平成
27年
度
学位論文
新任期 における教員 の職務満足感 におよぼす
学校組織特性 の研究
兵庫教育大学大学院
学校教育研 究科
人間発 達教育専攻
学校 心理・ 発 達健康教育 コース
M14039E
市り│1 淳美
次 第1章 第2章 第3章 第
4章
引用文献 資料 問題 と 目的・・ 。・・・ ・・・・・・ ・ 。・ ◆・ 。・000001
尺度 の作成・・0000・
・ ・・ 。・・ 。・ 。・・・・ ・・ ・09
1.
目的 ・・ ・・・・・ ・ 00・ ・ ・・・・・・・000・
・92.方
法 ・ e。 ..● ●●●●・ 0・ ・・ ●●●●●・・ ・09
(1)調
査 時期 と調 査協 力者 。・ 。・・・ 。・・・・000・
9(2)調
査 手続 き ・・・・ ・・ 00・ ・ ・・・・・ 00・ 。・9(3)調
査 内容 。・・・・・ 。・・・ ・・ 。・・・ ・・・ 。・93.結
果 と考察 ・・・ ・・ ・・・・ 00・ ・ ・000・
・ ・・10 本調 査・・・ ・・・・・・・・・・ ・ ・・00000・
・ ・0014
1.
目 “ , 0 0 0 ・・・・・ 。・ 0 0 ・・・ 0 0 ・・ 。・・・014
2.方
法 ・・・000・
・・・ ・0000。
・・・・ 00・ 014(1)調
査 時期 と調査協 力者・・ 0・ ・・・ 。・・ ● ●● ●●14(2)調
査 手続 き・・・・・0000・
・・・・ ・・・ ・・ 014(3)調
査 内容 ・・・・・ ・・ ・・・ 0・ ・・・・・ ・・ ・143.結
果 と考察 ・・・ ・000・
00・ ・・ ・・ ・・・・ 。・15(1)各
尺度 の因子分析 ・・ 0。 ・・・・ 。・・ 00・ ・ 。・15 ① 相補性・情報冗長性尺度の因子分析(Table 3)・ ◆・ e15 ② 協働性0個別裁量性尺度の因子分析(Table4)・ 。・・17 ③ 職務満足感尺度の因子分析 KTable→ ・・・・・・018
② 学校種及び教職経験年数による差異 ・・・ 00。 ・・・20 ① 学校組織特性 KTable 6,Tableつ ・・0。 ・・000・
20 ② 職務満足感(Table D
・000・
・・・ 00・00e22
(3)学
校組織特性が職務満足感に及ぼす影響 ・ 00。 ・・・22 総合考察 ・・・・・ 。0000・
・・・・・・・・・・・・・28第1章 問題 と 目的 精神 疾 患 で休職 や 退職 に追 い込 まれ る教員 は後 を絶 た ない。文 部 科 学省 の調 査 に よる と,平成
24年
度 に病気 で休職 した教員 は8341人
でそ の約59%に
あた る4960人
は精神 疾 患 に よ り休職 してい る。 そ の数 は総在職者数 の 0.54%にあ た り,平成15年
度 と比べ る と約 1.5培に増加 してい る (文部科学省,2013)。 平 成21年度 の5468人を ピー クに減少傾 向にはあ るが,依然 と して高水 準 で あ る。 精神 を患 うよ うな負 担 を教員 に もた らす学校 現場 とは,どの よ うな状況 なのだ ろ っか。 澤本 (2011)は各校種 にわた る研究主任 クラスの教員約 50名 に質問紙調査 を 行 い,現代の教員が抱 える困難 として,①学習意欲 と,学習の必然性 について問題 を持つ児童生徒への対応 の困難′②個人差の二極化や多様なニーズヘの対応の困 難,③学校への期待 と要求の過剰に対応 しされない悩み,④教員の多忙化,の4点
を見出した。 ここか らは,学校現場における困難な問題は多岐にわた ることが分 かる。ベネ ッセ教育研究開発セ ンター(2009)の
調査では,現在の児童生徒,特 に中高校生の半数以上は,勉強の仕方がわか らなかつた り,勉強 しよ うとい う気 持 ちがわかなかつた り,勉強 を必要 と考えなかつた りす る子 どもが多 くなつてき た とい う。市川(2003)は
「一昔前に比べれば子 どもたちに供給 され る享楽的 な娯楽(TV番
組,TVゲ
ーム,携帯電話,イ ンターネ ッ ト等)は
あふれ るほどだ」 と嘆き,「現在の教育をめぐる最大の課題 と言つてよいのではないだろ うか」 と 警鐘を鳴 らしている。その一方で,平成23年
度か ら全面実施 となった新学習指 導要領 の改訂 に先立つ中央教育審議会答 申 (文部科学省,2008)では 「学習意 欲の向上や学習習慣の確立」が重要ポイ ン トとなつてお り,教員は明 らかに学習意欲 の低下 している児童生徒に対 しても,意欲 を掻 き立てなが ら教科指導を行つ ていかな くてはな らない とい う課題 を抱えている。生徒指導上の問題 も依然 と して大きく,平成
22年
度の学校にお けるい じめ認知件数は小・ 中・ 高・特別支 援学校のすべてにおいて前年度 よ りも増加 している (文部科学省,2011)。 また 不登校児童生徒数は,小 。中学校では前年度 よりも減少 したが高校では増加 して お り,暴力行為の発生件数 も全体では前年度 と比較すればわずかに減少 している ものの対教員暴力は前年度 よ りも増加 している (丈部科学省,2011)。 対教員暴 力,生徒間暴力,授業妨害 を理 由 とした出席停止の措置件数 も前年度 よ りも増加 してお り (文部科学省,2011),授 業中に問題行動 を起 こす児童生徒への対応 に 教員は毎 日苦慮 していることが窺われ る。そ してそれに伴 う保護者への対応の 難 しさもまた,教員 を悩ます困難な課題 となつていると言 えよ う。 このような学 校 の現状において,現在の教員は授業や授業以外の事務的な仕事の増大に加 えて, 問題行動を起 こす児童生徒の生徒指導や保護者対応 といつた 日々困難 な問題 に 向き合い,心身を消耗 し続 けている結果 としてメンタルヘルスの不調 を抱 えてい ると考えられる。 さらに新井(2014)は
,教員 のメ ンタルヘル スの不調の原 因 は,①絶 えず個 (児童生徒一人一人)と
集団 (学級)と
のバ ランスを取 りなが ら,子どもの変化 や保護者の要求を敏感 にキャッチす ることが求め られ る,②担任 と生徒,担任 と 保護者の関係は少な くとも一年間は持続 され る,③教員の仕事 自体に内在する問 題 がある,④カ ウンセ ラーや医師,看護師 といった他の対人専門職 と違 つて持続 的な集団への対応 を迫 られる点で困難度がいつそ う高い,と いつた “教員"と
い う職種そのものにもあることを指摘 している。教職 とい う職種の特徴がその従 事者である教員の心身に影響 を及 ぼ してい るとい う指摘 は,佐藤(1994)に
よつてもなされている。佐藤
(1994)は
教職の特徴 として 「再帰性」「不確実性」 「無境界性」を挙げている。「再帰性」 とは教員が実践を通 して再帰的に教員 文化 を再生することである。実践に行 き詰まつた教員の子 ども・家庭 0社会に 対す る批判は結局は 自分の責任問題 に返つて くる。その結果,教室を批判か ら逃 れ るシェル ターに して しまい,教員 の仕事 をさらに孤独 なもの として しま う。 「不確実性」 とは教育実践において確実なものがない とい う状態のことである。 ある学校では効果的であつた実践が別 の学校では有効でないか もしれない。教 員の実践を評価 できる安定 した基準はない。だか ら安定を求めて権威や権カヘ の追従や授業の形式主義,マニュアル主義 となつてい く。「無境界性」 とは教員 の仕事が無制限に広がることである。子 どもの指導は家庭や地域の問題まで入 り込まなければな らないことがよくある。それが,職域 と責任 の無制限な拡大 と な り疲労 とス トレスの蓄積の背景になるのである。 上記のような教職のもつ特徴は,教員である以上は誰 もが経験するものであ り, 新任期における教員 も例外ではない。新任期における教員にとっては,授業 も生 徒指導 も保護者 との対応 も,また事務的な業務 も全て新 しい経験である。 しかも, 教員になったその 日か らベテラン教員 と肩 を並べて仕事を しなければな らない。 学級担任 となつたならば,担任する児童生徒に対する責任 もベテラン教員 と同 じ であ り,新任期 にお ける教員 の負担 は さらに大 きいはず で ある。文部科学省 (2012)に よると,平成23年
