小学生を対象としたアダプテッド・スポーツ授業の効果の検討 ―ゴールボールを教材として―
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第66巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 66, No.2. 平 成 28 年 2 月 February, 2016. 小学生を対象としたアダプテッド・スポーツ授業の効果の検討 ― ゴールボールを教材として ―. 大 山 祐 太 北海道教育大学岩見沢校 アダプテッドスポーツ研究室. Effectiveness of“Lesson of Adapted Sports”for Elementary School Students ― Through playing GoalBall ―. OYAMA Yuta Department of Sport Education, Iwamizawa Campus, Hokkaido University of Education. 概 要 本研究の目的は,小学生に対してアダプテッド・スポーツの授業を実施し,その効果を検討 することからアダプテッド・スポーツ授業の効果的な展開方策について示唆を得ることであっ た。具体的には,4年生55名にゴールボールの授業をおこない,授業前後の障害者イメージと, 授業後のアダプテッド・スポーツへの評価を質問紙によって把握した。結果,以下のことが明 らかとなった。 ① アダプテッド・スポーツ授業後は,障害者に対して「かわいそうな人」,「生活するのが むずかしい」,「いっしょにスポーツするのはむずかしい」と思わなくなっていた。 ② どのような障害があるとより生活が困難と考えるか「手」 「足」 「目」 「耳」 「思考・記憶」 に相当する5項目から確認したところ,授業前後の各項目の度数に有意な偏りは確認され ず,最も多く選択されたのは「目」,次いで「思考・記憶」であった。 ③ ゴールボールに対して,プレーすることに関しては好意的・積極的であったが,観戦意 欲は高くないことが伺われた。また,男子よりも女子の方が「怖い」と認識し,障害者と の接触経験がある児童の方が「はげしい」スポーツであると認識する傾向が示唆された。 条件を工夫することで多くの人が楽しめるスポーツとして理解・体験させることが,楽みや 達成の実感といった肯定的体験を誘発させ,障害者との接触はなくとも障害者に対する否定的 イメージの緩和を促すことが推察された。. 253.
(3) 大 山 祐 太. Ⅰ 背景と目的. 障害児の存在するクラスがない場合も想定され, 接触・交流機会をつくることが難しい場合も考え. 2006年の第61回国連総会にて採択された「障害. られる。加えて,平成27年度には小中高校体育に. 者の権利に関する条約」に,我が国は平成26年に. アダプテッド・スポーツを導入する事業が始まっ. 批准した。今後,インクルーシブ教育の推進やア. た。しかしながら,小学生を対象とした授業で,. クセシビリティの向上など,共生社会に向けた. 当事者との交流を伴わず,車椅子体験やブライン. 様々な措置が講じられることは明白であり,障害. ドウォークといった障害体験ではない「スポーツ. 者の社会参加促進,地域住民との相互作用機会の. (競技)」としてのアダプテッド・スポーツ体験. 増大が想定される。しかし,物的障壁の除去や諸. の効果を検討した例は見当たらない。. 制度の整備はなされてきたものの,地域住民が障. そこで本研究は,小学生に対してアダプテッ. 害について正しく理解し,誤解や偏見が十分に解. ド・スポーツの体験授業をおこない,特に,障害. 消されたとは言い難い。例えば,「障害者に関す. 者に対するイメージに及ぼす影響と,アダプテッ. る世論調査」 (内閣府, 2012)では,世の中に障害. ド・スポーツに対する評価について検討し,小学. を理由とする差別や偏見が「あると思う」とする. 校におけるアダプテッド・スポーツ授業の効果的. 者の割合が89.2%(n=1,913)存在しており,平. な展開方策について示唆を得ることを目的とする。. 成19年の調査(n=1,815)よりも6.3ポイントの増 加となっている。また,一般論として受容的な態 度を示しながらも個人的には忌避的な面がある. Ⅱ 方 法. 