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郷土に関わる古典を見つけ、その価値を再発見させる比べ読みの指導-吉川英治と宮尾登美子の小説「平家物語」の描かれ方の違いを読む-

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Academic year: 2021

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(1)Title. 郷土に関わる古典を見つけ、その価値を再発見させる比べ読みの指導− 吉川英治と宮尾登美子の小説「平家物語」の描かれ方の違いを読む−. Author(s). 宮内, 征人. Citation. 国語論集, 15: 116-127. Issue Date. 2018-03. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/9747. Rights. Hokkaido University of Education.

(2)                                                           . 郷土に関わる古典を見 つけ、その価値を再発見させる比べ読 みの指導. 。 注 2︶ 学 習 指 導 について論 じていく ︵. 宮内 征人. 平家物語﹂ について書かれた二つの小説の 本論においては、古典 ﹁ 比べ読みから作品の描かれ方に着目させ、その違いを読む現代文の. 開 した。. 圏実践の特 ′色 一 文化的背景と関連付ける古典の指導を展 ” ○作品の時代的 ・. 描 かれ方 ﹂を 比べさ せる。 それぞれにおいての﹁. 平家物語﹂ の描かれ方 の違 いを読むー 十吉川英治と宮尾登美子の小説 ﹁. において、授 業 改 善 る古 典 の授 業 改 善 を 図 るため のポイ ント欠注 1︶. 一 古典 の授業改善を実現するためのポイ ント これまでの中学校学習指導要領における古典 の指導 の扱い方 中学校 国語科におけ と古典 の指導 の問題点等をふまえ、論者は﹁ を 実 現 す るための三 つのポイントを導 き 出 した。 ポイ ント 1 郷 土 に 関 わ る古 典 を 見 つけ 、そ の価 値 を 再 発 見 さ せる. 北播磨︶の時代的 ・文化的背景と関連付ける古典 二 加東市 ︵ ポイント口 古典を引用しながら、自分の思いや考えを表現 年間指導計画︶ の指導 ︵ する 郷 土 に関 わ る古 典 を 見 つ 先 の三 つのポイント のう ち 、ポイント 1 ﹁ ポイントm 古典 の原文に加え、古典 の現代語訳、古典につい け 、そ の価 値 を 再 発 見 さ せる﹂ということ について、兵 庫 教 育 大 学 附 て解説した文章などを活用する 北播磨︶ の時代的 ・ 文化的背景と関 古典の授業改善を実現するための授業を論者自身がおこなった。 属学校園の位置する、加東市︵ 連付ける古典の指導を中学 二年生に対して行った。 授業実践の単 元名などは次の通りである。 兵庫県加東市は京都沙ら西国へ 向かう際の要衝であり、かつて源 平家物語﹂ 園単元名 現代文・ 古文・ 漢文で読む ﹁ 平合戦が行われた コニ草山﹂ という歴史的遺産を有している。三草 ー 私 たち の読 んだ コニ草 合 戦 ﹂ ー 平家物語﹂﹁ 二組 , 源平盛衰記﹂にも描かれており、今 三組 ⋮ 山での源平合戦は﹁ 圏対 象 兵庫教育大学附属中学校 二足二 組, 三木市などの各地域には、義経 ・ 弁慶伝説など も加東市 ・ 小野市 ・ 圏期 間 平成十九年∼ 二十年、平成 二十年∼二十 一年 。三草合戦は、那須与 一が射 手として登場 注3︶ が伝えられている︵ 、つまり屋島の戦いの二週間ほど前の出来事で する、教材 コ扇の的﹂ 古文・ 漢文︵ 漢詩︶ の“ ○三草合戦という事象について、現代文・. 圏実 践 のねらい.

(3)    . あ る。﹁ 平 家 物 語 ﹂から と ら れ た、教 材 コ扇の的 ﹂が中 学 二年 生 にあ る。このコ扇の的 ﹂と 関 連 さ せ、発 展的 な学 習 と して、三 草 合 戦 を 題. 材とする古典 の教 材を年間指導計 画に位置付けた。それが次 の ﹁ 中学 二年生の﹃ 古典の指導﹄ に関する年間指導計画﹂ である。. 第 一次 全十時間 ○古典に対する関心を高め、古文を理解する基礎を養う。 ・﹁ 枕 草 子 ﹂を 行 書 で書 き 、古 典 のリズムに読 み慣 れよう 。 ・﹁ 枕 草 子 ﹂﹁ 徒 然 草 ﹂の音 読 を 通 して、古 典 作 品 の世 界 の楽 し さ を味 わ おう 。. ・コ 平家物語じ の表現に着 目し、状況や心情を想像 扇の的二﹁ しながら 朗 読 しよう 。. 発 展︵ 二学期 ・一一月¥ 第 二次 全四時間 ○﹁ 平家物語﹂三草合戦の場面を読む︵ 古文︶ 平家物語﹂﹁ ・﹁ 源平盛衰記﹂から三草合戦の場面を選び、その 書 きぶり の違 いを み つけ 、そ の効 果 に ついて考 えよう 。. 冬季休業史 ・二学 期 の学 習 を ふまえ 、﹁ 疑 問 に思 ったこと ﹂や ﹁ も っと 調べて みたいこと ﹂等 についてレポー トを 書 こう 。. 渓 化①三 学期 ・一∼ 二月¥ 第三次 全八時間 ○ ﹁ 平家物語﹂ 三章合戦 の場面を読む ︵ 小説 ・漢詩︶ ・ 教科書教材 ﹁ 漢詩の風景﹂ を読み、漢文特有 の調子や表現方 法に注意して朗読しよう。 ・ 地 元の漢詩愛好家による、﹁ 三草合戦﹂ を題材とした漢詩三 編を読み味わおう。 ・﹁三草合戦﹂が描かれた、吉川英治 ・宮尾登美 子の現代. ○ 二学 期 から の 一連 の学 習 活 動 のまとめとして、﹁ 私 たち の読 ん. 小説を読 み比べよう。 深化②。ニ学期・ 三月︶ 第 四次 全 五時間. 比 べ 読 み の目的 、 メ リ ット. 指 導 を行 った。. だ三草合戦﹂ と題した冊子づくりをテう。 三草合戦についての学習の仕上げとして、吉 川英治 ・ 中山義秀 ・ 宮 尾登美子などの作品を読み比べる学習を三学期に位置付けた。 古文による三草合戦の学習指導に続いて、現代文︵ 小説︶ による学習. 三. 本論においては、﹁ 平家物語﹂に描かれた三草合戦を現代文学 の 作家がどのように描いたか、その違いを読むために比べ読みの指導 計画を立てた。比べ読みとは複数の教材を観点に従って読み、共通. 。 点 や 相 違 点 を 明 ら かにして読 みを 深 める活 動 のこと であ る︵ 注 4︶ 。 府 川 源 一郎 は比べ読 みの目的 を 次 のよう に論 じている︵ 注 5︶. みだしているのであ る。複 数 作 品 の﹁比べ読 み ・ 重 ね読 み﹂を 推 進. 一つの教材を学習する場合でも、文章 の読み手は自分自身の これまでの読書生活の断片と比べながら、様 々な読書反応を生. する目的は、そうした個 人の読書 反応を活発にし、その位置付. け を 明 確 な も のにす ると ころにあ る。言 いかえ れば 、個 人 の全就 み︶をより豊 かでより幅 広 いも のにす るためにこそ、複 数 教 材 の ﹁ 比べ読 み ・ 重 ね読 み﹂の指 導 が構 想 さ れなければ ならないのだ。. ︵ 傍線は引用者による。以下同様。︶ 府川は、複数教材 の比べ読みの目的を、諸証書指導と関連付け、 比べ読みの体験は個人の読書反応を活発にする﹂と述べる。読書活. 動 を と おして豊 かな 心 を育 て、人 間 形 成 を 図 るのであ る。読 書 活 動 の経 験 が、自 己 の発 見 や 確 立 を 図 り、社 会 のな かでの生 き 方 を 考 え. 7十.  .

