M四MOIRS OF SHON ▲N INSTITUTE OF T動じHNO 匸X)GY
VoL
.
29,
No.
L l995遷
移
金
属 酸 化 物 添 加
ジ
ル
コ ニア
融 液 超
急
冷
体
の
合 成
と
性 質
木 枝 暢
夫
*Preparation
andProperties
ofRapidly
Solidified
Zirconia
Doped
with
Some
Transition
Metal
Oxides
Nobuo
KIEDA
The mixtures of ZrO2 and some transition metal (
Mn ,
Fe ,
Co
)oxides were melted by Xe−
arc imagefurnace
anddropped
into
a twin rollerto
be
quenched,
The
rapidly solidified matebrials consisted ofstabilized zirconia phases with tetragonal or cubic crystal structure could
be
obtained.
The
homogene −
ity
range of the stabilized zirconia were considerablydifferent
depending on the doped oxides andquenching atmosphere
,
The lattice parameters of the cubic phases weredecreased
withincreasing
ofthe concentration of the transition meta 且s
,
which showed that the stabilization was attributed to thesubstitution of
Zr
with the transition metalions.
The
effect ofthe
ionic
radii and the charge of substitute ions on the stabilizingbehavior
wasdiscussed.
The
stabilized zirconia phases decomposedinto
monoclinic ZrO2 and transition meta 】 oxides above600
°C
1.
緒 暦ZrO2
に は単斜 晶,
正方 晶お よ び 立方
晶の3 種
類の 多 形が存 在し,
他の酸 化 物の 固溶に よっ て高 温 相の正 方 晶 ある い は立方晶 が 室 温 まで安定 化さ れ るこ と はよく知ら れて い る。 この 物 質は安 定 化ジル コ = ア と呼ば れ,
酸 素 イ オン導電 体 や 高 靱 性セ ラ ミッ クス と して,
工業 的に も 広 く 利 用 さ れてい る材 料で ある1) 。 安 定 化に寄 与 する酸化 物と し て は MgO
,
CaO,
Y203 が一
般 的で あ る が,
その他の希 土 類元素 酸 化 物や In203
,
SnO2 など 多 くの酸 化 物 につ い て も 同様の現 象が報 告さ れて おり,
安 定 化挙動に 関 する研 究 も数 多い2) 。 し か し な が ら,
還 移 金 属 酸 化 物に よ る安 定 化 ジル コ ニ ア の 生 成に 関 する研 究はごく少な い。3d 遷移金属酸化物 の ZrO2 へ の固 溶 現 象に 関す る初 期の研究で は
,
共 沈 法で得 た 混 合 物 を750
°C
で熱 分解 する こ とでMn
お よ びFe
酸化物の 固 溶と安 定 化ジル コ ニ ア相の 生 成が起こ ると報 告さ れ て い る3レ 。 高 温での固 相反 応で は,
CO −
CO2
雰 囲 気の低 酸 素 分 圧 下でMnO
お よびFeO とZrO2 の反 応が調べ ら れ,
前 者は23wt .
%ま * 材料工学 科 助 教 授 平成6
年10
月13
日受 付 で固溶す る と されてい るが生 成相にっ い て は明 らかに さ れて お ら ず,
後者は 正方晶相を生 じ る と さ れて い るが固 溶 限 界は示され て いない% 比 較 的 新しい研 究で は, 各元 素の硝 酸 塩の 混合 物を 600 °C
で熱 分 解す るこ とによ っ てFe
およびCo
酸 化 物が固溶 し た安 定 化ジル コ ニ ア相 が得ら れ て お り,
その熱 安 定 性や固 溶 した遷 移 金 属イ オ ンの H2 に よ る還 元挙動な ど が調べ ら れて い る5L61。 融 液超 急冷法は,
アモ ル フ ァ ス金 属 やニ ュー
ガ ラス の 合 成 方法 と して 発 展 してき た.
