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日本の地域別の人口動態に関する統計的解析

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Academic year: 2021

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日本の地域別の人口動態に関する統計的解析

2011SE212岡山敬彦 指導教員:松田眞一

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はじめに

近年日本では総人口の減少が始まり,加えて少子高齢化 の進行により,経済成長や社会保障の面で先行きが不安 視されている.また,若者の大都市圏への人口流出による 地方の過疎化も将来的に深刻な問題である.そこで,現在 日本の人口は地域別にどのように変化し,その要因にはど のようなものが考えられるのか,統計的方法を用いて解析 する.

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解析の概要

人口の変化は人口動態と呼ばれ,その地域内の出生人数 から死亡人数を差し引いた自然動態と,その地域の流入人 数から流出人数を差し引いた社会動態に分けられる.デー タには都道府県別の自然増率,社会増率[4]の他,その要 因となりうるものとして全人口のうち20歳から44歳まで が占める割合,県内総生産,平均年収,人口密度,全産業 のうち第二次産業の占める割合,第三次産業の占める割合 [4],出生率[1],平均住宅地価[2]を用いる.なお,データ は2010年のものに統一した.解析方法として,人口変動 の要因を特定するために重回帰分析,人口変動の要因とな るデータ間を含めた総合的な因果関係を分析するためにパ ス解析,都道府県の分類分けを行うためにクラスター分析 を用いる.パス解析には榊原[3]によって作成された関数 を用いた.紙面の都合上パス解析とクラスター分析の結果 についてのみ掲載する.

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パス解析

パス図の作り方として,まず最も因果の下流に位置し, パス経路の出発がない変数を自然増率,社会増率のどち らかと定める.そこから増減法による変数選択によってパ ス経路の有無を判断しながら,全体的なパス図を作ってい く.最下流の変数と変数選択の順番の違いによる複数の図 を作成し,解析結果のAIC(赤池情報量基準)が最も低い ものを今回のパス図として採用した.そのパス図は,まず 自然増率について変数選択を行い,選択された変数の中で 推測順,続いて選択されなかった変数の中で推測順に目的 変数とし,変数選択を行うという方法で作成したものであ り,AICは−32.831,重回帰分析の決定係数,自由度調整 済み決定係数にそれぞれ相当するGFIは0.987,AGFIは 0.959となった.図1にパス図を示す. それぞれの変数について主に自然増率への影響を考察す る.自然増率への総合効果を括弧内に示した. • 20歳から44歳人口割合(1.31) 直接効果のみ.自 然増率の次に下流となり,直接効果がかなり大きい. 1.31という値は全てのパス係数の中で最大である. 自然増率 出生率 20~44歳 割合 社会増率 住宅地価 県内 総生産 平均年収 人口密度 第三次 産業割合 第二次 産業割合     1.31 .46 -.12 .19 .15 -.12 -.08 .61 .58 .21 .28 .32 .47 -.12 .24 .43 .61 .69 .90 .50 .91 .44 -.67 -.22 -.37 -.23 -.13 図1 人口動態とその要因についての因果モデル 出生率(0.46) 直接効果のみ.20歳から44歳の割合 ほど効果は大きくないが,やはりプラスにはたらいて いる. 平均住宅地価(−0.12) 直接効果のみ.地価が高いこ とによる子育て環境の悪さによるものだと思われる. 社会増率(0.29) 自然増率への関係については,直接 効果ではマイナスとなる.様々な場所から人が集まっ てくる地域は家族や地域による子育てのサポートを受 けにくく,自然動態が増えにくいのだと考える.しか し20歳から44歳人口割合を経由したプラスの効果が 大きく,全体ではプラスとなった. 平均年収(0.10) 平均年収が高いことがもたらす因果 関係として,社会増率が高くなる,平均住宅地価が高 くなる,20歳から44歳人口割合が高くなるといっ たことは自然なことである.自然増率や出生率が低く なることについては年収が高いことによる価値観の 多様化が,これらを押し下げていると推測した.全体 効果としては数値はそれほど大きくないが,プラスと なった. 県内総生産(−0.003) 平均住宅地価,20歳から44歳 人口割合に対してプラスにはたらき,出生率,自然増 率に対してマイナスにはたらくという意味で,県内総 生産は平均年収と似た変数であるといえる.平均年収 と同様に,県内総生産の高い都会であることが価値観 の多様化をもたらし,出生率や自然増率を押し下げて いると推測する.そして県内総生産が年収にプラスに はたらいていることも当然であるといえる.ただし平

