• 検索結果がありません。

教員養成における書写・書道教育の実践的研究 I : 確かさと豊かさをめざして

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "教員養成における書写・書道教育の実践的研究 I : 確かさと豊かさをめざして"

Copied!
12
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)mil. 教員養成における書写・書道教育の実践的研究I -1確かさと豊かさをめざして-. 小竹光夫' (平成2年9月28日受理) 1 ,本実践的研究の立場と構造 21世紀の教育を見通した改革の中で,書写・書道教育は,次のような大きな課題に直 面している。 (1)学習指導要領の改訂・告示(平成元年3月15日)に伴う,小・中・高等学校におけ る書写・書道教育の教育内容の精選と再編成。 (2)新免許法の成立(昭和63年12月21日)と,大学における教員養成の精選と再編成。 (3)教育研究の新しい方向を見通した,書写・書道教育における学習指導の研究と構造 化。 総括的に考えれば,書写・書道教育に関して,どんな見識・知識・指導技術を身につ けた教師を養成するのか,その教師たちが,小・中・高等学校の教育現場でどのような 指導法によりながら教育を実践し,どう子供達を育成していくかが課題とされていると 言えよう。教育実戦の根幹となる教員の養成に関わる大学においては,特に,教育科目 内での具体的内容の精選と再編成が,緊急かっ重要な問題となっている。 本研究は,前述の3課題を受けながら,教員養成の過程において,書写・書道教育に 関わる教員としての資質を,いかに習得させていくかについて,論を及ぼしたものであ る。研究の基盤は,本学において設置されている『書道・書写講義並びに演習』 (学部 3年生対象)とし,具体的な指導実戦の過程を明らかにする中で, 「教員養成課程にお ける書写・書道教育の在り方」を理論的に構築していこうと考えている。 2, 『書道・書写講義』における学習資料の作成 国語科において,書写が「表現」領域から〔言語事項〕へ移行されるという大改革が 行われた新中学校学習指導要領は,平成2年度から移行措置を行い,平成5年度に全面 施行となる。新免許制度による大学の教員養成は,平成2年4月1 H-本年度入学生 より始められている。新制度に対応する教育内容とカリキュラムの検討が継続的に行わ れていく一方,現行制度により教員となり,教育現場で新学習指導要領に示される教育 内容を具現する立場を余儀なくされる学生に対し,新しい時代を見通す視点をいかに与 えていくかが,当面する教員養成における課題でもある。 「書写・書道教育」と研究の対象を掲げているが,初等教育教員養成を主眼とする本 学においては,当然のことながら小・中学校教員(主要には国語科となろうが・-)養成 の為の「書写教育」が講義・演習の中心となっている。そのことは,これまでの芸術的 表郷こ偏った書道的誤解を排し, 〔言語事項〕として位置付けられた書写-の理解を深 めさせていく道筋でもある。 ここでは,本年度第1学期に開講した『書道・書写講義』の中から,作成・使用した 学習資料の項目を掲げ,学習課程の構造を一覧の形で提示するものである.なお,学習 資料1に関しては,具体的な学習展開を合わせ提示し,次項にて詳しく扱うこととする。. '兵庫教育大学学校教育学部附属実技教育研究指導センター(語学教育分野).

(2) 102. 学習資料1 -書写・書道の学習を進めるにあたって・書道を取りまく言葉たち(三浦綾子『わたしと書道』 ) ・三浦綾子さんの文の中から,どんなことが読み取れるだろう。 学習者として辿った道指導者として辿った道我々は何を課題として学習を進めていくべきか 学習資料2 -学習者として辿った道を確認してみよう・これまで受けてきた書写・書道の授業は,どのような方法で行われ, どんな功罪をもたらしたか。 小学校時代一国語科書写 中学校時代一国語科書写 高等学校時代一芸術科書道(選択必修) ・書塾・書写コンクール・書道展の経験と功罪 書塾について 様々な公募展 ・国語科書写では,一体なにを目指して学習を進めるのだろうか。 中学校学習指導要領の国語科における書写の扱い 具体的には,どのような事が扱われてくるのだろうか。 学習資料3 -日分たちの周辺から学習課題を設定する・実態調査の状況と学習課題の確認 学習資料4 -日常書字の実態I I ・ 『書字』ということに関して ・児童・生徒の日常書字活動の中に問題はないか。 文字環境/書写用具/その他 ・どのような実態がもたらされたか。 実態/要因/解決への糸口 ・具体的な研究として 問題点に対する視点を明確にする/発想の転換 学習資料5 -日常書字の実態Ⅱ・教材に対する発想の転換 ・自分の文字について考えてみよう。 学習資料6 -書写指導の在り方をめぐって・毛筆・硬筆関連の学習が必要とされている現状 ・日常書字・書写力の低下の現状を探る。 ・毛筆書写の基本的学習指導過程 学習資料7 -教材研究I ・平仮名の書き方 ・注意すべき字形と傾向性について ・児童・生徒の日常書字と一般的傾向性 ・平仮名指導における字源(字母)の扱い方 ・平仮名指導に関連して生ずる派生的事項 学習資料8 -教材研究Ⅱ-.

