I.緒
言 育児 を してい る母親 の心理状態 を測 定す る尺 度には,エ
ジンバ ラ産後 うつ病質問表 (EPDS)1) が広 く用い られているが,評
価得点 に左右 される 可能性 を危惧 して活用 していない市町村がある。 しか し,産
後 うつの高 リスク者 をピックア ップす る一次ツールとしては有効 といえる。 うつ病の高 リスク者 をピックアップすることは,あ
くまで も 児童虐待予防の視点であ り,母
親のポジテ イブな 感情 を大切 に してそれ らを積極的に引 き出す支援 にはつ なが りに くいと考える。そのほかの尺度に は,児
との愛着 を とらえる尺度 分や母性心理質 問紙°,PSI育
児ス トレスインデ ックスな どがあ るが °,い
ずれ も母親 としての役割 に着眼 してお り,と
くに子 どもに対す る感情 をとらえるもの と なっている。子 ども総研式育児支援質問紙 は,母
親 自身の心理状態 に加 えて子 どもの年齢 に応 じた 項 目が作成 されてお り,姑
象 となる子 どもや夫 と の関係において回答するもの となっている°。 育児 している母親に封す る育児支援で行政が推 進 している ものを整理す ると,育
児相談,教
室 な どの開催,母
親 を支えているサポー ト者 に対す る ものがある。 とくに育児相談は,時
と場 を選ばな い,支
援活動の基本 と考 える。そ こで,育
児相談 において母親の育児幸福感を高め,育
児 ス トレス の軽減や対応への相談を進めてい くためのチェッ クシ■ 卜の作成を試みた。本研究の 目的は,乳
幼 児 を育児 してい る母親の心理健康状態 を知 るた めの「母親の心の健康チェックシー ト (Motherぎ Psychological Health Checksheet)」 を作成することである。 このシー トは
,育
児幸福感短縮版尺 度°お よび育児ス トレス短縮版尺度 °によって 構成 され母親のポジテ イブ (幸福感)と
ネガテ ィ ブ (ス トレス)の
両側面か らの感情 を母親 自身が 認識 し,相
談者 と共有 しなが ら相談 を進めること によ り,幸
福感 をより高め,ス
トレスの対処 を可原 著
乳 幼 児 を育 児 して い る
「 母 親 の 心 の 健 康 チ ェ ッ ク シー ト」
長野県看護大学
清水
嘉子
抄 録 本研究では,母
親の心理的な健康状態 を知 るために「母親の心の健康チェックシー ト」 を作成 した。平成20年 8∼9月 に,東
京近郊 にある人口3∼5万
規模 の中核都市であるA,B市
在住 の6歳
以下の乳幼児の母親1,000名 に対する,育
児 ス トレス尺度,育
児幸福感尺度の計74項目 によって構成 される質問紙調査を行った。回収 された 675名 のデー タの分析 を行った。尺度項 目 に対する評価基準 は,あ
てはまらない∼あてはまるに対す る5段階評価 とした。分析 は,SPSS
統計 ソフ トを用 いて統計学的に分析 した。結果では,育
児 ス トレス短縮版16項目と育児幸福感 短縮版13項目の29項目に対す る基本統計量 とα係数 を確認 し,各
下位尺度得点 を,パ
ーセ ン タイルに変換するための個人プロフイール表を作成 した。本チェックシー トを育児相談で活用す る際には,項
目ごとに母親の気持 ちを引 き出 しなが ら,最
後 にパーセ ンタイル値 を母親 と相談者 で確認 し,回
答 に対す る母親の受け止めや高値 または低値 にある項 目に着 日して相談 を進めるこ とが効果的 と考える。 キー ワー ド :育 児,母
親,心
理,健
康,チ
ェ ックシー ト平成26年1月 (2014)〕 能 にす る こ とをめ ざ している。 Ⅱ
.研
究方法1
調査期 間 平成20年 8∼ 9月2
調査対象 東京近郊 にあ る人 口3∼ 5万規模 の 中核都市 で あ るA,B市
4幼
稚 園11保育 園 に依 頼 した。 調 査 対象 は1000名で あ り6歳
以下 の乳幼 児 の母 親 を対 象 と した。3.調
査方法 無記名 に よる質 問紙調 査 を,国
で配布 し,園
に て留 め置 き回収 した。4
調査 内容 調査項 目は属性 に対 す る ものに加 えて,先
行 し て行 われ た研 究CDで
開発 した尺 度 を用 いた。 質 問紙 は育 児 ス トレス項 目と して33項目,育
児幸 福 感項 目と して41項目,計
