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労災保険における特別加入について──個人事業主と労災保険との関係(PDF:734KB)

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 目 次 Ⅰ はじめに Ⅱ 一人親方等の特別加入制度の概要 Ⅲ 特別加入制度の位置づけ Ⅳ 各論的検討 Ⅴ おわりに──まとめと展望

Ⅰ は じ め に

わが国の労働者災害補償保険(以下,労災保険) 制度は,労働基準法第 8 章に規定される使用者の 特集●新たな労働市場における労働保険の役割

労災保険における特別加入について

──個人事業主と労災保険との関係

わが国における労災保険制度は,労働基準法上の労働者に対する使用者責任に基づく補償 責任を担保する強制加入の社会保険制度として創設された。その後,労働者を使用しない 自営業者である個人事業主のうち,業務の実態,災害の発生状況等から,労働基準法の適 用労働者に準じて保護すべき者について,労災保険への任意加入が認められるようになっ た。これが特別加入制度である。具体的には個人タクシー業者や個人貨物運送業者,建設 業の一人親方等がその対象となっており,当該特別加入者の団体(特別加入団体)の申請 により加入が可能となり(団体加入方式),保険事故の発生に対し労働者と同様の給付を 受ける権利が発生する。保険料の実質負担者は当該特別加入者である。特別加入制度は労 災保険において特例的な制度であること,また,一人親方等については労働者と異なり使 用者の指揮命令による業務の確定がないことから,特別加入の対象やその業務上外判断 については保険技術上一定の制約を受け,また,業務起因性判断などにおいて一人親方 等の自律的な就業のあり方をどのように考慮に入れるべきかという未解決の課題もある。 団体加入方式については災害予防の観点から評価できる点もある一方で,種々の実務上の 課題があることが指摘されている。もっとも,個人事業主への保護や保護拡大に対するこ うした制約については,特別加入による本体給付への影響を過度に重視する姿勢を修正す れば,技術上の問題の解決や業務起因性判断基準のさらなる検討により一定程度解決可能 な部分もあり,そうした問題への検討は,近年検討されている現行制度とは別個の制度の あり方を考える上で有益であるため,今後も特別加入制度のさらなる検討を継続すべきと 考える。

地神 亮佑

(大阪大学准教授) 労働者に対する災害補償の発生を保険事故とす る,政府管掌の強制加入保険として創設された。 このように使用者の災害補償責任が前提となって いることから,保険料は使用者(事業主)の単独 拠出であり,保険給付の対象は労働基準法上の労 働者である,という仕組みが明確になっていた。 しかし,その後の法改正によって,次第に労働基 準法との乖離が進むこととなった(いわゆる「労 災保険のひとり歩き」)。本稿のテーマである労災 保険の特別加入制度はまさにそのような「ひとり 歩き」の典型であり,労働基準法の労働者でない

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中小企業事業主やいわゆる一人親方等を,業務の 実情,災害の発生状況等に照らして,労働基準法 適用労働者に準じて保護を行うものとする,実質 的には就業者拠出の任意加入保険となっている。 ところで近年,現行法で特別加入の対象となっ ていない個人事業主(本稿では,企業等に雇用され ず自営的に就業を行う者のうち,他人(労働者)を 使用しない者と定義する)の一部について追加的 に適用対象とすべきかという議論が行われてい る。その根拠として,まず,グローバル化や技術 革新等による産業構造の変化にともなう企業側の ニーズや,多様な就労を求める就業者側のニー ズ1)が存在し,また,ICT 技術の進展により,イ ンターネットを通じた仕事の仲介(クラウドソー シング)が拡大していることから,個人事業主と して就業するものが増加していることが指摘され る2)。さらに将来的には AI 技術の進展も加わり, 「企業は,極端にいえば,ミッションや目的が明 確なプロジェクトの塊となり」,そうしたプロ ジェクトの期間に応じて就業者が柔軟に企業の内 外を移動する形になり,また複数のプロジェクト に同時に従事するなど,「個人事業主と従業員と の境がますます曖昧になっていく」ことも指摘さ れており3),そうすると,これまで「労働者」が 担っていたような業務(指揮命令は希薄になるが) を行う個人事業主も増加していくことが見込まれ る点も指摘される。そうすると,「労働基準法適 用労働者に準じて保護を行う」べきものと評価さ れる労働者が増加する可能性が出てくるため,特 別加入制度の問題となってくるのである。 そして,政府も,人口減少社会への対応という 面から,個人事業主の増加には基本的に前向きで あるといえる。たとえば,2020 年 7 月に閣議決 定された成長戦略実行計画においては,同年 6 月 に出た「全世代型社会保障検討会議第 2 次中間報 告」の内容を踏まえ,「多様な働き方の拡大,ギ グエコノミーの拡大による高齢者雇用の拡大,健 康寿命の延伸,社会保障の支え手・働き手の増加 などの観点からも,個人がフリーランス4)を選 択できる環境を整える必要がある」と述べられて いる(2 頁)。そこで,フリーランスが「安心して 働ける環境を整備するため,政府として一体的 に」保護ルールの整備を行うものとしており,そ の一方策として「労働者災害補償保険の更なる活 用を図るための特別加入制度の対象拡大等につい て検討する」ものとされている(4 頁)。 たしかに,労災保険における特別加入制度は一 人親方等の特別加入を中心に労働者に類似する個 人事業主の一部を対象としており,同制度による 包摂がいわば「最短ルート」にみえる。一方で, 上述のように当初想定されてきた労災保険制度の 構造と大きく異なる制度をどの程度まで拡大する ことが妥当なのかという問題や,ほんらい自律的 な働き方である個人事業主としての就業中の事故 等をどのように保険事故として捉えるか等につい ても考慮が必要となる。本稿はこのような問題意 識のもと,これまで労災保険・特別加入の対象と なってこなかった個人事業主に対する保障の拡大 という点を念頭におきながら,あらためて特別加 入制度,特に個人事業主の問題と関係の強い一人 親方等の特別加入についてその趣旨目的,法解釈 上・立法論上の諸問題を,立法経緯・学説・裁判 例等の検討から明らかにすることを目的とするも のである。

