海洋バクテリオファージの形態について
著者
日高 富男, 藤村 剛
雑誌名
鹿児島大学水産学部紀要=Memoirs of Faculty of
Fisheries Kagoshima University
巻
20
号
1
ページ
141-154
別言語のタイトル
A Morphological Study of Marine Bacteriophages
URL
http://hdl.handle.net/10232/13784
Mem・Fac・Fish.,KagoshimaUniv・ Vol、20,No.1,pp、141∼154(1971)
海洋バクテリオファージの形態について
日 高 富 男 ・ 藤 村 剛 *
AMorphologicalStudyofMarineBacteriophages
TomioHIDAKAandTsuyoshiFuJIMuRA* Abstract Theauthorscarriedouttheisolationofmarinebacteriophagesfromseawatersamples collectedfromthetwostationsofthePacificOcean,offthesouthofKyushu,Japan・The authorsdeterminedalsothemorphologicalcharacterofthephagesisolated・Thesixteen marinebacteriophagesystemswereobtainedinthisstudy・Thehostbacteriaisolated belongto〃必rjo(9strains),ハe"do"o"as(4),例ayo6aae剛加(2),and4c〃ro腕o6aaer(1). Theisolatedphagesarehighlyspecifictooriginalhost・TheyarevirulentPhages・Thestru‐ ctureofthephageparticlesvarieswidely・Thegreatvarietyisfoundintailstructureamong theisolatedphages・Theyaredividedintothreemorphologicalgroups;phageswithatail possessingacontractilesheath(4strains),phageswithalongandnon-contractingtail(5), andphageswithashorttail(7).AccordingtotheTIKHoNENKo'sgroupingofphage,the authorssupposethattheyarephagescontainingdeoxribonucleicacid・Itisdi伍culttofind amorphologicalpropertyofmarinebacteriophagesinthisexperiments・Itissurethat theyvarywidelyintheirmorphology. 現在まで,海洋バクテリオファージについての研究は少なく,特に本邦においてそれは寡聞であ る.その初期の研究についてはZoBELL(1946)の著書に見られる.しかしそれは,当時海水から 分難されたファージは陸の影響をうけた沿岸海域からのものが多く,各種の腸内細菌に対して活性 を示すことや,またそれらファージは沿岸からの汚染をうけない外洋海域には見出し得ず,外洋中 のファージ分布は非常に少ないことを述べたに過ぎないその後,KRIssandRuKINA(1947)は 黒海から採取した海水や海底泥から数株のファージを分離した.また,SMITHandKRuEGER (1954)は,サンフランシスコ湾の海底泥から附加o属菌の1株を分離し,同時にその試料からそ の菌を溶菌するファージをも分離した.しかしこれら分離ファージの海洋由来性について,SPENcER (1960)は若干の疑問をはさんでいる. SPENcER(1955,1960)は北海の海水からグラム陰性菌の4属,助ao6aae加加(1株),Ae"domo"as (3),Hayo6aae加加(2),C)ノノ叩加gzz(1),に活性を示す7株のファージを分離した.また彼 (SPENcER,1963)は,そのファージ粒子の海洋中における濃度を検定し,1つの試水には10m’中 に100粒子ものファージが見出されたが,多くの試水では海水10ml中にはファージ1∼5粒子を 含むにすぎないことを報告している.その後,SPENcER(1960)が分離した海洋ファージの形態は BRADLEY(1965)やVALENTINEaaI.(1966)によって個々に明らかにされている.CHAINA (1965)は北海やインド洋から収集した629株の細菌を供試し,その中からファージに感受性な10 *鹿児島大学水産学部微生物学研究室(LaboratoryofMicrobiology,FacultyofFisheries,Kago‐ ShimaUniversity)142 鹿児島大学水産学部紀要第20巻第1号(1971)
株の菌を選出した.それらは伽"血沈o"αs5株,〃α肋ααe血沈2株,AC〃romo6aaer2株,
附加Cl株であった.最近WIEBEandLIsToN(1968)は海洋性副ero腕o"asに対し活性を示す
ファージを分離し,それらの形態や性状について報告した.JoHNsoN(1968)はまたインド洋の海
底泥から阿伽o-ファージ系を分離して報告している.