様々 な方 法でIO3〜10
了Ktsec
の冷 却 速度が達成さ れ, 新材 料の開発に利用され てい るη・
s) 。ZrO2
系固溶 体の 融 液超 急 冷に関 する研 究 例と して は
,
A120,,
Y203,
CeO2 ,
TiO2
を添加 し た急冷試料にっ い て
,
構 成 相 と 微 構 造 が 調べ られ た 例 が あ る9, 。 微 細 な 双晶 組 織を持っ 正方晶 相の生 成 と形 態が主に調べ られ て お り,
基 本 的に安 定 化は急 冷 操 作だけで は達 成さ れ な い と結 論さ れ てい る。 他に は,
Y203 を 添 加 し た 系で t’
相の 生 成と結 晶 学 的 性 質につ い て 検 討 し た研 究があ るle) e 本研究で はMn ,
Fe,
Co
の3
種 類の3d
遷 移金属の酸 化 物とZrO2
の 混合 物を高温で 溶 融し,
これ を急冷する こ とに よ っ て均一
な安 定 化ジル コ ニ ア固溶 体の合 成を試 みた。
そ して,
そ れ らの生成条件や熱 的安 定 性の 評価を湘南工科大学 紀要 第 29 巻 第 1 号 行い, 融 液 超急 冷に よっ て得られた非 平 衡 固溶 体の性 質 を明ら か にする と と もに
,
安 定 化ジル コ ニ ア相の生 成 原 理 にっ いて も新たな 知 見 を得ること を目的とし た。2
. 実
験方 法
原 料 と して,ZrO2
紛 末 (秩 父 セ メ ン ト製ZP−20
),
MnO2
紛 末,
Fe203
紛 末,
CoO
紛 末 (いずれ も高 純 度 化 学 製,99 。
9
%)を用い た。 これ らの粉 末を所 定の混 合 比 と な るよ うに化 学天秤で精 秤し,
ア ル ミ ナ乳 鉢を用い て 約 30 分 間エ タノー
ル湿 式 混 合 し た。
混 合 粉 末 を 乾 燥 後,
バ イ ンダー
と してPVA
2
% 水溶 液を数 滴加え,
内 径約 8mm の 円 筒 形の ゴム 型 を 用い て2,
000
kgtcm2
の圧 力 でCIP
成 形した。 成 形 体の端部に ド リル で小穴 を あ け た の ち,電 気炉で 空気 中 900 °C で仮 焼し, 耐水研磨 紙で表 面を削っ て形を 整え た もの を 以下の急 冷 実験に用い る原 料 棒と し た。 原 料 棒の形状は,
直径6〜7mm ,
長さ60
〜80mm
の 丸 棒 状であ る。 融 液 超 急 冷 実 験に は,
赤 外 線 加 熱 急 冷 装 置 (ニ チ デ ン 機 械,
FQ−
50XS )を用いた。 こ の装置の模 式図 を 図 1に 示す。 こ の 装 置は大 き く分けて,
試料を融 解す るXe
←gasoutlet
→gasinlet
sample roddrivi
皿9apparatus : up−
down
and mtation elliptica1■
mlr「orXe
hmp5
.
4kW
/tube
fused
smcasamplelod
T200mm
O
O
quenchi
皿9
twin塾Dner (2000
叩m ) quenched samplereceptacle 図1
赤 外 線加 熱急 速 冷 装 置の模 式 図.
アー
ク イ メー
ジ炉と 双ロー
ラー
急 冷 装 置の2
つ の部 分 か ら成っ て いる。 原料 棒は細い ニ ク ロ ム線で イ メー
ジ炉 の上部軸に吊り下げ,
その先 端にXe
ラ ン プの光を楕 円 鏡で 集 光 して 融 解 す る。 上 部 軸 は 回 転 と上 下 動 させ るこ と がで き,
生 成し た融 液が均一
に な るよ う数分 間 保 持 し たの ち,
軸を下げて融 液を自 由 落 下さ せ る。 こ の融 液は 高 速で 回転して い る双 ロー
ラー
の間 を 通っ て急 冷 さ れ,
下 部の 試料 受けに落ちる。 原料 棒を融解する の に必 要な ラ ンプ出 力は試 料の 組 成に よっ て異な り, 約 3.
0〜
4.
2 kW であっ た。 融 液の温度は実 測する こと がで き ない の で,
融液の形状や粘 性を目視に よ り判 断して, 融 解 条件 ができるだ け均一
になる よ うに し た。 ま た, 双 ロー
ラー
の 回転速度は2000rpm
と し,
雰 囲 気ガス は02
ま た は Ar を 51/min 流し た。 得 ら れ た急 冷 試 料は厚さ が0.
05mm
,
大 きさ が数 mm か ら数 cm 程 度の薄 片状で あっ た.
試 料の構成相の 同 定 と格 子 定 数 測 定には,
粉 末X
線 回 折 装 置 (リガク,
CN −
2013 ) を用いた。 組成分 析は,
十 分 粉 砕した試料を 熱 濃硫 酸に溶 解し,
これに っ いて ICP 発 光 分 折 装 置 (島 津 製作 所,ICPS ・
5000
)を用いて行っ た。 試料 表 面の微 構 造は,
電 界 放射型走 査 電子 顕 微 鏡 (日本電子,
JSM
・
6300F
)で 観 察し た。 さ らに,
生 成 物の熱 安 定 性 を 評 価 す る た め,TG
−
DTA
測定 と種々 の温度での熱処理 を行 い,
構成相と微構造の変化を調べ た。3
. 結
果
3.