(4)    . ること につながるといえよう 。. など 異 な る文 体 の作 品 を 比べる﹂﹁ ⑧ 異 な るジャンルの作 品を 比べる﹂. ﹁ 比べ読み・ 重ね読み﹂の活動を府川は八項目挙げている。 ﹁ ②異なる地域の作品を ①同じ作家 の作品を複数 比べ読みする﹂﹁ 比べる﹂﹁ ③異なる時代の作品を比べる三④作品に書かれた人物を 比較する﹂﹁ ⑤複数の作品の書き出しと末尾の文章を比べる二⑥原 古文 ・ 漢文 ・ 談話体 ⑦韻文 ・ 散文 ・ 典と書き換え作品とを比べる﹂﹁ 本論において意図する活動は④に該当しよう。吉川と宮尾の描 く義経像、源氏方の描かれ方を読むことが本時のねらいである。知 識を広げ、自分の考えを深める比べ読み活動を通じて読書 の範囲 を 広 げ 、読 書 の楽 しさ を 実 感 さ せることが読 書 生 活を 高 めていくこ とに つなが っていくと いえよう 。 一方 、鶴 田清 司は比べ読 み の効 用 を 次 のよう に述べて、. 複数の教材の比べ読みによって、注意深く読むことは精読につな. ﹂ と が1 さ るという メリ ットも あ る。つま り、どこがど う 違 っているかを 探 しだそ う と す る際 に、作 品を 精 読 す ることにな るのであ る。 作 がると いう 。違 いを 探 す ために、着 眼 点 であ る読 み 取 り の観 点 ︵﹁. を 意 識 さ せ、複 数 教 材 を 読 み 比べること によ って主 写 ﹂琵叩り﹂な ど︶. 登場人物の行動及び心情﹂﹁ 情景、描 場面構成﹂﹁ 者の意図、主題﹂﹁. 体的な読み取りが可能となる。比べ読みによる批評の力の育成が期 待 でき るであ ろう 。 PISA型 読 解 力 ﹂と の関 連 か 批 評 ﹂について、﹁ 鶴 田はテキスト の﹁ 。 から 次 のよう に述 べている︵ 注 7︶. 蓄 許標嚢 .を 禽 蟹 .キス −ー 占 めている。これは、書 いてあ ることを そ のまま 理解 す るという 受. 動的な読み方ではなく、自分でその意味や価値について考える、 吟味するという主体的な読み方である。言い換えると、テキスト の﹁ 批 評 ﹂と 言 っても よい。. ﹁ 受動的な読み方ではなく、自分でその意味や価値について考え という表現に注目した る、吟味するという主体的な読み方である﹂ い。教科書 の単 一教材と異なり、複数教材を活用し、多 面的な見 方、考え方のできる学習活動によって学習者の主体的な読みが可能. 。 注 8︶ とな ること を鶴 田自 らが 示 している︵ このよう に、比べ読 みは① 読 書 指 導 の面 から 、② PISA型 読 解 力 批 評︶ ︵ の枠 組 み から 、学 習 指 導 と して有 効 であ ることが 認 めら れる。 比べ読 み の手 法 を 用い、ポイント 1 ・皿の有 効 性 を 確 認 す るための学. 習指導案を作成することとした。. 平家物語﹂から三草合戦 四 吉川英治 ・宮尾登美 子の小説 ﹁ を読みとる ︵ 学習指導案︶. 平 家 物 語 ﹂を 小 説 と して著 している作 家 は、吉 川 英 これ ま でに ﹁. を 取 り上 げ て三草 合 戦 の場 面を 比べ読 みさ せること とした。これは. 中山義秀 ・ 池宮彰 一郎など数多くいる。本学習で 治・ 宮尾登美 子・ ﹁ 平家物語﹂﹁ は、①古典︵ 源平盛衰記じに忠実で、②描写の詳しい 注9︶ ︵ 三草合戦を取り上げている壬。川英治と宮尾登美 子の小説︵. ポイント 皿 ﹁ 古 典 に ついて解 説 した 文 章 な ど を 活 用 す る﹂と も 関 連 づけたも のと な っている。現 代 文 であ るだけ に学 習 者 にと っては抵 抗 読 むこと ﹂の学 習 が生 かさ れ ること と な る。 感 も なく 、これま での﹁. っている。. 。比べ読みによって、その違いに 注 節︶ 次は、その学習指導案である︵ 気づき、他者との意見交換によって自分の考えを広げることをねら.

