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人権教育におけるセルフ・エスティームの課題と果たしうる役割

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Academic year: 2021

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(1)33. 人権教育 にお けるセル フ・エ ステ ィームの 課題 と果 た し うる役 害J 野. 崎. On the lssues and Capabilities of Self―. 志. 帆. esteen■. in Human Rights]Education. NOZAKI Shiho Abstract: Self… esteem emerged in the carly nineties as a key concept to be a prenlise of a `sense of human rights'in Japan's human rights education and education for international understandingo Having an extremely `social' nature duc to an influence given by human relations, social Structure and culture around an individ― ual, self―. esteem nceds to be discussed in ter]田 LS Of `quality' rather than `height'.Improving practical use of. self― esteenl. in human rights education needs factors like conditioning by values and basis of evaluation of. selfo A necessary approach varies according to which stage an individual's self― esteenl is at, based on the prenlise that one's self― esteenl changcs dynanlically as he or she devclops.. This paper attempts to exanlinc how the notion of self―. esteenl was introduced, progressed and located in. human rights education, and particularly `what has been elilninated' fronl the notion; reorganise the foriner self― esteenl. types in education for international understanding; and presents some elements of self― esteem. which can be regarded as `basis for a sense of human rights'。. Lastly, the author critically analyses the con―. tents of a curently published educational material focusing on self… considers issues and capabilities of self―. esteem for human rights education, and. estecn■ in human rights education.. 力低 下」傾 向 を受 け,学 習意欲 を高 め る要素 と しての. 1.は. 近年 ,「 セ ル フ ・エ ス テ イーム 下 ,SEと. SEに つい て も取 り上 げ られ る よ うになった。. じ め に. (sel■ esteem)」. D(以. 表記 )と い う概 念 が広 く教 育 の分野 で 頻 繁. 日本 の人権教 育 ,国 際理解教 育 な どの分 野 で ,「 他 者 を尊重す るため には,ま ず 自分 自身 を尊重 で きなけ れ ばな らない」 とい う論理 で ,い わゆる「人権 意識」. SEが. に取 り沙汰 され て い る。例 えば ,2007年 7月 に発 行. や「他者 の 尊重」 の前提 となるキ ー概 念 と して. された 『児童心理』 で は「 自尊感情 を育 て る」 とい う. 1990年 代初頭 頃か ら言及 され注 目され て きた"。 人権. 特集が組 まれ ,子 どもの SEを 主題 とす る著書 も次 々. 教育や 国際理解教育 にお ける この概念 の導入 は,個 々. と出版 されて い る. また文部科学省が 2008年 3月 に. 人が 日常 的 に経験 して い る「抑圧 」 と「人権 問題」 と. 公示 した新学習指導要領 自体 にはその文言 は使 われ な. が い か に して結 びつ くのか とい う こ とを意識 にのぼ ら. か った ものの ,前 提 となる学習指導要領 の改訂 の必要. せ る こ とに よって ,人 権 問題 を「単 に社会 的 に差別 さ. 性 や改訂 内容 につい て示 した中央教育 審議会 の答 申に. れて い る人たちの問題」 としてで はな く,よ り普遍的. お い て は ,現 在 の 子 ど もの 「 自分 へ の 自信 の な さ」. に 自らの 問題 と して とらえる可能性 を拓 い た とも言 え. J。. 「 自尊感情 の乏 しさ」が指摘 され ,主 に「道徳教 育 」. る。. を通 じて「 自分 へ の信頼感や 自信 な どの 自尊感情」 を. SEを 研 究対 象 と して きた の は,も っぱ ら心 理 学 に. 育 て る こ とが 示 され て い る。 最 近 で は ,「 子 どもの 学. お い てであ り,SEは 長 ら く心理学研 究 にお い て社 会.

(2) 甲南女子大学研究紀 要 第 46号. 人間科学編 (2010年 3月. ). へ の情緒 的適応や健全 な精神機能 に とつて重 要 な要 因. 含 めて 整理 しなお し,「 人権 意識 の 基盤」 と して位 置. であ る とされて きた。 一 方 で ,人 間 は基 本的 に SEを. づ け る こ との で きる. 維持 し高揚 させ よ う と行動 し,巧 み に葛藤 を避 け よ う. い 。 また前 述 した筆 者 の これ まで の 研 究 成 果 を も と. とす る側面 が あ る と考 え られてお り,伊 lえ ば ,SEを. に,近 年 の SEに 焦点 を当てた人権教 育教材 の 内容分. 維持 させ るため に「 自分 よ りも劣 った 他者」 と比較す. 析 を行 い ,人 権教育 における SEの 役割 につ い ての課. る こ とに よって相 対 的 に 自己 の立 場 を高 め よ う とす る. 題 と可 能性 につ い て 考察 した い 。. SEの 諸 要 素 を改 め て 提 示 した. 自己防衛的 な比較が生 じる場 合があ る こ とが 指摘 され て い る (宮 本正 -1992)。 言 うまで もな く,こ の こ と. 2.人 権 教 育 に お け る. は SE自 体が本質的 に,他 者 との 対等 な関係性 を結 ぶ. セ ル フ ・エ ス テ イー ム の 位 置 づ け. こ とを困難 にす る側面 を もってい る こ と,ま た対等 で な い 関係性 を生 み 出 し強化す る可能性 を潜在 的 に秘 め. 筆者 は以前 ,1990年 代初頭 頃に SE概 念が主 に 日. た もので あ る こ とを表 して い る。 だか らこそ ,SEは. 本の国際理解教育や同和教育が提唱す る人権教育 に導. 人権教育研究 にお い て正面か ら取 り組 む必要 の あ るテ. 入 されて以降か ら2000年 9月 までの議論の推移 を検. ーマで あ り,人 権教育 の理論構 築 の うえで欠か す こ と. 証 してい る。その中で,国 際理解教育 における SE概. ので きない概念 だ と筆者 は考 えて きた。. 念を,そ れが言及 されるコンテキス トや 目的別に①肯. 筆者 は これ まで ,SEに つ い ての心理 学研 究 の 知 見. 定的な世界観 と「生 きる力」 のための SE,② 他者 の. を「発達」 とい う時間軸 と「社会的文脈」 とい う空 間. 尊重 (人 間理解 )の ための SE,③ 自己の確 立のため. 軸 で整理 し,人 権教育 で 言 われ る ところの「他者 の 尊. の SEの 三つ に分類 した。 さらに,同 和教育発 の人権. SEの 重要性 とい う ものが ,ど の. 教育 における SEを 見てみ る と,特 徴 的 な もの と し. 程度普遍的 で相対 的 な もの なのか につい て考察 を行 っ. て ,④ マ イ ノ リテ イの 低学 力 克服 の 要 素 と して の. た。結論 と して ,SEと は決 して真 空状 態 の 中 で 育 つ. SE,そ して⑤抑圧へ の抵抗感 としての SEと い う類型. もので はな く,人 間関係 や社 会構 造 ,文 化 な ど,個 人. が見 られることを指摘 した中。. 重」 の前提 と して の. を と りま く環境 の 影響 を大 い に受 ける,極 めて「社 会. ①肯定的な世 界観 と「生 きる力」 のための SEと. 的 な」性 質 を もつ もので あ るため ,単 純 に「高 けれ ば. は,他 者や外 界に積極的 に関わった り,自 律的に生 き. 高 い ほ どいい」 ので はな く,そ の 質 こそ を問わな くて. るための基本的 な SEと して とらえて い る もので あ. はな らな いの であ り,SEそ れ 自体 を単純 に人権教 育. る'。 ②他者 の尊重 (人 間理解 )の ための SEは ,最. に とつて「望 ま しい特性 」 と見 なす ことは決 してで き. も一般的に見 られた類型で,「 他者 を尊重す るために. な い こ とを指摘 した。 そ して,実 際 に人権教育が育成. は,ま ず 自分 を尊重する必要がある」とい う論理 で SE. す べ き SEを 設定す る場 合 は,背 景 となる価値 観 や ど. ・ 。③ 自己の確 立の の重 要性 を位置づ けるものである. の よ うな基準 に よる SEを 育成す るか な どの 条件 づ け. ための SEは ,「 アイデ ンテ ィテ ィ」や「 自己 (個 ). が必要 で あ り,発 達 に応 じて ダイナ ミックに変 容す る. の確 立」 といった,従 来用 い られて きた別の類似概念. SEが どの プ. と結 びつ け,そ れ らの同義語 として用 いてい るもので. ロセ ス にあ るか に よって必要 な働 きか けは異 なる こ と す で に人権. あ る。それ らの 中に は,「 日本 人 と しての 自己 の確 立」や「 日本人 としてのアイデ ンティテイ」 を述べ て. SE概 念 の導入が始 ま ってい るが 出版 されて い る人権教育の SEに 関 わ る教材 や 人権学. の要素 としての SEと は,同 和教育 におい て,被 差別. 習 プ ロ グラ ムは この よ うな点 を踏 まえて開発 されて い. 部落 の子 どもの学力向上の手がか りを得 るために着 目. るのか ,課 題 が あ る とす れ ばそれ は何 か ,SE概 念 が. された「自己効力感 としての. 実際 の人権学習 にお い て 本当 に呆 た しうる役割 とは何 なのか ,そ してそれ を活 か した実際の人権学習 プ ロ グ. して⑤抑圧へ の抵抗感のための SEも 同和教育か ら提 唱 されて きた もので,こ れは自己や社会へ の認識 を土. ラム とは ど うい うものか を,検 討す る必要が あ る。. 台に,自 らを抑圧 しているものに対する抵抗感の前提. プ ロセス を経 るこ とを前提 に し,個 人 の な どを指摘 した (野 崎 1999,2000,2004)。 教育実践 にお い て. ,. ・ 。④ マ イノ リテイの低学力克服 い る もの も見 られる. SE」. を指 してい る。そ. の導入 の推移 とその 後 の位 置 づ け の 中 で 「捨 象 されて. となる人間の基本的欲求 として SEを とらえる もので 絢 ある 。. きた もの 」 を中心 に検証 し,以 前筆者が提示 した国際. これ らはあ くまで コンテキス トや意味付 けによる類. そ こで本論文 で は,ま ず 人権教 育 にお け る. 理 解教 育 にお け る. SEの 類 型. (野 崎 ・平 沢. SE概 念. 2001)を. 型であ り,し たがってそれぞれは理論的に見ると全 く.

