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グラフクラスタリングを用いたリーダーの変更によるコミュニティ活動活性化モデル

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(1)

グラフクラスタリングを用いたリーダーの変更による

コミュニティ活動活性化モデル

A Model for Activating Community Activities by Changing Leaders

Using Graph Clustering

   浜島康佑

1

武藤敦子

1

松井藤五郎

2

Kosuke Hamajima

1

Astuko Mutoh

1

Tohgoroh Matsui

2

森山甲一

1

犬塚信博

1

Koichi Moriyama

1

Nobuhiro Inuzuka

1

1

名古屋工業大学

1

Nagoya Institute of Technology

2

中部大学

2

Chubu University

Abstract: Activate of community activities plays an important role in solving regional and national problems. In communities such as neighborhood associations, community activities some-times carry out to enrich lives of members and improve their environment. Participation in com-munity activities is supported by members having rights and responsibilities. However, there are few people who actually participate. That’s because nonparticipants can obtain the same benefit with participants. Therefore, nomination of a leader who always participates in the activities and encourages the norm consciousness of the surrounding people is important to activate activities. In this research, we propose a community activity model introduced changes of a leader. We make community activity be activated by changing a leader.

1

はじめに

コミュニティとは一定の地域に居住し,目的や利害 を共にする人々の集まりのことである.コミュニティ の例として,地域の住民の集まりである自治会・町内会 が挙げられる.このようなコミュニティでは,生活を豊 かにしたり環境を改善するためにコミュニティ活動を 行うことがある [1].コミュニティ活動の例として,環 境美化や防災活動が挙げられる.このようなコミュニ ティ活動は個人や家族,政府や自治体では対応できな い問題を解決するうえで重要な役割を担っている.ま た少子高齢化や農村から都市部への人口流出,食物自 給率の低下などが問題視される日本において,地方で のコミュニティ活動の活性化は,地方の問題だけでな く国全体の問題を解決する可能性を持っている [2]. コミュニティ活動への参加は,権利と責任を自覚し た個人の主体性に支えられている.ここで,コミュニ ティ活動の重要性は多くの人が認識しているにもかか 連絡先:名古屋工業大学        名古屋市昭和区御器所町        E-mail:[email protected] わらず,実際に活動に参加する人は少ない.これは,コ ミュニティ活動に参加せずとも参加者と同等の公益を 得ることができる上,コミュニティ活動に参加するに は労力や時間が必要なため個人単位では参加行動が起 きにくいためである.このことから,コミュニティ活 動は自発的な形成や拡大が容易ではないといえる. 今村らは実際のコミュニティ活動を調査し,個人が コミュニティ活動に参加する動機は周囲の目を気にす ることから生起すると指摘した [3].つまり,個人のコ ミュニティ活動への参加は自身の周囲の人間の参加行 動が関係しているというとこである.したがって,コ ミュニティ活動の活性化を考えるうえで,コミュニティ の中での人間関係を分析することは必要であると考え られる. コミュニティ活動の中には,一定以上の活動結果を見 込むために,活動に必ず参加し地域住民を先導するリー ダーを指名する場合がある [3].指名されたリーダーは, 与えられた任期の間活動に毎回参加し,任期を終える と別のリーダーに交代する.このリーダーが中心となっ てコミュニティ活動の活性化を促すため,周囲に影響

(2)

を与えるリーダーを選ぶことは重要である. このことと今村らの指摘を踏まえると,コミュニティ 内の人間関係を考慮してリーダーを選出することが重 要であるといえる.そこで,本研究では人間関係によ るネットワークを用いて,コミュニティ活動を活性化 するリーダーについて考察する. 本研究では山田ら,甲村らのコミュニティ活動形成 モデルを拡張して調査を行う.そのモデルの中で,リー ダーに任期を与えてコミュニティ活動のシミュレーショ ンを行い,コミュニティ活動の参加割合とリーダーの 任期について考察する.また,コミュニティのネット ワーク分析から,活動の活性化を促すリーダーの選出 法についても考察する. 本論文では第 2 章でコミュニティ活動に関する先行 研究を紹介し,先行研究の問題点について説明する.第 3 章では本研究で使用するコミュニティ活動モデルにつ いて説明する.第 4 章ではリーダーの変更法に関する 事前調査を行い,調査の結果を踏まえて 5 章で提案手 法の説明をする.6 章ではリーダーの変更を取り入れ た実験を行い,リーダーの変更法によるコミュニティ 活動の活性化の様子を観察する.7 章ではまとめと今 後の研究の課題を述べる.

