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構成作品の色彩教育への応用について(4) -max bill "die grafischen reihen"における作品研究-

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(1)Title. 構成作品の色彩教育への応用について(4) −max bill "die grafisc hen reihen"における作品研究−. Author(s). 八重樫, 良二. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 58(2): 55-69. Issue Date. 2008-02. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/90. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第58巻 第2号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.58,No.2. 平成20年2月 February,2008. 構成作品の色彩教育への応用について(4) −maXbill“diegra五schenreihen”における作品研究−. 八重樫 良 二 北海道教育大学旭川枚デザイン研究室. ApplicationofGeometricalArtWorkstoColorStudy(4) −StudyaboutMaxBill’sWorksontheBook“diegra五schenreihen”−. YAEGASHI Ryoji DepartmentofDesign,Asahikawacampus,HokkaidoUniversityofEducation. 要 旨 本稿はマックス・ビルの作品集,maXbill“diegrafischenreihen’’に紹介される構成作品に関する考察の. 第4報である。本箱では新たにNO.4「11×4:4」とNO.7「16星座1)」と題された2つのシリーズを 取り上げて,主にそのバリエーション展開の方法について考察を行った。これらの作品においては,画面を 構成する各視覚的要素をシステマテイツクに組み合わせることで,バリエーション展開が計られている。特 に「11×4:4」のシリーズでは,配色にあたって配置のパターンを図形的にとらえていたことが分かった。 各作品の造形論理を探ることでマックス・ビル作品の数理的な特質をさらに裏付けることができた。本稿で はこれらの考察内容を報告する。. 1.はじめに 本稿はマックス・ビルの作品集,maXbill“die. た作品であった。. これまでの考察を通して,本書に紹介される作 品はいずれも創作事例として理数的な性格を強く. grafischenreihen’’に紹介される構成作品に関す. 含むことを明らかにして来た。それらはいずれも. る考察の第4報である。これまで本書に紹介され. 何かしらの規則性をもってバリエーション展開が. る構成作品の各シリーズを考察し,その構成と配. 計られている。本書の原題は「視覚的な秩序」と. 色の仕方についてその手法を明らかにしてきた2)。. いうようにも訳されようが,掲載される作品はい. 特に前ノ稿で考察したNO.1「一つの主題による. ずれもそうした性格を帯びた表現となっている。. 多角形のバリエーション」は初期の代表作であり,. 例えばギリシャ神殿や雪の結晶などは,その造形. 数学的なアプローチによる造形手法が明確に表れ. 美について数理的な論理性をもって解説される事. 55.

(3) 八重樫 良 二. 例として挙げられるが,マックス・ビルの作品も. れ本稿では「16星座」の作品について先に取り上. 同様の性格を持っている。. げることとした。. こうした論理性は美術表現にとって制約的な要. 因となるが,その形になることへの必然性がもた らされることにもなる。これらの作品は秩序によ る調和感をよく表し,ともすれば主観的な美的感 覚に頼るより術のない配色の方法についても客観. 2.NO.7「16星座」について ・バリエーション展開の方法について この作品は16点のバリエーションから構成され. 的な論理性が見られる。本研究ではマックス・ビ. ている。各バリエーションは円形を含めて,ごく. ルの構成作品における色彩美に着目し,その論理. 単純な3種の円弧の要素のみで構成されている。. 性の探求と色彩教育への応用を目指して考察を続. 一見しただけではバリエーションの色の違いが先. けている。. に目につきやすく,その画面構成の差異自体は地. 本稿では,NO.4「11×4:4」とNO.7「16. 味な印象を受ける。一部の円弧の配置が変わるこ. 星座」と題された2つのシリーズについて考察す. とで動勢感が生じて,シリーズ全体の16点を通し. る。この2つの作品にはバリエーション展開を計. て観るとその変化が感じられる作品となってい. る方法に関して,共通した発想があるように感じ. る。円弧は回転移動し,その動きの連想が「星座」. られた。それは画面に配置する視覚的要素の一つ. のタイトルにも結びついているように思われた。. 一つを部品と見なして,それらの位置関係を組み. 各バリエーションの背景となる大きな円形には,. 変えることでバリエーションとする方法である。. 黄色から赤,紫,青,緑の順に,だんだんに移り. ここで記す視覚的要素とは例えば,画面上に3角. 変わるよう色が与えられている。それは黄色から. 形と円を配置するとしたなら,3角形と円はその. 始まり再び黄色に戻るといった循環する16色のグ. 構成における視覚的要素であり部品ともなる,と. ラデーションを作り,色相環をイメージさせる配. いった意味である。仮にそれらを組み合わせて構. 色となっている。. 成するとした時には,その大きさ,色など互いの. この作品シリーズは1974年,パリのギャラリー. 関係付けを考えて画面に配置することになる。こ. の企画展で発表されが)ことが説明されている。. うした視覚的要素の配置にあたって,マックス・. 作品は1組16点をケースに収めたセットとして,. ビルは一定の手順に沿って生み出す方法を考えて. リトグラフによって全部で150セットが刷られた。. いる。2つのシリーズは異なる表現様式であるが,. 各セットにはマックス・ビルの直筆によって何番. 視覚的要素を組み合わせるシステムを考慮するこ. 目に刷られたかを示すナンバーリングとサインが. とで,そのバリエーションの展開が計られた作品. 記され,マックスビル自身の説明文が添付された。. として共通性が見られる。画面構成と配色とを関. 本書には同文が掲載されている。その文中でシ. 連させてバリエーションを展開するその方法に. リーズのバリエーション展開の方法が記され,こ. は,色彩教育における学習課題にも応用できる可. の制作に通じる最初の作品から数えてこの制作が. 能性を感じた。. ちょうど40年であることを記念して文が結ばれて. NO.4「11×4:4」は1970年に,NO.7「16. いる。一見,全く単純な表現にも関わらず,マッ. 星座」は1974年に発表されており,本書ではその. クス・ビルは長期に渡ってこの作品のスタイルに. 発表年代に沿って掲載されている。説明文の中で. 関心をもっていた訳である。この作品について. 実際の作品制作の始まりについては「11×4:4」. マックス・ビルはどのようなことを考えたのか,. の作品は1963年に,「16星座」の作品シリーズは. マックス・ビル自身によるその説明文の抜粋を以. 1944年に遡ることが記されていて,創作の順とし. 下に記す。. ては「16星座」の方が過去に位置するものと思わ. 56.