74項目に よって構 成 されてい る。分析 の対象 となった尺 度 につ いて は 以下 の とお りであ る。 育 児 幸 福 感 短 縮 版 尺 度 :予 備 的 な研 究Dに
よ り母親が育児 中に感 じる肯定 的 な気持 ち と しての ① 安心,②
希望,③
愛情,④
喜 び,⑤
感謝,①
同 情,⑦
誇 りを感 じる際 の場 面 につ いて,自
由記述 に よって得 られた内容 を分類,整
理 した798項目 に文ヽlして母性 ・助 産学 の教 員3名に よって64項 目を選 び出 し内容 妥 当性 を検 討 した。 この64項 目に対 して5段
階 に よ る回答 を求 め た調 査 を行 い,8下
位 尺 度41項目か らな る育 児幸 福 感 尺 度 (chnd_care Happiness Scale)と した。下位尺 度 の α係 数 は081∼ 086で
あ る9。 さ らに41項 目の回答 につ いて新 たな調査 の後 に因子分析 を行 い,“育児 の喜 び",“ 子 どもとの絆",“ 夫へ の感謝
"の
3因子 か らなる 13目 を選定 しCHSSと
し た (Child―care Happiness short Scale)。 3つの因子 の そ れ ぞ れ の項 目の 内 的整 合 性 を表 す α係 数 は,0,77∼ 086と十分 な値が得 られてい る°。 育児 ス トレス尺 度 :予 備 的 な研 究Ю)に おいて, 育 児 中 に感 じる否 定 的 な気 持 ち につ いて
,不
安, 恐‖布,心
配,怒
り,イ ライラ,む
な しさ,悲
しみ, 疲 れ,不
満 の情 動 を感 じる際の場面 につ いての 自 由記述 に よって得 られた場 面 を分類,整
理 し,研
究者 らに よ り130項目を選 び出 し内容妥 当性 を検 581 討 した後,130項
目に対す る5段階 に よる調査 を 行 い,因
子分析 にて8因子41項目を尺度 と した。 つ ぎに,8因
子 の因子負荷 量 の上位 にあ る総得 点 と相 関の高 い項 目を各 因子 か ら5項
目抽 出 し,40
項 目に対 す る調 査 を行 い,因
子 分析 に て9因子 33項目と し育児 ス トレス尺 度CSS(Child― care Stress Scale)と した。下位項 目の α係数056∼ 090 であ るH)。 さ らに33項目9因子 か らなるCSSを
, 新 た な調 査 の後 に探索 的 因子 分析 に よ り16項目 3因子 か らなる臨床 での汎 用性 をめ ざ したCSSS
(Child―care Stress Short Scale)と した。 その3
つ の下位尺 度の α係 数 は, “夫 の支援 の な さ
"が
088と最 も高 く,“育児不安"が082と低 か ったが, “心 身的疲 労"を
含 む3因子 にお いて十分 な値 が 得 られ,す
べ ての下位尺度の信頼性が認 め られて セヽる の。5
倫理 的配慮 平成20年度 のN看
護大 学倫 理 委 員会 の審査 に て承認 (承認番号#19)を
得 た後,調
査へ の協 力 に よる利益 と不利益,協
力 の 自由 な どを説 明文 に 明記 し,倫
理 的配慮 の もと調査ヽを行 った。協力の 同意 は調査用紙 の 回収 を もって同意 した もの と判 断 した。6.分
析 方法 用 いた尺 度 の評価 基準 のあて は ま らない,あ
ま りあて は ま らない, どち らで もない,少
しあては ま る,あ
て は まる の5段
階 評 価 に対 し,そ
れ ぞれ1∼ 5点を付 与 しス コア化 してSPSS統
計 ソ フ トを用 いて,CHSS
Ю)であ る13項目な らびに CSSSl° で あ る16項目に対 して,統
計 学 的 に分 析 した。 Ⅲ.結
果1
回収率 と対象者 の属性 回収 は 683名,完
全 欠損 回答8名を除 き675名 を有効 回答 と した (有効 回答率 675%)。 対 象 の 属 性 で は,母
親 の 平 均 年 齢 は,340±
51歳
(16∼47歳)で
あ っ た。30歳未 満105人(168%),30∼
35歳 212人(339%),35歳
以上 309人 (494%)で あ った。子 どもの数 の平均 は,21 ±08人
(1∼ 6人)であ った。1人 102人(16.5%),2人
334人(540%),3人
以 上 183人(300%)
で あ った。 末子 の年齢 は,28±
1,7歳 (0∼6歳
)で あ った。 末子 が1歳以下 は 164人
(258%),2