度の新規採用教員の うち採用1年
目 (条件附採用 期間)を
終えない うちに依願退職を した教員は299人
であつた。新規採用教員 全体か らみればこの人数は約 1.1%にす ぎない。 この うち病気を理 由とした者 は 118人であつたが,その うちの精神疾患が103人
(約87%)で
あつた。先述 したように,病気 を理 由として休職 してい る教員の うち精神疾患による休職者の割 合 が約
59%で
あ るの と比較 して,採用1年
目の教員 にお い て は約87%と
い う 割 合 は,いか に新任 期 にお ける教員 の ス トレスが高い か を如 実 に示 してい るで あ ろ う。 これ に関連 して,中村・ 松 永・ 原 田・ 三 浦・ 石 井(2014)は
「教 員 の メ ンタルヘル ス 中で も新任期 にお け る離職 問題 や メンタルヘル ス危機 へ の対応 」 が急務 で あ る こ とを指 摘 してい る。 この よ うに新任 期 にお ける教員 の メ ンタルヘ ル ス に対す る関心 が高 ま る中で, 特 に採用1年
目の教員 の リア リテ ィ・ シ ョックに焦点 を当てた研 究 が始 め られ てい る。 リア リテ ィ 。シ ョック とは,「 自分 の期待や夢 と組織 で の仕事や組 織ヘ の所 属 の実 際 との ギ ャ ップ に初 めて 出会 うこ とか ら生 じるシ ョック」 で あ り (Schein,1978;RonzenhoLz,1989),初 めて仕 事 に就 いた者 の多 くが経験す る こ とで あ る。 初 めて の仕 事 の 中では,誰で も とま どった り後悔 した りしなが らも現 状 を打 開 しよ うと,一生懸命 にが ん ば るだ ろ う。 しか し,その 中 には精神 的 に追 い込 まれ,病ん でい く者 もい るので あ る。原 田・ 中村 (2008)が実施 した採 用 1 年 目の教員 を対象 と した調 査 で は,就職前後 で教職 に対す るイ メー ジが変化 した 者 は調査対象者 の約60%で
あつた。 そ の うち,イ メー ジが ポ ジテ ィブか らネ ガ テ ィブ に変 わ つた者 は そ うで はなか った者 よ りもス トレス を感 じや す く,職務満 足感 も低 か つた こ とか ら,採用1年
目の教員 に も リア リテ ィ0シ ョックが起 きて い る こ とを指 摘 した。 さ らに原 田・ 中村・ 松 永(2009)や
原 田・ 松 永 。中村 (2008)は採用1年
目の教員 に対す る ソー シャル・ サ ポー トが リア リテ ィ・ シ ョックを予 防す る可能性 を示 した。 この結 果 を受 けて,中村 ら(2014)は
ソー シャル・ サ ポー トを得 るた めの援助 要請行 動 につ いて検討 を行 い,同僚お よび上 司か らの情緒 的サ ポー トとサ ポー ト受領 に対 す る肯 定的態度 が援助 要請 行 動 に 有意 な影響 を与 えて い る こ とを明 らか に した。 一 方,原田 ら(2009)は
,採用 1年 目の教員の リア リテ ィ 0シ ョックが構成 され る過程に介入 し,仕事の量的負担 を緩和 した り,職場の人間関係 を良好にした りして職務満足感 を高めることの必 要性 も指摘 している。 しか しなが ら,学校 とい う職場において仕事量や人間関係 を調整す ることは個 人の努力だけではなく,職場全体 としての対応 も考えるべきことではないだろう か。また既に述べたように,教員のス トレスや心身の不調の原因が教職そのもの にあるならば,個々の教員の力でそれに対応することには限界があるであろ う。 また,新井
(2014)に
よれ ば,「子 どもとの人間関係」「保護者 との人間関係」 「教師間の人間関係」 とい う二つの人間関係 に取 り囲まれた教員 とい う仕事で は,子どもや保護者 との人間関係が悪化 した場合にはお互いにとつて大きなス ト レスを引き起 こす ことになるとい う。 しか し,も し子 どもや保護者 との人間関係 が こ じれて も,教員 間の人間関係 が良好で,協力 して問題 を解決 していこ うとい う支 え合 う雰囲気 と体制が整っていれば,教員は困難な状況にあって もそれに立 ち向か うことができることが示唆 されている (新井,2014)。 つま り,近年の学校 が抱 える困難な状況に対 しては,個々の教員がそれぞれに関わるのではな く,教 員集 団,学校 とい う組織で関わることが必要であると言えよ う。 さらに,近年の 学校教員構成においては平均年齢の低下が認 められ,特に小学校では30歳
か ら50歳
未満の比率の減少 と30歳未満お よび50歳以上の比率の上昇が顕著である (文部科学省,2014)。50歳
以上の教員が定年退職 を迎 えても,その次の世代が 少 ないことを考えると,今後 しば らくは30歳
未満の若手教員の比率増加が続 く ことが予測 され る。 これは年 々増カロす る若手教員 をサポー トす る,いわゆる中 堅・ ベテラン教員は少ない とい う構造が生 じることを意味 してい よ う。そ うで あるにも関わ らず,学校が直面す る困難な現状に対 して,佐藤(2012)は
,「各学校はそのような問題 に,職員会議や業務量を増加 させ ることで対応 しよ うと試み ているため,現在の教員は,これまで以上の多忙 さを感 じるよ うになつている」 と指摘 し,澤本
(2011)は
「深刻な問題があるにも関わ らず,教員 たちは抜本的 な対応策を持たないまま,個々人の能力 と努力や,個々の学校の対応で問題 を解 決す るように方向付けられている」 と警告 している。そこで本研究では,新任期 における教員のメンタルヘルスに焦点をあて,彼らの心身の不調を引き起 こす原 因にもなるよ うな学校 の課題 に対応 しうる学校組織 について検討 を進めるもの とする。 学校組織においては,教員の主な職務である授業や学級経営は個々の教員が担 当す る教室で行 われ るものであ り,各教員の独 自性 と自律性が尊重 され,保障 さ れている(淵上,1990。 また学年や校務分掌は年度 ごとに新 しく再編 され る。 こ のような特徴 をもつ学校組織は 「疎結合組織」 と呼ばれ,官僚性組織 とは異なる 組織の特性 をもつCWeick,1970。 「疎結合組織」の最大のメ リッ トは,臨機応変 な対応 を可能にす るとい うことにあるCWeick,198D。 それは教員の個性 に富ん だ授業や学級経営を生み出し,学級内の問題にも個々の教員による即時的な対応 を可能に して,組織全体に及 ぼす影響 を最小限に抑 えることができる。一方,個 別裁量性が大きい 「疎結合組織」では,組織の中での 目標の共有が難 しく機能性 が乏 しくなることがあるとい う(Cohen,1983)。 また個別裁量性 の重視 は 「調 整・ 協働や規制・統制の困難 さ」KWeick,1970,や 「個々の教師が直面 した問題 へ の相互不干渉」(油布,1990)と い つた事態 も生 じやす くす る(秋光・ 岡 田,2010。 学校組織 における個別裁量性は,対応す る問題が教員の経験や能力や 知識の範囲内であればメ リッ トとなるが,それを超えるような問題が生 じた時に は教員の孤立 と問題の深刻化を招 く危険性 を含んでいるのである(佐古,2000。このような学校組織のあ り方に対 して,近年では学校 における 「協働性」に注 目 が集まつている。従来の研究が指摘する,学校組織に関す る
4つ
の特徴 「個業性」 「統制性」「同調性」「協働性」(佐古,2006;淵
上・ 小早川 0下津・ 棚上・ 西 山,2004)の うち,教員の職務満足感や メンタルヘルスに対 しては,「協働性」が 強 く関連 していることが,多くの研究によって報告 されているのである (例えば, 佐古(2000や森(2000)等)。 「協働性」 とは,問題 に対す る対応 を個別の教員の裁 量 に委ねるだけでな く,それ ぞれが裁量性 をもつ教員が活発な相互作用 を行 うこ とを通 して,問題 を共有 し対応するような組織状況である (秋光・ 岡 田,2010)。 また油布 (1999)は 2つの異なる学校の職員室に対する参与観察の結果か ら,教 員が 日々の職務にや りがいを持ち,仕事の手応 えを十分に確かめ られ る「協働」 を教員集団内に形成するためには,「相補性」 と「情報冗長性」が教員集団内に 認 め られ ることが重要である と指摘 している。油布(1999)に