(4) 構成作品の色彩教育への応用について(4). り任星凰 と名付けたこの作品シリーズ嫁,一. 得られるノ野クば効かL,塵7置Lてその軒辞任を探. 定のルールによク劇作Lています。鬼ずそれば以. クます。3分の了回すごっ,度量をる同じことの靡. 下の3つの似た長さをこ繹つノ甲またば朋の一部せ. ク遂L,このJβの軒辟艶全ての居座ば産廃のに. ノ好いて膚成Lていることです。. よってる得られています。 このシステムばJβ4夏草の:好いた作品の主題を再. ・仔 ・羊仔. 考Lています。Jβ4碑にば忍ばその主題を変克て. ・J〃の仔4). 真贋に「4つの何C長さのアクセン♪」というり. これらの虜ば了点から:静かれます。LかL,こ. ♪グラフ作品を戯作Lています。その作品ばここ. れら3産の虜ばLっかクとクループを作ク,虐居. での主題と何頗であク,その作品でばそれぞれの. でば戯れてばいません。この居座シリーズでば次. 虜ば色をるっています。J/句ノ甲粛の虜ばこの辟の. の4つのことを劇作の条件とLています。. 彪式でLた。Jββ0牟,再びこの題材を顔いまLた。. 〃ノ ーつの何ぼ一定の虜屏に留まっているこ. ある文芸作品に寄せて,題劾する赤い厳による「β. と。何C箇所に超オ、れていること。. つの屋凰 という作品を忍ば:好きまLたっ その昭. 仔ノ:静かれる虜ば互いに腰労らをいこと,鹿分. のスケッチばこのJ任星座と一皮■Lています。. に分けをいこと仁交差Lをいこと. 帝ノ 産廃「リフレクり による腰ク遂L必屠で. 以上がその抜粋である。こうして作られた作品. 何C位置原併にをった歩合にばバリエーショ. が実際,どのようであるか,図1に全16点のバリ. ンからノ除ぐ。何じパターンのるのば作▲らをい。. エーションについて順に沿って示す。実物は1点 が縦50cm x横35.5cmの用紙(およそB3ほど. 倦ノ 半ノ甲とJ/旬矧ばこの作品シリーズで定めら れカシステムに躍ってJ配置される。印度ごと. の大きさ)に1点ずつ色刷りで印刷されている。. に変化する毎に3つの虜ばお互いにノ好運L. 国中の矢印記号は説明のために記入。作品そのも. 合って位置を変ヱる。. のは各円が1枚に表される。マックス・ビル自身 の解説にあるよう,ほぼ中心の置かれる小円とそ. このシリーノブば中心頁野に塵7Lた3産のノ甲と朋. の上端を端点として描かれる2つのH弧の3種の. の塵′置を全て表すことから虜成されています。 J/瑠ノ甲をβ嘘で効かすことでバリエーションが. 線描による表現であり,同じ大きさの円(外円の. ▲・一・■、. 径)(ろ㊤ NO.1 (黄). NO.2. NO.3. NO.9 (育みの紫). ㊤①∈)直)e) NO.4. NO.5. NO.6. NO.7. (オレンジみの黄) (黄みのオレンジ) (オレンジ) (赤みのオレンジ) (赤みのピンク) (ピンク). ′′一「△. ㊦. ′、−△. 「 ▲. 由色⑦. ⑦㊦(うだ) NO.10 (紫みの青). NO.11 (薄青). NO.8 (赤みの紫). NO.12 (薄青緑). NO.13 (録). NO.14 (黄みの緑). NO.15 (黄緑). NO.16 (経みの黄). 図1 NO.7「星座」シリーズでの16点のバリエーション. 57.

(5) ёƝಢёƣӃஈƣ૴ॊ ӞёƝࣦё ¥¥ƣ૴ॊ Ł Ĺ ĺ ё ࣦё ಢё ໻ࠤ«01ƣǸȒǐÀǟȏț. ļ.

(6) 構成作品の色彩教育への応用について(4). 表1各バリエーションの色(外円面の色). の色相は①5Yと⑯10Yに位置して,その間のバ リエーションの色は(彰∼⑮にかけて順に並び,黄. 色からオレンジ,赤,紫,青,緑,そして再び黄 色に戻る色相環を形作っている。. 一般に育と緑は類似感があって,青から緑にか ける色相の変化は他の色相に比べるとその差を感 じにくい色相となっている。⑫と⑬の間が離れて いるのはその色相差が区別しにくく,等差に感じ る色を選択した結果が図4のような関係で選ばれ ているように思われる。マンセル体系では20色,. オストワルト体系とPCCS体系では24色が基本 色となっているが,このシリーズで用いられた16 色相に合わせて,それぞれの色相間の距離を等し く直した16色相環に位置付けてみると図5のよう になり,改めてこのシリーズにおける相対的な色 相の関係を捉えることができる。図4と図5を比 較してみると図5の色相環はマンセル体系に比べ て黄から赤紫までの領域が広くなり,青緑から緑 にかけて狭くなっていることが分かる。. 色相の代表色そのものではない。ブライトトーン. 説明文の中でマックス・ビルは1960年に制作し. またはライトトーンに類似する色調8)をもって,. た同様の主題による作品との関連に触れて,「い. 先に記したように色相のグラデーションに沿った. ずれの居座る賭する色の威から成ク,その中心. 配色となっている。. と朋をめぐって1配置されている。厳君将にその. 図4に各バリエーションの色をマンセル体系で. 色ば,戯するJβからの色粛と一皮する。この贋. の色相環上に位置づけて図示した。国中の丸囲み. 序付けばいずれの任意の居座でばCまことを軒辟. 数字はバリエーションのナンバーである。はじま. にL,常に色府の変化を虜邸静に遂行させる。」. りのNO.1と終わりのNO.16のバリエーション. と記して,リズム感と関連して循環する変化感も. ⑧. 紫みの青 図4 各バリエーション色の色相の位置. ⑬. ⑨紫よ覧 紫. 図5 各バリエーション色による16色相環 (図4での各色相の間を均等に改めた位置イ寸け). 59.

