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棚卸資産原価測定への小論

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Academic year: 2021

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(1)棚卸資産原価測定への小論 毛 1.. 序文. 2. 3.. 商品勘定の分析 ビランツ ・ シェ ー マにおける商品勘定. 4. 5.. 商品勘定の分割. 7. 8.. 棚卸商品の質的変化と会計測定 結論. 利. 敏. 彦. 棚卸商品の量と売上収益への貢献 6. マッチング考. 1.. 序. 文. 今日, 会計上の配分問題は次の三つに分けることができるであろう。 その 一つは結合原価(joint cost)の配分問題であり, その2は振替価格(trans­ fer pricing)の配分問題であり, その3は期間関連費用の配分問題である。 このうち, 1は原価計算, 2は管理会計に関わるのに対し, 3は財務会計に 関わる領域である。ここでは3の配分問題をとりあげることにしたい。 ところで, 期間関連費用の配分問題は固定資産原価配分や棚卸資産原価配 分として, これまで数多く文献的に論じられてきた事柄である。 それ故, 筆 者がこの問題をあえて取り上げ, 問題とする理由を明確にしておかねばなる まい。もとより財務会計は外部報告会計ともいわれ, 外部者への会計情報の 伝達を課題とする会計である。 情報は不確実性の減少という意味をもつもの である。従って, 会計情報ははっきりした内容を示さねばならぬであろう。 -57 (243)-.

(2) しかるに, 原価配分によって表現される会計数値は著しくあいまいである。 例えば, 減価償却としての直線法や逓減法にしても; その選択は恣意的であ り, それは単に会計人の期待の反映にすぎないとさえ指摘されるのである。 これまで数多く論じられながら, このような視点から必ずしも分析がなされ たわけではないのである。 あえて 原価配分を取り上げるゆえんも ここにあ る。 本稿ではとくに棚卸資産原価配分を考えてみたい。 棚卸資産原価配分は固定資産の それとともに原価配分の重要な問題である ことは疑いないであろう。 両者は財の性質を異にするが,原価配分としてみ ればいずれも当該期間費用を正しく決定するところに会計の中心問題がある ことには変りはない。 ところで, これまで棚卸資産における原価配分は, 主として配分方法や そ の選択問題(Fifo, Lifo, 平均法など) との関わりで論じられてきた。 そし て, それらの方法はどれをとってみても, 価格変動下での払出された財の原 価をどう決めるかという配当方法に関わっているのである。 このように, 棚 卸資産会計は配分方法やその選択問題に力点がおかれているが, 別稿で示し たように, 棚卸資産会計を動的論の立場からみてみると, もとより問題とさ れたのは期末棚卸の本質に関わる問題であり, それを販売と同 一にみなすか (つまり売却価格による評価), それとも取得した商品のうち払出されなかっ た部分とみなすか(つまり,. 原価による評価) ということにあった。 従っ. て, 今日, 論じられるようにいつの時点の原価を選ぶかということは問題と されなかったのである。 より大事なのは, 販売財としての商品特有の会計問 題であった。 動的論の立場から棚卸資産会計を論ずるに際し, 従来, 専ら恒常在高法や 拘束在高法との関わりで論じられてきた。実際, 動的論では商品の問題は価 格変動下における会計問題として扱われ, それはそのまま, 恒常在高法, 拘 束在高法に結びついて示されて いるのであるから,. 無理からぬことであっ. た。そして動的論における恒常在高法から拘束在高法への展開, その理由さ. -58 (244)-.

(3) らにそれらの方法の意図したところまたその会計処 理,計算例については既 に多くの研究がなされてきた。 しかしながら,本稿においては恒常在高法や拘束在高法にあまりとらわれ ることな<, 動的論では商品というものをどのように把握したかを考えてみ たい。 より具体的に言えば,(1)その他の財 (例えば固定資産)と対比した時 . 商品はどのような特質をもつか(収入, 支出上の解釈)。. (2)期末の 棚卸商品. の量は. 会計測定上. いかなる性質としてとらえられるか(量的側面)。 商品の種類や質的変化は どう考慮されるか(質的側面)。. (3). (4)棚卸資産会計の. 根本は,当期の売上収益に対応した費用の計算であるといわれるが,厳密に 言って対応とはどういうことか(対応概念の再考)。 以上の点を通して. 棚卸資産費用が何を表現するか,どのようなメッセ ー ジを伝えようとするかを明らかにしようと思う。 それによって,動的論がそ れ以前のあるいはその他の諸論といかに異なるかが浮彫になるであろうし, その特質も明らかとなるであろう。. 2.. 商品勘定の分析. 周知のように,動的論は会計の計算構造を収入, 支出計算によって解釈し た。 貸借対照表は,当期の収益,費用にならなかった収入,支出を収容する 場として, 次期の損益計算への橋渡し機能として説明された。 とすれば,当 期に払出された商品は期間費用として計上されねばならぬし,期末の残高商 品は貸借対照表項目として収容されて,ともに. 収入,支出の観点から解釈 されねばなるまい。 とはいえ,そのためには動的論が商品勘定,なかでも期 末残高をどう理解していたかをあらかじめ知る必要がある。 そこで,既に別 稿でも述べたことの繰返しになるが,動的論における商品勘定の解釈はそれ 以前の,あるいは当時の一般の解釈に対し,どの点に違いがあり,特質があ ったかを示すことから始めることにしたい。. -59 (245)-.