よると,「相補 性」 とは「参加者の平等の努力や複雑な課業環境に直面 した人間の認知的限界 についての平等の謙虚 さ」を意味す る人間関係 を示す概念である。相補的な人 間関係 がある職場では,職制を超 えて持 ちつ持たれつ,対等な立場で協力を行 う ことができるとい う。 また 「情報冗長性」 とは「個 と個の間で相互に余剰 の情 報 を共有す る」 ことを意味す る概念であるとされ,情報冗長性 を備 えた組織では 一見 「無駄」 と思える余剰の情報が組織の中に共有 され る。油布(1999)は
こ の 「相補性」 と「情報冗長性」を具備 した「協働性」のある組織は,職制に関係 な く対等であることか ら多様なあ り方が肯定 され,さ らに余剰の情報をお互いに 持つ ことで,組織の中に「不断の活性化」が生まれ ることが期待できるとしてい る。先に述べたよ うに,学校組織が疎結合組織であるとい うことは 自明であ り, そのような組織に備わつた個別裁量性にも望ま しい点は多い。 しか しなが ら,個別裁量性 の良さが発揮 され るのは個々の教員がある程度の能力をもつている場 合 であろ う。逆に,経験が少 ない新任期における教員 にとつては,自 身の能力に 頼 る職務遂行は心身共に消耗することが危倶 され よ う。職制 を感 じさせない対 等な立場でそれぞれの能力に応 じた協力ができ (相補性),自 由な雰囲気の中で 職務だけではない会話 を通 した情報の共有がなされている (情報冗長性
)よ
う な学校組織は,特に新任期における教員の職務満足感 を高めるためにより効果的 なものにならないだろ う力、 新規採用 され一生懸命に良い教員になろ うと頑張 りなが らも,教科指導や生徒 指導,保護者 との対応等の職務 に光が見いだせず,忙 しさに神経 をす り減 らし,精 神的にも身体的にも疲れ,挫折 してい く新任期 における教員がいる。そのような 新任期における教員の一助 となるよ うに,本研究では新任期における教員の職務 満足感 を高めるために効果のあるもの として学校組織における 「情報冗長性」 と「相補性」に焦点を当てて明 らかに してい く。第
2章
尺度の作成 1.目 的 学校組 織 にお け る 「協働 性 」 の基盤 とな り うる 「相補性 」 と 「情 報 冗長性 」 は,油布(1999)が
参与観 察 か ら定義 され た もので あ り,その測 定尺度 は作成 さ れ てい ない。 そ こで まず,「相補 性 」 と 「情報 冗長 性 」 を測 定 す るた め に,新し い尺度 を作成す る。 2.方法 (1)調査 時期及 び調 査協力者2015年
1月 に小 学校 教員 4名(男性 2名,女性 2名),女性養護 教諭 3名(高等 学 校 勤務 1名,中学校 勤務 1名,小学校 勤務 1名)に面接調 査へ の協力 を依頼 した。 調査 協力者 の教 職経験 は,10年未 満 が 3名,10年以上 が 2名,20年以 上 が 2名で あ つた。 (2)調査 手続 き 小 グル ー プに よ り半構 造化 面接 を実施 した。 調査 協力者 には事 前 に,面接 内容 は,録音 して記録 され るが,面接者 以外 が これ を聞 くこ とは な く,希望す る場合 は 録 音 を行 わ ない こ と,面接 の 内容 は後 に論 文 の 内容 に含 まれ る可 能性 が あ るが, そ の場合 は個 人 が特 定 され る よ うな形 で掲載 され るよ うな こ とは ない こ と,面接 中,答えた くない よ うな質 問 には答 えな くて よい こ と,希望 す る場 合 は,いつ で も 面接 を中止 で きるこ とを伝 えて,同意 を得 た。 (3)調査 内容協力者に対 して,学校内や教員同士における「職場内での地位や職種を超 えた 対等の立場での協力 (相補性)」 や 「一見無駄のよ うに思える教員間の情報交 換 (冗長性)」 とは,具体的には どのよ うな内容か,また どのよ うな場面でお こな われ るか等について,自 由に意見を求めた。 さらに,気軽 に話せ る職場や対等の 立場で協力できる職場は,教員相互の関係に どのような効果があるかについても 質問 した。 3.結果 と考察 まず初めに,録音 した面接の内容 について逐語録 を作成 し,地位や職種 を超 え て気軽に協力できた り,教員同士が悩みや問題 を気軽に話せた りす る職場の雰囲 気や効果に関連 していると考えられ る語 りを抽出 した。抽出 された語 りの中で 内容が類似 していると思われ るものをま とめた結果,89項 目が作成 された。次 に教員養成系大学院で学校心理学を専攻する現職教員
4名
と心理学を専門 とす る大学教員 1名 によつて,作成 された89項
目を油布(1999)に
よる「相補性」 と「情報冗長性」の定義に照 らし合わせて,それ らを具体的に表 している内容 と 考えられる項 目を抽出 した。その結果,「相補性」に関わる26項
目と「情報冗 長性」に関わる35項
目が抽出された。そこで次に,これ らの「相補性」 と「情 報冗長性」に関わる項 目のそれぞれについて吟味 し,その内容 を検討 した。 「相補性」に関わる項 目として抽出された項 目はすべて,職員同士の協力やサ ポー ト関係 といつた『 相互の補い合い』を意味する内容であつた。また補い合 うものは『 能力やスキル』『 時間や手間』『 情報』 とい う3つ
のカテゴリーに分 類す ることができた。 さらに,学校内において 「相互の補い合い」が生 じる,あ るいは必要 となるであろ う場面を「授業」「学級経営」「学校行事」「保護者対 応」 と考え,先の3カ テゴリー と面接か ら抽出された語 りに基づいて,項 目を整理した。その結果,『能力やスキルの補い合い』の測定項 目は 「私の職場では,授 業 などでお互いの良い と思 うや り方 を伝 え合 える」「私の職場では,それぞれ の 持 ち味が役に立っている」 とい う
2項
目に集約 された。また『 時間や手間の補 い合い』の測定項 目には 「私の職場では,行事な どでは役割 を越 えて協力 し合え る」「私の職場では,忙しそ うにしている人がいると誰かが手伝いを申 し出てい る」「私の職場では,緊急の用事ができた人がいると事情を察 してサポー トして くれ る」 とい う3項
目が採用 された。そ して『 情報の補い合い』の測定項 目は 「私の職場では,学年や クラスに関わ らず,どの子 どもも注意できる」「私の職場 では,学年や クラスに関わらず,子どもの情報を担任に伝えてい る」 とい う2項目 になつた。 これ らの項 目に加 えて,既存の尺度項 目に 「相補性」の定義 と合致す る項 目がないかを検討 した結果,秋光・ 岡田(2010の 教育相談活動項 目か ら「教 員 間に,悩みを抱 える生徒の早期発見につながる話 し合いの場がある」 とい う 項 目を選出した。 これ らの手続 きにより,「相補性」の測定尺度案8項
目を作成 したKTable l)。 Table l 相補性の測定尺度の項 目案 能 力 ・ ス キ ル 私の職場では,授業な どでお互いの良い と思 うや り方を伝 え合 える 私の職場では,それぞれの持ち味が役に立っている 時 間 ・ 手 間 私の職場では,行事な どでは役割を超えて協力 し合える 私の職場では,忙しそ うに している人がいると誰かが手伝いを申し出ている 私の職場では,緊急の用事ができた人がいると事情を察 してサポー トして くれる 情 報 私の職場では,学年や クラスに関わ らず,どの子 どもも注意できる 私の職場では,学年や クラスに関わ らず,子どもの情報を担任に伝 えている 私の職場では,課題のある子 どもの早期発見につながるよ うな話 し合いの場がある「情報冗長性」に関わる項 目として抽出された項 目はすべて,組織で共有 して お くと役に立つ といった『 情報の共有』を意味す る内容であつた。また共有す るものは『 職務に関すること』『 プライベー トに関す ること』βい情に関す るこ と』 とい う
