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高速道路における逆走発生プロセスに関する仮説構築 平成26年度(中間報告)タカタ財団助成研究論文 ISSN 2185

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高速道路における逆走発生プロセスに関する仮説構築

― 平成 26 年度(本報告)

ISSN 2185-8950

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研究実施メンバー

研究代表者

大阪大学大学院工学研究科

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報告書概要

近年,高速道路で様々な逆走対策が実施されているにもかかわらず,逆走発生件数は ほぼ横ばいで推移しており,効果的な逆走対策の必要性は高い.本研究では,まず逆 走事案に関するデータを統計処理し,「時間帯:9~15 時」,「場所:IC」,「運転者の年 齢:70 歳以上」をそれぞれ逆走多発条件であると整理した.次に,これらの条件に基 づき交通環境の調査を企画・実施し,調査結果を統合することで,IC 流入時および IC 流出時の逆走発生過程を推定した.さらに,運転者心理と物的交通環境を考慮して, 推定した過程における運転者挙動を段階的に考察し,逆走発生原因を推定した.そし て最後に,IC 内プラザで転回禁止を強く認識させるなど,推定した逆走発生原因に基 づく対策の提案を試みた.

目 次

高速道路における逆走発生プロセスに関する仮説構築 第 1 章 研究背景と目的 第 2 章 逆走多発条件の把握 2.1 逆走多発条件の抽出 2.2 項目間の関連の検証 第 3 章 現地調査 第 4 章 逆走発生経路の推定 第 5 章 逆走発生過程の推定 5.1 IC 流出時の逆走発生過程の推定 (1)本線から B ランプに進入する逆走発生過程 (2)本線から D ランプに進入する逆走発生過程 5.2 IC 流出時の逆走発生原因となる知識,挙動の推定 5.3 IC 流入時の逆走発生過程の推定 (1)料金所通過前の逆走発生過程 (2)料金所通過後の逆走発生過程 5.4 IC 流入時の逆走発生原因となる知識,挙動の推定 5.5 逆走発生原因となる知識,挙動のまとめ 第 6 章 逆走対策の提案 第 7 章 おわりに

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第 1 章 研究背景と目的

高速道路での逆走が原因となる事故(以下,逆走事故)は死傷事故に繋がり 1),第三 者にも重大な被害をもたらす可能性が高い.近年,件数の増加に伴い,逆走事案*1およ び逆走事故が社会的な問題として認知され,様々な対策が実施されている.しかし, NEXCO 西日本管内を見ても平成 18 年から 22 年までのそれぞれの件数はほぼ横ばいで推 移している 1).以上のことから,逆走対策の必要性が高いにもかかわらず,現状の対策 は十分な効果を挙げていないと言える. 効果的な対策を考案するには,逆走が発生した時間帯や場所などのデータを統計処 理して逆走が多発する条件(以下,逆走多発条件)を把握し,それに基づき逆走が発 生する過程を推定し,その過程のどこに原因があるのか(以下,逆走発生原因)運転 者挙動および交通環境の観点から明らかにする必要がある.しかし,これらを試みた 先行研究は存在しない.この理由の一つとして,高速道路で発生した逆走に関する調 査方法が道路管理者と交通管理者の間で統一されておらず,データの整理・蓄積が不 十分であったことが挙げられる.この問題に対し,NEXCO 西日本と京都府警察は,平成 19 年に京都府域高速道路等立入者・逆走車防止対策連絡協議会(以下,協議会)を設 立し,調査方法を統一するとともにデータの共有・蓄積を進め,対策の検討を行って いる 2) 本研究では,協議会に蓄積されたデータを統計処理し逆走多発条件を把握した.次 に,これらの条件に基づき現地調査を企画・実施し,調査結果を統合することで逆走 が発生する経路・過程を推定した.そして,推定した過程を運転者挙動および交通環 境の観点から段階的に考察し,逆走発生原因を推定するとともに,それに基づく対策 の提案を試みた.