(3) 教員養成における書写・書道教育の実践的研究I. 103. ・漢字指導に関連して ・漢字の成り立ち 六義(六書) /書体・書風 ・基本点画の指導方法 歴史的指導法(永字八法) 現在の書写における学習形態 学習資料9 -教材研究Ⅲ・用具・用材の知識 ・ 『文房具』の位置付けと『文房四宝』 ・書写・書道の学習の場で使用される用語について1 学習資料10-教材研究Ⅳ・書写・書道の学習の場で使用される用語について2 ・書写の姿勢について 学習資料11-教材研究V I ・前回の漢字学習にこだわって ・小・中学校で扱う書体と,それに関わる古典的教材について ・小・中学校で扱われる『仮名』の基盤 学習資料12-教材研究Ⅵ1 ・硬筆による様々な表現 学習資料13-第1学期の終盤に一一 ・様々な実習教材と技法 ・望ましい書写への率先的努力者であるための20ヵ条 ・望ましい書写への率先的努力者であるために必要な技術力20ヵ条 3.具体的授業実戦の展開 学習資料1の冒頭には,作家三浦綾子の『わたしと書道』という小文を,抜粋して 掲げている。 わたしと書道三浦綾子(作家) 書道という字を見ただけで,わたしは何か妙な心地になる。それは例えば,気持 ちの合わない友達にでもあったような心地である。もしわたしをいじめた人間がい たとして,その人に会ったような気持ちといったら,適切かもしれない。 私が初めて墨をすり筆なるものを持ったのは,小学校二年生の時であったろうか。 「ノメクタ」という字を書かされたことを覚えている。その時の自分の字を,わた しは今でも覚えている。細いひょろひょろとした字であった。が,それを書くのに わたしは精一杯だった。 筆というものを,わたしは,どのように使ったらいいのか,まったく見当もつか なかった。初めてスキーに乗った時のような,自信のない,ひどく不安定な気持ち だった。 その時,机問巡視をして来た教師が,わたしの書いた半紙をさっと取りあげるや 否や, 「これが堀田さんの字ですか」と,わたしを叱った。そしてわたしと並んでい.

(4) 104. る海野セツという友達の字をはめた。 それ以来わたしは,自分は字が下手なのだとあきらめてしまった。それでも小学 校の時は,通知篭では甲をもらった。ところが女学校に入ると,習字は必ず乙であっ た。四年間一度も甲をもらわずに,わたしは女学校を卒業した。 わたしはその四年間,書道を無視することによって,乙をもらう敗北感を弱めて いた。いや,無視というより, 「習字なんて」と軽蔑していたのかもしれない。 女学校を卒業したわたしは,検定試験を受けて教師になった。当時小学校では, 一年生から習字があった。習字の下手なわたしに受持たれた子供たちは,他のクラ スとくらべて,やはり下手であった。というのは,わたしが単に下手なだけでなく, まことに申し訳ない話だが,私には筆の運び方を教える術すら知らなかったからだ。 「起筆」も「終筆」も何も知らない。とにかくわたしに書き方は,筆を斜めに打ち こみ,打ちこんだ筆をそのまま素直に運ばずに,ひとひねりして横に運ぶので,必 ず起筆がこぶになる。が,こぶになるのがおかしいとも患わなかった。 ところが,習字に堪能な教師が,わたしの生徒たちの習字をみて, 「どうして先 生の生徒たちはみんなこぶをっくるのでしょう」といった。そこではじめてわたし は,そのこぶが悪いことに気づいた。 わたしが筆の運びを正確に知ったのは,何と教師をしてから三年も経ってからで あった。同じ学年を受持っ同僚の習字の研究授業をみて,はじめてわかったのであ る。 「-」という字を書くには,筆を置いた角度のまま,.横にひけばよいのだとい うことを知って,わたしは驚いた。どうしてそんなこともわからなかったのか。い ま考えても,生徒たちに申し訳ない。つまりは,生草れて初めて書いた習字をみん なの前で笑われたのが,わたしの出発であったからかもしれない。私には生来負け ん気というものがないので,駄目だといわれれば,そうかと諦めてしまうところが ある。奮起しなかったわたしの罪である。 (以下略). この小文を参考としながら,学習は展開される。授業実践の記録は,毎時間の講義を テープ・レコ-ダーに録音し,事後,文章化して集約している。ここでは,当該授業の 実践記録の中から,骨格となる部分を抜粋し,具体的展開として提示することにした。 〔導入部並びに実態調査に関する部分省略〕 書写っていうのは一体何だろうかO皆さんは国語を中心にしてやっておられる筈 ですから,まず,このことについて簡単に考えていこうと思います。 漢字で,いろんな漢字がありますが-・。これは「働く」という字ですが,漢字で すか?厳密にはこれは漢字ではありません。日本でできた文字ですから,皆が漢字 だ漢字だと言ってはいますが,これは日本で作った文字「国字」といいます。漢字 というのは,基本的には中国で作られた文字だから,国字は漢字に含めて考えられ てはいますが,厳密にいうと漢字ではありません。漢字というのは,一般的に音読 みと訓読みを持っていますね。ところが「国字」の場合は,訓読みだけのものがほ とんどなんですが,日本で作ったこの文字は,中国に渡って行って音読みと訓読み を持っている。そういう意味で,これは非常に珍しい文字です。 (中略) 漢字の音訓についてふれましたが,それでは今から,漢字を探してもらいます。.