3つ
のカテゴリーに分類す ることができた。 さらに,学校内において 「情報の共有」が生 じる,あ るいは必要 となるであろ う場面 を 「学級経営」「生 徒指導」「職員室」 と考え,先の3カ
テゴリー と面接か ら抽 出された語 りに基づ いて,項 目を整理 した。その結果,『職務 に関す ること』 の測定項 目は 「私の職 場 では,子 どもの様子で気づいたことを学年に関係 なく気軽に話 している」「私 の職場では,どの子 どもが どの学年 (ク ラス 。部活)な
のかを知 っている」「私 の職場では,それぞれの学年の様子 を職員みんなが知つている」「私の職場では, 子 どもの情報は会議以外の場でも入つて くる」 とい う4項
目に集約 された。ま た『 プライベー トに関すること』の測定項 目には「私の職場では,家族の話をし ている」「私の職場では,日常の世間話のようなくだけた話 を している」「私の職 場では,趣味の話 をしている」「私の職場では,職務に不必要な話 はできるだけし ない」 とい う4項
目が採用 された。そ して『 心情に関す ること』の測定項 目は 「私の職場では,自分 の教育に対す る思いを話 している」「私の職場では,その 日 あつたちょつとしたできごとを気軽に話 している」 とい う2項
目になった。 こ れ らの手続きにより,「情報冗長性」の測定尺度案10項
目を作成 したCTable"。Table 2 情報冗長性の測定え度の項 目案 職 務 私 の職 場 では,子 どもの様 子 で気 づ いた こ とを学年 に関係 な く気軽 に話 してい る 私 の職 場 では,どの子 どもが どの学年 (ク ラス・ 部活
)な
のか を知 ってい る 私 の職場 では,それ ぞれ の学年 の様子 を職 員 み ん なが知 つてい る 私 の職場 では,子どもの情報 は会議 以外 の場 で も入 つて くる プ ラ イ ベ ー ト 私 の職場 で は,家族 の話 を してい る 私 の職場 では,日常 の世 間話 (例えば,Ⅳ ニ ュー スや スポー ツの話)の
よ うな くだ けた話 を してい る 私 の職場 では,趣味 の話 を してい る 私 の職場 では,職務 に不必要 な話 はで き るだ け しない 心 情 私 の職 場 では,自分 の教 育 に対す る思 い を話 してい る 私 の職 場 で は,その 日あ つた ち よつ と したで き ご と (例えば,子 どものお も しろい 発言)を
気軽 に話 してい る 13第
3章
本調査 1.目 的 学校 組織 特性 が,教員,特に新任 期 にお け る教 員 の職 務 満 足感 に及 ぼす影 響 に つ い て,また,職務満 足感 に及 ぼす影 響 が,学校 種 と教職 経 験 年 数 に よ りどの よ う な差異 が あ るのか を明 らかにす る。 2.方法 (1)調査 時期及 び調 査 協力者 調査協力者 は2015年
10月 か ら11月上旬 に A tt B郡内の公 立小 中学校 15 校 に在籍す る非 常勤講 師,常勤講 師,教諭240名
で あ り,211名か ら回答 を得 た。 そ の うち有効 回答 は209名
で あつた。(回収率 87.9%,有効 回答率 99.0%)。 有 効 回答者 の性別 は男性93名
(44.5%),女性 116名 (55。5%)で
あ つた。校 種 は小学校 勤務 118名 (56.5%),中学校 勤務91名
(43.5%)で
あ つた。 教職 経 験年数 は,1∼3年
が 22名 (10。5%),4∼■0年
が 42′鴇 (20.1%),11∼20年
が 28 名(13.4%),21年
以上 が 117名(56.0%)で
あつた。職 種 は非常勤講 師 11名 (5。3%),常
勤講 師22名 (10.5%),教諭 176名 (84。2%)で
あつた。 (2)調査 手続 き 調査 に先 立 ち,教育長及 び小 中学校校 長 会 の了承 を得 た うえで,調査 用紙 を各 学校 に配布 した。 調 査 は研 究者 が作成 した手 引 きに沿 つて実施 され た。 回答 は 無記名 で あ り,回答 後 の調 査 用紙 は,協力者 自身 が封 を した状 態 で学校 ご とに回 収 した。 (D調査内容質問紙ではフェイスシー トで性別 と校種 と教職経験年数 と職種 を尋ねた後,調 査対象者の勤務す る学校の組織特性および 自身の職務満足感 について,勤務校の 実態に当てはまる程度を 「そ う思 う」か ら「そ う思わない」までの
4段
階で回 答 を求めた。 学校組織特性 に関す る項 目は,各学校の相補性,情報冗長性,協働性,個別裁量性 の程度を測定す るものであった。その うち,協働性の基盤 となる相補性 と情報冗 長性は作成 した18項
目であ り,こ の尺度 を相補性・情報冗長性尺度 と呼ボ もの とす る。また協働性 と個別裁量性は淵上 ら(2000と 佐古(2006)の尺度項 目を参 考に して作成 した7項
目であ り,この尺度を協働性 0個 別裁量性尺度 と呼ぶ もの とす る。職務満足感 の測定には安達(1990の尺度 を教職員 に適用 した中村 ら (201のの尺度 を使 つた。 この尺度は 「職務内容に関す る満足感」 「職務関与」 「職務への動機付け」 「職場の人間関係に関する満足感」 「職場環境に関す る 満足感」 「顧客 との関係 に関す る満足感」 「給与に関する満足感」 とい う7つ
の下位次元か ら構成 されたものである。 3.結果 と考察 (D各尺度の因子分析 ①相補性・ 情報冗長性尺度の因子分析 KTable→ 学校組織特性尺度の うち,まず相補性の基盤 となる相補性 と情報冗長性の 18 項 目について因子分析 (最尤法・ プロマ ックス回転)を
行つた。初期の固有種 1.0を基準 としたところ3因
子が抽出され,因子を解釈 した結果,この3因
子解を 採用 したCTable 3)。 15第
1因
子は “学年や クラスに関わ らず,どの子 どもも注意す ることができる" “子 どもの様子で気づいたことを学年に関係 な く気軽 に話す ことができる" “授業などでお互いの良いと思 うや り方を伝え合 うことができる"等
の 10項 目 か ら構成 されていた。 これ らは最初の想定では相補性に属す ると考えた項 目と 情報冗長性 に属す ると考 えた項 目の両方 を含んでい るが,全体 として,学年や ク ラスに関係 な く,子どもの様子や学級経営や授業等に関す ることを,教員間で気 軽 に伝 え合った り注意 した りして協力できるかできるよ うな学校組織 を示 して いると考えられることか ら「情報を伝 え合 う仲間意識」因子 と解釈 した。第 2 因子は,“職務に不必要な話 はできるだけ しない (逆転項 目)"
“家族の話がで きる"
“日常の世間話ができる"
“趣味の話をすることができる"と
い う4項
目か ら構成 されていた。 これ らはいずれ も情報冗長性の項 目として設定 した項 目であ り,ほつと息抜 きを した り気分転換を した りして気持 ちを切 り替 えること ができる職場特性 を示す ものであった。 したがつてこの因子は 「リフレッシュ」 因子 と命名 した。第3因
子は “行事な どでは役割を超 えて協力し合うことができ る"
“lltしそ うに している人がいると誰かが手伝いを申し出ることができる" “緊急 の用事ができた人がい ると事情 を察 してサポー トす ることができる" “子 どもの情報は会議以外の場でも入つて くる"と
い う4項
目であつた。最初 の3項
目は相補性の,また4番
目は情報冗長性の項 目であつたが,全体 としては, 自分の担当以外の仕事にもお互いに協力 し,助け合ってい くとい う補い合 える環 境 を示 していると考 え,「持 ちつ持たれつ」因子 と解釈 した。なお,各因子の内 的一貫性 を示すCronbachの α係数は,第 1因子から順に α= .864, .819, .801 であ り,3因子 とも十分な値 となつた。TaЫe 3相補性・情報冗長性尺度の因子分析結果(最尤法・プロマックス回転) 項目内容 第1因子 第2因子 第3因子 共通性