∼3歳
268人 (42.2%),4歳以上203人 (320%) で あ っ た。 就 業 状 況 は, フ ル タ イム勤 務 198人 (30.80/0, うち 自営 業 は39人),パ
ー トタイム勤 務273人(408%),専
業 主婦 190人(287%)で
あ った。核 家族 が454人 (665%)であ った。 なお, すべ ての項 目にお いて無 回答 は除いた。2
チ ェ ックシー トの作 成1)デ
ー タの基本情報分析 母 親 の育児 にお け る心 理状 態 を査 定す るため, CHSS 101お よびCSSS lけ のデー タの基本統計量 と α係 数 を確 認 した (表1参照)。CHSSで
は,下
位尺度項 目であ る “育児 の喜 び"(n=675),“
子 ど も との絆"(n=669),“
夫 か らの支 援"(n=
662)に
おいて,そ
れぞれ平均 と標準偏差 は,230
± 2.56,179■ 2.44,168±348で
,最
大 値 と最小 値 は8および25,6お
よび20,4お
よび20であ り,分
散 は656,596,1209で
あ った。CSSSで
は,下
位 項 目で あ る “心 身 の 疲 労"(n=672),
“育 児 不 安"(n=673),“
夫 の 支 援 の な さ"(n
=656)に
お い て,そ
れ ぞ れ平 均 と標 準 偏 差 は, 148±5,89, 12,4± 498, 94±436で
あ り, 最大値 と最 小 値 は6お よ び30,6お
よ び29,4お
よ び 20であ り,分
散 は3473,2479,19,01で
あ った。 これ らの結 果 を基 に して 各 下位 尺 度 得 点 と,各
下位尺 度得点 のパ ーセ ンタイル (以下 ptと す る) を算 出 して,ptに
変換 す るための個 人 プ ロフ ィー ル表 を作成 した (表2)。CHSSで
は, “育児 の喜 び"で
は100 ptが 25,“ 子 どもとの絆"で
は 100 ptが20,50 ptが
18,25 ptで 16であ った。 “夫 か らの支援"で
は,100 ptが 20,75 ptが19,50
ptが 17.25 ptで 15であ った。一方CSSSで
は, “心 身の疲労"の
75 ptが19,50 ptが
15,25 pt で10,l ptが
6であ った。 “育児不安"で
は,75
ptが16,50 ptが 12,25 ptで 9,l ptが6で
あ っ た。 “夫 の支 援 の な さ"の
75 ptが13,50 ptが
10,25 ptで6,l ptが 4で
あ った。 なお,CHSS
の子 ど もとの絆 とCSSSの
全 下位 項 目と夫へ の感 謝 とCSSSの
夫 の支援 の な さには有意 で はあ るが 相 関係 数 はr<02で
ほ とん ど相 関 は な く,ほ
か の項 目においては有意 な相 関 はなか った。2)チ
ェ ックシー トの構成 チ ェ ックシー トの構 成 は,回
答後 に採 点 を簡易 にで きる ように した。各項 目に対 す る採 点表 を作 成 し,採
点 に よる評価値 を転記す る と各 回答項 目 に対 す る合 計値 が算 出で きる よ うに した。 また,CHSS得
点 とCSSS得
点の個 人 プ ロフ ィール表 の なか には,各
下位尺度得 点の値 が, どれ くらいの CSSS 表l CHSSと CSSSの
下位尺度の記述統計量 とα係数CHSS
n 平均値 標準誤差 中央値 最頻値 標準偏差 分散 歪度 尖度 範囲 最小値 最大値 育児の喜び 5項 目 675 2304 010 24 25 2.56 656 - 190 479 17 8 25 子 どもとの絆 4項 目 669 1789 009 19 20 244 596 - 146 225 14 6 20 夫か らの支援 4項目 662 1677 014 18 20 348 1209 - 164 281 16 4 20 心身の疲労 6項 目 672 1479 023 15 6 589 3473 031 - 064 24 6 30 育児不安 6項 目 673 1244 0,19 12 6 498 2479 069 010 23 6 29 夫の支援のなさ 4項目 656 943 017 9 4 436 1901 051-058
