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ブラッセル条約の下における外国訴訟差止の可否 一一第二一条に対するイギリス流アプローチの検討一一

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1-ー『奈良法学会雑誌』第7巻2号 (1994年9月〉 八 論 説

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ル条約の下に

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ける外国訴訟差止の可否

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第一一一条に対するイギリス流アプローチの検討 1 1

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一はじめに 二コンチネンタル銀行事件 三外国訴訟差止 ︿一﹀イギリスコモン・ロ l 上 の ル 1 ル ︿二)ブラッセル条約の下における外国訴訟差止 会己差止命令を求められた裁判所の管轄権 (四)外国訴訟差止の前提としての第一一一条適用否定 四第二一条へのイギリス裁判所の対応 ハ一)手続的規則の調和 ( 1 ) 訴訟原因及び当事者の同一 - t a t l タ ト リ 1 号事件 ( 2 ) 訴訟係属の確定

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デュ 1 ク・オブ・エール号事件 つ一)正義実現のための裁量 ( 1 ﹀消極的確認訴訟との競合││タト日 1 号事件

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第7巻2号一一2 ハ 2 ) 管 轄 合 意 の 潜 脱 ( a ) クロークナ l 事件 ( b ﹀ オ ー バ ー シ l ズ・ユニオン保険会社事件 ハ 3 ) 裁 量 権 行 使 の 対 象 と な る 訴 訟 競 合 ( 4 ) コンチネンタル銀行事件の位置づけ 五 コ ン チ ネ ン タ ル 銀 行 事 件 に 見 る イ ギ リ ス 流 ア プ ロ ー チ の 検 討 ( 一 ) 外 国 訴 訟 差 止 の た め の 管 轄 権 つ 一 ﹀ 第 二 一 条 適 用 の 否 定 。 二 ) 外 国 訴 訟 差 止 の た め の 裁 量 六 お わ り に は じ め に 一九六八年の﹁民事及び商事に関する裁判管轄権及び判決の執行に関する

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条 約 ﹂ ( 以 下 ブ ラ ッ セ ル 条 約 ) は 、

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諸国内における判決の執行を容易にするため、締約国の国際裁判管轄規則の統一をはかり、そのために管轄規則 については、原則として各締約国の裁判所の裁量を認めない厳格なル 1 ルを規定している。ただし、個々の事件にお いては、同条約の規定により、当事者が訴訟を提起する地についていくつかの選択肢をもっ場合もあるため、時には 複数の裁判所に同じ訴訟が同時に係属する状態、 つまり国際的訴訟競合の状態になる可能性も生じてくる。このよう な事態に対してブラッセル条約は、先に事件の係属した裁判所に優先権を与え、後訴裁判所は訴を拒否するかあるい は 凹

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ーするという形の規定で解決をはかつている(同条約第二一条)。 時間的要素で問題を解決するこの方法は、 管轄規則の適用を容易にするものである。しかし他方でこの条文が﹁早い者勝ゆりのル l ル﹂と呼ばれているという事

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ハ 2 ﹀ 実 が 一 示 す よ う に 、 こ の ル l ル に よ り 、 かえって当事者に新たな管轄地争いをもたらすことも否めない。 またこのル I ルは、硬直的であるという点において、 イギリスのコモン・ロ l 上 の 管 轄 規 則 、 つまり管轄の成立に 裁判所の裁量が大きく関与する規則とは対照的な側面をもつが、そのイギリスにおいて、最近、このブラッセル条約 の下での国際的訴訟競合に関して、注目をひく判決が出された。それは、先にギリシアで係属している訴訟は、イギ リスを訴訟地とする当事者間の管轄合意に反してなされたものであるとして、 イギリスの控訴院裁判所が、ギリシア での訴訟に対し、差止命令を出したものである。この判決は何よりも、ブラヅセル条約の下で他の締約国に係属する 訴訟を差し止めることの可否という、そもそも同条約の予期し得なかった問題を提示したことにおいて興味深いもの 3-ープラッセノレ条約の下における外国訴訟差止の可否 である。またこの判決は、差止を認めるか否かの判断をする前提として、第一二条に定められた前訴裁判所の優先権 を否定して後訴裁判所たるイギリス裁判所での事案の審理を認め、 さらに、前訴裁判所に継続している訴訟の差止命 令を出したという点において、第一二条に対するイギリス裁判所の答の一つを示したものと見られる。そしてその判 イギリス裁判所が、ブラッセル条約の枠の中で裁判所の裁量権行使の余地を模索する姿を、象徴的に示 断 の 過 程 は 、 すものと思われる。本稿においては、この判決をもとに、ブラッセル条約の下での外国訴訟差止に関する問題点、 お よび第一一一条に対するイギリス裁判所のアプローチについて考察したい。 コンチネンタル銀行事件 アメリカ合衆国イリノイ州にドミサイルをもっコンチネンタル銀行が、 事件の概要は次の通りである。 一 九 八 一 年 五月、パナマあるいはリベリアに登記された船会社一五社との聞でロ i ン契約を締結し、銀行は船会社に五千六百万 ドルの融資を行った。この契約には途中で若干の修正が加えられたが、それはギリシアのアテネにある同銀行の支庖

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第7巻 2号一-4 を通じてなされた。また借主の船会社は、一五社すべてが、アテネの船会社によって経営されていた。このロ l ン 契 約には、準拠法ならびに管轄に関する次の条項が含まれていた。 第二十条一項目本契約はイギリス法により規律され、解釈される。 同二項目借主はそれぞれ:::イギリスの裁判所の管轄に服し、同裁判所からの送達は、 ハ住所ロンドン、:::)が借主のために受けるものとする。ただし銀行は、本契約に基づく訴を、管轄権を有す他 の固において提起する権利を留保する。 イlジス(ロンドン)社 しかし銀行による融資直後に海運業は不況に陥り、一九八一年十二月以降、船会社による返済は滞った。そこで一 九八四年十二月、銀行と船会社との聞で、銀行側による一定額の利息放棄などの条件を含む、貸金返済のスケジュ 1 ルについて再度合意がなされた。しかしこれに基づく支払もなされなかったため、この合意の有効性、つまり銀行に よる利息放棄等の有効性については、当事者聞に争いがあるが、銀行側の主張によれば、船会社の負債は三千二百万 ドルを越すとのことであった。ところが銀行が訴訟の準備をしている矢先の一九九

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年十一月、船会社は銀行に対し、 銀行が上記ロ I ン契約のもとで商取引のモラルに反するような形で権利行使をしたとして、六千三百万ドルの損害賠 償金を求める訴を、ブラ γ セル条約第四新ピ基づき、ギリシアのアテネの裁判所に提起した。船会社がその訴の根拠 としたギリシア民法第九一九条は次のような規定となっている。 第九一九条日モラルの命ずるところに反して、故意に他人に損害を与えたものは、その損害を賠償しなければなら h a h

0 4 l 旬 、 L V この訴について船会社側は、訴は主として不法行為を理由とするものであるが、契約的側面も含まれると主張してい る

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一九九一年一一一月、シカゴにおいて訴状の送達を受けた銀行は、周年四月、イギリスの裁判所において、船会社は管 轄合意に違反したとして、ギリシアでの訴訟の差止を求めた。船会社はこれに対し、ギリシアでの訴訟がすでに係属 していることから、プラ V セル条約第二一条または第二二条に基づき、イギリスでの訴訟は拒否されるかあるいは されるべきだと主張した。第一審のゲlトハウス判事は、ギリシアの訴訟とイギリスの訴訟は、プラ V セ ル 条 m J 門 知 可 約第一一一条にいう訴訟原因を同じくする訴訟にはあたらず、また第二二条にいうところの関連する訴訟でもないとし 任一一プラッセル掛りの下における外国訴訟差止の可否 て、これらの条文の適用を否定した。そのうえで判事は、銀行と船会社との聞の管轄合意は専属的管轄合意であった と判示し、ギリシアの訴訟の差止を認める判決を下した。これに対し、被告の船会社が控訴したのが本件である。 控訴審判決においてステイン判事は、第一審判決を支持し、被告の控訴を却下した。ステイン判事は、船会社側の 主張に沿って、本件の争点を、 ハ