Ⅱ 一人親方等の特別加入制度の概要

1 制度の対象 労災保険の特別加入の対象は,労災保険法 33 条各号に規定される者であり,①労働保険事務組 合に労働保険事務の処理を委託する中小企業事業 主および②その者が行う事業に従事する者,③ 「厚生労働省令で定める種類の事業を労働者を使 用しないで行うことを常態とする者」および④そ の者の行う事業に従事する者,⑤厚生労働省令で 定める種類の作業(特に災害発生の危険性が高い一 定の農作業など)に従事する者(いわゆる特定作業 従事者),⑥⑦海外派遣者である。②④⑤の者に ついては,労働者である者を除くものとされる。 本稿で中心的な検討課題とする③の者(以下, 単に「一人親方等」という)の行う事業について, 労災保険法施行規則 46 条の 17 は,次の 6 種に限 定している。すなわち,(ⅰ)自動車を使用して

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行う旅客または貨物の運送の事業,(ⅱ)建設の 事業(土木,建築その他の工作物の建設,改造,保 存,原状回復,修理,変更,破壊若しくは解体又は その準備の事業),(ⅲ)漁船による水産動植物の 採捕の事業,(ⅳ)林業の事業,(ⅴ)医薬品の配 置販売の事業,(ⅵ)再生利用の目的となる廃棄 物等の収集,運搬,選別,解体等の事業である。 通達(昭和 40 年 11 月 1 日基発 145 号)は,(ⅰ) の事業を労働者を使用しないで行うことを常態と する者には通常,個人タクシー業者や個人貨物運 送業者が該当し,(ⅱ)については大工,左官, とび,石工等いわゆる一人親方等が該当するが, 特に職種は限定しない,といった例示を行ってい る。また,他の事業に労働者として使用されるこ とがある者であることのみをもって適用が排除さ れることはない5) 2 保険加入と保険料 以下,原則として一人親方等の特別加入につい て確認していく。一人親方等が特別加入するため には,その構成する団体(特別加入団体)が,構 成員の業務災害および通勤災害(一部の一人親方 等を除く。後述)に関して労災保険の適用を受け ることにつき「申請」をする必要がある(労災保 険法 35 条 1 項)。この方式は一般に団体加入方式 と呼ばれるが,一般の労働者を使用する事業主の 場合と異なり,一人親方等が特別加入団体の構成 員となるかどうか,あるいは当該団体が「申請」 をするかどうかは任意ということになる(任意加 入)。この申請に対し政府の承認があったときは, 次のような効果が発生する。すなわち,当該団体 は適用事業およびその事業主とみなされることと なり(同項 1 号),他方で,その構成員たる一人 親方等は,適用事業に使用される労働者とみなさ れることとなる(同項 3 号)。これにより,政府 に対する保険料納付義務が当該団体に発生するこ ととなる。もっとも,通常,保険料を実質的に負 担するのは一人親方等である(就業者負担)6)。保 険料率は,後述のように決定される給付基礎日額 に,事業の種類によって異なる保険料率を乗じ て得た額とされる(第二種特別加入保険料。労働保 険の保険料の徴収等に関する法律(以下,「徴収法」) 14 条参照)。 3 保険給付 上記団体の構成員たる一人親方等が業務上負 傷・疾病・障害・死亡をこうむった場合,労働基 準法上の災害補償の事由が生じたものとみなされ る(労災保険法 35 条 1 項 5 号(同法 34 条 1 項 2 号 の準用))。そのため,通常の労働者と同様の補償 給付を受けることができる。一方「住居と就業の 場所との間の往復の状況等を考慮して厚生労働省 令で定める者」(労災保険法 35 条 1 項柱書),具体 的には自動車を使用して行う旅客又は貨物の運送 の事業と漁船による水産動植物の採捕の事業の一 人親方等(労災保険法施行規則 46 条 22 の 2)につ いては,通勤災害に関する保障がないものとされ る。 特別加入者に係る業務災害,複数業務要因災害 および通勤災害の認定は,厚生労働省労働基準局 長が定める基準によって行うものとされている (労災保険法施行規則 46 条の 26)。 休業補償給付等について給付額算定の基礎とな る給付基礎日額は,「当該事業と同種若しくは類 似の事業又は当該作業と同種若しくは類似の作業 を行う事業に使用される労働者の賃金の額その他 の事情を考慮して厚生労働大臣が定める額」とさ れており(同項 6 号),3500 円から 2 万 5000 円の 間で設定される額から定めることとなっている (労災保険法施行規則 46 条の 24(46 条の 20 第 1 項 の準用)。実際には一人親方等の希望に沿って決 定されることとなる。

Ⅲ 特別加入制度の位置づけ

1 立法時の政府・労災保険審議会見解 以上のように,任意加入・(実質)保険料就業 者負担という,労働基準法上の労働者を対象とし た当初の制度とは異なる性質を有している特別加 入制度であるが,労災保険制度全体においてどの ように位置づけられるのだろうか。 まずは,立法時の政府見解を参照する。特別加 入制度の性質として,1965 年に国会に提出され

