%) (100%) (19.66%) (23.93%) (24.79%) (23.93%) (2.56%) (5.13%) 13~24_" R 80 14 22 18 19 7 日 (23%) (100%) (17.50%) (27.50%) (22.50%) (23.75%) (8.75%) {日%) 25"'36ゲ月 58 3 8 12 25 7 3 (17));) (100%) (5.17%) (13.79%) (20.69%) (43.10%) (12.07%) (5.17%) 37ゲ月以上 87 B 13 22 34 自 (26%) (100%) (9.2%) (14.94%) (25.29%) (39.08%) (l日.34%) (1.15%) 全員 342 48 71 81 106 26 10 (100%) (100%) (14.04%) (20.76%) (23.68%) (30.99%) (7.60%) 0!.92%) 両言語の文法の仕組み(文法的な変化)一回本人大学生協〉 学習期間 調査人員 (名} 全〈似てない 少し似ている 似ている 多

<o

部分tfi. 強E一重量 量E応答 似ている している 1~12 ゲ月 129 14 12 21 43 31 8 (76%) (100%) (10.85%) (9.30%) (16.28%) (33.33%) (24.03%) (6.20%) 13~24 ヶ月 28 E 8 14 4 1 (16%) (l日0%) (3.57%) (7.14%) (21.43%) (5日%) (14.29%) (3.57%) 25~36 ヶ月 E

z

4

(5%) (100%) (O%) (12.50%) (12.50%) (25%) (50%) (0%) 37ゲ月以上 5

日 4

。 。

【3%) (l日目%) (0%) (0%) (20%) (80%) (0%) (日%) 会員 17日 15 15 29 63 39 日 (l00%) (l日0%) (8.82%) (8.82%) (17.06%) (37.06%) (22.94%) (5.3日%) 表 10の結果をみれば、韓国人日本語学習者は学習経験が l年から 4年以上まで多様に 分布しており、長く学習すればするほど両言語が「似ているJと認識する人が徐々に増え ていることがわかる。しかし、日本人の場合は 1年以下の韓国語学習者に集中しており、 l年以下の学習経験でも「多くの部分が似ているJと認識している人が多く、さらに「殆 ど一致しているJと認識している人も多いことがわかる。 韓国人日本語学習者は中級や高級段階で、「両言語の文法変化が似ている」と認識して いる人が多いが、日本人韓国語学習者は初級段階から「両言語の文法変化が似ている」と 認識している人が多いことになっている。このような認識結果の違いに対しては、日本で の韓国語教育は最初の段階から「似ている」部分に焦点、を合わせて説明を行っていると考 えられる。 42

(12)

4

.

6

両言語の語藁使用・表現方法の類似性に対する認識の結果 日本語の語葉表現と韓国語の語葉表現には似ている表現が多くみられる。雨と関連する 慣用表現を例として上げると、雨が強く降る様子を表す表現として「雨足が強し、」という 表現があるが、韓国語にも「旦~(雨)皆(足)01(が)刈│口(強し、)J という同じ表現がある。 そして、日が照っているのに雨の降る天気を指す「狐の嫁入り」という日本語表現にも、 韓国語には「回♀人│乏j刀き岩(狐が結婚する日)・重吉01宮刀刀世出(虎が結婚する 日)Jという同様の表現がある。 しかし、似ている表現が多い一方で、、語葉の直訳では意味が通じない例も多く報告され ている。金(1996)の調査では、日本人は「具合が悪し、J時に「気分が悪し、Jと表現するが、 これを韓国語にそのまま訳すと「コ│星01しはE口[gibuninappeuda]Jという表現になり、 この表現は韓国人には「気持ち悪し、」とし、う意味と伝わってしまうため、場合によっては 誤解を招くこともある。この場合、体調の悪いことを正しく韓国人に伝えるためには「全01 日 雲 口 [soki anj 0 t a]Jと表現する必要がある。喜(2004)の調査でも「スキーをする →ムヲ!霊前日

(

X

)

!

ムヨ│量日口

(

O

)

J

r

雰囲気を壊す→害♀│コ│喜平吉し}口

(

X

)

!