「総論賛成各論反対」という実態もうかがえる(生. 1.調査方法. 川・安河内, 1992. 中村・川野, 2002.など)。障害. 小学生に対してアダプテッド・スポーツの授業. 者に対する否定的な態度は行動に現れることも報. をおこない,その前後で障害者への意識に関する. 告されており(Heinemann et al, 1981),共生社. 質問紙調査を実施し,授業後のみ実践してみての. 会の実現を目指すうえでは,社会全体の偏見や差. 感想についても調査した。授業は2015年1月に実. 別解消のため,早期からの障害についての正しい. 施し,事前調査は授業日の1週間前,事後調査は. 理解が必要といえる。. アダプテッド・スポーツ授業実施日の昼休みにお. 障害理解を促す有効な手段のひとつとしては,. こなった。. 学校現場での障害理解教育が挙げられる。今森ら (2013)の報告にあるように,これまで,障害理. 2.授業内容. 解を目的として障害疑似体験や障害者との交流・. 今回は,アダプテッド・スポーツとして「ゴー. 接触の授業が実施されてきており,小学校は体育. ルボール」を取り入れ,2単位時間連続して実施. を通常学級と障害児学級合同で実施することも多. した。その理由としては授業としての導入のしや. かった(安井, 2007)。しかし,障害者との接触に. すさが挙げられる。車椅子を使用する競技では,. ついては,ポジティブな経験となるように計画さ. 授業で実施するに十分な台数を用意することが困. れている場合は好ましい態度形成を促すが(田. 難 で あ る 場 合 が 多 い が, ゴ ー ル ボ ー ル は ア イ. 川・由良, 1992. 岩橋ら, 2012.),体験の「質」によっ. シェード(またはアイマスク)と鈴入りのボール. ては,障害体験や障害者との接触経験が好意的態. があれば体験は可能である。また,車椅子操作と. 度の形成に結びつかなかったり,より否定的態度. 同時にボールやラケットなど他の用具操作が強い. に な る 可 能 性 も 指 摘 さ れ て い る(Granofsky,. られる場合,1度の授業で競技として楽しめるだ. 1955. Okolo & Guskin, 1984. 益山ら, 2008. 田口ら,. けの上達を期待することは難しいが,ゴールボー. 2012.など) 。また,へき地や小規模校においては. ルはルールもわかりやすく,小学生にとって複雑. 254.
(4) 小学生を対象としたアダプテッド・スポーツ授業の効果の検討. な動作を要しないことも理由のひとつである。加. を得た。また,どのような障害が生活上最も困難. えて,情報量の多い視覚を完全に遮断してスポー. を強いられるかについても,小学生のイメージし. ツをするという, 「非日常感」を味わうことがで. やすさを考え,「1.手をつかえない」「2.足を. きる点も魅力であると考える。授業の構成は表1. つかえない」「3.目がみえない」「4.耳が聞こ. の通りである。. えない」「5.考えたり,覚えたりすることがと ても苦手」の5つから回答を得た。ゴールボール. 表1 授業の構成. 実践後には,やってみての感想を12項目設定し,. セクション. 時間. 内容. 障害イメージと同様5件法にて回答を得た。質問. 「しょうがい」 って 何だろう?. 25分. 障害概念の理解。具体例を挙 げ,環境との兼ね合いで困難 が生じること,身体構造・機 能は変えられなくても,でき ることは変えられることなど を解説。. 項目を参考とした安井(2004)の調査では,小学. ゴールボールへの導入とし て,ブラインド状態でのゲー ムを実施。指定された動物の 鳴き声のみ発声可とし,同じ 鳴き声の仲間とグループにな る「仲間探し」,誘導の声や 音を頼りにボールを探す「宝 探し」を実施。. 童に知られていない可能性が高く,名称から競技. 目にたよらずに 遊んでみよう‼. やってみよう‼ ゴールボール. まとめ. 25分. 35分. 5分. ゴールボールの映像を視聴 し,ディフェンス姿勢,実物 のゴールを使用してのディ フェンス,アイシェードを着 用しての投球などを実践。 障害者だから親切にするので はなく,ベビーカーを押して いる人など困っている人に心 配りすることが大切であるこ とを強調。. 