(3) 野崎. 志帆 :人 権教 育 にお ける セル フ. エ スティームの課題 と呆 た しうる役割. 異なる別個 の もの とい うわけではな く,例 えば②③④. この よ うな認識 を実際の人権教育実践 の 中に位 置 づ. ⑤ は大 まかに言 うと① を基礎 に した発展型 と言 えるた. け,世 界 で は じめて体系 的な人権教 育教材 を作 成 した. め,そ れぞれの類型は互 い に重 なる部分 を当然 もって. ラル フ ・ペ ッ トマ ン (Pcttman,R。 1989,5p。 )は , 1989. い る。 また,そ れぞれの類型が登場する頻度や普及度. 年 には 国連 か ら,各 国 で基 本 的人権 を教 えるため の初 等 ・ 中等教 育用実践 ガイ ド小 『ABC:teaching human. にはかな りの差がある。 さらに,こ れ らの SEの 類型 を整理す ると,④ 以外. rights』. の 中で ,「 自分 自身に人 間 で あ る こ との価値 を. はいずれ も人権意識の基盤,あ るいは人権意識 の前提. 認 め られ ない と きに は,他 人の権利 を認め るの は難 し. となるもの として意味付 けられてい ると考え られる。. い ものです。 この よ うな場合 ,人 権 につい て教 えるに. 一方④ は,基 本的にはマ イノリテイの教育へ の平等 の. は,出 発点 に戻 って ,い か に 自信 と寛容 な心 (conidence. アクセス を問題に してい る点で他 の もの と質的 に大 き. and social respect/social tolerance)」. く異 なる。別 の言 い方 をすれば,人 権教育 の 中で も. か ら始 め な くて はな らない で しょう」 と した。重要 な. 「人権 としての教育 (education as a human rights)」 "の. を持 つ か とい う点. のは,彼 が SEを 人権概念 を根底 か ら支 える もの と し. 側面か ら見た SEの 意味付 けと言 う事 がで きよう。 し. て位 置 づ け,さ らにそれ を学習す るため に,学 習者 の. ,大 きく分 けて. 主体 性 を尊重 した経験 主義 的 な学 習 方 法 ,い わ ゆ る. たが って,人 権教育 にお ける SEは. 「人権意識 の基盤」 と「マ イノリテ イの低学力克服 の 要素」 の二つの コンテキス トに位置づ けられて きた. ,. と理解す ることがで きるだろう。 以下,こ の二つの コンテキス トにおける SEの 詳細 な検討の後,上 記五つの類型 を再度検討す る。. 「参加型学習」 を紹介 して い る点であ る。 またその他 に も,欧 米諸 国 を中心 に各国 の教育者達 は,開 発教育 ,環 境教育 ,グ ローバ ル教育 ,ワ ール ド ・ス タデ イーズ な どの新 しい教 育理論や学習者 中心 の 活動 的 な方法論 を発展 させ た。「 参加型学 習」 の よ う な経験 主 義的 な学習方法が開発 され る よ うにな った背. 1)人 権意識 の基盤 と してのセルフ・エスティームヘ の着 目. 景 には ,そ れ まで の 知 識 中心 の 国際理 解 ,開 発 ,環 境 ,人 権 に関わ る教育が ,現 実 的 な課題 に直面 した際. 1978年 ユ ネスコ「人権教育に関す る国際会議」「最. に,か え って学習者 に無力感 を味 わわせ る結果 になっ. 終文書」 の「付属文書」 において,「 人権 プログラム. た こ とへ の 反省があ る。 つ ま り,課 題解決 のための積. は,人 権 についての態度形成が乳児期及 び児童期前半. 極 的行動 に結 びつ く人権教育 が重視 されたのであ る。. に始 まるとい う事実 を考慮せねばならない。人権 の真. 参加型学習 とは,狭 義 ではゲ ームや ロール プ レイ な. の基礎 である自尊心 と他人の尊重 の概念はまず家庭内. どの 活動 を用 い る体験学 習法 を指 し,広 義 で は歌 や踊. で伝 えられる。 したが って,両 親相互お よび全家族成. り,演 嫁lな どの文化 的活動 な ど,一 方 的 な知識 の教 え. 員相互の間に,両 親が人間的で公平な関係 を形成する. 込み以外 の さまざまな方法す べ て含 む,体 験 や参加 を. のに役立つ家庭生活教育 を提供す ることが不可欠であ る」 (ユ ネス コ訳書 1989,100頁 )と して,SEが は じ. 重視 す る学習方法 の こ とを言 う。参加 型学習 は,フ ァ. めて人権教育に関わる国際文書 で取 り上 げられた。 ま. るこ とが 多 い が ,教 える もの と教 え られ る もの との 関. た 1985年 欧州協議会「学校 における人権 につい ての. 係 が固定化 されず ,参 加す る学習者 の相 互作用や対話. 教授 と学習 に関す る勧 告」 では,「 人権 と結合 した概. に よる理 解 が はか られ ,学 習 者 の. 念 は早期 の段階で習得 され うる し,す べ きである。た. や ,学 習者 の気 づ きの プ ロセスが重 視 され る。. とえば,対 立の非暴力的解決,他 者 の尊重 はす でに就. シ リテ ー ター と呼 ばれ る進 行役 の援助 の もと進 め られ. SEを 高 め る こ と. 阿久澤 (2001,29頁 )は ,日 本 の参加 型学 習 は「『ア. 学前 の生活や低学年 で経験 され うる。幼少期教育 の殆. クテ ィ ビテ ィを行 ってか ら,参 加者 の発言が増 えた』. どは社会化 に関 してであ り,こ うして殆 どが コ ミュニ. 『体 を動 かす こ とで 参加 の 実感 が深 まる』 な ど,教 室. テイで仲良 く生活す るための学習 についての定義 であ. や会場 を盛 り上 げる こ とばか りに,評 価 が集 中 しが ち. る。他者 の尊重 は 自尊感情か らもた らされる。 」 (河 内. で あ る」が ,本 来 は,「 学習者 が参加 型学 習 で獲 得 し. 1994,22頁 )と してい る。sEは 人権尊重 の態度形成. た主 体 的 な知識 ,意 欲 ,ス キル を,社 会 とい う コ ンテ. に大 きく関わ ってお り,人 生の初期 にお け る 身近 な 人 々の人間的 ・公平な関係が SEと 他人を尊重す る態. クス トの 中で生 かせ るこ と,い わば民主 主義社 会 の積 極 的担 い手 となるこ とを 目指す もの 」 なのだ と して い. 度を形成する とい う認識 が,そ の概念 の導入 の出発点. る。. においてまず示 されたのである。. 現在 このような手法が用 い られてい る分野 は,芸.