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船会社がギリシアで訴訟を起こしたのは管轄合意違反となるか、 ( 2 ) 管轄合 意違反だとした場合、プラ v セル条約第二一、二二条により、イギリスの裁判所は自らに係属する訴訟を

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﹀もしプラヅセル条約第一二、二二条に基づく由宮可をする必要がないとすれば、それにも かかわらずイギリス裁判所は、イギリス法に基づく裁量により、イギリスでの訴訟を曲宮司するべきか、あるいは差 止 命 令 を 拒 否 す べ き か 、 の三点であるとして、順次これにしたがって判断している。

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﹀管轄合意違反について この点について船会社側は、第一審の判決に対して①ギリシアでの訴は管轄合意の対象外の訴である、②もしも管 轄合意の対象となる訴であったとしても、この管轄合意は専属的管轄合意ではない、との主張をしていた。この二点 のうち、まず①についてステイン判事は、本件における管轄合意の文言が省略的に書かれていることから、この答は、 同項の文言の細部に見いだせるのではなく、この文言の目的についての常識的見解に見いだせると述べたうえで、そ

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第7巻2号一-6 ローン契約に関する争いがイギリスの裁判所の管轄に服するということであると判示し の条文の常識的な解釈とは、 ていお山また本件における管轄合意が不法行為の訴までは対象としないとの船会社側の主張に対しては、 ステイン判 ﹁この契約から生じたいかなる争いも仲裁に付する﹂とした仲裁合意につい て、契約上の争いのみならず不法行為の争いをもカバーするとした先怖

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引用し、これが管轄合意の場合についても 事は、仲裁合意に関する先例、 つ ま り 、 あてはまるとした。そして、もしも船会社側の主張通りとすれば、契約を誘発するような不実表示(不法行為)によ る損害賠償金請求の訴が、本件の管轄合意の対象外ということになるが、同じ不実表示に基づく契約取消の訴(契約 上の訴)は当該管轄合意の対象であるため、この二つの訴が異なる裁判所で審理されるという不都合な結果になると して、船会社側のこの主張を退けた。そしてギリシアでの訴訟の争点は契約上の権利と当事者の義務とに関連したも し の か で つ あ た り と 、 判 原 示 審 し が て こ い の るすギ 。〉リ シ ア で の 訴 訟 を ローン契約と関連し、ゆえに管轄条項にカバーされると判断したのは正 次に、②の当事者間の管轄合意が専属的管轄合意かという点についてステイン判事は、管轄条項が専官的管轄合意 ﹁専属的﹂の文言の有無ではなく、その条項の解釈によって判断するとする先例及び基本書の立場を採る 、 母 A 、 也 、 母 ト ム 、 カ 沼 ト カ ド L ことを明らかにしている。そのうえで判事は、当該管轄条項が、船会社にはイギリス裁判所の管轄への服従を求め、 他方、銀行には他国で提訴する権利を留保することを認める表現になっていることを重視し、これには σ M 内 ℃ 同 . 何 回 印 H

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の解釈原理(ひとつのことの明記はその他のことの排除を意味する)が適用され、したがっ て、当該条項においては船会社が銀行のように訴訟地を選択することは意図的にはずされており、船会社はイギ

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裁判所の管轄にのみ服することを義務づけられていると述べて、当該管轄条項が専属的管轄条項であると判示した。

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ブラッセル条約との関連について

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この点についてステイン判事は、 本件にはブラ γ セル条約第一七条が適用されるため、被告が主張している第二一、ニ二条の適用の判断にあたっては、 ( 1 ) で判示したように本件における管轄合意が専属的管轄合意であるからには、 第二一、二二条と、この一七条との関係を見ていく必要があるとまず述べている。そして第一七条について、 ス 一 ア J t ン判事は、ブラッセル条約の起源が、 コモン・ローではなく大陸法にあり、 一七条もその大陸法的アプローチにした がっていると分析する。したがって、 一七条は強制的効果

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をもち、本条が適用されれば、当 事者の合意が締約国の裁判所に管轄を与え、その管轄合意が他の締約国の裁判所から管轄を奪うことになるとしてい る。そしてブラッセル条約自体には、 一七条の要件を満たす専属的管轄合意の効力を上回るような裁量的権限はなく、 7-ープラッセノレ条約の下における外国訴訟差止の可否 し た が っ て 、 いったん一七条が適用されれば一七条は二一条、二二条に優先すると述べている。 右の前提の下にステイン判事は、二一条、あるいは二二条の適用を主張する被告主張に対しては、その主張を容れ れば、当事者は一七条に規律される専属管轄を、他の裁判所に提訴することによって破ってもよいということになり、 一七条で確立された当事者自治はこのような結論のもとでは維持できないとして、批判している。ステイン判事は、 やはり一七条と二一、二二条との関係が問題になったクロークナ l 事件におけるヒルスト判事の﹁条約のシステムの なかで、専属管轄の問題を判断するのは(管轄合意によって当事者に)選ばれた裁判所が最もふさわしい﹂という意 見(ただしこの部分は傍論にあたる﹀を引用したうえで、 ﹁決定的なポイントは、ブラッセル条約の中に、外国訴訟 差止をイギリス裁判所が認めるという権限に矛盾する文言がなく、 と指摘し、これらの理由により、 この差止の目的は、専属的管轄合意の執行を保証 することにあるということである。﹂ 一七条が適用される限り、一一一条、二二条に よ る m Z M 1 は、問題にはならないと判示した。 ( 3 ﹀イギリス法に基づく裁量権の行使について

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第7巻2号一一8 イギリス裁判所はその本来の 船会社側はさらに、ブラッセル条約条約二一、二二条が適用されないとしても、 ハ 山 口 町 。 一 円 。 ロ 丹 ) 権 限 に 基 づ い て 、 ギ リ シ ア 裁 判 所 が 管 轄 権 の 有 無 を 判 断 す る ま で の あ い だ 、 回 一 昨 m M ﹃ をするべきであった し、またもしも田宮司が不適当であったとしても、ギリシアの訴訟を差し止める命令を出すべきではなかったと主張 している。その理由として船会社側は、訴訟が先に係属したのはギリシアであるから、専属的管轄合意の判断につい ては、ギリシア裁判所を信頼して、これに任せるべきであること、イギリス裁判所の出した差止命令は、間接的に

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諸国の裁判所の機能を妨害するものであり、そのような差止命令は、外国裁判所での救済の追求が当該訴訟の被告 を圧迫し困惑させるもの

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である場合にのみ認められるべきであるが、本件はそのよ うな要件を満たしていないこと、を挙げている。 この点についてステイ γ 判事は、管轄合意の解釈はイギリス法によりなされ、それによると当該管轄合意は専属的 管轄合意であり、ギリシア訴訟はその管轄合意の対象になり、一七条によってギリシア裁判所は管轄を奪われること になるという、これまでの議論をまず前提として示している。そして、判断の基礎とはしていないと断りながらも、 ギリシア裁判所が訴訟を継続する可能性があること、ギリシアで管轄を争うためには銀行側は多額の費用がかかるこ とを指摘したうえで、差止命令を認めるべき決定的な理由として、銀行は船会社側の明らかな管轄合意違反を阻止す るために差止命令を求めていること、そのような状況において管轄合意違反に対する損害賠償金を求めても効果はな く、差止命令のみが唯一の救済方法であること、もしも差止命令が取り消されれば船会社は管轄合意違反を続行し、 管轄合意で確立された銀行の法的権利は無価値なものになってしまうことを挙げ、原審が差止命令を与えたのは適切 ハ U V であったと判示している。 以上のように、控訴審においてステイン判事は、船会社側の三つの主張を全て退けた。さらに、船会社側が申し立