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た労災保険法の改正法案について,その審議過程 における石田博英労働大臣の答弁として,「この 労災保険の中に……一人親方等の特別加入を認め た制度,これは労災保険の本来のあり方といいま すか,本来の使命からいいますと,ことばはよく ありませんかもしれませんが,いわばサービスで あります。本来からいえば,雇用関係にある者に 限定せらるべきものであります。そこで,サービ スの部門に対する補償のほうが本来のものより手 厚くなるということになると,これは本来転倒に 相なります。したがって,おのずからそこに限度 がある」7)というものがある。また,石黒拓爾政 府委員(労働省労働基準局労災補償部長)の答弁と して「[特別加入制度を設けた理由の]一つは,零 細企業の事業主あるいは従業者といったようなも のが,労働契約こそ結んでいないけれども,その 労働の実態は非常に労働者に似ておる。そういう 人たちが労働者と同じように働いて,同じような けがをした場合には,われわれに余力があったら 何とかしてあげたいという気持ちでございます。 これが社会保障的であるかどうかという点につき ましては,私ども,必ずしもこれが非常に社会保 障的であるというふうに考えてはおりませんで, むしろ全くの任意加入でございまして,強制的に 加入させるものではございませんので,労災保険 も一種の契約保険を営むものであるというふうな 考え方でございます」8),「特別加入の対象者とい たしましては,御指摘のごとく,実態上,労働者 と同じように働いておるし,また,いつ労働者 に変わるかもわからないような人もあるようです し,けがも一緒にするというような人を取り入れ たいということです。ただ,行政能力に限界がご ざいますので,何でもかんでも一ぺんに入れるわ けにいかないと存じます。できるだけ広くやりた いとは考えております」9)といったものがある。 これらの答弁からは,立法者の特別加入制度に ついての認識は,社会保障的性格を有するもので なく政府の提供するいわばサービスとしての「契 約保険」であること,また労災保険制度が「本 来」労働者のためにあり,特別加入者に対する給 付がそれを上回ることが許されない,というも のであったといえる。また,労働の実態が労働者 に似ている就業者について「当時の労働省が出来 るところから特別加入制度の対象にしていくとい う,いわば場当たり的な対応が立法当初から予定 されていた」10)ことも指摘される。 1965 年 6 月 1 日に改正案が可決され,省令改 正が行われるにあたり,労働者災害補償保険審議 会はその答申(昭和 40 年 10 月 20 日)において, 「特別加入については,業務の実態,災害の発生 状況等から,労働基準法の適用労働者に準じて保 護すべき者に対し,特例として労災保険の適用を 及ぼすのが制度の趣旨であるので,その実施に当 つては,いやしくも労災保険本来の建前を逸脱 し,あるいは制度全体の運営に支障を生ずること のないよう,あくまで慎重を期する必要がある」 とする基本的考え方を示している。さらに,その 対象については「かかる見地から,特別加入者の 範囲については,業務の危険度ないしその事業の 災害率に照らし,特に保護の必要性の高いものに ついて考慮するとともに,特別加入者の従事する 業務の範囲が明確性ないし特定性をもち保険業務 の技術的な処理の適確を期しうるかどうかを十分 に検討すべきである」としている。これらは現在 においても行政における基本的な理解であるとい える11) 2 学 説 労災保険において特別加入制度をどのように位 置づけるかは,そもそも労災保険制度の趣旨・目 的をどのように理解するかに左右される。少なく とも労災保険法の制定当初は,その補償給付の 内容が労働基準法上の災害補償責任と同内容であ ったことと,労働基準法上の,労災保険法に基づ いて災害補償に相当する給付が行われるべきもの である場合における免責規定(84 条 1 項)の存在 から,使用者の災害補償責任の責任保険という位 置づけであったことは間違いがない。しかし後 に,被災労働者や労働者以外の者ないしその遺族 の「生活保障」の実効性を高める法改正──特別 加入制度以外にも,給付の年金化,スライド制導 入,通勤災害制度創設など──が行われていった ことにより,少なくともそれまでの責任保険とし ての性格(損失塡補的性格)に国家による被災労

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働者等の生活保障としての性格(生活保障的・社 会保障的性格)が加わっていったという理解が一 般的となったといえる。他方でどの程度社会保障 的性格を重視するかは論者により異なり,解釈論 や立法論に対する姿勢となって現れる。特別加入 制度を「社会保険の機能拡大・発展の一形態であ り,かつ,歴史展望的には,社会保障へのステッ プとなりうるような社会保険の人的対象の拡大制 度と位置づけ」る見解においては,「特別加入制 度は,社会保険技術を利用して,加入者の労働過 程での災害に起因する生活保障をめざすべきもの と解すべきものであ」り,「特殊な政策的目的に 基づく例外的な制度ではなく,社会保険自体の発 展の中で捉える本質を持つものと解すべき」とさ れる12)。複合的な性格を有していることを前提 としながらも,「あるべき」方向性として生活保 障的(社会保障的)な制度を示した見解といえよ う。一方で,労災保険が複合的性格を有するとす る立場のもとで,特別加入制度が労働者・遺族の 生活保障といった政策目的のなかで創設された ものであるという事実は「その解釈,運用におい ても配慮される必要があ」るとしつつ,労災保険 法の目的規定(「労働者……の保護」),「特別加入」 の章が労働者に対する保険給付等の規定の後に置 かれていること,労災保険事故が国民が日常生活 においてひとしく直面するおそれのある社会的危 険とはその性格を異にし,保険給付の財源も使用 者の保険料によって賄われるなど労災保険法の労 働法的性格を見過ごすことは妥当ではない13) となどから,その特別加入制度はやはり「特例」 と解すべきとする見解もある14)。前者の見解に ついては,先に検討した特別加入制度の立法者意 思とは適合しないようにおもわれるし,現行法に おいても「健康保険,年金保険と区別して業務上 災害を補償する労災保険を維持している」15)こと や労災保険の使用者単独拠出制の意義をかんがみ ると,やはり特別加入制度を「特例」的に捉える 見解が妥当と考える。