(4) 動的論が否認したのは期末商品に対する次のような考え方であった。期末 棚卸商品に対しては既に多くの注文があるのであるから, 商品は売却された も同然であるから, 従って 売却価格での評価が認められるで あろう。 つ ま り, 期末残高としての 商品といえども 既に 注文を受けて いるのであれば売 上とみなしてよく, 故に 売却価格での評価が認められるという 考え方であ る (1) 。この考え方を商品勘定を通して解釈するならば, 期末残高が売上高と 同様にその勘定の貸方に記載され, 両者が全く等質であればこそそうなるの である。 この関係を商品勘定で示すと次の通りとなるだろう。 商 品 勘 定 ' !購 入(原価) :. :. : 販売 1( : i 期末残 (売価) !. ..................................... 図2-1. し売上と同様に解釈される. 残っている商品は販売されたとみなされるのであるから, 売上と同様に商 品勘定の貸方に記入されると解釈されるのである。それ故にまた, それは売 却価値で評価されるという考えを導くのである。 これに対し,. 動的論は 次のように考えた。 商品は 販売されたか否 かのい. ずれかであって, 中間に属することはない。販売されたなら, それと交換に 貨幣ないし債権が生じる。販売されていない商品は, たとえ販売先が確定し ていてもそれは棚卸商品である。 それは購入した商品(取得原価)の残であ るから, 取得原価によって評価されるのは当然である。 (1) 以下は既に別稿で述ぺたことの再述べである。 なお次の文献を参照。 Schmalen­ bach, E., Zuschrift zu Bilanzierung von Waren zum Verhaufspreise, ZfhF 1910 /11, S. 108. Schmalenbach, E., Bilanzierung von Waren zum Verhaufspreise, ZfhF 1909/10, S. 158-159. Schmalenbach, E,. Zuschrift zu Bilanzierung von Waren zum Verhaufspreise, ZfhF 1909/10, S. 564.. -60 (246). 一.

(5) これを商品勘定の中で示せば次のようになる。 商 品 勘 定. [購. 売. 販. 入(+) :---1------------------------------, 期 末残(-) i I----------------·' しマイナスの賭入としてとらえ る (取得原価) 図2-2. 動的論の考えでは前述とは反対に,期末残が貸方に記載されるのは,それ が収入に対する減少(マイナス) を表現するので反対側に記入されているに すぎない。 そしてそれ故にこそ,その評価は取得原価なのである (2) 。 動的論 が「商品勘定は直接的に損益計算に貢献する勘定である。 貸方記入される期 末の在高は費用の減額となり,次期の始めの期首の在高はその増額である。 販売資産の全部の貯蔵が年度始には費用額に加算され, 年度末には費用から 減算される。」というのも, このような事実の具体的表明にほかならない。 そして, 実は,動的論が期末残高,ひいては商品勘定をこのように考えた からこそ,商品の引渡をもって売上とする実現原則がはっきりと確立されえ たのである。 しかし, 期末棚卸を取得原価で評価するのは,それを他の企業へ原価で売 渡したとの解釈が可能かもしれない。 あるいは,同 一企業において当該期間 から次期(の経営者) へ商品を原価で売渡したと想定することもできる (4) 。 (2) この点は上記の文献とともに次を参照したい。飯野利夫著「資金的損益貸借対照 表への軌跡」昭和54年,125頁-127頁。 (3) Schmalenbach, E., Dynamische Bilanz, 4. Aufl., Leipzig 1926, S. 197. (4) この考え方の可能性は例えばAlbach, H., Neue Entwicklungstendenzen in der Teilwertlehre. Steuerberaten-Jahrbach 1965/66 Koln 1966, S. 315. に述べら れる。 -61. (247)-.

(6) この考え方に立てば,期末棚卸が商品勘定の貸方に記載されているのは,購 入額のマイナスだからでなく,売上と同質であるからということになる。 この関係を商品勘定で示すと次のようになる。 商 品 勘 定 .--------------------------: : } ’ i 購 入. ,. ________________―← ← -------. : ! 宰 上 : .)L., ’. ; 期末棚卸(原価) : :______—ーし―_________________: 原価で売 る と想 定してい る から貸 方記入されてい る と解釈され る 図2 - 3. :,___________________________:!. このように,期末棚卸については,それが商品勘定の貸方に記載されてい ることの解釈は,売却価格でそれを評価するにせよ,取得原価で評価するに せよ,売上と同等に解釈しえたのである。売渡された商品や期末棚卸も同 一 とみる限り,厳密な意味での原価配分は成立しえない。原価配分は原価を当 期費用と次期以降の費用に分割することだからである。動的論にとって,棚 卸資産が原価配分の問頴として成立するためには,さらにより積極的な要因 が必要なのである。それならば商品勘定の 同じ貸方側にありながら,販売と は根本的に異なり,商品賭入に対するマイナスとして期末棚卸を考えうる要 件は何であろうか。それはまさに売上のもつ意味にほかならない。期末棚卸 を売上と同 一 とみなすことに対し,次のような疑問が投げられる。期末棚卸 商品の場合,現に手許にある商品である。これに対し,販売された商品の場 合,既に払出されて手許にない。このように双方は全く異なる会計現象であ る。それなのにどうして両者を同視できようか。これが提示される根本問題 であった。要するに,この問題の本質は期末棚卸として手許にある商品を売 上とみなすことが,いかに不合理かということである。商品勘定の貸方のう ち,売渡され既に手許にない商品,これが売上である。そして.それは売価 で記載される。ここに実現主義が確立する。. -62 (248)-.