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第 2 章 逆走多発条件の把握

本研究では,協議会により蓄積された,平成 19 年 7 月から平成 25 年 12 月までに京 都府域の高速道路で発生した逆走事案の調書をデータとして使用した.サンプル数を 確保するため,逆走車を確保できなかった通報のみの事案も対象とした. 2.1 逆走多発条件の抽出 逆走車の発見者に関する情報など逆走発生原因と関連がないと考えられる項目を除 き,9 つの分析項目(時間帯,曜日,月,道路,場所,車両区分,理由,逆走事案第一 当事者(以下,逆走者)の年代,性別)を選定し,各分析項目に表 1 に示す通りデー タ区分を設け集計した. 表 1 データ区分 分析項目 区分 場所 IC,JCT,TB,休憩施設,本線 車両区分 普通車・軽自動車,貨物車・大型車,二輪車 理由 誤進入,故意,支払不可,認知症,酒酔い 逆走者の 年代 30 歳未満,30 歳代,40 歳代,50 歳代,60 歳代,70 歳代, 80 歳以上 時間帯 0~3 時,3~6 時,6~9 時,9~12 時,12~15 時,15~18 時,18~21 時,21~24 時 次に,逆走多発条件を抽出するため,構成比率が大きい区分と他の区分の間に有意 差があるのかを Z 検定(p<0.05)を用いて判定した. 時間帯の項目では表 2 に示す通り,1 区分あたりの平均の構成比率 12.5%と各時間 帯の構成比率を比較した.その結果,9~12 時および 12~15 時の構成比率と平均の構 成比率の間に有意差が認められたため,9~15 時を逆走多発条件と判定した.同様の方 法を,曜日と月の項目にも適用した. 道路の項目では,各道路の走行台キロなどの条件が同じでないため,平均の構成比 率と単純に比較することができない.ここで,ある区分の構成比率が 50%より有意に大 きいならば,その区分の構成比率は他の全ての区分の構成比率の合計値と有意差があ る,つまりその区分は構成比率が最大の区分であると言える.この考えに基づき,最 多件数を示す区分の構成比率に関して検定を行った結果,阪神高速 8 号京都線の構成 比率が 50%より有意に大きいことが認められたため,逆走多発条件と判定した.同様の 方法を,場所,車両区分,理由の項目にも適用した.

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表 2 時間帯別逆走事案件数 時間帯 件数 構成比 率 0~3 時 34 8.5 3~6 時 30 7.5 6~9 時 34 8.5 9~12 時 95 23.9 12~15 時 73 18.3 15~18 時 51 12.8 18~21 時 36 9.0 21~24 時 45 11.3 合計 398 100 平均 49.8 12.5 逆走者の年代の項目では表 3 に示す通り,同一年代の逆走者数の構成比率と運転免 許保有者数(平成 24 年)3)の構成比率を比較した.本来は高速道路利用者数と比較す べきだが,そのデータがないため運転免許保有者数で代用した.結果として,70 歳代 および 80 歳以上で,逆走者数と運転免許保有者数の構成比率の間に有意差が認められ たため,70 歳以上を逆走多発条件と判定した.同様の方法を,性別の項目にも適用し た. 表 3 逆走者の年代別逆走事案件数 年代 逆走者 数 構成比 率 免許保有者数 (H24) 構成比 率 30 歳未 満 9 11.5 12382640 15.3 30 歳代 5 6.4 16198935 19.9 40 歳代 7 9 16698938 20.4 50 歳代 9 11.5 13838949 17 60 歳代 15 19.2 14134534 17.3 70 歳代 18 23.1 6688675 8.2 80 歳以 上 15 19.2 1545175 1.9 小計 78 100 81487846 100 年齢不 明 320 合計 398 ** (p<0.01) **