Ⅳ 各論的検討

1 加入対象 現在一人親方等の特別加入が可能とされる事 業については,「その業務の危険度,業務の範囲 を明確に特定できるかどうか(業務災害の認定な ど保険関係の適用処理の技術的可能性)の観点か ら」16)定められたものである。このような一人親 方等への加入制限は「厳しすぎるといわざるをえ ない」とする見解もある17) おもうに,業務災害の発生確率が著しく低い事 業に使用される労働者も等しく労災保険の保護の 対象となっていることからすれば,特別加入の趣 旨を労働者に類似する者に対する保障という点に 置くのであれば,加入対象を限定するにあたって 「業務の危険度」を根拠にする必然性は特にない。 こうした限定は,労災保険において特別加入を 「例外」に位置づけ,さらに「労災保険本来の建 前を逸脱」してはならないとする立場が明確に現 れたものといえる。もっとも,こうした基本的考 え方に基づいたとしても,特別加入者に対する保 険料賦課が対応する給付総額に対し適正に行われ ている場合には,使用者単独拠出の労災保険「本 体」が侵食されることはないのであり,業務の危 険度が必ずしも高くない事業への適用拡大も許容 されるものと考える。なお,「業務の危険度」を 反映したといえる,一人親方等に関する保険料率 (第二種特別加入保険料率:徴収法別表第 5)につい て,最も低いのが「医薬品の配置販売業者」の 7/1000%であるところ,通常の労災保険料率につ いて同率を上回る料率となっている事業は 54 事 業中 29 事業である(同別表 1。いずれも平成 30 年 改定時)。いちおう,単純に考えて「業務の危険 度」は全事業中「真ん中」あたりといえるのかも しれない。 2 団体加入方式 (1)団体加入方式の趣旨と課題 一人親方等について,実質的には自らが保険料 を支払い,また保険給付を受ける対象であるの に,当該一人親方等を被保険者とするのではなく

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その団体を事業主と擬制して保険加入する団体加 入方式を採用したのは,「労災保険制度の構造に 即して法律構成しており,また,既存の労災保険 の保険技術を可能な限り活用」18)することが目的 であるとされる。また,事業主に課せられている 労働保険事務を処理することになる関係から,特 別加入団体は(イ)一人親方等の相当数を直接の 構成員とする単一団体であること,(ロ)構成員 の範囲,構成員たる地位の得喪の手続きなどが 明確であること,その他団体の組織,運営方法な どが整備されていること,(ハ)当該団体の定款 などに規定された事業内容からみて,労働保険事 務の処理が可能なものであること,(ニ)当該団 体の事務体制,財務内容などからみて,労働保険 事務を確実に処理する能力があると認められるこ と,(ホ)当該団体の地区が,その主たる事務所 の所在地を中心として当該所在地を管轄する都道 府県労働局の管轄区域またはこれと隣接する都道 府県労働局の管轄区域に相当する区域をこえない ものであること,のすべての要件を充たすこと が求められている(昭和 40 年 11 月 1 日基発 1454 号)。 団体加入方式については,一人親方等の特別加 入団体について手数料(組合費)の支払が必要と なること,上述のように同団体が事業主として保 険事務を行わなければならないことからその設置 に消極的な組織も見受けられること等が問題点と して指摘されている19)。また,かつて日本芸能 実演家団体協議会は,団体加入方式による芸能実 演家の特別加入の可能性について,同協議会が上 記(イ)の「単一団体」要件に該当しないこと や,(ホ)に関連して,団体の構成員が団体事務 所の近隣都道府県に居住していなければならない が,芸能実演家の多くは大都市近郊に居住してお り,これに該当しない場合の団体事務所の設立に は困難が伴う,といった障害があることを指摘し ている20)。こうした点から,直接加入を推進す べきとの見解もある21) 自らが使用する労働者との関係で使用者(事業 主)となり,そこでの保険関係を前提に擬制労働 者として加入する中小事業主(海外派遣者として の事業主も含む)の特別加入の場合と異なり,労 働者を使用しない一人親方等の場合いっさいの使 用関係がないことから,一人親方等についてその 団体を事業主(使用者)と擬制する方式は,使用 者─労働者の関係を前提とする労災保険の全体的 な構造とは整合性があり,その点からは評価でき る。上記指摘される問題については,特別加入団 体があくまで擬制事業主であり,構成員の被災に 対する責任等を負っていないことをかんがみ国庫 ないし労災保険財政から運営費の一部を補助す る,あるいは団体の構成員の居住地と事務所との 関係は,行政実務のデジタル化によるボーダーレ スな処理を行うことにより利便性を高めるといっ た方策により一定程度対応可能なのではないかと 考えられる。しかしながら一方で,保険料負担が 実質的に一人親方等の側にあるということじたい が「労災保険本来の」形とはもはや大きく異なる といえ,そう考えると,特別加入団体を事業主と 擬制するという「形式」を維持することについ て,決定的な重要性があるとはいい難いようにも 思われる。 (2)特別加入団体の災害防止措置 特別加入の申請をしようとする団体は,あらか じめ,一人親方等の業務災害の防止に関し,当該 団体が講ずべき措置およびこれらの者が守るべき 事項を定めなければならないとされている(労災 保険法施行規則 46 条の 23 第 2 項)。一般の労働者 については,事業主に労働安全衛生法等の法令に より災害防止措置が義務づけられているが,一 人親方等についてはそのような法令がないため, 「一般の労働者との均衡を考慮して」定められた ものである22)。上記の形式面よりも,この点の ほうが団体加入方式の意義を認めやすいかもしれ ない。 ただし,特別加入団体はあくまで擬制事業主で あり当該一人親方等を使用はおろか発注者として の指図さえ行うものではないことから,当該義務 づけられる「措置」等にはおのずから限界があ る。たとえば,自動車を使用して行う旅客または 貨物の運送の事業の場合,道路交通法,道路運送 車両法等により「安全に関する規制が行われてい るので」団体は右の措置および事項の定めをして