(7) 実現主義は, まさに, 商品の引渡をもって売上収益を計上し, それなしに は収益を計上しない基準である。かくて, 動的論は期末棚卸の会計上の特質 を明確にしたが, そのことはまた売上収益の計上基礎としての実現主義を確 立したと考えることができる。手許にある商品(期末棚卸) も販売された商 品(売上) も, 商品勘定の貸方側にあるから同質だと考える立場にあれば実 現主義は決して生まれなかったであろう。 このように売上の意味が明らかになると, 同じく商品勘定の貸方側にあり ながらも期末棚卸は全く異質であることがはっきりする。それは手許にある 商品である。しかるに貸方に記載されているのは, 売上と同質だからではな く, それは借方側に対し反対の意味をもつからにほかならない。かくて, そ れは商品購入に対するマイナスの意味が付与されることになる。それの売上 との関わりが全く否認されると同時に, 期末評価についての原価主義が確立 する。商品勘定の借方の購入額は, 払出額と残高に分割されねばならないと いう考えを生むことになる。実はここに, 商品についても, 支出を当期費用 (払出) と未費用(次期繰越) に分割するという原価配分の思考が成立する のである。 ともか<. 期末棚卸を取得原価で測定すること自体が重要な意味をもちえ たのである。動的論にとっては. 原価でありさえすれば. その原価が期首時 点に近い原価なのか, 期末か, あるいは期中の年平均原価なのかという問題 はいわばどうでもよく, 本質的なことはなりえなかったのである。. 3.. ピランツ. ・. シェーマにおける商品勘定. 動的論の立場からすると,商品の会計上の問題は固定資産とともに原価配 分にある。先ず財への支出(原価) があり, それが期末に当期費用を未費用 に分割されるという 意味においては双方は 原価の配分が 中心問題に違いな い。けれども, 前節にみたように, 商品の場合その勘定について考慮を要す. -63 (249)-.

(8) る問題が存在するのである。 それは少なくとも, 固定資産のように原価をい かに使用期間に配分するという問題にとどまるものではない。 棚卸資産費用 の計算は期末棚卸から費用を計算するという意味で経験的 (posteori) であ るのに対し, 固定資産は耐用年数を見積ってあらかじめ費用を計算するとい う意味で先験的 (apriori) である, という点にのみ違いをみるのは十分でな いであろう。 以上のことを想起しつつ, 貸借対照表において商品がどう表現されたか, そして, 原材料や設備のそれとどのように違いがあるのか比較することにし よう。 周知のように, 動的論は貸借対照表を収入支出計算と期間損益計算の 食違いを調整する場と考えた。 当期と次期の損益計算を結びつける輪として の機能が付与された。 このことを知った上で, 収入支出計算と商品との関係 をみてみる。 期中に商品が 取得されるとそれは 支出であるが, 購入した商 品の一部が期間末に期末棚卸として残ると, この商品は次のように理解され る. (5). 。. 貸 借対照 表 支出→. I. 支 出 ・ 未収入. I. (商 品) 図3-1 ここで大事なことは, 支出, 未収入という表現から知られるように, それ が収入支出計算と期間損益計算の食違いの結果そこに生じた項目ではないと 解されていることである。 つまり,「未決項目」では ない。 そうではなく商 品は支出が将来収入として回収される項目であり, 収入と支出のタイムラグ により生ずる項目である。 即ち,損益計算書には全く関係しない (6) 。 同じよ うに, 支出, 未収入の群に属するのはほかに貸付金, 有価証券があり, 商品 (5) Schmalenbach, Dynamische Bilanz. 4. Aufl., S. 120. を参照。 (6) Schmalenbach, E., a. a. 0. S. 117f.. -64. (250)-.

(9) と同類と理解されている。 商品の取得は支出である。 その取得は販売を意図 ... する。 しかし,未だ手許に商品がある限りにおいてそれは未収入である。 故 に,期末商品残高は支出•未収入と表現される。 この点で,後述の設備や原 材料とは根本的な解釈の違いを生じている。 このように,動的論ではもとも と商品に対しては独自な位置が付与されていたことがわかる。 これに対して同じ棚卸資産に属する原材料の場合ビランツ. ・. シェ ー マは商. 品とは著しく異なる。そして,それは設備と同じ群に属するのである。 原材 料や設備も当初は取得のために支出がなされる。 そしてこの支出は当期費用 (材料, 減価償却) と 残高(材料の 残高, 設備の簿価) に分解される C7) 0 貸借対照表. → 支出• 未費用 材料の残高 ( 設備の簿価) 支出 損 益計算書 →当期費用.当期の 支出. 図3-2 この場合,支出は損益計算書に帰属する部分と貸借対照表に収容される部 分に分解されるが,それは,原材料や設備に対する支出は期間費用との間に 食違いが生じるものと解されているからである。 貸借対照表はまさにそれを 調整する場として,そこに収容されるのは支出のうち当期費用にならなかっ た原材料や設備の残高である。 つまりそれらは「未決項目」である。 前述の 商品の場合,取得の支出は損益計算書とは全く関係なく,そのまま貸借対照 表に将来の収入(未収入) として 収容された。 この著しい 違いに着目した (7) Schmalenbach, E., a. a. 0., S. 115.. -65. (251)-.