1 超 恵冷 体の組成分 析 本 研 究で用いた合成 方法で は融液とい う高温状態 を経 る た め,
成分の揮発 が 起こ り, 試料の 組成が変 化する可 能 性が ある。 実 際に合 成 実 験後の製 置の上部 軸に は付 着 物が認め ら れ た。 そ こ で, 得ら れ た急 冷 試 料につ いてICP
発 光 分 析によ っ て組 成分 析を行っ た。 結 果の一
例と して,Mn
酸 化 物 を 添 加 した 系の場合 を 図 2に示す。 か な り ば らっ きはあるが,
実 験した組 成 範 囲に わ た っ てMn
の含 有量 が相対 的に減少して おり,
成分の選択 的な 揮発が起こっ てい る ことが わ か る。Mn
酸 化物の添 加量 が多い方が組 成ず れが小さ くな る傾 向が見 られ る が,
こ の理 由は融 液の生 成 温 度が添 加 量の増 加と ともに低 くな り, 揮発 が抑 制さ れ る た め と考え られ る。 実際に合成時 に 印 可 し た ランプ出力 も 添 加 量 と と も に小さ く な っ てい る。Co
お よ びFe
酸 化 物を添 加 した系で も同 様の結 果が 得られてお り,
い ず れの場 合に も添 加 し た 遷 移 金 属 が 選 択 的に揮発し てい る ことが わ か っ た。 し た が っ て,
以 下遷 移 金属酸 化 物 添 加ジル コ ニ ア融 液 超 急 冷 体の合 成と性 質 (木 枝 暢 夫 ) 承
.
暮
ミ
8
咽甥
。旨
8
勹 。 N嘗
偶 くBatch
composition / atom.
90
図 2Mn 酸 化 物 添 加ZrO2 融 液 超 急 冷 体の 原 料 組 成と分 析組 成の関 係
.
(急 冷 雰 囲 気 :○,
02
中;●,
Ar
中 ).
の評価に用い た試料にっ いて は全て分 析に よ り組 成 を決 定し た。 ま た,
この結 果か ら考え て急冷試料の表面と 内 部で組 成 分 布が生 じ てい る可 能 性がある た め,
以下で は その点も十 分考慮 して実験を行っ た。3.
2
急冷 試料の構 成相図 3 に は, それぞ れの酸化 物を添加して合成 し た急 冷 試 料の構 成 相 を 粉 末
X
線 回折に よっ て 同定し た結 果を,
合成 雰 囲 気 と と もにま とめ て示 す。
測定は薄 片 状の急 冷 試料をガ ラス板に貼 り付 けて行い,
別々 の部 分 か らサ ン プ リン グ した試料に っ い て の再現 性 も確 認 した 。 全て の 試 料で 明 瞭な回 折 図 形が得 られ,
試 料が結 晶 化して い る こ と が明ら か であっ た。 双n一
ル 法に よ る急 冷速 度は一
般にIO4
Kisec
程 度とい わ れて い る が,
こ のよ うな急 冷 条 件で は本 研 究で対 象と し た系で非 晶 質 相の生成は起 こ らない もの と考え ら れ る。 図か ら わ か る よ うに,
いずれ の添加物の 場 合で も添 加 量が増 加 すると安 定化ジル コニ ア相が生 成 し,
過剰にな る と添 加し た酸化 物が雰囲気に 対応 し た 相 と なっ て共 存 し た。
しか しなが ら,
安 定 化 ジ ル コニ ア 相の 結晶 構 造に は系に よ っ て違い が認め ら れ る。Mn
酸化物を添加 した系で は,
添 加 量が少な い場 合に は生 成 す る安 定 化ジル コ = ア相のX
線 回 折 ピー
クが プ ロー
ドで正方 晶と立方晶の区 別 が 困 難であ る が,
添 加 量 の 増加に よ りピー
ク がシ ャー
プになり明 らかに立方晶の 単 相 と 考 え られ る ものが得 られ た。 単相が得 られ る組成 範 囲 は,02
雰 囲 気で 合 成 し た場 合に は12〜20atom .
% 程度,
Ar 雰 囲気で はこれ より広く7−
v20 atom.
% 程 度 と推 定される。
Fe
酸 化物を添加 し た系で は合 成 雰 囲 気に よっ てか な り 結 果が異なっ て い る。02
雰 囲 気で 合成 し た場 合に生 成 する安 定 化ジル コ ニ ア相は正 方 晶で あ る。 し か し な が ら添加量が少ない と単斜 晶が,
多い と きに はFe203 が共 存し,
単 相の試料は 1 組成で しか得ら れなかっ た。
した が っ て,
こ の正方 晶 相の単 相 組 成範 囲はか なり狭い もの 8dd 面 v鳴聡 邑 い 5ρb鵬
Concen
血ation of additives /atom.