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いるものとみなされ23),建設の事業に関しては 「当該団体の現状に鑑み,当分の間」,労働安全衛 生規則等の規定のうち建設の事業の災害防止に関 係のある規定に準じた措置を,「当該団体がその 構成員に守らせる旨の誓約書を提出すれば」,措 置および事項を定めているものとみなされる24) 災害防止の趣旨・目的から団体加入方式を意義づ けるのであれば,より実効性の高い措置(保護物 品の支給,安全教育等)を行うことができるよう, 保険財政ないし国庫補助等を用いて団体に対し一 定の補助を行うことも考えられて良いと考える。 3 業務上外認定 (1)事故性の負傷・死亡等 上述の通り,労災保険法施行規則の定めによ り,特別加入者に係る業務災害,複数業務要因災 害および通勤災害の認定は,厚生労働省労働基 準局長が定める基準によって行うものとされてい る。その認定基準(昭和 50 年 11 月 14 日基発 671 号)は,たとえば建設の事業を行う一人親方等に ついて,(ⅰ)請負契約に直接必要な行為を行う 場合,(ⅱ)請負工事現場における作業およびこ れに直接附帯する行為を行う場合,(ⅲ)請負契 約に基づくものであることが明らかな作業を,自 家内作業場において行う場合,(ⅳ)請負工事に 係る機械及び製品を運搬する作業……およびこれ に直接附帯する行為を行う場合,に業務遂行性を 認めるものとしている。この理由については,一 人親方等の業務上外の認定が「業務の内容が労働 者と異なり,労働契約,労働協約などによって特 定されておらず」,また,事業主が「他人の指揮 命令により他律的に行為しない」ことから,業 務上外の認定が困難であることが挙げられてい る25) こうした業務上外(業務遂行性)判断について の裁判例には,足立労基署長(本間製作所)事件 東京地裁判決26)がある。同事件においては,建 設事業の一人親方等として特別加入していた自営 業者が,取引先から受注した空調機の室外機用架 台 2 台(本件製品)を製作し,納品の際に同製品 の下敷きとなり死亡したという事実関係のもと, 同死亡が業務上の事由によるものかどうかが争わ れた。裁判所は結論として業務遂行性を否定した が,その理由づけはおよそ次のとおりである。ま ず,「労災保険は,労働基準法上の労働者の労働 災害に対する保護を本来の目的とする制度」であ り,特別加入制度は,「業務の実態,災害の発生 状況等から,労働者に準じて労災保険制度によ り保護するのが相当と考えられる者」について, 「労災保険制度の本来の目的を損なわず,かつ, 災害が発生した場合の業務上外の認定等の保険技 術的に可能な限りにおいて,特例として保険加入 を認めることとした制度」であるとする基本的な 考え方を採用している。したがって,「特別加入 制度は,すべての業種について認められるわけで はないし,特別加入者の被った災害が業務災害と して保護される場合の業務の範囲は,労働者の行 う業務に準じた業務の範囲に限られるのであっ て,特別加入者の行うすべての業務に対して保護 が与えられるのではない」とする。そして,この ような特別加入制度の趣旨から「加入できる者の 範囲が制限されて」おり,また,「特別加入者の 業務又は作業の内容は,労働者の場合と異なり, 労働契約に基づく他人の指揮命令により決まるも のではなく,自己の判断によって決まる場合が多 いので,その業務又は作業の範囲を確定すること が通常困難となるため,保険技術的な面から」業 務上外認定を労働基準局長が定める基準によって 行うこととされているとする。 そのうえで,一人親方等として特別加入するこ とができる建設事業の内容については,「業務の 危険度,業務の範囲の明確性ないし特定性等を考 慮して」定められており,そして,「前記のとお り特別加入制度の趣旨から加入できる者の範囲が 限定されていること,製造事業の一人親方等につ いては……特別加入はできないこと」,上記認定 基準が「請負契約によらないで製造又は販売を目 的として建具等を製造している場合につき業務遂 行性を認めないものとしていることなどに照らす と」,同通達にいう「請負契約」ないし「請負工 事」とは,「建設業における請負工事契約ないし 建設業における請負工事であると解するのが相 当である」と判示し,本件においては,被災者は 「本件製品の製作を請け負ったにすぎないから,