第
1因子情報雄 え合う
仲間意識
(α=.864)それぞれの学年の様子を職員みんなが知ることがせる
″763
」45 ,060 .507
子どもの様子で気づいたことを学年に関係なく気軽に話すことがせ る .738 .083 -.094 .538学年やク
ラ
スに関わらず子どもの情報を担任に伝えることができる
授業なと お互いの良いと思う
やり
方を伝え合う
ことが
eる
学年やラスに関わら
ずどの子どもも注意することがせ る
どの子どもがどの学年なのかを知ることができる
課題のある子どもの早期発見につながるよう
な話し
合いの場がある
。703 .098
■0釧.573
0653
■64 .四
1 .502
.648
・022 .田
8 .47
.607 -154 -.093 ,259 。450 ,013 .182 .364J20 .789
・ 077 .688J84 .754
・070 .■
9 -.281 .722 .053 .344 ―.052 ‐.067 0940 ,749 .078 .113 。577 .507 自分の教育に対する思いを話すことができる。448 .143 .214 .531 第2因子 リフレッシュ因刊α=.819) 趣味の話をすることができる 日常の世間話ができる 職務に不必要な話はできるだけしない(逆転項目) 家族の話がせ る
.030 0591 .154 .515
第3因子 橘 つ持たれつ因子(α=,801) 行事などでは役割を超えて協力し合うことが● る 忙しそうにしている人力ttヽると誰か力f手伝いを申し出ること力fできる緊急の用事がせ た人がいると
事情を察し
てサポート
すること
がせ る
.090 .229 .498 .540 因子間相関第
1因子
第
2因子
.7釧 .714 .606 ②協働性・ 個別裁量性尺度の因子分析CTableの 同様に「協働性」 と「個別裁量性」の7項
目についても因子分析 (最尤法・ プ ロマ ックス回転)を
行 つた。初期の固有種 1.0を 基準 とした ところ2因
子が 抽 出された。それぞれの因子は,第 1因 子は協働性,第2因子は個別裁量性の項 目 か ら構成 されていたため,この2因子解 を採用 したtTableの。 因子分析においてはあらか じめ設定 した学校組織特性の2側
面の定義に一致 する2因
子が抽出され,因子的妥当性が確認 されたと言える。 しか しなが ら各因 子の内的一貫性 を示すCronbachの
α係数は,第1因
子では α=.833で
あつた が,第 2因子は α=.485で
あ り,第 2因子は十分に高い とは言えない数値に留ま 17った。 この原因 としては,この尺度項 目の回答分布が高得点側に偏つていたこと が影響 していると考えられた。 しか し,学校組織 としての特性は十分に捉 えるこ とができる項 目内容であると思われるため,本研究では以下の分析にも第
2因
子 を用いるもの とす る。 (最尤法・プロマ 第1因子協働性(α=.833) 学級経営の問題や改善点について率直に意見交換できる 授業の問題や改善点についてふだんから率直に意見交換礎 る 他の教師の授業を気軽に参観できる 第2因子個別裁量性(α=.485) 学級に困難な問題が生じた時には各担任が自分の判断で動くことがせ る 各担任のアイディアで学級の環境整備をすることがせ る _各担任が自作した資料薇 つて教科指導をすることがせ る 。328 772 .714 ―.058 .130 ‐,015 ―,006 .058 -.106 142 ・ 679 ・ 663 ・ 4︲4 , 497 03 43 0 3 3 1 m 87 84 5 4 3 因子間相関 第1因子 ③職務満足感尺度の因子分析KTable→ 職務満足感尺度 19項 目について因子分析 (最尤法・ プロマ ックス回転)を
行 つた。初期の固有種 1.0を基準 として5因
子が抽出され,各因子の解釈を試みた 結果,この5因子解 を採用す るもの としたKTable D。 第1因子は “や り甲斐のあ る仕事をしている"“私に適 してい る"“や り遂げることは人間的成長につなが る"等
の7項
目か ら構成 されていた。 これ らの項 目は先行研究における下位尺 度 「職務内容 に関する満足感」 と「職務関与」が合わさったものであったが,全 体 として 自分の仕事の全般への満足感 の高 さを示 してい ると考え られたため 「職務内容に関する満足感」因子 と解釈 した。第2因
子は “管理職は教員の仕 事に不公平がおきないよ うに手を打ってい る"“私の学校 は福利厚生に努力 し 0 0 n uて い る
"等
の4項
目か ら構成 され てお り,これ らは先行研 究 にお け る 「職場環境 に 関す る満 足感 」 因子 の項 目で あ つ た が,本研 究 で は項 目内容 を よ り反 映 した 「管理職へ の満足度 」因子 と命名 す る もの と した。 第3因
子 は給 与 に関す る 3 項 目で あ り,先行研 究 と同様 に 「給 与 に関す る満 足感 」 因子 と解釈 した。 第4因
子 は “私 と同僚 の間 に は適切 な距離 が保 たれ てい る"等
の 同僚 との人 間関係 に 関す る3項
目と “私 と児童・ 生徒 の間 には適切 な距離 が保 たれ てい る"と
い う4項
目か ら構成 され てい た。 先 行 研 究 で は同僚 との関係 は 「人 間 関係 に関す る 満 足感 」,児童・ 生徒 との関係 は 「顧 客 との関係 に関す る満 足感 」 とい う因子 に 分 かれ てい た が,どち らも人 間 関係 に 関す る項 目で あ り,同 じ因子 と して抽 出 さ れ る もの不 自然 で はないだ ろ う。 そ こで本研 究 では 「人 間 関係 に関す る満 足感 」 因子 と命名 した。第5因
子 は “私 は仕 事 に一 生懸命 打 ち込 ん でい る時 には達成 感 を感 じる"と
い う1項
目で あ り,先行研 究 と同様 の 「職 務 へ の動機 付 け」 因子 と な つ た 。 な お,各因 子 のCronbachの
α係 数 は,第1因
子 か ら順 に α =.811,.813,.870,.799,.816‐0あつた。 19TaЫo 5職務満足感項目の因子分析結果(最尤法・プロマックス回転) 項目内容 第1因子 第2因子 第3因子 第4因子 第5因子 共通性 第1因子職務内容に関する満足感(α=.811) 私の仕事は「やり甲斐のある仕事をしたJという感じが得られる ,942 -194 Ю95 -.071 ■185 .725 私は仕事に―生懸命打ち込んでいる時には達成感を感じる .404 -.035 .006 .115 ,121 250 第2因子 管理職への満足度(α=.813) 管理職は教師の仕事に不公平がおきないように手alrつてぃる
―.088 .93i ‐Ю25 -.077 .024 .749 今の仕事は私に適している 仕事を立派にやり遂げることは私の人間的成長につながる 私の仕事ぶりは職場の皆から認められている 私は私のする仕事について児童・生徒から感謝されている 私は今の仕事に十分打ち込んでいる 管理職は仕事における指導監督ぶりが適切である 私の学校は福利厚生に努力している .691 -.016 J3 -.057 .093 .518 .587 -155 -.058 188 087 .397 .540 .192 -.131 ■027 -101 .383 .487 .030 -.055 -.043 -Ю 04 .229 。401 .078 -.031 .055 .336 .505 ―,046 ,704 -351 -.004 116 .573 .104 .500 .158 ■045 ■002 .413 ―ヽ3 150 .990 -D43 124 .942 ‐145 .061 .814 011 -.04i .689 私の学校では各教師の協力体制がうまくせ ている .134 .549 -.022 .177 -.032 .497 第3因子 給与に関する満足憲α=.870) 私の給与は私の年齢や地位にふさわしい 私の給与は私が学校にする貢献に見合つている 私の生活に必要なものを確保するために現在の収入は足りている .067 -.111 .688 .079 Ю69 .513 第4因子 人間関係に関する満足患α=.799) 私と同僚の間には適切な距離が保たれている 私と管理職の間には適切な距離が保たれている 私と児童・生徒の間には適切な距離が保たれている 私の同僚は仕事のうえで協力的である ∞ 67 3︲ 44