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上記の方法で,分析項目ごとに逆走多発条件を抽出した結果を表 4 に示す.道路で は,阪神高速 8 号京都線を逆走多発条件と判定した.この理由の一つとして,山科イ ンターチェンジ(以下,IC)や鴨川東 IC のように特殊な形状の IC が多いことが挙げ られる.本研究では,研究結果の現場適用性の観点から,一般的な道路構造を対象と することとし,今回は場所の項目については阪神高速 8 号京都線の逆走事案件数を除 外して集計・分析を行った. 表 4 逆走多発条件 分析項目 逆走多発条件 時間関係 時間帯 9~15 時 曜日 日曜日 月 なし 場所関係 道路 阪神高速 8 号京 都線 場所 IC 運転者関係 車両区分 普通車・軽自動 車 理由 誤進入 逆走者の年代 70 歳以上 性別 男性 2.2 項目間の関連の検証 表 4 に示した逆走多発条件は,分析項目ごとに抽出したものであり,たとえば「場 所:IC」,「逆走車の年代:70 歳以上」を組み合わせて,70 歳以上の運転者が IC で逆 走しやすいことを示すわけではない.そこで,逆走対策立案に関連が強いと考えられ る時間帯,場所,逆走者の年代の項目に着目し,これらの項目間の関連を検証した. 時間帯と逆走者の年代では,表 5 に示す通り,逆走者の年代に 70 歳以上(逆走多発 条件と判定した区分)と 70 歳未満の区分を設け,時間帯とクロス集計した.次に Z 検 定を行い,同一時間帯における 70 歳以上と,70 歳未満の逆走者数の構成比率の有意差 を検定した(p<0.05).結果として,全ての時間帯において 70 歳以上と,70 歳未満の逆 走者数の構成比率の間に有意差は認められず,時間帯と逆走者の年代の間に関連がな い可能性が示唆された. 同様の方法で 2 項目ずつ組み合わせてそれぞれ検定を行った結果,全ての組み合わ せにおいて,逆走多発条件と判定した区分とその他の区分の構成比率の間に有意差が 認められず,これらの 3 項目間に関連がない可能性が示唆された.よって,「時間帯: 9~15 時」,「場所:IC」,「逆走者の年代:70 歳以上」をそれぞれ逆走多発条件と整理 した.

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表 5 逆走者の年代と時間帯のクロス表 年 代 時間帯 70 歳 未満 構 成 比 率 70 歳以 上 構 成 比 率 有意差 0 ~ 3 時 2 4.4 3 9.1 なし 3 ~ 6 時 2 4.4 1 3.0 なし 6 ~ 9 時 4 8.9 1 3.0 なし 9 ~ 12 時 17 37.8 14 42.4 なし 12 ~ 15 時 7 15.6 8 24.2 なし 15 ~ 18 時 9 20.0 5 15.2 なし 18 ~ 21 時 3 6.7 0 0.0 なし 21 ~ 24 時 1 2.2 1 3.0 なし 合計 45 100 33 100

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第 3 章 現地調査

2 章で示した逆走多発条件に基づき,交通環境の調査を行った.なお,70 歳以上の 高齢者を被験者とした走行調査を IC で行うことは危険を伴うため,本研究では時間帯 と場所の条件に着目し,9~15 時の時間帯に一般的な形状(トランペット型)の IC で 調査を行うこととした. 調査地点は,逆走発生の報告が多い,京都縦貫自動車道の舞鶴大江 IC(13 件*2)と 宮津天橋立 IC(11 件*2)を選定した. ここで長山 4)は,交通環境を図 1 に示すように分類している.対人的交通環境は周 囲の車両との関係性といった動的な交通環境を示しているが,逆走発生時の動的な交 通環境を調査するのは難しい.よって本研究では,道路の幅員などを示す道路交通環 境と標識・路面標示の設置状況などを示す意味的交通環境を合わせた物的交通環境を 調査対象とした. 図 1 交通環境の分類 調査では,車両ダッシュボードにカメラを設置し前方映像を撮影した.図 2 は舞鶴 大江 IC の例を示しているが,管理事務所→一般道路(転回)→IC 流入→本線→宮津天 橋立 IC→本線→IC 流出→管理事務所という経路を走行することで,広範囲に IC 部の 物的交通環境を把握した.また,当該 IC の管理者にヒアリングを行い,運転者が確保 された事例における走行経路(図 3)や逆走した理由を把握した.