(5) 教員養成における書写・書道教育の実践的研究I. 105. どういう漢字を探すかというと,音読みで「コウ」という音を持っている漢字です。 さっき自分がいた所ということで紹介しましたが, 「広島大学附属高等学校」という のがあります。その中に,音読みで「コウ」というのは,広島の「広」があります。 それから「高い」があります。それから「校」と,とりあえず3文字はあります。こ れが音読みで「コウ」と読む文字です。 「コウ」という字を自分が知っている限り,今から,そうですね, 10分あれば皆の 場合は充分だと思いますので,知っている限り書いて下さい。中学校1年生で, 10分 で大体20から25書けます。原稿用紙の方は,最初から詰めて, 1行1番下まで行った ら20字ある筈です。先ず数を増やすために,黒板に書いてあるのを書いてみるのも手 かも知れませんが, 3つで終わってしまわないように-。附属の子供達,高等学校1 年生で20分で115個書いた子がいますから-。皆の場合には,そうですね。大体,一 般的に浮かぶのが50から60ぐらいですから,少なくとも40字-2行までは言って欲し いと思います。音読みで「コウ」です。始めて下さい。 (10分経過) はい。それじゃ,そろそろ時間です。 40を越えた人がいますか。 40を含みます。 40 を越えた人がいたら,ちょっと手を挙げてくれるかな(10名程度が挙手) 45を越 えている人-。 (2名挙手)大体40かな。情なくもというか,中1に負けてしまった人 がいるでしょうか-0 20文字いかなかったという-・。その人は,こっそり腹の中で手 を挙げておいて下さい。 文字を調べていくときに,今,僅かにやったことだけれども,その中できっと皆が 物凄く大きな間違いを犯しているだろうと思いますので,ちょっと確認をしたいと思 います。自分が書いている文字を,最初からずーっと見て欲しいんですが-0 まず,鶏になってしまった人がいないかな。高校の「高」,公社の「公」, 『コ-ッ, コーッ,コ-0 』という調子で熟語集めをしてしまった人がいないか。殆どがそうか も知れないね。熟語で探したんじゃないかな。これは熟語ではなくって,音・訓とは 一体何かということを,考えてみることが必要なんです。音を表すーっまり音を表す 元と,意味を表す訓の元がある筈だから,それぞれの組み合わせだけの問題でしょう。 これ(交)には「へン」と付ければいい筈だし(絞) ,これには「ツクリ」を付けてい けばいい(効) 。つまり,漢字は記号的な部分を持っているから,この文字を上にもっ てくるもの(育) ,それから下にもってくる(義)など-。こうやってできていく筈で す。音を表す部分があるわけだから,規則的に出てくる筈です。そうだろう。 ここでの一番大きな失敗というのは,文字を探すという時に,皆が法則性を忘れて 熟語探しを一生懸命やったということ。教師が法則を知らずにいるということは,皆 が教える子供も同じミスを犯してしまうということ。そうする中で,子供達にとって, 漢字というのは面倒臭いものという話になってしまう。熟語を沢山覚えている子が勝 ちというだけの話になってしまう。漢字を知るということは,そういうことだけでは ないですね。ここで必要なのは,漢字の成り立ちというものを考えて,その中から法 則性を引き出していくことなんです。つまり,この文字(黄)が出てきますね。これ には「さんずい(溝)」があり, 「木へん(構)」があり, 「言ベン(請) 」があり, 「員へン(購) 」があり-。これでもう4つもあるでしょう。そうすると子供達に,漢 字を教えるってことは,結局,漢字というものがどういうものかを考えさせ,一つの 規則に従って法則を教えてやれば,後は子供達が自分で見付けて行ける筈だから,もっ.