2

コミュニティ活動モデルに関する

先行研究

今村らは実際のコミュニティ活動(長野県の保健補 導員活動など)を調査し,個人がコミュニティ活動に 参加する動機は周囲の目を気にすることから生起する, と指摘した [3].長野県の保健補導員活動では保健補導 員の役は持ち回り制であり,役が回ってきた人は初め は活動に積極的ではなかったが,規範的影響を受け,そ れまで他の人がやってきたからという消極的な理由で 参加した.そして活動を通じて活動へのやりがいを感 じるようになり,積極的に参加するようになった. 山田らは今村らの指摘した周囲への意識(規範意識) と活動に参加して感じたやりがい (自己効力感)から個 人がコミュニティ活動への参加・不参加を決める数理 的なエージェント・ベース・モデルを提案した [4].こ のモデルでは,参加した個人がその隣人に影響を与え, その隣人がさらに隣人に影響を与えるという参加行動 の伝播を表している. 甲村らは山田らの提案したエージェント・ベース・モ デルにネットワーク構造を導入し,より複雑な友人関 係を表現できるようにモデルを拡張した [5].そして数 理的なネットワーク生成モデルを用い,そのパラメー タを変更する実験から,ネットワーク全体の指標とコ ミュニティ活動の活性度の関係を調べた.またネット ワーク中心性の高い上位 3 人をリーダーとしたときの 実験を行い,コミュニティのネットワーク構造と,参 加人数が最も多くなるネットワーク中心性の種類につ いて考察した. 賀川らは甲村らの提案したモデルを利用してシミュ レーションを行い,個人のリーダーとしての影響力を 調査した [6].この調査では活動活性化貢献度という指 標を設け,個人が持つリーダーとしての影響力を示し た.また,その指標がネットワーク中心性の観点からど のように表されるかを調べ,活動を活性化させるリー ダーとして必要な要素を提示した. 浜島らは甲村らのモデルを用いてシミュレーション を行い,リーダーを複数人選んだときの影響を調べた [7].リーダーの影響力を表す指標としてリーダーの属 するグループの人数を設け,ネットワーク中心性の指 標と合わせてコミュニティ活動を活性化させる複数人 のリーダーの選出法を示した. これらの研究では,活動の初めにリーダーを指定し て,そのリーダーを変更しないまま活動を繰り返して いた.しかし,実際のコミュニティ活動ではリーダー に任期を設けて変更することがある.そこで,本研究 では甲村らのコミュニティ活動モデルを拡張し,リー ダーの変更を考慮してコミュニティ活動のシミュレー ションを行う.その中で,リーダーの変更によってコ ミュニティ活動の活性化を促せないか調査をし,どの ような人を変更先のリーダーに指名するとよいか考察 する.

3

コミュニティ活動形成モデル

本章では本研究で利用する山田ら,甲村らのコミュ ニティ活動形成モデルについて説明する.このモデル はエージェント・ベース・モデルであり,コミュニティ 内の各メンバーはエージェントとして表される. 各エージェントは「態度」,「自己効力感」,「規範意 識」の 3 つの動機変数を持つ.この変数はコミュニティ 活動が行われるごとにそれぞれ更新し,この動機変数 の値によって活動への参加・不参加を決定する. 「態度」は活動に対してどの程度積極的であるかを 示しており,コミュニティ活動で自分が得られた利益に 基づいて更新される.「自己効力感」は自分が参加した 活動が成功したかどうかによって更新される,自信の 程度を表す.「規範意識」は自分の周囲の人から受ける 影響のことであり,周囲の人の参加率により更新する. 活動結果は,コミュニティ活動の参加割合によって 決まる費用と公益の和で表される.費用とは活動に参 加するために必要な時間や労力のことである.活動に 参加する人数が少ないとその分一人当たりの費用が多 くなる.参加しなかった人は負担を負わないため,費 用の値は常に 0 である.費用はコミュニティ活動への参