生を対象に車椅子バスケットボールのイメージに ついて,実践・交流体験前後で確認し比較してい るが,本研究で扱ったゴールボールについては児 内容を想像することも困難であるため,体験前の イメージについては確認しなかった。 また,質問紙は児童のわかりやすさを考慮して 既出漢字のみを用いて簡便な表現を心掛け,用語 や表現について協力校の意向を反映して修正し, 作成した。実際に配布した質問紙は図1の通りで ある。 5.回答の妥当性を担保する取組 質問紙調査では,不正確に回答するわけではな いが,社会一般的に望ましいとされる回答をする 傾向が指摘されている(Edwards, 1953)。児童が, 授業実施者に配慮して回答を肯定的な方向に歪め. 3.調査対象. てしまわないよう,質問紙の配布・記入・回収は. 対象者は北海道後志管内A小学校の4年生2ク. 調査協力校の教員に依頼し,授業実施者は立ち会. ラス,55名(女子19名,男子36名)である。. わなかった。また,質問紙は,できるだけ簡便な 言葉を用いて作成し,回答から個人が特定されな. 4.調査項目. いことや,いかなる回答をしても叱責を受けるこ. 主な調査項目は,①フェース,②障害者に対す. とはないことを記載した。. るイメージ,③ゴールボールをやってみての感想 である。フェース項目は,性別,障害者との接触. 6.分 析. 経験,パラリンピックの認知について確認した。. 「障害者に対するイメージ」については,主に. 障害者イメージについては,小学生を対象とした. 偏見や否定的イメージについて確認する項目が多. 先行研究(安井, 2004)を参考として10項目設定. いため,「3.どちらとも言えない」を「0点」. し,5件法( 「1.とてもそう思う」「2.少しそ. とし, 「1.とてもそう思う」を「-2点」, 「2.. う思う」 「3.どちらとも言えない」「4.あまり. 少しそう思う」を「-1点」,「4.あまり思わな. 思わない」 「5.まったく思わない」)により回答. い」を「1点」,「5.まったく思わない」を「2. 255.
(5) 大 山 祐 太. 図1 配布した質問紙(左は授業前後,右は授業後のみ). 点」と換算して分析し,授業前と授業後で各項目. ほぼ全員が言葉としては認知しており,約半数が. の平均点を比較した。 「ゴールボールをやってみ. 映像を見たことがあるという結果であった。. ての感想」は, 逆に「1.とてもそう思う」を「2 点」 , 「全く思わない」を「-2点」として平均値. 2.障害者に対するイメージの変容. を算出し,属性ごとの特徴を確認した。データの. 障害者に対するイメージについて,授業前と授. 集 積・ 統 計 的 処 理 に はIBM SPSS® Statistics. 業後の平均の比較は図2の通りである。統計的な. Desktop Ver.22を用いた。. 有意差が生じていたのは「かわいそうな人(p <.001)」,「生活するのがむずかしい(p<.01)」,. Ⅲ 結 果 1.障害者との接触経験及びパラリンピックの認 知度. 「いっしょにスポーツするのはむずかしい(p <.05)」の3項目であり,「かわいそうな人」の 平均得点は,授業前が-1.44(SD:0.71)で授業 後は-0.40(SD:1.42),「生活するのがむずかし. 「 『しょうがいのある人』とふれあったことが. い 」 は 授 業 前1.84(SD:1.00), 授 業 後 は2.60. ありますか?」という問いに対して,「ある」と. (SD:1.43), 「いっしょにスポーツするのはむず. 回答した者は19名(34.5%) , 「ない」と回答した. かしい」は授業前2.85(SD:1.27),授業後が3.43. 者は36名(65.5%)であり,回答者の約3分の1. (SD:1.32)であった。有意差のあったすべての. に障害者と何らかの形で接触した経験があった。. 項目で,授業後により「そう思わない」ようになっ. また, 「 『パラリンピック』を知っていますか」と. ていた。. いう問いに対しては, 「見たことがある」25名. また,「生活するのが一番たいへんなのは,ど. (45.5%) , 「聞いたことはある」29名(52.7%),. れだと思いますか?」という設問に対して, 「手. 「わからない」1名(1.8%)という結果であり,. を使えない」, 「足を使えない」, 「目が見えない」,. 256.