(7) 八重樫 良 二. 共にこの作品における狙いとなっていることを説. 配色にあたっては4マスで1組として1色で塗. 明している。このシリーズではこのように順を. り,計4組4色をもって16マスが埋まるようにし. 追った構成の変化,色の変化が表され,継時的な. ている。興味深いのは4マスのグルーピングにあ. 変化,移ろいといったイメージが伝えられる。「16. たって,まるでパズルのようなルールを設けてい. 星座」というタイトルからも,各円弧の動きと色. る点である。それは図7に示すよう,最初の4マ. の変化が春夏秋冬の星座がイメージされ夜空に回. ス1組の配置の仕方を守って,正方形を90度ずつ. 転する様に例えられているように思われた。. 回転しながら同じ配置で次の組を置き,それを4 度繰り返して16マス全部を埋め尽くす,という ルールである。もし最初の4マスの配置をよく考. 3.NO.4「11×4:4」について. えなければ,16マスの中で複数回,色が置かれて. ・バリエーション展開の方法について. しまうマス目や色が置かれないままになってしま. うマス目ができてしまうことになる。また各マス. この作品は全部で11点のバリエーションから構. 成されている。各バリエーションは凶6に示すよ. 目は1マスに見えるよう,すぐ隣に同じ色をおく. う縦4列横4列の合計16マスに区切られる正方形. ことは許されないこともルールとなっている。. の各マス目9)に配色した作品である。それが11点. 図7では▽Q◇患は4マスで1組となり,同色. あることに因んだ作品タイトルが付けられてい. で塗られる。その記号をアレンジして,二重線で. る。作品概要について「11点の手刷りセリグラ. 示す1組,黒く塗りつぶして示す1組,太線で表. フィーとドイツ語と英語によるマックス・ビル自. さして示す1組,そして最初の1組,合計4観で. 身によるスケッチで表される手書きの説明付き。」. 16マスが埋められることを示す。各々の組は1色. と記され,実物は縦横41.7cmの正方形の用紙に. で塗られて計4色が使用される。それぞれの組に. 1点ずつ色刷りで印刷されている。1点あたり4. 応じて記号の天地が90度ずつ回転しているのは90. 色が用いられ,さらに外枠の色が1色,付加され. 度ずつ回転させて配置するためである。実物は色. ている。. 面で表されるため,そのことは感じられない。つ. まり,止方形に天地があることは認識されず単な る色面のバリエーションにしか見えない。. 図8はそのことが理解されるよう天地のある記 正方形を16マスに分割して、 4マスを同じ色に塗る。 計、4色で16マスを塗る。. 号を使って「11×4:4」の全11点のバリエーショ ンを示す図である。各バリエーションにおける配 色,つまり組毎に使用される色については表2に. 図6 NO.4「11×4:4」シリーズでの色面. 示す。 バリエーションにおける各色の配置について,. 固・画・ ▽○◇患の組に1色。. ▽ ◎ ⊂D ■ 督 仝 ● く> ◆ く○ ◎ & D ● ◇ ぬ. 轡. くコ. ◎ C>. く>. 魯. 重⊃ ◎. 同じ配置で90度回転して 閻◎◎魯の組に1色。. 同じ配置で90度回転して 同じ配置で90度回転して ▼●◆●の組に1色。 ∇△◇&の組に1色. 図7 4マスを同色で塗って16マスを挫めるルール (川じ配吊を4回線り返して16マス全部を埋めること). 60.

(8) 構成作品の色彩教育への応用について(4). NO.1. NO.2. NO.3. NO.4. NO.5. NO.7. NO.8. NO.9. NO.10. NO.11. NO.6. ワ亡=)eの組で1色。鯵◎◎噂の組で1色。▲◆◆●の観で1色。<川>◇ゆの組で1色。各正方形内には計4色が配色される。 (外枠の色は別に与えられる。). 図8 「11×4:4」における11点.のバリエーション. その組み合わせの可能性を総アタリ的に行う方法 によりこのシリーズにおける規則性を説明した い。. 「11×4:4」での色を配匿する規則を整理す ロ む⊃ く○ くコ 0 ○ C> 菅 患 く○ ウ 0 D く> ⊂D 凸. ると以下の3点が挙げられる10)。 (1)縦4列横4列,計16マスに区切った正方形. 図9 回転して重なるマス目の関係. 全体を90度回転しては,4マスで1グループ の配置を都度繰り返して配置する。全体が1. ることで16マスが埋まることになる。その観点で. 回転して都合4回,配置して16マスの全てに. は図9でのワQ◇患の4種の印は,同じ印同士が. 色が割り当てられること。. 1グループを構成する単位となっていることを意. (2)同じ色で連続するマスを作らないこと。. 味する。同じ色の配置にあたっては同じ記号を2. (3)点対象,左右対称で得られる配置はその基. つ以上含んでしまう組み合わせ,つまり4種の記. となった配置と同種とみなして除外するこ と。. 号が欠けてしまう組み合わせはできない。. もし図9中,同じ記号の箇所に他の印を置いて しまったなら,90度回転して置く際には重複して. 上記の(1)のルールから,16のマスの内,90度回. しまうことになるので,そのようには置けないこ. 転して重なる箇所には1グループの中で2マス以. とが分かる。それでは,このルールにしたがって. 上を配置してはいけないことが分かる。つまり1. 配置したなら何通りの置き方が得られるのだろう. マスに色を置いたなら,それは直ちに90度回転し. か。その試行の一例を図10に示す。. た場所にも色が置かれることを意味している。こ. 1つ目を仮に4角(すみ)のマスに配置し(ワ. のことは4マスで1グループになることとはまた. 印の箇所の内の1つ。ここでは左上隅の箇所とし. 別に,配置する場所に特別な意味を持たせる。. た。),次にその内側に2つ目を配置することとす. 図9における4マスに付された同じ印同士は,. る。その時に置く場所は図10の2番目の図で示す. そこに色を置いたならその4マスは90度回転した. 4カ所の公印の内どこでも良いが,ここではすぐ. 際に置かれてしまう箇所を示す。それぞれの印か. 右斜め下になる箇所を選択して配置している。さ. ら1つずつ選択しグループを作り,4回配置され. らに◇印,£印の箇所を選択して,ひとまず右端. 61.