(3)

加割合に応じて段階的に小さくなる.一方公益は,コ ミュニティ活動によってコミュニティ全体にもたらさ れる利益のことである.この利益は活動への参加・不 参加に関係なく得られる.また,公益はコミュニティ 活動へのある程度の参加があった時に始めて発生する. このモデルでは,参加者が全体の 1/3 以上のとき活動 が成功し公益を得るが,1/3 以下のときは失敗し公益 は得られない.活動が成功したとき,参加者は成功経 験を得て,失敗したときは失敗経験を得る.活動の参 加割合と費用・公益・経験の関係を表 1 に示す. 表 1: 活動への参加割合と費用・公益・経験の関係 参加者 不参加者 参加割合 X C B 経験 C B 0≤ X < 1/9 −9 0 f ailure 0 0 1/9≤ X < 2/9 −8 0 f ailure 0 0 2/9≤ X < 3/9 −7 0 f ailure 0 0 3/9≤ X < 4/9 −6 4 success 0 4 4/9≤ X < 5/9 −5 4 success 0 4 5/9≤ X < 6/9 −4 4 success 0 4 6/9≤ X < 7/9 −3 4 success 0 4 7/9≤ X < 8/9 −2 4 success 0 4 8/9≤ X ≤ 1 −1 4 success 0 4 不参加者は費用が常に 0 なので,費用と公益の和( C + B)が参加者よりも常に大きい.このことから,不 参加者は自分が参加しなくても公益が得られた場合,活 動への参加が消極的になる.また,公益が得られる境 界と (C + B) が正になる境界は異なる. 以下に 3 つの動機変数の更新式を示す.エージェン ト i のステップ t における態度を At i,自己効力感を Eit規範意識を Nt i,エージェント i がステップ t の活動か ら得た費用と公益の和を (C + B)t iと表す.Atiと Eitら内的動機 IMt i が形成される.また IM t i と N t i から 参加・不参加行動を決定するための行動意図 It i が形成 される.参加者は At iを (C + B)≥ 0 の場合肯定的に, (C + B) < 0 の場合否定的に更新する. 参加者の態度 At iの更新式を式 (1) に示す.一方不参 加者は At i を常に否定的に更新する.不参加者の態度 Atiの更新式を式 (2) に示す.パラメータ δ は Ati の変 化のしやすさを表す. At+1i =            Ati+ δ× (C + B)ti× (1 − Ati), if((C + B)ti≥ 0) At i+ δ× (C + B)ti× Ati, otherwise (1) At+1i = Ati− δ × (C + B)ti× Ati (2) 参加者は自己効力感 Et i をステップ t の活動が成功し た場合に肯定的に,失敗した場合に否定的に更新する. 不参加者は Et i を更新しない. 参加者の自己効力感 Et iの更新式を式 (3) に示す.パ ラメータ λ は Et iの変化の敏感さを表す. Eit+1= { Et i+ λ× {1 − (Eit)2}, (task t = success) Et i− λ × {1 − (Eit)2}, (task t = failure) (3) 参加者・不参加者ともに,規範意識 Nt i を自分と繋 がっている人(=友人)の数 (Friendi) とその内コミュ ニティ活動に参加した友人の数 (PartFriendt i) によって 更新する.友人の定義は,ノードとエッジであらわさ れた友人関係ネットワークにおけるノードの有無とし ている. 規範意識の更新式を式 (4) に示す.パラメータ ϵ は 周囲の行動への流されやすさを表す. Nit+1= ϵ×P artF riend t i F riendi + (1− ϵ) × Nit (4) 以上の動機変数を更新した後に,内部動機 IMt i と行 動意図 It i を形成する.態度 A t i と自己効力感 E t i から 内部動機 IMt i を形成する式を式 (5),式 (6),内部動機 IMt i と規範意識 Eitから行動意図 Iitを形成する式を式 (7) に示す.パラメータ σ は Et i の Atiへの影響の強さ を表す.パラメータ β は不確実な行動の起こりやすさ を表す.最終的に形成された It i がエージェント i のス テップ t において参加行動をとる確率となる. Xit=    1 σ× Et i+ 1 , (Et i ≧ 0) σ× (−Et i) + 1, (Eit< 0) (5) IMit= (Ati)X t i (6) Iit= 1 1 + eβ × (1 − Nit− IM t i) (7) 以下に,各動機変数が全体・友人の参加割合によっ てどう更新するかをまとめる (表 2).表中の UP は動 機変数をより大きい値に更新すること,DOWN はより 小さい値に更新すること,− は更新を行わないことを 表す. 表 2: 態度,自己効力感,規範意識の変化全体の参加割合 Yt 友人の参加割合 Zt Yt<1 3 1 3≦ Y t<2 3 2 3≦ Y t Zt−1> Zt Zt−1< Zt 参加者 A DOWN DOWN UP E DOWN UP UP N DOWN UP 不参加者 A DOWN DOWN E N DOWN UP

