オラ ンダにおけ る ピ ース フ ルス ク ールの授業づ く り に関す る教育方法学的一考察
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日本での授業づ く り に活かす ために 一
A Study on the Lesson of Peaceable School in the Netherlands Developing
“Peaceable Lessons” in Japan
奧 村 好 美*
萩 野 奈 幹**
OKUMURA Yoshimi
HAGIN0 Namiki
本稿では、 オ ラ ン ダの ピ ース フ ルス ク ールの授業づ く り を教育方法学的に考察す るこ と で、 日本におけ る授業づ く り に 活かす ための足がかり を得 る こ と を目的 と し た。 そのために、 まずは教育目標、 教材 ・ 教具、 指導過程 ・ 学習形態、 教育 評価 の 4 つの視点 で ピ ース フ ルス ク ールの授業 づ く り につい て考察 を行 い、 そ れぞれに おい て重視 さ れて い る こ と を整理 し た。 次に、 1 つの試みと し て、 先述 し た 4 つの視点 をふま え て日本での授業案 を提案 し た。 その結果、 日本での実践に あ た っ ての ポイ ン ト や留 意点 を指摘で き た。 ①日本で ピ ース フ ルス ク ールのよ う な授業 を実施す る ためには、 形式 だけ真 似 をす るのではな く 、 理念 を参照 し つつ、 子 ども た ち に願う 姿 を も と に授業 を柔軟に組み立 て、 子 ども た ち の生活 と つ な げてい く こ と が重要であ るこ と 、 ②特定の価値 を教え込 も う と す るのではな く 、 一人ひと り に違いがあ るこ と を尊重 し つ つ、 共 に生き るあ り 方 を学べ る よ う にす る と い う 理念 を も と に、 参考に で き る枠組み を参照す る こ と 、 ③子 ど も た ち だけ で な く 、 教師自身 も 子 ども に求める振 る舞い を日々の指導の中で体現で き てい るか を自問す る こ と が重要であ る と 考え ら れた。 以上のよ う な形 で授業づ く り を行 う こ と に よ っ て、 オ ラ ン ダの プロ グラ ムの理念等 を尊重 し つつ、 日本の子 ど も た ち に合 う 授業づ く り の道が開かれる よ う に思われた。 キ ーワ ー ド : ピ ー ス フ ル ス ク ー ル, ピ ー ス フ ル レ ッ ス ン、 オ ラ ン ダの教育
Key words : Vreedzame school (peaceable school) , peaceable lesson, education in the Netherlands
1 . は じ めに
本稿 で は、 オ ラ ン ダの ピ ー ス フ ル ス ク ールの授業 づ く り を教育方法学的に考察す るこ と で、 日本におけ る授業 づ く り に活かす足がかり を得 る こ と を目的 と す る。 オラ ン ダの ピ ー ス フ ル ス ク ール ( Vreedzame School) と は、 社会的 コ ン ビ テ ン シーや民主的市民性 を育成す る ための 主に初等学校向け の プロ グラ ムで あ る ')。 ニ ュ ー ヨ ー ク で開発 さ れた 「 コ ン フ リ ク ト を創造的 に解決す る プロ グラ ム (Resolving Conflict Creativity Program)」 を も と に、 ユ ト レ ヒ ト 大学 (Universiteit Utrecht) のデ ・ ウ'イ ン タ 一 (de Winter, M ) 教授の協力等 を得 なが ら 、 教育サポー ト 機関のエ デユニ ク 社 (Eduniek) が開発 を行 っ た。 こ の プロ グラ ムの特徴は、 大き く 3 つにま と めら れる。 ーつめは、 週に一度 プロ グラ ムに も と づ く 授業が実施 さ れてい る こ と で あ る。 本稿 では、 こ の授業の こ と を ピ ー ス フ ル レ ッ ス ン と 呼 ぶ。 二 つ めは、 メ デ イ エ ー タ 一 (け んか等の仲裁 をす る人) の育成で あ る。 ピース フ ルス ク ー ルでは、 高学年の子 ども のう ち希望者が学外 で研修 を受 け 、 メ デ イ エ ー タ 一 の資 格 を取 り 、 子 ど も 同士 の衝突 が 起き た際に仲裁 を行 う 。 三つめは、 こ う し た取 り 組みを、 地域 を巻き 込 んで実施 し てい る こ と であ る。 場合に よ っ ては、 地域の人や保護者が研修 を受け る こ と も あ る。 こ れら の 3 つは互い に大 き く 関わっ てお り 、 切 り 離す こ と はで き ない。 し か し なが ら、 研究の第 1 段階と し て、 本稿 では、 ピース フ ルレ ッ ス ンと 呼ばれる授業づ く り の 側面 に焦点 を当 て て考察 を行 い たい。 本 プロ グラ ムは、 日 本 に も 紹介 さ れ、 実践 も 行 われて き てい る。 例え ば、 リ ヒ テ ルズ直子は、 ピ ース フ ルス ク ー ル プロ グラ ムの授業 や研 修の様子 な ど を含 む プロ グラ ム の全体像 を具体的 に紹介 し てい る 2) ま た、 奥村好美は、 ピ ー ス フ ルス ク ールがい かに そ の教育 の質 を評価、 改善 し てい る かに焦点 を当 て て、 分析 し てい る 3) さ ら に、 熊 平 美香 は、 オ ラ ン ダの ピ ー ス フ ル ス ク ー ル プロ グ ラ ム を 紹介す る と 共に、 日本版に再開発 し、 日本での取 り 組み を 進め て い る 4) こ の よ う に、 オ ラ ン ダの ピ ー ス フ ル ス ク ー ルに つい て は、 す で に日 本 に紹介 さ れて お り 、 日 本版 に ア レ ン ジ さ れた ピ ー ス フ ル ス ク ー ル プロ グ ラ ムの取 り 組 み も 実 施 さ れてい る。 こ のこ と か ら 、 日本 で の関心 が高 ま っ てい る と いえ る。 し か し なが ら、 プロ グラ ムの概要的 な紹介及 び最初か ら ア レ ン ジ さ れた プロ グラ ムの提供 のみで は、 日 本 の教師 た ち が オ ラ ン ダの ピ ー ス フ ル ス ク ー ル プロ グ ラ ムの理念や考え方 を活か し て子 ど も た ち に市民性 を育 成 し たい と 願 っ て も 、 目の前の子 ど も た ち に応 じ た授業 * 兵庫教育大学大学院教育実践高度化専攻授業実践開発 コ ース 講師 * * 兵庫県加古川市立別府小学校 平成30年 4 月25 日受理