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図 2 調査経路(舞鶴大江 IC)

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第 4 章 逆走発生経路の推定

3 章の調査結果を統合し,逆走が発生する可能性のある経路(以下,逆走発生経路) を推定した. まず,調査で撮影した映像から標識などの道路付属物および逆走対策工などを静止 画として抽出し,それらが設置されている位置と道路図面上の位置を対応させてデー タベース化した. 次に,図 3 で示した,運転者が確保された事例における走行経路を上述したデータ ベースに書き込んだ(以下,経路図と呼ぶ).これは逆走発生時に運転者が辿った経路 の一部であるため,その前後の経路を推定し経路図に書き込んだ(図 4).さらに,幅 員などの道路構造上,車両が転回可能な箇所を把握し,逆走することが可能な経路を 推定することで,IC 部の逆走発生経路を網羅した(表 6).ここで,流出時に内プラザ *3にある開口部(図 5)で転回し流入ランプを順行する行為は逆走ではないが,料金所 付近での転回行為は危険であるため,逆走行為と同様に扱う. 図 4 逆走発生経路(B ランプ*4進入,D ランプ*5逆走)

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表 6 IC 部の逆走発生経路 経路 1(順行) 経路 2(逆走) IC 流 出 本線から B(D)ランプ進 入 内プラザで転回し B(D)ランプを逆走 内プラザ開口部を通過し 入口へ向かって 逆走 内プラザ開口部で転回し 流入ランプを順 行 IC 流 入 一般道路を順行 IC の流出車線へ進入し逆走 一般道路から IC の 流 入車線へ進入 流出車線へ車線変更し逆走 料金所入口を通過し, 内プラザ開口部 から流出 ランプへ進入し逆走 図 5 内プラザにある開口部(舞鶴大江 IC)

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第 5 章 逆走発生過程の推定

4 章で推定した IC 部の逆走発生経路に,IC に到達するまでの過程を組み合わせた(以 下,逆走発生過程と呼ぶ).そして,運転者心理と物的交通環境を考慮し,全ての逆走 発生過程における運転者挙動(認知・判断・行動)を段階的に推定した.ここで本研 究では,疾患や酒酔いなどが原因で運転者本人の状況認識が正常でないと判断される 場合, およびラバーポールを踏み倒し急角度で転回するなどの相当無理な運転をしな ければ逆走になり得ない場合については検討しないこととした. 5.1 IC 流出時の逆走発生過程の推定 (1)本線から B ランプに進入する逆走発生過程 IC 流出時,本線から B ランプに進入する過程を推定した(図 6).管理者にヒアリン グした結果に基づき,最初の段階で,誤って目的地を通過し本線を順行している場合 と,目的地に向かって本線を順行している場合を考えた.次に,B ランプに進入する前 に生じる認知・判断を推定した.その結果,逆走発生に至らない過程を除くと,Ⅰ) 目的地を通過して引き返そうと判断し B ランプへ進入する過程,(Ⅱ)目的地を通過し ているが目的地と勘違いして B ランプに進入する過程,(Ⅲ)目的地の手前が目的地と 勘違いして B ランプに進入する過程に分岐すると考えた.