(4)

表から,不参加者の動機変数を肯定的に更新するのは 友人の参加割合が高くなったときのみであることがわ かる.友人の参加割合が高くなれば規範意識がより肯 定的に更新され,それまでの不参加行動が参加行動に 代わる可能性が大きくなる.参加者の場合は参加した 活動の全体の参加割合によっても動機変数が更新され る.全体の参加割合が低い時に動機変数が否定的に更 新され,高いときに肯定的に更新される. リーダー以外の各エージェントは動機変数の値から 行動意図を形成し,その値から次の活動への参加・不 参加を決定する.リーダーに選ばれたエージェントは 動機変数に関わらず強制的に活動に参加する.全ての エージェントが参加・不参加を決定した後に活動が実 施され,その活動の結果によって動機変数を更新する. この一連のサイクルを 1 ステップと呼ぶ.このステッ プを繰り返し,参加行動を伝播させていく.

4

事前調査

本章では,コミュニティ活動リーダーの変更法を考 察するための事前調査を行う.コミュニティ活動の活 性化の様子について調査を行い,その結果からどのよ うにリーダーの変更を行うとよいか考察する.調査の 結果から,活動の活性化を引き起こすリーダーの変更 方法を提案する.本章,6 章のシミュレーション実験で は,実在するネットワークに対して甲村らのコミュニ ティ活動形成モデルを適用しシミュレーションを行う.

4.1

実験設定

本節では 4 章,6 章のシミュレーション実験における 設定と,使用するネットワークについて説明する.以降 のシミュレーション実験では,各動機変数や行動意図 の更新に使用するパラメータを δ = 0.01, λ = 0.05, ϵ = 0.5, σ = 2, β = 30, At=1 = 0.5, Et=1 = 0, Nt=1 = 0.5 として実験を行った.シミュレーション実験では友人 関係推定手法 [8] で得た,名古屋工業大学情報工学科の あるクラスの 12 月時点の友人関係ネットワークを使用 する.このネットワークは人をノード,友人関係をエッ ジとした有向グラフである.実際にはこのネットワー クは地域コミュニティではないが,隣人との人間関係 が形成されやすい地域コミュニティと,学籍番号が近 い者同士で人間関係が形成されやすい大学のクラスの コミュニティは似ていると考えて,これを地域コミュ ニティとして扱う.この友人関係によるネットワーク はエッジの向きを無視した無向グラフとして表されて いる. このネットワークからリーダーを 1 人選出する.リー ダーに選ばれた人は自分の行動意図に関わらず,すべ てのコミュニティ活動に参加する.これにより周囲の 人の規範意識を促し,参加行動を伝播させる. 本研究の実験ではコミュニティ活動のシミュレーショ ンのステップ数を 100 とし,ステップ 100 までを 1 試 行と呼ぶ.この試行を 2000 回繰り返し,100 ステップ 目の参加割合の平均を算出した.