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上記基準の「請負工事に係る」ものではなく,し たがって,業務遂行性が認められない」という結 論にいたっている。 本判決は,上述した行政の基本的考え方と解釈 をほぼそのまま踏襲したものであるといえる。本 判決(および行政の立場)に対する批判的見解と しては,労災保険制度(特別加入制度)の生活保 障的性格を強調する立場から業務上概念を柔軟に ないし広くとらえるべきとする見解27)があるほ か,特別加入制度の趣旨から,すでに建設業の一 人親方等として特別加入していた者の行う製造・ 搬送業務の業務上外判断においては「労働者に準 じた業務=労働者の業務としての行動性格を有し ていたかどうか」「業務の危険度=災害の危険と 保護の必要性」という要素を考慮して個別的・具 体的に判断すべきものであり,製品の製造だけの 請負を対象外とする判断が「形式的判断」である などとするものがある28) ただ,批判的見解については,労災保険法ない し特別加入制度のあるべき方向性として一定程度 首肯できるものの,保険事故として法で現実に特 定された事業の遂行とはいい難い業務についてそ の業務遂行性を認めるのは趣旨解釈としても限 界を超えているようにおもわれるし,特に使用 者の指揮命令により画されることのない一人親方 等の「業務」性を抽象度の高い制度趣旨により拡 大することは,保険技術上も妥当とはいいがたい 点は,行政解釈等の指摘するとおりである。加え て,特別加入者は自ら事業を選択し「任意加入」 している時点で,保険事故となる業務の限定を自 ら引き受けたともいえ,その範囲で業務遂行性が 認められるのはやむを得ないともいえる。このよ うに,現行法上の解釈としては,特別加入者の選 択した事業を中核において業務遂行性を判断する のが妥当ということになるし,いい方を変える と,その点に現行の特別加入制度の限界もあると いうことができるだろう。 (2)業務起因性 上記の「業務遂行性」にかかる議論は,いわゆ る事故性の傷病・死亡等にかかるものであるが, 特に非事故性の疾病(負荷の蓄積等によるもの)の 業務上外認定については,業務起因性(業務と疾 病との間の相当因果関係)が問題となる。行政解 釈としては,「業務起因性の判断は,労働者の場 合に準じて行う」とされている29) 近年特にこの業務起因性の有無が問題となる のは,いわゆる脳・心臓疾患(労働基準法施行規 則別表第 1 の 2 第 8 号)あるいは精神障害(同 9 号) の発病についてである。前者については,「業務 による明らかな過重負荷が加わることによって, 血管病変等がその自然経過を超えて著しく増悪 し,脳・心臓疾患が発症する場合があり,そのよ うな経過をたどり発症した脳・心臓疾患は,その 発症に当たって,業務が相対的に有力な原因であ ると判断し,業務に起因することの明らかな疾病 として取り扱う」,後者については,「心理的負荷 による精神障害の業務起因性を判断する要件とし ては,対象疾病の発病の有無,発病の時期及び疾 患名について明確な医学的判断があることに加 え,当該対象疾病の発病の前おおむね 6 か月の間 に業務による強い心理的負荷が認められること」 等の基本的考え方に基づく認定基準が発出され ている(前者につき平成 13 年 12 年 12 基発 1063 号, 後者につき平成 23 年 12 月 26 日基発 1226 第 1 号)。 この両者に共通するのは,短期間ないし長期間に わたるいわゆる長時間労働を過重負荷・心理的負 荷に含めている点である30)。他人に使用されな いことが前提となる特別加入者について,こうし た長時間労働(就業)による負荷を業務起因性の 判断においてどのように評価すべきかについて は,必ずしも明らかになっているとはいえない。 一人親方等の就業時間については,少なくとも 建前としては,①使用者の指揮命令に服する時間 でないこと,②就業時間の長さについて自らがコ ントロール可能なこと,が特徴として挙げられ る。①をどのように評価すべきかは難しい。茨木 労基署長(大瀧産業)事件31)は,一人親方等とし て特別加入していたダンプトラックの運転手が, 特定の会社に専属して運送業務に従事してきたと ころ,運搬作業中に起きた接触事故をきっかけに 脳出血を発症した事案であるが,原告である当該 特別加入者は,その原因のひとつとして労働時間 の過重性の存在を主張し,業務起因性の有無につ

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いて争っている。裁判所は,疾病の発症前 3 カ月 の期間の稼働日数や各日の「勤務」時間と休憩時 間等を事実認定・評価し,労働時間の過重性を否 定しているが,その中で,原告の,業務の過重性 については労働基準法上の労働時間を基準とすべ きとする主張について,「原告が同法上の労働者 に該当するかには疑問があるうえ,業務起因性の 判断は,発症した疾病の内容と業務の態様とを個 別具体的に検討すべきであって,同法上の労働時 間を判断基準とすることは相当でない」と判示し ている。当事案は一人親方等とはいえ遂行する業 務の内容に本人の裁量の余地が少ない働き方(労 働者に近い働き方)をしていたため,「勤務」時間 や「休憩」時間等によることで業務上の過重負荷 の有無について判断できたが,より自律的な働き 方をする一人親方等については,「使用者の指揮 命令下にある時間かどうか」というある程度の拠 り所がないため判断が難しくなる。自由度のある 働き方の場合特に心理的負荷の程度は下がる可能 性もあるが,それも考慮に入れるべきか。未解決 の課題といえる。 また,一人親方等が②就業時間を自らコント ロールできることについて,自らの選択で多くの 仕事を請け負った結果過重負荷・強い心理的負荷 が生じたことをどのように評価すべきかという問 題もある。この点については,労災保険が使用者 の無過失責任の裏返しとして労働者に過失がある 場合でも補償給付の対象としていることとのバラ ンスを考えると,故意に保険事故という結果を招 致したと認められるような特段の事情(ほとんど 認められることはないとおもわれる)がない限りは 業務起因性を否定する要素とする必要はないと解 するのが妥当である。なお,令和 2 年 3 月に成立 した雇用保険法等の一部を改正する法律による労 災保険法の改正により,事業主が同一人でない 2 以上の事業に使用される労働者(複数事業労働者) の「複数業務要因災害」(2 以上の事業の業務を要 因とする負傷・疾病・障害または死亡)に対する保 険給付が定められ(改正後労災保険法 2 条の 2,7 条 1 項 2 号など),その業務起因性について 2 以上 の事業のもとでの負荷を総合的に評価して判断す ることとなったが,行政通達は,「特別加入者に 対しても,改正の対象に含めることが適当であ」 り,「労働者であってかつ他の事業場において特 別加入をしている者及び複数の事業場において特 別加入をしている者についても保護の対象とする こと」としている(令和 2 年 8 月 21 日基発 0821 第 1 号)。このことからすると,特別加入者が複数 の発注者から仕事を請け負ったことによる負荷, さらに,労働者として受けた負荷と特別加入者と して受けた負荷についても,総合的に評価して業 務起因性を判断することになると解される。こう したいわゆる「負荷合算」は,労災保険法に基づ く補償が労基法に基づく個々の使用者の労働者に 対する災害補償責任を前提としていることから認 められてこなかった32)ところ,これを認める法 改正をとった以上,そもそも個別使用者責任の観 念されない特別加入者についてそうした取扱が認 められるのは当然の帰結である。ただし,先に挙 げた①指揮命令を受けない特別加入者の就業時間 による負荷の合算については,慎重な判断が必要 となろう。