(5)                 . 過程. 導入. 展開. まとめ. 学 習. 活 動. 前時の学習を想起し、本時の学習 場面を確認する。. 1▲. 2 本時の学習課題を確認する。. 指 導. 上 の 留 意. 点. ﹁ 三草合戦﹂ について書かれた二つの小説を読み比べ ることを 伝 え る。. ※比べ読みの読み取りの観点︵ 着眼点︶ を意識させる。. 生 じるのはなぜ か、そ の理 由 を考 えよう 。また、奇 襲 ︵ 夜 襲 ︶ のも つ意 味 について考 えよう 。. ﹁ 登場人物の行動及び心情二情景、描写﹂ など ・ 次 のよう なところに気づかせたい。. ○軍勢の数が異なる。 ○夜討ちに火を用いたことなど ・ 作者の創作意図だけでなく、﹁ 平家物語﹂の話本に 諸 説 あ ることに気づかせる。. ○腹が立 っていると思 う 。. ︿ 想定される生徒の意見﹀ 0戦に勝つためには当然。 ○被害を最小限に食い止めたかったのでは。 ○人権侵害だ。 ○戦乱の世なら仕方がない。 ○源氏から何か見返り︵ 代償︶ があったのではないか。 , 授業の評価と感想を書かせる。. 評価の観点. 分 の考 えを 書 いている。. ・ 授業内容を振り返り、自. し、自 分 の考 え を 広 げ てい る。. ・ 相手の立場や考えを尊重. ・ 課 題 の解 決 に向 け て、互い の考 え を 生 かし合 ってい る。. ・二 つの文 章 を 比べ読 みし、 その違 いに気づいている。. ◎三草合戦について書かれた二つの小説を読み比べ、それぞれの記述の違いを書き出し、このような書き方の違いが. ︻ 写真①︼. 3 記 述 の違 いを 文 章 から 抜 き 出 さ せ、班で話 し合 って発 表 す る。. 4 な ぜ 、このよ う な 違 いが 生 じ る の か、話 し合 わせ、発 表 す る。. ︻ 写真②︼. ︻ 写真③︼. 5 源 氏が 火 を つけ た︵ 奇 襲 した︶ こと について、ど う 思 う か考 え る。また、 三 草 の人 々は自 分 たち の家 に火 を 付 け ら れたことをど う 思 ったか考 え る。. 6 本 時 のまとめを す る。.

(6)                                            . ︻写真 ① ︼ 二 つの小説 の記述 の違 いを 文章 から 抜き 出し、 班 員 と 話 し合 っている。. 五 授業 の実際 ︵ 1︶ 前 時 の学 習 内 容 を 振 り 返 る. ︻写真 ② ︼. ︻写真 ⑧ M. 源 氏方 が夜 討 ちを かけたこと に対 して 賛 成 意 見を述 べている。. 行 った。声 に出 して読 むことによって次 第 に読 めるよう にな っていった。. その後、吉川英治、宮 尾登美 子の小説を声に出して読む練習を. かった。 いる・ 学習 いると あ って関 心 を − 示 出 来、 事︶ が含 aま れてし 溺 者 が多 力 ′してし. 身近な地域での な生徒もいるものの、国語の授業に歴史的な内容︵. 小 説 の描 き 方 によ ってそれぞ れ違 いが生 じる 理由 を 発表 している。. 前時は本学習の導 入として、平安末期における武士の台頭や平 氏 の栄 華 と 源 頼 朝 の挙 兵 について触 れた。社 会 科 の歴 史 学 習が苦 手. 0 2.