16 4 20 α係数 082 077 086 088 082 088(29: (28' (27: (26: (251 (241 (23) (22) (21) (20) (19) (18) (17) (16) (15) (14) 113) t12) 111) 110) (9) (8) (6) (5) 但) ほ) (2) (1) 育児 の こ とを考 え る と,漠然 と した不 安 を覚 える。 夜問 育児のために何度も起 きなけれ ばならなくて困っている。 子どもにどう接 していいか分からない 子どもの世話で自分の自由が きかない のがとてもつらい。 夫の子育ては不完全で,かえって迷惑 なことをする。 子どもの顔つきや容姿容貌に気がか り がある。 子どもの世話で他のや りたいことがで きない。 夫が私の育児生活の苦労を理解 して く れない。 子 どもの知的能力 に気が か りが あ る。 子 育 て か ら解 放 され て息 抜 きて きる時 間が少 なす ぎる。 夫 は子 ど もよ りも 自分 の 生 活 を中心 に 考 えてい る。 子 どもの性格 に気 がか りが あ る。 育児 で身体の疲 れが溜 まってい る。 夫が子育 て に協 力的 で ない。 同 じ年 頃 の子 ど もの 様 子 を知 って我 が 子が劣 ってい るの では と不安 に思 う。 育児 の ため に睡 眠 不足 の 日々が続 い て いる。 生 まれてきて くれたことに「あ りがと う」を子どもにいいたい。 夫 を見 て喜 ぷ子 ど も,子ど もを見て 笑 顔 になる家族 を見 て幸 せ を感 じる。 叱った後に,かわいそうなことをした なと思いその後むしろ愛情を感 じる。 子どもそのものが希望である。 夫婦が協力 して育児 している姿を子 ど もに見せていることに誇 りを感 しる。 子 どもが周囲の人にほめられた りした ときに子どもに誇 りに感 じる。 子 ど もを産 め た こ とに喜 び と誇 りを感 じる。 いくら叱ってもお母さん大好きといっ てくると安心する。 夫 が 疲 れ て帰 って きて も,今日の子 ど もの様 子 を尋 ね た り,話に耳 を傾 け て くれ るこ とに感謝 してい る。 子 どもに生 きる勇気 を もらってい る。 夫が育児に協力 して くれることに感謝 するとともに安心だ。 子 どもを きつ く叱 った後で もす ぐなつ い て くれ る ときに安心 した気持 ちになる。 子 ど もが 生 まれ て きて そ こ にい る こ と 自体 が喜 びである。 あ て は ま ら な い あ ま り あ て は ま ら な い ど ち ら て も な い 少 し あ て は ま る あ て は ま る 平成26年1月 (2014)〕 表
2
母親 の心 の健康 チェックシー ト(MPHC)
Ql子育 て を して い て感 じる幸 せ な気 持 ち につ いてお尋 ね します。 1∼ 5のあては まる数年 にOをつ けて下 さい。 Q2子育 て して大 変 だ.つらい と感 じる こ とをお尋 ね します。 1∼5のあては まる数字 にOをつ けて下 さ│、 583 採 点方法 ① Qlと Q2の質問(1)から(29)にOをした数字を,採 点表の□に書き入れ, A∼Fの合口l点を出します。 ② 個人プロフイール記入表の中の,A∼Fの得点にOをして,それぞれの得点 をパーセンタイルに変換 します。 採 点 表1団
人 プ ロ フ ィー ル表 CHSS A CSSS D E F パーセン 育児の 子ども 夫から ノ`―セン 心身の 育 児 夫の文 タイル 喜び との絆 の支援 タイル 疲労 不安 授のなさ 硼 90 80 75 70 65 60 55 50 45 40 35 30 ぁ 20 16 ︲5 ︲4 ︲3 H 25 20 (15) 16 (12) Ю ︲5 20 25 30 35 40 45 醐 55 60 65 70 埼 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 7 8 5 9(6) 6 7 10 ︲8 V 19 18 (185)11 8
(10) (11) 12 (8) 10 13 23 22 ■ ・ ︲2 ︲3 ︲3 ︲4 ︲5 ︲6 ︲5 15 16 (11) 17 ︼ ︲5 ︲6 ︲7 ︲8 ︲9 20 2︲ 22 23 24 25 26 27 路 ” 2︲ 20 20 2︲ 22 23 80 83 85 87 90 ︲4 ・ ︲3 ︲9 20 2︲ 22 23 24 27 29 Z . 25 26 27 28 29 30 16 10 19 1 14∼ 14 (ll1 5) 13 12(9) 11 10 (75) 9∼ 12 11 10 9∼8 7 6 5 4 92 98 94 96 97 98 99 1(Xlパーセ ンタイル値に相当するかわかるように配列 した。 なお
