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環境の変遷と有孔虫 : 有孔虫による人間活動が及ぼした汽水湖の環境評価

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(1)

環境の変遷と有孔虫 : 有孔虫による人間活動が及

ぼした汽水湖の環境評価

著者

野村 律夫

雑誌名

南太平洋海域調査研究報告=Occasional papers

32

ページ

63-79

別言語のタイトル

Foraminiferal Interpretation of Brackish

Environment Caused by Human Activities

URL

http://hdl.handle.net/10232/16925

(2)

南太平洋海域調査研究報告,No.32,63-79,1999 有孔虫からみた環境と古環境

環境の変遷と有孔虫:有孔虫による人間活動が

及ぼした汽水湖の環境評価

野 村 律 夫 島根大学教育学部地学研究室(微化石研究室) 〒690-8504島根県松江市西川津町1060 nomura@edu、shimane-u、acjp

rbraminifEmlIntemretationorBrackishEnvironment

CauSedbyHumanActMties

RitsuoNoMuRA FacultyofEducation,ShimaneUniversityjNisikawazu-cholO60,Matsue,690-8504,Japan AbsnPact Duringthelast30years,therehavebeensignifcanthumanactivitiesinbrackish lakesandcoastalareasinJapan、Naturalenvironmentshavebeenchangedbythese humanactivities,whichincludemanyartiEcialconstructionssuchascoastal embankmentsandsluicegates,dredgingofbottomsediment,anddischargingofnutrients intobrackishandcoastalwaters・ AsanationalprOjectofJapaninthe1970s,alarge-scalelandreclamationwasplanned andpartlycarriedoutinNakaumiLake・ThisprOjectisnownotworkingbecauseof increasingrequeststhatnaturalenvironmentmustbeprotected・Severalartifcial constructionswerethusleftincomplete,Whichshouldhaveledtoaprlmaryfactorthat changedtheenvlronmentofboththewaterqualitiesandlivingorganismshFomthel970s throughthel990s・ ForaminiferaaresignificantlyusefUltoreconstructtheseenvironmentalchanges causedbyhumanactivities・Foraminiferahavealargestandingcropinbrackishand coastalareas,andtheyareverysensitivetothechangesofwaters・Moreover,theremains offOraminiferaarepreservedasfOssils,whichmakepossiblethetimeserlesanalysisof envlronments・ ThispaperrevlewsfOraminiferalevidenceresponsedtothehumanactivitiesin NakaumiandShmjikoLakes. は じ め に 63 1960年代頃より始まった日本経済の高度成長の波は,各地で公害問題という形で地域 住民の生活・健康に影響するまでになったことは歴史の事実である.そして30年以上を 経過した現在,21世紀へ向けて我々の生活環境を向上させつつ,自然との調和また自然 環境をいかにして保全するのかという問題に我々は直面している.今ここで,このよう

(3)

64 RNoMuRA な自然環境の歴史的変遷をいかに人間活動が影響を及ぼしてきたのか,具体的過程を実 証することは自然環境保全にとって意義深いものと考える.多様な地球環境のなかでも 汽水域は人間活動によって最も顕著に改変されてきた場所であり,多くの人為的な付加 が汽水域に与えられた.小論では,このような人間活動が与えた汽水域の環境変化の過 去・未来を有孔虫が有効に評価しえることを代表的な湖として宍道湖・中海を例に紹介 する. 宍道湖・中海は,1960年代後半から70年代前半にかけて農林水産省の直轄事業として 淡水化計画が実施され,人為的な改造がなされてきた.この干拓・淡水化計画は戦後に 始まった食料増産計画を受けて実施されたもので,とくに中海では干拓予定地の堤防閉 鎖,淡水化のための水門建設および湖底の凌喋が行われた.かかる計画で人為的に改造 された地域の総面積は,本来の中海の面積の32%にあたる.しかも淡水化・干拓の計画 場所は,海水と淡水の混合する所にあり,水系の上流部に位置する宍道湖の環境にも直 接影響することになる.この国営事業は,1970年代に工事の基本的部分の建設がなされ たにもかかわらず,上述のような近年の日本経済の構造変化や環境保全の高揚によって 干拓予定の67%が中断されている.工事に伴った環境への対策および計画の継続か否か は社会問題となっており,議論の真っ只中にある. なぜ有孔虫は環境評価に有効なのか 有孔虫を使った具体例を紹介する前に,なぜ有孔虫を環境評価に利用するのか述べて みたい.有孔虫は原生動物であり,汽水域で産する種類は0.2∼0.5mの大きさで中型底生 生物(メイオベントス)に属している.底生有孔虫が環境評価に有効な理由を7つ列挙 してみると次のようなことが挙げられよう. 1)硬い殻(test)をもつこと.殻には大きく石灰質を抽出した石灰質殻と周囲より 集めた砂粒を腸着させた豚着質殻に区分されており,これらの殻をもつ種の生態は生息 環境の違いを反映している.石灰質種や鯵着質種は生体の死後も殻が堆積物中に保存さ れるため,現在と過去をつなぐ直接的な証拠となる. 2)塩分が4%o以上の汽水から海水域に普遍的に生息している.研究対象は,殻をつ くる有孔虫がこのような環境に生息しているため,塩分のある環境が主である. 3)砂粒程度の大きさである.少量の堆積物であっても,砂粒程度の大きさであるた め,筋を使って水洗するだけで有孔虫個体が多数得られる.1グラムの泥質堆積物を63 ∼74川の筋で水洗すれば,約100∼300個体の有孔虫が得られることもある.個体数が特 に多い場合には分割器を使って適度に分割すれば,定量化が容易に行える. 4)多様な形態をもっている.有孔虫は室(chamber)と呼ばれる空間を個体成長と ともに増やしていく.その室の付加過程が種によって異なっている. 5)堆積物の中でも表層部分に生息しており,堆積物と下層水の境界層の環境を記録 している.種によって異なるが,生活様式に堆積物の内部で常に生活する内生(infaunal) と堆積物の表面で生活する表生(epifaunal)がある.環境に応じてこのような生活様式 を異にする群集が形成される. 6)群集が水塊構造を反映している.上層水でプランクトンによって生産された有機