(6) 小学生を対象としたアダプテッド・スポーツ授業の効果の検討. 「耳が聞こえない」,「考えたり覚えたりすること. 得た。全体(n=53)の得点化した平均は図4,. がとても苦手」の5つの選択肢から回答を得た。. 選択された度数は図5の通り。. 2. クロス集計をし,χ 検定をおこなったが,授業. フェース項目との関連を調べるため,「性別」,. 前と授業後の各項目の度数に有意な偏りは確認さ. 「障害者との接触経験」, 「パラリンピックの認知」. れなかった(図3)。. それぞれにおいて選択肢ごとの平均得点の差を比 較した。結果,性別において「怖い」の項目のみ. 3.ゴールボール体験後の感想. 有意な差が生じており,男子(SD:1.23)より女. ゴールボール体験後に, 「ゴールボールをやっ. 子(SD:1.43)の方が得点が低く,より「そう思. てみて,どう思いましたか」と取り組んでみての. う」傾向にあった(図6)。また,障害者との接. 感想を 「1.とてもそう思う」 「2.少しそう思う」. 触経験が「ある」者(SD:1.26)と「ない」者(SD:. 「3.どちらとも言えない」 「4.あまり思わない」. 1.39)との比較では, 「ある」者の方が「はげしい. 「5.まったく思わない」の5件法により回答を. スポーツだ」 の得点が低い有意傾向にあった (図7) 。. 図2 授業前と授業後の障害者に対するイメージ. 図3 授業前と授業後の障害種に対する生活困難性の認識. 257.
(7) 大 山 祐 太. 図4 ゴールボールに対する評価(全体の平均得点). 図5 ゴールボールに対する評価(各回答の度数). 258.
(8) 小学生を対象としたアダプテッド・スポーツ授業の効果の検討. 図6 ゴールボール評価(性別による差異). Ⅳ 考 察 1.アダプテッド・スポーツ授業が障害者イメー ジに与える効果. 図7 ゴールボール評価(障害者との接触経験によ る差異). 純粋に「楽しかった」という肯定的経験を獲得し, 共にプレーできるイメージが湧いたものと推察さ れる。 また,「どのような障害があると大変だと思う. アダプテッド・スポーツ授業受講後は,「かわ. か」という問いに対しては,ゴールボール実施前. いそうな人」 , 「生活するのがむずかしい」という. 後で有意な変化は確認できなかったものの,「耳. イメージが薄れていた。この結果は,車椅子バス. が聞こえない」の割合が減少し「足がつかえない」. ケットボールを通じた交流体験後にネガティブイ. が増加する傾向にあった。これは,授業前の調査. メージが薄れたという安井(2004)の報告と類似. では聴覚を頼りにする経験がなかったため,漠然. しているが,本研究においては障害者本人との交. としたイメージで「耳」を選択していた児童が,. 流機会は設けていないという前提の違いがある。. 移動やディフェンス姿勢など「足」が重要なゴー. しかし,直接的な接触はなくとも映像視聴により. ルボールを体験することで,相対的に「足がつか. 障害者に対する意識が肯定的変容を示した例. えない」状態の困難性が印象付けられ,結果割合. (Sadlick & Penta, 1975)もあり,佐藤(2012). に若干の変化が生じたのではないかと考える。. は,大学生に対してアダプテッド・スポーツ授業 を実施し,授業前よりも授業後の方が「つらい思. 2.ゴールボールに対する評価. いをして生活している」 「街に出る時に苦労をし. ゴールボール体験後の評価の平均得点を見る. ている」などの項目について,より「そう思わな. と,「楽しかった(1.92点)」,「ゴールボールの選. く」なったことを報告している。佐藤(2012)の. 手はすごい(1.68点)」,「またやってみたい(1.66. 例でも,本研究と同様に障害者との交流はなく,. 点)」, 「体育授業でやりたい(1.60点)」など,体験・. アダプテッド・スポーツに関する座学,映像視聴,. スポーツ自体への評価は全体的に高い結果となっ. 実践という授業構成となっていた。このことから,. ていた。また,「とてもそう思う」と選択された. 今回の結果は,障害概念についての解説を受け,. 度数・割合を確認すると「楽しかった」は49名・. ゴールボールの映像を視聴し,実際にプレーして. 92.5%,「ゴールボールの選手はすごい」41名・. みることで,そのプレーの困難性や選手のスキル. 