(6) 106. と簡単にまとめられるということです。 そうすると,ここでやったことの一番大切なことは,漢字の昔というのが,意味を 表しているんではなくって,音符・意符という言い方をしますが,音をあらわす部分 によって組み立てられているということ。だから,この法則に従って漢字を考えてみ ると,もっと簡単に理解していけるということが分かった筈ですねC (中略) その次,書写・書道で一番面倒臭いと思われているのは文字の形らしいのですが, もっと煩わしくも大変なのに筆順ということがあります。多分,小学校の時,ひたす ら言われたことがあると恩うんですが-。一応,筆順正しく書いてみます, 『筆順』。 これは確か小学校の時に, 「右と左の筆順は違います」と必死で教えられたことと思 います。それから,筆順が違うと「筆順を正しくしないと,字の形が整わない」と言 われた筈です。ところが,そのうち面倒になって,「形が整えば筆順はどうでもいい」 と思い,そう言っている反面,先生が黒坂に書く文字などについては, 「あの先生は 筆順が違う」と指摘はするようになった筈です。これが筆順について,皆が辿って来 た過程なんでしょうね。 さて,左右という字ですが,これが1(-)で,これが2 (ノ)。これが1 (ノ) で,これが2 (-) 。これが習ってきた筆順だと思います。どうしてこうなるかを説 明してみてくれますか。右という字は左はらいが先で,左という字は横画が先だとい う理由を,説明してみて下さい。頭の中で,ちょっとやってみてくれるかな。今日は ラッキ-なことに,名前も何も分かりませんから,指名はされません。頑の中で自由 に考えてみて下さい。なぜこういう原則ができて,そしてそれを皆は習ってきたのか。 分かる?理由はこういうことです。机の上に,或いは膝の上に手を出してみて下さ い。そうすると親指から小指へ通る線を予想して,まず1本書いてみて下さい。親指 から小指へ-。 1本線が引けたね。頭の中で書くんだよ。手に書いたら消えなくなる よ。その次,中指から腕へいく線を1本書いてみてください。これも頭の中で描いて みる。そうすると,こういう線ができる筈だね。分かるかな?これが今,手を置い ている状態(n)だね.そうすると,左も右も,指を通る線が先で,腕へいく線が後 だというだけでしょう?左手の場合は指を通る線が先で,腕を通る線が後だから, これが先で,これが後。そうでしょう。右手の場合にも,指を通る線,これが先で, 腕を通る線が後だ。これが筆順として出てきた違いです。 ここで筆順の原則のようなものは出てきましたね。それでは,さらに筆順というも のを考えていきます。これは手の形です。フォークの失敗作のようですが,これが手 の形。そうすると,棒切れがあって,そして先が捌けていて,ここで書けますよとい う字(章) 。これが筆という字です。現在の筆という字は,竹という材料示す部分を 乗せていますから, 『筆』という形になっています。右手で筆を持っている形からき た字です。紙があって,筆で字を書いているというのが, 『書』という字です。そう すると,筆という字と,書くという字のこの部分(辛)は,筆の場合には抜けていき ますが,同じ部分ですから筆順が一緒の筈です。ところが,皆さんの中に, 「書く」 という字を書くときに,筆順が違う人がいるのではないかと思います。どういう書き 方をするかというと, 4画目に縦画を書くんですね。同じ法則によっているものを書 き分けているということは,かえって面倒なことを覚えているというだけのことでしょ う。筆順も一つの法則があるわけですから,こういう格好で覚えていけば良いわけで.