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図 7 (Ⅰ)目的地を通過し引き返そうと判断し B ランプに進入した後の過程 次に,上述した(Ⅰ)〜(Ⅲ)の過程に続く,料金所に向かって順行する経路と逆 走発生経路,さらに逆走発生経路を辿る運転者挙動をそれぞれ推定した. (Ⅰ)の過程に続く運転者挙動を推定した結果を図 7 に示す.ここで,NEXCO 西日本 の「よくあるご質問」のウェブページ 5)を見ると,間違えて IC に流入したまたは目的 地でない IC から流出した場合は, ① 出口係員に申し出るように推奨していること ② 出口係員に申し出ても転回して引き返すことができない可能性があること が掲載されている.これらの①と②を知っているか否かによって,B ランプ進入後の運 転者挙動が異なると考え, a. ①も②も両方知っている b. ①を知っているが②を知らない c. ①を知らない として赤色ボックスで分岐させた. a の場合はその後も分岐して,出口係員に申し出ても転回できないと考え,料金所を 出ずに引き返そうと判断した場合が,逆走発生に繋がると推定した.具体的には,内 プラザで転回できると判断し,内プラザで転回した後,降りてきたランプに戻ろうと するなどの判断を経て,B(D)ランプを逆走する過程と,内プラザ開口部から流入側 の車線へ行けると判断して,開口部で転回し流入側の車線へ進入する過程を推定した. ここで,内プラザ開口部を通過して料金所入口へ向かって逆走する過程も考えられる が,内プラザにおいて前方に料金所出口がある状況では発生する可能性が低いと判断 して,今回は検討しないこととした.b および c の場合の運転者挙動も同様に推定して

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険があるため,逆走行為と同様に扱っている. (Ⅱ)の過程は,B ランプ進入時に目的地でないと気づいているか否かが(Ⅰ)の過 程との相違点であるが,B ランプに進入し目的地でないと気づいた後は(Ⅰ)の過程に 続く運転者挙動と同様になる. (Ⅲ)の過程は,目的地を通過しているか否かが(Ⅱ)の過程との相違点であるが, B ランプに進入し目的地でないと気づいた後は(Ⅰ)の過程に続く運転者挙動と同様に なる. (2)本線から D ランプに進入する逆走発生過程 (1)と同様に,本線から D ランプに進入する過程と,それぞれに続く,料金所に向か って順行する経路と逆走発生経路,さらに逆走発生経路を辿る運転者挙動をそれぞれ 推定した.その結果は,本線から進入するランプの違いを除くと,(1)で推定した結 果とそれぞれ同様になった. 5.2 IC 流出時の逆走発生原因となる知識 ,挙動の推定 5.1 節で推定した,本線から B(D)ランプに進入する逆走発生過程をみると,図 8 に示すように運転者の知識を示す赤色ボックスで分岐後の(ⅰ),(ⅱ),(ⅲ)の部分が 同様になるとわかった.図 9 にこの部分を拡大して示す. 次に,図 9 を最終的な行動(内プラザで転回,開口部で転回,料金所前で停車)か ら遡って辿ることにより,逆走発生原因となる知識,挙動を推定した. その結果,内プラザで転回する原因は,内プラザで転回できるという判断にあると 推定した.またこの判断は,その手前の料金所を出ずに引き返そうとする判断により 誘発されるが,その判断の原因は a と c という目的地でない IC から流出した場合の対 応に関する知識にあると推定した.そして流出ランプに進入するそもそもの原因は, 目的地を通過してしまうことおよび目的地と勘違いする判断にあると推定した. 同様に,開口部で転回する原因を推定した結果,開口部から流入側へ行けるという 判断,および内プラザで転回する場合と同様に a と c という知識,目的地を通過して しまうことおよび目的地と勘違いする判断に原因があると推定した.さらに,料金所 前で停車する原因を推定した結果,内プラザで転回する場合と同様に c という知識, 目的地を通過してしまうことおよび目的地と勘違いする判断に原因があると推定した.

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図 8 B(D)ランプに進入する逆走発生過程 (ⅰ) ( ⅱ ) ( ⅲ )

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5.3 IC 流入時の逆走発生過程の推定 (1)料金所通過前の逆走発生過程 5.1(1)と同様の手順で,IC 流入時,料金所通過前の過程を推定した.管理者にヒ アリングした結果に基づき,最初の段階で,目的の IC に流入する場合と,道を間違え IC に流入してしまう場合を考えた.次に各場合について,料金所に向かって順行する 経路と逆走発生経路,さらに逆走発生経路を辿る運転者挙動をそれぞれ推定し,逆走 発生に至らない過程を除いた結果を図 10 に示す. 図 10 IC 流入時料金所通過前の逆走発生過程 (2)料金所通過後の逆走発生過程 5.3(1)と同様に,IC 流入時,料金所通過後の過程を推定した.目的の IC に流入す る場合を考え,料金所通過後の本線に向かって順行する経路と逆走発生経路,さらに 逆走発生経路を辿る運転者挙動をそれぞれ推定し,逆走発生に至らない過程を除いた 結果を図 11 に示す.