77.4%,「またやってみたい」41名・77.4%,「体. の高さなどを実感したことにより,障害者に対す. 育授業でやりたい」39名・73.6%となっており,. る「弱者」としてのイメージが薄れたことによる. 全体として高評価であったことが伺える。. ものと考えられる。同様に,授業後に「いっしょ. 一報で,「はげしいスポーツだ」に関しては平. にスポーツするのはむずかしい」と思わなくなっ. 均得点が0.55点で,「とてもそう思う」と回答し. たことについても,実際にプレーしたことにより,. た人数も17名と比較的「そう思う」割合が高くな. スポーツをする際の困難性が具体化されたことに. かった。「近くなら見に行きたい」「かっこいいス. 加え, 「できるようになった」などの達成経験,. ポーツだ」についても1.06点,1.15点であり,「と. 259.
(9) 大 山 祐 太. てもそう思う」と回答された度数・割合も「近く. 村, 2001),得点の差異が性別的特徴による可能性. なら見に行きたい」21名・39.6%,「かっこいい. は否定できないが,授業展開する場合は児童全員. スポーツだ」23名・43.4%と,他の項目と比較し. が体験することになるため,安全面・恐怖感につ. て低い傾向にあった。これらのことから,ゴール. いての配慮が十分なされなければならない。「た. ボールに関しては,プレーすることに関しては好. だ怖かった」で終わってしまうと,アダプテッド・. 意的・積極的であるが,観戦意欲は高くないこと. スポーツそのものに対するネガティブイメージを. が伺える。. 形成する可能性があるため,抵抗感のある児童に. 藤木(2013)はアメリカの小学生に対して好き. は目をつぶった状態で体験させ,怖くなったらい. なスポーツ・観るスポーツについて調査を行い,. つでも状況を視認できるようにするなど配慮が必. 特定競技の人気の背景として,当該競技に触れる. 要となるだろう。ただし,ゴールボールは1.2~. 機会の多さや,取り組みやすい環境,強豪チーム. 3キロのゴム質のボールを転がす競技であるた. の有無,メディアの後押しといった,「地域性」. め,アイシェードの装着には選手の条件を統一す. に言及している。我が国においては,アダプテッ. るだけでなく目を外傷から守る意味もある。アイ. ド・スポーツを観戦する機会は多くなく,今回の. シェードをせずにプレーする場合は,軽く柔らか. 調査でもパラリンピックを「見たことがある」者. い鈴入りのボールを使用するなど工夫が求められ. は25名(45.5%)と半数以下であった。児童にとっ. る。. てアダプテッド・スポーツは決して身近ではない. 障害者との接触経験が「ある」児童の方が, 「な. ため, 「観戦を楽しむ」対象としては認識されて. い」児童よりも,「はげしいスポーツだ」につい. いないものの,ブラインド状態でのプレーや日頃. てより「そう思う」傾向にあったことは,接触経. 扱う機会がない用具に触れるといった「非日常」. 験がある児童は障害者を具体的にイメージし,彼. 感もあり,取り組むスポーツとしては肯定的に捉. らがプレーすることを想定して回答し,接触経験. えられたと考える。. のない児童は純粋に自身のプレーしてみての体験 からゴールボールというスポーツを評価した可能. 3.アダプテッド・スポーツの授業実践に向けた 示唆. 性が考えられる。障害者に対するイメージについ ては,障害者との接触経験の有無,また接触時の. ゴールボール評価として, 「怖かった」の項目. 自発性の有無などによって差異が生じることが指. に関しては,全体としては「そう思わない(-0.79. 摘されている(Thomas et al, 1985. 松村・横川,. 点) 」傾向にあったが,男子児童よりも女子児童. 2002.など)。障害に関する知識や障害者に対する. の方が有意に「そう思う」得点が高いという結果. イメージは,個人によって大きく異なっているこ. となっていた。 回答数を見ると, 「とてもそう思う」. とが考えられるため,アダプテッド・スポーツ授. 4名(7.5%) , 「少しそう思う」10名(18.9%), 「ど. 業の導入として,障害についての基本的な知識や. ちらとも言えない」5名(9.4%) , 「あまり思わ. 障害概念の捉え方については詳しく解説しておく. ない」8名(15.1%) , 「まったく思わない」26名. 必要があるだろう。. (49.1%)となっており,最も各項目でばらつき の多い,個人差が生じている項目であった。外界 から得る情報量が多い視覚に頼れないため,周囲. Ⅴ 今後の課題. の状況を把握出来ない不安や,つまずき・転倒な. 本研究から,小学生に対するアダプテッド・ス. ど身の危険への恐怖心が喚起されたものと考えら. ポーツ授業の有効性は一定程度示されたものと考. れる。恐怖傾向や過敏傾向など,女子の方が男子. える。緒言で述べたように,設計されない安易な. よりも高い不安傾向を示すという報告もあり(中. 障害者との接触経験や障害疑似体験は,ネガティ. 260.