づ く り を行 う こ と に困難 を伴 う 恐 れがあ る。 そ こ で 、 本研 究 で は、 オ ラ ン ダの ピ ー ス フ ル ス ク ール におけ る ピ ース フ ル レ ッ ス ンの授業づ く り を教育方法学 的に考察する。 教育方法学的な考察と し ては、 教育目標、 教材 ・ 教具、 指導過程 ・ 学習形態、 教育評価の 4 つの視 点 で 5) 考察 を行 う 。 こ れに よ り 、 オ ラ ン ダの プロ グ ラ ムにおけ る授業づ く り で核 と な る考え方 を抽出す る。 そ の上で、 1 つの試みと し て、 日本での授業案 を提案 し 、 日本 での実践 にあ た っ ての ポイ ン ト や留 意点 の整理 を行 う 。 そ れに よ り 、 日 本 に おい て ピ ー ス フ ル レ ッ ス ンの考 え方 を活かし た授業づ く り を行う 道を開き たい。 な お、 ピ ー ス フ ル ス ク ール プロ グ ラ ムの新 し い ウ ェ ブ サイ ト に よ れば、 ピ ー ス フ ル ス ク ール プロ グ ラ ムは発展
協 議 、 意 見形 成
と 意思決定
・ 見解 を も つ
・ 自分 の見解 を
擁護す る
・ 他 の人 に 耳 を
傾け る
・ 異 な る 見解 に
立っ て考え る
・ 討論す る
・ 見解 を 変 え る
準備 がで き て い
る
・ 妥協す る
・ 決 定 し た こ と
に忠実で あ る
・ 少数 派 の見解
を考慮す る
・ 批判的 に考 え
る・ 情 報 を集 め 、
批判的 に分析 す
る を 続け て お り 、 例え ば高学年 の ブロ ッ ク 6 ) の内容が一 部新 し く 更新 さ れる な ど し てい る 7) し か し ながら 、 本稿 で は、 資料 の関係上、 基本的 に ピ ー ス フ ルス ク ールの教 師用指導書第 4 版 (2011年版) と 、 それに合わせて ピー ス フ ルス ク ールの旧 ウ ェ ブサイ ト の情報 に も と づ い て分 析 を行う 。2 . ピ ース フ ル ス ク ール プ ロ グ ラ ムの概要
ま ず、 ピ ー ス フ ル ス ク ー ルで は、 ク ラ ス や学 校 は生活 コ ミ ュ ニ テ ィ と み な さ れ る 8)そ の コ ミ ュ ニ テ ィ で 子 ど も た ちは、 自分が聞い て も ら い、 見 て も ら っ てい る と 感 じ、 「声」 を獲得す る。 ま た、 子 ども たちは 「民主的 な市民」 で あ る と は、 何 を 意味 す る のか を学 ぶ。 さ ら に、 ピ ー ス 表 1 ピ ース フ ル ス ク ール プロ グ ラ ムの目標 (詳細版)衝突 を対処する
衝突解決の理
解 と 知識
・ 衝突解決の自
分 の ス タ イ ル に
ついての理解
・ 他 の人 の立場
に立っ て考え る
交渉す る
' ウ イ ン ' ウ イン の解 決 を 追求
す る
・ 身 体的 も し く
は精神的 暴力 を
放棄す る
・ 仲裁の知識
・ 仲裁の技能
・ 衝突 の際の怒
り に対処す る
コ ミ ュ ニ テ ィ へ
の責任
互いへの責任
ク ラ ス 、 学 校
や地域への責任
気遣い
・ 正義感
・ 参加
・ イ ニ シ ア チ ブ
を取 る・ 会話 に加 わ り 、
共に考え る
・ 規則 を守 る
・ 共働す る
・ 助 け に な る こ
と
基礎的な個人内の構成要素 :
・ 内省
・ 自信 / ポ ジテ ィ ブ な自己イ メ ー ジ
・ 自己マネ ジメ ン ト / 自分の衝動 をお さ え る
こ と がで き る / 自己 コ ン ト ロ ール
・ 自分の振 る舞い が他者へ も た ら す効果の理
解
違 い に 対 し て オ
ー プ ンで ある
・ 寛容
・ 他人 の規則や
習慣に合わせ る
異 な る人生哲
学や生活 ス タ イ
ル を尊重す る
・ 異 な る 生活 状
態 に あ る 、 異 な
る文化 の、 他者
に共感す る
・ 信仰 の、 意思
表明 の自 由 に 建
設的に対処す る
先 入 観
(voor oor dee1) と
判 断 (oor dee1) の
間の違い
・ 哲学的 (イ デ
オ ロ ギー の) 潮
流の知識
民主的 な リ テ ラ
ン ー
・ 民主的 な 制 度
( 第二議会、 憲
法な ど)
・ 民主主義的 な
行動ルール
・ 民主主義 に お
け る権利 と 義務
民主主義 の原
理 (選挙、 支持
者、 議員団)
・ 民主主義 に お
け る メ デ ィ ア の
役割
基礎的な人間関係の構成要素 :
・ 感情移入 / あな た自身 を他の立場に置いて
考え る こ と がで き 、 考え たい
・ パー スペ ク テ ィ ブ を変 え る こ と がで き る
・ 他の人の行動や動機の理解
・ 好奇心が強い / 他者や何か新 しい も のに対
し オー プ ンで あ る
積極的で社会的かつ道徳的な雰囲気 :
・ 教師た ちは快 く 働い てい る
・ 教師た ちに よ る不適格な行動は未然に防がれてい る
・ 子 ど も た ちは安全に感 じ てい る
・ 子 ど も た ちは聞い て も らい 見て も ら っ てい る と 感 じ てい る
みんな他者の立場に喜んで立つ
・ みんな互い に積極的な方法で接 してい る
フ ルス ク ールでは、 子 ど も た ち が、 自分 た ち がそ こ にい る こ と が重要であ る こ と 、 つま り 自分 た ちが 「重要であ る」 こ と を経験す るこ と で、 子 ども たち にパースペ ク テ ィ ブ と 希望 を提供す る こ と も 重視 さ れてい る。 こ れら の思 想 が プロ グラ ムの根底 に あ る。 プロ グラ ムで は、 子 ど も た ち が、 図 1 の 5 つ を学 ぶこ と が目指 さ れてい る。 1 . 民主的 な方法で、 互い に決定 を行 う 2 . 建設的に衝突 を解決す る 3 . 互い の た め、 コ ミ ュ ニ テ ィ の た め に責任 を取 る 4 . 人々の間の違い に対 し て オ ー プ ン な態度 を取 る 5 . 私 た ち の民主的 な社会は どんな原理 で整え ら れて い る のか 図 1 ピ ー ス フ ル ス ク ール プロ グ ラ ムの目標 ま た、 表 1 では、 目標が詳細に コ ン ビ テ ン シーと し て 記述 さ れてい る。 表 1 を見 る と 、 子 ど も レ ベルの目標だ け で な く 、 教師 レ ベルや学校 レ ベルでの目標 も含 ま れて い る。 ま た、 コ ン ビ テ ン シー と さ れて い る も のの中には、 衝突 を解決す る ための方法 と い っ た知識や、 実際に仲裁 で き る、 議論で き る と い っ た技能、 衝突 を積極的 に解決 し たい と い う 意思 と い っ た態度が含 ま れてい る。 知識 だ け で な く 、 技能や態度 も省察のために蓄積 さ れる学習 プ ロ セ ス におい て重要 な役割 を果 たす。 