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均年収が総合効果でプラスなのに対し,県内総生産は 僅かながらマイナスとなった. 第三次産業割合(1.20) 第三次産業の割合が高いこと で平均年収が上がる,社会増率が上がる,20歳から44 歳人口割合が上がるということはいずれも納得できる ことである.これらの間接効果が総合効果を大きく引 き上げている. 人口密度(0.47) 県内総生産,平均住宅地価に対して プラスにはたらくことは自然増率に対してマイナスの 影響を与える.しかし人口密度が高い地域は第三次産 業の割合が高くなり,そのことで総合効果がプラスと なっている. 第二次産業割合(−0.045) 総合効果は僅かにマイナス となったが,第二次産業の割合が高い地域は第三次産 業の割合が低い,ということが主な原因である.その ことを除いた効果は0.76とプラスになった.第二次 産業の割合が高い地域は地価が安く,20歳から44歳 人口割合が高いことが自然増率に対してプラスにはた らいている.

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クラスター分析

ウォード法にて階層的にクラスターを作り,デンドログ ラムを作成する.自然増率,社会増率とそれぞれの増減法 による変数選択で選択された変数を用いて,二つの解析を 行った.自然増率についての解析結果のみ掲載する.この 解析で用いた変数は自然増率の他,20歳から44歳人口割 合,出生率,平均住宅地価,社会増率,平均年収,県内総 生産,第三次産業割合となる.図2に結果を示した.左か ら四つの群に分けて考察する. 富山 山梨 栃木 群馬 福井 福島 長野 静岡 岐阜 三重 島根 長崎 鹿児島 香川 熊本 鳥取 宮崎 佐賀 大分 高知 新潟 愛媛 山口 和歌山 徳島 秋田 青森 岩手 山形 沖縄 北海道 宮城 奈良 福岡 京都 兵庫 愛知 広島 石川 岡山 茨城 滋賀 東京 埼玉 千葉 神奈川 大阪 0 5 10 15 20 25 30 35

hclust (*, "ward")djinko4shi

Height 図2 自然動態クラスター分析結果 第一群 (富山から三重まで) 自然動態の減少率は全国平 均並みである.第三次産業の割合,社会増率の平均値 は全群中最下位である.人は集まってこないが,工業 などの地場産業がそれなりにあり,自然動態の減少は 平均程度に留まっていると考えられる. 第二群 (島根から山形まで) 自然動態の減少が最も深刻 な群である.出生率については全ての群の中で最も高 いが,20歳から44歳人口割合,平均年収は最下位で ある.収入面から若者が減少し,自然動態が増えない ことが分かる. 第三群 (沖縄から滋賀まで) 自然増率の平均がマイナス となった第一群から第三群の中では最も減少率が小さ い.第一群と比較するならば社会増率のマイナスがそ れほど大きくないことが特徴であり,若者の流出がそ れなりに抑えられていることが自然動態の減少を抑え ているといえる. 第四群 (東京から大阪まで) 第三群の特徴をより強くした群であるといえる.自然 増率,社会増率の平均が唯一プラスであり,人が流入 することで自然増率も高くなっている.ただし出生率 の平均は全群中最下位である.

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総括

人口変動の要因の分析と都道府県の分類分けを行うこ とにより,日本の人口動態の現状が総合的に把握でき た.特に,「都会には人が流入するが,自然増は起こり にくい」など,一般的に言われていることを裏付けを 持って示すことができた.また,大都会でない地域で 自然動態の減少を食い止めるには,工業等の地場産業 で働く人を増やすことが有効であることが分かった.

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おわりに

今回はデータの有無の関係で都道府県別データを用い た.それでも意味のある解析はできたと考えるが,同 じ都道府県内でも地域により事情が異なるはずであ る.より細かい地域別のデータを用いれば,さらに詳 しい解析ができるはずである.

参考文献

[1] 厚生労働省 平成23年人口動態統計月報年計(概数) の概況:結果の概要, http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/ hw/jinkou/geppo/nengai11/kekka02.html ,2015/1/13. [2] 国土交通省2.都道府県別・用途別平均価格, http://tochi.mlit.go.jp/chika/chousa/2010/ 002.html ,2015/1/13. [3] 榊原浩晃:Rによるパス解析の実現とその応用,『南山 大学 数理情報学部 数理科学科 卒業研究』,2003. [4] 政府統計の総合窓口(e-stat), http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/ eStatTopPortal.do,2015/1/13.

参照

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