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に つ い て 、 つ ま り ( 1 ) ブラッセル条約第一七条と第一一一条、二二条との関係 ( 2 ) ①ギリシア裁判所とイギリス裁判所での訴はブラヅセル条約第一一一条の目的のもとで同じ訴訟原因 てていたヨーロッパ司法裁判所へのこつの質問、 となるか、②あるいは同二二条にいう関連する訴になるか、 についてステイン判事は、 ( 1 ) については確かに本件 第一審以外に先例はないが、答の明らかなものにかぎって、先例は往々にしてないものであるとし、 ま た ( 2 ) ペ コ いては、本件においてはこの点についてのブラッセル条約の﹁解釈﹂に関する問題はないとして、いずれも、申立を 拒否している。このように、船会社による控訴は却下された。また、ステイン判事は、船会社側による上告の申立も 認めなかったため、本件はこれで確定した。 与一一プラッセノレ条約の下における外国訴訟差止の可否

外国訴訟差止

(一)イギリスコモン・ロl上のルlル コンチネンタル銀行事件において問題とされた外国訴訟の差止は、 イギリスにおいてもともとコモン・ロl上認め られていたもので、裁判所は当事者の申立により、被申立人に対して、外国の裁判所において原告として訴訟を開始 したり継続することを裁量により禁止することができるとされている。これは当該外国裁判所に対する禁止ではなく、 被申立人に対する命令であり、そのため裁判所は、その者に対する対人管轄を有することが必要とされる。またこの 門 知 ) 命令に反した被申立人は、裁判所侮辱として制裁が課される。差止命令を求める申立人は、本案についての訴訟を同 時に起こすことは必要とはきれな

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裁判所がいかなる基準によってこの裁量権を行使するのかについては、外国訴 訟差止のちょうど裏側にあたる訴訟中止命令や、管轄外の被告への送達許可に関する裁判所の裁量権行使の基準とし て、イギリスにフォーラム・ノン・コンビニエンス法理が定着するにあたって一連の判例が展開された際に、これに

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第7巻2号一一10 ハ 泣 ) 対応する形で議論がなされてきた。それらの議論は大別すると次の二つにまとめられる。まず第一の立場は、外国訴 訟差止においても、訴訟中止、及び管轄外の被告への送達許可に関する裁判所の裁量と同一の基準を適用するという ハ お ﹀ ものである。フォーラム・ノン・コンビニエンス法理は、正義と便宜と当事者の最大の利益の観点から、事件の審理 ( 斜 ) に適切な法廷地の探求を目指すもので、この法理の採用により、イギリスのコモン・ロ l 上、かつては抑制的であっ た訴訟中止は、適切な法廷地が外国であると判断されればなされるという形で、より容易に認められるようになって いる。この立場をとれば、外国訴訟差止もまた、適切な法廷地がイギリスであると判断されればなされるという形で、 訴訟中止命令と同様により緩やかに認められることとなる。第二の立場は、外国訴訟差止は外国の裁判手続への介入 ( お ﹀ を意味することから、訴訟中止とは別個の、より厳しい基準を採用するというものである。具体的には、事件の審理 に適切な法廷地の探求(つまりそれがイギリス裁判所であるということ)につけ加えて、外国裁判所での訴訟が被告 を圧迫し困惑させるものであること

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、つまり濫用的提訴であることが要件とされる。し かしいずれの立場をとるにせよ、外国訴訟差止を認めるかどうかは、 イギリス裁判所がその裁量により判断すること に な る 。 (二)ブラッセル条約の下における外国訴訟差止 ブラッセル条約には、外国訴訟差止についてこれを禁止する規定はない。しかし、右に述べたような外国訴訟差止 が、原則として裁判所の裁量を認めないブラッセル条約の下でなし得るのかについては、大いに議論の起こるところ であるのは疑いもない。 コンチネンタル銀行事件が、 いささか唐突の観をもって受けとめられたのも、 まさにその点 つまり、ブラヅセル条約の下における外国訴訟差止の問題は、 判所の裁量権行使の余地の問題としてとらえることができる。この間題については、 が大きいといえよう。 まず第一に、同条約の下での裁 イギリス裁判所はこれまでに、

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この外国訴訟差止のみならず、 フォーラム・ノン・コンビニエンスという形においても、そのあり方について問題提 ︹ お ﹀ 起をしてきでおり、それについてはすでに別稿で触れたところである。今回コンチネンタル銀行事件において外国訴 訟差止が認められたことも、その流れの中の一つとして位置づけ、考察することができよう。ただし、 フ ォ ー ラ ム ・ ノン・コンビニエンスの場合は、裁判所はブラッセル条約の下で当該事件について管轄権を有しているという前提が あり、そのうえで、その管轄権を裁量により拒否することの可否が問われたため、これについての議論は、裁量権行 使の是非あるいはその基準という形に終始したという事情があった。これに対し外国訴訟差止の場合は、先に述べた 1 1 -プラッセル条約の下における外国訴訟差止の可否 コ モ ン ・ ロ I 上 の ル l ルにおいても、裁判所は差止命令を出すにあたって当該当事者に対し対人管轄権を有 することが前提要件とされていることから、仮にブラヅセル条約の下で差止命令を出すとしても、差止命令を求めら よ う に 、 れた裁判所は、その判断をする管轄権をブラッセル条約の下に有することがまず必要とされることになる。 つ ま り 、 ブラヅセル条約の下における外国訴訟差止の第二の問題点として、差止命令を求められた裁判所の同条約の下におけ る管轄権の問題が挙げられることになる。これはフォーラム・ノン・コンビニエンスの場合とは異なる新しい問題点 で あ る 。 ついてはこの問題点に関して、ブラッセル条約の下で外国訴訟差止をするとすれば裁判所はいかなる場合に 同条約の下でその管轄権を認められるのか、 またコンチネンタル銀行事件はどのようにこの間題を処理したのか、と いう観点から見ていくことによって、ブラずセル条約の下での外国訴訟差止の可否について、新たな角度から問題点 を浮き彫りにする事が可能かと思われる。そこで本稿ではまずこちらの問題から検討していきたい。 会一)差止命令を求められた裁判所の管轄権 そもそもブラッセル条約の下での外国訴訟差止そのものが予想されなかったことであったため、その場合の裁判所 の管轄権についても、これまで議論はなされていない。 コンチネンタル銀行事件においても、この点についての一般

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第7巻2号一一12 論は展開されていないが、同事件においては、 コモン・ロl上のルlルに準じて、裁判所が差止命令を出す当事者に 対し対人管轄権を有することを要件とするという前提で議論がなされていたようである。しかし、このようにコモン - ロ i 上 の ル l ルをブラッセル条約にスライドさせるにあたっては、多少の問題点、が生じてくる。というのは、 ン ・ ロ l においては、裁判所が当該事件に対する管轄権を有するかどうかは、最終的には裁判所の裁量により判断さ コ モ れるため、外国訴訟差止においては、その差止命令を下すにあたっての裁量と、それの前提となる、当該当事者に対 する対人管轄権の有無の判断との聞の区別が、いまひとつ判然としないからである。現にイギリスの基本書において ︹ Z V も、ダイシl・モリスは、両者をともに﹁管轄権﹂