(9) 八重樫 良 二. ▽について4通り. ロ舞 国 ㌍.・■JL 0 ■完」. ロ. ワ. Bfl. 音 国. この▽位置で. この▽○位置で. ◇について4通り. ◇について3通り. この▽○◇位置で. 患について2通り. ひとまず得た 最初の組み合わせ. 図10 バリエーション展開の手順(一例) の図のようにワ0◇患の配置をする。配置の最中,. 8と同様の記号を使って,表してみた。. 0印の以降の場所は国中に示す何通りかの可能性. 書中に示されるスケッチ中では単に4マス分が. が選択的である。. 黒く塗られて,その4種の区別はない。同じ色で. 同時に先記の(2)のルールのため連続するマスに. 塗られる1組を示すのみである。国中には矢印が. は位置できないので,その選択する場所の制限も. 記され,どのマスがどこへ移動して次のバリエー. 受けている。(国中では×印を付している。)国中. ションを生じるのか,よく理解されるスケッチと. に示す組み合わせの可能性はその段階での数を示. なっている。スケッチ中の説明書きでは,配置に. すので実際には,その単純な掛け合わせによる組. 制限的条件を加えることで組み合わせ数が絞り込. み合わせ数にはならない。手順として図10のよう. まれ,最終的に11種となることが記されている。. な考えに沿って,全ての組み合わせを試行してみ. このことは先に記した,総アタリ的な手法で得ら. ると16通りの配置が得られた。ところが(3)のルー. れた数と合致している。この結果をもってマック. ルによって,その中に含まれる5組は点対象的な. ス・ビルの考え方を忠実にたどったとはできない. 関係にあり除外されてしまうことになった。最終. がスケッチとを照合してみるとおそらく,同様の. 的には11種の配置パターンが得られた。. 考えだったように思われた。図11中ではNO.12. 作品概要に記されるマックス・ビル自身による. には×印が付されているが実際のスケッチでもそ. 説明書きが本書中にも掲載されている。そこには. のように描かれ,「元に戻る」といった意味の言. バリエーションの展開順が読みとれるスケッチと. 葉が記されている。その補足説明としてNO.12. メモが記され,組み合わせの前提条件を絞り込む. での配置を90度回転した図を示す。最初のバリ. ことで11点のバリエーションが得ていることの説. エーションと同じ配置になることが理解されよ. 明がある。その説明スケッチについて図11では図. う。同様にマックス・ビル自身の説明では図7と. ロ. ロ. 十. 0. 0. わ. 患. 0. 0. \つ∫‘. 患. 0. ワ. 患. ○. ノ. く). 0. ワ. NO.9. 互. 凸. ○. 0. 凸. NO.10. 図11マックス・ビルのスケッチに示されるバリエーション展開の手順. 62. ○. 0 /. ▼ ワ. NO.11. NO.12?.