(10) い。 以上を要するに, ビランツ. ・. シェ ー マ上, 商品の群と原材料, 設備の群と. は本質的に異なる。 第1 に, 商品は貸付金や有価証券と同群におかれている のをみても明らかなように, 損益計算書と関係のない項目, つまりは, 支出 と期間費用の食い違いを調整する項目とはみなされていないことである。 と ころが原材料の残や設備の簿価として貸借対照表に計上されていると理解さ れる。 第2は, 原材料や設備は単に将来費用化していく財 (未費用) にすぎ ないと理解されているのに対し, 商品は販売を目的とする財であり将来収入 をもたらすものとして (未収入), 収益への貢献が期待されていることであ る。 設備はいわば使用のために取得される財である。 売却, 処分されること があっても, それ自体が目的とはならない。 これに対し, 商品は販売(給付) の対象である。 販売そのものが会計上重要なのである (8) 。 このようにみてくると, 原材料にしても設備も商品もともに原価配分の問 題として一括して論じることには注意を要することがわかる。 上記の限りに おいては 商品の会計は その取得の支出は 分解されず 貸借対照表にのみ関係 し, 損益計算書には関係しないのであるから, 原価配分の問題ではないとい えるのである。 ところで, 商品がこのように支出が将来の収入により回収さ れる一 過程として理解されるならば, もはやそこには原価配分の問題は存在 しない。 それは, 期間損益計算とは何の関わりもないことになる。 しかし, 動的論はその後期において, ビランツ 品をも削除した。 そして, ビランツ. ・. ・. シェ ー マの支出, 未収入の項から商. シェ ー マのどこにも商品の該当個所が. ない (9) 。 このことは, 商品が単に支出, 未収入としては解釈しえぬことを意 味し, また他のいかなる項目にもまして説くのが困難であることを示唆する のである。 そこでひとまず商品についていかなる解釈が可能か, 推定するよ りほかはないであろう。 (8) Schmalenbach, E., a. a. 0., S. 197.. (9) この間の事情は谷端長著「動的会計論」増補版, 昭和43年, 84頁参照。 -66 C 252)-.

(11) 動的論 によると, 商品や原材料を掛で購入したとすると, 購入されたそれ ら の財は全て期間中 に消 費 さ れたものと仮定す る 。 そこで, 買掛金 に対す る ビランツ ツ. ・. シェ ー マ は 費用, 未支出となるのである。 動的論 におけるビラ ン. シ ェ ー マ の 作成 において, こうした仮定や前提をおき論議すること は少. ・. なくない。 このことを 知った上で, 商品の 解釈を試みると,. それは支出 に. よって取得され 期間中 に 消費されなかった 在高である。 故 に借方記帳され る (10) 。 商品 は 掛での購入の場合も支 出で得たと仮定され, しかもなお期末に 未消費として残った のであれば, 未費用である。 かくて, 棚卸商品は 支出 , 未費用として解釈されうるのではないだろうか。 図で示せば, 次のようにな る。 貸 借対照 表 → 支出 • 未費用 (棚卸商品) 支出 損 益計算書 →当期費用 • 当 期支出 (商品の 払出 高) 図3 - 3 このようにみてくると, 商品は支出, 未費用と解され, 結果的には設備と 同じビランツ. ・. シ ェ ー マ となることがわかるであろう。. 4.. 商品勘定 の 分 割. 以上述べたところ によって, 商品勘定の構造が(1)商品の 受入とその残高, UO) Schmalenbach, E., Dynamische Bilanz. 13. Aufl., Kolo und Opladen 1962,. s. 70.. -67. ( 253 )-.

(12) (2)商品の 販売から成ることが明 ら かにされた。 その 際,重要な役割を果した の は期末棚卸 の 本質の 解明で あ る。 商品が手許にあるかないか, 引渡され たか否かということが,期末残高とするか売上とするかの分割の契機で あっ た。 まさし < . これが原価配分への出発点 と なったのである。 しかし,それは あ く までも商品という会計現象の記録を通して説かれる の で ある。 そこで次の問題は ,商品勘定の構造を会計測定の立場から明らかに す る ことである。 繰返し述べるように, 動的論 は取引を収入支出で測定し,表現する。 商品 をめ ぐ る取引 についても例外で はないで あ ろう。 しか し,商品の 場合,受入. 販売,およびその残を記録せねばならず,そうした異質の取引 活動を商品勘. .. . . . . . .. . .. . .. . . . . . . . . . . . . . . .. .... 定が全て収容するという点で 他の 勘定と性質を 異にする。「商品勘定は,柵. . . . ............ 方で は受入れられた商品が購入価格で記 帳 さ れ,貸方で は 払 出 さ れた商品が 売価で記帳 さ れること に よ って,通常,混合勘定 と して用いられる。」(11) つ まり, 商品勘定で は受入 (取得原価) と払出 (売却価格) が異なる尺度で 測定されること <12) ' 従って また借方と貸方が異なる 測定尺度で対応するこ. と (13) , これが商品勘定が混合勘定といわれる ゆ え んである。 会計測定の立 場からいえば借入の受入は取得原価であるから支出で測定され,貸方の売上 は収入で測定されるわけである。 商品勘定の貸借が収入と支出という二つの 異なる測定尺度でとらえられることに問題 の中心が あった。 商品勘定を混合勘定という時,一般に商品勘定には資産勘定と損益勘定が 混在するという意味でいわれている。 しかし,ここでは ,商品勘定の貸 借が 支出と収入という二つ の測定尺度が混在する事実をさして,混合勘定という のである。 そこで,商品勘定について,同 一 の測定尺度をもつ項目群に勘定 を分割することが必要になるで あろう。 これが動的論の 立場からする商品勘. 皿 Schmalenbach, E., Das Warenkonto als nicht gemirschtes Konto. ZfhF 1908 /09, s. 540. (W ebenda. Ul Schrnalenbach, E., Die doppelte Buchfiihrung, Koln/Opladen 1950, S. 31 . -68. ( 254 )-.