4.2

結果と考察

リーダーの変更を行わなかった場合の活動の活性化 について調べ,どのようなリーダーを変更先に選ぶと よいか考察する.参加人数がステップを経てどのよう な変化をするかを図 1 に示す.一本の線が,ある一人 をリーダーとしたときの一試行の参加人数のステップ 数を表す.参加割合の変化を 50 試行分表した. 図 1: 50 試行のそれぞれの参加割合の推移 横軸が活動のステップ数,縦軸が参加割合を表して いる.図より,参加割合が初めの 10 ステップほどで中 程度以上ある試行では参加割合が保たれるが,参加割 合が低い場合にステップが進むにつれて参加者が減少 してしまう傾向がみられる.このことより,一部の人間 の参加だけでは活動への参加割合が保てないため,コ ミュニティ全体で活動の活性化を引き起こすことが重 要であると言える. 次に,リーダーがコミュニティ活動にどのような影 響を与えているかを調べるため,活動の最終参加割合 とリーダーの友人の参加割合の関係を調べる.図 2 は 横軸がコミュニティ全体の最終参加割合,縦軸がリー ダーの友人の最終参加割合を示し,値の大きさをヒー トマップとして表した.

(5)

図 2: 全体参加割合とリーダーの友人の参加割合の比較 横軸縦軸ともに参加割合を 1/9∼9/9 の 9 段階とし, 数字はその参加割合になった試行の回数を表している. 図を見ると,全体の参加割合とリーダーの周囲の参加 割合のに比例関係は見られず,リーダーの周囲は参加 割合が高くなっていても,全体の参加割合が高くなる わけではないことがわかる.この結果から,コミュニ ティの中で活性化の起こっている部分と起こっていな い部分の存在が示唆された

4.3

調査まとめ

図 1 から,活動の参加割合がある程度高い場合は参 加割合が保たれるが,低い場合は参加割合が次第に下 がってしまう様子が確認でき,コミュニティ全体での 活動の活性化が重要だと考えられた.図 2 では,リー ダーの周囲では参加割合が高いが全体の参加割合は低 いという試行が見られ,コミュニティの中で活性化の 起こっている部分と起こっていない部分の存在が考え られた.調査の結果より,変更先のリーダーはコミュ ニティのネットワークの中で活性化の起こっていない ところから選出することが重要だと考えられる.

5

提案モデル

本研究では,コミュニティ活動にリーダーの変更を取 り入れたモデルを提案する.4.3 節より,変更先のリー ダーはコミュニティのネットワークの中で活性化の起 こっていないところから選出すると活動の活性化が促 せることが示唆された.このことから,コミュニティを クラスタリングし,前回の活動で活性化の起こってい ないクラスタからリーダーを選出することでコミュニ ティ全体で活動を活性化させる.5.2 節の手法でコミュ ニティをクラスタリングし,リーダーを変更する際に 最も活性化の起こっていないクラスタからリーダーを 選出する.

5.1

リーダー選出の手順

1. 1 ステップ目 すべてのエージェントからランダムに 1 人選ぶ. 選出するリーダーに制約を設ける場合は,その制 約の中からリーダーを選出する. 2. 2 ステップ目以降 活動のステップが終了した後,確率 p でリーダー をほかの人に変更する.ここで,2 ステップ以降 のリーダー選出に確率を用いた理由は,活動のど のタイミングで変更を行うとよいかという問題を 取り除くためである.変更先のリーダーについて は,コミュニティをクラスタリングし,前回の活 動での活性度 Cat iの最も低くなったクラスタか ら選出する. ステップ t におけるクラスタ i の活動の活性度 Cat iは,式(8)によって求められる. Cati= ClusterP N t i ClusterNi (8) ここで,ClusterNiはクラスタ i に属する人数, CluserP Nt i はステップ t においてクラスタ i に 属する人が参加した数である.毎回の活動で Cat i を求め,これを最小にするクラスタからリーダー をランダムに1人選出する.