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弓旬。者向) の前提としての﹁管轄権﹂ C 己 目 白 色 目 立 吉 ロ ) と い う 表 現 で 両 者 の 区 別 を し て い る ものの、外国に居住する当事者に対しては、最高裁規則 ﹁ 管 轄 権 。 円 円 同 m w H H 2 H H O H ( 同 ) に定められる場合以外に、 (﹄己門広島己目。ロ﹀を認めるのが正当化されるような十分な関連性を当事者(被申立人)がイギリスとの聞に有している 場合﹂を加えており、通常の訴訟よりも広い範聞で管轄権を認めてい一明したがって、このようなコモン・ロ I 上 の ル l ルを、明確な﹁管轄規則﹂であるブラヅセル条約にいかに適応させていくのかが問題となるわけである。しかし、 ブラッセル条約が、明瞭で厳格な管轄規則を目指していることを考慮すれば、差止のための管轄権と差止を認めるか どうかの裁量とは、きちんと区別する必要があろう。また、差止のための管轄権の範囲は、特にそのための条文が存 在しないのであれば、通常の訴訟について同条約が規定しているのと同じ範囲で認めるのが適切であると考えられる。 この点については、後述五(二) においてさらに検討したい。 次に、この間題は、差止命令が求められる状況によっていくつかの場合にわけられよう。まず、当事者が未だ外国 訴訟を開始していない場合は、国際的訴訟競合の状態がまだ生じていないため、次に述べる第一一一条の問題は生じず、

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裁判所はブラッセル条約の規定の下で当該当事者に対する管轄権を有するのみでこの間題はクリアーできることにな ろう。したがってこの場合、問題はほぼストレートに、ブラッセル条約の下における裁判所の裁量権行使の問題へと 移ることになる。ただしこの外国訴訟の開始を差し止めるという場合、どの範囲までが厳密に﹁ブラ y セル条約の下 イギリス裁判所の白からみた場合、コモン・ロ I 上の裁量基準とは別個の考慮を求め での外国訴訟差止﹂にあたり、 られるのかについては、多少疑問が残る。というのは、ブラヅセル条約は、原則として締約園内にドミサイルを有す る者を対象としているが、国際的訴訟競合に関しては、当事者のドミサイルは問わず、結果的に複数の締約固に同じ ( m m ﹀ 訴訟が競合している場合を対象としているからである。したがって、例えば、ブラッセル条約締約国にドミサイルを 13.一一プラッセル条約の下における外国訴訟差止の可否 有する者が差止命令の対象となる当事者であれば、その当事者が締約圏外の国に訴訟を起こすつもりであった場合に また逆に、命令の対象となる当事者は締約国にドミサイルを有さないものの、締約国での ︿ m g 提訴を考えている場合はどうするのか等については、限界事例として考慮する必要がでてこよう。 これに対し、すでに他の締約国に訴訟が継続している場合、管轄権の問題はより複雑になる。なぜなら、差止命令 もこの範囲にはいるのか、 を求められる裁判所は、常に第二一条にいうところの後訴裁判所となり、同条は、当事者と訴訟原因の同一を条件と して、すでに訴訟の継続している前訴裁判所に機械的に優先権を与えているからである。したがって裁判所は、当該 当事者に対する管轄権をブラ y セル条約の下で有していてもなお、何らかの理由で第一一一条の適用を否定しなければ、 たとえイギリスのコモン・ロI上、差止命令の認められるような事例(つまり、適切な法廷地がイギリスであること、 立場によってはさらに、外国での訴訟が濫用的提訴であること)であったとしても、差止命令は出せないことになる。 つまりこのように第二一条が関係する場合、ブラ吋ノセル条約の下において外国訴訟差止を認めることは、その是非論 は別として、そもそも構造的にかなり難しいものであったと考えられる。そしてコンチネンタル銀行事件は、まさに

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第7巻2号一-14 こ の ケ l スにあたっていたわけである。 (四)外国訴訟差止の前提としての第一二条適用否定 そのような状況にあったにもかかわらず、 コンチネンタル銀行事件は、結果的には先に紹介したように第二一条の 適用を否定し、差止を認めている。この判決はブラッセル条約の下で外国訴訟差止を認めるという点においては全く 初めての事例であり、第一二条適用の否定は、その前提として判断されたわけであるが、もともとこの第一一一条につ いては、イギリスにおいて、外国訴訟差止の問題とは別に、同条の適用そのものをめぐって、これまでにいくつかの 判例が出され、議論がなされてきている。それはイギリス裁判所が、国際的訴訟競合に関するコモン・ロ l 上 の ル 1 ルと全く対照的な規定を有する第一一一条に対して、時には調和を目指し、時には問題提起をしながら、 いかに適合し ていくかを模索する過程を示すものであった。今回、 コンチネンタル銀行事件において第一一一条の適用が否定された のは、外国訴訟差止の管轄としての判断ではあったが、これは、同条に対するイギリス裁判所の答の一つを新たに示 したものと見られる。この事件が、差止を認めた点のみならず、第一二条の適用を否定した点においても注目を集め ているのはその理由からである。そこで次に、 イギリスにおける第一一一条の適用をめぐる一連の判例を概観し、その 流れのなかでコンチネンタル銀行事件の位置づけを見ていきたい。 四 第 二 一 条 へ の イ ギ リ ス 裁 判 所 の 対 応 第二一条の主旨ば、先にも述べたように、複数の裁判所に継続する訴訟のいずれを優先させるかという問題につい て、どちらの訴訟が先に継続したかという時間的要素によって機械的に解決をはかることにある。 単純化をはかったかのように見えるこのル 1 ルも、実際に適用の段階になると、それなりに困難が生じてくる。特に 一見、規則適用の

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イ ギ リ ス の 場 合 、 コモン・ロ l 上、国際的訴訟競合は、競合する訴訟の争点の同一性や、訴訟係属の前後等について は、さほど厳格には考えられてはおらず、裁判所が正義の実現のため、裁量権の行使を考慮する対象のひとつとして とらえられてきたことから、イギリス裁判所は、第一一一条適用に際していくつかの問題点をかかえることとなった。 判例を通してみる限り、その問題点は、①複数の訴訟が厳密に競合する状態になっているかどうかを判断するにあた って、イギリス法と大陸法との違いから生じる純粋に手続的側面をもつものと、②正義実現のための裁判所による裁 量の余地を認めない第二一条の硬直性からくるものとの二つに大別できるように思われる。そして、大きな流れとし ては、①の手続的側面については、 イギリス裁判所は調和の方向を目指しているようであり、②の正義実現のための 15一一プラッセノレ条約の下における外国訴訟差止の可否 裁量については、第一一一条の規定に対し問題提起をするという傾向がみられるようである。 (一)手続的規則の調和 この間題については、特に対物訴訟との国際的訴訟競合に関するものについては、すでに別稿でとりあげ一明本稿で は、次のつ一)で述べる﹁正義実現のための裁量﹂の問題と対比させる意味で、その後に出された判例に簡単に触れ h

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φ ゎ t u v ( 1 ) 訴訟原因及び当事者の同了

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タトリ!号事件 第二一条適用のためには、①訴訟原因の同一と、②当事者の同一の要件が満たされているかどうかが厳密にチエヅ クされなければならない。イギリス裁判所にとってこの側面で問題になるのは、別稿でもとりあげたように、対物訴 訟との関係である。というのは対物訴訟は、現在のイギリス法上、海事裁判所での海法上の訴においてなされる、物 に対する訴で、対象となる物は、船舶や積み荷など(通常は船舶が対象となることが多い﹀であり、 (円。由) さらにこ の対物訴訟は、船主が本案、を争うために裁判所に出廷したり、あるいは、船舶の仮差押の防止や解除を希望する船主