(10) 小学生を対象としたアダプテッド・スポーツ授業の効果の検討. ブイメージを増長させてしまう可能性があるが, スポーツを通じた接触・交流は,平等意識の醸成 や,否定的認識の解消をもたらすことが指摘され. Applied Psychology, 37⑵:90-93. 藤木大三(2013):アメリカの小学校児童の好きなスポー ツ・観るスポーツ:ワシントン州スポケーン市4公私 立小学校の事例より.教育学論究,5:117-124.. ている(Tripp et al, 1995. 安井・時政, 1998. 松本,. Granofsky,J(1955):Modification of attitudes toward. 2014.など) 。本研究の結果もそれら支持するもの. the visibly disabled: an experimental study of the. であり,本研究結果と先行研究の知見から,「障. effectiveness of social contact in producing a. 害者のため(だけ)の」スポーツではなく,「条 件を工夫することで多くの人が楽しめるスポー. modification of the attitudes of non-disabled females toward visibly disabled males. Dissertation Abstracts, 16:1182-1183.. ツ」として理解・体験させることが,楽みや達成. Heinemann,W. Pellander,F. Vogelbusch,A. Wojtek,B.. の実感といった肯定的体験を誘発させ,障害者と. (1981) :Meeting a deviant person: Subjective norms. の接触はなくとも障害者に対する否定的イメージ. and affective reactions. European Journal of Social Psychology, 11:1-25.. の緩和を促すことが推察された。 「スポーツ実践」. 今枝史雄・楠敬太・金森裕治(2013) :通常の小・中学校. に導くまでに, 「障害に関する座学(基本的知識. における障害理解教育の実態に関する研究(第Ⅰ報). の獲得) 」 , 「映像視聴(知識の具体化)」,「楽しめ. ―実施状況及び教員の意識に関する調査を通して―.. る障害の疑似体験・用具操作(知識の体験への統 合) 」と段階を踏むなど,児童が咀嚼しやすく楽. 大阪教育大学紀要 第Ⅳ部門,61⑵:63-76. 岩橋由佳・相本広幸・藤原秀文・井上雅彦(2012) :知的 障害のある児童に対する交流学級児童のかかわり行動. しみを見出しやすい設計をすることが重要である。. を促進させるための障害理解授業の効果.特殊教育学. 最後に研究の限界について述べる。本研究は,. 研究,49⑸:517-526.. 後志管内の某小学校の4年生を対象として進めら れた。そのため,今回得られた結果が,協力校の. 益山篤子・東原文子・河内清彦(2008) :通常学級におけ る知的障害児に対する級友の態度に及ぼす接触および 性別の影響について.障害科学研究,32:1-10.. 障害理解学習の内容や所在地の障害者施策といっ. 松本すみ子(2014) :アダプテッド・スポーツによる精神. た学校・地域の特性,4年生という発達段階の傾. 障害者との直接的交流体験が大学生にもたらす変容と. 向といった影響力は否定しきれない。今後は,学 年間や学校間での比較検討を行い,より多くの学 校現場で適応可能なアダプテッド・スポーツ授業 の開発を進める必要がある。. そのプロセスに関する研究―精神保健福祉士養成の観 点から―.東京国際大学論叢 人間社会学部編,19: 1-17. 