5.2

クラスタリング手法

本章で使用するクラスタリングには,Newman[9] の モジュラリティに基づく手法を使用した.モジュラリ ティとは,ネットワーク分析におけるクラスタリング 指標の一つであり,「クラスタ内のノード同士が繋がる リンクの割合」から「リンクがランダムに配置された 場合の期待値」を引いた値として定義される.モジュ ラリティQ の値は,式(9)のように定義される. Q =i (eii− a2i) (9) ここで,eiiはネットワークの総エッジ数に対するクラ スタ i 内部のエッジ本数の割合,aiはネットワークの総 エッジ数に対するクラスタ i から他のクラスタに張られ ているエッジの本数の割合を表している.この Q の値 が高い分割ほど,クラスタ内でのつながりが強くクラ

(6)

スタ間のつながりが弱いネットワークである.Newman の手法では,ネットワークを分割する際に切断する辺 集合を最小化するような 2 分割を繰り返すことで,モ ジュラリティを最大化する手法を提案している.本実 験では,この分割手法を用いて Q 値を最大化するクラ スタリングをした.

6

実験

提案モデルの効果を調べるための実験を行う.この シミュレーション実験での各動機変数と行動意図の更 新に使用するパラメータ,使用するネットワークは 4.1 節で説明したものと同じである.コミュニティ活動を 行った後,リーダーを確率 p で他のリーダーに変更す る.ステップ数は 100 とし,参加割合は 2000 回試行し たときの 100 ステップ目の参加割合の平均をとる.

6.1

リーダーの変更法に関する実験

リーダーの変更による影響を調べるため,コミュニ ティ活動形成モデルにリーダーの変更を導入した実験 を行った.賀川らの研究 [6] より,リーダーを変更しな い場合には,次数中心性の高い人をリーダーとすると 活性化が行われることがわかっている.そこで,変更先 のリーダーを,ランダム,次数中心性上位 10%とした モデルと提案モデルの比較を行う.1 ステップ目のリー ダーは,次数中心性から選ぶ場合以外はランダムとし た.確率 p を 0%∼100% まで変化させて,リーダーの 変更確率と最終参加割合の関係を調べた.図 3 にリー ダー変更確率 p による最終参加割合の平均を示す. 図 3: リーダー変更確率 p と参加割合の関係 リーダー変更確率が 0 の時にはリーダーの変更を一 切行わず,100 の時にはリーダーを毎ステップ変更して いる.図より,すべての変更方法で変更回数を増やす ほど最終参加割合が高くなっていることが分かる.ま た,p = 0 すなわちリーダーの変更を行わなかった場 合は次数中心性の上位から選ぶと参加割合が高くなっ ていることがわかる.しかし,リーダーの変更確率が およそ 10%以上のところでは,次数中心性の上位から 選んだ場合より非活性クラスタから選ぶほうが参加割 合が高くなっていることが見て取れる.このことより, リーダーの変更を行うコミュニティ活動では非活性ク ラスタからリーダーを選出することが重要であるとい える. 図 4 に,毎回の活動ごとの最終参加割合をヒストグ ラムで表す.横軸は,1/9 から 9/9 までの 9 段階の参 加割合であり,縦軸はその参加割合となった試行の回 数である. 図 4: 最終参加割合のヒストグラム 結果は,図 3 の結果よりそれぞれの変更方法で一番 結果の良くなった,リーダー変更確率 100%,すなわ ちリーダーを毎回変更したときのものを使用している. これを見ると,非活性クラスタから選んだ場合はほぼ すべての人が活動に参加している試行が多くなってい ることがわかる.これは,参加割合の少ないクラスタ からリーダーを選ぶことで,すべてのクラスタで活動 の活性化を引き起こすことができたためと考えられる. 一方で,次数中心性の上位からリーダーを選んだ場合 は,ランダムに変更した場合と比べて参加割合が中程 度以上 (6/9∼8/9) の回数が増えているが,ほぼすべて の人が参加する回数は減っている.このことから,次 数中心性の高い人は多くの人に影響を与えるが,小さ なクラスタなどには活動の活性化を引き起こせなかっ たと考えられる.

6.2

ネットワーク構造との比較実験

ネットワーク構造による違いを調べるため,友人関 係推定手法 [8] で得た別のクラスでも同様に実験を行っ た.先の実験で使用したクラスのほかに,2 つのクラ スについて提案モデルによる実験を行った.使用する ネットワークの指標を表 2 に示す.