物は分解しながら沈降・堆積する.塩分躍層は上層と下層の混合を阻害する要因となり,

下層水が停滞性になればば堆積物は有機物に富み,還元的な環境が形成される.一方躍 層の発達が弱く,流動的な下層水の場合は酸素が供給されやすく堆積物は酸化的な環境

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環境の変遷 と有孔虫 65 に な る.群 集 を 解 析 す る こ と に よ っ て 堆 積 物 の 酸 化 ・還 元 の 相 対 的 な 程 度 を 評 価 し え, さ ら に 下 層 の 水 塊 の 性 質 を推 測 す る こ と が で き る(図1). 7)石 灰 質 の 殻 は 鉱 物 学 的 ・化 学 的 な研 究 対 象 と な る.化 学 成 分 は 炭 酸 カ ル シ ウ ム で あ る が,結 晶 系 が 異 な っ た り,外 部 環 境 に 応 じ て カ ル シ ウ ム と マ グ ネ シ ウ ム の イ オ ン交 換 が 起 こ っ た りす る.ス ト ロ ン チ ウ ム な ど の 微 量 元 素 の 含 有 量 も環 境 に 応 じ て 異 な る. ま た,地 質 時 代(白 亜 紀 以 降)の な か で は,殻 の 炭 素(12Cと13C)・ 酸 素(160と180)の 各 同 位 体 が 標 準 値 と ど れ ほ ど 隔 た っ て い る か を 示 す 同 位 体 比 に よ っ て 物 理 化 学 的 な 環 境 復 元 が 可 能 と な る. 現 在,こ の よ う な 有 孔 虫 の 生 物 と し て の 解 析 と地 球 化 学 的 な 解 析 の 両 側 面 か ら 進 め ら れ,よ り厳 密 な 環 境 復 元 が 可 能 と な っ て い る. 中 海 ・宍 道 湖 に お け る 有 孔 虫 の 分 布 とそ の 特 徴 中 海 ・宍 道 湖 の 有 孔 虫 は,図2に 示 さ れ る 代 表 的 な5種 類 に よ っ て 特 徴 づ け ら れ て い る.そ の 組 成 は 単 純 で あ り,群 集 の 定 量 的 な 扱 い が 容 易 で あ る.

中 海 の 有 孔 虫 は1939年 に 羽 田 が 有 孔 虫 の 存 在 を 報 告 し て 以 降,NOMURA and SETO (1992)が 中 海 全 域 を 調 査 し た.そ の 結 果 に よ る と,中 海 はTrochammina hadaiと Ammonia beccarii に よ っ て 占 有 さ れ た 有 孔 虫 群 集 が 形 成 さ れ て い る こ と が 分 か っ て い 人間活動 に伴 う 栄養塩ほかの諸元素

有 孔 虫 に よ る内 湾 や 沿 岸 環 境 の

解 釈 の た め の キ ー ワ ー ド

表層生産物 人口構築物 湖面 (水 の 動 的 ポ テ ン シ ャル) 再生

分解生成物

分解 沈降 上層水

塩分躍層

下層水 沈降 分解生成物 分解

酸化的又 は還元 的環境 の形成

有孔虫の食物 還 元 分 解 (バ ク テ リア) 有孔虫 有機物の堆積 (表生) (内生) 湖底面 堆積物間隙水 堆積物 図1.有 孔 虫 を 使 っ て 環 境 を解 釈 す る た め の 基 本 的事 項