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第7巻 2号一一16 が、保証金その他の担保を提供するために、令状の送達の確認をした場合には、その時点で訴はその船主に対する対 人訴訟にかわるとされているからである。このような性質をもっ対物訴訟に、第一二条をどのように適用するのか、 そもそも対物訴訟はブラッセル条約適用の対象となるのか、対象になるとすれば対物訴訟をいかにブラッセル条約の 枠組みのなかで調和させていくのか等の問題について、イギリス裁判所はこれまでたびたび検討を重ねてきた。この ( 悦 ) 聞の経緯については別稿でとりあげたが、このたび控訴院裁判所は、一九九二年四月、タトリ l 号事件において、こ れらの問題のうちのいくつかについて、その解釈をヨーロッパ司法裁判所の手に委ねている。 こ の 事 件 は 、 タ ト リ l 号に船積みされ、ゃブラジルからハンブルグおよびロッテルダムまで運ばれた大豆油が、ディ ーゼル油で汚染されていたとして、荷主が船主に対し、損害賠償を請求したものである。荷主は、 タ ト リ I 号の姉妹 船に対する対物訴訟の訴をイギリス裁判所に起こしたが、それ以前に、船主はオランダのロッテルダム裁判所に、自 らの責任がないことの確認を求める訴を起こしていたため、船主側はブラッセル条約二一条あるいは二二条に基づき イギリス裁判所が管轄の拒否または

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可をする事を求めた。第一審でシ 1 ン判事は、第二一条、二二条の適用を苔 定したため、船主側は控訴していた。控訴審が審理の結果、 ヨーロッパ司法裁判所にその見解を求めた問題のなかに は、第一一一条適用に際しての対物訴訟の当事者についての問題も含まれている。この点については、イギリス高等法 院での判例があるが、その見解は、船主が応訴した場合には、①訴はもはや対物訴訟ではなく、対人訴訟に入れ替わ ハ お ﹀ るとしたものと、②訴は対物訴訟から対人訴訟へ入れ替わるのではなく、対物訴訟が対人訴訟と並存するとする

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時 に 分 か れ て い た 。

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I ル判事は、自らは後者の見解に賛意を示しながらも、この点についてもヨ lpv パ司法裁判所 に解釈を委ねている。ニ l ル判事はさらに、前訴と後訴との当事者がまったく同じではない場合(本件の場合、オラン ダでの訴訟の被告になっていなかったものがイギリスでは原告に加わっている) における第二一条の適用についても、

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同裁判所に見解を求めており、第一二条にいう﹁当事者の同こについてのヨ I ロ?パ司法裁判所の解釈が待たれる。

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﹀訴訟係属時の確定││デュlグ・オプ・エール号事件 次に、第一二条が先に訴訟の係属した裁判所での訴訟を優先させるとしているため、訴訟係属時の確定ということ が問題となっている。この点については、各国の国内法によるとされているが、これまでのイギリスの学説・判例は、 対人訴訟については令状交付時

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向者ユ。が訴訟係属時とされ、訴状の送達時

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ゆえ当ユ丹)を訴訟係 ︿刊拍﹀ 属時とする大陸法系諸国のルlルとは異なってきた。ただし、先にも触れたように、イギリスのコモン・ロl上、国 際的訴訟競合においては、どちらの訴訟が先に係属したかについてはさほど重要な要件とは考えられていなかったた 17一一プラッセノレ条約の下における外国訴訟差止の可否 め、訴訟係属時に焦点を当てて議論が展開されていたわけではない。しかしブラッセル条約加盟を機に、この問題に ついてイギリス裁判所は、自国の手続法を少なくともブラッセル条約適用の事例に関しては、大陸法諸国のル 1 ル に 合わせようとする動きを見せている。まず、別稿で紹介したように、対物訴訟については、 一九八七年の高等法院判 決において、訴訟係属時を、令状交付時ではなく、実際に令状送達するか、船舶のブレストがなされたかのどちらか 早い時点であるとする判断が下されてい浦町これに続いて最近、対人訴訟についても、イギリス控訴院裁判所は、デ ュlグ・オブ・ェlル号事件において、この基準時を大陸法系諸国と同じく令状送達時とするという判断を下してい ( 却 ) る 。 この事件は、積荷が海上でハリケーンに遭って流出したため、荷主が運送人等をイギリス裁判所に訴えたものであ オランダにおいて限定責任の訴を起こしており、そのいずれの訴訟が先に係属したかが る。これに対し運送人側は、 問題となった。本件は、 イギリスで荷主が令状交付を受けてから運送人に送達するまでに約一年間の期聞があり、そ イギリスでの訴訟係属時を、令状交付時と見れば、 イギリス訴訟が、令状 の聞にオランダでの訴訟が係属したため、

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第7巻2号一一18 送達時と見ればオランダ訴訟が先に係属したと判断された事件であった。ピンガム判事は、訴訟がいつの時点で裁判 所に明らかに係属するのかというこの間題は、ブラ v セル条約第一一一、二二、二三条から導かれるまったく新しい問 題であり、イギリス裁判所は、連合王国がプラッセル条約に加盟した一九八七年以前には、この問題について考慮し ハ “ 制 ﹀ たことはなく、一九八七年以前の学説・判例にその答を求めることはできないと述べたうえで、それまでの学説、判 例を否定して、令状送達時を訴訟係属時と判示した。その理由として判事は、訴訟手続を活性化し、当事者に手続的 義務を課すようになるのは、令状送達の段階であって、令状交付の段階ではないことを指摘は v なぜなら被告は、令 円 必 ﹀ 状送達時にはじめて、自分に対して訴が開始されたことを知るからであると述べている。 ブ リ y グズはこの判決に対して、反対意見を表明し、対人訴訟について令状交付時を訴訟係属時とする事について 門口姐﹀ は、これまでの判例・学説において一致した見解であったと述べているが、ブリヅグズが引用したうちのひとつであ るチェシャイヤ I ・ ノ l スは、新しい版においてその見解を変更し、右の二つの判例を引用して、イギリス法におい ( 必 ﹀ ては、訴訟が係属するのは、対人訴訟においても対物訴訟においても、令状送達時であるとしている。 以上見てきたように、手続的側面についても、問題は山積している。第二一条の要件に基づき、他国での訴訟と同 ることは予想されるが、特にイギリスの場合、 いずれの固においても、多かれ少なかれ同様の問題がでてく コ モ ン ・ ロ I 上 の ル 1 ルが、この間題を、正義に反するかも知れない 一の訴訟にあたるかどうかを判断をするにあたっては、 場合にあたるかどうかという観点から、柔軟にとらえるアプローチをとってきたため、ブラすセル条約適用に際して は、他国との手続的な差異をひとつづっ詰めていかねばならないという課題をかかえることになる。しかしこの面に ついては、先にも述べたように、イギリス裁判所は模索しながらも、判例の積み重ねによって、少しずつプラッセル 条約との調和を目指しているように思われる。

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(二)正義実現のための裁量 イギリスのコモン・ロ I 上 、 イギリス裁判所が当該事件に対して管轄をもつかどうかは、最終的にイギリス裁判所 の裁量により判断される。このイギリス裁判所の裁量は、 フォーラム・ノン・コンビニエンスおよびフォーラム・コ ンピニエンスの法理と呼ばれ、先に述べたように、正義と便宜と当事者の最大の利益を裁量の基準として、事件の審 理に最も適切な法廷地の探求を目指す。このようなイギリスのコモン・戸lのル i ルに対し、原則として裁量を認め いわばその対極にあるといえる。そして第二一条についていえば、イギリス裁判所 の白からみた場合、その硬直的な﹁早い者勝ちのル I ル﹂が生じさせる、当事者による一種の管轄争いにいかに対処 ないブラッセル条約のルlルは、 19一一ブラッセル条約の下における外国訴訟差止の可否 ずるかが大きな課題となる。この問題については、二つのルlルの依って立つ原則があまりに異なるため、 イギリス 裁判所のとる態度にも揺れがあるが、議論の方向としては、この硬直的な第二一条の適用を否定する場合をいかに詰 めていくかというものになっている。その意味では、(一)の手続面での調和とは対照的に、イギリス裁判所はむし ろ第二一条に対する問題提起の姿勢を示しているともいえよう。 ( 1 ) 消極的確認訴訟との競合││タトリl号事件 この点についてまず問題となるのが、訴が起こされるのを予想した当事者によって先制的になされる消極的訴訟で ある。そもそも、給付の訴と、それに対する消極的確認訴訟が、第一一一条にいう同じ訴訟原因にあたるのかどうかに ついては、他の締約国においても問題とされるところであった。しかしこの点については、すでにヨーロッパ司法裁 判所が、ドイツでの給付請求の訴とイタリアでの消極的確認の訴とが競合した、 (日明﹀ 事件において、これらの二つの訴は第一一一条の目的に照らして同じ訴訟原因にあたると判示し、以後、これが先例と 一九八九年のグ 1 ピッシュ機械工場 なっている。これに対し、 イギリスのコモン・ロ i においては、消極的確認訴訟がイギリス裁判所あるいは外国裁判