硼
・
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・
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” 76 45 40硼
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一 . . . .硼
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・
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・
︲
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2
第5因子 職務への動機付け(α=.816) 私は心から仕事に没頭している .338 -.005 .046 -.027 .816 因子間相関 第1因子 第2因子 第3因子 第4因子 ("学校種および教職経験年数による差異 ①学校組織特性CTable 6,Tableつ 調査協力者の学校種および教職経験年数によつて学校組織特性の認知に差異 があるのかを確認するために,各因子分析において抽出された因子得点を従属変 数 とする2要
因分散分析を行つたKTable 6,Table 7)。 その結果,相補性・情報冗畑
・
0
硼
5
9
・
0
2
8
鉤 49 88長性尺度では,「情報を伝え合 う仲間意識」因子で教職経験年数の主効果が有意 とな り (ズ3,195)=3.683,メ .05),多 重比較の結果,「11∼
20年
目」の協力者は 「21年
以上」の協力者よりも情報を伝え合 う仲間意識の認知が有意に低いこと がわかった。また,協働性・個別裁量性尺度では「協働性」因子で教職経験年数 の主効果が有意 とな り(ズ3,199=5。202,メ
.0■),多重比較の結果,「11∼20年
目」 の協力者は「21年
以上」の協力者 よりも協働性の認知が有意に低いことが明ら かとなつた。 Taue 6相補性・情報冗長性尺度の校種・教職年数による分散分析結果 「情報雄え合う仲間意識l国子 [リフレッシ■l田子[持
ちつ持たれつ]因子小学校
中学校
平均値
SD
平均値 SD
小学校
中学校
SD 平均値
SD
平均値
SD__小学校
中学校
平均値
SD
平均値
1∼3年 0,03 10。 741 0,35 4'10年 -0.22 (1.23) -0,12 ‖10年 ■44 0哺3) -0.45 21年以上 0.18 (1.03) 0.10 005 0.40 0。43 -0.23 (1,09} 0,14 ‐0.28 10.99) 001 ‐012 (117) 0,10 0.08 0,80 0,23 0,69‐
0.:4 (l・03)刊
.35 10.87}‐
0。20 10.95)司
.51 10.89) 0,18 (lm) 0.oo o.80)側
圃
側
囲
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回
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校種の主効果
バ
11195)鋤 ,241教職年数の主効果
A3,195)■.683*バ
11195H。297バ
3:195)EO,700 爪1,195日,552 バ3,195卜 3.177交互作用
バ
3195H.299
バ
31951-4,222
バ
3195m270メ
05 Tabb 7 「協働性J因子 個別裁量性」因子 小学校中学校 平均値
SD
平均値SD
小学校中学校 平均値
SD
平均値SD
11年 ご10年 11鞄0年-010 0.80 017 0.馴
) -0.45 0.創)000 0.50
-0,48 10.31) -0.50 (0.87) 0。13 10.62) 0.07 10.56) -0.34 (0,91) ‐003 10.58) ●.28 10.34) -0.16 10.801 007 (0871 014 10,76) 21年以上 a26 (1.001 a14 (0341 校種の主効果 教職年数の主効果 交互作用 バ1,192卜 0.899 バ3:192卜5202料 バ1192H.566 バ3,192卜 2.099 バ3,192卜1.050
バ3,192)却 .284 21 料メ01②職務満足感 CTable 0 学校組織特性 と同様に,職務満足感 についても
2要
因分散分析を行つた(Tabb 8)。 その結果,「管理職への満足度」(ズ1,183)=4.945,メ .00に おいて,校種の主 効果が認 め られた。「管理職への満足度」では,中学校の協力者の満足度が小学 校 の協力者 の満 足度 よ りも高い ことが示 された。また 「管理職への満足度」 (ズ1,180=3.21%〆 .00,「給与への満足度」(ズ3,183)=3.76%〆.OD,において, 教職経験年数の主効果が認められた。多重比較の結果,「管理職への満足度」 と 「給与への満足感」では,1∼3年
の協力者の満足度が 11∼20年
以上の協力者 よ りも高いことが示 された。磁
8冊
脚姫
:辮拙琳備
囃
囃
田 難
9鞘
W喘
囃
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囃
雌
0鞘 9鞘
田 糠 田
囃
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喘
鞘
囃
埴
r T 田 雌 Ⅲ 側 側 酬 Ⅲ = 冊 硼 側 側 側 側 剛 硼 硼 憫 剛 側 酬 側 Ⅲ II1 111 型 側 剛 間 Ⅲ III Ⅲ 硼 鰤 圃 Ⅲ 圃 剛 Ⅲ 型 側 = 側 酬 側 側 Ⅲ 鰤 側 ︱︱︱ 側 側 酬 脚 Ⅲ Ⅲ 躙 ︱︱︱ 側 側 側 側 剛 珊 憫 型 側 酬 側 側 棚 = 硼 憫 M 側 側 側 Ш Ⅲ 硼 硼 麟 柵 師 肌脚
黎
鶉
剛
脚
脚
= 用 鳩靱
鶉
靱
莉
黎
脚
脚
鳳 出脚
醐
Ⅷ
flll昨脚
1
鳩
1開│‖ 榔 ③ 学校組織特性が職務満足感 に及ぼす影響 本研究では,学級組織特性が新任期 における教員の職務満足感に影響を及ぼ し, 新任期における教員の職務満足感 を促進す るであろ うとい う仮説を立てた。ま た,こ こでの学校組織特性 は,従来の研究で取 り上げ られて きた 「協働性」 と 「個別裁量性」に加 えて,職場 における「協働性」の基盤 となるものとして 「相補性」 と「情報冗長性」を位置づけた。つま り,相補性・情報冗長性尺度か ら抽 出 された 「情報 を伝 え合 う仲間意識」「リフ レッシュ」「持 ちつ持 たれつ」は 「協働性」を媒介 して間接的にも,また直接的にも職務満足感 に影響を及ぼ して いると仮定 したモデルをたてるもの とし,パス解析を教職経験年数 ごとに実施 し た。 教職経験年数 ご との分析結果 の うち,1∼3年の教員(22名)を対象 と した分析 結 果 をFigurelに示 す。 協働性 職務内容に 関する満足感 人間関係に 関する満足感 .416 / ‐.339 リフレッシュ 持ちつ 持たれつ 正の影響 ′く.05 -――う メ・
001→
負の影響′く。05 …………)
Fi_1
学校 組 織 特性 が教職 経験 年 数 1∼3年の教 員02名)の職 務 満 足感 に及 ぼす影 響 の け へ 付 務 機 職 動 23ここでは,「協働性
Jの
基盤 として位置づけた 「相補性」 と「情報冗長性」か ら抽 出された 「情報を伝 え会 う仲間意識」「リフレッシュ」「持 ちつ持たれつ」 のいずれ もが「協働性」に影響を及ぼ していることが確認 された。 しか し,「 リ フ レッシュ」か ら「協働性」へのパス係数は負の値であ り,1年∼3年
目の新任 期の教員か らは,職