(7) 教員養成における書写・書道教育の実践的研究I. 107. す。 今までのことをまとめてみますと,まず漢字,構造を考えて法則的にとらえるんだ よということがあって,そして次,筆順。これも法則的に覚えるんだよということが まとめられてくるわけですね。 私が,今,喋っていること。これが,即,書写・書道に繋がっていくことです。結 果的には,私の場合は字書きというか,文字を書き・作品を書くのが専門という部分 がありますが,皆さんの場合には国語とか言語とかに関するプロですから,私以上の 知識を持って,国語の授業或いは書写の授業ができる筈です。そこの,先ず頭の働か せ方を変えておいて欲しい.のです。筆をもって字を書くのがうまいからとか,腕があ るから書写・書道をやるというんじゃなくって,言語に対しての知識を持っている人 が,先ず書写・書道をやる必要がある。そういう意味では,皆さんの方がある意味で はプロですから,もっともっといろんな発想をして欲しいと思う。それが最初のお願 いです。 (中略) 子供達に,学習者としてある子供達に,我々が伝えていくものとして,この3つの 事柄を,まず頭に置いておかねばならない。書きたいという,或いはやってみたいな という興味・関心・動機を与えることが一番目。それから二番目。例を引いた「ノメ クタ」という手本,これは歴史の中で,習うのに非常に難しい手本であったという評 価を受けています。書きぶりに癖があって,難しい教科書であったということです。 このことから,手本の妥当性ということがでてきます。指導者としては,できる限り 子供達の実態にあった手本を与えるという必要があるということです。それから三番 目,やって甲斐のない授業を展開しないということ。子供達が学んで学びがいのある 授業を展開するということ。その授業の中で,何か発見していけるものを子供に与え るということ。これが大切なことです。今言った,三浦さ ̄んが学習者として辿った道 の裏返しの事柄ですね。それが,少なくとも我々というか,指導者の側に求められて いることである筈です。意欲をかきたてる場を設定し,成果をみとめ,価値付けてや ること。生徒の実態に即した,良い手本を与えてやること。そして学びがいのある授 業を作っていくこと。この3つの事柄です。 次,三浦さんが指導者として辿った遺-。指導者がどういう罪を犯すかというのは, 一杯ある訳ですが**'。一番E],原則を知らない教師,原則というのは指導原則あるい は技術の原則など様々なことを含みますが,原則を知らない教師は,子供達に原則・ 法則を教えることはできない。それは最初の音読みで, 「コウ」という音をもった文 字を探して下さいと言ったときに,皆が犯したミスについて話したことと一緒です。 法則を知らないことによって,子供が同じ穴に落ち込んでいく。二番目,この人は気 がつかなかったんではなくて人の授業を見て,ある意味では気がつきました。一般的 に学習するというか,学ぶということは,自分が学ぶために学んでいるわけですが, この人は教えるために学んでいる。教えるために学ぶ-。立場としては,きっと皆と 同じだと思いますが, 『教えるために学ぶんだという』意識によって新しい発見が出 てくる。そのことが意識化されれば,自分たちが何を課題とし,どう学習していくべ きかということは,各自でまとまりがついていくはずです。 できる限り無駄なく,子供達が『楽』をしながら基本的なことを覚える必要がある。 分かり切ったことを難しく言って,自分が生徒より知っているかのような態度を取る.