呈♀│コ│喜 吉丈│口 (0)J

r

叱 ら れ る →

o

t

日量 @uf口

(X)!W2

量 52口(0)Jの よ う な 日 本 語 の 転 移 が 誤りろなる例を紹介している。 また、同じ表現でも日本語と韓国語で違う意味で使うものもある。例えば、「八方美人 (聖'2:l"0 18 [pa I bangm i i n ])Jは、日本語では「誰に対しても如才なくふるまう人を、軽んじ ていう語(W広辞苑』第六版)J としてマイナス評価として使われる場合が多いが、韓国語 では「色々な分野で優れていて何でもできる人を比輸して言う」場合に使い、プラス評価 の表現で多く使われている。それでは、調査参加者は日本語と韓国語の語葉使用の類似性 についてどのように認識しているのか。その結果を表

1

1

にまとめた。 表11 両言語の語葉使用の分類 日本人と韓国人全体の分析 語棄の使い方・表現する方法{語嚢使用の部分)(名) 分類 調査人員 (名} 会〈似てない 少し似ている 似ている 多〈の続分が 強Eー 猿 量産回答 似ている している 緯国人 450 108 108 110 '77 g 38 大 学 生 (l00%) (24%) (24%) (24.44%) (17.11%) (2%) (8.44%) 日本人 236 7日 48 6'7 34 4 13 大 学 生 (l00%) (29.66%) (20.34%) (28.39%) (14.41%) (1.69%) (5.51%) 全体的な結果としては両言語の話者による認識は「似てないj と f似ているjが半々程

(13)

-43-度に分かれていることがわかった。次に、学習有無によってはどのような結果が出ている か確認してみよう。 表

1

2

両言語の語葉使用の分類一学習有無による分析 学 習 経 験 語棄の使い方・表現する方法(語蒙使用の部分)(名} 分 類 調 査 人 員 有 無 (名} 金〈似てない 少し似τいる 似ている 多〈の部分が 殆E一致 量産回答 似ている してνる 終 回 入 有 342 78 71 90 69 B 20 大 学 生 (l00%) (22.80%) (22.51%) (26.3i%) (20.18%) (2.34%) (5.85%) (447名 } 時入院程司直 1日5 30 30 20 7 17 時 省 繁 華 長E (100%) (28.57%) (28.57%) (19.05%) (6.67%) (0.95%) (16.19%) 答 え て な い 有 170 39 37 50 30 4 10 日 本 人 (100%) (22.94%) (21.76%) (29.41%) (17.65%) (2.35%) (5.88%) 大 学 生 (236名 ) 畠畳 66 31 11 17 4 日 3 (1日0%) (46.97%) (16.67%) (25.76%) (6.日6%) (0%) (4.55%) 表

1

2

からわかるように、学習経験が有る人の方が無い人より若干「似ているJと認識 している結果である。語葉使用の部分に対しでも 「似ている」と認識している人が

5

割程 度いるので、この特徴に関する認識が、「両言語が似ているJとしづ認識結果に大きく影 響していることとは繋がらないと考えられる。

5

.

まとめ 以上、本稿ではアンケート調査を通し、日韓言語話者の両言語に対する認識を調べてみ た。その結果、 日韓の話者は日常生活で互いの言語を接する機会が増えている中、両言語 を「似ている言語」であると認識している人が多かった。 しかし、この結果には日韓両国の話者の認識の違いがみられた。日本人話者は韓国語の 学習経験が結果に大きく影響を与えていた。日本人韓国語学習経験者は「両言語は似てい る」と認識する人が多かったが、学習未経験者は「両言語は似てない」と認識している人 が多い結果で、あった。一方、韓国人話者は日本語の学習経験とは関連がみられず、日本語 と韓国語は「似ている言語である」と認識している人が多かった。 そして、両言語の類似性に関する質問とその関連性を探るため、言語の特性である「発 音・文字・文法・語葉」との関係についての調査を行った結果、両言語の話者は 「両言 語 は文法的な変化が似ている」と認識している人が多く、この結果が「両言語は似ている」 と認識する結果と関連性があることがわかったc しかし、この4つの言語の特性では、学習経験の有無の観点、からは、学習経験が有る人

(14)

-44-のほうが無い人より「両言語は似ているJと認識している人が多いことがわかったが、韓 国人日本語学習未経験者は「両言語は似ているJと認識していることと「発音・文字・文 法・語藁」の関連性は見当たらない結果であった。この結果の要因に関しては、今後、韓 国人に多様が角度から認識調査を行う必要があると思われる。 そして、学習期間による認識の違いに関して、韓国人は1年以下の学習者より 3年以上 の学習者が「両言語は似ているJと認識している人が多かった。つまり、韓国人は日本語 の学習期間が長ければ長いほど両言語が「似ているJと認識する人が増える結果である。 それに対して、日本人韓国語学習者で学習期間による認識の差は見られないし、 l年以下 の韓国語学習者も「両言語は似ている」と認識している人が多かった。これは日本での韓 国語教育が似ている部分を強調して授業を行っていることに起因するものと考えられる。 以上の結果から一つ予測で、きることは、日韓の話者は言語教育を通じて言語知識を持っ ている場合、両言語の類似性をより強く感じるということである。このことに関しては、 言語教育上では注意を促す部分である。今回の調査結果では日本人韓国語学習者は初級の 段階から類似性を強く感じているが、このことが金(1996)と喜(2004)の研究のように日本 語の転移が起こりやすい原因と関連があると思われる。指導者は最初の段階から類似性に 集中して説明を行うことより、多様な例を接する機会を学習者に提供することが重要であ る。 最後に、今回の調査結果をもとに、多様な言語表現の認識調査も行う予定である。言語 と言語を取り巻いている認識の繋がりを調べることによって、より両国の人々の考え方や 認識を理解することができると考えられる。そのための基礎研究として、謝罪・挨拶・断 り・呼称など多様な場面での言語行動調査を通じて、日韓両言語の類似点・相違点につい て明らかにすることが急務である。 参考文献 萎枝延(2006)