場において趣味の話や世間話ができることはむ しろ 「協働 性」を阻害す ると認識 されていることが示唆 された。また 「情報を伝 え合 う仲 間意識」は 「管理職への満足感」 と「給与に関す る満足感」に対 して直接的な 正の影響を及ば していることが示 されたが,「協働性」は 「職務内容に関す る満 足感」に対 して負の影響 を及ばしていることが明 らか とな り,逆に職場における 「個別裁量性」が 「職務内容に関する満足感」「管理職への満足度」「給与に関 す る満足感」に対 していずれ も正の影響を及ぼ していることが示 された。つま り,教職経験年数1∼3年
の教員の職務満足感の うち「管理職への満足度」「給与 に関す る満足感」は 「情報を伝 え合 う仲間意識」 と「個別裁量性」によつて促 進 され ること,特に 「給与に関す る満足感」に強い影響 を与えていることが分か つた。また 「職務内容 に関す る満足感Jは
「個別裁量性」によつて強く促進 さ れ 「協働性」によつて抑制 され ることが示 されたと言えよ う。 この結果からは,仮説 とは逆に,教職経験年数 1∼3年
の教員 (新任期における 教員)は
自分の能力 と責任で仕事をこな しているとい う意識が強 く,周囲の同僚 か らの助けや協力を必要 としていないことが考えられ る。職務内容に 関する満足感 正の均 く。05 -●
バ
001・―レ
負 の影響 メ .001-―→ Fi脚腱2
学校組織特性が教職経験年数4∼10年の教員e2名)の職務満足感に及ぼす影響 次に,教職経験年数 4∼10年
の教員(42名)における結果について検討す る。 Figure2に示 されたよ うに,「協働性」に対 しては 「情報を伝 え合 う仲間意識」 が正の影響を及ぼ してお り,「 リフレッシュ」は協働性に対 して有意な関連が認 め られなかつた。また1∼3年 の教員 とは逆に 「管理職への満足度」に対 しては 「協働性」が正の,「個別裁量性」が負の影響 を及ぼ していた。 さらに「個別裁 量性」は 「職務への動機付 け」に対 しても負の影響 を及ぼ していることが示 さ れ た。 また「持ちつ持たれつ」力`「管理職への満足度」に直接的な正の影響を 及ば していることも明 らか となつた。つま り,教職経験年数 4∼10年
の教員は, 25仲間意識や補い合いを大切 にす る管理職は評価す るが,個別裁量性 を大切にす る 管理職への評価は低 くなる傾 向が強い とい うことになる。また,自分の能力 と責 任 で仕事をす るとい う意識は,自分の仕事 を頑張ろ うとす る動機付けにはな らな いことが考えられ る。 一方,教職経験年数 11∼
20年
の教員(28名)においては変数間の有意な関連は ごくわずか しか見いだされず,「情報 を伝 え合 う仲間意識」が 「協働性」 と「職 務 内容 に関す る満足感」に正の影響 を及 ぼ していることが確認 されたのみであ った(Fittre 3)。 そ して教職経験年数21年
以上の教員(117名)では,「情報を伝え合 う仲間意識」 と「持ちつ持たれつ」が 「協働性」に正の影響を及ぼ していた。 さらに 「持ち つ持たれつ」は 「管理職への満足度」「人間関係 に関す る満足感」にも正の影 響 を及ぼ していた。また,職務満足感 に対 しては 「協働性」は何 ら影響 を及ぼ し ていなかつたが,「個別裁量性」は 「職務内容 に関す る満足感」「管理職への満 足度」に正の影響 を及ば していることが明 らかになつた(Figureの。つま り,教 職経験年数21年
以上の教員は,職場の人間関係 を重要視 し,職員間の助け合いや 協力や補い合いを大切に しているが,管理職に対 しては自分の能力 と責任感で仕 事ができる環境 を強 く望んでいる。また,助け合いや協力は仲間意識や補い合い か ら生まれるが,家族や趣味の話などの くだけた話か らは生まれない と意識 して いることがわかる。.439 協 働 性 個別裁量性 職務内容に 関する満足感 管理職 への 満足度 給与に関する 満 足感 人間関係に 関する満 足感 職 務 へ の 動機 付 け 情 報を伝 え合う 仲間意識 リフレッシュ 持ちつ 持たれつ リフレッシュ .603 正 の影響 ′く。 05-Fi即 “
3学
校組織特性が教職経験年数 11∼20年の教員08名)の職務満足感に及ぼす影響 職務内容に 関する満足感 給与に関する 満足感 人間関係に 関する満足感 職務への 動機付け 正の時.05
-′く.01
〆 ・001→
Fire4学
校組織特性 が教職経験年数21年以上 の教員(117名)の職務満足感 に及 ぼす影響 管理職への 満足度 27第
4章
総合考察 本調査の 目的は,新任期における教員の職務満足感 に及ぼす学校組織特性を明 らかにすることであつた。また学校組織特性 に関する従来の研究で しば しば取 り上げ られてきた 「協働性」の基盤 として 「相補性」「情報冗長性」を位置づ け,「個別裁量性」 も含 めた4側
面か ら学校組織特性 を提 え,それ らが職務満足 感 に及ぼす影響 を検討す ることを試みた。 本研究では最初に,これまでは学校現場における参与観察を通 して提言 されて いた 「相補性」 と「情報冗長性」の測定尺度 を作成す るために小中学校教員ヘ の面接調査を実施 した。その結果,「相補性」については 「能力・ スキルの補い 合い」「時間・ 手間の補い合い」「情報の補い合い」 とい う3カ
テ ゴリーに分類 され るよ うな8項
目が作成 された。また 「情報冗長性」については 「職務に関 す ること」「プライベー トに関す ること」「′い情に関す ること」 とい う3カ
テゴ リーに分類 される10項 目が作成 された。次にこれ らの項 目を合わせて因子分析 を実施 した ところ,「相補性」 と「情報冗長性」のそれぞれに含まれる項 目の う ち,教員間の情報交換の豊富 さを意味す るような 「情報を伝 え合 う仲間意識」因 子,「情報冗長性」に含まれ るプライベー トに関する話題の共有の程度を意味す るような 「リフレッシュ」因子,そ して 「相補性」に含まれ る時間や手間の補い 合いを意味す るよ うな 「持ちつ持たれつ」因子が抽出された。 これ らの3因
子か ら構成 された 「相補性」 と「情報冗長性」の 「協働性」に 対す る影響 をパス解析で検討 した結果,それ らの影響の様相は教職経験年数によ つて異なる面 と共通の面の両方があることが示 された。教職経験年数に関わ ら ず一貫 して認 められたのは助 け合いや協力の重要性 を表す 「情報を伝 え合 う仲間意識」が正の影響を及ぼ していることであつた。 この結果は,教員は経験年数 に関係なく,仕事に関す る情報を共有することが職員間や協力体制に良い影響を 与えていると認識 していることを意味 していよう。また補い合いの重要性の認 識 を表す 「持ちつ持たれつ」は,教職経験年数 1∼
3年
と21年
以上の教員では, 職務満足感 に対 して正の影響 を示 していた。 この ことは新任期 とベテランの教 員においては協力体制にお互いのサポー トは必要 と意識 しているが,教職経験年 数4年
∼10年
,11年 ∼20年
とい う中堅の教員は協力体制には関係 ない と考えて いることを示唆 していよう。 さらに,ほつと一息をつ く寛ぎ感である「リフレッ シュ」は,1∼3年
の教員 を除いては 「協働性」に対 して何 ら影響 を及ぼ してい なかつたが,1∼3年
の教員においては 「協働性」を低める効果が認 められた。 したがつて,新任期の教員は,寛ぎ感 には協力体制 に対す るマイナスのイメージ を持 つていることになる。職場で先輩が家族や趣味の話を していた ら,「仕事を していない人たちだ」 と考えているのかもしれない。 さらに,職務満足感に対す る学校組織特性 の影響 について,教職経験年数 ごと にパス解析 を実施 した結果において も,その結果は教職経験年数によつて大きく 異なる部分があることがわかった。先行研究においては,学校組織特性 としての 「協働性」は職務満足感を促進する要因 として位置づけられているものである。 しか しなが ら本研究では,そのよ うな先行研究 と一致す る結果を示 したのは唯一, 教職経験年数 4∼10年