子 ども た ち は、 例 え ば衝突 に対処す る際の自分独自のス タ イ ルを省察す る こ と を学 ぶこ と も 求 め ら れてい る。 コ ン ビ テ ン シー と は、 こ う し た知識、 技能、 態度、 省察の混合物であ る と 考え ら れてい る。 ま た、 民主的 な リ テ ラ シーが含 ま れてい る こ と か ら は、 プロ グラ ムの学 び を ク ラ ス や学校内 に と どめ るの で は な く 、 社会の仕組みや社会で生 き てい く こ と へ と つ なげ る こ と が求 め ら れてい る こ と がわか る。 実際、 プロ グラ ム では、 学年 が上が っ て く る と 、 選挙の仕組みな ど を含 め、 民主主義 に つい て も 学べ る よ う に な っ てい る。 こ う し た プロ グ ラ ムに お い て、 ピ ー ス フ ル レ ッ ス ンは 中核 と な る。 レ ッ ス ンは、 次 の 6 つの ブロ ッ ク で 構成 さ れてい る。 こ の ブロ ッ ク は全学年共通 し てい る。 毎年同 じ内容の ブロ ッ ク を実施す る こ と で、 発達段階に合 わせ て、 少 し ずつ よ り 深 く 学べ る よ う に カ リ キ ュ ラ ムが組ま れてい る と いえ る。 1 . お互い に ク ラ スの一員 で あ る 2 . 自分たち で衝突 を解決す る
3 . 互いに分かり 合う
4 . お互い に心 を持 っ てい る 5 . みんな自分 な り に貢献 し てい る 6 . 私た ち は みんな違 う 図 2 ピ ー ス フ ル レ ッ ス ンの ブロ ッ ク 本稿では、 研究の第 1 段階と し て、 こ のピース フ ルレ ッ ス ンに焦点 を当 て る。 し か し な が ら 、 ピ ー ス フ ルス ク ー ルは、 単 な る一連の授業以上の も ので あ る こ と が強調 さ れてい る。 授業は単 に重要な 1 手段にす ぎない と い う 。 そ れ以上 に、 ク ラ スの教師 や子 ども と 関わ る学校内 の全 ての大人が、 い つ で も どんな状況 で も ピ ース フ ルス ク ー ルの思想 を日常 に適用す る こ と が重要で あ る と さ れてい る。 も し子 ど も た ち の間 に衝突 が起 き た場合、 そ れを自 分 たち で建設的 な方法で解決 し てほ し い と 望むのであれ ば、 教師 と し て自分 も そ う し な く てはな ら ない と 考え ら れてい るの で あ る。 ま た、 プロ グラ ム導入に際 し ては、 授業 の実施以外 に も、 学校教職員向けの研修やク ラ ス訪問、 保護者向け に 情報 を提供 す る保護者会 やワ ー ク シ ヨ ツ プ、 子 ど も の メ デ イ エ ー タ 一 の研 修等 が総合的 に実施 さ れる。 こ れら に つい ては、 先述 し た先行研究等 を参照 さ れたい。3 . ピ ース フ ルレ ッ ス ンの教育方法学的考察
( 1 ) 教育目標
本節 で は、 ピ ース フ ル レ ッ ス ンの教育目標に つい て整 理す る。 表 2 は、 旧 ウェ ブサイ ト 上に示 さ れてい る各 ブ ロ ッ ク の内 容 を 表 に し た も の で あ る 9)。 た だ し 、 表 2 に 示 さ れてい る各 ブロ ッ ク の内容は、 本稿 で参照 し てい る 教師用指導書の目標と大き く 対応 し ており 、 目標と捉え て良い と 考え ら れる。 教師用指導書では、 学年 によ っ て 目標記述にやや違いが見 ら れた ため、 ブロ ッ ク 共通の目 標に関す る記述 と 捉え ら れる も の を表 2 で示 し た。 表 2 を見 る と 、 年度の最初に実施 さ れる ブロ ッ ク では、 ク ラ スづ く り が行 われ、 積極的 な雰囲気形成やルールづ く り と と も に、 子 ど も自身 が自分 た ち の役割 や責任 を考 え る こ と が目指 さ れる。 続い て、 ブロ ッ ク 2 では、 衝突 に自分 た ち で対応 で き るよ う にな る こ と が目指 さ れる。 ス テ ッ プ プラ ンと い う のは、 衝突 を解決す る ためのス テ ッ プ を示 し た も ので あ り 、 その流 れに沿 っ て進めてい く こ と で、 子 ども た ちが自分 た ち で衝突 を解決で き るよ う に な っ てい る も ので あ る。 こ う し た ピ ー ス フ ル レ ッ ス ンで の学 びを、 学校生活で衝突 が起き た際には活かす こ と が 期待 さ れてい る。 さ ら に、 ブロ ッ ク 3 で は、 子 ど も た ち が よ り 良い コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を取 れ る よ う に な る こ と が目指 さ れてい る。 こ れは、 衝突 の解決だけ で な く 、 衝 突 を未然に防 ぐ鍵で あ る と も 考え ら れてい る。 ブロ ッ ク 4 では、 テ ーマ と し て感情が取 り 上げ ら れ、 そ こ では、 主に自分の感情認識 と 言語化、 他者の感情の 受け入 れと い う 2 つが目指 さ れる。 ブロ ッ ク 5 では、 コ ミ ュ ニ テ ィ の中で積極的 に責任 を取 り 、 貢献す る こ と の 重要性 を学ぶこ と が求め ら れる。 最後 に、 ブロ ッ ク 6 で は、 違い に対 し て オー プ ンで あ る こ と が目指 さ れる。 子 ど も た ち は身近 な家族や ク ラ ス、 学校、 学校外 や世界 に表 2 ピ ー ス フ ル レ ッ ス ンの各 ブ ロ ッ ク の目標 1 ブロ ッ ク 1 (お互い に ク ラ スの一員で ある) では、 ク ラ スの形成や ク ラ ス内に積極的な雰囲気 を作 り 出す こ と に主眼が置かれてい る。 児童 と と も に、 私た ちは互い に ク ラ ス内 で どのよ う に関わるかにつ いて約束 を行 う。 児童白身が任務や責任 を考え出す。 2 ブ ロ ッ ク 2 ( 自分た ちで衝突 を解決す る) では、 児童た ちは 「衝突」 と い う 理解 を学び、 どのよ う に 衝突 に対応 し う る かにつ い て の視点(zich t) を得 る。 こ のブ ロ ッ ク の後、 私た ちは、 児童が、 簡単な ス テ ッ プ プ ラ ン を使っ て、 衝突 を自分た ちで解決す る こ と を期待す る。 3 ブ ロ ッ ク 3 (お互い に分か り 合 う ) で は、 コ ミ ュ ニ ケー シ ョ ンに関心が払 われ る。 良い コ ミ ュ ニ ケー シ ョ ンは衝突 を解決 し未然に防 ぐ鍵 で あ る。 こ のブ ロ ッ ク では、 私た ちは誤解の役割に特に関心 を払 う 。 