(8) 108. のは教育ではない訳ですから・・・。できるだけ子供達がやりやすく・分りやすくなるよ うに教えてやる。そして,子供達が到達したときに喜びが味わえるように,成果を碓 実に認めてやる。このためには何が必要かというと,国語的な知識・文字に対する意 識・言語に対する知識,そしてささやかでも良い,自分が書いたときに恥ずかしくな い程度の実技力というのがいるわけです。一番のネックは,最後の所かも知れません ね。多分この立場になって,あの時に少しは練習しておけば良かったと思う人が一杯 いるわけでしょうが-。こんなことなら,あの頃にもっと字の練習をしておけばこん な目に遭わなかったと思っているかも知れませんが,先生が子供の前で書いた字を隠 すわけにはいきません。少なくともここまで来て,我々子供達に向かう者は,背を向 けて逃げていくことはできません。ここはなんとか引き下がらずに頑張ってみて欲し いと思います。 (中略) 大学生の字の中にも一時期有名になりましたが「まんが字」とか「まる字」とか, 非常に面白い字が一杯あるんですね。 「まんが字」というのはどう説明すればいいだ ろうか-。普通,これが平仮名の「あ」ですが,まんが字的に書きますとこうなるん でしょう?いるんじゃないでしょうかね。可愛いとはいえますが,男子でこういう 字を書くのは,ちょっと堪えて欲しいとも思います。昭和の50-昭和の話をすると随 分前のような気がしますが,昭和55年から4年間程,この「まんが字」に携わってし まいました。最後のとどの詰まりというか,最後の最後は『週刊平凡』から人生相談 ということで電話が掛かってきましたO 「まんが字を書くために,自分は就職できな いのではないか-。 」という人生相談に乗ってくれということでした。 「まんが字」の原則というのがあるのを,御存知でしょうか。このまんが字・-この 上の字から,こういう字になって,これが結構面白いんですが,これが書かれる原則 というのがあるんですが,知っていますか。書写的な,書道的な考え方で分析してい くと,原則があるんですね。またいっかまとめて説明はしますが,基本の文字を見た ときに,スタート地点と終わりの地点は,大体こういう限定の仕方ができるでしょうo 左上から始まって,右下で終わるという。これが日本の文字でしょう。漢字の場合も, 殆どそうなっているんじゃないかなぁ。左上開始,右下終止。そうすると,これを続 け書きしていくことは,上の文字の右下と下の文字の左上が繋がっていくことでしょ う。原則的に考えると,その繋げる線を速書きしてできる限り短くしていったら,行 は右に曲がっていく筈でしょう。行が右に流れるということですね。そうしたら,文 字を右に流さないためには,スタート地点・終わりの地点,文字を傾けて,こういう 繋ぎ方をすると,行は真っ直ぐになるでしょう。その基本原理が,そのまま「まんが 字」に生きている。この文字は,この繋ぐ部分を接近させるために,左へ倒れてきて いるんですね,この文字は,殆ど横書きで書かれるでしょう。縦書きにしたときは, 書きにくいでしょうね。先程, 「あ」という字を正しい字形で書くとこうなりました ね。ところが,皆さんの文字で横書きに書いたとき,こういう格好の字になるのは, 文字を槙に並べたときに垂直に書いたら繋げる間が離れてしまうから,文字を倒すこ とによって,この間を詰めていくという原理だね。 それから,こういう運動(/)ち,縦書きのときの下の文字へ続くための運動だっ たから,これは切ってしまわなくっちゃいけないから,横書きのときにこのしっぽが 全部切れていくわけでしょうOこの文字(M),しっぽがないでしょうoもっと極端.

(9) 教員養成における書写・書道教育の実践的研究I. 109. な場合は,これにはねが付いているという(M)御丁寧なのもありますが*-。 さらに,技術的に未熟なために,丸めるという動作が非常に大きい。例えば,平仮 名の「ね」という字を書くときに,我々はこういう風に「ね」 (ォ)という字を書き ますが,丸くって途中で止まるんだね。 (ハ)非常に大きくして途中で止めて,次へ 続けるために下へ引っ張ってこない。これも原則。 そうすると,この字は横書きをしてくることによって,ある意味では必然的に生ま れてくる字なんです。だから,横書きで速書きをした時には,大なり小なりこの字に 近くなってくるのは当たり前のことなのに,その当たり前のことを理解せずにおいて, この文字をこっちの字に近づけろという。構造を理解もしていないで闇雲に言ったっ て治らない訳だから,さっきと同じことで原則を辿ってみるということが,指導者と しては必要なことのように思えます。 (以下略). 小学校学習指導要領の国語科「表現」領域の中には, 「聴写・視写」が指導事項とし て位置付けられている。大学における授業も,学生にとっては「聴写・視写」の学習体 験に他ならない。その視点からすると,毎時間の授業記録が平均13000字にのぼる本講 義の内容は,知識の確実な定着を図るには阻害要因が多いように思える。まして,漢字 仮名交じり文に変換して13000字であるから,話しことばとしては膨大である。 限られた授業時間内での効果的な学習をと考え,前項の学習資料もサブノート形式で 作成したが,今後加えて,指導者の話法・指導事項の精選と工夫していく要素は多い。 4,指導事項の系統と学習者の反応 学習資料に基づいた授業実践の中で扱った事項は,表2の通りである。新学習指導要 領における国語科書写の指導事項一覧(表1)と比較すると,今後,検討を要する部分 が浮き彫りにされてくる。. 指 導 ^. 筆. 年 年 年 年 年 年 年 年 年. 筆. 輿 使. . 用. 午 小 1 2 3 学 4 5 校 6 中 1 学 2 校 3. 姿. 具. 順. ○ ○ ○. ○ ○ ○. い. ○. 字 組 み 立 て 方. ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○. 形 配 点方 画向 の. 長接 短し .方 ○ ○ ○ ○. 文 字 の 大 き さ. 置. 配 配. 列 字 醍. 列. り. 基 礎 的 な 態 皮. p. 丑 fcd. 常 化. 鑑 賞 . 刺. 体. 断. ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○. ○ ○ ○ ○ ○ ○. ○ ○ ○ ○ ○. ○. ○ ○. ○. ○ ○ ○ . ○ ○. 表1小・中学校新学習指導要領における指導事項分類一覧.