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5.4 IC 流入時の逆走発生原因となる知識 ,挙動の推定 5.2 節と同様に,料金所通過前の逆走発生過程(図 10)を最終的な行動(一般道路 から流出車線へ進入,流入車線順行中に車線変更,外プラザ開口部を通過,流入車線 で転回,外プラザ開口部で転回,料金所前で停車)から遡って辿ることにより,逆走 発生原因となる知識,挙動を推定した.その結果,流出車線を流入車線と勘違いする 判断,外プラザ開口部を通過できるという判断,流入車線・外プラザ開口部で転回で きるという判断,a と c という間違えて IC に流入した場合の対応に関する知識に原因 があると推定した. 同様に,料金所通過後の逆走発生過程(図 11)を最終的な行動(内プラザ開口部を 通過)から遡って辿ることにより,逆走発生原因となる知識,挙動を推定した結果, 内プラザ開口部を通過できるという判断に原因があると推定した. 5.5 逆走発生原因となる知識,挙動のまとめ 以上より推定した逆走発生原因となる知識,挙動を,それぞれが生じる地点などに より分類・整理した結果を表 7 に示す. 表 7 逆走発生原因となる知識,挙動 項目 逆走発生原因となる知識,挙動 本線 目的地を通過してしまう 目的地と勘違いする 内プラ ザ 内プラザで転回できると考える 流入車 線 流出車線を流入車線と勘違いする 開口部 内プラザ,外プラザの開口部を通過 できると考える 広報 出口係員に申し出るという対応を 知らない 申し出ても転回できない場合があ ると知っている

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第 6 章 逆走対策の提案

表 7 に示す逆走発生原因となる知識,挙動が生じる物的交通環境や運転者心理を考 察することで,逆走対策の提案を試みた.ここでは例として,本線上で目的地と勘違 いする,内プラザで転回できると考える,出口係員に申し出るという対応を知らない という知識,挙動についてそれぞれ考察した. (1)本線上で目的地と勘違いする原因と対策 舞鶴大江 IC は,IC 名称の文字数が 4 文字と多く,舞鶴西 IC(舞鶴若狭自動車道) という似た名称の IC が付近に位置している.このような状況では,出口案内標識に標 示される文字数が多いため,運転者は注意していない情報を見落とす 6)可能性がある. また,人間は利益より損失を大きく評価する性向を持つ 7)ため,運転者は目的地を通 過することによる時間や料金が余計にかかるという損失を避けようとすると考えられ る.以上より,運転者は目的地を通過するのを避けようとして,舞鶴のように認知度 の高い地名に注意がいき,似た名称の IC を目的地と勘違いしてしまうことが逆走発生 原因の一つであると考えられる. この対策として,付近に位置する似た名称の IC を判別しやすくする必要がある.宮 津天橋立 IC において,与謝天橋立 IC(京都縦貫自動車道)と勘違いして流出し逆走し た事例が報告されているが,平成 23 年に京都縦貫自動車道の本線脇に案内板(図 12) を設置後,平成 25 年 12 月現在まで同様の事例は報告されていない.よって,似た名 称の IC の位置関係を示す案内板を本線脇に設置することが有効な対策であると考えら れる.