%O
lO
20
30
4050
02
mO
+c * c* cOD
c+Mn203一
レ・
MnAr
o
o
m +c業 c → c+MnO −
→02
m +o
t too
t+Fe203FeAr
o
o
o
o
m +c* c c+FeO
02
oo
c*o
o
o
o
c*十Co
()一
一
一
●〉CoAr
O
O
O
c*+CoO
→m :mon
linic
,
t:tetragonal,
c:cubic,
c*:cubic and /or tetragonal湘 南工科大 学 紀 要 第 29 巻 第 1 号 と予 想さ れ る。
一
方Ar
雰 囲気で はMn
添 加の場 合と類 似 し た挙 動を示 し,
立方晶の安 定 化ジル コ ニ アが 生 成 し た。 しか しこ の場合 も 単相の組 成 範 囲はあ ま り広く な く,
10・atom.
% 程 度を中心 と して数 atom.
% 程 度と推 測される。Co
酸 化 物を添 加した系で は,
生 成 し た 安 定化ジル コ ニ ア相は正方 晶と立 方 晶の判 別が困難な ブロー
ドな回 折 ピー
クを 示 し,CoO
が か な り過 剰になっ て もはっ き り と 立 方 晶 といえるもの は得られ な かっ た。 し か し,CoO
添 加 量 が多くなる と紛 末X
線回折ピー
クの半 値幅が減 少 し,
構 造は立方 晶に近づい てい る もの と推 測さ れる。 単 斜晶や CoO が共 存 しない試 料は 7〜
15atom.
%程 度の 範 囲で生成するもの と考え ら れ る。 ま た, こ の系で は合 成 雰囲 気によ る違い はほとんど認 め ら れ な かっ た。3.
3
立 方 晶ジ ルコ ニ ア相の格 子 定 数立方 晶ジル コニ ア相が含まれて いる試 料を 粉 砕 し
,
粉 末X
線回折に よっ て格 子 定 数 測 定 を 行 っ た。
測 定に は (220
)および (311
>回折 線を用い, 走 査 速度1
/4deglmin
で得 た 出 力チ ャー
ト上の 回折ピー
ク につ いて 半値 幅 中 点 法で回折 角を求め た。 また,Si
を標準 試料と して回 折 角 の補正 を 行っ た。 得 られ た結果 を図4
にま と めて示す。 図よ り,
い ず れ も添 加量の増 加と ともに格子定 数が減 少 し て い る こ と がわか る。 また,
格 子 定 数の 絶対 値はMn ,
Fe,
Co
添 加の順に小 さ くなっ て おり,
Mn
添 加の 場 合に はAr 雰囲気で合 成し た ものの 方が大きいが,
Co
添 加の場 合に は合 成 雰 囲気に よ る差は認め ら れ ない。3.
4
急冷 試料のTG −DTA
測 定 各 酸 化 物を添 加し た系で単 相の安 定 化ジ ル コ ニ ア相 と なっ た代表 的な試 料のTG −DTA
測定の結果 を 図5
に示 す。 測 定は空 気 中で行い,
昇 温 速 度は 20 °Clmin である。 2.
O
5 05
0 1 10
評 丶 OO ‘ O ‘ O 一 ‘ 0一
〇 う.
O 翼 O ↑ 1↓
§
一
〇.
5 0 2∞2
5
.
1
且 −o
o9
ヨ ヨ く こ馨
8
§
α8
唄5
囗o
1≧
蜜
1 言oEgo
一
゜ ‘IOO 600 800 ゆ ◎◎ 1200 回OOT6
刷P
●rature !.C
5.
08
5.
07
図4
0
且0
20
30
40
50
Concentiation
/ atOm.
% 立 方 晶 安 定 化ジル コ ニ ア相の組 成と格 子定 数 の関係.
(添加 元 素:○ ●,
Mn ;▲,
Fe
;[コ■,
Co
),
(急冷 雰 囲 気: ○ 口,02
中; ● ▲ ■,
Ar 中 ).
2.
o。
5 0 5 0 1 1 0 ヌ 丶 OO ‘ O ‘ O ← ‘ O一
〇 ≧Temp
●rature !●C
6 誕 魯 11
愚.
O コ お一
’
O・
56
2eo
40
◎ 600 e◎◎K
)OO
I20
◎ 1400Temperature
!OC 図5
安 定 化ジル コ ニ ァ単 相試料のTG ・
DTA
曲線 (alMn
添加Ar
中急 冷 試 料,
(b
)Fe
添 加Ar
中急 冷試 料,
(c)Co
添 加Ar
中 急 冷 試 料.