(7)       . 把 握 して、なぜ 三草 の地 において、合 戦 が起 こったのかを 理解 でき た。. 書かれている事柄について、学習者は登場人物や書いてある内容を. ︵2︶ 本時 の概要 三草合戦について書かれた二つの小説を読 本時 の学習課題は、﹁ み 比べ、それぞ れ の記 述 の違 いを 書 き 出 し、このよう な書 き 方 の違 い が生 じるのはなぜ か、そ の理 由 を 考 えよう 。ま た、奇 襲 ︵ 夜襲 ︶ のも つ 意 味 について考 え よう 。﹂であ る。本 時 に おいては、前 時 に声 を 出 し. て読んだ二つの小説から記述 の違いを書き出して、源平合戦の事実 がど う して異 な る描 き 方 にな るのかを考 え さ せた。. 学習者が小説を 一通り読んだあとに班を作らせ、吉川英治と宮 尾登美 子のそれぞれの記述の相違点について話し合わせた。二、三 の班 から 何 を 、ど のよう に書 いたら よいかがわ からな い、と いう 質 問 が出 たので、読 み取 り の観 点 ︵ 着 眼点︶ を意 識 さ せ、考 え さ せた。 さ ら に、二小 説 と も源 平 合 戦 と いう 同じ出 来 事 を扱 っていながら、 なぜこのよう な 描 かれ方 の違 いが生 じるのかを 発 表 さ せた。民家 も 含 め、平 氏 方 に源 氏が火 を かけ 、夜 討 ちを おこな ったことについて源. 平双方の立場から学習者が自らの考えを述べ、意 見交換がなされ た。終 末 に、自 己評 価 および感 想 を 書 かせた。 ︵3︶ 吉川、宮尾の小説 の描かれ方 の違 いを読む 本時 の学習課題を確認した後、吉川と宮尾の小説を読ませ、二 つの小説の描かれ方の違いを読み取らせ、グループで話し合わせた。 Nは描 かれ方 の違 いを 次 のよう に記 している。 学 習 者 Y・ 民家 に火 を つけ る︶ 平 ○宮 尾 本 には大 松 明がでて来 る︵ が、新 ・. 家物語では火をつけない。 平家物語では ○宮尾本では平家が寝る時に襲 っているが、新 ・. 夜 討 ちとしか書 いていない。. 平家物語では二里、宮尾本では三里。 の距離が新 ・ ○三草へ. 平 家 物 語 にはでてく ○宮 尾 本 には軍 目 付 がでてこないが、新 ・ るo この他 に、﹁ 新・ 平 家 物 語 では、平 家 方 は柵 を 守 り 固 めているが、. 見も 出 た。あ ら かじめ何 度 も 声 に出 して読 む練 習 を さ せていたこと. などの意 宮尾本では平家方は寝ている﹂﹁ 夜討ちの会議内容が違う﹂. 二 つの小 説 になぜこのよう な違 いがあ るのか。それはおそら く、吉. もあり、活発な意見が出された。. 源 川英治と宮尾登美子が三草合戦 の出来事をそれぞれ、吉川が ﹁ ど 平盛衰記﹂から、宮尾が ﹁ 平家物語﹂から採 ったと推測される。﹁. う してこのよう な 違 いがあ る のか、考 え ら れ る理 由 を 書 き 出 してみ よう ﹂と いう 発 問 に対 して、翼吉 川 や 宮 尾 が、と いう わけ ではな く︶ 書 き 手が 三 草 に行 ったことがないのではな いか。だ から 、距 離 の表 現 が 異 な るのではな いか﹂﹁ 兵 の相 違 がみら れ るのは敵 方 に寝 返 るなど して、正 確 な 数 字 が書 き 表 せな かった のではな いか﹂など の意 見が学. しているも のの、流 布 本 は長 門 本 同 様 、源 氏は 一万に対 し平 氏は三. 習者から出た。 。﹁ 平家物 注 n︶ そこで、源平の兵力については補 足説明を加えた︵ 語﹂ には諸本あり、例えば長門本だと源氏は 一万、平氏は七千と記. 千 と 記している。鎌 倉 時 代 の歴 史 書 三口 妻 鏡 ﹂によると 、源 氏 二 万に 平 家 物 語 ﹂は読 み本 系 と 語 り本 対 して、平 家 は七 千 と述 べている。﹁ 系 とがあ り、語 り本 によって琵 琶 法 師 たちが 語 り継 いでいったことを 考 え ると 、書 物 によって表 記が異 な っていても おかしくな い。しかも 、 印 刷 技 術 が 発 達 していな い当 時 に おいて、表 記 が違 っていても 不 思. 議はない。次は授業において読ませた小説である。. ー1 1 リ ム    .

(8)                                                                                             . へ 資料1﹀ 授業において読ませー沈吻識 き へ ぞぅ浮とき. ﹁ 宮尾本 平家物語 四 玄武之巻﹂ ︵ 宮尾登美 子︶ ー ーノ谷戦. の序 盤ー. 源紙勿大 手の大将軍は範頼h概頓平三景時をはじめ、多くの将 さねひら. って約 五 万騎 、摂 津 国 昆 陽 野に陣 を と る。. 大 将軍は義経、土 肥次郎* 裏坪 噛じめ、いずれも腕自慢 の. いておよそ 一万 騎 、播 磨 と 丹 波 の境 にあ る 三 草 山 の東 、 ⋮ 而 小 野原 に到 着 した。 すけもり. やみ. 大 松 明 とは、暗 闇 のいく さ の場 合 、明 かり取 りに民 家 に火 を つけ ること を いい、これだと 夜 でも 燦 々と 明 るいな かで働 け るのであ る。 義 経 軍 は小 野 原 の民家 の 一つにさ っそく 火 を かけ たところ、火 は. たちまち山にも野にも草にも木にも燃え移り、昼間に劣らぬその. 明 るさ のな かを 、三 里 の道 を 越 えて平 家 の陣 を 急 襲 した。 ひか 三 草 山 西 の口の平 家 の陣 地 では、いつも のよう にお っと りと 控 え ており、 ﹁ いく さ は 早く て明 日ぞ 。戦 う に 眠 たいのは 固く 禁 物 ゆえ 、今 夜. はよう寝 ておこう ぞ﹂ 蒙と と 互 いにいいあ い、兜 を 脱 いで枕 にし、鎧 の袖 、え び ら な ど ま で. じく 蟻縄姉腫のに軍帥畿対する∼ 好転 豚坊躯妻跡遊軍*資盛ドロ 詞 十一 あ り 千 余 騎 で山 の西 の口に陣 を 取 った。. 有盛、忠房、師盛、 侍 大将に平内 兵衛清家、海老次郎盛方、三. 平 家 を 源 氏勢 あ そこに追 いかけ 、ここに攻 めて、平 家 たち まち 軍 兵 五 百は失 ってしま った のであ る。. 義経 一万騎が襲 って来たのはその夜半。ねぼけ 眼 で逃げきめ%. 敷 いてぐ っす りと 眠 ってしま った。. 二 月 五 日 の夜 のこと 、義 経 は周 到 な 作 戦 を 練 るためにそば の者 たち を集 めて、. ﹁ さて夜討ちに村沢 礎課器財緯とも明日のいくさか﹂. 訳 将軍資盛、有盛、忠房は敵のなかをかいくぐって逃げ、播磨国 た か. 高 砂 の海 岸 に出 てここから 舟 に乗 り、屋島 へ と 渡 った。. とたずねると、田代冠者信綱が進み出て、. 忍﹁夜 の両 軍 の勢 を 比べれば 、 一万と 三 千 、はるかに我 が 軍 が多 う ござ ります る。が、︵ 夜 討 ちがよいので ︶. 義 経 の急 襲 に 遇 ったこの三 草 山 の敗 北 は、平 家 軍 にと っては思 い も かけ ぬ結 果 であ った。. ︿ 資料 ロ﹀ 授業において読ませた小説 ﹁ ー 三草落し− 新 ,平家物語﹂ ︵ 堵皿 訓謙治︶ 義経 の 一千余騎は、丹波路 の亀 岡、園部、篠 山な 姥 昼の中に 駆けぬけ、四 日の夕 方 には、南 丹波 のー も う播 磨 境 に近いー. ったから 、意 表 外 の迅 速 な そ の動 き に恐 れを な したこと も あ ったろ. それに、義経 のき 蜘猿よる源氏勢との合戦はこれがはじめてであ. 師盛は清家、逓方を召して 一ノ谷を目ざして行く。. はあ りま す まいか﹂ と 進 言 したところ、土 肥実 平 も 大 いに賛 成 、ところが 兵 たち は、 ﹁ それにしてもこの暗 さ では﹂ 。 牝 顔 を 見合 わす ぁや 闇 のな かの戦 さ では同 士 討 ち も しかね ず 、そ の危 う さ はも っと も. ゆえ、義纏跡h まつ. ﹁ いつも の大 松 明 はど う か﹂ という と 、皆 、手を 打 って、 ﹁ あ 、それがあ りました﹂. とただちに用意する。. −122.