(13) 定の分割である 。この場合, 商品勘定の分割が会計測定の表現か ら 主張され る ことに着目すべきであろう。 上記の考え方か ら して, 商 品勘定は. 原価 (支出によ る 測定) と売価(収入によ る 測定) との二つに分割す る ほかはな い。その方法として二つが提示されてい る (14) 。 (図 4 - 1 および図 4 -2 ) この二つの方法はと も に, 商品勘定 I では原価つまり支出によ る 評価, 商 品 勘定 I1 では売価つまり収入によ る 評価の項目群にな る ように分割す る 。第1 の方法は図 I に示され る 。ここでは商品勘定 I に原価 (支出) で 測定され る 項目が集め ら れ る 。即ち借方に前年度繰越額と当年度受入額が集め ら れ, 貸 方には期末棚卸高であ る 。そして, その差額は商品勘定 I1 に振替え ら れ る 。 商品勘定 I1 の貸方には売価 (収入) によ る 測定額であ る 売上高が集め ら れ, 商品勘定 I か ら の振替額と対応され る 。 このように, 動的論の立場に立てば, 商 品勘定は 2 分割であ る ことが了解 され る であろう。それは, 収入によ る 評価と支出によ る 評価という会計測 定 の観点に理論的根拠を も ってい る 。これには, 商 品勘定の貸方ことに期末残 高に対す る 先の解釈が果した役割 も 決して小さくないように思われ る 。とい うのは, も し も , 期末在高が売上と 同じように一括して理解され る のであれ ば, それは単に借方と貸方項目の分割にと ど まったであろう。私見では, 動 的論の重要な意義は商品勘定の分割を会計測定の立場か ら 根拠づけたことに ある。. 5.. 棚卸商品 の 量 と 売上収益 へ の 貢 献. 周 知のように動的論では. 価格変動下におけ る 商品評価の方法として恒常 在高法, また拘束在高法が提示された。それにつ いては既にこれまで多くの 研究がなされてきたが. 本節では方法その も のではなく, むしろそうした方 閥 Schmalenbach, E., Das Warenkonto als nicht gemischtes Konto, a. a. 0., S. 5 4lff, -69. ( 255 ) -.

(14) 商 品 勘 定 期首在高. (支出評価). 売. 上. (収入評価). 入. (支出評価). 期末在高. (支出 評価). 仕. 商品勘定. 期首在高 仕. 期末在高. 売. [ 商品勘定 I. 商 品 勘 定 Il. 入. 〕. II. 上. ). 損益勘定. 図4- 1 第 2 の方法は図 II に示 さ れる。 商品勘定 (支出評価). 売. 上. (収入評価). (支出評価). 期末在高. (支出評価). 商品勘定 I. . .一. 、.. '. 商 品 勘 定 II. 商品勘定 II. 売. ]. 上. }. 巨. [ 商品勘定II. 三. 損益勘定. 図4-2. -70. (256 )-.

(15) 法の根定にひそむ商品の会計を検討することにしたい。 さて, 棚卸資産原価を配分するという場合, 原価を分割する基礎にあ る 考 え方は何であろうか。売上収益は当期の商品の払出の結果,稼得されるもの であるの に対し, 棚卸商品はそれと直接関係 しない。そこには, 意識するに せよ, しないにせよ, 暗黙に売上収益への貢献額を費用として計上するとい う考え方があると思われる。しかし,本節で問題とするのは棚卸商品 は売上 収益への貢献がないと考えることは妥当かということなのである。それは, 棚卸資産原価の配分は,売上収益に貢献した分を費用として計上することか という, 原価配分そのものへの問である。 棚 卸商品の量は会計上どのように作用するのだろうか。動的論によると, そもそも商品を 買入れるのは 取揃え ら れた在庫を 維持 し . それに よ っ て 買 手に貢献 (Dienst) するこ と にあるという (15) 。 つまり,. 商品の買入は給付. (売上) に貢献するのである。 しかし商品の買入は.また棚卸商品を取揃え るためにある。 それは単に当期の受入高の残を意味するのではない。 動的論では期末商品の量がもつ会計上の意味は, 前年度か ら 当該年度に商 品を引渡すことによって, 前期と当期を結びつけることにある。つまり前期 は決算に際し商品の在高なくしては成り立ちえなかったし, 当該年度もそれ なしには経営を維持しえなかったというわけである (16) 。 期間か ら 期間へと 引き継がれ, それなしには経営が成立しえないとされる商品の在高量とは具 体的にいかなる量であろうか。そこに恒常在高法が前提とされてはいるが,. . . . . . . . . . . . . . . . .. 「 … …決 し て 過度 に下廻 り え な い確定的な在高の存在が仮定される。 」(17) (傍 点筆者) 当年度の活動は前年度に依存し, また当年度の活動は次年度に作用 するというのが, 商品の量に対する動的考え方であった。そして ,こうした 相互依存, 相互作用の会計思考が恒常在高法に反映されているのである。と U5l Schmalenbach, E., Grundlagen dynamischer Bilanzlehre, ZfhF 1 919, S. 90 . US) ebenda. U'{) Schmalenbach, E., a. a. 0., S. 91 .. -71. C 257 )-.