遷 移 金 属 酸 化物添 加 ジル コ ニ ア融液超急 冷 体の 合成と性 質 (木 枝 暢夫)
Mn
添 加Ar
中急冷試料で は 400 °C
付 近 から重 量 増 加が起こ り,800
°C
程 度か ら は逆に重量が減 少して い る。 この変 化はMn
イ オン の酸 化・
還 元に よ るもの と考 え られ る が,
単 体のMn
酸 化 物で見 ら れ る 挙動 (1080
℃ でMn203
か らMn304
へ 分 解する) と は異 なっ て い る。 こ の変 化が緩や か な た めDTA
曲 線に は明瞭な ピー
ク は認め ら れず,
1270°
C 付 近に ZrO2 の 単 斜 晶か ら正 方 晶へ の転 移に よ る と考え ら れ る わずか な吸熱ピー
ク だ け が 存 在 して い る.02
中で 合 成 し た試 料につ い て も,
重 量変 化量が小さい点を 除 きほぼ 同 様の結 果 となっ た。
Fe
添加Ar
中 急 冷 試 料で は, 400°
C
付 近か ら は っ き り と し た 重 量 増 加 (O.
81
% )が あ り,
そ れ に 対 応してDTA
曲線に も発 熱ピー
ク が認め られる。 こ の変 化はFe イ オ ンが2
価か ら3
価へ と酸 化さ れ た ためと 考 え られ,
こ の反 応と試 料 組 成か ら 理論 的に求め ら れ る重 量増 加は 約0.
8
% と なる。 こ の値 は実 験 結 果 とほ ぼ一
致 す るの で,
試 料に含ま れるFe
はほとんど 全てが2
価に なっ て い る と考え るこ と がで き る。 ま た, Mn 添 加 試 料で見 ら れたZrO2
の転 移に対 応するDTA
ピー
ク は認 め ら れ な い。一
方 02 中 急冷試 料で は,
TG,
DTA
曲線ともに全く 変化は見ら れ な か っ た。Co
添 加02
中 急 冷試 料で は,600
°C
と900
°C
付近で 重 量 増 加が起こ り,
その後 す ぐに重量 が減少して い る。DTA
曲 線で は, 最 初の 重 量 増 加 と 最後の重量減 少に対 応 して それぞれブロー
ドな発 熱 また は吸熱ピー
ク が存 在 し, 2
番 目の 重 量増 加に対して は比 較 的 大 きな発 熱が認 め ら れ た。 これ らの 挙 動も や は り Co イオ ンの酸 化・
還 元に伴 う もの と考え ら れ る が, 2
番 目の 重 量 増 加 および 発 熱の 原因 は 明 らかではない。 また,ZrO2
の転 移に対 応 す る吸 熱 ピー
ク は,3
種 類の 添 加物 中で最 も明 瞭に1260
℃ 付 近で 観察さ れて い る。 加 熱前の試料 中に は単 斜 晶 相は存在しない こと か ら, この温度ま で昇温 する間 に単 斜晶相を生 成す る何 らかの反応が起こっ てい る と 考 え られる。
3.
5 急 冷 試 料の熱 処 理 安 定 化ジル コ ニ ア単 相の試料を 空気 中種々 の温 度で一
定 時 間熱 処 理 し, 粉 末 X 線回折とSEM
観 察に よっ て構 成 相 と微 構 造の 変 化を 検 討 し た。 前 節で 述べ た TG−
DTA 測定 後の試 料に つ い て も同様の 評 価 を 行い,
併せ て検 討し た。 その結果 を ま とめて 表 1に示 す。 表1
より,
本 研 究で得られた安定化ジル コニ ア相はい ず れ も熱 的に か なり不 安 定で,600 〜700
°
C
で の 加 熱に より容易に単 斜 晶ZrO2
と遷 移 金 属 酸 化物と に分 解して しま うこと が わ かる。
こ の と き生 成 し た2相 が 互い に ど の 程 度の固 溶を して いる か は不 明である が, 粉 末X
線 回折ピー
クの 角度ずれ は ほ と ん ど認め ら れ な かっ た。 ま た,
Fe 添 加Ar
中 急 冷試 料の場 合に,
加熱に よっ て結 晶 構造 が 立方晶 か ら 正 方 晶へ 変 化 す る 現象が見 られて い る。 これはFe
イ オ ンが2
価か ら3
価へ と酸 化 さ れ たこ とに伴 う もの と考え ら れ る。Mn
添 加の場 合に も同様の 現象が 起 こっ て い る 可能 性がある。次に
,
加 熱に よ る試 料の微構 造 変 化の典 型 的な例とし て,DTA
測定 後のCo
添加 試 料の表面のSEM
写 真を図6
に示す。 急冷試 料は5〜
6μ m の粒 か らな っ てい るが,
表面が な め ら かで,
全体と してべ っ た り と覆われてい る ような様 子が見ら れ る。 これ を1000
°C
まで加 熱し た後 の試 料では,1〜3
μm 程度の粒が明瞭に観 察さ れ,
そ の 表 面や粒 界に は細か な析出物が認 め ら れ る。 さらに 表1
安定化ジル コ = ア単 相 試 料 を 空 気 中で熱 処 理 した ときの 相変 化.