(10) 構成作品の色彩教育への応用について(4). したその構成は,理屈としてはどの色も等しい面. 図8に相当する内容の説明は無い。. 作品に添えられるマックス・ビルの説明はその. 積に配色されるので,ゲシュタルトで説明される. 考えを整理して表したものであり,スケッチに示. 図と地の関係のように,主役となって注目されや. されるバリエーション展開の順序についても同様. すい箇所,逆に背景に属して目立たない箇所とな. に,試行錯誤した結果を整理しているように思わ. るような,主従の関係は作られないことになる。. れた。スケッチは各バリエーションを得るのに整. 図形としては配色される4色は等価の関係にあ. 然とした手順を示し,本書で紹介されるバリエー. る。. ションの順もそれに沿っている。筆者にとってこ. しかし,実際に配置される色の強弱に差は生じ. の作品に添付されたマックス・ビルの説明だけで. ている。もちろん画面全体から受ける印象も配色. は十分な理解に至らず,図10はそれと同じ順番に. により異なり,色彩の要因が影響によることがす. は各バリエーションは展開していない。. ぐ分かる。ある色はすぐ目につき,ある色は目立. たないように見えるなど,等価ではないことが感 じられる。各色の面積も形も同じであるので,こ. のことは純粋に色彩効果によって生じていると言 える。果たして配色された4色の中でどの色が際 だって見えるのであろうか,逆にどのような色は 目立たない色になるのであろうか。これらは色の. 〈NO.12?〉を90度回転するとNO.1と同じ配置. 膨張性や誘目性など,色の属性の観点からも説明 されるが,こうした疑問に答える実際の配色見本 として「11×4:4」シリーズは有効な性質を備. ・配色について バウハウスの教員でもあったヨハネス・イッテ. えている。. ン11)は色彩研究者としても有名であるが,この. その配色についてはこれまで説明したようバリ. シリーズに見られる正方形を幾つかのマス目に区. エーション毎に4マス1グループとして1色を与. 切り,配色する画面構成はイッテンの色彩研究に. え,4グループ分で4色を配し,さらに16マスの. 関する作例12)を思わせる。おそらくマックス・. 周囲を囲むよう外枠に1色が配されている。各バ. ビルはイッテンの作例を知りながら,その構成を. リエーションの使用色を表2に記す13)∩. 倣っている事と推察する。単純に正方形を16分割 表2 各バリエーションでの使用色 バリエーション. NO.1 NO.2. ワニバ)藍. 紛っ◎◎噂. N9.5(自). 2.5Y8/12(黄). 2.5G5/8(緑). 2.5PB5/10(青). ▲◆◆●. 5R5/12(赤). 5GY6/8(黄緑). 外枠の色 朱赤. 10PB3/10(紫青) 2.5BG4/3(深緑) オレンジ. NO.3 10R9/2(淡ピンク) 7.5GY9/2(淡黄緑) 7.5BG9/1(淡青). NO.4 NO.5 NO.6 NO.7 NO.8 NO.9 NO.10 NO.11. く】(>◇ゆ. 5PB2/1(近似黒) 7.5PB3/10(紫青). 2.5G5/8(緑). 7.5Y9/4(淡黄) 7.5R5/14(赤橙). 浅茶 三蔓三 =. 10Y7/8(黄緑). 10YR8/8(薄椅). 7.5Y8/10(黄). 5YR7/10(椅). 三蔓三 ‖. N9.5(自). 川YR/12(黄). 2.5B5/R(緑青). 5PB4/川(青). 灰. 7.5P7/6(淡赤紫) 7.5P4/10(赤紫) 5R7/6(浅赤). 2.5YR6/10(橙). 10B4/6(深青). 10B6/8(薄青). 黄. 5R6/10(赤). 2.5Y8/12(黄). 黄緑. 10G5/8(緑). 5YR7/12(黄赤). 7.5R5/12(深橙). 7.5PB3/6(柑). 紫. 7.5R4/3(茶). 7.5G5/8(緑). 2.5B5/2(灰青). N2.5(近似黒). 赤紫. 2.5B5/8(緑青). 10B6/8(浅青). 7.5P6/10(浅紫) 2.5RP6/12(紫赤) オレンジ. (上欄の▽Q◇患記号は図8中を意味する。それぞれ1観で1色である。). 63.

(11) 八重樫 良 二. 同様に「16星座」シリーズについても視覚要素 4.バリエーション展開における「組み合わせ」 の発想. 毎に分けて考えてみたい。ここでは半円と1/4円 が回転移動を繰り返すことでバリエーションの展. 考察したよう本稿で取り上げる2つのシリーズ. 開が計られている。この手順について半円と1/4. に関して,表現様式に違いはあるが共にシステマ. 円の90度毎の位置関係に着目して,それらの組み. テイツクな方法をもってバリエーション展開され. 合わせを各項目とする相関表に置き換えて説明す. たことが分かった。マックス・ビルは「11×4:. る。図12にその組み合わせを示す。. 4」シリーズにおいても,その配色の配置を示す スケッチを描き,同じ内容の説明を英語と独語で メモ書きしている。そこにはバリエーション展開 の整然とした手順が示されているが,実際にはそ. 同. /つ. 半円 1/4円 e. ○. の意味を良く理解できなかった。最初の16マスを. 埋める条件に関する説明が省かれているため一見 しただけでは,単に11点のバリエーションを示し. ㌧ 団 NO.1. N(⊃GOOD. N(⊃.13. ているかのようしか映らないであろう。スケッチ に示される組み合わせ,そこに記される矢印が何 を意味するかを知るには,先ずマス目を埋める. √ ⑦ ⑦ NO.2. N(⊃.10. N(⊃GO(⊃D. ルールを知らなくてはならない。そして,その条. 件を満たす組み合わせは何通りあるのか,などと いった数学的な興味がその読み取りに必要であ. ○ヽ 団 ㊦ 固 NO.3. N(⊃.11. NO.12. る。それは全く順列,組み合わせといったことに. 関する数学的概念を美術表現したかのような内容 が示されている。スケッチの内容からはマス目を. ノ 国 ㊦ ヱ NO.4. NO.9. NO,16. 埋める配置の仕組みをマックス・ビルが熟考して いたことが伺われ,精選した結果のみが記されて いる。その興味の中心は「どのようにして,その. 1 ① ① ニ NO.5. NO.8. NO.15. バリエーションを生むか」ということについて,. 主観を排除し客観的な方法に預けることの模索に あったように思われる。. P ㊤ ① ⑦ NO.6. NO.7. NO.14. バリエーション展開の模索は配置する4マスを さらに1マス毎に分けてとらえることから始ま る。既に考察したよう16マスの正方形が90度回転. 縦欄に1/4円の動き、横欄に半円の動きを置き、. その組み合わせによってバリエーションを得る方法 図121/4円と半円との相関による組み合わせ. する毎に同じ4マスに再配置するので,重複を避 けて配置できる個所は限られている。「11×4:. 先ず,半円の移動に着目してみる。それは90度. 4」シリーズでは,先に説明した手順を繰り返し. 回転することで,左半円,上半円,右半円の3種. てバリエーション展開が計られている。まるで. の図形として配置されている。次に1/4円につい. トーナメント表を作るように一旦,手順を定めて. ては,左下1/4円,左上1/4円,右上1/4円の3種,. しまえばあとはその手順を繰り返すことでバリ. 及び鏡映の関係にある3種,計6種の図形として. エーションが得られる。こうした自動的とも言え. 配置されている。それらを独立した図形として扱. る手法がこのシリーズではとられている。. い,横の項目に半円の3種の位置を,縦の項目に. 64.