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66 RNoMuRA ・鼻W姑v,訂 髄 図2.中海・宍道湖で特徴的な有孔虫.A:A加畑Obac""ites鋤噌"α,B:Mj"α郷”"α"sCa,C: HZZpj”〃mgWzO〃escα"α”e"s応,D:T1mc"α獅沈伽αル“αi,E:A沈沈0"ja6gccα"j・A−Dまでは 砂粒で殻をつくっているため腰着質有孔虫ともいう.Eは石灰質殻よりなるもので透明ない し半透明の見かけからガラス質石灰質有孔虫とも呼ばれる る.淡水の流入する部分ではHtJPJ”ノZソ,zZgWzO〃esca"α"8"sjSが分布し,これら3種はそれぞ れ中心的な分布域を異にしている(図3).弧ノzα”はA6g“αγ"より腐泥化した湖底に 優占して産出し,貧酸素に耐性的である.A6“cα戒は躍層(水深約4m)の直下で, 水の流動的な場所で優占して産する.このような有孔虫の分布を外部環境要素と比較す ると,基本的に塩分・溶存酸素・底質・水流によって分布が規制されていることが明瞭 である.特に,塩分は主要な分布規制要因で,美保湾から境水道にかけて塩分上昇に伴っ てE肋吻城"郷などの沿岸性種を含む多様性に富む群集へと変化する(図3). 一方,宍道湖での分布は島根大学の中海・宍道湖自然史研究会によって全域での分布 が明らかにされ,宍道湖西部では”"α沈沈伽α”Scα,東部にはA沈沈0"ja6γgccα"jと Hzlj”〃唾沈0〃CSCα"αγ""s応が優占して分布していることが明らかにされた.この分布 の特徴からは,塩分の違いが宍道湖の東西であるものの,年間を平均した濃度の差異は かなりオーバーラップしていることが多く,塩分が有孔虫の主要な分布の規制要因には

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鍵 灘

67 、 ノ1=

:綴震雪謬琴

島 根 半 島 中浦水門 7A4 本 庄 工 灰 美 保 湾 大 根 島 弓 浜 半 島 3 A1 環境の変遷と有孔虫 143 A2 米 子 松 江 I駅 A1:焔pノbphhagmoノdescana"ens/Sの優占する群集 A2:Ammonノabecca"/の優占する群集 A3:7)℃cノ7ammjnahada/の優占する群集 A4:77Dchamm/"ahada/M伽伽e//aの優占する群集 B:Pseudb"onノonノapo、/cum-Qu/nqueノbcu伽aの優占する群集 C:E(ph/d/umsomaense-EIp/7/d/umexcavarumの優占する群集 図3.中海の有孔虫群集の分布(NoMuRAandSEro,1992による).矢印は美保湾より境水道を通っ て 流 入 し た よ り 高 い 塩 分 水 の 密 度 的 な 流 れ 方 向 を 示 し て い る 7.0 宍 道 湖 西 部 宍 道 湖 中 部 宍 道 湖 東 部 大 橋 川 中 海 西 部 中 海 中 央 部 中 浦 水 門 美 保 湾 (河口) 図4.1995年5月に採取した表層3cmまでの堆積物(37.7cc)中の生体有孔虫の個体数と分布.宍 道湖西部は皿愈Scα,宍道湖東部はA、69“α"Z,中海は正ノzα“fと近年増加傾向を示す PEJOs伽aspがそれぞれ優占している.また,塩分および有機炭素と有機窒素比の地理的な 分 布 を 示 し て い る . 明 ら か に , 塩 分 は 主 要 な 分 布 規 制 要 因 に な っ て い る が , 有 機 物 の 組 成 の違い(炭素/窒素の比)なども主要な要因になる.塩分は1991年1月から1994年12月ま で を ま と め た 個体