(4) 甲南女子大学研究紀要 第 46号. 人間科学編 (2010年 3月. ). 術 ,ま ちづ く り,社 会 変 革 ,自 然 ・環 境 ,教 育 ・学. る。 この 教材 の は じめの説 明 の 章 の 中 で は ,「 もの の. 習 ,臨 床心理 …etc。 と多 岐 にわた るが ,中 で も,現 代. 見方 につい ての意識 」 と,そ れ に付 随す る異 なる集 団. にお ける環境 ,教 育 ,人 権 ,平 和 な ど,複 雑 か つ 広 く. に属す る人 々に対す る敬意や平等 とい った意識が育 つ. 絡 み合 って 明解 な唯一 の 解決策 を見 つ ける こ とが難 し. には,ま ず 自らを価値 あ る もの と誇 れ る気持 ちが な く. い 問題 こそ ,個 人があ きらめた りillrt立 せ ず に,集 い あ. てはな らない とされて い る。 また ,こ の. い 問 い あ う学 びが必 要 とされ る (中 野 2001)。. SEは , 新 し. したが. い こ と,論 争 的 な問題 ,未 知 の 考 え方 な どにあ えて挑. って参加型学習 の現 代的意義 は,単 に学習 プ ロセ スヘ. 戦 しよう とす る態 度 を促す もので あ り,さ らに,「 自. の学習者 の積極 的参加 とい う意味 だけにあるので はな. 分 に価値 を認 め ,他 人 の それ を も正 しく評価 で きる子. く,参 加 と対話 とい う民 主的 な方法 に よつて ,学 習者. どもは,差 別や不平等 を黙 って受 け入れ る こ とが 少 な. 自身が社 会 に主体 的 に関わ つてい くための学 び を作 り. く,不 正 に立 ち向か ってい く言 われて い ます。特 に年. だ し,一 人一 人が社 会 の主 人公 として社 会 に参画 し. が上 にな る と,SEが 強 い ほ ど,何 か難問 にぶ つ か っ. 人権 問題や環境 問題 な ど現 代 の深刻 な社 会問題 を解決. た ときや 危機 に直面 した ときに,他 の 人 をあて に して. す るため に必要 な力 を獲得す るこ と,社 会 に現実 に存. なん とか して もらお う とはせ ず 自分か ら進 んで解決す. 在す る抑圧 や支配 ―被支配 の 関係 に気 づ き,そ れ を生. る心 構 えがで きて い るのです」 (10頁 )と して ,人 間. み 出 して い る社 会構 造 を変革 して い くこ とに あ るので. と して何 か を選択 す る ことがで き,か つ 自分 も世界 で. あ る。. 意味 の あ る行動 がで きる ことに気 づ い て い くに は,SE. ,. が極 めて重 要 なのだ と して い る。. 2)日 本 の人権 教育 にお けるセ ル フ・ エス テ ィーム 概. にあ る差 別や不平等 な どの不 正 に立 ち向か い解決 しよ. 念 の 導入 この よ うな欧米 で 開発 された新 しい教育理論 や方法 論 に基 づ く教 材 が ,1990年. この よ うに見 る と 『い っ しょに学 ぼ う』 には,現 実. 代 頃か ら 日本 で 翻 訳 ・ 出. う とす る力の基礎 と して SEを 位置 づ け よ う とす る コ ンセ プ トが背景 にあ る ことが わか る。 しか しなが ら. ,. sE概. この教材 が対 象 とす る年齢集 団 が幼 児 お よび小 学校低. 念 を教育現場 に紹介す る こ とになった教 材 の うち,こ. 学年 で あ るこ とか らか ,実 際 に提案 されて い る学習活. こで は 『い っ しょに学 ぼ う』 (Fountain,S.1990)お よ. 動 には この よ うな コンセプ トは直接 的 には反映 されて. び 『わ た し,あ な た ,そ して み ん な』. お らず ,あ くまで一 般 的 な コ ミュニ ケ ー シ ョンカや協. 版 されは じめ る。事実 上 日本 にお い て は じめて. (Callister,E。. ,. Ю Davis,No W。 ,Pope,Bo S.1988)を 取 り上 げ た い 。 『わた し,あ なた ,そ してみ ん な』 は,主 に十代 の 子 どもたちを対 象 に「 自分」 や 「人間関係」 につい て考. SEの 育成 にそのね らい は終始 してお り,人 間関係 ,集 団活動 の基 本 に SEを 位 置 づ け て い. 力活動 のための. る点 で二 つ の教材 はほぼ共通 して い る とい える。. えるための教材 と して,オ ース トラ リアの教 師 たちが. 以上 の よ うな,積 極 的 に環境 に働 きかけ関わ ろ う と. 開発 した教材 で あ る。 まず 自分 を好 きにな り,親 密 な. した り,他 者 を尊重す るため に必 要 な 「 自分 自身 を知. 人間関係 を豊 か に育 て ,集 団活動 を組織す る力 を身に. り,あ るが ままを受 け入れ ,自 分 を大切 にで きる」SE. つ けるため の 参加型 の学習方法 が 140に わた つて紹介. の 意義 を認め なが らも,こ の よ うな意味 に限定 されて. されて い る。 この 中 で「 自信 を持 て る大切 なわた し」. 用 い られ る. SEに 異 議 を唱 え た の は 同和 教 育 で あ っ. SEは ,「 わた しの 価 値. た。 同和 教育 に とつて ,SEと は単 な る現状 肯 定 以上. を認 め る こ と」「わた しが好 きだ と感 じられ る こ と」. の もの と して位置 づ け られて きたか らであ る。 同和教. 「わた しを大切 にす る こ と」 の 3つ の 要素 か ら構 成 さ. 育 で は ,既 存 の 社 会秩 序 や価 値 体 系 を批 判 的 に認 識. れて い る とす る。 また SEと は ,「 自分 自身 を知 り. し,自 らの社会 的立場 を自覚 して葛藤 に立 ち向か い抑. あ るが ままを受 け入れ ,自 分 を大切 にで きる」 こ とだ. 圧 をはね返そ う とす る「抵 抗 感」 こそが重視 されて き. と定義 されて い る。. た。 同和教育 は,「 自己認識」「環境認識」 を促す 事 に. とい う言葉 で 表現 されて い る. ,. 一 方 ,『 い っ しょに学 ぼ う』 は 多文化 0多 民族社 会. よって ,自 らを抑圧 して い る もの に対す る抵抗 感 の前. SEに 働 きか け SE概 念 が もつ 弱 さを. イギ リスで 開発 された幼児 (教 育 )お よび小 学校低学. 提 にあ る,人 間 の基本的欲求 と しての. 年 用 の 国際理 解教 育 プ ロ グラムで あ る。 この 教 材 で. て きたのであ る。前述 の よ うな. は ,SEの 他 ,コ ミュ ニ ケ ー シ ョン能力 ,協 力 す る能. 克服 す るた め に ,近 年 で は「 レジ リエ ンス. 力 な ど,幼 児期 に伸 ばせ る とい う重要 な能力 を育 て る. ience)」. ための 多 くの体験 的 な参加型学習が取 り入れ られて い. もな っている (森 2000)。. H)(resil―. とい う概念 を用 い る こ とが 提 起 され る よ うに.

(5) 野崎 志帆 :人 権教育 におけるセルフ エステ ィームの課題 と果 た しうる役割. 4)「 自己効力感」「社会変革志向」 としてのセルフ・. 3)マ イ ノ リテ ィの 低 学 力克 服 の 要 素 と しての議 論 同和教育 におい て,SEと い う概念が初 めて取 り上 げられた文脈 は,被 差別部落 の子 どもの学力向上へ の 手がか りを得 るために,ア メリカでの黒人の子 どもの 0に ならい 学力 と SEと の関連 につい ての研究 ,1985 年か ら大阪 を中心 として子 どもの SEの 調査. B)を. 37. エスティーム 池田は,「 自分 もやれ ばで きるのだ,少 しくらい壁 にぶつかつて も,あ るい は困難 にぶつかつて も,そ れ を乗 り越 える力が じぶんにはあるのだとい う,自 分が. 行っ. もってい る力 に対す る確信 が大事 で あ る」 (同 掲 33. たことにある。これ らの調査 に当初か ら中心的に関わ. 頁)と し,そ れを「自己効力感」 と呼 んで学校や地域. り,以 後同和教育 において学力 との関連 で 自己概念 の. での取 り組みにお いてこれを育てることを提起 した。 とは,心 理学 におい 「自己効力感 (seliefficacy)И. 理論 に早 くか ら着 目して きた池田 (2000,65-129頁. )」. ). は,自 己概念 の もつ多様 な側面の どの側面が学力 とよ. ては,あ る課題 に直面 したときに,そ の課題 を自分 の. り関わ りが深 いかについて,心 理学 におけるさまざま. 力 で効果的 に処理で きる とい う信念 をいい,こ れは. な知見 を用 いて整理 を行 っている。池田は,自 己概念. 特定 の状況における行動の遂行可能性 に関す る SEで あ り,「 ある行動があ る結果 を導 くだろう」 とい う結. の中で も「自分の行動の結果が どうい う原因に よって 生 じたのか,そ の原因は自分 の責任 によるものか,そ れ とも自分以タトの何 ものかによって もたらされた もの. ,. 果予期 を扱 った もの とは区別 される。 この 自己効力感 は,自 らの有能 さ (知 的 ・社会的 ・身体的能力や技能. るか」 (前 掲 100頁 )と いった環境統制感が,学 力や. などに関する適性 )を どのように感 じ認識 してい るか がその高低 に影響 して くるため,認 知能力 とも深 い関. 能力 の評価や達成意欲 を規定する根底的な要因になっ. 連がある。 また これは,課 題へ の達成動機 にも影響 を. てい るとす る。 またそれはホワイ ト (White,Ro W。 ). 与 える。. か といったことを,子 ども自身が どの程度理解 してい. の言 う「効力感」 と同様 の もので,効 力感 とは「何か. 宮本美沙子 (1981)は このような自己効力感の向上. をしてい るとい う感 じ,活 動的ない しは効果的である. のために,日 標達成 のための手段的活動 として行為的. とい う感 じ,何 かに影響 を及ぼ してい るとい う感 じ」. 手段活動. だとい う。 さらに,こ のような効力感や環境統制感 の. 練 ,状 況設定,援 助 を活用 し目的を果す)と. ある状態 とは逆 の状態 としての「学習 された無力感」. 手段 を探 る精神的手段活動. をとりあげ,次 の ように説明す る。. ージをもつ,長 期 の達成 のために自己統制する,創 造. (情 報収集,試 行 ,現 実検証 ,自. (目. 己主張,訓. ,有 効 な. 標設定,計 画性 ,イ メ. 性 ,状 況判断,熟 慮性)を 教育訓練す ることの重要性 自分ではどうしようもない逃れ られない環境 の. を強調 してい る。 この ような手段活動 が習得 されれ. なかにおかれつづ けてい ると,そ の状態にならさ. ば,「 個人 は課題 と一体 となって 自己実現 で きる よ う. れて しまうだけでな く,本 来 もっていた欲求や意. にな り,満 足 の感情が SEを 育 て,そ れが 自己の有能. 欲 さえな くして しまうので あ る。人 間 の場合 で. 感 を刺激 し,さ らに別の課題に取 り組 む達成動機 を促. も,働 きかけて も変わらない硬質な素材に囲まれ. 進する」 ことになる. (内 藤 1992)。. て育 った子 どもは,ま わ りの環境 にも積極的 に働. このように,自 己効力感 は主体性 を尊重 した方法 と. きかけようとする意欲が乏 しく,人 間関係 にまで. 実際の達成経験 の認知に よつて形成 されてい くと考え られてい る。 この 自己効力感が,日 標遂行へ の動機づ. 消極的になって しまう。 境 も無力感の形成に大 きな役割 を呆たす。い ろい. 、 亡 理学研究 では見 けや努力 に深 く関わってい ることがノ い に直 ほどこれが困難 出されてお り,自 己効力感が高. ろなかたちの社 会的,心 理的壁や障害が,心 配や. 面 した ときの耐性 となるとされてい る。. 物理的環境 だけでな く,人 間的環境や社会的環. 意欲減退 をひきお こす。特 に社会的な障壁 に取 り. また,こ のような学力 につ ながる SEへ の着 目の前. 囲まれてい る子 どもは,み ずか らの努力や意欲 で. 提 には,同 和教育 において,教 科学習の結果得 られる. はどうしようもない現実 に何度 もぶつかる ことに. 一 般 的 な学力 とはむ しろ趣 を異 に した,「 解放 の 学. よつて,現 実 と闘お う とす る意欲 を失 って しま. 力」 と呼 ばれる運動論的「学力」が従来提唱 されて き. う。失敗 を繰 り返す うちに,無 力感 を身につ けて. たことがあった。同和教育が差別か らの解放 を目標 と. しまうのである。つ まり,状 況 を統制で きない と 感 じると,自 分 の行為 の結果 をよくしようとする. してい るか ぎり,こ こで言 う「学力」 とは単 なる「受 験 の学力」 ではな く,「 人間解放 につ ながる学力」 で. 意欲 まで減退 して しまうのである。 (前 掲 103頁 ). ある必要がある。 したがつて,こ こでい う自己効力感.