他者の立場に立 ち、 気持 ち を考 え、 積極的に聞 き 、 要約す る こ と がで き る よ う に な る。 4 ブ ロ ッ ク 4 (お互い に心 を持 っ てい る) では、 感情が中心と な る。 こ のブ ロ ッ ク では、 と り わけ衝突 解決のた めの 2 つの重要な技能が学ばれる : あな た自身の感情 を認識 し、 それについ て話す こ と がで き る技能 と 、 他者の感情 を認 め、 受け入れ る技能。 5 ブロ ッ ク 5 (みんな自分な り に貢献 し てい る) は、 最初の実行の年は、 衝突の仲裁につい てで あ り 、 その後児童の参加 が中心 と な る。 6 ブ ロ ッ ク 6 (私た ちはみんな違 う ) は、 違い に対 し て オー プ ン で あ る こ と が中心 と な る。 子 ど も 達は 家族、 ク ラ ス、 学校、 学校外や世界におい て、 類似点や相違点 を調べ る。 おけ る類似点や相違点 を探 る。 こ れら は、 先 述 し た プロ グラ ム全体の目標 と も 重 な る 点 が多 い。 人は みんな違 う と い う 前提 を も と に、 そ れで も自身 や他者の感情 を認め、 わかり あい、 貢献 し 合 う こ と で、 衝突 を防 ぐ と と も に、 衝突が起き た際には解決で き る よ う に、 日々の生活へ活かす こ と が重視 さ れてい る。 こ う し た ピ ース フ ル レ ッ ス ン を通 じ ての学 び を学校全体 で教師 も と も に体現 し てい く こ と で、 プロ グラ ム全体の 目標へ と つ なが っ てい く と 考え ら れる。 な お、 ピ ー ス フ ル ス ク ールでは、 こ の よ う な内容 と 関 わる言葉の教育 につい て も 重視 さ れてい る。 そのた め、 各学年、 各 ブロ ッ ク ご と に子 ども た ち に示 さ れる語彙が 整理 さ れてい る。 中には同 じ単語が複数の学年にま たがっ て示 さ れてい る場合 も あ る。 単語 には、 衝突 (bet con- flict) のよ う に レ ッ ス ン内容 に直接 関 わ る よ う な単 語 も あ れば、 イ ン ト ロ ダク シ ョ ン (de binnenkomer) のよ う に指導過程に特有 な単語 も あ る。 ま た、 日本の 6 年生に あ た る 8 年生 に な る と 、 民 主主義 (do democratie) や候 補者 (de kandidaat) のよ う に社会の仕 組 みに関 わ る よ う な単語 も含 ま れてい る。 ( 2 ) 教材 ・ 教具 本節 で は、 ピ ー ス フ ル レ ッ ス ン で 使 われる 教材 ・ 教具 につい て取 り 上げ る。 教材は、 固定的 な ものが毎回使用 さ れる わけ では ない。 テ ーマ に合 わせ て、 子 ど も た ち が 具体的 にイ メ ー ジ し やす い よ う な生活 に近い文脈、 ま た 子 ども たち自身が ピース フ ルレ ッ ス ンで活動 し たこ と な ど、 子 ど も た ち の生活 と 関 わ る も のが素 材 と な る こ と が 多 い。 そのため、 教具 と し ては、 授業 で取 り 上げ る テ ー マ に関わる、 絵本、 新聞記事、 テ レ ビな ど文 脈 を再現 し う る も のや、 活動 のた めに必要 な素材が し ば し ば用い ら れる。 低学年 の場合 には、 パペ ツ ト 人形 を使 っ て、 文脈 を教師が再現す る こ と も あ る。 た だ し 、 プロ グラ ムに付属 し てい る子 ど も 向け のワ ー ク シ ー ト や ピ ー ス フ ル ボ ー ル と 呼 ば れ る 地球儀 の形 を し た布 ボール等 につい ては、 多 く の授業 で、 共通 し て用い ら れてい る。 ワ ー ク シー ト には、 子 ど も た ち が読 む読 み 物が載 っ てい た り 、 活動 し た こ と を書 き 込 む欄 があ っ た り す る。 ま た、 ピ ー ス フ ル ボールに つい ては、 子 ど も た ち がサ ー ク ル状 で対 話 を行 う 際 に、 ボ ー ル を持 っ て い る 人が話 し 、 周 り の人は聞 く と い う ルールを可視化 し やす く な る。 学 校 に よ っ ては、 ピ ー ス フ ル ボール以外 の物 で 代用 し てい る所 も あ る。 ( 3 ) 指導過程 ・ 学習形態 本節 では、 ピ ース フ ルレ ッ ス ンの指導過程 と 学習形態 を確認 し たい。 ま ず、 ピ ース フ ルレ ッ ス ンの指導過程は、 基本的 に次 の 5 つの流れで構成 さ れてい る。 ①イ ン ト ロ ダ ク シ ョ ンの遊 び、 ②授業 の流 れ と テ ー マ の確認、 ③授 業のテ ーマ に関す る中心的活動、 ④振 り 返り 、 ⑤ グロ ー
ジ ン グの遊 びであ る。 た だ し 、 教師用指導書には、 授業 の後に教師が取 り 組むべき 活動が示 さ れてお り 、 ピ ース フ ル レ ッ ス ンで学 んだ こ と が、 授業外 で も 活か さ れる こ と が目指 さ れてい る。 ま ず、 ①イ ン ト ロ ダク シ ョ ンの遊 びについ て で あ る。 ピ ース フ ル レ ッ ス ンは常 に短い、 遊 びの活動 で始 ま る。 こ れは、 長々 と 行 う のではな く 、 本当 に短 く 素晴 ら し い 活動 にす る こ と が重要であ る と さ れる。 こ れは、 子 ども た ち に と っ て、 こ れか ら 国語 や算数 では な く 自分 た ち の ク ラ スや自分 たち自身 に関わ る こ と を学習す る と い う 合 図に も な る と い う 。 遊 びについ ては、 教師用指導書 には、 授業 ご と に例が示 さ れてい る。 遊 びの中には、 授業内容 と 結 びつい てい る も の も あ る。 そ う し た場合 には、 その 遊 び を行 う こ と が推奨 さ れてい る。 た だ し 、 そ う で ない 場合 には、 指導書の後 ろ に掲載 さ れてい る遊 びリ ス ト か ら教師が自由 に選んで も良い こ と に な っ てい る。 次 に、 ②授業 の流 れと テ ーマの確認 で あ る。 ピ ース フ ル ス ク ール プロ グラ ムで は、 子 ど も た ち が前 も っ て何 を 学 ぶのか を知 ら なけ れば、 授業後 も 何 を学 んだか分 か ら ず、 時 に自身 の発達 に も ほ と ん ど気づ かない と 考え ら れ てい る。 その ため、 子 ども た ち が こ れか ら 何 を学 ぶのか を意識す るこ と で学習効果が高 く な る と さ れる。 そ こ で、 授業の最初には、 本授業の流 れと テ ーマが子 ども た ち と と も に確認 さ れる。 