(7)

表 2: 3 クラスのネットワーク指標 クラス A クラス B クラス C ノード数 56 57 56 エッジ数 111 160 118 クラスタ係数 0.60 0.58 0.49 平均最短距離 3.61 3.59 3.99 グラフ密度 0.072 0.100 0.077 表より,平均最短距離とグラフ密度の値からクラス B が最も密なネットワークであるといえる.一方クラ ス C では,平均最短距離が大きいことやクラスタ係数 が小さいことから,全体で弱いつながりを持ったネッ トワークだとわかる. このネットワークについて,提案モデルのリーダー 選出法で実験を行った.結果を図 5 に示す. 図 5: 3 クラスによる比較 図を見ると,すべてのネットワークでリーダーの変 更回数が多いほど参加割合が高くなっていることがわ かる.クラス B では,ほかのクラスに比べて平均的に 参加割合が低くなっている.これは,ネットワークが 密なため友人が多く,リーダーの参加行動で友人参加 割合を上げにくかったことが考えられる.変更回数の 多いところではクラス C の参加割合が高くなっている. クラス C は全体で弱いつながりを持ったネットワーク であり,リーダーの参加行動に影響されやすくクラス タ内で活性化が起こりやすかったことが考えられる. クラスター性と提案モデルの効果について比較を行 うため,WS モデルによるネットワークで実験を行っ た [10].WS モデルは各頂点のエッジを確率 q で繋ぎ 替え,クラスター性の高いモデルからスモールワール ド性の高いネットワークまで作成できるモデルである. q が 0 ならばクラスター性の高い 1 次元格子グラフと なり,q が 1 に近づくほどクラスター係数の低いラン ダムグラフに近いものとなる.本実験では,表 2 と合 図 6: WS モデルの確率 q と最終参加割合の関係 わせるためノード数を 50,エッジ数を 100 とし,繋ぎ 替え確率 q を 0.02 から 0.2 まで変化させて実験を行っ た.提案モデルの変更法で,それぞれのネットワーク での最終参加割合を算出した (図 6). 横軸は繋ぎ替え確率 q,縦軸は最終参加割合を表す. q の値が小さいほどクラスター性が高く,大きいほど スモールワールド性の高いネットワークである.図を 見ると,3 クラスによる実験と同様にクラスター性が 強くなるほど提案モデルによるリーダー変更の効果が 小さくなることが確認できた.また,スモールネット ワーク性の高いネットワークの方が最終参加割合が高 くなる傾向がみられた.

6.3

実験まとめ

リーダーの変更法とネットワーク構造による比較実 験を行った.変更確率を変えて実験を行うと,すべての 変更法で変更回数が多い方が最終参加割合が高くなる ことが確認できた.リーダーの変更を毎回行った場合 について,最終参加割合のヒストグラムを見ると,提 案モデルではほぼすべての人が参加する試行が著しく 高くなっており,コミュニティ全体に参加行動が伝播さ れたと考えられた.ネットワーク構造による比較では, クラスター係数の低いネットワークで提案モデルの効 果が高くなっており,グラフ密度の高いネットワーク で効果が低くなっていると考えられた.WS モデルに よるネットワークで実験を行ったところ,クラスター 性の低いネットワークで提案モデルの効果が高くなっ ていることが確認できた.また,スモールワールド性 の高いネットワークで効果が高くなる可能性が示唆さ れた.

(8)