(9)                                                        . おのばら こんだ 現十 小野原︵ 今 田対∼ 錠着いていた。. 、たず ねた。 義 経 は、左 右 の郎 党 たち へ ﹁ ー 大 江 山 から 、およそ幾 里﹂. ﹁ 二十遅埴だざいましたろう﹂ ﹁ では、二 日路 を 、 一昼夜 で来 たこと にな る。馬 も 人 も 、疲 れたろう 。 みな 休 め﹂. しかし、この間にも、休みのな麹靖動をし総帥通小隊もあった。 併映 郎 、片 岡為春などを 頭 とする物 見組であり、彼らは・ せ議ー 西方 二里ほど先の三草山の谷や高地へ 探りに入った。 して、立ち帰り、 やがて、物見組あか揃独収 きん だ ら ﹁ 三草には、少将資盛どの、小松有盛どの、その他 の公達を主将 に、およそ 兵 二 千 ほどが 、柵 を 守 り 固めているや に 見 ら れ ま す る﹂ という者 。 、諸 将 をよんで、軍 議 を ひら き、ま ず 一同 へ 、 義 経 は、す ぐ仮 の帳 へ こう たず ねた。. ﹁ 三草へ 鷹栖差 浬。械尉談か禁かゆ 朝討ちがょいか﹂いくどうおん. す ると 、土 肥実 平 、田代 冠 者 信 綱 など 、ほとんどが、異 ロ同音 に 答 え た。. やみよ. ﹁ 夜 討 ちこそ、しかるべき かと存 じます る﹂ 義 経 は、う なづいてー ﹁ さ らば 、す ぐ踏 み散 ら して、押 し通ろうぞ ﹂ と 、起 ち あが った。. 黒い気流に似た千余騎が、闇夜をさぐりながら、山の平原を進 んで行 った。 途 中 、安 田義 定 は、義 経 のそば へ来 て、さ りげ なく 、話 しかけた。 ﹁ 夜 討 ち か朝 討 ち かと の、おたず ね を 出 さ れ ま したが 、九 郎 の殿 御 自 身 には、ど う お考 えだ ったのでござ るか﹂. 義 経 は、義 定 の顔 を 、じっと 見た。 いくさめつ け この義 定 も 、兄 の頼 朝 が、軍 目 付 に付 け てよこした 人 物 であ る。 ﹁ いや 、も とより 九 郎 も 、初 めから 、夜 討 ち の所 存 であ った。け れ ど、 一義 も 二義 も 、衆 議 に出 して、皆 に、味 わせることが、軍 の古 法. 三草山の西に陣していた平家 の 一軍は、この予測為せぬ敵の出現. と申 す も の﹂ ﹁⋮ げ にも﹂ ざ ひ と 、義 定 は、膝 を 打 った。 そしてひそかに ﹁ 器 量 あ る大 将 かな ﹂と 感 じ、 たな ロ出 しはでき ぬ﹂とも 思 った。. を 見 て、ま ったく 、混 乱 に落 ち 、も ろく も 、源 氏 の馬 蹄 に蹴 散 ら さ れた。. 資 盛 、有 盛 以 下、さ んざ んな姿 を も って、加 東 郡 の山づたいに、西 へ西 へ と逃 げ 落 ち 、播 磨 の高 砂 から、船 に乗 って、 ﹁ 味 方 に会 う も 面 目な し﹂ と 、屋 島 へ渡 ってしま ったとあ る。. ︵ 4︶ 源氏が夜討ちをした こと の是非を考える 兵力の上回る源氏方が夜討ちをかけた事実を学習者に考えさせ るために、前時に学習者が源氏と平氏いずれが好きかを調べた。源. 氏が好 きが 二十 七 名 、平 氏が好 きが 四 名 、ど ちら でもないが 五名だ った。な ぜ 源 氏が 好 き な のか理 由 を 尋ね ると 、﹁ 義経︵ 牛 若 丸︶ が かっ こいいから ﹂﹁ 弁 慶 が強 く てかっこいいから ﹂と いった意 見が 出 た。 一方 、. あ り 、義 経 が悲 劇 のヒー ロー だ から であ って、おそ ら く 判 官 最 履 か. 平氏が好きと答えた学習者は清盛の偉業や存在感を理由に答えて いる。学習者の﹁ 源氏が好き﹂ という理由は源氏が最終的な勝者で. らきているのであろう。先の発問は、源氏を支持する多くの学習者. −123−.