(6) 甲南女子大学研 究紀要 第 46号. 人間科学編 (2010年 3月. ). とは,社 会の現状 を変えてい くことがで きる とい う信. の前提 と しての 自己尊重 をは じめ ,す で に述 べ て きた. 念 ,変 えていこ うとい う意欲を意味する「社会変革志. よ うな 「 自分 自身 を知 り,あ るが ままを受 け入れ ,自. 向 としての. SE」. につ ながるものでな くてはな らなか. 分 を大切 にで きる」 とい った ,日 本 で一 般 に流 布 した. SEの 類型 とは趣 を異 にす る もので あ る。 しか しなが. ったのである。. ら,こ の ような 自己効力感 は人権教育 にお い て不可欠. 5)セ ルフ・エステ ィーム概念導入時 に捨象 されたもの す でに 1)で 見 て きた よ うに,SE概 念 は ERICに. け となる「社 会 の現状 を変 えて い こ う」 とい う意欲や. よる海外 で開発 された教材の翻訳 ・出版によって,日. 姿勢 と密接 な関連が あ る。. 本 の人権教育関係者 に急激に広 まった。SEは 人権教. な,人 権 に関わる課題解決のための積極 的行動 の裏 づ. この よ うな. SEの 位 置 づ け は,本 来 は SE概 念 と同. 育に導入 されるその出発点において,人 権 の尊重や他. 時 に 日本 に も広 く普 及 した前述 の参加型学習 の根底 に. 者 の尊重 の態度形成に大 きく関わってお り,ま ず もっ て「人生の初期における身近な人 々の人間的 ・公平的. 流 れ る哲学 に組 み込 まれて い た ものであ った。参加型 学習 とは,学 習者 中心主義的 ,経 験 主 義 的 な手法 に よ. な関係によって形成 される」 と言及されたことが,人. る学習 に よって ,ま さに社会 の現状 を変 えて い くこ と. 権教育 の実践教材 の 中にそれが位置づ け られ る際 に. がで きる とい う信念 ,変 えて い こ う とい う意欲 を含 む. も,人 生の ご く初期 の基本的な段階の SEの みに焦点. 「社 会 の 問題 を解 決す るため に必 要 な力」 を獲得 す る. を当て,「 SEを 育 てること」 をね らい とした実践 の導. こ と,社 会 に現実 に存在す る抑圧 や支配 一被支配 の 関. 入へ と導 いたように思 われる。つ ま り,「 人権教育ヘ. 係 に気 づ き,そ れ を生 み出 して い る社会構 造 を変 革 し. の SE概 念 の導入 =SEの 育成 を 目的 とした実践 の導. て い くこ とを 目的 と した学 びの ス タイルであ る。 しか. 入」だ ったことがわかる。その結果,SEに 焦点 を当. しなが ら,参 加型学習が 日本で急激 に普 及 して い く中. てた実践 は多 くの場合小学校低学年 までの取 り組 みに. で ,こ の よ うな参加型学習 の 本来 の 目的 は捨 象 されて. 止 まってお り,そ の後の発達段階における SEに 関連. しまった 。参加型学習 にお い て「教 える もの と教 え ら. づ けての議論はほとん ど見 られない。 また SEは 多 く. れ る もの との 関係が 固定化 されず ,参 加す る学習者 の. の場合,前 述の①肯定的 な世界観 と「生 きる力」 のた. 相 互作 用 や対話 に よる理 解 が はか られ ,学 習者 の SE. 間理解)の ための SEの. を高め るこ とや ,学 習者 の気 づ きの プ ロセスが 重視 さ. 意味 として捉 えられてい るが,そ の実際の定義づ けは. れ る」 といっ た場 合 の「SEを 高 め る こと」 は,「 一 人. 「 自分 自身を知 り,あ るが ままを受け入れ,自 分 を大. 一 人が社会の主 人公 と して社 会 に参画 し,人 権 問題 や. 切にで きる」 といった,抽 象的 な 目標概念の域 を出な. 環境 問題 な ど現代 の深刻 な社会 問題 を解決す るため に. い ものである。そ して,『 いつ しょに学ぼう』 の コン. 必要 な力」 につ なが る 自己効力 感 と しての SEと して. セプ トにあるような,SEを. ではな く,単 に「 自分 自身 を知 り,あ るが ままを受 け. めの SEや ②他者 の尊重. (人. ,新 しいこと,論 争的な 問題 ,未 知 の考え方な どにあえて挑戦 した り,差 別や 不平等 を黙認するのではな く,あ えて不正に立ち向か. 布 して しまったのであ る。 しか し人権教育 の 中 で ,改. ってい く態度を促す もの,自 分 も世界で意味 のある行. めて この よ うな 自己効力感 としての. 動がで きる と思えるための もの としての意味づ けは. 革志 向 と しての SEを 明示 して い くこ との重 要性 や意. ほとんど見 られない (野 崎 2001)。. 義 は,言 うまで もな く大 きい。. ,. 入 れ ,自 分 を大切 にで きる」 とい う形 と して一 般 に流. SEお よび社 会 変. 一方,同 和教育における SEに 関す る理論研究は. ,. まず もって被差別部落の子 どもの学力に関す る議論か. 6)人 権 意識の基盤 と しての セル フ・エ ステ ィーム再考. ら出発 した ものではあ ったが,こ こで示 される「自己. そ こで ,前 述 の人権教育 にお ける コンテキ ス トや意. 効力感 としての SE」 ,そ してその発展型 としての「社. 味付 けに よる SE類 型 に見 られた,人 権 意識 の 基盤 と. とい う視点 は,実 は よ り普. しての SEと してあげた①②③⑤ に,④ マ イノ リテ イ. 遍的な人権教育にとって も重要かつ不可欠なものであ. の低学力克服 の要素 としての SEの 議論 の 中で言及 さ. るはず だが,そ の他 の国際理解教育な どでは,少 な く. れていた,「 自己効力感 としての SE」 および「社会変. とも明示的には取 り入れ られて こなか った。 自己効力. 革志向 としての SE」 を加 え,下 記 の六つ の類型 を. 感 は,特 定 の状況 における行動の遂行可能性 に関する. 「人権意識 の基盤 としての SEの 諸要素」 として実際. SEで ある とい う点で,「 自己の価値に対す る確信」 と する広義 の SEの 下位概念に位置するが ,他 者 の尊重. に位置づ ける ことがで きるか,ど のように位置づ ける. 会変革志向 としての. SE」. ,. ことがで きるか検討する6).