米子 =11.0 −10.5 −10.0 −9.5 −9.0 −8.5 −8.0 −7.5 封e峠削馨仲、牒追騨仲

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68 RNoMuRA なっていないようである.塩分以上に分布の規制要因には有機物組成の違いが反映され ているものと考えられている(野村・吉川,1995).堆積物中の有機炭素(C)と有機窒 素(N)の比を比較すると宍道湖西部では9∼9.5であるのに対して,中東部ではほぼ7.5 ∼8くらいである.一般にC/N比が9以上であるとセルロースに富む高等植物に由来す る場合が多いことから,斐伊川より陸上植物の供給が多いものと考えられる(図4). 実際,陸上植物の破片が宍道湖西部では多い. このように宍道湖・中海では,それぞれに生態を異にする有孔虫の分布が確認される が,両湖とも主要な分布規制要因には塩分躍層の発達程度から派生する多様な規制要因 が複雑に相互作用し合っている. 中海・宍道湖の現在の水質環境 中海・宍道の淡水化および干拓工事が実行されるようになった1970年代前半より建設 省や島根県(公共用水域・地下水水質測定結果報告書),また島根大学理工学部化学教 室(島根大宍道湖・中海水質月報ごぴうす)により水質の経年変化が組織的に測定され るようになった.したがって,近年の水質環境に関する資料は宍道湖・中海の水質特性 の詳細を把握可能にしている.しかし,70年代以前の水質については極めて断片的な結 果が公表されているのみにすぎない(たとえば,伊達ほか,1975;岸岡,1975).ここで は,有孔虫と関係する水質要素の変動について紹介する. 中海については,境水道を介して日本海より海水が逆流するため,水深約4mに顕著な 塩分躍層が発達することはよく知られている.中海の湖心部における下層水の塩分は, 30∼33%oで年間を通して安定している.上層水の塩分は下層水より約10%。低く,また季 節的に低下するのは3∼4月頃で,斐伊川水系が上流より雪解け水を流出する時期に当 たる.水温については,上層と下層とも似た変化を示し,夏季に25∼30℃,冬季に約6 ℃となる.したがって,年格差は20∼25℃ということになる.溶存酸素は上層水は年間 を通して過飽和状態に近いが,下層水は8∼9月頃に無酸素状態になる. 宍道湖の塩分については,最小幅100mの大橋川を介して中海より逆流しているため低 塩分となっている.湖心部で3∼4%oであり,上層水と下層水の格差は極めて少ない特 徴を有す.宍道湖における水質環境は,気象変化と密接に関連して変化していることが 知られている(橋谷,1991).たとえば,低気圧の移動や長期的な降雨量の減少期には中 海より塩分の逆流が容易になり,躍層の形成が見られる.下層水と上層水の温度格差は ほとんどない状況にある.下層水の溶存酸素は夏季に20%以下になることが普通である. 以上のような水質要素のほか,窒素,リンなどの栄養塩類,COD(化学的酸素要求量) も測定されている.栄養塩類の変動は,伊達ほか(1989)が中海中央部で1976年から1987 年にかけて全リンの濃度が1.5倍になっていることを報告しているが,経年的にみると顕 著な変化を認めがたい.宍道湖のCOD値は中海のそれより高い傾向にある.経年的には, それぞれの地点では顕著な変化がないものとして報告されている(島根県;図5).し かしこれには別解釈も報告されており,野村(1996)は宍道湖や大橋川のCOD値が1980 年に高レベル側へ変移したとし,これをCODイベントと呼んだ.この点については,有 孔虫との関連で再度ふれる.一般に水質分析に示される化学的要素は短期間の変動(た とえば月単位,季節単位のこと)を表現しやすいが,長期的な変動ではその特徴を捉え にくいようにみえる.この点で,有孔虫のような生物種の産出状況は長期的な変動を捉 えやすい.

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4 69 中 海 ・ 宍 道 湖 の 人 為 的 改 造 と 有 孔 虫 群 集 有孔虫による環境の変化過程を具体的に検討するためには,柱状の堆積物を乱さない ように湖底から採取しなければならない.採取した柱状堆積物は0.5∼1.0センチメートル 単位でスライスし,250メッシュの節で水洗する.その後,残置物を乾燥させ有孔虫の種 類とその個体数を分析する.生体と遺骸を区別するために,一般的にローズベンガル染 色を水洗後の残置物に施しておく.生体の場合,原形質が紅色に染まるから遺骸と容易 に区別される.次に,中海・宍道湖を例として環境変化を復元していくことになるが, COD値 10

宍道湖東部

宍 道 湖 東 部

CODイベント 8

i#

6 4 2 0 I 19−73747576777879808182838485868788899091929394959697 西 暦 年

平均からの偏差(1973.4-1996.3)

環境の変遷と有孔虫 0

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I 2 19−737475767778798081828384858687888990919293949596 西 暦 年 図5.1973年から1997年3月までの宍道湖東部の定点における下層水の化学的酸素要求量の経月変 化と平均からの偏差.1980年にCODは不連続的な分布を示しており,CODイベントをなす (野村・遠藤,1998による) ー ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ I ■ ■ ■ ロ ■ ’

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平均値:424

-2 -4 !