Ⅴ おわりに

──まとめと展望 以上,一人親方等の労災特別加入制度を中心に みてきたが,あらためて個人事業主一般への労災 補償(保障)という点をにらみながら検討のまと めを行う。 まず,特別加入制度は,その立法趣旨として は,労働者に対する労働基準法上の災害補償責任 の発生を保険事故として使用者が加入する保険制 度の例外(特例)として,業務の実態・災害の発 生状況等から労働者に準じて保護すべきとされる 一部の個人事業主等を対象にしたものであり,ま た,任意加入という特性から,社会保障(社会保 険)的性質の弱い保険制度であるといえる。特に 行政としては,特別加入制度の拡大により労災保 険本来の趣旨から「逸脱」することについて消極 的であり,裁判所もその趣旨を踏まえた判断を しているようである。この点は,特別加入制度に ついてより包括的に個人事業主を対象にする方向 性に対して消極的に作用してきたといえる。し かし,そのような立場に立ったとしても,保険料

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を就業者自身が適正に負担する形になっている限 り,本体給付を侵食するものではないと解するこ とも十分可能と考える。 次に,一人親方等の団体加入方式については, 当該団体を擬制事業主とすることにより,労災保 険制度全体との整合性を確保するという点(ただ し,これを絶対視する必要性には疑問あり)と,当 該団体に災害防止措置を義務づける点に一定の意 義を有する。もっとも,この方式による保護の実 効性担保のためには本体給付に影響しない範囲で 国庫や保険財政による一定の補助や団体の広域化 といった措置が必要かもしれない。 また,特別加入の一人親方等については,使用 者の指揮命令という業務性を画する基準の不存在 から,業務上外(業務遂行性と業務起因性)の判断 が難しくなる傾向にある。業務遂行性について は,「事業」を特定し,かつ特別加入者が任意で 加入しているという性質,さらに保険技術上の問 題からある程度限定されることは現行法の解釈上 やむを得ないものとなる。 以上から,現行の特別加入制度を活かしつつ, これまで対象とされてこなかった個人事業主を包 摂することは,「趣旨からの逸脱」という点に拘 泥せず,また一定の技術的な工夫と業務上外判断 基準のさらなる考察により一定程度可能であると 考える。 ところで近年,特別加入制度の限界に対する認 識から,労災保険ないし特別加入制度とは別の制 度で個人事業主の保護をはかるべきとする主張も 有力となってきている33)。とりわけ特定の事業 主に継続的に労務提供する一定の個人事業主につ いて,その経済的・組織的な従属性の観点などか ら,発注者拠出(折半ないし全額)・強制加入を含 む新たな制度の創設34)や,そうでない個人事業 主について新たに任意加入・個人加入の制度を設 けること35)が提案されている。こうした提案に ついては紙幅の関係で詳細な検討を及ぼすことが できないが,「労災保険本来の趣旨」という制約 から自由な制度ということで,より容易に個人事 業主に労災補償(保障)を及ぼすことができる可 能性が高まるのは確かであろう。他方で,当該新 たな制度における保険事故の設定や業務(?)上 外判断や任意加入のあり方,災害予防という要素 をいかに取り入れるか36),などの検討において は,なお本稿でみたような特別加入制度の経験・ 議論・未解明点などの振り返りが有意義なもので あると考えられ,単に過去の過渡的な制度として しまうのではない姿勢が求められる。 1)厚生労働省「個人請負型就業者に関する研究会報告書」 (2010)13 頁によれば,企業側のメリットとして,①専門的 業務に対応できる,②即戦力・能力のある人材が確保できる, ③人件費が節約できる,④臨時・季節的業務量の変化に対応 できるといった点が挙げられ,就業者側が業務委託・請負と いった働き方を選択する主な理由としては,①仕事の時間帯 を自分で決められるから,②自分の能力・スキルを活かせる から,③自宅など自分が望む場所で仕事ができるからといっ た回答が多くあげられているという。 2)「働き方改革実行計画」(2018)16 頁。 3)「働き方の未来 2035 ~一人ひとりが輝くために 報告書」 (2016)9-10 頁。 4)フリーランスの定義は多様であるが,とりあえず,「特定の 企業や団体,組織に専従しない独立した形態で,自身の専門 知識やスキルを提供して対価を得る人」(フリーランス協会ホ ー ム ペ ー ジ:https://www.freelance-jp.org/start_freelance) と定義できる。本稿の定義する個人事業主の範囲に含まれる ものである。 5)厚生労働省労働基準局労災補償部労災管理課『労働者災害 補償保険法(7 訂新版)』(労務行政,2008)567 頁。以下,同 書を「コンメンタール」と表記する。 6)前掲注 5)コンメンタール 613 頁。 7)第 48 回国会衆議院社会労働委員会第 23 号(昭和 40 年 4 月 23 日)。 8)第 48 回国会衆議院社会労働委員会第 32 号(昭和 40 年 5 月 15 日)。 9)第 48 回国会参議院社会労働委員会第 21 号(昭和 40 年 5 月 19 日)。 10)小西啓文「労災特別加入制度にかかる裁判例の検討──判 例の総合研究のために」法律論叢 91 巻 6 号(2019)121 頁。 同「労災特別加入制度の今日的課題」週刊社会保障 2581 号 (2010)46 頁も参照。 11)前掲注 5)コンメンタール 555,562-563 頁参照。 12)青野覚「特別加入制度における業務上外認定」社労士総研 研究プロジェクト報告書「労災保険上の特別加入制度に関す る諸問題の検討」(2011)19 頁。 13)同旨,西村健一郎『社会保障法(追補版)』(有斐閣,2006) 327-328 頁。 14)水野勝「足立労基署長事件判批」判例時報 1573 号(1996) 221 頁。 15)西村・前掲注 13)327 頁。 16)前掲注 5)コンメンタール 563 頁。 17)田中健一「労災保険特別加入制度をめぐる現代的課題── 個人請負業者等の労災保険法上の保護を視野に入れて」労働 法律旬報 1786 号(2013)24 頁。同「労災保険特別加入制度 の問題点の検討──契約労働者の労災補償の保護の観点から」 季刊労働法 241 号(2013)90 頁も参照。 18)前掲注 5)コンメンタール 604 頁,労働省労働基準局補 償課編『労災保険特別加入制度の解説』(労働基準調査会, 1996)88 頁。