(7) 野崎. 志 帆 :人 権教育 にお けるセル フ. エスティームの課題 と果た しうる役割. ①肯定的な世界観 と「生 きる力」のための SE. あることは言 うまで もない。最後 の⑤抑圧へ の抵抗感. ②他者の尊重 (人 間理解)の ための SE ③ 自己の確立のための SE. のための SEに ついて も,こ れまで筆者 は「葛藤 を抱 えてい る者,抑 圧 に抗 してい く者が もつ主体 としての エ ネルギー としての SE」 とい う捉 え方 の意義 につい. ④自己効力感 としての SE ⑤抑圧への抵抗感のための SE. て主張 して きた (野 崎 2000,2001)。. この よ うな見方. は,改 めて「人間の尊厳」について考 えるきっか けを. ⑥社会変革志向 としての SE. 学習者 に与える可能性がある。 以上 のことか ら,現 時点で人権教育 における人権意. ①肯定的な世界観 と「生 きる力」のための SEは 、 と 理学の見地から見てもご く初期段階の SEの 特 発達′. 識 の基盤 としての SEの 諸要素 として挙 げ られ るの. 徴から,他 者や外界に積極的に関わつたり,自 律的に. は,下 記 の 6つ としたい。ただ しこれ らは,人 権意識. 生 きるための基本的な SE,そ して②③④⑤⑥ の基礎 をなす ものとして位置づけてよい と考える。. の基盤 としての SEの 必要条件 ではあって も十分条件. ,. ②他者 の尊重 (人 間理解 )の ための SEは ,人 権意 識 の基盤 としての最 も中心的要素になる。 ただ し② に は,発 達段階のご く初期 においてはほぼ① と重なる次 元 もあれば,成 長す るにつ れて同 じ「他者 を尊重す る」 といって もその様相 は異なって くると考えられる ため,い くつ かの段 階に分 ける必要があ る と思 われ る。 また,身 近な個人 レベルでの,ま た容易 に同一視. ではない。今後,こ れ らが さらに分割 された り追加 さ れてい く可能性 はある ことは付記 してお きたい。. ①肯定的な世界観 と「生きる力」のための SE ②他者の尊重 (人 間理解)の ための SE ③ 「開かれた自己」の確立のための SE ④自己効力感 としての SE ⑤抑圧への抵抗感のための SE ⑥社会変革志向としての SE. 可能な「他者 の尊重」 を指すのか,見 ず知 らず の「異. 3.セ ル フ ・エ ス テ イー ム に焦 点 を当 て た. なる」他者にまで広がる普遍的な「他者の尊重」 を指. 人権教 育教材 の 事 例 分析. すのかによって も区別は必要であろう。 ③ 自己の確 立のための SEに つい ては,筆 者 は拙稿. (2003)に て批 判的な検討 を行 っている。「 自己 の確 立」が,他 者 との差異 を本質主義的にとらえ,統 合 さ れ一貫性のあるもの,ま たそこに「安住. (完 結)す. る. こと」 を指すならば,そ のような志向性 は既存 の抑圧. /被 抑圧関係 を構築 (あ るいは強化)す ることはあっ て も,少 な くとも「共生」関係 を構築するものにはな. それでは,近 年 日本で出版された,SEを 扱 ってい る人権教育教材 について詳細な分析を行いたい。 ここ では,事 例 として 『自分 を好 きになろう一セルフ・エ スティーム と人権感覚』 (中 川 2005)を 取 り上げる。 これは,筆 者の知 る限 り現時点で唯一の SEを メイ. らない と考える。代 わ りに,自 己は歴史や社会関係 に. ンテーマ として扱 った人権教育の一般向けの読 み物 で,ペ ージ数 も54ペ ージと少なく,手 軽に読める小. 規定 されてい ることを承知 しつつ も,し か し決 してそ. 冊 子 とな って い る。 また明示 こそ され て い な い もの. れによって運命づ けられているのではな く,自 分 の意. の ,本 文献 は比 較 的高 い年齢層 (成 人)を 対象 に して. 思や認識,他 者 との対話 によって関係性 を方向転換 さ. い る よ うに見 える。 これ まで指摘 して きた よ うに,従. せた り,再 構成 させてい くことがで きる「開かれた 自. 来. 己」 の確 立 として定義づ けるならば,そ れは人権意識 の基盤 としての SEと して位置づ ける ことがで きると. 育段 階 の子 どもを対象 に して い る ものが ほ とん どであ り,そ の 内容 も学習者 の認知発達 の レベ ルに制約 を受. 考える。. け るためか ,「 人 間関係 や協 力活動 に必要 な コ ミュ ニ. そ して④ 自己効力感 としての SE,お よび⑥社会変 革志向 としての SEと い う要素 の意義 についてはす で. ケ ー シ ョン能力 を支 える SEを 育成す る」 とい った形 で ,概 ね似 た よ うな内容 となって い る。 したが つて今. に述べ た通 りであるが,こ れ らはいず れ も「人権意識. 回は,認 知 的 な発達 をあ る程度果 た した学習者 を想定. の基盤 としての SEの 諸要素」 として不可欠な もの と. した教材 の学習 内容が ど うい うものであるか を検 討す. して位置づ けるべ きであろう。ただ し,⑥ 社会変革志. る必 要 が あ る と考 えた。 この こ とは,今 後 さまざまな. 向 としての SEに は,そ れを方向づ け るある「価値 づ. 発達段 階 を想定 し学習 の全 体像 を検 討す る際 に も有益. け」が必要 であること,ま た「変革す べ き社会 の状. だ と考 える。本文献 の分析 を通 して ,SEに フ オー カ. 況」 を批判的に認識することので きるスキルが必要で. ス した場合 の人権教 育 の 内容が現 時点 で ど うい うもの. SEに 焦点 を当てた教材 とい うの は就学前 ・初等教.

(8) 甲南女子大学研 究紀要 第 46号. 40. と提示 されて い るのか を見 て い くこ とに した い。. 人間科学編 (2010年 3月. ). を反 撃 され る恐 れの ない誰 か にぶ つ けて解消 しよ う と す るメカニ ズムが働 くのだ と,電 ヽ 理学 的 に説明す る。. 1)『 自分 を好 きになろ う一セル フ・ エス テ ィーム と人. そ して ,「 自分 自身 を きち ん と評 価 で きれ ば ,他 の 人 々の 意見 に耳 を傾 ける こ ともで きるで しょう し,人. 権 感覚』 の概要 中川 は この 小冊子 の「 は じめ に」 で ,SEを 「 自分. び とと議論 し,相 手 を傷 つ けず に 自分 の 意見 をさわや サ ー テ イブネス)も で きるで し. に 自信 を もち,自 分 を価値 ある もの と して誇 れ る気持. か に主 張す る こ と. ち」 と し,「 自分 の 長 所 や才 能 を評 価 す る だ け で な. よう。 … (中 略 )… 。 SEは ,対 立 ・葛藤 を非暴 力 的方. く,む しろ,自 分 の 欠点や才能不足 のため十分 な結果. 法 で 解 決 す る こ との 前 提 条 件 で もあ る の で す 」 (33. が 出せ ない こと も含めて ,あ りの ままの 自分 を肯定 的. 頁 )と して い る。. に受 け入れ るこ とも大切」 と して い る。 また. SEは. ,. (ア. そ して ,「 子 ど も もお とな も,私 た ち 一 人 ひ と り. 「 私 た ちが ,社 会 的 人間 と して ,ど の よ うに人間関係. が ,そ れぞれ確 か なア イデ ンテ ィテ ィを もち,自 分 自. を構築 し,課 題 に ど う反応 し行動す るか ,つ ま り,そ. 身 を積極 的 に評 価 で きる ような 一 したが って ,他 人の. れぞれが い か に生 きるか ,と い う こ とに大 きな影響 を. 足 引 っ張 りをす る よ うな屈折 したパ ー ソナ リテ イにな. 及 ぼ す こ とが ら」 だ と し,SEの 「 プ ラ スの 評 価 」 と. らない 一セル フ ・エ ス テ イー ム を育 むための学習方法. 「マ イナ スの 評価 」 を した場 合 の 下記 に示す 二つ の 側. を,次 頁 以 降 に紹介 してお きま しょう」 (34頁 )と. ,. 面 に焦点 を当て ,社 会心理学 の実験 や教育活動 ,さ ま. 子 どもの SEを 高 め ,子 どもが 自分 や他 人 を積極 的 に. ざ まな 人権 侵 害 に 関 わ る事 象 な どを紹 介 しなが ら. 評価 で きる よ うに促す ことをね らい とした 4つ の アク. ,. 「 シ ャー プな人権 感覚 」 を育成 して い くた めの 課題 に. テ ィビテ ィ. (「. わた しの体」「 もし,わ た しが ,… だっ. ・」「特 別 な編 集」「 人間 レシ ピ」)が 紹介 され て た ら…. つい て考 えるこ とを 目的 と して い る (前 掲 3-4頁 )。. (1)自 分 自身 の 積 極 的 な生 き方 に影響 を与 え る と か ,他 者 へ の優 しさ・思 い や りな ど,プ ラス には. い る。 次 に,子 どもの 虐待 問題 を取 り上 げ,虐 待 す る親 に 共通す る特徴 の一 つ と して,そ の 親 自身が子 どもの 頃. た ら く面. (2)そ れの裏返 しと して劣等感 ・ コンプ レックスな. に「かけが えの な い大切 な存在」 と して扱 われ なか っ. どか ら くる問題 的行動 の要 因 ・誘 因 となる,マ イ. た こ とや ,配 偶者 か ら暴力 をふ るわれ るな ど家庭 内 の. ナ スにはた ら く面. 人間関係 が うま くい か な い こ とな どか ら くる ,SEの. 中川 は,ま ず アメ リカの工場 労働者 を対 象 に したホ. 低 さが あ る こ とを指摘 す る。 また 同時 に ,失 業 ,貧. ー ソン実験 %を 例 と して取 り上 げ ,行 ってい る活動 に. 困 ,不 適切 な住居 ,不 十分 な教育 の機会 しか与 え られ. 対す る誇 りや 自己 の価値 を認め られ るこ とが ,人 間 の. なか った ことや ,孤 立 な どの社 会構 造や社 会的背景 な. 活 動 意 欲 を高 め る よ う に動 機 づ け る こ とを示 して い. どの 要 因 に も検討 ・配慮す る必 要 が あ る と し,「 子 ど. る。次 に,有 名 なジ ェー ン ・エ リオ ッ ト先生 の「青 い 目 茶色 い 目」の実験授 業 口を取 り上 げ ,差 別が い か. もへ の 虐待 とい う問題 は,た しか に,あ る意 味 で は個 人の内面的 ス トレス に よる心理 的乱 れ とみ るこ ともで. に人 間関係 を分断 し,一 方 よ り「優秀 であ る」 あ るい. きるわけですが ,実 は,広 範 囲 の社会 システム とも深. は「劣 ってい る」 と見 な され るこ とが ,実 際 に人間の. い かか わ りを もって 」 お り,「 子 どもへ の 虐待 に対 す. 行動 や人間性 に どの よ うな影響 を与 えるのか につい て. る社 会 の 責任 の重 さをア ピー ル して い る 」 と して い. 描写す る。. る。 そ して この よ うな社 会 的背景 を考 える時 ,「 お互. さ らに,2000年 に実 施 され た 人権 問題 に関す る意. ヽ いが′ と 通 じ合 える人間関係 を,家 庭 か ら,そ して近 隣. 識 調査 の 結 果 を示 し,「 SE得 点が 高 い グル ー プの場. か ら構 築 して い くこ とが 不 可 欠で あ る」 と して ,「 私. 合 ,全 般 的 に人 権 問題 へ の 関心 が 強 い 傾 向 が 見 られ. たちみ んなが ,尊 厳 を認め られ ,自 立で き,社 会 に参. る」 (23-26頁 )こ とにつ い て 示 した後 ,実 際 に起 こ. 加す る平等 な機会が保障 され ,必 要 な人び とには適 切. った三 件 の悪 質 な「差別落書 き」 を具体例 に,こ の よ. なケアがお こ なわれ ,み んなが 自己実現 で きる社会 の. うな陰湿 な行動 を とる原 因 には ,「 恐怖 心」 と「 自分. 実現 をめ ざ して,ま ず ,で きる こ とか ら始 め よ うで は. 自身に対す る消極 的 なイメー ジ. あ りませ んか 」 (50頁 )と 呼 びか け ,最 後 に子 育 て を. (コ. ンプ レックスや 劣. 等 感 )」 (28頁 )が あ り,充 実 感 が もて なか った り. す る母 親 に対 し,「 子 育 て に大 事 な こ とは,あ なた 自. もの ご とが順 調 に進 まない な どで 強 い 欲求不満 に陥 っ. 身が しあ わせ に な る こ と」 とい う メ ッセ ー ジ を紹 介. た時 に,自 分 の 自尊心 を傷 つ けず に イライラ した気分. し,締 め くくってい る。. ,.