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第 7巻2号一一20 イギリス裁判所が事件の本案を審理するのに適切な法廷地がどこになるかを判断する際に、 その消極的確認訴訟の存在がその判断に影響を与えることはないというル l ルが確立してい柿 w これは、先になされ ( 必 U た消極的訴訟が後になされた給付の訴を拘束することになってはならないとの考慮、がなされているためであるが、こ 所に起こされたとしても、 の 考 え 方 は 、 ヨ l ロヅパ司法裁判所の見解とは対照的なものになっている。ブラッセル条約の適用される事件では、 イギリスにおいてもコモン・ロl上のルlルは用いられず、そしてイギワス裁判所も当然、 ヨ I ロヅパ司法裁判所の 先例に拘束されるわけであるが、 ただしグ 1 ピヅシュ機械工場事件は、 イタリアにおけ ドイツにおける給付の訴が、 る消極的確認訴訟よりも先に係属していた事案であったため、消極的確認の訴が先制的になされた場合はこの先例に 拘束されないという可能性がないではなかった。先に述べたタトリl号事件は、まさにオランダでの消極的確認訴訟 が先に係属した事例であったため、この問題も争点の一つとなった。 タトリl号事件の第一審においてシlン判事は、この点について、 オランダの消極的確認訴訟は、 イギリスの給付 の訴とは同じ訴訟原因にはあたらず、第一二条は適用されないと結論づけている。ただしシlン判事の見解は、消極 的確認訴訟がいつの時点でなされたかという時間的要素による判断よりはむしろ、消極的確認訴訟を提起する当事者 の意図に焦点を当てたものであった。判事は、 オランダでの船主による消極的確認訴訟を、 ﹁船主が管轄の選択権を 得るためにブラヅセル条約を誤用することによって行なった先制攻撃であり、条約の精神に反する﹂と批判する。そ して、船主側が、二つの訴が同じ訴訟原因にあたると判示された先例として依拠している、グ 1 ピッシュ機械工場事 ( 回 ﹀ 件、および後述するオーバーシ 1 ズ・ユニオン保険会社事件とクロークナ 1 事 件 の 一 一 一 つ の 判 例 に つ い て は 、 こ れ ら に おいては、当事者が裁判所の消極的確認を求めるだけの意義があり、本件のように、単に荷主の損害に対して責任が まったく異なる事例であると区別する。その根拠としてシ l ン判事は、裁判所の ないことの確認を求める場合とは、

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確認を求める当事者は、そうする理由を裁判所に示すべきであるとのコモン・ロ l 上の先例を前提とし、さらにコモ ン ・ ロ l 上の最近の控訴院判決においてケ i ル判事が﹁消極的訴訟は、新しいタイプの、新しい意味をもっ、先制攻 撃的なフォーラムシヨ γ ピングである。:::確認訴訟、特に消極的確認訴訟は、管轄の抵触を起こす可能性のある場 合は全て、十分に注意して考慮しなければならない。なぜならそれは明らかに、フォーラムシヨ?ピングへの不適切 ( m M ) ( 口 出 ) な試みへとつながるからである。﹂と述べた意見を引用したうえで、本件における船主側の提訴の意図を吟味する。 判事は、船主が消極的確認を得られなかったとしても、そのことが荷主が損害賠償金を獲得できることにはつながら 21一一プラッセノレ条約の下における外国訴訟差止の可否 ない点を指摘し、船主側は敗訴することがわかっていながら消極的確認訴訟を起こしているのであり、この訴はフォ ( 応 ) Iラムショッピングであると判断している。そして、本件において船主が契約通りに船荷を運送したのであれば、荷 主からのいかなる訴訟においても抗弁することができるであろうが、そのことをもって、船主が訴訟原因を有すると ( 節 ﹀ いうのは明らかに誤りであるとし、本件において船主は、訴訟原因を有さないと判示し、二つの訴訟の訴訟原因が異 な る と し て 第 一 一 一 条 の 適 用 を 否 定 し た 。 これに対し、控訴審のユ I ル判事は、第一審のこの見解に反対し、この事件はグ l ピッシュ機械工場事件が先例と オランダとイギリスの訴訟は同じ訴訟原因に基づくものであり、 ( 貯 ﹀ い っ た ん 判 示 し た 。 な り 、 したがって本件には第一一一条が適用されると ヨーロッパ司法裁判所への質問内容を変更する際に、 し か し そ の 後 、 追 加 の 質 問 と し て 、 船主 が積荷の損害について責任がないことの確認を求める訴訟を先に起こし、その後で、荷主が船主に対して積荷の損害 について損害賠償を求める訴訟を起こした場合においても、グ 1 ピヅシュ機械工場事件が先例として適用されるのか という聞を加えた。ただし、 ニ I ル 判 事 は 、 ヨーロッパ司法裁判所がこの聞に答えてくれるかどうかはわからないと 述べており、第一審のシ l ン判事の見解を間違っているとした自らの判断自体には変更を加えていない。 ニ l ル 判 事

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第7巻2号一一一22 の質問は、第一審のシ l ン判事の判決に比べて、どちらの訴訟が先に係属したかという点にやや比重をおいている。 これは、時間的要素のみを基準とした第二一条の性質をふまえたうえでのことであろうが、抽象的に消極的訴訟が先 行した場合とせずに、もう少し具体的な内容の質問にした点が、訴訟の内容の審査の余地を残したものとも解せられ る

このように、この点に関しては、控訴審が一応第一審判決をくつがえしたとはいえ、すっきりした形ではなく、実 質的には決着がついていない状態といえよう。また、消極的訴訟が先の場合にもグ I ピッシュ機械工場事件を適用す コリンズが、そういうことになれば、ある管轄で訴えられる恐れのある者が、 自分にとってより有利な管轄で消極的確認の先制的な訴をおこす機会を探すことになるだろうと述べて、きびしく批 判 し て い る 。 るという第二審のこの見解に対しては、

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管轄合意の潜脱 次に問題になるのが、当事者が管轄合意に反して別の国で訴訟を起こす場合である。イギリスのコモン・ロ I 上 の 管轄規則は、イギリス裁判所が管轄を有するかどうかは、最終的に裁判所の裁量によって決められるため、当事者聞 の管轄合意がイギリス裁判所を﹁拘束する﹂わけではない。しかし、当事者聞の管轄合意はその裁量に影響を与え、 特にそれが専属的管轄合意である場合にはその影響力は大きい。外国裁判所を専属管轄とする合意がある場合、イギ リス裁判所は、国外にいる被告に対する令状交付を、よほど強い理由がない限り認めないとされており、また被告が 国内にいるなどの理由で令状交付にイギリス裁判所の許可が必要ない場合でも、そのような合意に反してイギリス裁 判所に提起された訴は、原則としてえ印可される。逆にイギリスを管轄地とする合意があれば、イギリス国外の被告 に対する令状交付が認められ(最高裁規則。

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同 ) ( 仏 ) ( 写 ) ) 、 ま た イ ギ リ ス 裁 判 所 に 係 属 し た 訴 訟 が 、

