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九州大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

欧州統合と「招かれた帝国」 : 欧州統合の生成期に おける米欧間の非公式ネットワーク

高津, 智子

https://doi.org/10.15017/1928612

出版情報:九州大学, 2017, 博士(文学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

(様式6-2)

氏 名 高津 智子

欧州統合と「招かれた帝国」

―欧州統合の生成期における米欧間の非公式ネットワーク―

論文調査委員

査 九州大学 教授 岡崎 査 九州大学 講師 今井 宏昌 査 九州大学 教授 高木 彰彦 査 福岡大学 教授 星乃 治彦

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

本論文は、第二次世界大戦中から 1950 年代半ばまでの時期を対象に、欧州統合の生成過程を、

米欧間の非公式ネットワークに着目して論じたものである。分析対象は、「ヨーロッパ運動」と「統 一ヨーロッパ・アメリカ委員会(American Committee on United Europe、以下ACUE)」という二つ の民間組織をつなぐ人的ネットワークである。米欧の文書館に所蔵されている両組織の内部史料の 渉猟によって二つの組織をつなぐ人間関係の全体像を復元することで、このネットワークが欧州統 合の生成期において果たした役割を解明した。

1章では、ネットワーク誕生の背景が、第二次世界大戦期に構築された米欧間の人的つながり にまで遡って考察された。具体的には、ACUEの設立者であり後にCIA長官となるダレスが、スイス を拠点とする対ナチ諜報活動の過程でヨーロッパとの人脈を開拓したこと、それが戦後、アメリカ のインテリジェンス・コミュニティとヨーロッパ運動とを結び付けたことが明らかにされた。

2章では、ダレスを結節点とする米欧間のネットワークを通じて ACUEが誕生するに至った過 程が考察された。ACUE自体は、アメリカ政府の反共政策に根差した組織であったが、その設立はア メリカ側が主導したものではなく、アメリカからの財政的な支援に頼らざるを得ないヨーロッパ運 動の意向を受けたものだった。本稿では、ACUEの設立は、ルンデスタッドが示した「招かれた帝国」

論の顕著な事例として位置づけられた。

3 章では、欧州統合構想をめぐり両者のパートナーシップが変化していく過程が分析された。

ACUEは、ソ連に対抗するための手段として西欧の超国家的な統合を望んでいたが、ヨーロッパ運動 を率いるチャーチルは、政府間協力にもとづく統合を主張した。ACUEは、連邦主義者であるベルギ ー元首相のスパークに接近し、ヨーロッパ運動の新たなリーダーに就任させた。それ以降 ACUE ヨーロッパ運動の様々な活動に関与し、欧州統合政策の立案過程に非公式に関与することになる。

4章では、1950年代半ばにACUEがヨーロッパ運動を通じて積極的に関与を試みた事例として、

欧州政治共同体の設立条約の起草過程が検討された。ACUEがヨーロッパ運動とともに「ヨーロッパ 憲法研究委員会」を設置し、独自の条約案を起草したこと、その活動をサポートすべく、ハーヴァ ード大学の法学・政治学の専門家からなる研究グループが結成されたことが明らかにされた。

5章では、このハーヴァード大学研究グループの学術的な援助を受けて、ヨーロッパ憲法研究 委員会では、連邦主義的な統合構想にもとづいた独自の条約案が採択されるに至った経緯が考察さ れた。この条約案は、欧州組織内において行われた、欧州政治共同体条約起草の過程で、実際に基 礎資料として参照されたこと、つまり、同条約起草に非公式な影響を与えたことが明らかにされた。

(3)

以上のとおり、本論文は、ACUEに代表されるアメリカの非公式な外交アクターが欧州統合の生成 において重要な役割を果たしていたことを実証したものである。欧州統合を考える際に、これをヨ ーロッパに限定された事象としてではなく、米欧間で継続的に行われた非公式な交流を考察するこ とで、統合の具現化・制度化プロセスのより立体的な理解が可能となることが積極的に示されたこ とは、学界に対して重要な貢献であると考えられる。

以上のことから、本調査委員会は、本論文の提出者が、博士(文学)の学位を授与されるに十 分な能力を持つことを認めるものである。

参照

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