,得
点の高 さの意味的な理由よ り,個
人プロフイール表の値は,CHSSは
最大値か ら始 まり,CSSSは
最小値か ら始 まるように した。つ ま り,上
部に個人の得点がプロッ トされているほ ど心理的に健康的であると解釈で きるよう作成 し た (表2)。 なお,回
答 で きない項 目があ る場合 では, 合言卜値 に加算 しないことに した。CHSSに
ある “子 どもとの絆"の
「い くら叱って もお母 さ ん大好 きといって くれると安心するJは ,子
ども が言葉を発 しない年齢の場合は回答できない項 目 のため残 り3項目により子 どもとの絆のパーセ ン タイル値 を読み取 ってい く。つ ま り,子
どもの 絆 は,チ
ェックシー トの括弧に示 されているパー セ ンタイル値 は全問回答時の75%で
判断す るこ とに した。 また,CSSSに
ある育児不安の「子 ど もの性格 に気がか りがある」「子 どもの知的能力 に気がか りがある」 も乳児期では回答が難 しいと 考 え られることか ら,残 り4項
目で判断 してい く。 育児不安 は,チ
ェ ックシー トの括弧に示 されてい るパーセ ンタイル値 は全問回答時の67%で
判断 す ることに した。 Ⅳ.考
察1
チェ ックシー トの特徴 と課題 このチェックシー トは,基
となる尺度を作成す る段階で0∼ 6歳の母親を対象 としていたが,相
談の活用 にあたっては1歳以上の子 どもをもつ母 親 とし,2歳
半 までは,回
答で きない3項 目をは ず し,パ
ーセ ンタイル値の修正 をかけたものを活 用す ることが望 ま しい と考 えている。2歳
半以前 の子 どもに対 しては言葉によるコミュニケーシヨ ンによって れ子 どもとの絆"を
確かめる場面「い くら叱って もお母 さん大好 きといって くれると安 心す る」 は,回
答で きない。 さらに “育児不安" の「子 どもの性格 に気がか りがあるJ「子 どもの 知 的能力 に気 がか りが あ る」 も同様 であ る。加 えて「子 どもをきつ く叱った後で もす ぐなついて くれる時 に安心 した気持 ちになる」「Hヒった後に, かわいそ うなことをしたなと思いその後む しろ愛 情 を感 じる」の2項
目は,1歳
頃 までは回答で き ない現状がある。 “子 どもとの絆"や
“育児不安" の項 目が,子
どもの成長に関連 しているため,現
在 の ところ,1歳
頃以 降の子 ど もを もつ母 親 を対 象す るこ とが妥 当であ る と考 えて い る。CHSS項
目の因子分析 に よる結果,そ
の構 成 は “子 どもと の絆"を
確 認す るには,子
どもが言葉 を発 して コ ミュニケー シ ヨンが取 れ る ようなった頃 に確 認 で きるこ とか ら,置
き換 えた記述 に修正 す るこ とは 慎重に対応 したい。 また,誇
りとい う感情 は,若
い世代の母親にはもちに くい点 も課題 となってい るが,相
談の場面では類似 した感情で もか まわな いことの説明を加 えることで対応 したい。 つ ぎに, このチェックシー トの特徴は特定の子 どもとの関係 において母親が回答す る とい うよ り,子
育て している母親 に着 日した現実的なツー ルとして とらえ,複
数の子 どもを育てている母親 も対象 として想定 している。一般的には,尺
度♪ として用いる場合は, どの子 どもとの関係におい て回答 したかについて特定するためにも,子
ども の年齢 に応 じた ものが作成 され用い られている。 しか し,現
実的 なツール として用 いるが ゆえに, 本チ ェ ツクシー トのCHSS項
目にあ る育児不安 の「子 どもの性格 に気がか りがある」「子 どもの 知的能力 に気がか りがある」「子 どもの顔つ きや 容貌容姿に気がか りがあるJな
どの項 目は,複
数 の子 どもをもつ母親にとっては, どの子 どもの気 がか りなのか回答に迷 う項 目となっている。 これ は,母
親 として,複
数の さまざまな年齢の子 ども にかかわつているなかで,複
合的に設問への回答 をすることによって,い
かに多 くの課題に直面 し ているのか把握で きる。実際には相談の場面にお いて確認 してい くことが課題 となっている。 この ことか ら,相