(16) もかく, 商品在高量は経営活動をす る の に と れ以上 「下廻 り えな い 量」 と さ. . . . .. ・. れ た ので あ る 。 そ の 後, 恒常在高は, ` 「正常在高」 と さ れ る (18)。 しか し , こ の正常在高の 考え方は さ らに展開す る 。 と い う の は正常在高とい っ て も そ れ は全 く 恣意的な 判断によら ざ る をえないからであ る 。 ' そこで 一 定の 「基準 量」 (N'orm) を設定す る に到る ので あ る (19》 。. (拘束在高法) そ し て, . そ の. 基準量 とは前年度末の 在高量であ る 。 さ ら に, 恒常在高と は 経営 に必要な 「最少量」 と して考え ら れ る ようにな る (20) 0 そ し て, 最終的には, 正常在高量でも, 最小量でもなく, 適時な補充な し には市場に出すわけにはいかない貯蔵であ る (21) と され る 。 こ う し てみてく る と, 商品在高を量的側面か ら み る と, 恒常在高は下廻 り えない在高一→ 正常在高_最小量 ー→補充量へ と変容 してお り , ま た前年 度の基準量とす る 考え方 (拘束在高) へと展開してい る ことが わ か る'(22.> 。 こ れ ら は, 棚卸計算法 と し てみれ ば恒常在高法や拘束在高法 にす ぎ な い 。 しか 9. し , 商品に対する あ る 考え方がこれ ら の方法に反映 し てい る と考えられぬで あろうか。 そ の結果, 量 についてもい く つかの考 え方が存す る ので は ないだ ろうか。 動的論では こ の よう に在庫につ い て, 様 々 な考え方が示さ れ た。 下廻 り え ぬ在高, 甚準量, 最少量等であ る。 在庫についてこのよ う ない く つかの量の 側面が示 さ れ る が, そ こ にはむろ ん 政策的な意味が あ ろ う。 しか し , それは 損益計算にいかな る 意味をもつ だ ろ う か。 それは, 売上 と 商品棚卸が ま ざ に 相 互依存関係にあ る と いうことであ る 。 ’ 我 々 は , 第二節で, 両 者の違いをこ そ指摘し た。 し か し , こ こでは; む し ろ , 相 互作用 を力説 しな く てはならな U8) Schmalenbach, E., Dynamische Bilanz 4, . Aufl., a. a. 0., S. 209. U!l Schmalenbach. E., Dynamische Bilanz. 7. Aufl., Leipzig 1939, S. 210. 凶 Schmalenbach, E., Dynamische Bilanz 8. Aufl.. S. 1 70 . 伽 •· Schmalenbach, E., 巧namische Bil印z 1 3 . Aufl;, S. 202·. . 四 以上の事実は, 次の文献で 指摘されてい る 。 Peeckel, · A., Scheingewinn und Eisernen Bestand. Berlin 1970, S. 3 4f. .. -72 、 、( 2 58:) -.

(17) い。 そ し て , この点に, 棚卸商品をめ ぐ る会計問題の難しさがあ る のである。 例えば,. 棚卸商品の 在高を (I),. 今期の仕入を (P), 売上を CS) と しよ. う。 前述のように, その期末在高は次期 へ 引 継がれていくこと によって, 次 期の売上に貢献 しよう。 しかし, いっそう大事なことは, 当該期間中にも, 棚卸商品を保有することによって, 次期の売上に貢献することである。 り, 期中の商品の在高が (I) 個ある こ とによって, 今期の売上. つま. Cs) を確保す. るのである。 かくて, 棚卸商品の在庫は 当 期の 売上収益に 貢献すると同時 に, 次期にも貢献するという相 互作用をも つ わけである (23) この関係を図で示すと次のようになる。 商 品 勘 定 ( P )<t=: : 『). 図 5- 1 棚卸商品の意義はこのように前期から後期への引 渡によって, 経営活動を 継続させるということもあるが期末棚卸の主軸は必要な在庫(期中を通 じて の) にある。 販売との関わりでみると, 実はそう した貯蔵があってはじめて 販売活動を順調に 行うことができるという意味を 指摘せねばなるまい (24) つまり, 貯蔵というのは, 販売活動の必要性があり, そのためにこそ, 最少 藍, 基準量の考え方が 動的論の中で 示されたと 考えるべきでは ないだろう か。 かくて, 期末棚卸の本質は, 実は, 販売への貢献にあるのである。 棚卸 商品はビラン ツ. ・. シ ェ ー マにおいて, 支出 • 未収入と し て表現され た 。 それ. (Zl) この問題は, 棚卸資産原価が なぜ配分される かを考え る 時に看過しえ ぬ重要な 問 題と思われる。 中 野勲稿 「原価配分の意味分析」 国民経済雑誌第 l46 巻 第 4 号, 42 頁, また, Thomas, A. L., Arbitrary and Incorrigible Allocations. A comment. The Accounting Review 1978, pp. 263-269 . (24) Schmalenbach, E., Dynarnische Bilanz 1 3 . Aufl., S. 202 .. -73 C 259 )-.

(18) は, 商品の在高が単に購入 し た商品のう ち の 消費量 の残と し てみられるので 要するに, 動的論にとって期末棚卸高というのは, 単に期末に商品が残っ たということを意味するのではなく, 期間中を通じて, あ り うぺ き 貯蔵であ り , それが期間末になって棚卸と し てある量なのである。このことを看過 し てはなるまい。当期に お け る商品の 払 出 量が売上に貢献 し ているの は言うま でもない。 し か し , 棚卸商品もまた売上に貢献するというのが動的論の確信 ではなかっただろうか。. 6.. マ ッ チ ン グ考. これまでの論述から, 期末棚卸高は商品勘定の 貸方にあ り ながら, 商品の 販売たる売上とは全く区分されることが示された。ここで大事なことは二つ ある。その 一 つは, 商品勘定の分析によ り 棚卸資産においては原価主義また 原価配分の確立, また売上については商品の販売という実現主義 の確立に結 び ついたことである。それ故に, 棚卸資産に お け る原価評価と販売と し て の 実現とは不可分な関係に おいて論じられねばならぬというのが上記に明らか に し得た事実である。その 二は, 売上への 貢献という観点からすると, 払 出 された商品 (棚卸費用)が販売へ貢献するのは当然であると し ても, 棚卸と し ての商品もまた売上へ貢献 し ていると考えられることである。そ し て, 当 期の売上は前後の期間活動と関わる。当期の売上収益への 貢献が, 当期の費 用 と次期以降の費用 を区分する基礎であるという考えは成 り 立たない。それ 故に. 棚卸資産費用 測定との関わ り で従来いわ れて き たマ ッ チ ン グ (収益と 費 用 の対応) という考えは, よ り 厳密に 解釈 し 直されねばならぬと 思われ る。 そこで, 以下では棚卸資産原価配分がいかなる考えに支えられているのか を売上収益を対象に考え, あわせて対応 ( マ ッ チ ン グ) の 意味を明らかに し たい。別稿で原価ない し 費用 についての 動的論の考え方を示 し たが, 実は, -74. C 260 ) -.