授業 を超え て、 前の授業 では何につ い て学 んだのか、 ブロ ッ ク全体 では何 につい て学 んでい るのか、 時 に ピ ース フ ルス ク ール と い う 学校全体 では何 に つい て学 んでい るのかに つい て も確認す る こ と も重要 であ る と い う 。 こ う し た取 り 組みは時に形骸化 し がち で あ るが、 教師は実際に一種の 「 関与 (commitment) 」 を 求 め る。 も し 子 ど も か ら 「先週のロ ール プ レ イ を も う 一 回やら ない ? 」 と い っ た考え な どが出 さ れた ら 、 真剣に 取 り 上げ る こ と が求め ら れる。 そのこ と がま さ に民主主 義の適用 と な る と 考え ら れてい る。 その後、 ③授業の テ ーマに関す る中心的 な活動が行 わ れる。 こ こ では、 多 様 な学習形態が用い ら れる。 時に、 教師は思 っ たよ う に対話が進ま なけ れば、 対話 を長 く 続 け よ う と す る。 し か し、 長 く 続け れば効果が上が るわけ ではな く 、 短い時間 で力 強 く 子 ども たち に内容 を学 んで も ら う こ と も 可能であ る。 も し教師が十分 ではない と い う 思い を持 っ た場合、 必ず し も その時間内 で完結 さ せよ う と す る 必 要は な い。 ピ ー ス フ ル ス ク ー ルの ブ ロ ッ ク や レ ッ ス ンは繰り 返 し同 じ内容 を学べ るよ う 構造化 さ れて い る。 ま た、 全 ての学年 で同 じ ブロ ッ ク 、 レ ッ ス ン を学 ぶため、 子 ど も た ちは ゆっ く り 学 んでい く こ と がで き る。 活動の後には、 ④振 り 返り が行われる。 こ こ では、 再 度授業の目標に立 ち戻 り 、 自分たちが達成 し たかっ たこ と を達成 で き たのかが確認 さ れる。 子 ど も は授業 を通 し て何 を学 んだのか を話す こ と が求 め ら れる。 時に、 子 ど も はた だ求め ら れてい る こ と を形式的 に復唱す る。 し か し、 子 ども た ちが本当 に言い たい こ と を持 て るよ う にす る こ と が重要であ る。 最後 に、 ⑤ ク ロ ー ジ ン グの遊 びで あ る。 イ ン ト ロ ダ ク シ ョ ンの遊 びと 同様 に、 教師は指導書で その授業用 に示 さ れてい る遊 び を行 っ て も 良い し 、 指導書の後 ろ に掲載 さ れてい る遊 びリ ス ト か ら自由 に選 んで も 良い。 こ の遊 びも授業 を楽 し く 終 わ る こ と 、 こ れか ら 他の学 びへ移 る こ と が意図 さ れてい る。 ピ ー ス フ ル レ ッ ス ン自 体は、 以上 の様 な 流 れで 構成 さ れてい る。 た だ し 、 先 述 し た よ う に、 ピ ー ス フ ルス ク ー ルの取 り 組みは、 授業 だけ に閉 じ た も のでは ない。 その ため、 授業の終わり こ そが、 学 びを実践へ と 適用す る た めの始ま り で あ る と 考え ら れてい る。 実際、 指導書には、 授業後に 「教師が行 う べ き活動」 や、 「 適用のための提 案」 が示 さ れてい る。 授業は重要であ るが、 子 ど も た ち は社会的感情的認識や技能 を授業から は学ばない と い う 。 子 ど も た ち があ ら ゆる学習経験 を持 て る よ う な環境 が必 要であ る。 教師は、 子 ども た ちが本当 に意味のあ る状況 で ピ ー ス フ ルス ク ールに つい て学べ る よ う 全 て の機会 を 利用す る と と も に教師自身 が子 ども た ち に学 んで欲 し い 全 ての原理 を絶え間 な く 実践へ と 適用 し てい く こ と が求 め ら れてい る。 次 に、 ピ ー ス フ ル レ ッ ス ンの学習 形態 で あ る。 ピ ー ス フ ル レ ッ ス ンは、 基本的 に椅子 を丸 く 並 べ て サ ー ク ル状 に し て行 われ る。 イ ン ト ロ ダク シ ョ ンの時 か ら 子 ど も た ちはサー ク ル状 に座 っ てい る。 た だ し 、 授業 におけ る中 心的 な活動 では、 必ず し も サー ク ル状 のま ま学習 が展開 さ れ る わけ で は な い 。 ピ ー ス フ ル ス ク ー ルは ケ ー ガ ン (Kagan, S ) の協同学習の考え方 を取 り 入 れて実施 さ れ てい る'°)。 指導書には、 ケ ーガ ンが掲げる 4 つの原則 で あ る①参加の平等性、 ②個人の責任、 ③肯定的 な相互依 存、 ④相互作用の同時性や、 構成的教授法の考え方が紹 介 さ れてお り 、 そ れに則 っ て子 ど も た ち の学習形態は考 え ら れてい る。 具体的 には、 ブロ ッ ク 1 ~ 3 では常 に 2 つの新 し い学習形態が取 り 入 れら れ、 続 く ブロ ッ ク では 様々なバ リ エ ー シ ョ ンで そ れら が取 り 入 れら れる。 こ の よ う に、 子 ども たちは学習内容だけ で な く 、 学習形態 を 通 じ て、 協同 のあ り 方 を学べ る よ う に も 配慮 さ れてい る こ と がわか る。
( 4 ) 教育評価
オ ラ ン ダで は、 子 ど も た ち の学 び を テ ス ト な ど を 通 じ て継続的 に捉え る モ ニ タ リ ン グ シス テ ムと い う 仕組みが 浸 透 し てい る。 ピ ー ス フ ルス ク ール プロ グラ ムの2011年 版の指導書 には、 プロ グラ ムで目指 さ れる目標が どの程 度子 ど も た ち に実現 さ れたかに つい て個人 レ ベ ル、 学年 レ ベ ルで評価す る モ ニ タ リ ン グ シス テ ムに つい て書かれてい る。 し か し なが ら 、 2014年 の ピ ース フ ル ス ク ールの ニ ュ ー ス レ タ ー に お い て は 、 社 会的 コ ン ビ テ ン シ ー を 「測定」 す る こ と の困 難 さ か ら 、 個々の児 童 レ ベ ルのモ = タ リ ン グ シ ス テ ムか ら は手 を引 い た と さ れて い る。 代 わ り に、 ク ラ ス や学校 レ ベ ルで の、 プロ グラ ムの目標の 実現度合いや社会的安全性につい ての質保証 シス テ ムが 開発 さ れた と い う 。 こ のよ う に子 ども一人 ひと り の情意面 を評価す るので は な く 、 ク ラ スや学校全体で捉え よ う と す る評価のあ り 方は示唆深い。 こ れによ り 、 評価の結果 を子 ど も一人 ひ と り の力の 「測定結果」 と 帰す るのではな く 、 教師の振 る舞い を含む教育活動の改善に生か し やす く な る と 考え ら れよ う 。 