additivesMn
Fe
Fe
Co
synthesis atmosphere02
,Ar
Oz
Ar
02
,Ar
as−
prepared
upto
1
℃ (
20
℃
1mln
)
upto
1350
℃ (
20
℃
1min
)
600
℃
,100h
keep
700
℃
,20h
keep
lOOO
℃
,
20h
keep
Cc * +Mn203
m +Mn203
C
C十m m +Mn203
t
t
+mm +Fe203
t
+mCt
+mm +Fe203
t
+m m +Fe203
m +Fe203
* *CCm
+CoO
C* C*十mm
+CoO
m :molloclinic ,t
:tetragona1
, c:cubic , c*:cubic andlortetragonal
湘 南工科大 学 紀 要 第
29
巻 第1
号 図6
Co
添 加 安 定 化 ジル コ ニ ア単 相 試 料の空 気 中 で の熱 処理 に よ る微構 造 変 化のSEM
観察 (a)急 冷 体,
(b
)1000°
C
加 熱 後 冷 却,
(c>1350
°C
加 熱後 冷 却.
1350
°C
まで 加 熱した試 料で は, 粒の形 状が角 張っ て1
つ 1つ の大 き さ も1
μm 程 度以 下の もの が 多 く 見 ら れ,
粒 と粒の 間に亀 裂が生 じて い る。 他の2
っ の添 加 物の場 合も同様の 微 構 造が観 察さ れ た が,Fe
添 加の急冷試料 は粒の形 状が は っ き りして おり,
粒界に析 出物が層状に 存在してい るのが観 察さ れ た。 ま た,600
°
C
で加 熱 した 試 料で は微構 造 変 化は ほ と ん ど 見 られな か っ た。4
. 考
察
4.
1 遷 移 金 属 酸 化 物 安 定 化ジル コ ニ アの生 成 挙 勤3.
2 お よ び3.
3
節で示 した結 果か ら.Mn
,Fe
, およびCo
酸 化 物を添 加し たZrO2
を融 解 して急 冷 する ことに よ っ て,
安 定 化ジル コ ニ ア相が生 成 する こ と がわか っ た。 こ の相が生 成 する原 因と し て は, 添 加 物がZrO2
中 に 固溶 し たこ と と,
急 冷 体 中で ZrO2 の 粒 径が微 細に な っ たり歪 みがか か っ た状態に なっ てい る こ との 2っ が 考 え られる。 本 研 究の結 果で は添 加 量 と と もに格 子定 数が連 続 的に変 化し て い るこ と か ら,
添 加 物が実 際にZrO2
中に固溶して安 定 化が達成 さ れて い る と考えて良 いで あ ろ う。
格 子定数 変 化につ い てさ らに検 討すると, 添加 元素に よ り若 干 異な る が,15 〜20atom .
% 付 近を境と して格 子定数の減 少の程 度が緩や か になっ て い る。 この変化が 見 られ る組成 は 紛末X
線回折に よ っ て決 定 さ れた単 相 範 囲の上限とほ ぼ対 応し て い る こ と か ら, 本研 究で用 い た方 法に よ っ て添 加元素をZrO2
中に均一
に固溶させ ら れ る限 界 を 大 ま かに示 してい るもの と考えること ができ る。 固 溶体の格 子定数 変 化に関して は一
般にベ ガー
ド則 が成立 し,
固溶量 と格子定 数の 間に直 線関係が見ら れ,
固 溶 限 界 を 超 え た 組 成では 格 子 定 数 は一
定 値 を 示 すこ と が知られて い る。ZrO2
固溶 体につ い て も,
多くの添加 物 で こ の関 係が認め ら れて い る11} 。 し か るに本 研 究の結 果 は添 加 物が過 剰になっ て も格 子 定 数は変 化して い るが,
こ の 理 由は急冷 体が非 平 衡 状態で あ る た め と考え ら れ る。 すなわ ち,
均一
な融液 か ら安定 化 ジル コ ニ ア相 と添 加 元 素の酸化 物が相分 離し て結 晶化する際に,
冷 却速 度 が速い た めに分離が不完全で,
も との融液 組成で 添加 物 の多い場合の方が 安 定化ジル コ ニ ア相 中へ の固溶 量 も増 加 するの であろう。
次に, 添加 物と合成 雰 囲 気に よ る安 定 化ジル コニ ア相 の結 晶 構 造の変 化につ い て考 察する。 安 定 化に寄 与する 要 因は,
置 換 固溶する元 素の イ オ ン半 径がZr4
+ よ り大 きい こと と,
低 原 子 価イ オ ンの 置 換に よる 酸 素 空 孔の導 入である。Y20s
やCaO