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70 RNoMuRA その前に人為的な改造がいつ,どこでなされたのか記録をみてみる(図6). 境水道より流入する美保湾の日本海海水は,中海の中央に位置する大根島と江島を反 時計回りに巻くように流れていたことが明らかになっている.これは大根島と江島の間 の水路(現在の馬渡堤防)と江島と弓浜半島の間の水路が2m以下と浅かったため,比 重の重い下層水は直接南下できなかったためである.しかし,このような自然の地形は 人為的に改造されてしまった.境港の渡渓や大海崎堤防,森山堤防が1968年12月より始 まり,1969年3月には中浦水門の建設が始まっている.78年3月に79年3月に馬渡堤防, そして最後に森山堤防が1981年3月の完成し,本庄干拓予定地は完全に閉鎖された.し たがって1981年以降,境水道より逆流する海水は,僅か414mの中浦水門を介してしか移 動することができない構造になっている(それぞれの位置は図4を参照). これらの工事には,大量の粗粒物が利用されてる.そのため,工事箇所に近い部分に は本来の細粒堆積物の中に粗粒砂が挟在する現象となって出現している.この粗粒堆積 層は工事時期の具体的な証拠となる.柱状堆積物に過去の年代を推定する方法は層位学 と呼ばれ,炭素14年代測定法,セシウム137年代法,鉛210年代法などにより深さの異なっ た何点かの堆積物中の放射性の元素の量を測定し,堆積速度から内挿することによって 得られる(中海・宍道湖自然史研究会ほか,1986;島根大学山陰地域研究総合センター, 1988;表l).しかし,このような年代測定法は高価なうえ,内湾や沿岸域では堆積速度 が一定でないため,誤差を伴うことが一般的である.したがって,何らかの方法によっ て具体的な年代を指示する証拠を示すことができれば,かなり精度を保証した年代値と して利用することができる.この証拠として,上述したような堤防工事に伴う砂層を発 見することにより,工事記録を参照して年代値を特定することが可能となる. 図7には宍道湖における有孔虫群集の層位的な分布を示した.顕著な変化が湖底下3 ∼5cmにかけて起こっており,いずれの地点でもH”ノ”〃噸獅Oi伽cα"α池"sjsと入れ替 わ っ て A 加 加 州 α 伽 c α 戒 の 産 出 が 著 し く な っ て い る . 大 橋 川 上 流 の 地 点 で も H cα"α"e"蝋とA、伽cα州との関係は鏡像の関係にあり,Hcα"αγ伽s応の減少とAMCα戒 の増加が見られる(図8).大橋川の中流の地点における有孔虫群集でも同様であった. 宍道湖では,さらにHcα"α"e"sjsが共通して減少する深さが7∼16cmにかけて存在して いる.明らかに,A6ecc伽jが増加する以前の環境変化を示している. 中海の中央部で実施した柱状採泥の結果では7初c"α加州"α加伽の産出が湖底下4‐ 5cmで高くなっている(野村・山根,1996).また,湖底下12-13cmにかけてA、beccα戒 が減少している(図9).以上のような種の層位的な分布の変化は堆積速度が異なるた め湖底下の深さはそれぞれ異なるものの,1920-30年代と1970年代と80年初期に連動し た現象となって現れているとが注目される. 中海で干拓のために閉鎖された本庄工区内で得られた有孔虫の層位的な分布は,極め て顕著な変化を示している(図10).高い多様性を有していた場所でありながら,その 多様性が全く失われ,しかも有孔虫が現在消滅していることが明らかになった(野村・ 猪口,1995).前述のように,工事に伴った砂粒堆積物の層位的な分布と呼応して急激な 産出減少が起こっていることから,堤防の建設による工区内の閉鎖が主要な原因となっ ていることは明らかである.このような堆積物組成の違いや有孔虫群集の違いは,湖底 下4∼6cmの範囲で見られる. このように,柱状試料中の有孔虫を分析することによて長期的な環境変化が容易に復 元される.ここで挙げられる種の特徴は,Hcα"α畑"sjSが塩分のやや低い場所に多いこ

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湖底からの深さ

71 堕男§量己屋g愚冨○ミ酌ごミQ○頁ご輯 。9 図6.1920年以降の中海・宍道湖で行われた人間活動.特に,1920-30年代の大橋川拡幅工事や境 港修築工事,および大規模干拓予定地となった本庄工区に関る工事は,湖水環境に多大な 影響を与えた.人間活動は1960年代後半から1970年代に集中している 宍道湖東部の2地点 Sl−5 S1-6 種農ごQQmQご戸壁◎ミミ気 l I l l B ' 15 1 1 1 1 1 1 1 1 1

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図7.宍道湖におけるHcα"αγjg"s商からA6gccα"jへの優占種の変化.堆積物1g当たりの個体数 による.矢印に示される年代は人間活動によって宍道湖の環境が変化した時期に相当する (野村・吉川,1995による) ロ

5 環境の変遷と有孔虫 ロ 10 8 0 0 2 4 40 20 I B ロ ロ ' 1 1 I U I l 6 8 1 0 0 7 0 1 0 0 2 4 6 8 . 1 0 (×10)(×・10)

豊酉

大橋川拡幅工事 境港修築工事 外江・渡地区干拓 境港外港工事 (1万トン岸壁) 境水道液渓 中浦水門建設 大海崎堤防 弓浜干拓 彦名干拓 日立安来工場干拓 森山堤防 馬 渡 堤 防 境 港 外 港 工 事 (4万トン岸壁〉 回詞払科か[ ト斜Iやぶ。﹃ いぶIすべ。﹃ 鋼叩誤壇 !#ii:’5;;;

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︵日。︶和艶e﹂幽窪 1980年 - 号 938年 : 季 1 40

OO20406081L2020406080020406080100

10305070 (g/cc) ( % ) ( % ) 図8.大橋川上流におけるA6ecc”"とHcα"”i”sjsの相対的な分布.2つの種は対称的な分布を 示 し て い る A加沈o"a刀ocha汎”"aA加加o"jaTmcham加加a beccα戒 ノjaaajbgccarガ ノjadn1j 0 1 2 3 4 5 5 6 7 8 9 1 0 0 1 2 3 4 5 6 0 4 8 1 2 1 6 ( x 1 0 % ) ( x 1 0 % ) ( x l O ) ( x l O ) mdividulas/ccmdividulas/cc 図9.中海の中央部における弧〃α"α/とA6eccαγ"の分布(堆積物1cc当たりの個体数と相対量). A・be"α"jは中海から減少傾向にあり,亜〃α”は増加しつつあるものとみられる(野村・ 山根,1996による) ﹃.、一一 尋 向■■一 ■ ■■■■■■■画■■■■■■■■■■■■■■