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( 日 ) フォーラム・ノン・コンビニエンス法理によりえ m w可守されることは起こりにくいとされている。さらに判決の承認・ 執行の場面においても、管轄合意に反して外国で起こされた訴の判決は承認拒否の対象となるため

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﹀ 、 イギリスで判決の執行がなされるのであれば、当事者はその段階で も、イギリスにおいて相手方の管轄合意違反を理由に争うことができる。このように、 イギリスのコモン・ロ l の 規 定は、当事者の管轄合意を重視しているといえよう o これに対し、ブラッセル条約の場合、当事者が管轄合意に反して他の国で起こした訴訟が先に係属した場合、第二 一条がそのまま適用されるとすれば、当事者の合意により管轄地に選ばれた裁判所は、優先者を前訴裁判所に譲るこ 23一一プラッセノレ条約の下における外国訴訟差止の可否 とになる。ブラッセル条約には、第一七条に規定された当事者の管轄合意に反する形で締約国が管轄を有した場合に ついての規定はない。ただしシュロ?サlレポートによれば、締約国裁判所は、訴が他の締約国の裁判所での管轄合 意に反してなされたものである場合には、自ら管轄の不存在を宣言しなければならないとしており、このことから、 二一条においても、前訴裁判所が当事者聞の管轄合意の有効性を判断することが黙示的に示されていると考えられる。 しかし、前訴裁判所が必ずしも自ら管轄合意の有効性を判断してくれるとの保証はない。また判決の承認の段階にお 一七条違反の判決を第二八条に定める判決の承認 い て も 、 コモン・ロl上のルlルとは異なり、ブラッセル条約は、 拒否事由には入れていないため、この場面での防御も不可能となっている。そこで、管轄合意に反して他の締約国に 訴を起こされた当事者は、管轄合意通りの裁判所で訴訟を行うためには、訴を起こされた段階で、その固まで出向い ていって、管轄合意違反であることを主張せねばならないとされており、このことが、当事者自治を尊重する第一七 条の抜け道となる可能性は否めなかった。 ( a ) クロークナ l 事件

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第7巻 2号一一24 イギリス裁判所において、この問題に関する先例はない。ただし、イギリス裁判所の対応を推測する手がかりとし 一九八九年に商事法廷

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において下された判決の中で、傍論 コ ン チ ネ γ タル銀行事件でステイン判事が引用していたクロ て は 、 ながらこの点について触れられたものがある。これが、 (白山﹀ lクナ 1 事件である。この事件は、原油の売買契約に関し、売主のドイツ会社であるクロークナl社と買主のパナマ 会社であるガ V トオイル社との聞で、代金支払について争われたものである。当事者の締約した契約には、イギリス を管轄地とする旨の条項があったが、買主のガットオイル社はドイツ裁判所に消極的確認の訴を起こし、ドイツ裁判 所が前訴裁判所にあたるとして、ブラッセル条約第一一一条または二二条に基づき、イギリスで起こされている代金支 払請求の訴訟の由

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てを求めたため、 一七条と一二、二二条との関係が問題となった。 しかしこの事件は、前述のデュlグ・オブ・エール事件以前の判決であったことから、イギリスにおける訴訟係属 時は、それまでの先例通り令状交付時であると判断され、イギリスでの訴訟がドイツでの訴訟より先に係属したと判 示されている。したがって本件において一七条と一一一条との関係は結局争点とはならなかったわけであるが、 ヒ ル ス ト判事は、傍論ながらこの点について、 ﹁ 疑 い も な く 、 かなりの頁数を割いて詳細につぎのような意見を述べている。 第二一条の下で前訴裁判所に与えられた優先権は、矛盾する判決を避け、判決の相互の承認及び執行を規律する規則 を簡単にするためには、重要である。しかし、第一六条及び一七条の下で、特定の事件において特定の裁判所に与え られた専属的管轄権もまた同様に重要なものであり、私は、これらの二つの条文が一二条を優先して下位に評価され ることが適切だとは考えない。﹂﹁:::第一六条及び一七条の下で専属管轄を与えられたと当事者により主張されてい る裁判所は、それらの条文の下で自らが専属管轄を有するかどうかを自らの手で調べることが自由になされねばなら ない。なぜなら、専属管轄がない場合は、当事者の一方が、専属管轄を認めていると主張される契約は存在しないこ

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とを主張すれば足り、それにより、条約のこの部分の法的効果は失われるからである。このことは条約全体のパタ l またコモン・センスにも調和すると思われる。なぜなら専属管轄の問題を決定するのに最もよい ( 伺 ) 裁判所は、そのような(専属)管轄があると主張されている裁判所だからである。﹂﹁:::したがって、私は(本件に に も 合 致 す る し 、 おいて﹀自分が第一七条の下で自由にイギリス裁判所の専属管轄の条項の有効性を判断し、そして、もしその条項が 有効だと判断されれば、その条項によりカバーされる訴について引き続き本裁判所において審理することが許される と 考 え る 。 ﹂ このようにヒルスト判事の見解は、 かなりはっきりと一七条を二一条に優先させるものであった。なお専属管轄に 25一一ープラッセノレ条約の下における外国訴訟差止の可否 ついては、第二八条で承認拒否事由の対象となっている第二ハ条によるものと、対象とされていない第一七条による ものとを分ける考え方もあり、被告のガットオイル社側は、後訴裁判所が二ハ条に基づく専属管轄を有する場合につ いてのみ、後訴裁判所に前訴裁判所の管轄の有無の判断を認めるべきだとするケイの見解を引用し、これを主張して ヒルスト判事は被告のこの主張を退け、 一七条を二ハ条と同等に扱うことを示しており、この点も注目され

n-号 、 母 、 し 中 れ 、 刀 る。ただし先にも述べたように、この意見はあくまでも傍論にすぎず、先例としての拘束力があるわけではない。 ( b ) オーバーシIズ・ユニオン保険会社事件 他方、ヨーロッパ司法裁判所においても、第一七条と第二一条との関係についての問題に対する判断は、今のとこ ろ出されていない。ただし、クロークナ l 事件の後、これに近い問題として、第一一一条の下で後訴裁判所が前訴裁判 所の管轄の有無を判断できるかどうかが争点となった事案において、 ヨーロッパ司法裁判所が、専属管轄には別の配 一九九一年のオーバーシ l ズ・ユニオン保険会社事件で、イギリスの ヨーロッパ司法裁判所へ解釈を委ねたものである。この事件は、保険会社間の再保険契約に関するもので 慮を示す可能性を示したものがある。これが、 裁 判 所 が 、

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第7巻2号一一26 ある。米国ニュ l ・ ハ ン プ シ ャ 1 州会社であるニュ 1 ・ ハ ン プ シ

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保 険 会 社 は 、 オーバーシ l ズ・ユニオン保険会 社(シンガポール会社)を含む三社の保険会社(他の二社はいずれもイギリス会社)との間で再保険契約を締結した。 しかしこれら三社の保険会社が保険金の支払を拒否したため、 一 ュ l ・ ハ ン プ シ ャ l 保険会社はその支払を求めて、 フランス裁判所に訴訟を提起した。三社はフランス裁判所の管轄を争う一方で、 イギリスの商事法廷において消極的 確認の訴を起こした。 ニ ュ i ・ ハ ン プ シ ャ l 保 険 会 社 は 、 イギリス裁判所に対し、ブラッセル条約第一一一条または第 二 二 条 に 基 づ き 、 イギリスでの訴の丘町四可を求めた。商事法廷が、第一二条第二パラグラフに基づき、 フランス裁判 所、が自らの管轄についての判断を下すまでの問、 イギリスでの訴訟の

