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加藤淳子・境家史郎・山本健太郎編「政治学の方法」

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Academic year: 2021

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加藤淳子・境家史郎・山本健太郎編「政治学の方法

著者

浜中 新吾

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジア経済

56

2

ページ

138-138

発行年

2015-06

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00006874

(2)

紹   介 『アジア経済』LⅥ2(2015.6) 138 浜 はま 中 なか 新 しん 吾ご 

加藤淳子・境家史郎・山本健太郎編

有斐閣 2014 年 xii+264 ページ

『政治学の方法』

これまで,政治学は固有の研究方法によって規定 される学問ではなく,その研究対象によって規定さ れる学問だとされてきた。すなわち政治に関わる現 象を扱う研究であれば,政治学の範疇に入ってくる ことになる。しかし政治に関する調査研究のすべて が政治学に属するというわけではない。たとえばル ポライターによる政治家の評伝を政治学の研究とし て認める政治学者は多くはないだろう。ある調査研 究が政治学の範疇に属するのかどうかという問題 は,それほど簡単ではないことがわかる。 「政治学は,伝統的に学際的な学問であり,社会 科学の他分野の問題関心や考え方を柔軟に取り入れ てきた」(まえがき)とあるように,この学際性と 柔軟さが政治学の発展に貢献してきた。一方で,そ のことが学問的アイデンティティをあいまいにして きたともいえる。しかし実証的な政治学,すなわち 因果関係の定立をめざす政治学の立場では,研究方 法の意義や有効性の議論が急速に深まってきた。本 書は計量分析や事例研究,フォーマル・モデリン グ,そして実験など,意義と有効性を求めた結果, 高度に洗練された各方法の関係を体系化した教科書 である。各方法に特化した教科書は邦語でも出版さ れるようになっているが,それらの関係を体系的に 位置づけ,共通する基盤を理解させようとする本書 の試みはユニークである。 政治学の方法相互の体系は本書の 33 ページにあ る図で表現できる。方法をめぐる議論は計量分析に 代表される量的研究と事例研究に代表される質的研 究の間で数多くなされてきた。本書でもその構図を 取り入れているが,これらは調査観察研究であると いう共通点をもつ。どちらのアプローチを取るにせ よ,これらは政治的事実を観察した記録をデータと して分析する点で一致している。従来,事例研究は 計量分析と比べて因果関係の定立に貢献しにくいと みられていた。しかし理論の反証事例を研究するこ とで理論の改善は可能となる。また事例研究によっ て新たな理論の発見もできる。現在では事例研究も 重要な調査観察研究の方法だと認められている。 調査観察研究であるか否かは,介入による統制の 有無によって分別される。因果関係の検証において 理想的なデザインは,無作為割り当てによって対象 を 2 群に分け,ある処置を施した実験群と処置を施 さない統制群を作り出すことである。実験での介入 後,2 群に何らかの違いがみられたならば,その介 入が差の原因であると特定できる。このような介入 が可能な方法が実験研究であり,介入できないもの が調査観察研究である。 フォーマル・モデリングの位置づけは調査観察研 究や実験とは異なる。観察や実験は仮説検証型の方 法であり,観察対象を特定することが可能である。 言い換えると観察や実験は観察対象の研究から帰納 的な推論を行っている。これに対してフォーマル・ モデリングの考え方は政治的行為者(アクター)と その意思決定状況を設定し,アクターの選択や行動 を演繹的に推論する。その意義は仮説の検証にはな く,むしろ仮説の導出にある。フォーマル・モデリ ングは数学を使うことで仮説に論理的な厳密さを与 えられ,なおかつ現実に選択された行動と,十分起 こりえたが現実には選択されなかった行動を含めた 複数のシナリオを確率的に表現することができる。 仮説検証型研究でのテストを経れば,導出された因 果関係は広く受容され,政治学の理論となりうる。 本書は政治学の方法に共通する基盤を 2 つ挙げて いる。ひとつは複数の方法を併用するマルチ・メ ソッド性である。フォーマル・モデリングを使う研 究の多くは,仮説導出のために用いており,計量分 析で検証を行ったり,事例研究によって仮説の論理 を頑健にしたりする。複数の方法によって因果関係 がテストされ,政治学理論の定立に貢献している。 もうひとつの基盤は理論の反証可能性に求められ る。本書は大理論の構築ではなく,限定された範囲 の問いを説明する理論を数多く成立させることに政 治学の意義を見いだしているようだ。仮説の提示と その検証という地道な作業を繰り返すことで,ある 理論が特殊な条件下で成立しており,より一般的な 理論に包摂されることが発見されていく。学問の体 系化と俯瞰図の作成はこのような作業なくしては成 り立たない。近い将来,政治学は対象だけでなく方 法によっても規定される学問分野へと変貌していく のかもしれない。 (山形大学地域教育文化学部准教授)

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