(19) 収益ないし給付についても逆の意味において デ ュ ア ルな考え方が存在する。 先ず, 一つの考え方が示される。「発見がなされ, 新しい営業関係が結ばれ, 製造計画が拡大され, あるいは将来によい影響をする経済活動がなされるな ら, それは全て 給付である。」 (25) これが 給付といわれるものの 一側面であ る。 他方, 動的論はこのような給付概念を述べるにも拘らずただちにそれを否 認する。 というのは, それは誰も知ることのできぬ, 計算できない価値であ り, その測定は不確定だからである。 それはまさに費用の概念が価値の費消 から支出へ転換したことに相当する。 そして, 「企業の給付は 企業が価値を 創り出す全てである。 それは収入で測定される。」 (26) ことになるのである。 こうして, 価値の創出と収入とは双対関係にある。 しかるに問題は, 給付に ついて価値の創出を会計測定の対象とせずに収入を尺度としたかということ である。 単に把握の不確実性ということでなく, 会計的に有意味であるが故 にとられたとみるべきであろう。 費用が価値の費 消としてとらえぬように,給付は価値の創出として測定す るのではない。 そして, 費用を支出で測定するように, 給付は収入で測定さ れるのである。 このことは, 動的論が会計測定の対象を財そのものとしてと らえていても, それは会計行為の反映にすぎないことを意味しよう。 それ故 に, 給付を収入で測定することによって何を会計表現しようとしているかを 考えねばなるまい。 売上収益は何故に収入によって測定されるのか。 もとよ り利益は確実に測定されねばならぬとの考えが存した。 「ひと度, の確実な段階が待たれねばならない. 利益実現. それらが計算上把握される前に一. —. という原則が立てられるなら, それはある部分は利益の実現の段階がどの場 所でその計算を利益として示すかの慣行上の問題である。 け れどもこの慣行 (25) Schrnalenbach, E., Grundlagen dynamischer Bilanzlehre. ZfhF 1919 , S. 98. 凶 ebenda. 岡 Schrnalenbach, E., a. a. 0., S. 99 .. -75 ( 261 )-.

(20) はそれ 自 体,重要な原則である。 」 (27) これが実現にほかならない。それは決 して単に確実だからと いう理由で生じたのではなく,支出による測定に対比 して,生じたといえる。 「第一に,全給付が完了まで原価でのみ,そして完 了後に,それに属する利益が計算されるという原則。第二に,他への給付に おける完了 の通常の時点が計算書の送付であるという原則」 (28) 棚卸商品とし て商品が手許にある間は原価(支出) で測定し,それを他へ手放すことによ って給付(売上収益つまり収入) を測定する (29) 。 ここに, 動的論は商品評 価における原価主義の確立が,販売,引渡という実現の確立と不可分にある ことを示唆するのである。実現とは,引渡という会計行為を収入で測定した ことになる。この考え方が実現原則として確定されるのである。販売,引渡 という実現原則の例外として 建設会社の 収益計上や 委託販売の 場合がある が (30) ,. これら の 場合 も 給付(収益) が収入によって測定されることに変り. はない。その違いは,実現原則をとる場合,収益が当期の収入(現金販売) ないし 次期以降の収入(信用販売) となるのに対し, 建設会社の場合, 完 成,引渡の際の収入を建設期間中 に分割することにある。 このようにみてくると,動的論における商品会計の考え方が次第に明らか になってくる。従来,この問題に関しては恒常在高や拘束在高に焦点がおか れたが,根本は期末棚卸の原価による(支出) 評価と販売(収入による) に あることがわかる。そして,このような思考過程からして,期末棚卸が原価 で評価されるとして も ,いつの時点の原価かを問わなかったのは当然といえ るか も しれない。それはただ販売(収入) に対して原価(支出) でありさえ すればよかったからである。 ところで,今 日 の期間損益計算に立脚する企業会計の下では,棚卸資産会 (.2© Schmalenbach, E., a. a. 0., S. 99f. 図 Schmalenbach, E., Dynamische Bilanz. 13. Aufl., S. 77. 田 こ の よ う な場合におけ る売上収益測定につい て は既に別稿で触れた。 な お,Sch­ malenbach, E., a. a. 0., S. 77f.. -76. ( 262 )-.