(12) 構成作品の色彩教育への応用について(4). 1/4円の6種の位置を置いて相関表を作成すると. このことはコンピュータ上でのマクロ的な数式処. き,横と縦が交差する各欄はそれらの組み合わせ. 理14)を思わせる。マックス・ビルが考えたバリ. を示すことになる。マックスビルは「描かれる線. エーションを展開する方法はプログラマブルな性. は互いに横切らないこと,線分に分けないこと,. 格を強く帯びている。1949年に出版した自己の作. 交差しないこと。」としているので,それに違反. 品集にマックス・ビルは「現代美術における数学. する組み合わせを除く(国中では「NOGOOD」. 的アプローチ」という文章を掲載している。その. と記す箇所)。その組み合わせはバリエーション. 論考の中でカンディンスキー,モンドリアンらの. で表される16通りであり,その数とパターンはシ. 抽象表現を取り上げ,数学的手法と構成表現との. リーズ中のバリエー. 結びつきについて自分の考えを表わしていること. ションと合致している。. こうした手順の繰り返しは先に記した「11×4. を前稿で報告した。これらのシリーズで計られた. :4」でのバリエーション展開作品の手法と同質. 方法はその造形思想の延長上にあって,主観を排. の発想が感じられる。トーナメント表を作ること. した数理的な美を志向するマックス・ビルの個性. と同様に相関表上での組み合わせは機械的に行わ. をよく表しているように思われた。. れる。図12での各欄に示したナンバー数字は本書. で実際に展開されるバリエーションの順番を示し ている。1∼6番目まで上からの順に沿って展開 され,6番目の行のまま右隣の列に移って7∼9. 5.「11×4:4」シリーズにおける色の配置 本稿で取り上げた2つの作品の内,「16星座」. 番目までは下から順に,10番目と11番目は上から. シリーズにおいて各バリエーションそれ自体は単. の順になり,9番目と10番目の間が不連続である。. 色であるので,対比感や類似感といった色彩のコ. 再び11番目の行のまま右隣の列に移って12番目に. ントラストは生じず,その配色効果が問われない. なり下からの順で13番目へ,そして再び飛んで一. 表現様式がとられている。それに対して,「11×. 番下から順に14∼16番目に並ぶ。こうしてみると. 4:4」シリーズは,明らかに配色効果の探求が. 10番目と11番目は上からの順,12番目と13番目は. テーマとなっていることを思わせるシリーズと. 下からの順である点はどちらかに揃う方が順番に. なっている。このシリーズでは類似感のある配色. 整合性があるように思われ,ビルが碇示したバリ. やはっきりと差のある配色などがバリエーション. エーションの順番には疑問が残った。このことの. で碇示されており,その印象の違いが比較できる。. 理解には先に記した各要素の動きのルールに着目. それらは色彩の対比効果を検証する配色見本のよ. した考え方が有意ではないかと試みたが不明で. うであり,イッテンの作例と同様である。唯一の. あった。その理解に至らなかったが,図12により. 違いは,「4色全部を同じパターンで配置できる. 得られる視覚的要素の組み合わせは実際と一致. こと。」としていることである。. し,展開される順番についても大まかには沿って. 先の考察でマックスビルが記した「11×4:4」. いることが判った。これらのバリエーションは全. シリーズのバリエーション展開の方法に関する規. く機械的な組み合わせによって得られていると言. 則性として3つの条件を挙げた。それらはいずれ. える。. も色の配置に関するものばかりである。マック. このように本稿で取り上げた2つのシリーズに. ス・ビルは配色パターンの規則性の発見にオリジ. は,そのバリエーション展開に視覚的要素を組み. ナリティを見いだしていることが察せられる。. 合わせることに着目した発想が見られる。「16星. イッテンの場合にも「配色する面積は同じにする. 座」シリーズでは描かれる円弧の配置について,. こと。」と「1マスに見えるようにすること。」と. 「11×4:4」シリーズではその配色の配置につ いて,その組み合わせが自動的に生成されている。. いう2点の条件付けをその配色実験の作例から推 察することができる。その点は同様であるが,色. 65.

(13) 八重樫 良 二. の配置への考え方にそれほど明快な条件付けがな. 問題:. されているようには感じられない。この点で「11. 正方形を縦4段横4列に分割し16のマス目を作っ. ×4:4」シリーズはイッテンの色彩実験とは異. てください。それを以下の1∼4に示す手順に. なる観点が見いだされる。それは「色彩の図形化」. よって塗りつぶすことにしました。都合,4色で. といった観点である。. 4マスずつ塗って,16マスが塗られることになり. 普通は色と形は不可分であり,常に一緒に認識. ます。16マス全部を塗りつぶしてください。. される。強いてそれを分離した表現を考えるなら, 例えば塗り絵の例が挙げられよう。塗り絵は輪郭 線で形のみを表して意図的に色彩の要素を表さな. (マスを塗りつぶす手順). 1.任意の1色で16マスの内の4マス分を塗りつ. いようにしている。多くの場合,形と色は同時に. ぶす。ただし上下左右のすぐ隣り合うマス目を. 認識される要素であるため,色彩の要素のみの影. 並べて塗ることはできない。. 響を知るには塗り絵の場合とは逆に,形を表さな. 2.正方形全体を90度回して天地を改め新しく置. いようにする辛が必要になる。それには抽象的な. き直して,別な1色で同様に4マス分を,ただ. 幾何形態によって配色を表現することは有効な手. し1の時と同じ配置で塗りつぶすこと。1番目. 段である。その形には具象的な意味が伴わないの. の手順で塗られたマスと重なるマスがあったな. で,視覚的な印象の形成にあたって,色彩の要素. ら1の手順からやりなおし。. が重点を占めることが期待されるからである。. 3.もう一度,同じ方向に正方形を90度回して,. イッテンの作例が単純な正方形の分割によるの. 新たな色を用いて同様に1の時と同じ配匿で塗. は,こうした理由があるためである。そのことは. りつぶすこと。塗られたマスと重なるマスが. 色彩学習にとって目的に適って,今日の色彩教育. あったなら1の手順からやりなおし。. でも同様の配色見本をもって説明されることがほ. 4.さらにもう一度,同じ方向に正方形を90度回. とんどであろう。「11×4:4」シリーズでもそ. して,同じように1で塗った時と同じ配置で塗. れは同様である。. りつぶすこと。マス目の塗りつぶしにはこれま. しかし考察したよう,マックス・ビルは新たに 配置へのルール付けの観点から,配色にあたって. でとは違う別な色を用いること。塗られたマス と重なるマスがあったなら1からやりなおし。. も形の問題を考えていたことが分かる。ここで記 す「色彩の図形化」とは単独の形を何かしら意味. この間題の解答例の一つが「11×4:4」シリー. のある形にすることではない。色の配置パターン. ズとも言える。この間題文の文末を「16マス全部. を図形としてとらえてその配置の型を与える,と. を塗りつぶせる配置が何通りあるか探しなさい。」. いった意味を指す。具象的に形を描く行為とはま. としたなら,それは形に関する思考トレーニング. た別な意味で形を描く事であり,視覚的ではなく. の性格を強めた問題となる。その一方,「きれい. 思考的に形をイメージする行為とも言えよう。本. に感じる何通りかの4色セットを示しなさい。」. 文中での「パズルのようなルール」というような. としたなら,それは色彩感覚をトレーニングする. 言葉はこのことを指している。同じような表現様. 問題となる。後者の観点に立った制作はイッテン. 式であっても,この点でイッテンとマックス・ビ. が既に試みていた訳である。実際には「きれいに. ルには違いがある。イッテンは視覚的に,ビルは. 見える」ことの内容は簡単ではない。イッテンは. 思考的にとらえている。. 色の対比感に着目し,その色彩効果を究明して色. 「11×4:4」シリーズでの色の配置の方法を. 彩論を著している。「11×4:4」シリーズにお. 仮にパズルとして記してみるなら以下のような例. いてマックス・ビルは前者の観点を導いている. 文が考えられる。. が,配色の問題がこのシリーズの主題であること. 66.