これまで,海洋バクテリオファージの系統的研究は知られない海洋中における細菌相の調節や
海洋細菌の遺伝機構において海洋ファージの果たす役割を理解するうえにも,今後更にファージと
その宿主細菌,ファージと環境因子との相互関係を明らかにすることが望まれる.著者らは,1970
年,数次にわたり九州南方海域の海水から海洋バクテリオファージの分離を試承,その間に16株の
海洋ファージを得ている.本報においては,これらファージの基礎的性状のうち,まず溶菌斑形態
を比較し,さらにファージ粒子の構造を電子顕微鏡観察により明らかにし得たので,それらの知見
を報告する. 実 験 材 料 お よ び 方 法供試海水1970年6月16日,本学練習船“南星丸,,を利用し,鹿児島県長崎鼻岬から真南へ5浬
沖合(31.04'N-130.35'E,深度129m)から海水を採取した(この時の採取試料および分離物に
は06N-の符号をつける).また,同年10月14日にも“南星丸,,を利用し,鹿児島県枕崎港の真南
10浬沖合(31.06'N-130.18'E,深度335m)から海水を採取した(さぎと同様にOXN−の符号を
つける).採水にはJ−Z式無菌採水器を用い,水深50m層の海水をとって実験に供した.
使用培地海水培地(SeaWaterBroth,SWB)は,HERBsT's人工海水1ノにポリペプトン
59,酵母エキス19を溶解,pH7.6-7.8に調節したものである.海水寒天培地(SeaWater
Agar,SWA)'とするため,上記SWBに1.5%寒天が加えられた.またSWBに0.5%濃度の
寒天を加えたものを軟寒天培地(softSeaWaterAgar,sSWA)とした.
供試菌の分離採取した海水は,その日のうちに研究室にもち帰り,菌の分離培養を行なった.
すなわち,試水0.1mlずつを20枚のSWA平板に塗抹,また1mlずつを20枚のシャーレに
SWAで混釈し,それらを20°Cで6日間培養した.現われた集落を計数したうえ代表的な集落を
選んで釣菌し,SWA平板で塗抹培養法による純化を3回繰返して,供試菌を単離した.分離菌の
性状検査は標準法(HARRIGANandMcCANcE,1966)で行ない,鑑別はBERGY,sManual,7版
(BREEDαα/、1957)と,SHEwANaα/、(HENDRIEandSHEwAN,1966;BAINandSHEwAN,
1968)によって要約された鑑別法によった.なお菌の分離に供したあとの海水は,当日直ちにミリ
ポアー演過膜(HA,0.4卯)で穂過し,低温(5∼8°C)に保存した.
海洋バクテリオファージの検出ファージの検出はSPENcER(1960)の‘間接法,に準じて実験した.
一系列の500ml容振鐙フラスコにそれぞれ150mlのSWBを入れ,これらにSWB中で1晩静
置培養した分離菌の新鮮培養物10株分ずつ(5ml×10本)を加え,2∼3時間振鐙培養した.次い
でその若い混合培養物に,さきに浦過して保存していた供試海水200mlを混和し,更に振麗iしな
がら2∼3時間培養した後,引き続き1晩静置培養してファージを集殖した.培養物は4,50OGで
30分間遠沈し,上清をミリポアー漁過膜(HA,0.45ノu)で漁過する.漁液は相応する標示菌の新鮮
培養液を塗抹したSWA平板上に点滴し,乾燥をまって培養器に収めた.これらは1晩培養したの
ち点滴部分の溶菌を観察してファージの存否を検した.この操作における培養温度は25℃である.
海洋バクテリオファージの分離前記ファージ検出試験において溶菌が承られたものについて
日高・藤村:海洋バクテリオファージの形態について 143 は,その溶菌部分を白金耳にてとり,標示菌の新鮮培養物に接種し25℃で1晩培養して増強する. 次いでその培養物は遠沈後ミリポアー漁過膜(HA,0.45〃)で浦過し,無菌のファージ培養液 (lysate)とした.このファージ液を適宜希釈したものについて,ADAMS(1959)の寒天重層法に 準じて溶菌斑形成を試承る.すなわち宿主菌新鮮培養物に希釈ファージ液を混和してファージを宿 主細胞に吸着させたものO、2mlを,予め融解して45℃に保ったsSWA3mlに注加し手早く 混和した後,SWA平板(基層平板)上に流込み重層する.重層寒天の固化するをまって25℃に て1晩培養した.この方法で形成された単離溶菌斑をとり,前述と同様にして再度増強する.この ように「単一溶菌斑よりの増強一寒天重層法での溶菌斑形成」の過程を数回くり返しファージの 単 離 と 鑑 別 を 行 な っ た . こ の よ う に し て 単 一 溶 菌 斑 か ら 増 強 作 成 さ れ た フ ァ ー ジ 培 養 液 の 力 価 は 109-10pfu/mlであった.このファージ液は5∼8℃で保存した. 電子顕微鏡観察上述のようにして調製されたファージ液50mlを低温高速遠沈機(マルサン No.50V-S)で37,000G,90分間遠沈し,得られた沈澱物を1%酢酸アンモニウム水溶液1ml に再懸濁した.