(9) 野崎 志帆 :人 権教育におけるセルフ・エステイームの課題 と果たしうる役割. 2)SEの プラス面 とマイナ ス面 について この文献 にお いて,SEは 主に次の ようなもの とし. 『勝 つ か負 けるか』 で決 まる」 とい うような競争主義. て扱 われてい ると言 える。. 1.プ ラス としてはたらく場合. 準 (価 値観)が 自己評価 の中心 となってい るかを見る 必要がある。優劣 による自他比較や,「 人間の価値 は. (自. 分へ の積極的な. 評価 を した時)と マ イナ ス と してはた ら く場合 (自 分 へ の消極的な評価 をした時)が ある もの と して. 2.差 別の加害者/被 害者 の心理 を理解するための 分析的概念 として. 的な価値観 を中心的基準 にして自己評価 をすれば,強 い優越感. (あ. るいはその裏返 しとしての劣等感)を 抱. くことになる。優越感 の極端 な例が差別 と言 って よ い。エ リオッ ト先生の実験授業 の場合 は,ま さに優劣 による自他比較や競争主義的 な価値観 を子 どもたちの 自己評価 の 中心的基準 に据 える ことに「成功」 し ,. 1.の よ うに SEを ,「 自分 自身 を積極 的 に評価す る」 ことが他者 に対する肯定的態度,積 極的な生 き方. 「優 っている」 とす る側 を優遇 し「劣 っている」 とす. や人権意識 の基盤につ ながる「プラスにはたらく面」. た子 ども達 には優越感 を,「 劣 っている」 とされた子 ども達 には「劣等感」 を植えつ けたのである。 しか し. と同時に,「 自分 自身を消極的に評価す る (劣 等感や コンプ レックス)」 ことが他者 へ の妬 みや 中傷 ・誹 謗,差 別や暴力につ ながる「マ イナス にはたらく面」 の両方か ら見てい る点は,従 来の SEを 肯定的な もの としてのみ見 る見方 に比 べ 評価 で きる点 で あ る。SE. る側 を差別す る ことによって,「 優 ってい る」 とされ. なが ら,こ のような基準 を中心 とする「優越感」 の よ うな sEは ,所 詮 は不安定 で脆 い SEに ならざるを得 ない。常 に他者 と比べ た自分が「優位」にある とは限 らないか らである。 またその「不安定 さ」が, さらに. がマ イナスにはた らくと,む しろ差別や抑圧の原因に. 自分 の優位性 を確認することに人を駆 り立てる ことに. な りうることに心理学的に言及 してい ることは重要 で ある。 このように,単 に SEを 抽象的な 目標概念 とし. なる。そのような優劣 による自他比較 の基準や,競 争 自体 を全面的に否定す るわけにはい か ない に して も. てとらえるのではな く,あ くまで も分析的概念 として. (現 実的 にそれは完全 には避 けが た い とい う意味 で. とらえる見方 は,心 理学ならではの捉 え方 と言 える。. も,そ のような基準が向上心や「進歩」 を後押 しする. しか しなが ら, ここには大 きな問題が ある。 中川. とい う意味 で も),そ れが 「 自己評価 の 中心 的 な基. は,SEが プラスに働 く際 の「 自分 自身を積極 的に評. 準」 になることをで きるだけ排 し,他 者か らあ りの ま まを受け入れ られる経験や他者 との比較 ではない 自分. 価す る」 とは (反 対 に,マ イナス に働 く際の「 自分 自 身を消極的 に評価す る (劣 等感や コンプレックス)」. な りの基準 (前 の 自分 よ りもよくなったなど)で の 自. とは),具 体的に どうい うことを指 してい るのか を説. 己評価が成立 しなければ,本 当の意味でプラスに働 く. 明 してい ない点である。そのため,ホ ー ソン実験 での. 「他者 に対する肯定的態度」や 「人権意識 の基盤」 に. 「 自己 の価値 を認め られる」 こ とが「 プラス面 に働. つ ながるような SEを もつこ とはで きないので ある。. く」「 自分 自身を積極的に評価す る」 ことなのだ とす. ここに,単 に「SEを 高 める」 とい うことを良 しとす. れば,エ リオッ ト先生 の実験授業 でた とえそれが差別. る言説 の危 うさがある。. によるものであったとして も,茶 色 い 目をした子 ども よ りも「優 っている」 とされた青 い 目の子 どもも,同 じく「自分 自身を積極的に評価す る」 ことである とい う解釈 も成 り立ち うるのである。実際,彼 らは「幸せ そう」で「いかにも生活 を楽 しんで」お り,勉 強 もで きる ようにな り「積極的な生 き方」につ ながったので ある。 しか し同時に,ま さにそのような「積極的 に」 評価 をされた同 じ子 どもが,「 劣 ってい る」 とされた グルー プの子 どもを見下 し,こ とさら自分 たちの「優 位性」 を主張する態度 を表 したのである。 これは到底 「他者 に対 す る肯定的態度」や 「人権意識 の基盤」 に つ ながるような SEと は言えないだろ う。. 3)差 別 の加害者/被 害者 の心理の理解について また これ までの人権教育 は,当 事者 の心理に焦点が 当て られる際 も,ど ちらか とい うと被害者 の心理 (と い うよ リノ 亡 J青 )に 偏 って焦点が当て られて きたが,本 文献 は,差 別 の加害者/被 害者両方 の心理 を理解する ために SEと い う観点か ら分析 を行 お うとしてい る こ とは評価 で きる点である。差別の被害者 の心理に関 し ては,主 にエ リオ ッ ト先 生の実験授業 の「劣 って い る」 とされた子 どもたちの心理描写 を通 して,ま た差 別の加害者 の心理に関 しては,主 にエ リオッ ト先生の 実験授業 での「優 っている」 とされた子 どもの中で. では,何 が SEを プラスに働かせ ,マ イナス に働か. も,差 別的な態度 をとった子 どもの描写や,「 差別落. せてい るのか。それを明確 にするには,ど のような基. 書 き」 の行為者,子 どもを虐待す る親の心理分析 を通.