の教員の 「管理職への満足度」に対す る影響のみであつ た。但 し,「協働性」の基盤 と位置づけた 「相補性」「情報冗長性」か ら抽出 さ れた 「情報を伝 え合 う仲間意識」や 「持 ちつ持たれつ」が 「協働性」を媒介す ることな く直接的に職務満足感に正の影響 を及ぼ していることが確認 された。 影響 を受 けてい る職務満足感 は 11∼20年
の教員の群では 「職務内容に関す る 29満足感」であつたが,他の群では 「管理職への満足度」であったことか らは,教 員 同士が気軽に情報交換 をできた り補い合 つた りできる職場環境であることは 管理職が責務を果た していることとして認識 されていることが示 された と言え よう。 また,経験年数によるさらに大きな相違は,教職経験年数1∼3年と21年以上の 教員においては 「個別裁量性」が職務満足感 に対 して正の影響を及ぼ していた のに対 して,4∼
10年
の教員では 「個別裁量性」は職務満足感 に対 して負の影響 を及ぼ していた とい う結果であつた。そ して,1∼3年
の教員 においては 「協働 性」が 「職務内容に関す る満足感」に対 して負の影響 を及ば している点 も大 き な特徴であると言えよう。 この結果は,新任期における教員に焦点をあてた本研 究 にとつて興味深い ものである。 ここか らは,新任期 にお ける教員は,自 分たち が教職 とい う仕事をす るにあたつて教員同士の協力体制は必要ではない,更に言 うな らば,負の影響力があるとい うことは,仕事 をす るにあたつて,協力体制は邪 魔 になると考えていることになる。 ところで,「個別裁量性」は学校が果たすべ き 目標や対象の多様 さ 。曖味 さを 吸収 し,臨機応変な対応 を可能にす るとい うメ リッ トを持つfWeick,198"も ので ある。本研究では,そのような 「個別裁量性」は したがつて,21年以上のベテ ラ ン教員にとつては,自身の力を気兼ねなく発揮できる個別裁量が認 められた環境 において 「職務 内容に関す る満足感Jが
促進 され るのは不思議ではない。 しか し,教職経験年数1∼3年の教員 も,教員になったばか りにもかかわ らず,自分の力 で臨機応変に対応す ることが職務満足感 を強 く促進 していた。 これは,念願 の教 員 にな り,自分の考 えていた教育 を思い通 りにや りたい,やれ るとい う強い思い の現れではないだろうか。 この意識 こそが新任期においての不安に打ち克ち,リア リティ・ シ ョックを乗 り越え,教職 を続 けていこうとい う原動力になつている のかもしれない。 しか し。仮にそ うであるとして,それは周囲の同僚か ら配慮 さ れ,見守 られている中での 「思い通 り」であるはずである。新任期 を過 ぎ,文字 通 り独 り立ち した ときに同 じような意識を保 てるだろ うか。その答 えは教職経 験年数4∼
10年
の教員の認識に表れていると考える。教職経験年数 4∼10年
の 教員の職務満足感の うち「管理職への満足度」 と「職務への動機付 け」は,「個 別裁量性」 によつて強い負の影響 を与え られ ていた。「個別裁量性」力`「管理 職への満足度」や 「職務への動機付け」を抑制 しているとい うことは,新任期を 過 ぎて独 り立ち し,一人前 と見な され るよ うになつた時期 になると,ひ とりで臨 機応変 に対応す ることが求め られ る 「個別裁量性」は,新任期 とは逆に,自 分は 一生懸命に問題 に対処 し,頑張つているのに報われない とい う思いにつながつて い くのではないか。そのために,新任期では「協働性」にのみ影響を与えていた 「持ちつ持たれつ」が,教職経験年数4∼10年では 「管理職への満足度」に対す る正の影響力 となるのであろう。つま り,補い合いやサポー トを大切に考えてい る管理職の好感度が上がるとい うことである。周囲の同僚か ら保護 されている 新任期 を過 ぎて,教職の現実が見え始 めた 4∼10年
目になつて,学校内での連携 につながるような 「協働性」が重視 され始めるのかもしれない。 一方,教職経験年数 11∼20年
の教員の学校組織特性が職務満足感に及ぼす影 響では,わずかに 「協働性」 と職務満足感 の うちの 「職務内容 に関す る満足感」 が 「情報を伝 え合 う仲間意識」か ら正の影響 を受けているだけである。教職経 験年数 11∼20年
の教員 と言えば,体力 も充実 し教職の持つ多様性 に対応できる 力を充分に培い,脂の乗つた時期である。 中堅教員 として学校を運営 してい く中 枢 を担 う立場にある。 この結果か らは,「意見を聞いてもらいたい」若手 と「今 31まで どお りに したい」熟年教員の間にあつて,不満があっても困難に直面 しても, ただひたす らに黙々 と任務 をこなす中堅教員の姿が見えるようだ。 最後に本研究における課題 を述べる。第一に,相補性・ 情報冗長性尺度 と協働 性・個別裁量性尺度の信頼性 を高めることがあげられ る。結果において述べた ように,いくつかの下位尺度で信頼性が低かったことに測定対象である教員の業 務の複雑 さや,項 目内容の望ま しさの問題 が影響 していると考えられた。 これ ら のことを考慮 しなが ら尺度 を再検討することが必要であろ う。第二に,各教職経 験年数のデータ数のバ ランスの悪 さが挙げ られ る。前述の調査協力者 の項 目で も記載 した よ うに,教職 経験年数
21年
以上のデー タ数 の割合 が全 協力者 の 56.0%であつたのに対 し,教職経験年数 1∼3年
は 10.5%,4∼10年
は 20。1%,11 ∼20年
は13.4%であつた。研究 目的の教職経験年数 1∼3年
のデータ数が全体 の1割になつて しまつたことは調査結果の確実性に大きく影響す る。 これは調 査地であるA tt B郡
の教職経験年数男1人数の偏 りが原因であるので,今後は教 職経験年数の偏 りが少なく,よ リバ ランスの とれた調査地を選ぶべきであろ う。 また本研究では分析 には非常勤講師を対象に含めないことも検討 したが,非常勤 講師を除 くと,1∼3年
が22名か ら4名減 り 18名 に,4∼10年が42名か ら 5名 減 り37名に,11∼20年
が28名か ら1名 減 り27名 にな り,21年以上の 117名 との 割合の差がさらに開いてバ ランスが今 より悪 くなるので,そのままの 209名 を使 用 した。 しか し,非常勤講師は勤務時間や勤務 日数が常勤講師や教諭 とは異なる ので,今回のよ うにデータ数に影響がない場合は省 く方が良いであろ う。第二に, 本研究では質問紙調査の結果か ら新任期 における教員の職務満足感 に 「相補性」 「情報冗長性」「協働性」「個別裁量性」を兼ね備えた学校組織特性が どのよう に影響 を及ぼすかを明 らかにしようとした。新任期における教員は前述 したように協力体制は自己の職務内容の遂行 を阻む ものであるが,臨機応変に対応でき る 「個別裁量性」は大いに受け入れ られ ると考えていた。仮説 とは真逆の結果 であつたが,調査地に選んだ
A tt B郡
は山間地で地域に経営困難校はあるもの の比較的問題が少ない地域性であることも影響 していると考える。 よつて今後, 新任期における教員の休職率や退職率の高い地域で調査 を実施す ることが必要 であろ う。 まとめとして,筆者は新任期における教員はほぼ皆 リア リティ 0シ ョックや多 忙や困難に出会い,苦しみ悩んでいると考 えていた。そのために職場では協力や サポー トや リフ レッシュ感 をフルに活性化 して援助 しなけれ ばな らない と考 え ていた。筆者 の考 えはこの度 の新任期 にお ける教員 の分析結果 とは異なつた が,21年以上の教職経験年数の教員の職務満足感に及ぼす影響が,筆者の認識 と ほぼ一致 した。端的にその年代の考え方を表 していると考える。新任期におけ る教員が力強 く仕事をす るとい うよりも,新任期 を生き残 つている教員がたくま しい と考えるのである。 33引用文 献 秋 光恵子・ 岡 田み ゆ き (2010)。 高 等 学校 にお け る学校 組 織 特 隆が教 育相 談活 動 に及 ぼす 影 響 兵 庫教 育大 学研 究 紀 要,37,15‐24. 新 井 肇