のよ うな代 表 的な安定化 剤の場 合に は,
安 定 化ジル コニ ア の 結 晶 構 造は添 加量 と と もに 単 斜 晶か ら正方 晶, 立方 晶と順に変化 する 2, 。 徐 冷さ れ た 平 衡 状 態の 試 料で は,
各 相の中 間 組 成で は 2相 共 存 と な る が, 急冷 法に よ る非平 衡試料で は添 加 量に対し て相 変 化 は連 続 的で あ る。 特に固溶限界以上の添 加量を もっ 正遷 移 金 属 酸 化 物 添 加ジル コ ニ ア融液 超 急冷 体の合 成と性 質 (木 枝 暢 夫 ) 方 晶は
一
般にt
’
相とよばれ, 正方 晶相か らt’
相を経て 立方 晶相へ の変 化の過程で は,
正方格子の軸 率が添 加量 と と もに連続 的に1
に近づい てゆ く10) e 以 上の 挙動 を本 研 究 の結 果 と比べ て み る と,
図3
で c* と示した相 が 軸 率 が 1 に近い t’
であ る と考 え ら れ ばY203 添 加の場 合 と 類 似 し た挙 動が見 られて い る といえ る。
し か し なが ら,
c*相か ら な る試 料を粉 砕す る と,
粉 末X
線回折で 単斜 晶 相の増 加 が 認 め られ た。 この結 果は試 料 中に含ま れる 正方 晶が応 力 誘 起 変 態し た こ と を示 唆して お り,
c* 相は 局所 的な組 成の不均一
に よ り生じた正方 晶と立 方 晶の混 合 相の 可 能 性が ある。
こ の点にっ い て は TEM な どの微 小 領 域の評 価 装 置を用いて さ ら に検 討する必 要がある。 また,Fe
添 加02
中 急冷 試 料は他と異な っ て 明ら かに 正方晶と同定さ れ た。 こ の理由と して考え ら れ るこ と と して は,Fe
が3
価 と なっ て い る た め酸 素 空 孔の導 入 量 が少ない こ と や,
イ オン半 径が他 と比べ て小 さい こ とが 挙 げら れ る。Mn
添 加の場 合にも立 方 晶の生 成に要 する 添 加 量は02
中 急 冷の 場 合の 方が多 くなっ て お り, 同 じ 価 数で 比較するとMn
イ オ ン の 方がFe
イ オ ン半 径が大 きい こ と な ど か ら考えて,
両方の影響が 正方 晶相の 生成 に寄与 して い る もの と推測 さ れ る。 さ ら に,
図 4 で示 し た格 子 定 数の絶 対 値の大 小 関 係 も, 固溶し て い る イ オ ンの大きさ か ら説 明で きる。 す な わ ち,
Ar 中急冷試料ど う しで比 較した場合,
Mn,
Fe,
Co
の順に格 子 定 数が小 さ く なっ て おり,
これ は各 元 素の2
価の イオン の イ オン半 径の大 小 と対 応 して い る と 考 え ら れ る。 文献 値で はCo2
+ の 方が Fe2+ よ り イ オ ン半 径が 大き くなっ て い る が,
その値は6
配 位の場 合の もの であ り,
蛍 石構 造の8
配位で は その ま ま適用で きな いこ と や,3d
イ オ ンの イ オ ン半 径はス ピ ン配置に よっ て も変 化 す るこ と など も考 慮 しなけれ ば な ら ない。 こ のような 点につ いて は ESR 測 定 な どによっ て確 認 す る必 要 が あ るQ一
方,Mn
添加 試 料に おける急 冷 雰 囲気に よ る違い は2
価 と3
価の 割合が変化 して い る た め と考え ら れ,CQ
添 加の場 合に は雰 囲 気に よ る価 数 変 化 がほとん どな いため格 子 定 数に変 化 が 見 られなか っ たの であ ろ う。 硝 酸塩の 低温で の 熱分 解に よっ て合 成された試料で は, Fe3
+ が約20atom .
% まで固溶して立 方 晶を生成す ると報 告されてい る5, 。 格 子 定 数は 5.
08〜
5.
05A で本 研 究で得 ら れ た他の添加物の場 合と比較し て も か な り小さ い。
合 成 方 法が全 く異な る た め本 研 究の結 果と単 純に比 較は で き ないが,Fe3
+ の固 溶の可 能 性につ い て は さら に検討の 余 地が あ ろ う。 他の研究で は,
高温の還 元 雰 囲 気で のFeO
の 固 溶 量 が 10% 程度以下とされてお り4} , 本研 究の結 果とほぼ一
致 してい る。一
方,
同じ く硝酸塩 の熱分 解に より得 られ たCo
添 加 試料で は,
固溶 限界が10atom .
%程 度で, 立方晶の 格子 定 数がS.