(10)       . えさ せることを意 図 したも のであ る。. が夜討ちにより平氏を敗走させる事実をどのようにとらえるか考 ﹁ を ど う 思 いま す か﹂と いう 源 氏 による、夜 討 ち ︵ 火 を つけ たこと︶ 発 問 に ついては、源 氏 を支 持 す る学 習 者 が多 かった。このう ち 、学 習 者 M・ Kは、﹁ 戦 のあ り方 と しては常 道 だし、朝 を 待 って攻 撃 しては味. 方の損害は計り知れません。平家が油断しているときにこそ夜討ち. ﹁ 今 日新 たに知 ったこと や わ から な か ったこと 、も っと 知 りたいこ . \時 の 感想 として学 習 は次 のよう に記 している。 ・二つの小 説 から違 いを 見 つけ るのは難 しかったです 。でも 比較. ︵1︶ 授業 の感想 に表れた学習者 の記述 本節においては学習者の記述や自己評価について考察する。 と. してみ ると 違 いは多 数 あ り 、全 く 違 う と ころも あ った ので、 K・ N︶ 真 剣 に読 んでみるもんだなあと 思 いま した。︵. ・ 少 し難 しかった。歴 史 に 入 ってく ると複 雑 にな っていく から 、 嫌 だ ったけ ど 、グ ル プ のみんな でいろいろなこと を 話 してい ー A︶ るう ちにおも しろいなあと 思 った。︵ 工・. で攻 めるのが当 然 だと 思 いま す ﹂と 根 拠 を 述 べた。これに対 して、平 氏 方 の立 場 から 意 見 を 述 べるよ う 、挙 手 を 求 めたところ 、学 習 者 だいたい、夜 に攻 めてく るのは卑 怯 や と 思 いま す 。武 士 な S・ Hが、﹁. んやから正 々堂 々と攻めればいいと思います。源氏の方が兵の数が. ・ 平 家 物 語 を 読 んだこと がな かった僕 は、この授 業 で 一部 だけ 読 んでも 、と ても おも しろいな あ と 思 った。なによりも 、この N・ S︶ 続 き を 知 りたいと 思 ったことが印 象 に残 った。︵ ・二 つの物 語 の違 いがおも しろ かったです 。源 氏 は確 かに少 し. かしこい人 です ﹂ Kは ヨ 天 才 ﹄﹃秀 才 ﹄﹃ひき ょう ﹄﹂と 記 しながら も ﹁. 首をとるとなれば、味方の兵の損害も少なくない。山陽道の兄範頼 たちと合流するために時 間をかけられなかった事情もあろう。H・. 首 を とろ う と しな かったから 、このよう に書 いた のであろう 。大 将 の. ずつくずしていく源氏﹂ というのは、義経が直接平資盛や有盛らの. 聞 いていた。源 氏 の夜 討 ち に ついて ﹁ 卑 怯 であ る﹂と 意 見を 述 べたS・ Kの考 Hの考 え に賛 成 しながら も 、や むを 得 な かった のだと す るM・ えを 支 持 していた。﹁ 大 将 をと るんじゃなく 、大 将 の足もと から 少 し. 学習者H・ Kは本時の学習を通して他者の意見や考えを集中して. 大 将 を と るんじゃ ち と いう こと で、そ う いう 世 界 な のかな ー・ な く 、大 将 の足 も と から 少 しず つく ず していく 源 氏 は、や っ ひきょう ﹂かしこい人です 。︵ H・ K︶ ぱり ﹁ 天 才 ﹂﹁ 秀 才 ﹂﹁. ひきょうな部分があると思いますが、それはやっぱり作戦勝. 多 いんや し。﹂と 意 見 を 述 べた。正 攻 法 を 主 張 す るのは、学 習 者 S・ Hはこの Hが剣 道 部 員 であ ること も そ の理 由 でも あ ろう 。M・ Kと S・ あ と も 互 いの考 え を 譲 ら な かった。しかし、源 氏 の夜 討 ち を 強 調 し 作 戦 とし ていたM・Kだ ったが 、ワー クシー トには自 分 の思 いと して ﹁ ては悪 く な いと 思 う ﹂と 記 しているも のの﹁ 火 を つけ る のはち ょっと ・ こ と 書 いていた。 学 習 者 Y・ 仕 方 がな い﹂と し つつも 、﹁ 夜 討ち Aはワー クシー トに ﹁ Aは ︵ 代 わ り の策 があ ったと 思 う ﹂と 書 いた。さ ら に、Y・ 火 を かけ る︶ 作 戦 ﹂であ り ﹁ 仕 方 がな い﹂と しながら も 、地 源 氏 の立 場 に立 てば ﹁ 元 の三 草 の人 々の立 場 を 考 え ると ﹁ 少 し嫌 だ っただろう ﹂とし、﹁ 御 曹 司︵ や から って、や りす ぎ ﹂と 記 している。このよう に、三 ヒー ロー︶ 草 合 戦 と いう 事 象 を と おして 二 つの教 材 を 比 較 す ること によ って、 綾 々述 べたよう に、学 習 者 は描 かれ方 の違 いに気 づき 、さ まざ ま な. えを 述 べることができ た。. 視点から夜討ちについて検討し、根拠や理由を意識しつつ自分の考. 六 考察. 4 2.