この濃厚ファージ懸濁液を試料とし,リンタングステン酸による陰染色標本を作成 する.すなわちファージ濃厚液を2%リンタングステン酸水溶液(NaOHでpH7.2に調整)と 等量混和し(ファージ粒子,1010−1lpfu/ml),それをコロジオン膜でおおって炭素蒸着したシ ートメッシュ上に滴下し,20∼30秒後残余の試料液を漁紙で適度に吸いとり乾燥させる.これを 電子顕微鏡試料とし,日立製電子顕微鏡,HU−11D型にそう入し,電顕実拡大50,000倍で観察 した. 実 験 結 果 分離海洋バクテリオファージとその宿主菌前述の06N-海水から68菌株,OXN−海水からは 105菌株を分離した.そして06N-分離菌のうち8株が,またOXN−分離菌のうち8株がそれぜれ ファージに感受性を示した.そのファージ感受性菌の主要な性状はTablelにまとめた.これら の菌はすべて好気性梶菌で,日高(HIDAKAandSAKAI,1968)の無機塩要求性試験による分類で は海洋型菌と好塩型菌とに属するものばかりで,陸棲型菌は含まれなかった.これらファージ感受 性菌はいずれも海洋細菌と考えられる.分離菌はその性状からそれぞれ,06N-21,06N-22, 06N-34,0XN-52,OXN-69,OXN-72,OXN-85,OXN−86とOXN-100の9株は脚6rjo に,06N-25,06N-52,06N-58とOXN−32の4株は必e"dbmo"asに,06N-12と06N-24 の2株はHayo6aae加加に,そしてOXN−36は4C〃o"ZO6aaerに属する. これら16株のファージ感受性菌に対し’それらを溶菌するファージは各菌に対しそれぞれ別個の ものであった.つまり16株の個々の菌を宿主とするような異なる16株の海洋バクテリオファージ が分離された.これらの分離ファージは前述のごとく‘間接法,によって分離されたもの,すなわ ち10株の菌を混合し,それに海水を加えて混合培養し増強したものから分離されたファージである ので,あるいはそのファージが海水からでなく溶原菌(lysogenicbacteria)から由来した可能性 が考えられる.しかしそのことは溶原性試験で否定された.従ってこれらの分離ファージはヴィル
レント・ファージ(virulentphage)である.またこれら各ファージの宿主域を試験したところ,
各ファージとも宿主特異性が強く,今のところ,分離時に知られたもとの宿主一ファージ系にのぷ
感染が成立する. 分離海洋バクテリオフアージの溶菌斑形態Fig.1∼2に供試ファージの溶菌斑形態を示した.06N−12 鹿児島大学水産学部紀要第20巻第1号(1971)
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Tablel Briefcharacterizationofthehostbacteria十十一一
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一十十一一十一一一一十十十十十十
O6N−21OXN-52Pは非常に小さい,径0.2∼0.3mmのピン穴大の溶菌斑を形成する.O6N-12P,O6N-21P,O6N-22P,O6N-24P,O6N-25P,OXN-32P,OXN-69P,OXN-86Pは,径1∼2mm
の透明な溶菌斑を作る.O6N-34P,O6N-52P,OXN−72P,OXN-100Pは,小さく透明で周囲
に混濁ハロ−をもつ溶菌斑を形成する.O6N-58P,OXN-85Pは,径3∼5mmの透明で輪かく
のはっきりした溶菌斑を作る.OXN−36Pの溶菌斑は,大きく(径2∼3mm)透明で周囲が混濁
する.供試海洋バクテリオファージ粒子の構造供試ファージ粒子の電子顕微鏡写真はFig.3∼6に示
した.またそれら構造の各部の大きさはTable2にまとめた.O6N-12Pは外観六角形の多面体形をした頭部と,比較的長くて細い非収宿性の尾部をもってい
る.この尾部はやや湾曲する.このファージの特徴は尾部が収縮しないことである.供試ファージのうちこの形態に類するものは,O6N-24P,O6N-52P,OXN-32P,OXN-52Pであるが,そ
れぞれ尾部の長さは異なる(Table2参照).これらファージの尾部の末端構造は短かい裂片状の
144 06N−22826292560533567880
1−一一一一一一一一
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Key:R,rods;P,peritrichous;M,monotrichous;Y,yellow;−,negative;+,positive; O,oxidative;F,fermentative;NC,growthwithnochangeinreaction; M−,Marinetype;H−,Halophilictype. *Threetypes,Marine(M−)type,Halophilic(H−)typeandTerrestrial(T−)type,were designatedaccordingtotherequirmentofbacteriaforseveralkindsofsaltsinseawater (HIDAKAandSAKAI,1968).一十十十一一十十十十一