(21) 計の中心は 棚卸費用の 測定にある と いわれるが, その際, のは 対応概念である。 以上の 商品勘定の分析か ら して,. 基礎におかれる 対応とはどういう. こ とで あろうか。 こ の点を試みに述べてみたい。 従来の棚卸資産原価配分の 考え方の欠点は, 棚卸高が売上収益に対する貢献が全くないという前提に立 つ も のである。 そうで あれば こ そ, 期末在高を控除する こ とにより正しい棚 卸費用を計算しうると考えたのである。そ してその意味における マ ッ チン グ が存した。 けれど も 貢献という観点に立ってみると, 決して, 棚卸高が売上 収益に貢献しないのではなく, むしろ, 貢献す ると考える方がはるかに適切 なのである。 こ れが従来の考えの見直しの出発点となった。 従来の考え方を図で示すと次のようになる。. 商品購入額(支出). 対応 →費用=売上収益への 貢献額一売上収益 | →期末棚卸 高=売上収益へ貢献し ない額 図6- 1. —. 指摘したい こ とは, 棚卸資産原価配分の立脚点は, 収益への貢献に対応し た費用の大きさを求めるという こ とでなく, も っと別のと こ ろにあるという こ とである。 以上のように考えてくると, 会計上,. マ ッ チン グというのはある犠牲分に. 対するその犠牲を要して得 ら れた成果という意味ではないのではないだろう か。 とすれば,. マ ッ チン グをどう考えればよいであろうか。 こ. こ では一つの. 試論を示すほかはない。確かに会計数値は財の増減変化として表現されてい る。しかし, 会計測定の根底にひそむ こ とは, 財の増減変化に反映される会 計行為である こ とがわかるのである。. 7.. 棚 卸 商 品 の 質 的 変化 と 会計測定. 前節でみた ように, 商品の在高は量的には, 最低量であれ, 基準量 で あ れ -77 ( 263 )-.

(22) ともかくも経営活動を維持するにどうしてもなくてはならぬ必要な量として 確保されねばならなかった。 それならば. このなくてはならぬ必要量として の在高は商品の質, 種類という 側面からみるとどうか。 次に商品の 質や種 類. そしてそれらの変化に対する動的 論の会計測定を考えてみる。 商品の質的側面は次のように考えられる。 「そのような 経営に おいては商 品の在高は大 ざっぱに考えれば. 販売可能なものである。 現実には,取揃え られた在庫は販売できない資産に属する。. …. • • •もちろん . この物は継続的に. その構成を変える。 しかし,決して全体の性質を変えない。」(31) ここで,我 々 は次の二つの事実に着目すべきであろう。 そのーは,商品の在高は,その 種類についても質的にも変化していくものであること. その二は. 経営の継 続に必要な在高量を基礎に計算される支出額が商品の在高を規定することで ある。 しかし. ここで重要と考えられるのは,商品在高のこうした事実に対 い 種類や質. そしてその変化がどうであろうとも,会計上. 一定額の支出 の大きさが根本的に重視されていることであろう。 それでは何故に,一定の 大きさの支出が動的論において重視されたのだろうか。 も ちろんそこに,そ れによって,損益計算への価格変動の影響をできる限り排除するとの考えが 存したことは否めない。 しかし,より深く考えていけば,価格変動の問題よ り以上に, 動的論の下での 会計測定の本質を 示唆するように思える。 そこ で,この二つのことを解釈すれば次のようになろう。 一定の在高量が支出額 で決められておれば. その支出額の枠 内において. 商品の種類,質は自由に 選択可能であるということである。 そして. この金額が商品のいかなる評価 額で決められたものかといえば. 過去の支出である。(恒常 在高 法と拘束在 高法とでは 考え方に 若干の違いはあるにせよ。) このように. 商品の在高に 対し,個別の商品の量とその評価が問題とならずに,商品の種類や質は選択 可能として,支出額の大きさを問題とするところに,著しい特質をみること 畑 Schmalenbach, E., Grundlagen dynamischer Bilanzlehre. a. a. 0., S. 90.. -78 ( 264 )-.

(23) ができる。私見によれば, 動的論では収入 ・ 支出を会計測定の基礎 におき, 配分という測定方法が出現 したとみることができるのである。期間経過 に お いて A ならばA という財(商品) を在高と し て確保 し ておく必要は全くなく て,その種類は B でも C でもよいわけである。大事なことは一 定の金額であ り,それを基準と し て質的変化が自由 に行われることになる。つまり,基準 量を (N) と し てその単価を (P) とすれば,(PN) の金額の 枠 内で 商品の質 的変化が可能ということになる。 以上のことはさらに突き進んで考えるならば,動的論 における商品会計が 新 しい財と旧い財の取替を基礎とすることを示唆するのではないだろうか。 も しそうでなければ,支出額ではなく個別の財また一定の決められた財の評 価ということが商品会計の基礎になったであろう。. 8.. 結. 論. 以上は,動的論に依拠 し て棚卸資産の会計問題を勘定,棚卸商品の質的変 化,棚卸商品の量の側面から考えたものである。その結果,次のことが明ら かになった。第1 に勘定の側面からみれば,売上高と棚卸商品は同じ貸方側 にありながら両者は全く別のものであることが指摘される。即ち,棚卸商品 は当期の商品の受入額(借方側) のマイナスであるが故に反対側に記載され るのであり,売上は既に手許になく払出されて貨幣量に転換されていること を意味する。ここから前者では棚卸商品に対する原価主義が生じ,また棚卸 商品の会計問題が原価配分にあることが明らか になる。また後者からは実現 主義が確立 した。第2 に棚卸商品を質的側面からみれば,手許の商品は質的 にいかに変化 し て もよく, したがって, ある固有の財が 問題でなく, 支出 された貨幣量が重要であることがわかる。第3 に棚卸商品を量的側面からみ ると,棚卸の量は売上収益への貢献が意図されていること,そ し てそうであ ればこそ手持の量に対 し て必要在高,最少在高,正常在高などの在高量が考 -79. ( 2 65). 一.

(24) 慮 さ れて い る ことである。 それ故に棚卸商品のもつ こうした量的側面からし て, 従来言われてきたマッ チ ングの概念は再考されてよいであろう。. -80 (266 )-.

(25)

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