談者の子 どもの発達の理解や判断に おける力量が大 きく影響する点に課題があると考 えている。 また,す
で に用い られている尺度1∼° との違 いは,母
親の育児幸福感 と育児ス トレスの両側面 に着 日し,尺
度項 目に対す るエ ピソー ドを確認 し なが ら相談 を進めることで母親の育児幸福感 と育 児ス トレスの支援 につ なげてい くことにある。 さ らに,母
親 自身がパ ーセ ンタイル表で どの位置 にあるのかについて自覚できることにある。つ ま りは,母
親の心のチェックシー トとして活用 して 相談指導に生かすための もので相談の際にチェク平成
26年1月 (2014)〕 シー トの項 目に着 目しなが ら気持 ちを引 き出 し指 導 につ なげてい くための ものであ り,評
価 す る も ので はない こ とを最初 に母親 に伝 えることが大切 になる。 チ ェ ックシー トの留意点 と しては,表
1に あ るCHSSの
下位尺 度の記述統計量 の最頻値 か らもわ か る ように,項
目に文ヽすす る天上効果がみ られてい るため,下
位尺度得 点 の値 の解釈 には,実
際 に回 答 した際 の母親 の様子 も考慮 して判 断す る必要が あ る。 と くに,CHSSの
低 い母親,CSSSの
高 い 母親 に着 日 し, これ らを よ りよい方向 に変化す る よ うな働 きか けが求 め られ る。 さらに,先
行研 究ワ)に より育児幸福感を高め るためのかかわ りの項 目として,“母親が頑張 っ ている と思 うところや 自分のいい ところ"“自分 が親に似ているところ"“ 子 どもが 自分に似てい るところ"“子 どものいいところ"“自分が大切 に していること"“自分 の将来の夢,そ
の頃 自分は 何 を していたい,子
どもはどうなっている‖など について も相談時に聞いた。母親が立ち止 まって 子育て している自分 を見つめ,子
どもを見つめ, 将来 を見つめることを意識 して働 きかけた。今後 は, このチェックシー トの効果や相談者のかかわ り,母
親の思いの語 りな どの分析 を進め報告 した い と考えている。 さらにチェックシー トの標準化 をめざし,具
体的な活用方法 についてのマニュア ルを作成することが課題 と考えている。A町
で は,子
育 て フ ァイルを作成 し誕生 か ら 就学期にかけて活用で きる手帳 として「す とリー む」憾)を母子健康手帳 とは別に発行 している。子 どもの成長を見つめ,保
健,医
療,福
祉,教
育 な どの関係機関による連携 した支援 を受けることが で きるようにするためのファイルを活用すること で,保
護者 と関係機 関がつ なが り,子
ど もの応 援 団をつ くってい くこ とをよびかけている。本 チェックシー トも,す
でに作成 した “いきい き子 育 て手帳H)"と ともに,研
究 の成果 を活用す る ための 1つ の試み と位置づ け られる。現在 この チ ェ ックシー トを,「子育てママの健康 チ ェ ック シー ト」と命名 し,プ レテス トとして保健セ ンター 保健師による家庭訪間による育児相談で活用 を試 みた うえで,7名
の研究者 らによる継続的な家庭 585 訪間による相談に活用 している。 こうした活用 に 向けた試行により,より有益 なものに したいと考え ている。2
チェックシー トの活用にあた り チ ェ ック シー トの 回答 上 の注 意 事 項 で は, チ ェックシー トの表紙に記載 されている以下の内 容 を伝 える。「 このチ ェ ックシー トには,い
くつ かの育児中に感 じる気持ちについてたずねる質問 があ り,質
問には,正
解 も不正解 もないこと,感
じた とお りに,あま り考え込まずに回答すること」 を確認 し,1つ
ひ とつの項 目に関連 した事柄 につ いて母親にたずねること,回
答時間は,1つ
ひと つお話 をうかが うので30分程度 になることを伝 える。 また,お
子 さんの年齢によっては答えられ ない設間にはとくに回答せず,あ
てはまる欄外の 横 にチェ ックマークを依頼する。実際には,あ
ら か じめ母親の回答を得た後に,て
いねいに項 目ご とに母親の気持ちを引 き出 しなが ら進め,最
後 に パーセ ンタイル値で確認する。 結果に対する本人の受け止めや高い項 目や低い 項 目に着 日しなが ら進 め るこ とが効果 的 と考 え る。育児相談では,母