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高速道路では当然のことであるが,内プラザに転回禁止を示す標示は無い.しかし, 逆走と気づかず内プラザで転回した事例があることから,運転者が図 13 に示すような B ランプと D ランプの合流部の道路形状を見て転回できると判断する可能性がある.運 転者心理に着目すると,運転中はリスクを取ることによる時間短縮などの利得が目立 ち,事故リスクが増加するなどの損失がわかりにくい 8)ことが指摘されている.図 9 に示した IC 流出時,内プラザで転回するまでの過程をみると,運転者は目的地でない と気づき,時間短縮を意識し 9),料金所へ行くことによる時間や料金が余計にかかると いう損失を避けようとする 7)と考えられる.以上より,内プラザにおいて転回禁止で あること,または転回行為の危険性を認識していないことが逆走発生原因の一つであ ると考えられる. この対策として,内プラザにおいて運転者に転回禁止を強く認識させる必要がある. 具体的には,内プラザで運転者に転回禁止を認識させる標示を設置すること,図 14 に 示すように B ランプと D ランプの合流部にラバーポールを設置し,その設置延長を長 くするなどして,転回禁止を認識させることが挙げられる. 図 13 B・D ランプ合流部(舞鶴大江 IC)

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図 14 ランプ合流部のラバーポール(大山崎 IC・JCT) 上述したように NEXCO 西日本の「よくあるご質問」のウェブページ 5)に,間違えて IC に流入した,または流出する IC を間違えた場合はどうすればいいのですかという質 問が掲載されていることから,このような場合にどう対応すべきか知らない運転者が 多数いる可能性がある.つまり,出口係員に申し出るという対応が運転者に周知され ていないことが逆走発生原因の一つであると考えられる. この対策として,間違えて IC に流入した,または目的地でない IC から流出した場 合は,出口係員に申し出るという対応を運転者に周知させる必要がある.具体的には, ウェブサイトやポスターなどで広報すること,流出する IC を間違えた運転者を出口係 員まで誘導する看板を,B ランプと D ランプの合流部や IC 名を標示した看板の付近な どの IC 流出時に認知されやすい箇所に設置することが挙げられる.他の推定した逆走 発生原因と,それに基づく対策は表 8 に示す.

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表 8 推定した逆走発生原因と対策 項目 逆走発生原因 対策 本線 行先地 名の情 報を取 得 できて いな い 行先地名の情報を取得しやすくする 目的地 を通過 するの を 避けよ うと して, 認知度 の高い 地 名に注 意が いき,似た名称の IC と勘違いする 付近に位置する似た 名称の IC と判 別しやすくする 内プラ ザ 転回禁 止,転 回の危 険 性を認 識し ていない 転回禁止を強く認識させる 流入車 線 流出車 線を対 向車線 だ と認識 して いない 流出車線を対向車線だと認識させる 開口部 開口部 が通過 禁止だ と 認識し てい ない 開口部を通過禁止だと認識させる 広報 出口係 員に申 し出る と いう対 応が 周知されていない 出口係員に申し出るという対応を周知 させる 出口係 員に申 し出る こ とによ る損 失を意識する ランプや料金所周辺での転回は危険で あると認識させる

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第 7 章 おわりに

本研究では,協議会に蓄積された逆走事案に関するデータを統計処理し,「時間帯: 9~15 時」,「場所:IC」,「運転者の年齢:70 歳以上」をそれぞれ逆走多発条件である と整理した.次に,これらの条件に基づき交通環境の調査を実施し,調査結果を統合 することで,IC 流入時および IC 流出時の逆走発生経路を推定した.さらに,推定した 逆走発生経路に,IC に到達するまでの過程を組み合わせ,逆走発生過程と定義した. そして,運転者心理と物的交通環境を考慮し,全ての逆走発生過程における運転者挙 動を段階的に考察することで,逆走発生原因となる知識,挙動を推定した.最後にそ れらの知識,挙動が生じる物的交通環境,運転者心理を考察することで,付近に位置 する似た名称の IC を判別しやすくすること,IC の内プラザで転回禁止を強く認識させ ること,出口係員に申し出るという対応を運転者に周知させることなど,逆走対策を 提案した. 今後の課題として,走行実験を実施し,高齢者と非高齢者の出口案内標識の視認, 判読能力の違いを調査するとともに,web アンケートなどを実施し,流出する IC を間 違えた場合の対応など,高速道路利用に関するリテラシーを調査することで,本研究 で推定した逆走発生原因や対策を検証する必要がある. 謝辞 本研究を行うにあたり,NEXCO 西日本京都高速道路事務所より逆走事案に関するデー タをご提供頂いた.また,京都府道路公社管理事務所,および NEXCO 西日本福知山高 速道路事務所には IC の現地調査にご協力頂いた.ここに記して謝意を表する. また,本研究は,平成 26 年度公益財団法人タカタ財団の研究助成を受けて行われた. 記して謝意を表する. 補注 *1 交通管理隊,高速道路料金所係員,一般利用者から逆走車発見の通報があったもの. *2 平成 19 年 7 月から平成 25 年 12 月までに当該 IC で発生した逆走事案件数. *3 IC 料金所より高速道路本線側の広場. *4 上り線の本線減速車線から料金所までの道路. *5 下り線の本線減速車線から料金所までの道路. *6 IC 料金所より一般道路側の広場.