(10) 110. 現行中学校書写教科書は,第1学年用と第2 ・ 3学年用の2分冊の形式となっている。 指導時間・指導形態等との関連もあり,第2 ・ 3学年用においては,かなりのペ-ジ数を 古典教材が占有している。そのため,本講義においても基礎的学習古典の解説を行うこと となったが,芸術的・古典的な教材は,新学習指導要領に従った教科書の出現と共に,激 減していくものと考えられる。 講 義 にお け る指導 事 項 文 字 と書 写 量 総 目. 指導上. 受 講 学 生 の 反 応 . 意 見 員数 の軽重 ◎ 文字への関心が深まった0文字を書 くことの難 しさを知 った0 28. 書写教育 の位置付 け. ◎. 書 写 書 道 の イ メ ー ジ が変 わ った. 学 習 指 導 要 領 と書 写 △ 写 毛 百 円. 新 しい 時代 の書 写 担 姿 勢 . 執 筆 の方 法 文 当 用 具 用 材 の特 質 字 漢 字 の基 本 点 画 、教 の 漢 字 の字 形 丑 節 日 仮 名 の字 形 き と 方 文 字 の成 立 文 字 の配 置 . 配 列 し と 指 導 計 画 の作 成 知 て 読 学 習 指 導 法 の研 究. ○. 学 校 教 育 に お け る書 写 の位 置 付 けが 分 つ た0. △. 書 写 書 道 の 重 要 性 が 分 つた0. ○. 鉛 筆 の持 ち方 . 姿 勢 につ い て 知 った 0. ○. 用 具 . 用 材 に関 す る知 議 を得 た。. 15. 筆 順 と字 形 の 関連 を 知 っ た○. ll. ◎. 字 源 . 部 首 が理 解 で き、 興 味 が もて た0. 12. △. 様々な書 き方、縦書 き . 横 書 きの書 式 の差 を知 った0. 学 評 育 価 す 指 べ. 導 の. き 工 事 夫 項. 31 7 12 8. △ ○ △. 6. ○ ◎. 書 写 の授 業 の考 え 方 . 進 め 方 を 知 った ○興 味 . 33 動 機付 けの必 要 性 を 知 っ た○. 提 出 作 品 の処 理. ○. 硬 筆練 習へ の批 評 が良 か っ た0. 31. 批評 . 評価. ○. 添削批 評 が効 果 あ った0 書 写 書道 の評 価 を考 え た0. 10. 学 習資料の作成. ○. 授 業 プ リン トが有 効 だ っ た○. 10. 教科書 の活用法. △. 教科書の構造が理解できた0 教材研究の重要 性を感 じた0. 2. 実 態調 査 . ア ンケ ー ト. △. 授 業 内容 へ の ア ンケ I トが 良 か った0. 1. 日常 化. ◎. 他 の教 科 との 関 連. △. 切 り紙 の作 品 が 興 味 深 か った 0. 25. 教 師 と して の 在 り方. ◎. 教 師 と して の在 り方 . 心 得 を 知 っ た○. 15. 理 論 学 習 と実 技. ○. 実技に関心が出てきた0 学習に実技を交えると効果がある0. 13. 「まん が字 」の成 立 と特 徴 が 分 つ た 0 日常 書 字 . 文 字 環 境 の実 態 を知 った ○. 表2指導事項一覧と受講学生の反応・意見(調査員数58名・複数回答) 当然のことながら,指導事項・講義方法へのマイナスの反応もあった。 ・学習プリントは横書き,板書は縦書きというのは,ノートをとりにくい. ・学習プリントは明解だが,もう少し考える余裕が欲しい。 ・膨大な内容に,ついていくのが必死だった。しんどかった。 ・指導方法を,もっと学びたかった ・左利きの生徒の指導法を,詳しく知りたかった。 ・ 1度も休講がなく,早くも終わらなかった-0. 10.