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てを認めたのに対し、三社が控訴した。控 訴審における争点のひとつに、後訴裁判所が自ら前訴裁判所の管轄の有無の判断ができるかという問題があった。こ の点についての三社側の主張は、イギリス裁判所は、フランス裁判所が管轄を有することが確定するまでは、丸山吋を する事ができないし、本件の場合フランス裁判所に管轄はないというものであった。これに対

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、 一 ュ 1 ・ ハ ン プ シ ャ 1 保険会社は、二一条のもとで後訴裁判所は管轄の拒否あるいは三者ーをする事が義務づけられ、また後訴裁判所 は自ら前訴裁判所の管轄を審理することはできないと主張していた。そこで控訴院裁判所が、この点も含め、 ヨ l ロ ッパ司法裁判所に対して条約の解釈を求めたのが本件である。 イギリス控訴院裁判所がこの点について提出した質問は、①第一一一条の第一一パラグラフによれば、前訴裁判所の管 轄が争われている場合、後訴裁判所はどのような状況においても管轄拒否の代わりに田宮てをせねばならないか、② もしそうでなかったら、後訴裁判所は、前訴裁判所が管轄を有しているかどうかを自ら判断するべきか、それともそ れが許されるか。もしそうだとすればどのような状況においてどの程度まで判断するのか、というものであった。 ヨ ーロッパ司法裁判所はこれら二つの聞に対し、 ﹁本件においては、当該訴訟が条約の規定、特に第一六条に規定され

(27)

る専属管轄の条件を満たす訴訟であることが、提出された書面においてはなんら示されていないため、本件での判断 は、後訴裁判所がそのような専属管轄を有する場合をカバーしない。﹂ ( η ﹀ 異なるということをまず示したうえで、 と 述 べ て 、 ﹁後訴裁判所が条約の下で、特に第一六条の下で専属管轄を有する場合は別 専属管轄のある場合はまた状況が として、条約の第二一条は、前訴裁判所の管轄が争われている場合、後訴裁判所は、管轄を拒否するのでなければ、 訴訟の丘喜一をすることのみができるのであって、自ら前訴裁判所の管轄の有無を判断することはできないと解釈さ れ な け れ ば な ら な い 。 ﹂ と 答 え た 。 '2:l一一『プラッセル条約の下における外国訴訟差止の可否 このようにヨーロッパ司法裁判所の容が、専属管轄の場合を例外とするという条件付きであったため、後訴裁判所 が前訴裁判所の管轄の有無を判断できるか否かの問題は、後訴裁判所が専属管轄を有する場合についてはなお含みを 残すものとなっている。またこの判決が、第一七条について言及していないことから、ブリッグズは、この判決が例 外の対象としているのは、その違反が第二八条の判決の承認拒否の対象とされている第一六条に規定される専属管轄 のみであるとの見解を述べているが、本判決において、二一条の例外に一七条は含めないとの解釈が述べられている わけではなく、あくまでも、一六条は例示されたにすぎないととらえるのが妥当であろう。したがって、第一六条と、 第一七条の場合とでは扱いを異にするのかという点についても、依然として問題は残されたままであると解するのが 適切であると思われる。

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﹀裁量権行使の対象となる訴訟競合 以上見てきたように、イギリス裁判所の目から見れば第二一条の適用が不適切であると判断される事例に対して、 同条の適用をいかに制限していくかという問題については、ヨ 1 ロ V パ司法裁判所の判断は、現時点ではほんの周辺 的な部分についてしかなされておらず、またイギリス園内でも、未だ十分な議論がなされたとはいえない状態にある。

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第7巻 2号一一.28 ただし右に挙げた事例を見る限り、イギリスにおける現在の議論の流れは以下のように二つに整理できると考えられ る。まずひとつは、競合する訴訟の中味に目を向けて、場合によっては二一条適用を否定しようとするものである。 形としては、訴訟原因の同一性の否定、あるいは、細かく事例を限定したうえで、二一条の適用を否定という方法が とられることになろう。これは、現在具体的には、消極的訴訟との競合について、先例としてのグ l ピ v シュ機械工 場事件の再検討という形ででできている問題である。実際のところ、第一一一条の下で管轄地について当事者聞に早い 者勝ちの競争がなされる場合、結果として多くの場合、原・被告逆転型の、消極的確認訴訟と給付の訴との国際的訴 訟競合の形となってあらわれることは十分に考えられることである。現に右に挙げた三つの事例はいずれも、まさに その原・被告逆転型の、消極的確認訴訟との競合の事例であった。逆にいえばこの場合について何らかの規制をすれ ば、第一一一条の﹁早い者勝ちのル i ル﹂に対する批判はかなり解消するとも考えられる。また、 たとえば原告が判決 の執行を考慮して、被告の財産が所在しかっ管轄原因のある複数の国で提訴するというような原・被告同一型の訴訟 競合に対しては、締約国聞における判決の執行を保証するブラ y セル条約の下において、第一一一条のように時間的要 素により規律することはそれなりの説得力をもつが、これが原・被告逆転型の、それも消極的訴訟と給付の訴との競 合のケ l スにまで同様の妥当性をもつかどうかは、今一度考慮する機会をもつことに意義が認められるかもしれない。 そのため、正義のための裁量の視点に立つイギリス裁判所が、タトリ l 号事件において、もう一度グ I ピ v シュ機械 工場事件の先例に立ち戻って、そもそも消極的確認訴訟と給付の訴とのこつの訴訟が競合する場合、どのような状況 においても一律に一二条を適用するのかどうかを、改めて問題としたのは、いわば当然の成りゆきであったと思われ る

現在、この点についてはヨ l ロ y パ司法裁判所の回答待ちというところであるが、 門市山 V コリンズも指摘するとおり、グ

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ー ピ V シュ機械工場事件の判決に際して、マンチIュ法務官がすでに、第一一一条を消極的確認訴訟が先に係属した場 合に適用することに対し懸念を表明していることから、この場合を例外とする判断が下される可能性はないではない と思われる。仮にそのような判断が下されたとすれば、第一二条に関して、問題は新たな展開を一部すことになるであ ろう。まず、①給付の訴が係属した後訴裁判所が無条件に管轄を有することになるのか、それとも、②消極的確認訴 訟の係属している前訴裁判所の管轄の有無を後訴裁判所が審査するというかたちをとるのかという問題が生じてこよ う。タトリ l 号事件の第一審におけるシ l ン判事のような見解、つまり、消極的確認訴訟を提起する当事者の意図に 焦点を当てた見解をとるならば、消極的確認訴訟といえども優先させる場合が生じてくる可能性があるからである。 29一一プラッセル条約の下における外国訴訟差止の可否 いずれにせよ、第一一一条の適用の例外事例をいったん認めれば、これまでのように機械的な判断のみではすまず、場 合によっては裁判所が裁量により判断する余地も出てこよう。その場合、 イギリス裁判所にとっては、自らがこれま でコモン・ローにおいてとってきた正義のための裁量権行使のアプローチにより近いものになっていくわけである。 ヨ l ロ y パ司法裁判所がどのような判断を下すかが注目される。 次にもうひとつの流れは、競合する訴訟の中味を見るのではなく、それにどのような状況が加われば、二一条の適 タト リ l 号 事 件 に お い て 、 用の例外となるかという形での議論である。クロークナ l 事件やオーバーシ l ズ・ユニオン保険会社事件での議論が これにあたる。これらの事件はともに、消極的訴訟との競合の事例であったが、いずれもタトリ 1 号事件以前のケー スであり、当然のごとくグ l ピ γ シュ機械工場事件が前提とされていた。その状況の中で、片やクロークナ l 事件に おいては、イギリス裁判所を管轄とする合意が存在したという事情があり、片やオーバーシ l ズ・ユニオ γ 保険会社 事件においては、前訴裁判所において管轄が争われているという事情があることから、これらの事情が第二一条の適 用を制限する理由になり得るかという考慮がなされたのである。この第二の形での議論の場合は、異なる裁判所に係

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