r

韓国入学習者の日本語の文字表記に見られる音声項目の誤用一長母音を中 心に一J

W

大学院論文集 No.3~ 杏林大学大学院国際協力研究科 金田一春彦(2006)

W

日本語(新版)(上

H

岩 波 書 庖 金情浩(2012)

r

韓国語教育の現状と展望:アンケート調査の結果からJ

W

東北大学言語学 論 集 第21号』東北大学言語学研究会 pp.33-47 金由那(1996)

W

在韓日本人三│言語生活:言語意識製言語行動量奮起

2

豆』中央大挙 大皐院修士論文

(15)

-45-金由那(2006)

r

日本における韓国語学習者の学習目標と学習意識J

W

韓国人による日本社 会言語学研究』おうふう pp.223-243 任栄哲(2006)

r

韓国人とのコミュニケーションJ

r

韓国人による日本社会言語学研究』ぉ うふう pp.7-19 野間秀樹 (2012)W韓国語教育論講座第 2巻』くろしお出版 森田良行 (1995) W日本語の視点:ことばを創る日本人の発想』創拓社 洪現杓 (2010)

W

包剖型吾呈主ほ│雪量ijliil(言語行動文化の韓日比較

H

記号皇室川 書芸~~(2004)

r

量呂巴 告ヨミ凹 雪含見引 例季12 界i:Ë ~J

W

人ト豆

I

t

:

:

!

0

1

雪 珂

I

12 型 l霊』歪}号人ト劃巴問主守主

I

pp. 271-297 李 在藩(東北大学文学研究科博士後期 3年) 46

表 5 両言語の音声面での類似性に対する認識の分類一学習有無による分析 両言語の発音L ζ関して{名) 分類 学 習 経 験 調査人員 有 無 (名} 金〈似てない 少し似ている 似ている 争〈の部分か 量 事 E 一 望 量 費 回 答 紙 τ い る している 韓国人 有 3 4 2  7 5  1 日 1 78  7 0  3  1 5  大 学 生 ( 1 0 0 % )   ( 2 1
表 8 両言語の文法変化の類似性に対する認識の分類 一日本人と韓国人全体の分析 両言語の文法の仕組み(語形変化)(名) 分類 調査人員 (名} 会〈似てない 少し似ている 似ている 多〈の節分が 殆 ~-J聖 似ている している 費量回答 韓国人 450  g 日 86  96  126  31  21  大学生 ( 1 00%)  (20%)  ( 1 9.11%)  (2 1 .  33%)  (28%)  (6.89%)  (4.6 ' 1 % )  日本人 236  36  28  4 4  '1
表 1 0 両言語の文法変化の類似性に対する認識の分類一学習期間による分析 両言語の文法の仕組み(文法的な変化)一緒国人大学生出) 学習期間 調査人員 {名} 会〈似てない 少し似ている 似ている 多 &lt;o 節分tfi

参照

関連したドキュメント

るところなりとはいへども不思議なることなるべし︒

自閉症の人達は、「~かもしれ ない 」という予測を立てて行動 することが難しく、これから起 こる事も予測出来ず 不安で混乱

「新老人運動」 の趣旨を韓国に紹介し, 日本の 「新老人 の会」 会員と, 韓国の高齢者が協力して活動を進めるこ とは, 日韓両国民の友好親善に寄与するところがきわめ

手動のレバーを押して津波がどのようにして起きるかを観察 することができます。シミュレーターの前には、 「地図で見る日本

 英語の関学の伝統を継承するのが「子どもと英 語」です。初等教育における英語教育に対応でき

優越的地位の濫用は︑契約の不完備性に関する問題であり︑契約の不完備性が情報の不完全性によると考えれば︑

討することに意義があると思われる︒ 具体的措置を考えておく必要があると思う︒

自然言語というのは、生得 な文法 があるということです。 生まれつき に、人 に わっている 力を って乳幼児が獲得できる言語だという え です。 語の それ自 も、 から