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参考文献 1) 野口和也,松本晃一:高速道路における逆走車・立入者の現状と対策,交通科学, Vol.43,No.2,pp.57-60,2013. 2) 松本晃一:立入者・逆走車を減らせ!「京都府域高速 道路等立入者・逆走車防止対策連絡協議会」の取組み, 高速道路と自動車,51(1),pp.49-53,2008. 3) 警察庁交通局,運転免許統計, http://www.npa.go.jp/toukei/menkyo/index.htm,2012.(アクセス:2014 年 2 月 23 日) 4) 長山泰久:人間と交通社会,幻想社,pp.337-340,1989. 5) 西日本高速道路株式会社:よくあるご質問,http://www.w-nexco.co.jp/faq/11/#01. (アクセス:2014 年 2 月 23 日) 6) 河原純一郎:道路交通場面における注意範囲の自己認知に関する発達的研究,日産 科学振興財団研究報告書,2006. 7) 友野典男:行動経済学の最近の進展, https://m-repo.lib.meiji.ac.jp/dspace/bitstream/10291/12376/1/tankidaigaku kiyo_66_381.pdf.(アクセス:2014 年 2 月 23 日) 8)蓮花一己,向井希宏:交通心理学,放送大学教育振興会,p.110,2012. 9) 3 月の安全運転のポイント,安全運転のポイント, http://daikai.net/drive/0403.html.(アクセス:2014 年 2 月 23 日)

表 2  時間帯別逆走事案件数  時間帯  件数 構成比 率  0~3 時  34  8.5  3~6 時  30  7.5  6~9 時  34  8.5  9~12 時  95  23.9  12~15 時  73  18.3  15~18 時  51  12.8  18~21 時  36  9.0  21~24 時  45  11.3  合計  398  100  平均  49.8  12.5  逆走者の年代の項目では表 3 に示す通り,同一年代の逆走者数の構成比率と運転免 許保有者数(平成 24 年
表 5  逆走者の年代と時間帯のクロス表      年 代  時間帯  70 歳未満 構 成 比率  70 歳以上  構 成 比率  有意差  0 ~ 3 時  2  4.4  3  9.1  なし  3 ~ 6 時  2  4.4  1  3.0  なし  6 ~ 9 時  4  8.9  1  3.0  なし  9 ~ 12 時  17  37.8  14  42.4  なし  12 ~ 15 時  7  15.6  8  24.2  なし  15 ~ 18 時  9  20.0  5  15.2  な
図 3  運転者が確保された事例における走行経路  (舞鶴大江 IC)
表 6  IC 部の逆走発生経路 経路 1(順行)  経路 2(逆走)  IC 流 出 本線から B(D)ランプ進入  内プラザで転回し B(D)ランプを逆走 内プラザ開口部を通過し   入口へ向かって逆走 内プラザ開口部で転回し   流入ランプを順 行  IC 流 入 一般道路を順行  IC の流出車線へ進入し逆走一般道路からICの 流 入車線へ進入  流出車線へ車線変更し逆走 料金所入口を通過し,   内プラザ開口部 から流出   ランプへ進入し逆走 図 5  内プラザにある開口部(舞鶴大江 IC)
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参照

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