十十十一十十十十十十十
十一一一一一十十十十一
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南輔窪4'…鍔棒蝿癖“曙…寺鱒』雫.坐蕊紅駕"傭:嶋村、 箪隷、鱒、雪、と 148 3唖, 鹿児脇大学水産学部紀要第20巻第1・I,ジ(1971) Fig.4.ElectronmlcrographsofO6N−25P,O6N-34P,O6N-52PandO6N-58Pparticles negativelystainedwithphosphotungsticacid.×200,000 霞.""懸
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0 7 Sizeoftail Sizeofhead Diameter,m“ phages 突起をもった尾板からなっている.その尾板の構造は非常にもろく,標本作成時にしばしば破壊す るのが知られた. O6N-21Pは,外観六角形の頭部と,収縮性尾鞘と6個のスパイクをつけた尾板とをもった尾部 とからなり立っている.尾部は外部の尾鞘とその内側の中空心棒から構成される.尾鞘には二つの 状態があり,その一つは伸びた本来の状態で,他は収縮した状態である.(O6N-21P,O6N-22P, OXN-69P,OXN-86Pの写真参照)収縮した状態の時には尾鞘は短かく太くなり,そのため中空 心棒が露出している.供試ファージのうち,O6N-22P,OXN-69P,OXN−86Pがこの形態に類 似するが,ただO6N-22Pは頭部が局長している.この構造の代表的なものとしてはE・CO〃B のT-evenファージがよく知られている. O6N-34P粒子の尾部構造は一見して他のものと異なっている.このファージの尾部は短く尾板 が大部分を占めている.尾板はその先に六角に配置された六つの突起をもち,非常に短いネックを 通じて,ほとんど直接頭部に接続している.供試ファージのうちこの構造に類するものは,O6N-25P,OXN-72P,OXN-100Pである.このうち0XN−72PとOXN-100Pの両ファージ粒子 は尾板から数本の尾部糸様の特異な構造物を出し,その糸の先端には末端構造が見られる.それら 粒子の形はあたかもでんでん太鼓のようである. O6N-58P粒子は正多面体様の形をした頭部と特徴的な短い尾部から成っている.このファージ の鑑別の特徴はこの短い円錐状の尾部で,その短い尾部は比較的簡単な構造である.供試ファージ のうちこの構造に類するものは,OXN-36PとOXN-85Pである.これらはECO〃Bに感染す るT系フアージ,T3,T7に類似した形である. 日高・藤村:海洋バクテリオファージの形態について0220700500000500
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152 鹿児島大学水産学部紀要第20巻第1号(1971) 考 察
陸棲の細菌,例えば&叩ノセy/ococc"sや腸内細菌の菌株の鑑別にファージ型別法(Phagetyping)
が重要であることはよく知られている.この技法の海洋細菌学への応用は,同様に有効であり,興
味がもたれる.またそのことは,海洋細菌と陸棲細菌との鑑別の困難さを解消する一助となるもの
であろう.従って海洋細菌に活性な海洋バクテリオファージの分離と同時に,海洋細菌のファージ
型別を試象ることもこの研究の主な目的の一つである.しかし相応する菌種のすべての菌株を溶菌
するようなファージは見出し得なかった.本実験の範囲内では供試海洋ファージの宿主特異性は厳
しいものであって,海洋細菌相互または海洋細菌と陸棲細菌の間を型別するファージは分離されな
かった.この問題について今後更に追究したい.ファージ粒子の大きさは,それ自身が培地中を拡散する度合を左右するので,一般に,小さいフ
ァージ程大きい溶菌斑を生成する傾向にあると考えられる.しかしその関係は明確なものではな
い.本実験においてもごく小さいピン穴大の溶菌斑を形成するOXN−52Pは他の供試ファージ粒
子より大きい頭部をもち,O6N-58P,OXN-85Pのごとく尾部が短くほとんど頭部のゑのものは
大きい溶菌斑を作るなど,やや上記の傾向がうかがえる.しかしファージの溶菌斑形態とその粒子
構造との間には明らかな関係は見られない.それは溶菌斑の大きさを決定するのは,そのファージ
粒子の大きさばかりでなく,そのファージの宿主細胞への吸着率(adsorptionrate)や放出量
(burstsize)とも関係するためと考える.