7

まとめ

本研究では,個人が周囲の影響を受けて活動への参 加・不参加を決定する山田ら,甲村らのコミュニティ 活動モデルを用いて,参加行動が伝播するシミュレー ションを行った.シミュレーションにリーダーの変更 を取り入れて,リーダーの変更回数とリーダーの変更 法が参加割合に与える影響を調べた. 変更を行わなかった場合について調査を行うと,リー ダーを固定した場合はリーダーの周囲だけで活動の活 性化が起こっていることが分かった.調査の結果から, コミュニティをクラスタリングした時の活性化の起こっ ていないグループからリーダーを選出する手法を提案 した.先行研究でのリーダーを固定した場合の選出法 と比べると,活性化の起こっていないグループから選 んだ方が平均参加割合が高くなっており,ほぼすべて の人が参加する試行が著しく多くなっていることが確 認できた.ほかのコミュニティについても同様に実験 を行うと,クラスタ内でのつながりが比較的弱いネッ トワークがリーダーの変更による影響が強いことが示 唆された.WS モデルによるネットワークで実験を行 うと,クラスター性が強いネットワークほど提案モデ ルによる効果が小さくなることが確認できた. 本研究ではリーダーの人数を 1 人として変更するリー ダーに関する実験を行ったが,実際のコミュニティ活 動ではリーダーが複数人選出されることもある.リー ダーを複数人選出した場合のコミュニティ活動の活性 化への影響を考察することは有用であると考えられる. また,リーダーを複数人選ぶ場合は,コミュニティの サイズや活性化のしやすさなどから適切なリーダーの 人数を決めることも必要になると考えられる.活動の 活性化について目標を定めて,それを達成できるよう なリーダーの人数,選出法を考察することも今後の課 題である.

参考文献

[1] 国民生活審議会調査部会コミュニティ問題小委員 会:コミュニティ-生活の場における人間性の回復, 大蔵省印刷局,1969. [2] 山内一宏:少子高齢化時代におけるコミュニティの 役割:地域コミュニティの再生,立法と調査.(288), 2009 [3] 今村晴彦,園田紫乃,金子郁容:コミュニティの ちから“ 遠慮がちな” ソーシャル・キャピタルの 発見,慶應義塾大学出版会,2010. [4] 山田広明,橋本敬:規範意識と自己効力感に駆動 されたコミュニティ活動形成と拡大,人工知能学 会論文誌,Vol.30,No.2,pp.491-497,2015. [5] 甲村啓伍,武藤敦子,松井藤五郎,森山甲一,犬塚 信博:ネットワーク構造を導入したコミュニティ活 動モデル,情処学論,数理モデル化と応用,Vol.9, No.3,pp.15-23,2016. [6] 賀川祐耶,武藤敦子,松井藤五郎,森山甲一,犬 塚信博:他者の関係に基づくコミュニティ活動リー ダー決定モデル,情報処理学会研究報告,2017. [7] 浜島康佑,武藤敦子,森山甲一,犬塚信博:コミュ ニティ活動におけるリーダー間の関係が活動の活 性化に与える影響,人工知能学会全国大会論文集, 2018. [8] 下村幸作,中野智文,犬塚信博,松尾啓志:学生 の出欠時間を活用した学生の友人関係分析,第 6 回人工知能学会データマイニングと統計数理研究, SIG-DMSM-A703,pp.20-26,2008.

[9] M. E. J. Newman:Finding community structure in networks using the eigenvectors of matrices, Phys. Rev. E 74,036104-Published 11 Septem-ber 2006.

[10] Duncan J Watts and Steven H Strogatz: Collec-tive dynamics of‘ small world ’networks, Nature 393, 440-442, 1998.

図 2: 全体参加割合とリーダーの友人の参加割合の比較 横軸縦軸ともに参加割合を 1/9 〜 9/9 の 9 段階とし, 数字はその参加割合になった試行の回数を表している. 図を見ると,全体の参加割合とリーダーの周囲の参加 割合のに比例関係は見られず,リーダーの周囲は参加 割合が高くなっていても,全体の参加割合が高くなる わけではないことがわかる.この結果から,コミュニ ティの中で活性化の起こっている部分と起こっていな い部分の存在が示唆された 4.3 調査まとめ 図 1 から,活動の参加割合がある程度高い
表 2: 3 クラスのネットワーク指標 クラス A クラス B クラス C ノード数 56 57 56 エッジ数 111 160 118 クラスタ係数 0.60 0.58 0.49 平均最短距離 3.61 3.59 3.99 グラフ密度 0.072 0.100 0.077 表より,平均最短距離とグラフ密度の値からクラス B が最も密なネットワークであるといえる.一方クラ ス C では,平均最短距離が大きいことやクラスタ係数 が小さいことから,全体で弱いつながりを持ったネッ トワークだとわかる. このネットワ

参照

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