(14) 構成作品の色彩教育への応用について(4). に代わることはない。各色の配置方法にイッテン. いく考え方であり,全体の形を基準として部分の. には見られない特質が付け加えられている,とい. プロポーションが割り出されるような性質を持つ. うことである。. 作品が多い。それに対して,要素を配置して構成. この配置の考え方は重複しないように配置しな. ければならないことから,制限的な性質を帯びて. している作品は「16星座」シリーズしか見られな い。. いる。そのことはエッシャーの図と地の問題に関. しかし,どちらにしてもマックス・ビルの場合. 係深い作品や組み木の造形と同じ性質となってい. には視覚的印象は,知的に抑制された幾何的な表. る15)。それは形が一つの図形だけに属しておら. 現様式となっている。これらの平面作品を含めて,. ず,隣り合う別な形の輪郭線にもなることから生. マックス・ビルの作風は視覚的要素を限定的に. じる制約であるが,「11×4:4」シリーズにお. 扱っていることが特徴的な点として挙げられる。. ける色の配置を考えるにはこれらと同様の発想を. そのスタイルはミニマムアート16)と呼ばれる表. 必要とする。最初の4マスの配置が16マス全てを. 現要素を最小に押さえた無機的な表現様式を思わ. 埋めることに直結していて,その配置の型は互い. せる。本書はいずれも展覧会で公開された作品を. に関連し合っている。マックス・ビルにとってそ. 掲載しているが,それらは幾何形態のみから構成. の配置を考えることはまさにパズルゲームのよう. され,基礎構成における実験的試みを思わせるも. であったことと推察される。このように「11×4. のばかりである。マックス・ビルはまるで数学者. :4」シリーズに見られる色の配置の仕方には形. のように結論のみをエレガントに示し,苦労した. に関する造形発想の観点を含んで,色彩に関する. 模索の後はそのスケッチからは感じられない。作. 学習課題に応用することへの可能性を感じてい. 品に関する記載から読みとられる制作に要した経. る。. 過時間からそれを察するだけである。. マックス・ビルの作品の多くは分割により構成 6.まとめ. 本稿で取り上げた2つのシリーズについて平面. されるが,その画面構成の方法とともにその配色 計画にもマックス・ビルらしさがよく表れてい る。「11×4:4」シリーズの画面構成は止方形. 構成の観点からは,「16星座」シリーズは円弧の. の縦横を4区分し,16マスに分けるという単純な. 配置による画面構成であるのに対して,「11×4. 分割面から成る。このシリーズではその配置の仕. :4」シリーズでは面の分割によっていることが. 方にこそ意味があり,造形思考の対象となってい. 挙げられる。配置と分割は画面構成を行う際の基. たことが分かった。「4マス1組を4度置き直し. 本的な行為であり,その視覚要素について,新た. て16マスの全てを埋めること。」いう条件を満た. に要素を配置し加えることで増していくのか,す. すには多くの思考を要する。4色の選択は任意で. でに配置した形を分割することで増していくのか. あるが,配置は自動的になされる方法をマックス. といった違いがある。例えば前者の例としてカン. ビルは生み出しているのである。そこに数学的な. ディンスキーの抽象画のような画面構成を,後者. 思考が見られる。. の例としてモンドリアンの作品などが挙げられよ. こうした作品の特質はマックス・ビル自身の経. う。部分の集合を全体と観るか,全体を細分化し. 歴と資質によると考えられる。16才からチュー. たものを部分と観るか,結果的には同じであって. リッヒの応用美術学校で5年間,銀細工の技術を. も,画面構成をどちらの側からアプローチして考. 学び,その在籍中にル・コルビジュ17)の講演の. えているかはその表現に影響を与えている。本書. 中でバウハウス設立趣意書の話を聞いて,バウハ. で紹介されるマックス・ビルの各作品はほとんど. ウスで学ぶ道を決意している。その時,すでに総. が分割によるものである。全体から部分を作って. 合芸術としての建築に興味があったことが伺われ. 67.