た だ し 、 こ の こ と が ピ ース フ ルス ク ールの教師 た ち が、 子 ど も一人 ひと り の育 ち を把握 し よ う と し てい ない こ と を意味す るわけ ではない。 2015年 3 月17日にオラ ン ダの ピ ー ス フ ル ス ク ー ル で 実 施 し た イ ン タ ビ ュ ー に よ れば、 その学校 では、 ①日々の子 ども の観察、 ②一人 ひと り の 子 ども と の面談、 ③い じ め ら れた こ と があ るかな ど を含 む安全性につい ての質問紙 と い う 3 つの方法で子 ども た ちの市民性の評価 を行 っ てい る と い う 。 3 つめの質問紙 が先 述 し た ピ ー ス フ ル ス ク ール向け の質 保証 シ ス テ ムと 同一の も のであ るかについ ては確認で き てい ない。 し か し ながら、 特別 な機会に子 ども の変化 を 「測定」 し よ う と す るのでは な く 、 日々の観察等 を通 じ て具体的 に子 ど も の様子が把握 さ れ、 働 き かけ に活 か さ れてい る と いえ る 。
4 . 日本での授業案
本章 で は、 日 本 に お い て、 ピ ー ス フ ル ス ク ール プロ グ ラ ムの考え方 を基に し て、 実践 さ れた授業案 を示す。 本 来 、 ピ ー ス フ ル ス ク ール プ ロ グ ラ ムは学校全 体 で 、 全 学 年 で実施す る も のであ る。 し か し なが ら 、 具体的 な授業 づ く り の試行 と い う 点 で本稿では、 1 授業に焦点 を当 て て取 り 上げ る。本稿で取り 上げる授業は2018年 2 月に、 公立小学校第
3 学年 で学級活動の時間 を用い て実施 さ れた。 ピ ース フ ル レ ッ ス ン と し ては、 3 回目の授業 で あ る。 いず れも授 業者は、 筆者であ る萩野奈幹であ る。 こ れま での流れと し ては、 ま ず、 2018年 1 月 に初め ての ピ ース フ ルレ ッ ス ン と し て オ リ エ ン テ ー シ ョ ン を行 っ た。 授業 の流 れ、 サー ク ル対話のあり 方等 を 「友 だちの意見 をよ く 聞い て自分 の考え を伝え よ う 」 のテーマ を通 し て授業 を実施 し た。 こ れは ブロ ッ ク 1 の内容にあ た る と 考え ら れる。 次に、 2 月に 1 回目の授業の延長 と し て 「 みんな同 じ ! ? 」 を テ ーマ に授業 を行 っ た。 こ れは ブロ ッ ク 6 の内容にあ た る と 考え ら れる。 その上で、 後述す る本時 を行 っ た。 詳 し く は、 次 べ一 ジの学習指導略案 を参照 さ れたい。 本時 の目標設定 に あ た っ ては、 ピ ー ス フ ルス ク ール プ ロ グラ ムで育成が目指 さ れてい る目標 を参照 し つつ、 児 童の実態 に即 し て、 育 て たい と 担任が願う 目標 を設定 し た。 ま た、 目標につい ては、 授業者 だけ で な く 、 児童自 身 も 問題意識 を も っ て自分 の課題 と し て捉 え ら れる よ う 展開 を図 っ た。 目標の内 容は、 ピ ー ス フ ルス ク ールの ブ ロ ッ ク で言え ば、 ブロ ッ ク 3 の 「お互い に分かり 合 う 」 に あ た る内 容 で あ る と 考 え ら れ る。 ね ら い と し て は、 「 互い に気持 ち よ く 生活す る ために、 気持 ち のよ い言葉 や丁寧 な言葉遺い をす るこ と の大切 さ に気づ く と と も に、 生活で実践 し よ う と す る意欲 を高める こ と がで き る」 と し た。 教材 ・ 教具につい ては、 パペ ツ ト を用 い て、 子 ど も た ちの実生活の中での問題場面 と し て同級生の絵具 を勝手 に持 つてい こ う と す る場面 を再現 し た。 そ れによ り 、 子 ど も た ちが自分 ご と と し て捉え、 問題点 や原因 につい て 考 え ら れ る よ う に し た。 ま た、 ピ ー ス フ ル ボール を用 い て、 子 ど も た ち がやわら かい ク ツ シ ヨ ン を持 つ こ と で安 心 し て話せ る よ う に し た。 ま た、 ク ツ シ ヨ ン を持 つ こ と で、 話 し手 ・ 聞 き手が明確にな り 、 話 し合いのルールが 可視化 さ れ、 他者 を意識 し た話 し合いがで き た。 本時の展開 と し ては、 ピ ース フ ルレ ッ ス ンの構造 と 同 様 に、 ①イ ン ト ロ ダク シ ョ ンの遊 び、 受業の流 れと テ ー マの確認、 受業のテ ーマ に関す る中心的活動、 ④振 り 返 り 、 ⑤ ク ロ ー ジ ン グの遊 びと し た。 こ のよ う にイ ン ト ロ ダ ク シ ョ ン と ク ロ ー ジ ン グの遊 び を取 り 入 れ る こ と で、 子 ど も た ち の気持 ち がほ ぐ れ、 ピ ー ス フ ル レ ッ ス ンへの 学 びに向 かい やす く な っ てい る様子 で あ っ た。 ま た、 授 業の流れと テ ーマの確認のと こ ろ では、 授業 の流れと と も に 「 互い に気持 ち よ く 過 ごせ る よ う 、 てい ねい な言葉 の使い方がで き る よ う に し よ う 」 と めあて を提示 し、 子 ど も た ちが学習の見通 し を持 て るよ う に し た。 中心的活 動の と こ ろ では、 丁寧 な言い方 を考え る だけ で な く 、 即 興的 な動作化 を通 し て、 どう し て丁寧に言う こ と が良い のか と い う 理由 も 考え ら れる よ う に し た。 そ れに よ り 、 自分の考え を言葉で伝え、 互いに分かり 合う こ と も大切 に し た。 ま た、 子 ども た ちが丁寧 な言葉 を使 う こ と の大 切 さ と と も に、 友人 と の違い と い っ た多 様性 に も 気がつ け る よ う 意識 し た。 こ れ ら は、 ピ ー ス フ ルス ク ール全 体 で重視 さ れてい る こ と 、 他の ブロ ッ ク で の学 びに も つ な が る こ と で あ る だ ろ う 。 学習形態 と し ては、 サーク ル状での対話 を取り 入れた。 こ れによ り 、 教師 も子 ど も たち も同 じ目線 で、 全員 が互 いの顔 を見 て対話がで き る よ う に な っ た。 普段、 話す こ と が苦手 な子 ど も も 話 し やす く な っ てい る様子 が見 ら れ た。 サー ク ルは、 非日常的 な学習形態 で あ り 、 子 ど も が 主体的 に参加 し よ う と す る仕掛け と し て も有効である と 考え ら れた。 なお、 今回は、 サー ク ルで座 っ て話す と い学級活動 ( 2 ) 学習指導略案
1 . 題材
気持ちのよい言葉を使お う