1970 4 192 4 ' 0 ロ ロ ロ 』 l '

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湖底下の 深さ(c、) 73 20 工 事 時 期 工 事 時 期 ST−9ST−9

28406420

1 b■。■■苗 含砂量 (%)

蕊鶏

ロ 600 工 事 時 期 ST-15 含 砂 量 (%) l寺] 鴇ミ 蕊 89雛 蕃巴 』 環 境 の 変 遷 と 有 孔 虫 ■■【 0 5 10 15 試 料 番 号 図10.本庄工区内部での有孔虫の消滅の様子(堆積物19当たりの個体数).堤防の建設によって 工区内の塩分躍層が消え,環境が激変したために消滅した(野村・猪口,1995による) 400 1グラム当り の 個 体 数 200 0 210Pbによる堆積速度 宍道湖0.070士0.003 中海0.044士0.002 (平均:0.0817士0.019) (平均:0.055士0.019) 137Csによる堆積速度 宍道湖0.016±0.016 中海0.044士0.018 表1.中海・宍道湖における堆積速度(島根大学山陰地域研究総合センター,1988による)

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∼0.165士0.003 ∼0.077±0.002 と,A6gccα"jは広塩'性であるが,Hcα"α"e"sたより高い塩分を好む。T》'りc〃α郷”"α〃α”j は高塩分環境,またA6eccαγ"に比べて高い還元環境でも生息している特徴がある.し たがって,宍道湖では湖底下7∼16cmにかけて淡水の影響に支配された環境から塩分の ある湖水環境へと移行していること.中海では,より還元‘性の強い堆積環境へ変化して いること.閉鎖された本庄工区内は有孔虫の生息できない環境が形成されたことが挙げ られ,いずれも湖水環境の人為的な改造と密接な関係のもとに起こっている. (平均:0.1078士0.003) (平均:0.0558士0.002)

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∼0.171士0.02 ∼0.065士0.02 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 1415 16 17 18 1920

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74 R・NoMuRA 有孔虫が示す人為的な環境 一般的に,湖水環境は水質によって評価されている.その最も代表的な指標が化学的 酸素要求量(COD)と呼ばれるものである.いわゆる水中に酸素と結合することのでき る物質,とくに有機物がどの程度含まれているかを示す.したがって,CODの測定値が 高ければ有機物質が多く含まれていることになり,水質が良くないことになる.環境行 政の基準では4段階に区分され,それぞれ水の利用項目(水道,水浴,農業・工業用水 など)が規制されている.このCODによって経年的な宍道湖・中海の水質変動が1970年 前半以降記録されている(図5).結果をみると,季節的な変動が明瞭に示されている が,経年的な変動では明瞭な傾向はないものとして報告されてきた.あるとしても,極 めて僅かにCOD値が高くなったというものである.このような変動に対して,有孔虫群 集は極めて明瞭な変動が1980年頃の起こったことが前述のように示される. 有孔虫群集の変化を現在の分布域の水質から判断して解釈すると,宍道湖の湖底下7

∼16cmは堆積速度から見積もって1930年代に相当している.H”J”ノ”g"Z0j伽

cα"α"e"sjSが急激に減少して産出する時期は境港修築工事や,また宍道湖と中海をつな ぐ大橋川の大規模な渡喋の時期であり,この工事によって湖水の塩分が上昇したものと みられる(それより以前は,宍道湖は淡水に近い状況にあった).松江市の市誌によっ ても,工事によって宍道湖の湖水が農業用水として使えなくなった記録が残されている (松江市誌編さん委員会,1962).また豊原(1938)は大橋川の改修工事によって中海と

宍道湖の平均水面差が3cmになったことを報告している.HtZlノ叩伽g"zo枕Scα"α"e"szs

の減少は,このような人為的な環境変化を記録している証拠である. 宍道湖では湖底下5cmよりA加加0脚62“α"jによるHcα"α池"sjSの生態的な置換が起 こっている.宍道湖の堆積速度が遅いため,堆積速度の早い大橋川で検討しても同様に 確認される現象である.A加加州a6ecca畑が広塩性であるため,両者の生態的な差異は 生息域の違いから評価されることになる.湖底下5cm,すなわち年代値に置き換えて表 現すると,この環境変化は1980年に起こったことになる.この年代はまさに前述の本庄 工区の堤防が完成し,工区内が閉鎖された時期に一致している.このことからも明らか に有孔虫は近年における人間活動の証拠を明確に示している.前述のように,CODの調 査結果を再検討したところ,必ずしも連続的な変化として理解されるものではない.図 5の矢印で示されるように1980年の前後で不連続的な変化が起こったようにもみえる. そして,この変化はCODとAbeccα戒の両者がお互いに呼応していることから,それぞ れCODイベントとA加加0"jαイベントと呼ばれている(野村,1996;野村・遠藤,1998). この両者のイベントを比較すると,水質でみる環境変化は漸進的な変化をするというよ りうも,断続的な変化として捉えることができるように思われる.すなわち,あるフィー ドバック効果により維持されてきた環境が突然レベルの異なったフィードバック効果を 有す環境へと移行することである. 1980年ころの本庄工区内で有孔虫群集がいかにして消滅していったのか考察してみた い.干拓予定地として堤防が形成されて以降,閉鎖的になった環境で有孔虫は多様'性を 急激に失っている.これは下層水へ塩分の補充がないため,漸次的に工区内の湖水が脱 塩し,それまで存在していた塩分躍層が消失する結果となったためと考えられる.境水 道より日本海海水の流入する場所に近い本庄工区は,高塩性の種にとって塩分の低下が 決定的なな環境変化であったものとみられる.また躍層の消滅は,下層水が気象条件に 敏感に影響され,湖水は擾乱されやすくなり,溶存酸素の下層水への供給も容易になる