(10) 甲南女子大学研究紀 要 第 46号. 42. 人間科学編 (2010年 3月. ). して言及 してい る。 どちらか とい うと,本 文献 はむ し. い う権 力 を も って 優 劣 に よる 自他 比 較 や競 争 主 義 的 な. ろ「加害者 の心理」へ の比重が重 い。. 価 値 観 を教 室 の 中心 的基準 に据 え る こ とに よって ,差. しか しなが らここでやは り問題 として指摘 しておか. 別的な社会構造,あ るいは「差別的な文化」 を教室空. な くてはならないのは,こ の冊子が学習者に,差 別の. 間に恣意的につ くりだ した。その構造 の中で,子 ども. 問題 をあ くまで「個人の意識 の問題」「イ 固人間の差別. たちは差別の加害者あるいは被害者 として「生 きさせ. の問題」 に矮小化 させて しまう可能性 があ る点であ. られた」 と言える。 ここでの「差別の加害者」の事例. る。. はすべ て構造的な差別の被害者 で もあ り,個 人 レベ ル. 例 えば,差 別落書 きについ ては基 本的 に行 為者 の側. で見た場合の差別の加害者/被 害者 も,実 は社会構造. の「 強 い劣等感や コンプ レックス」や 「 強 い 欲求不満. の レベ ルで見れ ば,「 構造的差別 の被害者」 と言 える. に よる イライラ」 に よって差 別行為 の 原因 の説 明 が な. のである。. され る。 ただ しその よ うな人間誰 もが この よ うな行為. 人権教育が,差 別の加害者や被害者の心理に焦点を. に走 るわけではな い と して,こ れは「タト罰的性格 とい. 当てるのは,単 に加害者 の「SEの 低 さ」 に差 別 の原. うパ ー ソナ リテ イの持 ち主 に典型 的 にみ られ る反応」. 因を求 め,「 加害者 にならないために, 自分 を好 きに. だ とす る。差別落 書 きの 行為者 の「 イライラや む しゃ. なろう」 と呼 びかけた り,被 害者 の「SEの 低 さ」 に. くしゃ」 の背後 にあ る と思 われ る「不況や加齢 で仕事. 焦点 を当て,「 自分がおかれてい る社 会状況 には と り. を解雇 された」 こ とや ,行 為者 自身が差別 され た こ と. あえず 目をつぶって,あ りのままを受け入れて自分 を. な どの社会 的背景 に も触 れ られては い る ものの ,そ の. 好 きになろう」 と呼 びかけるためで もない。 自分 を積. 「 イライラや む しゃ くしゃ」 を 「社 会構 造 に よって も. 極的 に自己評価 した くて もで きない状況にある人に. ,. た された もの」 とは意味 づ けない まま,結 局 は「 自分. この教材 の タイ トルにあるような「自分 を好 きになろ. 自身 を きち ん と評価 で きれば,他 の人 々の意見 に耳 を. う」 とい う呼 びかけは何 の意味 も持たない。それ どこ. 傾 ける こ ともで きるで しょう し,人 び とと議論 し,相. ろか,そ の ような メッセー ジは,「 それで も自分 を好. 手 を傷 つ けず に 自分 の 意見 をさわやか に主張す る こ と. きになれない 自分」へ の さらなる自責の念へ と人を追. (ア. サ ー テ ィブ ネス )も で きる で しょう」 (33頁 )と. い込んでい くだけである。 ここに決定的に欠けている. し,こ の ような問題 を生 まな い ため に も,自 分 自身 を. のは,社 会構造 の 中に組み込 まれた もの として差別を. 積極 的 に評価 で きる よ うなパ ー ソナ リテ イや SEを 育 て るこ とが必 要 だ と,家 族や グル ー プで取 り組 む こ と. 見る視点であ り,そ のような抑圧的な構造が個人の心 理に与 えてい る影響へ の視点である。. を想定 した 「子 どもの SEを 育 て るア クテ イビテ ィ」. また,sEを 育 てることの重 要性が,単 に「 自分 を. が続 い て提案 されて い るので あ る。 つ ま り,あ くまで. 好 きになろう」 とい う呼 びか けに還元 され,前 述 のよ. も個 人が ,「 自分 自身 を積極 的 に 自己評 価 で きな い こ. うな子 どもの「SEを 育 てるアクテ ィビテ イ」 にその. と (SEが 低 い こと)」 にす べ ての 問題 の原 因があ り. 解決 を求める展 開になって しまうのは,ひ とつ には SE. 「SEが 低 い あなたが悪 い」 とで も結論 づ けて い るかの. 概念を発達段階によって質的 に変容 してい くもの とし. ,. よ うな論理展開 になって い る。. て見てい ないこ とに起 因 してい る。私 たちの SEは 認. SEの 低 さに関 しては,前 述 の. 知能力が発達 し,複 雑 かつ抽象的な ことを認識 した り. よ うに親 自身が抑圧 的 人間関係 の被害者 で あ る と同時. 思考 した りで きるようになるにつれて,必 ず しも自分. に,社 会構 造や社会 的背景 に も要 因があ ることを指摘. や社会の ことを単純 にポジテイブなもの として評価 で. し「社会 の責任」 につ い ての言及 もあ る。 しか し,そ. きな くなってい くものである。私たちの身の回 りや 自. れへ の 問題解決 の 糸 口 をあ くまで 個 人的 な人間関係や. 分 自身は,知 れば知るほど単純 に「好 きになれる」 よ. 個 人の 「幸福感」 に求め る よ う促 して しまってい る。. うなものでは決 してない。その際,す でに述べ たよう. この こ とは,結 局 「人権意識 とは個 人の内面の問題 で. に,む しろそのようにポジテイブなもの として評価 で. あ り,SEや 思 い や りの心 を もて ば差 別 はな くな る」. きな くさせてい るものは何 なのかを批判的に分析 し言. とい う論理 を導 い て しまい,社 会 にお け る抑圧構 造 へ. 語化する手だてや,そ のような状況に働 きかけてい く. の批 判 的視 点 を欠 くこ とになる。. 方法 について学 ぶ ことこそが重要なのではないだろ う. 虐待 して しまう親 の. また エ リオ ッ ト先生 の実験授業 で差 別的 な態度 を と った子 どもは,「 構 造 的差 別 の 被害者」 で もあ る。前 述 した よ うに,エ リオ ッ ト先生 の 実験授業 は,教 師 と. か。.

(11) 野崎. 志 帆 :人 権教 育 にお けるセル フ. エスティームの課題 と果たしうる役割. 通 して理解 し,2。. 4.人 権 教 育 にお け る セ ル フ ・ エ ス テ イ ー ム の 役 割 に つ い て の 課 題 と可 能 性. その ような個 人に負 の影響 を与 え. てい る社会構造 を相対化 し,構 造的差別 を批判的に分 析す る実践が必要であろう。. 今回 と りあげた文献か ら明 らかになった SEに 焦点. レ0社 会構造 レベ ル 0ま た,上 記 のように個人 レベ ′ 両方 の差別の加害者/被 害者 の心理 を理解すると同時. れる。一つ は,自 己評価 の背景 となってい る基準 や価. に,こ のような抑圧 に抗 してい く人 々の抵抗感 の背後 に こそ,「 自分 を好 きにな りたい」 とい う共通 の願 い. 値観 との関連 で SE概 念 を見てい ないこ と,も う一つ. があること,つ まり自分や社会 の状況 を切 り開いてい. は,SE概 念 を発達段階 によって変容 してい くもの と. くための力 の源 ,「 人間の尊厳」 を見 る事 がで きるの ではないか と考える。前述 の⑤抑圧へ の抵抗感のため. を当てた人権教育の課題は,大 きく分けて三点あげら. して見てい ないこ と,そ して もう一つ は,SE概 念 を 用 い ることで,差 別を「個人の意識 の問題」へ と矮小. の SEの ように,自 らを抑圧 してい る ものに対す る抵. 化 し,社 会構造や価値観 に組み込 まれた差別を不間に. 抗感 の前提 となる,人 間の基本的欲求 として SEを と. して しまっていることである。. らえる意義が ここにある。 また,そ のような人間の尊. 育 のための ,SEが 呆 た しうる役 割 と して , ここで. 厳 が守 られるために こそ人権があ り,そ れを行使 し互 い にそれを守 ってい く必要があ る とい うことへ の認. は,以 下 の六点を挙げてお きたい。. 識 ,つ ま り実際 に「法的権利 を行使する主体 としての. それでは最後に,こ のような課題 を克服する人権教. 自覚」につ なが らな くてはならない。 ● 正 の傾1面 ,負 の佃1面 の両面 を もった sEの 理解 (自 己評価 の基 準 ・価値観 ,SEの 安定性 との 関連 で). ②差別. (個. 人 レベ ル ・社会構造 レベ ル両方)の 加害. ●そ して,抑 圧 され,肯 定的な SEを もちに くくさ れてい る人 々にとって必要なのは,自 分 の怒 りや悲 し み,そ の背後にあ る「自分 を好 きにな りたい」 とい う 願 い に気づ き,そ のような怒 りをもたらしてい る,自. 者/被 害者 の心理 を理解する際の分析概念 として. 己を含む社会 の状況 を批判的に分析 し,言 語化 し意識. 0人 間の尊厳 を理解 し,権 利 を行使する主体 として. 化す る術である。それが,状 況 を少 しで も変えていこ. の 自党 につ ながる「抑圧 へ の抵抗感 のための へ の視点. うとす る力 にな り,実 際 に行動する ことで④ 自己効力. SE」. 0人 権が守 られる社会のための具体的行動に結びつ. 感 としての SEが 育 ってい くのである。その ような抑 圧へ の抵抗 のプロセスこそが SEの 回復 につ ながると. く「 自己効力感」「社会変革志向」へ の働 きかけ. 考える。人権学習は,そ のような学習者 の 自己効力感 や社会変革志向 としての SEに つ なが るような学習論. 0に ついては,そ の必要性 については本稿 において. を展開 しな くてはならない。. だけでな く,こ れまで繰 り返 し述べ てい るためここで は割愛す る。0に ついては,特 に次の ことを強調 して. 最後 に,人 権学習 において SE概 念 を活用す る際に. お きたい。加害者 の心理 を理解す る ことが,学 習者 に. は,必 ず 「社会構造に対す る批判的思考」 を育てるこ. とって一定 の意義があるのは,加 害者 とされる佃1も ま た,別 の加害者か らの被害者であ った り,構 造的な差. ととセ ッ トで取 り組 まれな くてはならないことを強調 してお きたい。批判的思考 とは,単 にすべ てを社会の. 別や抑圧 による被害者であるとい うことに認識が至 る. せ い に して自己責任 を逃れるための方便 ではな く,自. 時である。そ してその ことが,個 人 レベ ルでの直接 の. 己批判 を含む「社会批判」のための ものであることは. 「差別者/被 差別者」 とい うカテ ゴリー を超 えて,「 被. 言 うまで もない。. 抑圧的な構造や関係性 による,同 じ被害者 としての連. 社会 の中には,支 配的な文化 の中に埋め込 まれたイ. 帯」につ ながる時である。そ して,こ の ような構造的 差別 とい う視点があ って初 めて,社 会 の中の差別的な. デオロギー装置によって,あ たか も「 自然」で所与 の 「差異」 であるかの ように人を納得 させてい る,隠 ペ. イデオ ロギ ーや構造 を「所与の もの」「 自然 な もの」. い され固定化 された非対称性があ る。そのような関係. として見 ること自体が,差 別に加担 して しまってい る. 性 において低位 な立場 に位置づ け られる人 々は,漠 然. ことに思 いが至るのである。 したが って,個 人 レベ ル. としたあ きらめや絶望感 を抱 きなが らも「抑圧の現実. の差別 の影響 だけでな く,1.社 会 にある構造的差別. に埋没 してい るために,か れ らは自らを被抑圧者 とし. が個人に与 えてい る負の影響 を sEと い う分析概念 を. て 自覚 で きない」 (Freire 1970,訳 本 1979,20頁 )の.