2 . ピース フルスク ールに係る ブロ ッ ク のテーマ
お互いに分かり合 う (ブロ ック 3 )
3 . 本題材のねらい
互いに気持ちよ く 生活するために、 気持ちのよい言葉や丁寧な言葉遣い をするこ と の大切 さ に気づ く と と もに、 生活
で実践 しよ う とする意欲 を高めるこ と ができ る。4 . 本時の展開
学習活動 指導上の留意点 導入
つ こ り タ イ ム 1 . 気持ちをほ ぐそ う。 【脇動のあそび】 ・ 隣の人に、 自分で考えた声かけ (ハイ ・ ど う ぞ等) を し ながら ク ツシ ヨ ン を回す。 ( 自分の速さ で→すばやく →ていねいに) ・ 同 じ声かけだった人と タ ッ チ をす る。 互いに気持 ちよ く すごせるよ う、 ていねいな言葉の 更い方ができ るよ うに しよ う 【テーマ ・ 流れの確程】 ・ サークル状になり P S P への意欲づけと前回の振り 返り を行 う。 ・ 隣の人に声をかけながら ク ツシ ヨン を回す。 挨拶 タ ッチ を行い、 よ り和やかな雰囲気 を促す。 ・ 生活場面で、 友だち、 下級生、 先生に対する言葉の 使い方について想起させ、 課題を提えた後、 学習のめ あて を確認す る。 展 開 2 . 劇を見て、 ア ドバイ スを しよ う。 の に っ いこ うとする) ・ や さ し く 「貸 してほしいな」 ってお願い したら、 相 手も貸 してあげよ う と 思 う。 ・ 「おいっ ! 」 は、 きつい言い方だ し強引な感 じがす る。 ・ えらそ う に言っているから乱暴だ し、同級生に見え ないよ。 ・ 貸しても ら うのに、強く 言 う と相手をおこ らせて し ま う よ。 3 . ていねいな言い方で言い直そ う。 【体験】 ①どいて。 早く いつてよ ! (対下解 )_ ②静かにしてよ ! (対同解
)
③先生、 トイ レにいつていい ? (対先生) 4 . ど う し て、 ていねいに言 う こ と がいいので し よ う。 【PB 話し合い】 ・ やさ しいい言い方をすれば、相手もお願い を受け入 れよ う と すると 思うからです。 ・ 悪いこ と を していないのに、きつ く 言われた らおこ られるよ う な気分になるからです。 ・ やさ しい言い方をすれば、お互いの気持ちが落ち着 く からです。 ・ 乱暴に言っ た ら友だち関係も悪 く なる し、ケンカに 進んでい く かも しれないから。 ・ 相手の立場 を考えて気持 ちのいい言葉 を使 う こ と で、 よい習慣がつく から。 ・ 友達の声を大切に聴き、 話合いのルールを守るこ と を伝える。 ・ パペ ツト を用いて問題場面の劇を行い、 何が問題な のか、 ど う言 う といいのかを考え させ、 パペ ツト に向 けたア ドバイ ス を発表させる。 ・ 子 ども達が考えた各々のア ドバイ ス を認めながら、 問題点や多様な言い方があるこ と に気づかせる。 ・ 実生活の中での問題場面を事例と して取り上げ、 学 級全体で話 し合 う よ うにする。 ・ 相手の立場を変えた事例を取り上げ、 互いに気持ち よ く 過ごせる言葉の使い方を考えさせる。 ・ 相手も自分も気持ちのよい言い方と乱暴な言い方を 比べながら、 動作化 を促す。 ・ 対象相手を変えるこ とによ り、 多面的な視点で気持 ちのよい言葉を用い考えさせる。 ・ 話 し合いは、 ピースフルボール を用い る。 ・ 友達と比べて気づいたこ と を発表 させる。 ・ 自分と違 う考えも大切に聞く よ う促す。 ・ 動作化 を通 して、 丁寧な言葉遣い をするこ とのよ さ の多様性を尊重するよ う な言葉がけ を行 う。 ・ 丁寧な言葉や気持ちのよい言葉 を使 う こ と で、 気持 ちのよい生活や相手と の関係がよい ものになるこ と に 気づかせる。 振 り 返 り 5 . みんなは、 何を学んだ ? 【振り返り】 ・ ていねいな言葉を使 う こ と によ っ て、 ク ラ スのみん なが仲良 く なれる し、いい気持 ちで過ごすこ と ができ るこ と が分かった。 ・ 乱暴な言い方と丁寧な言い方では、相手が感 じ る気 持ちが大き く 違って く るこ と が分かった。 ・ 全体交流での気づき を発表 させ、 多様な考えが人に はあり 、 それぞれに違 う こ と に気づかせる。 ・ 黒板に大切なこ と を板書 し、 ク ラ スで共有でき るよ う 見える化す る。 ・ 次回の ピースフルスク ールの内容 を伝え次時に繋 ぐ よ うにする。 終 末 6 . にこにこ タ イ ム 【終わりのあそび】 ク ロージングリ ス ト から短い遊び を選ぶ。 キラ リ さ んボール・ ピースフルな雰囲気を大切に し、 協働で話 し合
う中で、級友の多様な考えがあるこ と に気づけた こ とへの励ま し を伝える。4 . 事後の指導
・ 事後に振り返る活動を設定する。 継続 した取組になるよ う助言する。
・ 終わり の会のス ピーチや日記な どを通 して、 どのよ う なこ と を具体的に 組んでい るのかを確認する場 を設け、 級友 の頑張り を認め、 継続でき るよ う促す。う こ と に慣 れる こ と を優先 し 、 今回は必ず し も ケ ー ガ ン が重視 し ていたよ う な協同学習の形態は活かせてい ない。 ただ し 、 一部の子 ども だけが活動 に貢献す る と い っ た形 には な ら ない よ う 、 全 ての子 ども た ちが同 じ よ う に参加 で き る よ う に心がけ た。 教育評価 と し ては、 授業 を通 じ て子 ども たちの様子 を 把握す る と と も に、 子 ども た ちの振 り 返り を参考に し た。 ま た、 授業後 には本時の内容 を活か し てぼかぼか し た言 葉 を使う 「 ぼかぼか週間」 を ク ラ スで 1 週間設定 し た。 こ う し た 「 ぼかぼか週間」 におけ る子 ど も たちの行為 に つい て も観察す る こ と で把握に努め、 教育評価の参考に し た。 こ の よ う な ピ ー ス フ ル レ ッ ス ン を 通 し て、 子 ど も た ち が自 ら 具体的 に言葉遣いについ て考え る よ う にす る こ と で、 子 ど も自身が自分の振 る舞いが他者に与え る影響に つい て気づけ る よ う に な る と 考え ら れる。 こ う し た授業 が一過性の も の で終 わ ら ない よ う 、 ピ ー ス フ ル プロ グラ ムで推奨 さ れてい た よ う に、 教師 と し て も 子 ど も た ちへ の言葉遺い を振 り 返 る と 共に、 授業後 も 子 ども た ちが生 活に活か し ていけ る よ う な指導 を心がけ た。
5 . お わ り に