親が感 じている心配なこと や不安なことについて相談にのるとい う形で進め られるが,お
母 さんの体験 を引 き出 しなが らシー トを用いることで,育
児幸福感や育児ス トレスの 項 目に対す る母親の認識 を確かめなが ら項 目に汁 す る母親の気持 ちに共感すること,項
目について たずねることで母親が気づいていなかった育児幸 福感 に気づ くこと,そ
してその気持ちを大切 にす ることがF丁能 となる。 また, このチェックシー トは,母
親の育児で生 じるポジティブまたはネガティブな感情に起因す る29項目の場面による心理的な健康状態 を明 ら かにするもので, この結果か ら得 られたデー タを 個人プロフィール表によって母親 自身が客観的に 認識す ることがで きる。そ こで,母
親の認識 を尊 重するためにも項 目に対する相談を深めてい くこ とで育児幸福感を高め,育
児ス トレスの対応 に結 びついた相談が可能 となる。そのための方法 とし ては,子
どもへの愛情 を確認 し,普
段気がつかな い子 どものよいところに気づ き,相
談者の声がけ によって 自分はよくやっていることを感 じることが で きる と考 える。 また
,夫
の支援 について具体 的 に聞 くこ とに よ り,夫
へ の感謝の気持 ちに気づ くとともに,一
方 で は夫 に姑す る不満 につ いて語 る こ とで,そ
う した気持 ちを受 け止 め なが ら対応 を ともに考 えるこ とがで きる。 チ ェ ックシー トが 下方 にマー クされてい る場合 は,母
親の受 け止 め の様子 に注意す る とともに結果 に左右 され るので はな く,不
安,恐
怖,心
配,怒
り,イ ライラ,む
な しさ,悲
しみ,疲
れ,不
満 な気持 ちに関連 した 育児事 情 を聞 き出 し,母
親 の気 持 ちに共感 しなが らも,母
親が気づ いてい ない幸福 感 に関連 した安 心,希
望,愛
情,喜
び,感
謝,同
情,誇
りに思 う 気持 ち を引 き出す こ とが大切 になる と考 える。 実施上 の課題 で は,あ
らゆ る育児相談 に共通す るこ とで はあ るが,相
談者 の力量 に左右 され る点 であ る。相談 の なかで,パ
ーセ ンタイル値で確認 す るこ とで,母
親 はが っか りした気持 ちになる場 合 も考 え られ るこ とか ら,そ
う した気持 ちを引 き 出 しなが らポ ジテ イブな事象 に 目を向け直す こ と や, さまざまな気持 ちを引 き出 して,気
づかせ た り,考
え る きっか け をつ くった り,共
感 した り, ほめた り,安
心 させた りすることがで きるように す ること,チ
ェ ックシー トによって自分や子育て への気づ きに対 して, どうの りこえたらよいかな どをともに考えることで,相談者の満足感を高め, 相談の効果 をあげることがで きる。このことか ら, マニュアルを作成 しそれ らを参考に相談者はあ ら か じめ訓練 をするなどの相談者の相談能力を高め る働 きかけを行 ってい くことが重要だと考える。 また,保
健セ ンターなどの相談場面では,託
児 を するなかで相談す る環境 を作 ることで母親はゆつ くりと話 をす ることが可能 となると考える。V.結
論 本枡 究 では,育
児ス トレス短縮版16項目と育 児幸福感短縮版13項目の29項目に対す る基本統 計量 とα係数 を確認 し,各
下位尺度得点を,パ
ー セ ンタイルに変換するための個人プロフイール表 を作成 した。本チェツクシー トを育児相談で活用 す る際には,項
目ごとに母親の気持ちを引 き出 し なが ら,最
後にパーセ ンタイル値 を母親 と相談者 で確認 し,回
答による結果 に対する母親の受け止 めや高値 または低値 にある項 目に着 日して相談を 進 め るこ とが期待 され る。 (なお本研 究 は,平
成23年∼27年度 文 部科 学 研 究基盤Cに
よる研 究助 成 を受 けて行 って い る。 また,本
研 究 は第 13回 日本赤 十字 看 護 学 会 で発 表お)した もの に加筆 してい る) 文 献1)岡
野禎 治,村
田真 理子,吉
田敬 子,他
.日
本 語 版 エ ジ ンバ ラ産後 うつ病 自己評価 表 の信 頼 性 と妥 当性 精 神 科 診 断 学1996,7,525
- 5332)中
島登美子.母
親の愛着尺 度 日本版 の信頼性・ 妥 当性 の検 討 日本 看護 科 学 会誌2001,21
(1)1-8.