(12) 甲南女子大学研究紀要 第 46号. 44. 人間科学編 (2010年 3月. ). であ る。 深刻 なの は,支 配的 な権力 的多数派 の側が そ. 3)SE概 念が人権教育や国際理解教育 に導入 された経緯. の ような人 々に対 して もってい る イメー ジを,低 位 な. については,拙 稿 「人権教育 におけるセル フ・エ ス テ イーム概念 とその位置づ け」『大阪大学大学院人間科学. 立場 に位 置 づ け られて い る人 々 自身が 「低位 な立場 に 相応 しい 自己 イメー ジ」 と して ,そ の まま受 け入 れて. 研究科紀要』 27,大 阪大学 人間科学研究科 ,107∼ 136 頁,2001年 ,「 国際理解教育におけるセルフ ・エ ス テ ィ. い る場 合 で あ る。その 際 ,そ の 人 々は漠然 と した無力. ームの本来的意義 の検討 ∼『共生』 と 『エ ンパ ワメ ン. 感 を もちなが らも,葛 藤 さえ感 じに くい状況 にあ る。. ト』 の視点か ら」『国際理解』31,国 際理解研究所 ,104 ∼ H4頁 ,2000年 を参照 されたい。. なぜ な ら,そ の人 々 は生 まれた時か ら社 会化 の プ ロセ ス を通 して,自 らの現状 に「葛藤 を感 じな くて済 む よ うに」,そ の よ うな 自己 イ メー ジに「適応 」 して い る か らであ るい。 そ の よ うな 自己 イメー ジか ら脱却 す る ため には,既 存 の社 会秩序や価値体系 を批判 的 に認識 し,自 らの 「低位 な立場」 を自覚 し,そ れが運 命的 な もので はな く変革 し解放 して い ける もので あ る こ とに 気 づ い て い くことが重要 となる。. 4)拙 稿「人権教育 におけるセル フ・エ ステ イーム概念 とその位置 づ け」『大阪大学大学 院人間科学研 究科紀 要』 27,大 阪大学 人間科学研究科 ,107∼ 136頁 ,2001 年. 5)例 えば,「 自己を肯定的に受け止める ことがで きる気 持 ちを育てる ことは,実 は 自分 の生 き方 を求めて動 き 出そ うとする原動力 となる」 (小 野江 1997,131頁 )と するもの,「 個人の世界観はその人の 自分 自身に対する. 佐貫 (2009)は ,現 代社会 にお い て広 く蔓延す る新. 見方が しば しば反映 される」ため,「 個人の 自己実現 を 人権 と考 える と,児 童 。生徒の一 人ひ とりが 自分 を好. 自由主義 ,ま たそれ を受 けて 2008年 3月 に告 示 され. きにな り,sEを 獲得す ることが不可欠 となる」 (田 洪j. た新学習指導要領 をは じめ ,近 年 の教育改革 に貫 かれ る新 自由主義的価値観 を,子 どもた ちの 関係性 を暴力 的 な支配 と被支配 の 関係 に よって分 断 し,「 競争」「 自 己責任」 を強 い る もの と して告発 し批判 して い る。そ の ような中,現 在 ,人 権教育 とい う分野 に限 らず ,教 育 一 般 の 文脈で ,「 SEを 高 め よ う」 とい う呼 びか けに 満 ちた多 くの教材が 出版 されて い る。 も しも佐貫 が指. 1997,26頁 )と するものがある。 また,国 際理解教育が 取 り扱 っている他文化へ の理解 ,世 界相互依存関係 の 理解,世 界が直面 して い る諸問題 に子 どもが アプ ロー チす るためには,肯 定的な自己意識 を形成す る必要が ある とす る ものがある (稲 垣 1995a,1995b)。 1996年 に文部省 (現 在 の文部科学省)の 中央教育審議会が 「21 世紀 を展望 した我が国の教育の在 り方 につい て」 とい う諮問に対す る第 1次 答 中の 中で ,変 化 の激 しい これ. 対 して批判 的視点 の伴 わない,社 会 に浸透す る価値観. か らの社 会 を「生 きる力」 に言 及 した こ との 影響 か ら。 この概念 との関連で述べ られてい るもの も多 い。 、 6)例 えば。「平等 に感 じる′ 亡 ,異 なる集 団 に対す る敬. や既存 の社 会構造 を所与 の もの と して受 け入れ させ た. 意」 といった もの を もつ前提 として「 自分 を価値 ある. 上 で 呼 びか け られ る「 SEの 育 成」 は ,結 局 ,競 争社. もの と誇 ることので きる気持 ち. 摘 した懸念が現実 なの だ とすれば ,そ の よ うな社会 に. 会 の 中 で 「 勝 ち組 と して の生 き残 り」 か ,「 敗者 の 自. (自. 己を肯定す る気持. ち)」 としての SEが 必要だとし,「 自分 の よさを知 るこ とは相手 を許容で きる自分 の フレーム を広 げる ことに. 己責任」 を強 い られ る中での「 自分 を好 きになろ う =. なる」 とい うもの (小 野江 1997,130-133頁 ),「 人を大. あ りの まま (現 状 )を す べ て 自己責任 と して受 け入れ. 切 にする」 と言 った ときの大切 にす る「人」の中で 最 も基本 になるのが 「 自分」であるため ,そ の意 味 で. よ う」 にな らざる を得 ない こ とは,肝 に銘 じてお きた. 「 自分 を大切 にす る」 ことが重要 なのだ と し,「 自分 を. い。. 大切にす る」 とは,「 自分 を好 きになる」 ことと「 自分 に自信 を持 つ (自 分 の価値 を見 いだす )」 ことで ある )王. 1)「 自尊 感情 」 や 「 自己肯 定 感」 な どと訳 され る場 合 も あ る。心 理学 にお い て は ,広 くは「 人が持 って い る 自 尊心 (selircspect),自 己受容 (seliacceptancc),な. どを. 含 め ,自 分 自身 に つ い て の 感 じ方 を さ し」,「 自己概 念 と結 び つ い て い る 自己 の 価 値 と能 力 の 感覚 (感 情 )」 (遠 藤 辰雄. ,. 1992,19頁 ),「 社 会 との 関 わ りの 中で特 定 の. 役割 ,価 値 観 の達 成 を通 して獲 得 され る 自己価 値 に つ い ての確 信」 (前 掲 71頁 )と されて い る。. 2)例 えば ,最 近 の もの で は ,佐 藤 淑 子 著 『 日本 の 子 ど 一 自己主張 を どう育 むか 一』 中公新書 ,2009 もと自尊花、 年 ,古 荘 純 一 著 『 日本 の 子 ど もの 自尊 感情 は なぜ 低 い. が ,自 己中心的でわが ままな ことでは な く,ま た, 自 信 過 剰 な こ とで もな い とす る もの が あ る (小 田 島 1996)。. 7)佐 藤. (1996,38頁 )は ,異 なる他者 との共生 のために はこれまでの「 集団規範 を前提 に した協調性」ではな く。「個 を前提 に した協調性」,つ ま り「個 の確 立や肯. 定的な自己概念 の形成 (自 分 との共生 )」 が課題 となる ことを述べ てい る。服部 (1996,161-164頁 )は ,「 アイ デ ンテ ィテ ィをもちなが ら,異 質な ものか らも積極的 に学べ る子 ども」 を育てるために,と りわけそ の こど ものアイデ ンテ ィテ ィを「 日本の伝統文化 のす ば らし. のか ―児童精神科 医 の現場 報 告』 光 文社 ,2009年 が あ. さ」 に気 づ き「 日本 人 としての誇 り」 を もつ ことに置 いてい る。清田 (1997,152頁 )は ,「 異文化 を理解 し. る。. それ と共生す るためには,日 本人 としての確立 が大切. ,.

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