(15) 八重樫 良 二. る。その才能はその後,スイスに帰国した後の多. 方面に渡る造形活動で大いに発揮された。とりわ け建築家としての業績が多く残されている。日本. クス・ビル自身がシステムという言葉を用いて説明し ている。また,このシステムは1944年に描いた作品の. 主題を再考したものであることが分かる。 7)測色機(colorreaderCR−11KONICAMINOLTA社). では彫刻家または工業デザイナーとしてのイメー. を使用。前掲「構成作品の色彩教育への応用について(1)」. ジが強いが,こうした経歴からマックス・ビルが. にて,色に関してPCCS体系による近似色の候補を記. 理数的な資質に恵まれていたことは十分,察せら れる。マックス・ビルは本来,主観的であり自由. であるはずの色彩表現に関しても理屈をもって考 えていたように思える。色彩教育を考えるには配 色美を客観的にとらえる必要を感じて,マック ス・ビルの作品性にその可能性を見いだしてい る。本稿で考察した「組み合わせ」の発想は工業 デザインの分野では製品のデザイン開発の際の検 討プロセスで応用される手法18)にも類似してい る。今後はこうした理数的なアプローチによる配. している。本稿では新たに測色機を使用して,得られ. たマンセル体系による色表示を記している。なお本稿 では修正マンセル体系を指して単にマンセル体系と記 した。 8)前掲「構成作品の色彩教育への応用について(1)」にて,. その使用色16色についてb8b7b6b5b4blb24 (1t24+)b23(1t23+)1t22+1t18+1t16+b13(1t13+)b12. bllltlO+b9として報告した。Ⅴの記号で表される鈍 色に相当する調子の色そのものは使用されていない。 9)正方形を16分割した小さな正方形の一つ一つは升目 となるが,本稿では「マス目」または単に「マス」と. 記している。 10)マックス・ビルによるスケッチにその説明文が手書. 色の方法に着目して,それを色彩教育に応用する. きで添えられているが,その配置の組み合わせの展開. 可能性を探っていきたい。. に関する内容のみが記され,「16星座」の場合のように. 作品シリーズの規則性そのものは説明されていない。 ここでは類推して記した。 註. 11)ヨハネス・イッテンJohannesItten スイス生 1888−1967。1919∼23年の期間,バウハウスの教師とな. 1)原題はNO.7「16constellations」. り構成主義的な造形教育を行っている。1961年に「色. 2)北海道教育大学紀要教育科学編第54巻第1号 「構. 彩の芸術」を著した。1927−28年にデッサウでのバウハ. 成作品の色彩教育への応用について(1)」175頁∼189頁. 北海道教育大学紀要教育科学編第56巻第2号 「構 成作品の色彩教育への応用について(2)」175頁∼186頁. 北海道教育大学紀要教育科学編第57巻第2号 「構 成作品の色彩教育への応用について(3)」197頁∼209頁. ると思われる。 12)イッテンの配色実験に正方形を5列5段の計25のマ ス臼に分割し,黄,赤,青,白,黒の5色を5マスず. これまでに以下の4作品を収り上げて考察している。. つ配置したものがある。それは色相のコントラストに. NO.1「多角形のバリエーショ ン」,NO.3. 関する実験であり黄,赤,青を有彩色の3原色として,. 「7scarions」,NO.6「5つの正方形における色変換」, NO.12「8つの色変換」. 3)gedrucktbeifernandmourlot,paris,fursociotein−. そのコントラストは最も大きな差をもって視覚を刺激 し,3原色から遠ざかるほど色彩それ自体のコントラ. ストの効果は弱まっていくことをイッテンは示した。. ternationaled’artXXesiecle,paris,fertiggestelltim. イッテンは同様の方法で明暗のコントラスト,寒暖の. april1974と記されている。. コントラスト,補色のコントラストといった属性毎の. 4)本稿では便宜的に「1/4の円」と記した。製図的には 1/4円よりわずかに長い円弧であり,約1/4の円に相当. する。 5)「鏡映」とは鏡に映すことであり左右の対をなす像,. 色彩効果の検証を行っている。 13)各マス目を埋める4色の他に16マスの正方形を囲む 枠色があり,測色はしなかった。表2ではその一般的. な色名を補記した。. リフレクト効果によってもたらされる像を指す。線対. 14)一連の幾つかのステップを繰り返すような数値処理. 称のもとに左右が逆転したとなる像となるが,マック. について,プログラム言語を用いてその手順を定めて. ス・ビルは回転移動によって得られる点対称をなす像. 自動的に行うコンピュータ処理のこと,言うなれば小. も含めて「鏡映」と記しているようである。. さなコンピュータプログラムのようなもの。. 6)dassystemfardaszugrundgelegtethemageht zurdckaufeinbildausdemjahr1944と記され,マッ. 68. ウス末期の学生であったマックス・ビルは直接,その 教育を受けた訳ではないが当然,その影響を受けてい. 15)北海道教育大学紀要教育科学編第49巻第1号 「デ ザイン教育における教材とその造形発想(2)」181頁∼189.

(16) 構成作品の色彩教育への応用について(4). 頁において組み木のデザインについて,図と地の観点 からそのゲシュタルト的な特質を指摘し,エッシャー. の作品との関連性を挙げている。 16)視覚的要素など表現する要素を最小限に留めたごく 単純な表現様式,色や形について装飾性を排し,無機. 的で禁欲的な表現イメージの美術表現を称してミニマ ムアートと呼ぶことがある。または単に物理的に大き さが小さくミニチュア的なサイズの表現を指す場合も ある。 17)ル・コルビジュ Le Corbusier フランス生 1887−1965。. 18)デザイン対象とする製品に関する機能的要因や生産 的要因など,様々な関係要因を事項として列挙し,相. 関表にまとめる手法がある。相関表上で組み合わせる ことで新たな事項の発見につなげるといった意義もつ が,視覚要素を相関させて形の組み合わせを探ること. との類似性が感じられる。. (旭川校教授). 69.

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