(11)    . と、源氏方に﹁ や っぱり作戦勝ち﹂と源氏の夜討ちに 一定 の評価を 与 え ている。他 の三 名 も 、比べ読 みを と おして表 現 の違 いに気 づき 、. 交流活動をとおして意欲や関心が高まった。続きが知りたくなるほ どに興味 を 示し、読 書 へ と つながる比べ読 み の学 習 とな った。K・ Nや N・ Sの記 述 から 、ポイ ント 皿 ﹁ 古 典 に ついて解 説 した 文 章 な ど を 活 たことが 示さ れた。. 用する﹂比べ読みの学習指導が学習者の自分の考えの形成に役立っ. ︵2︶ 達成感や充実感 の表れた学習者 の自 己評価 授 業 の振 り 返 りに自 己評 価 ︵ を 行 った。 A∼ D︶ 今 日の三草 合 戦 の授 業 に意 欲 的 に取 り 組 むことができ た。 二 つの小 説 の書 き 方 の違 いに気 付 き 、思 ったこと や 考 え たこ と を、根 拠 を 挙げ て書 くことができ た。 ※ □ ・皿省 略 。 集 計 結 果 は次 のと おりであ る。1の結 果 が 示 す よう に、Aと Bを. 合わせると九十%を超える学習者が達成感や充実感を感じていた ことがわ かる。この数 字 はポイント 1 ﹁ 郷 土 に関 わ る古 典 を 見 つけ 、 そ の価 値 を 再 発 見 さ せる﹂こと の有 効 性 を 示 す こと になろう 。Wの 結 果 においては、Aは高 く ないも のの、Bも 加 え ると 九 十 % を 上 回 る。 三 草 合 戦 の場 面 を 読 むこと を 通 して、﹁ 話 す こと ・ 聞 くこと ﹂や ﹁ 書 くこと ﹂の活 動 の充 実 の証左 と みることができよう 。二 つの小説 を 比 べ読 みす ること によって、身 近な 地域 において源 平 合 戦 が行 われ、当 時 の人 々の思 いを 学 習 者 は想 像 す ることができ たといえよう 。. 七 比べ読みの指導とポイ ント の有効性 前節をふまえ、冒頭に提示したポイントや 工夫が、授業改善にお いて有 効 性 を も つも のかど う かについて考 察 す る。 ポイント 1 ﹁ 郷 土 に関 わる古 典 を 見 つけ 、そ の価 値 を 再 発 見 さ せ. る﹂については、三草 合 戦 の事 実 に着 目 さ せ、郷 土 に関 係 のあ る古 典. ︿ 自 己評価 の集計結果﹀. 名・ 名IQ名…閲名 2 ・ A 6 B 8. 名・ 名圭 名を A 1 8 1 7 o ・ B c D遼. 5 2.

(12)                                                                                                                                                                                                                                                            . 1 ・; ’ .・ * . ’ . , . ; も. t ‘ ’ ・‘ r t 掌 . t ‘ . ・ ︲ ‘. − . ︲ ・ − − −− − − − − − −. ︲ ・. , .● ︸ . ▼ ●. t ‘ − 1 − ‘ ・ . ︲ . ,.・..・. を と おして、そ の価 値 を 再 発 見 さ せると いう 形 によ ってこのポイント を押 さ え ることにした。. ・ . ︲ ・ ︲ ・. 郷 土 に関 わ る古 典 を 見 つけ 、そ の価 値 を 再 発 見 さ せ ポイント 1 ﹁ る﹂の有 効 性 に関 連 して、次 のよう な学 習 者 の記 述 が 見ら れる。 r l − . 1 ‘ ︲ , . − . − . − . − ‘ ‘ . t .・ 1 . . . ︲ . ︲ . . −. − − − − ,. ︲ ・ ︲ ・ ︲ ・ . ‘ * . ・ , 1 ・ ・ 1 .・ , , ± ▼◆ ’ ● , .‘ − ︲ . . − ① 住 んでいる所 の近くであ った出 来 事 を 授 業 です ると 興味 がそそ − − ー 一 ら れておもしろかった。. 平家物語bによる学習 ①の記述からは、教科書教材 コ扇の的欠﹁ にとどまらず、発展的な学習としておこなった三草合戦に興味がそ そられたことがうかがわれる。学習者の発達段階をふまえた古典の 指導が効果的に行われたためと考えられる。 一学期は導入として、古典に関する関心を高め、古文を理解す 平 家 物 語 ﹂が 、源 平 合 戦 と いう 歴 史 的 る基 礎 を 養 った。このと き 、﹁ 事 実 に基 づいたも のであ ると いう こと を 知 ら せた。北 播 磨 の地 と 関 平 家 物 語 ﹂の学 習 につなげ た。 係 していることを 理解 さ せて二学 期 の﹁. 教科書の教材に登場する源氏の武者那須与 一が扇の的を射抜く、. ﹁ 扇 の的 ﹂の二週 間 前 に 三 草 合 戦 が行 わ れ たこと に興 味 を も った か らこそ、① のよう な 記 述 が 見ら れた のであ る。. − ② 一つの事 実 に 二 つの書 き 方 。比較 して読 んでいく のは楽 しかった 暢 “ です。鎌倉時代や平家、源氏にはあまり興味が無く、有名ど M M ころしか知 らな かった ので、歴 史 と しても 面 白 かったです 。. ②の記述からは、これまで古典や歴史にさほど興味や関心がな かった学習者が、三草合戦の学習を通して郷土の古典 の価値に気づ き 、再 発 見でき たことが う かがわれ る。合 戦 においては 人命 を 奪 う ことは避 け て通 ること はでき な い。戦 場 は非 情 であ る。戦 乱 時 は非. は正当化される。学習者とは異なる こでは夜襲など︶ 倫理的行為◇﹂ ものの見方や考え方、戦のあり方や有職故実など、生活様式など の異文化に対する理解が培われたということができよう。古典を学. 習 す ること において、郷 土 に関 わ る古 典 を 扱 う ことは、古 典 の良 さ. 高 ま ること につなが っていく に違 いない。. や面白さに気づかせ、我が国の文化や伝統に対する興味や関心が. 平安末期に加東市 三草で行われた源平の合戦について、小説、古 漢文︶ の現代文、古文、漢文といった異なる表現を教材と 文、漢詩︵ して活用し、多くの文章を扱うために、年間指導計画の中にこれら の教材を位置づけて学習指導を展開した。ポイントの有効性につい の時代 北播磨︶ て、兵庫教育大学附属学校園の位置する、加東市︵ 文 的 景と関連付ける古典の指導を中学 二年生に対して行 的・ 化 背 った。本論においては、古典 ﹁ について書かれた二つの小説 平家物語﹂ の比べ読みから作品の描かれ方に着 日させ、その違いを読む現代文 の学習指導について論じた。現代文の指導について、吉川英治、宮尾. 古 典 につい 登美 子 の小 説 を 教 材 と して活 用 した。これはポイント m ﹁. て解 説 した 文 章 な ど を 活 用 す る﹂を 意 識 したも のであ った 。前 述 ﹁ 六 ﹂の﹁ 考察 ︵ 学 習 者 の記 述 や 自 己評 価 ︶ ﹂の結 果 からも 、ポイント ・ ﹁ 郷 土 に 関 わ る古 典 を 見 つけ 、そ の価 値 を 再 発 見 さ せ る﹂及びポイ ント 皿 ﹁ 古 典 に ついて解 説 した文 章 など を 活 用 す る﹂は、古 典 の授 業. 今 回 、現 代 文 の学 習 の比べ読 みを と おしてポイ ント の有 効 性 を 確. 改善を実現するために有効であることが確認できた。. の学 習 指 導 に ついてもポイントの有 効 性 を 確 認したい。. 認した。今後は地 元の郷土史家が三草合戦をテーマにした漢詩文. へ注 ﹀. 1 ﹁ 国語論集﹂魁、北海道教育大学釧路校 国語科教育研究室、 二〇 一七年 北播磨 の時代 2 古典教材を扱 った古典 の学習指導については、﹁ 8巻六六六 第5 解釈﹂ 的・ 文化的背景と関連付ける古典の指導欠﹁. 6 2.