09 −一
・
5.
07
A
と報告されて おり6〕,
これ は本 研 究の 結果と大きな差は な い。
ま た,
MnO の 固溶限 界にっ い て は1530°C
の還 元雰震囲気 中で約23wt ,
% (約35atom .
% ) との報告が ある% 本研 究の結 果との 違い は,
Mn イ オ ンの価 数 が 異 なっ て い る ため と推測され る。4.
2
安 定 化ジ ルコ ニ ア相の熱 安 定性 3.
4 お よ び 3.
5節で述べ た よ うに.
本研究で得 ら れ た 遷 移金 属 酸 化 物安 定 化ジ ル コ ニ ア相は空気中で加 熱 す る と容 易に分 解 して単 斜 晶ZrO2
と遷 移 金 属 酸 化 物 を 生 じ る。 実 験 的に 確 認 可 能だ っ た分 解温度は 600°
C 程 度で あ り,
硝 酸 塩の熱 分 解に よっ て得 ら れ た もの5)・
6〕と同 程 度 となっ てい る。
こ の ような 不安定 性の原 因の1
つ は,
遷 移金 属イ オンの イ オ ン半 径が小さ す ぎ る ためと考え ら れ る。一
般に置 換 固 溶が起 こ り う るに は イオ ン半 径の 差 が15
% 以内と する経 験 則がある。 前 節で も述べ た よう に遷 移金属 元素の イ オ ン半 径として一
概に文 献 値 を 用い るこ とはで きないが,
安 定 化 剤 と して用い ら れ る小さ な イ オ ン と し て代 表 的な Mg2 + と比 較し て も,
同程 度か そ れ 以下で あ る こ と は疑い な い。 本研 究の結果で イ オン半 径がよ り大きい と予想される添 加 物ほど 立方晶相の生成 が起 こ りやす く固 溶 範 囲 も広い こ と や,
遷 元 雰 囲 気で 2 価のMn
が かな りの 固 溶 域 を もっ とい う 報 告 な ど か ら,
ZrO2 固溶体の安 定 性 に影 響する1
つ の 条件と して イ オ ン半 径が挙げら れ る こ と は確 実と考え ら れ る。 その他の 理由と して は,3d
イ オ ンの電 子 構 造に よ り希ガ ス型の 陽イ オン と 比べ て固 溶が制 限さ れ る可 能 性や,
巨 視 的に は各 相の 自由エ ネル ギー
の大 小 関 係に よることなど も考 え られ る。
こ れ らの 点につ い て は格 子エ ネル ギー
の シ ミュ レー
シ ョ ンな ど の手 法に よっ て検 討 するこ と が可能 で あ ろう。5 .
結 言 本研 究で は,Mn ,
Fe
お よびCo
の 酸 化 物を含むZrO2
融液を超急 冷するこ とに よっ て,
添 加元素が固溶した安 定 化ジル コ ニ ア相 を 合 成 するこ とができた。 生成した相 の結晶構 造や格子 定数,
単 相 組 成 範 囲を検 討し,
固 溶 す るイ オ ンの価 数 とイ オ ン半 径に よ っ て その挙 動が説 明で きる こと を示し た。 また,
急冷 試 料の熱処理に より,
本 研 究で得た遷 移 金 属 酸 化 物 安 定 化 ジル コ ニ ア相は熱 的に湘 南 工 科 大 学 紀 要 第 29 巻 第 1 号 不安定で ある こ と を明 らか に し
,
こ の点につ い て もイ オ ン半 径の観 点か ら あ る程度の説 明 を 試みた。 以上の よ うな結 果から考 えて,
遷 移 金 属 安 定 化ジル コ ニ アをその ま ま 材 料 として応 用 することは難 しい といえ る。一
方, 固 溶 体の熱分 解過程で粒の表 面や粒界に様々 な形態の析 出相が形 成される こと が観 察され た。 この 析 出 相は遷 移 金 属 酸 化 物か ら な るもの と考え ら れ るの で, そ れ ら の酸 化 物がもつ触 媒 活性な ど の種々の機 能 性と関 連づけ た 評 価が,
本 研究で扱っ た物 質の材料と しての応 用を検 討し て ゆ く上で必 要で あ ろ う。謝
辞
本研 究は平 成5
年 度 文 部 省科 学 研 究 費補 助 金 (奨 励研 究 A.
No .0585595
)の援 助を受け て行わ れ た。 記し て感 謝の意 を表し ます。 文 献1
) 宗 宮重行 編 ジル コ ニ アセ ラ ミッ クス ,1
(1983
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127,
内田老 鶴 圃.
2
》 宗宮重行,
吉 村 昌 弘編 ジル コ ニ ア セ ラ ミ ッ クス,
2,(1984>,
149,
内田老鶴 圃.
3
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11>