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19)田中・前掲注 17)各論文。なお,たとえば認可団体である 東京土建の場合,月約 5000 円程度の組合費が必要となるよう である(http://www.tokyo-doken-kokuho.jp/keisan3/keisan_ all.php により算定)。 20)日本芸能実演家団体協議会「芸術家等の社会保障制度の提 案──新たな労災補償制度づくりを中心に」(2002)2 頁。同 提案について,小西啓文「特別加入制度の立法論的課題」社 労士総研研究プロジェクト報告書・前掲注 12)7 頁,田中・ 前掲注 17)各論文。 21)たとえば,田中・前掲注 17)各論文。 22)前掲注 5)コンメンタール 607-608 頁。 23)前掲注 5)コンメンタール 608 頁。 24)前掲注 5)コンメンタール 608 頁。 25)前掲注 5)コンメンタール 589,617 頁。 26)東京地判平成 7・11・9 労判 684 号 16 頁。 27)青野・前掲注 12),近藤昭雄「労災特別加入制度の法的趣 旨と労災認定」労判 692 号(1996)9 頁など。 28)水野・前掲注 14)。また,業務上認定基準を労災保険法が 労働基準局長に「白紙委任的に」「再委任」していることに対 する問題意識から,行政内部の基準を超えて裁判所の実体的 判断の基準とすることに疑問を呈する見解が有力である。青 野・前掲注 12),水野・同上,近藤・前掲注 27)など。 29)前掲注 5)コンメンタール 620 頁。 30)たとえば,脳・心臓疾患の認定基準においては,発症前 1 カ月間におおむね 100 時間または発症前 2 カ月間ないし 6 カ 月間にわたって,1 カ月あたりおおむね 80 時間を超える時間 外労働が認められる場合は,業務と発症との関連性が強いと 評価できるとし,精神障害の認定基準においては「極度の長 時間労働(発病前 1 カ月間の時間外労働時間がおおむね 160 時間)」や発病前おおむね 6 カ月間の恒常的な長時間労働(月 100 時間程度となる時間外労働)の存在を業務による強い心 理的負荷を認める基準としている。 31)大阪地判平成 10・9・30 労判 753 号 32 頁。同判決について, 小西・前掲注 10)(法律論叢)参照。 32)たとえば,国・淀川労基署長(脳内出血発症)事件・大阪 地判平成 29・3・13LEX/DB25545652。 33)青野・前掲注 12)は 2010 年の時点ですでにこの点を指摘 している。 34)「労災の防止と補償の結びつきの法理」の労災保険への反映 として評価するものとして,有田謙司「安全衛生・労災補償 の法政策と法理論」日本労働法学会編『講座労働法の再生第 3 巻』(日本評論社,2017)203 頁,田中健一「委託型就業者 の災害補償」日本労働法学会誌 130 号(2017)33 頁。 35)有田・前掲注 34)。 36)有田・前掲注 34)は,団体加入方式をとらない場合,「労 災の予防と補償の結びつきの観点から,現行の労災保険法に おける特別加入制度の団体加入方式でなされているような業 務災害の防止に関し当該団体が講ずべき措置と守るべき事項 を定めるといったもの……に代わる,実効性ある仕組みを導 入しなければならない」とする。 *本稿脱稿後,労働政策審議会労災保険部会が,芸能従事者, アニメーション制作従事者,柔道整復師らの特別加入を認め ることで大筋合意したとの報道にふれた。 ぢがみ・りょうすけ 大阪大学大学院法学研究科准教授。 最近の主な論文に「労働保険における労働者の「従前業務」 に対する法的評価──アメリカ法を参考に」『日本労働法学 会誌』130 号(2017 年)157 頁。労働法・社会保障法専攻。

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