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環 境 の 変 遷 と 有 孔 虫 7 ような結果をもたらしたであろう.現在,無酸素が形成される場所は約10mの排水溝の ような限られた所にすぎない.このような場所以外は,堆積物表面を酸化的環境へと変 貌させている.T初c加加加伽ノzα伽は腐泥環境に多く,中海では硫化水素の発生する環 境でも適応しているが,この種にとっても酸化環境では存続できなくなった.また,湖 底の有機物質の酸化による分解は,堆積物の間隙水を酸性へと導き,広塩性であるA MCα戒のような石灰質殻を有す種類にとっても好適な環境とはいえない. 一方,中海では下層水の流入・流出が中浦水門によって制限されたため,より停滞性 の構造へと変化している.下層水が停滞するほど,表層より流入する有機物の付加は保 存されやすくなり,堆積物は還元性の強い腐泥へとなる.当然のこととして,栄養塩類 の付加も促進される.微妙な水流変化の起こるたびに下層の累積した栄養塩類の一部は 表層水へ移動する.結果として赤潮の発生を促す.この現象は循環的であり,現在のよ うな停滞性の下層水が水力学的に維持されている問は継続され,決して改善されること はないものとみられる.どの地域でも汽水域は,海水と淡水の密度差,および河川から の栄養塩類流入によって必然的に湖底は腐泥化する環境にある.その改善方法は,富栄 養化した湖底泥の大規模な酸化または除去,さらに下層水の循環をよくし流入・流出を 促すことであろう. 今後の課題 これまで有孔虫研究者の多くは,地質時代の古環境復元のために有孔虫の生態を積極 的に研究してきた.その結果,高度な統計的手法を駆使して説得性のある復元も可能と なった.その反面,最も我々の生活尺度としての時間スケールにおける有孔虫の有効利 用をないがしろにしてきたきらいがある.一般市民や学生の多くは,有孔虫という生物 を知らないか,または有孔虫は化石でしか見ることのできないものと思っている.これ は,古生物学者が地質学的目的のみに利用してきたための結果であり,現在的な環境問 題への利用には消極的であったこともある.しかし,今後は生体としての有孔虫を人間 生活に関わる環境指標に積極的に利用していかなければならないと考える.そのために は,汽水∼沿岸域の有孔虫群集の生体について多くの基礎的な情報を集める必要があろ う.以下に例を示しておく. (1)異常成長と重金属汚染 沿岸域の有孔虫群集が公害による環境汚染と密接に関連していることが70年代の初め ころより指摘されている(たとえば,SHAFER,1973;BoImvsKoYandWRIGm1976).高有 機質で汚染された所は,溶存酸素の欠乏した環境が形成され,硫化鉄で充填された個体 の産出が普通である(SEIGLIE,1971).過剰な有機物の堆積がバクテリアを繁殖させ,有 孔虫の生息を阻害していることもあるが(ALvE,1991),有孔虫のなかには.五加伽の ように比較的強い耐性をもっている.また,多量の有機物質で富栄養化した場所では, 特定の種が高密度に分布することが指摘されている.しかし,このような環境汚染と密 接に関係している種であっても,群集そのものに地域差があるため統一的に利用するに あたって障害があるように思われる.すなわち,汚染への反応が群集または種によって 異なっているため,地域的な問題に留めざるを得なかった.近年,沿岸堆積物中に濃縮 されてきた重金属汚染による有孔虫の奇形個体の増加が注目されている.汚染に対する 有孔虫の反応を奇形個体の発生率のような観点で比較すれば,汚染の程度が把握しやす く , 広 範 囲 の 環 境 比 較 が 可 能 に な る . た と え ば , イ ス ラ エ ル 北 部 の 地 中 海 沿 岸 で は 底 生

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四 76 有孔虫群集の30%に奇形が表れていると報告されている(YANKoemj.,1998).奇形には, 非対称旋回やねじれなどの異常巻き,室の変形と大きさの異常,異常な室の付加,最終 旋回の未発達,口孔の複数化,キールの変形,殻表面の装飾の欠如,殻表面の突起の形 成などが認められている.中海でもこのような個体が出現しており,そのいくらかの例 を図11に示しておく. 奇形個体の出現には,重金属汚染によって発現するばかりでなく,生息環境に対する ストレスから誘発される場合もある(ALMoGILABINgオαj,,1992).たとえば,宍道湖では Mi"α加""〃んScαに生息域の塩分低下による異常の発生がしばしば認められることがあ 詫謎飛鞠需輔 図11.奇形の有孔虫.A:M"iα腕”"α血Scα,B∼H:E肋吻城""zs〃6αソ℃"c"畑,I:Ammoniabeccarll.● ● Aは宍道湖,B∼Iは中海(本庄工区内) 喝 毛 吃 琴 恐 浄 簿 議了・』門 雛 』 瀧 # & 稀蕊