3)花
沢 成 一 母 性 心 理 学 東 京,医
学 書 院, 1996, 14 - 174)兼
松 百合子,奈
良間美保,荒
木暁子,他 PSI
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5)日
本子 ども家庭総合研 究所 ・愛育相 談所編著 子 ど も総研 式 育 児 支 援 質 問 紙 の利 用 手 引 き 母子保健事業 団,2003
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水 嘉子,関
水 しのが,遠
藤 俊 子 母 親 の育 児幸福 感尺 度 の短 縮 版尺 度 開発 日本 助 産学 会誌2010,24(2),261-270
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水 嘉 子,関
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親 の育 児 ス トレス 尺 度― 短縮 版作 成 と妥 当性 の検 討― 子 ど も の 虐 待 とネ グ レク ト2010,12(2),261-270.
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水 嘉 子,関
水 しのぶ,遠
藤俊 子,他.母
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10)清 水 嘉子 育 児 ス トレスの実態研 究― ス トレ ス情動反応 を中心 に して一.母
性衛 生 2003,44 (4), 372-378
11)清 水 嘉 子.育
児環境 の認 知 に焦 点 をあ て た育 児 ス トレス尺 度 の妥 当性 に関す る研 究.ス
ト レス科学2001,16(3),176-186
12)清 水 嘉 子,関
水 しのぶ,遠
藤 俊 子,他
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親平成26年1月 (2014)〕
の育児幸福 感 を高 め る コース プログラムの実 施 と評 価
,日
本 助 産 学 会 誌.2011,25(2),
215-224
13)美 瑛 町子育 て フ ァイル “す と リーむ".
<httpノ/www.town biei hokkaidojp/modules/ gakkou/index,php?content_id=27> (ア クセ ス:2013年 1月 21日) 587 14)清 水 嘉 子
.母
親 の育 児幸福 感 を高 め るため の 取 り組 みへ の発展 と して 保健 師 ジ ャー ナル, 69 (3), 2013, 224-230 15)清 水 嘉子 育児 して い る母 親 の健康 チ ェ ック シー トの開発 の試み 第 13回 日本赤 十字看 護 有生子学 2012, 86 - 87Mothers psychologlcal healdi checksheet fo■ 1■others c″ ing for infants and tOddlers
Nagano Colege of Nursing Yoshiko Shilnizu
Abstract
ln order to assess maternal psychological health status, ve created the ‖MothersI Psychological Health Checksheetli A questionnaire survey comprised from the Childcare Stress Scale and from the Childcare Happiness Scale(tota1 0f 74 items)was conducted from August to September 2008.A total
of 1000 mothers of children 6 years and younger who lived in■ laior urban areas A and B (populations roughly 30,000-50,000)on the outskirts of Tokyo were targeted,and data from 675 respondents were
analy夕ed Mothers were asked to rate each item on a 5-point scale ranging fronl WApphesu to"Does not
apply1l Data were analytted using SPSS Statistical Software.Basic statistics and α factors for the 16
items in the shortened version of the Childcare Stress Scale and 13 items in the Chldcare Happiness
Scale (29 items total)were calculated,and individual pronle charts to convert each subscale score into
percentiles were created The most erective way to use this checksheet for a chldrearing consuitation would be to extract the motheris feehngs on each item Ultiniately, the percentiles shOuld also be
sho、vn to and discussed with the mother,and the consultation should focus on how the mother accepts
the results of her responses,as well as the high and iow values on the scales