(11) 教員養成における書写・書道教育の実践的研究I. nil. などが,主たるものである。 『書道・書写講義』という講義題目・内容すら確認せず受講 し, 「いつから毛筆で実習があるのか-。 」と繰り返し尋ねる学生も多く,書写・書道毛筆実技という観念的とらえ方の強さを感じさせられた。 5.本論Iを終えるにあたって 意見としてあげられた中で,特記しておかなければならないのは, ・ 6月に,実地教育で小学校に行った。書道・書写で学んだことを生かしてみようと 考えたが,私と先生では違うし,生徒も違っていて,結局うまくいかなかった。実地 教育で考えたことを,大学の授業の中で,解決しようと思ったが,この授業も1学期 で終わってしまうので,それもできない。残念な気持ちである。理論的にはいろいろ と教えていただいたが,実際に筆を執るということへは不安が一杯である。先生は, 実技センターのグレードを-とおっしゃったが,グレ-ドは最初から中国の古典なん かがあり,とても私には無理なようです。 というものである。提起されている問題点は, 3点に集約できる。 (1)日常的に行われる講義と実地教育の関連。 (2)理論学習を裏付けとする書写技能の習得。 (3)附属実技教育研究指導センターのグレード学習への発展o 問題点(3)については,本年度より,書道・書写領域が語学教育分野に位置付けられた ことから,国語科書写の内容を中心としたグレードに転換している。新しいグレード制は, 大項目のみを掲げると,グレードE-文字の構成要素,グレードD-書写の基礎技術,グ レードC-文の書き表し方・書式,グレードB-日本・中国の古典の臨書,グレードA創作の手順・方法で構成されており,基本的な書写技術の習得をねらうものとなっている。 問題点(1)は,本学教員養成課程の特色となっている実地教育との連携を言っている0 実際の教育現場で有効に機能する『力』をいかに与えていく`か,実際の学習場面を想定し た模擬授業など,演習的な内容も取り込みながら,講義を展開していかなければなるまい。 問題点(2)は, 『書道・書写演習』 (第2学期開講)での学習が解決への根幹となって いる。技能への不安は,結局,現場での書写指導を尻込みさせてしまう結果しか生じさせ ない。自信をもって国語・国字・書写指導に取り組み,進んで生徒達に示範を示すことが できる教師を養成するために,演習内容の充実を図っていきたいと思う。 以上述べてきたように,本論Iにおいては,実践的研究へのとりあえずの導入として, 本学『書道・書写講義』における具体的実践事例の提示と分析を行った。反省や問題点は, そのまま次年度の指導実践への課題とし,さらに実証的研究を進めていきたい。なお,本 論Ⅱ以降は, 「求められる書写・書道教員としての資質」 ・ 「教育課程に関する歴史的研 究」 ・ 「作品の処理と評価の在り方」を柱とし,論を組み立てていく予定である。.

(12) 112. A practical study of the teaching of penmanship and calligraphy: In pursuit of accuracy and diversity. Mitsuo Shino. ln the educational reformatioil for the twenty-first century, teaching of penmanship and calligraphy faces the following problem: I.To select carefully and reorganize the contents of the teaching of penmanship and calligraphy according to notification of the new course of study. II.To form the new law of obtaining a teacher s license and to select carefully and reorganize the educational contents in the teacher s training course at university. HI.To study and structure the way of teaching with a new orientation. Generally, the problems are what kind of judgement, knowledge, and teaching techniques the trainees should acquire in the training course and how they teach at school. At universities which have the teacher s training course, to select and reorgan1ze the concrete contents is an urgent necessity. This study discusses how to make the trainess aquire the nature as teachers of penmanship and calligraphy, taking three problem甲above into consideration. Clarifying the teaching process, this study also tries to construct theoretically the ideal method of carrying out penmanship and calligraphy education in the course of teacher's training on the basis of a course entitled` a lecture and a seminar on penmanship and calligraphy'for junior students at this university..

(13)

参照

関連したドキュメント

While conducting an experiment regarding fetal move- ments as a result of Pulsed Wave Doppler (PWD) ultrasound, [8] we encountered the severe artifacts in the acquired image2.

実習と共に教材教具論のような実践的分野の重要性は高い。教材開発という実践的な形で、教員養

C. 

Amount of Remuneration, etc. The Company does not pay to Directors who concurrently serve as Executive Officer the remuneration paid to Directors. Therefore, “Number of Persons”

さらに体育・スポーツ政策の研究と実践に寄与 することを目的として、研究者を中心に運営され る日本体育・ スポーツ政策学会は、2007 年 12 月

経済学研究科は、経済学の高等教育機関として研究者を

小・中学校における環境教育を通して、子供 たちに省エネなど環境に配慮した行動の実践 をさせることにより、CO 2

小学校における環境教育の中で、子供たちに家庭 における省エネなど環境に配慮した行動の実践を させることにより、CO 2