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環 境 の 変 遷 と 有 孔 虫 77 る(野村,未発表,図11−A).しかし,塩分の影響しない環境ではカドミウムが A伽肱オ“"αに,クロムがC伽〃Csに,チタンがAC“0耐ノOc"ノ伽に奇形をそれぞれもた らす確率が高い(YANKoeオαI:,1998).銅や亜鉛も重要な奇形発生要因元素に挙げられ, とくにA加加0"jaMcα戒はCu濃度10∼20ppmを含む飼育実験で12週間後には奇形の室を 形成したという報告もある(SHARIFIe畑ノ.,1991).種によって奇形発生率も異なっている ようである. 宍道湖・中海に限らず,腐泥の堆積しやすい内湾環境では重金属元素の付加が進行し ているものと考えられるので,このような奇形個体の出現率を積極的に検討をしなけれ ばならない新たな課題である.現在,中海ではA、beccα戒より助〃伽加s肋α畑加沈の方 が奇形の発生率が高い結果が得られている.しかし,なぜ重金属が奇形個体の発生を導 くのか,生化学的な機構については全く分かっていないのが現状である. (2)前述したように,日本における初期の有孔虫研究の対象域は浅海や汽水域であっ た.残念ながら初期段階では有孔虫群集の定量化に至っていない資料が多いものの,数 10年の問に群集の構成が異なってきていることを示す例が報告されるようになった.田 辺湾や大阪湾では貧酸素水の発達によってA、becc伽jから、加伽が群集を優占する構 成に変化した(紺田・千地,1989).浜名湖や松島湾でも明らかな群集の分布域の違いが 現れている(IImYA,1977;亀丸,1996).亀丸によると,松島湾では1930年代の岩礁域に 生息する助〃伽加Cl'jSp"加,Rzm”城α〃伽”cα,miliolidsから1960年代には T初伽沈獅伽や助〃伽沈s肋α航c"〃が優占するようになり,1990年代にはA、伽c〃j

やES"hgm""ノ0s"柳が優占する群集へと変化している.30年代から60年代の変化は湾岸

の岩礁域が人工改造され,海洋汚染が拡大していたことと関連させている.反対に60年 代から90年代にかけてはCOD値の低下など水質の改善結果によるものとしている.海外 においても,人間活動に関連した実態が報告されている(たとえば,ALvE,1995のレビュー 参照).このように有孔虫は人間活動が与えた沿岸域の環境変化を実証する極めて有効な 生物であるといえる.したがって,有孔虫により環境変化の要因を究明し,その変化が 今後とのような結果をもたらすのかシミュレーションすることも無理ではない.たとえ ば,野村・遠藤(1998)は,宍道湖におけるA,伽cα戒とHcα"〃e"sたが柱状堆積物中 で 対 称 的 な 産 出 を し て い る こ と か ら , そ れ ぞ れ の 堆 積 年 代 を 見 積 も っ た う え で H Cα"伽e"Sjsの宍道湖からの消滅時期を予測した(図12).分布の平均をとった場合,最 小の産出頻度をとった場合,最高の産出頻度をとった場合の3例で示した.平均として 2007年に消滅し,その前として9.1年,後として14.7年かかることになった.(2007.3-9.1)年は1998年,すなわち,現在であり,Hcα"伽e"s応は消滅しつつあることになる. 試料を採取した1997年にはこの種は産出していなかった点で予測と一致した結果になっ た.ただし,これには有孔虫と他の生物との捕食関係など解決しなければならない問題 も含まれているが,A、伽cα戒とHcα"α"e"sjSの生態から導かれる環境変化の方向は, 湖内で生産される有機物が経年的に増大していることを示唆している. このように,有孔虫の最も有効な点として,時系列的な解析が可能であることも強調 しておきたい.今後,内湾や沿岸の環境評価に有孔虫が積極的に導入されるべきであろ う. 謝辞:このシンポジウムは有孔虫学を発展きせるための極めて意義深い企画であった. このシンポジウムを企画された八田明夫教授・大木公彦助教授には,発表の機会を与え

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78 R. NOMURA 図12.大 橋 川 上 流 地 点 に お け る1970年 以 降 のH.canariensisの 減 少 と消 滅 時 期 の 予 測.1998年 か ら 2025年 ま で 約27年 の 期 間 が あ る が 全 体 で 見 積 も る と2007年 こ ろ と な る(野 村 ・遠 藤,1998 に よ る) て 頂 く と と もに特 別 号 の編 集 で お世 話 に な りま した. 引用文献

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