本稿 では、 オ ラ ン ダの ピ ー ス フ ル ス ク ールの授業づ く り を教育方法学的に考察す るこ と で、 日本におけ る授業 づ く り に活かす足がかり を得 るこ と を目的 と し てい た。 そのために、 教育目標、 教材 ・ 教具、 指導過程 ・ 学習形 態、 教育評価の 4 つの視点 で ピ ース フ ルス ク ールの授業 づ く り に つい て考察 を行 い、 そ れぞれに おい て重視 さ れ てい る こ と を整理 し た。 その上で、 1 つの試みと し て、 日本 での授業案 を提案 し た。 その結果、 日本での実践に あ た っ ての ポイ ン ト や留 意点 と し て、 次 の 3 点が指摘 で き る と 考え ら れる。 1 点目は、 ピ ース フ ルレ ッ ス ン実施のためには、 パペ ツ ト や ピ ー ス フ ル ボール を使え ば良い、 授業 の流 れ を ピ ー ス フ ル レ ッ ス ンの通り に行え ば良い、 と い っ た形式 だけ 真似 をす れば良い わけ では決 し て な く 、 ピ ース フ ル レ ッ ス ンの理念 を参照 し つつ、 子 ども た ち に願 う 姿 を も と に 授業 を柔軟に組み立 て、 子 ども たちの生活 と つなげ てい く こ と が重要であ る と 考え ら れる。 2 点目は、 1 点目 と も 関わるが、 特定の価値 を教え込 も う と す るのではな く 、 一人 ひと り に違いがあ る こ と を 尊重 し つつ、 共 に生 き るあ り 方 を学べ るよ う にす る と い う 理念 を も と に、 参考にで き る枠組みを参照す る と い う 点 で あ る 。 ピ ー ス フ ル ス ク ー ル で は 、 ピ ー ス フ ル レ ッ ス ン だけ で な く 、 生活 コ ミ ュ ニ テ ィ と みな さ れる ク ラ ス や 学校 での学 び も 重視 さ れてい た。 子 ど も 達は、 特定の価 値 を教師から与え ら れるのではな く 、 授業や コ ミ ュ ニ テ ィ におい て 「民主的 な市民」 であ る と は、 何 を意味す るの か を経験的 に学ぶこ と が大切に さ れてい た。 3 点目は、 子 ども た ち だけ で な く 、 教師自身 も子 ども に求め る振 る舞い を日々の指導の中で体現で き てい るか を自問 す る と い う 点 で あ る。 ピ ー ス フ ルス ク ールで は、 も し 子 ども たち の間 に衝突が起き た場合、 そ れを自分 た ち で建設的 な方法で解決 し てほ し い と 望むので あ れば、 教師 と し て自分 も そ う し な く ては な ら ない と 考え ら れて い た。 以上のよ う な形で授業づ く り を行 う こ と によ っ て、 オ ラ ン ダの プロ グラ ムの理念等 を尊重 し つ つ、 日 本 の子 ど も たち に合 う 授業づ く り の道が開かれるよ う に思われる。 し か し ながら、 本稿では、 研究の第 1 段階と し て、 ピー ス フ ルレ ッ ス ンの 1 授業 に し か焦点 を当 て ら れてい ない。 その た め、 実 際の ピ ー ス フ ルス ク ールのよ う に、 学年 を 超え て長期的 に実施す るあり 方ま では十分に示せてい な い。 ま た、 ピ ー ス フ ルス ク ールが、 単 な る一 連の授業以 上の も ので あ る こ と が強調 さ れてい る こ と を考え れば、 授業外 での取 り 組みや保護者 を巻き込 んだ取 り 組み等 に つい て も 検討 し てい く 必要があ る。 こ れら に つい ては、 今後の課題 と し たい。 言王 1 ) ピ ー ス フ ル ス ク ールの旧 website [http://www.devree dzameschool.net/vreedzameschoo1201425/wat-is-dvs/wat-is-de-vreedzame-schoo1-3] (2018.04.23確認) 。 2 ) リ ヒ テルズ直子 『 オラ ン ダの共生教育 学校が く 公共心> を育てる』 (平凡社、 2010年、 pp 91-128) 他。
3 ) 奧村好美 「 オラ ン ダにおけ る市民性教育 を通 じ た学 校改善 一 ピ ー ス フ ルス ク ール プロ グラ ムに焦点 を あ て て」 『教育目標 ・ 評価学会紀要』 第26号、 pp 21-30。 4 ) 熊平美香 「 連載 教育 と 学習のイ ノ ベ ー シ ョ ン を探 る⑨ 日 本版 ピ ー ス フ ルス ク ール プロ グラ ムの取 り 組み」 (『文部科学教育通信』 No 349、 2014年、 pp 26-27)
や熊平美香、 福嶋史 『ピ ー ス フ ルス ク ー ル プロ グラ ムー 主体性 ・ 多様性 ・ 協働性を伸ばす。 内省する力 を育む。 ー』 (東洋館出版、 2017年) 他。 5 ) 授業づ く り の問題領域につい ては、 石井英真 「授業 設計の基礎 ・ 基本」 (田中耕治編著、 高見茂、 田中耕 治、 矢野智司監修 『教育方法 と授業の計画』 (教職教 養講座 第 5 巻) 協同出版、 pp 51-65) によ っ て ま と め ら れてい る も の を参照。 6 ) ブロ ッ ク と は、 単元 のよ う な学習内容のま と ま り を指す。
7 ) ピ ー ス フ ル ス ク ー ルの新 website [https://vreedzaam. net/actuee1-nieuws/item/424-een-vemieuwd-b1ok-6-in-het-deelnemers-domein] (2018.04.23確認) 。
8 ) 本章およ び次章の内容は、 明記 し ない限り 、 教師用 指導書第 4 版 (2011年版) の次の箇所 を参照。 LeoPauw & Jalob van Sonderen, and「ezdzng e
reedzame So 00 .・ emovrafze moef Je eren
', Eduniek:
Maartensdijk, 2011, pp1-17.
9 ) ピ ース フ ルス ク ールの旧 website [https://www.devreedzameschoo1.net/vreedzameschool 201425/basisonderwij s-1 /1essenserie-2/30-praktijk/kosten/79-lessenserie0103inhoud] (2018.04.23確認) 。
10) 教師用指導書で参照 さ れてい る協同学習についての
文献は、 全 て オラ ン ダ語翻訳版であ り 入手困難であ る が、 その も と と な る英語版は次のよ う な文献等 で あ る と 思わ れる 。S. Kagan & M. Kagan, Kagan Cooperative Learmng, San Clemente: Kagan Publishing, 2009.
筆者は同書の前の版 し か入手 で き なか っ たが、 そ こ で も ケ ー ガ ンが掲げ る 4 つの原則 につ ながる原則等が示