SMITHandKREuGER(1954)が分離し研究した附加o-ファージの電子顕微鏡写真は,おそらく
海洋ファージの形態検査の最初のものであろう.そのファージは径95∼100m"の頭部と径15m〃
長さ100m〃の尾部とからなっている.BRADLEY(1965)はSPENcER(1960)が分離したファ
ージ,NCMB384,の電子顕微鏡写真を報告している.それは,径60mjαの多面体の頭部と長さ
100m似の非収縮性の尾部とから成り尾部の先には特別に複雑な先端構造をもっている.VALENTINE
ZaI.(1966)はSPENcER(1960)が分離したファージの一つが特徴ある三角形の尖った尾板をも
つことを明らかにした.WEIBEandLIsToN(1968)は,850mの深さの海底泥から分離した海洋
性Aeromo"αssp・に対し活性を示すファージを研究し,その形は径53m〃の六角形の頭部と細い
160m〃の尾部からなり尾部の先には尾板をもつことを明らかにした.JomvsoN(1968)は彼の分離
ファージの形態について,約60m似の径をもつ六角形の頭部に非常に小さい尾部を付けた形である
と報告している.このように,現在までの海洋ファージ粒子構造の研究は系統的なものではなくて,少数の海洋フ
ァージ,主にSPENcER(1960)によって分離されたものについての個々の観察にすぎない.
BRADLEY(1967)は一般にファージをその形態から六つの群に分けることを提唱した.その後,
TIKHoNENKo(1970)はBRADLEYのファージ分類の4群と5群とは同一群に合併すべきものであ
ろうとし,おおよそBRADLEYの分類を基礎にして,ファージを五つの群に分けている.それは,
1)繊維状のファージ,2)尾部類似のものをもつファージ,3)短い尾部をもつファージ,4)長
く非収縮性の尾部をもつファージ,5)収縮性尾鞘をつけた完全な形をした尾部をもつファージと
である(Fig.7参照).Fig.3∼6に示されるように分離海洋バクテリオファージの形態には巾広い変化が見られる.こ
こに分離された海洋ファージの形態をTIKHoNENKoの群別に照らせば,その3,4,5群に属す
日高・藤村:海洋バクテリオファージの形態について 1970年,九州南方海域における二回の試水採取により,その海水から16組の宿主一ファージ系
を分離した.これらの宿主菌は典型的な海洋細菌であり,阿伽o(9),ハe"伽加o"as(4),例ayo‐
6ααe加加(2),Achromo6aaer(1)に属した.分離ファージの宿主特異性は厳しく,分離当初の宿主以外の菌の溶菌は見出しえなかった.これらのファージは海水中に遊離して生息する海洋ファ
ージで,ヴィルレント・ファージ(virulentphage)である.供試ファージの構造は個々により非 常に異なり,特に尾部構造の相違は甚だしい、それらを大別すると,収縮性尾鞘をつけ完全な形を した尾部をもつファージ4株,長い非収縮性の尾部をもつファージ5株,短い又はこん跡の尾部をもつファージ7株であった.それらはTIKHoNENKoの分類の3,4,5群に属し,DNAファージ
である.これら供試ファージの構造から,海洋バクテリオファージの形態的特性を表わす共通点は 見出し得ず,むしろその形態の多様性を認めた. 終わりに,本研究を進めるにあたり御指導を賜った本学部柿本大壱教授に深く感謝の意を表しま す.また試水採取に際し多大の御協力をいただいた本学練習船“南星丸,,の高橋琴一船長はじめ乗 組員各位に厚く御礼申し上げます.電子顕微鏡写真の撮影には,本学医学部の上原二郎,厚地義春 の両氏に絶大なる援助を仰いだ.記して謝意を表します. 要 約 153 Fig.7.Schemeillustratingmembersofdifferentgroups ofphages.(TIKHoNENKo,A、S・’1970) る.また同時にそれらはDNAファージであることが推測される.分離海洋ファージ粒子の各部の 構造のうち,頭部の形はいずれも外観六角形で類似しているが,尾部の形の相違は著しい.尾部構 造のこのように大きな相違は,これらファージの宿主特異性が厳しいことから,宿主菌のリセプタ ー(recepter)との結合の多様性に関係するものであろう.本研究において,海洋バクテリオファ ージの形態的特性を表わす共通点は見出し得ず,むしろその形態の多様性を認めた.OXN-72P, OXN-100Pに見られる尾部糸様の構造は他に類を見ない変ったものである.今後更にTIKHo‐ NENKOの分類にある1群または2群の形態をもつファージをも海洋中で検索したい. I Ⅱ 、 1V V 曇…函〆 DNA single− s町anded⑥恥⑨
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154 鹿児島大学水産学部紀要第20巻第1号(1971) 文 献