(13)                 . において、提示したそれぞれのポ 集、解釈学会、十七ー 二十九頁︶ イント の有 効 性 を 詳 述 している。 3 ﹃社 町史 ﹄第 一巻 、本 編 1、ぎ ょう せい、二〇 〇 七 年 、二 百 二十 五ー 二 百 四 十 頁. 義経 ・ 弁慶伝説については、寺社による創作伝説と民衆による ロ承伝 説 の二 つに分 け ら れ る。口承 伝 説 に ついては、地 名 の由 来 を はじめと す る多 く の口承伝 説 が残 っている。. 4 平成 二十年版中学校学習指導要領解説 国語編 の、第 三学 年 、﹁V 読むこと﹂ の⑭内容 の②言語活動例 ﹁ ア 物語や小説. るo. ﹁ 六 造 じいさ んとガン﹂ ① 同 一作 品 の二 つのテキストを 比較 す ることによって、構 成 、表 現 、 挿 し絵 な ど の違 いに気 づき 、自 分 な ら ど ち ら が よいかに ついて自 分 の考 えを 持 つことができ る。② 自 分 の考 え に説 得 力 を持 たせる ために、根 拠 と 理 由 を 明 示して発 表 す ることができ る。. ﹁ ごんぎ つね﹂ ① テキストを 比べて読 むこと によ って、構 成 や 表 現 の違 いに気 づく ことができ る。② それ を ふま え て本 文 を 批 評 す ることができ る。 した。. 9 吉川英治および宮尾登美子の小説については、次の資料を参照. ﹃ 新・ 平家物語﹄四、講談社、一九六七年 ﹃宮尾本 平家物語﹄四 玄武之巻、朝 日新聞社、二〇〇六年. な ど を 読 んで批 評 す る 言 語 活 動 ﹂に、﹁ 例 え ば 、同じ作 者 による 複 数 の作 品 や 、類 似 した テー マの作 品 を 読 み 比べること などが考 え られ る﹂と あ る。. 平成 二十年版小学校学習指導要領 国語編の第 五学年及び. 資 料 1の︵ ︶ には、︵ 翌 日にな れば 平 家 方 に援 軍 が 到 着 す るよ う だ から︶ 夜 討 ちがよい、と いう 文 脈 にな る。空 欄 にした のは、学 習 者 に源 平 双方 の思 惑 について考 え さ せたかったから であ る。. 二百十 五頁. ︵ みやうちゆきと/鹿児島市立南中学校︶. 諸 本 により かなり の異 同があ る。 注 3に同じ. m 兵庫教育大学附属中学校 の研究発表会︵ 二〇〇八年十月十 七日︶ の 一般授業である。対象は第 二学年 一組 三十七名︵ 男子 十五名 女子二十二名︶ 1 1 源平の兵力数 および三草合戦直前 の源氏軍の動きについては. 第 六 学 年 、﹁ C読 むこと ﹂の︵ 2︶ 内 容 ① 指 導 事 項 には、﹁ 力 目的 に応 じて、複 数 の本 や 文 章 な どを 選んで比べて読 むこと ﹂と あ る。 5 府 川 源 一郎 ﹁ 比べて読 むこと ・ 重 ねて読 むこと ﹂﹁ 月 刊 国 語教 育. 8 鶴 田は前 掲 書 において、﹁ スイミー ; 大 造 じいさ んとガン﹂コ﹂ ん. 研究﹂九月号、日本国語教育学会編、二〇〇六年、ニー三頁 、明治図 6 鶴 田清司﹃対話 ・ 批評 ・ 活用の力を育てる国語の授業﹄ 書、二〇 一〇年、百四十二頁 7 前掲書、百十六頁. ぎ つね﹂の比べ読みの授業を取り上げ、それぞれの授業 目標を次. ﹁ スイミ、 ー. ﹂. のよう に設定 している。 ① 同 一作 品 の二 つのテキストを 比 較 ︵ 対 比︶ す ること によ って、そ の 構 成 や 表 現 の違 いに気 づく こと ができ る。② 二 つのテキスト の特 徴 を ふまえ て、自 分 ならどち らがよいかについて考 え ることができ. ー. 7 2 ー.

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参照

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