松村孝雄・横川剛毅(2002) :知的障害者のイメージとそ の規定要因.東海大学紀要文学部,77:101-109. 内閣府(2012) :障害者に関する世論調査. 生川善雄・安河内幹(1992) :精神薄弱児(者)に対する 態度と接触経験・ボランティア経験との関係に関する. 謝 辞. 研究―福祉保育教育系女子大生の場合―.発達障害研. 本論文の執筆にあたって,授業実践にご協力く ださいましたA小学校の児童および先生方に,深 く感謝申し上げます。. 究,13⑷:302-309. 中村真・川野健治(2002) :精神障害者に対する偏見に関 する研究―女子大学生を対象にした実態調査をもとに ―.川村学園女子大学研究紀要,13⑴:137-149. 中村多見 (2001) :子どもの不安傾向に関する発達的研究.. 参考文献 Adler,A.K. Wahl,O.F(1998):Children’s beliefs about people labeled mentally ill. American journal of orthopsychiatry, 68:321-326. Edwards,A.L(1953):The Relationship Between the Judged Desirability of a Trait and the Probability That the Trait Will Be Endorsed. The Journal of. 広島大学心理学研究,1:129-137. 田口禎子・林安紀子・橋本創一・池田一成・大伴潔・菅 野敦・小林巌・三浦巧也・戸村翔子・村松綾子(2012): 通常教育教員養成における特別支援教育プログラム構 築のための基礎的な検討―教師志望大学生の障害者理 解と障害理解教育に関する調査.東京学芸大学紀要 総 合教育科学系,63⑵:303-319. Okolo,C. & Guskin,S.(1984):Community attitudes. 261.
(11) 大 山 祐 太. toward community placement of mentally retarded persons. International Review of Research in Mental Retardation, 12:25-66. Sadlick, M. Penta, F.B.(1975):Changing nurse attitudes toward quadriplegics through use of television. Rehabilitation Literature, 36⑼, 274-278. 佐藤紀子(2012):「アダプテッド・スポーツ」の授業が 歯学部生のスポーツや障害者に対する意識に及ぼす影 響.日本大学歯学部紀要,40:49-56. 田川元康・由良妙子(1992):障害児に対する小学生の態 度形成―統合教育・交流教育の影響―.和歌山大学教 育学部紀要,41:1-15. Tomas,S.A. Foreman,P.E. & Remenyi,A.G.(1985):The effects of previous contact with physical disability upon Australian children’s attitudes toward people with physical disabilities. International journal of rehabilitation research, 8⑴:69-70. 内田若希・大谷まや(2013):障害者スポーツ実習と障害 疑似体験における障害理解の差異の検討.障害者スポー ツ科学,11⑴:33-41. 安井友康(2004) :車いすバスケットボールの交流体験が 障害のイメージに与える影響.障害者スポーツ科学,2 ⑴:25-30. 安井友康(2007) :小中学校における障害のある児童生徒 の体育授業に関する研究―北海道における実態調査か ら―.北海道教育大学紀要(教育科学編),58⑴:165179. 安井友康・時政幸司(1998):障害者とのスポーツ交流実 践の効果―車椅子バスケットボールへの参加が学生の 意識に与える影響―.北海道教育大学紀要(教育科学 編),49⑴:207-214.. (岩見沢校講師). 262.
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