イギリスにおける未遂犯(未完成犯罪)の量刑に関す る近時の動向
著者 山田 慧
雑誌名 同志社法學
巻 72
号 6
ページ 1761‑1794
発行年 2021‑01‑31
権利 同志社法學會
URL http://doi.org/10.14988/00028129
イギリスにおける未遂犯(未完成犯罪)の 量刑に関する近時の動向
山 田 慧
Ⅰ はじめに
Ⅱ イギリスにおける量刑判断の方法
Ⅲ 未遂犯(未完成犯罪)の量刑に関する問題
Ⅳ 若干の検討
Ⅴ むすびに
Ⅰ はじめに
現在、イギリスにおいて未遂犯を処罰する法律である1981年刑事未遂法1 条1項では、「犯罪を遂行する意図をもって、犯罪遂行の単なる予備を超え る行為を行った」場合に未遂犯が成立するとされ、同条2項・3項では、犯 罪の遂行を不可能にする事情があったとしても、未遂犯の成立は妨げられな い旨が規定されている1)。したがって、たとえば謀殺未遂罪は、謀殺を遂行
1) イギリスにおける未遂犯論の展開については、中武靖夫「英米刑法における未遂理論(1)(2)」
阪大法学7号(1953)78頁・同8号(1953)69頁、吉田常次郎「実行着手に関する比較法的研 究」日本法学25巻1号(1959)1頁、西山富夫「不能犯問題の現状とその解決」名城法学11巻 2・3号(1961)1頁、高窪貞人「英米法における不能犯」法学新報(中央大学)74巻1号(1967)
47頁、藤岡一郎「イギリスの未遂犯についての一考察」同志社法学28巻1号(1976)119頁、
宗岡嗣郎『客観的未遂論の基本構造』(成文堂、1990)379頁、奥村正雄『イギリス刑事法の動 向』(成文堂、1996)107頁以下、同「イギリスにおける未遂犯の処罰根拠」高橋則夫他編『曽 根威彦先生・田口守一先生古稀祝賀論文集(上巻)』(成文堂、2014)685頁、澁谷洋平「英米 刑法における不能未遂の可罰性判断―客観説の分析を中心として―(1)(2・完)」広島法学 27巻3号(2004)63頁・同4号(2004)161頁、同「イギリス刑法における未遂罪の客観的要 件について(1)(2・完)」熊本法学108号(2005)41頁・同111号(2007)43頁、同「イギリ
する「意図」という高次の主観的要素が必要とされる一方で、「謀殺の実現 に向けた最終行為にまで至っておらず、かつ、その実現可能性が始めから認 められなかった場合」から、「謀殺の実現に向けた最終行為まで行い、被害 者に非常に深刻な傷害を負わせたものの、死亡させるには至らなかった場合」
まで、広く処罰範囲に含まれることになる。他方、後述のように、イギリス では、現在、量刑審議会(Sentencing Council)が各種犯罪類型について策 定する量刑ガイドラインに基づき、個々の事案における量刑判断が行われて いる。そこでは、①実際に行われた犯罪行為における「侵害(
harm
)」と「非 難可能性(culpability
)」のレベルを、当該犯罪類型における主要な事実的要 素に照らして判断し、②量刑ガイドラインに定められた、「侵害」と「非難 可能性」のレベルに相応する刑罰の重さを量刑判断の出発点にすることが求 められる。こうした中で、近年、イギリスでは、未遂犯(未完成犯罪)に対する量刑 について興味深い点が議論の俎上に載せられている。つまり、犯罪を遂行す る意図という高度の「非難可能性」が認められながら、それに相応する「侵 害」が認められない未遂犯(未完成犯罪)において、量刑ガイドラインにお ける「侵害」の評価を、あくまで客観的に行うことが妥当であるのかが議論 の対象とされつつあるのである。後述のように、こうした議論は、量刑ガイ ドラインに即した量刑結果に照らして、大きな意味をもつだけではなく、未 遂犯の成否に関する解釈論にも影響するようにも思われる。日本では、未遂 犯に対する具体的な量刑判断にはあまり目が向けられてこなかっただけに、
イギリスにおけるこうした議論を参照し、検討しておくことは有意義であろ う。また、イギリスにおける未遂犯の成否に関する解釈論を比較法的に参照 する際にも、イギリスでは最終的に未遂がいかに処罰されているのか、それ
スにおける未遂犯論」刑法雑誌52巻2号(2013)194頁、同「イギリスにおける未遂法の現状 と課題について―法律委員会による立法提案とその議論を中心として―(1)(2・完)」熊本 法学119号(2010)191頁・同121巻(2010)67頁、山田慧「未遂犯の本質に関する一考察―英 米刑法および刑法哲学における議論からの示唆―」同志社法学68巻5号(2016)229頁なども 参照。
についていかなる問題が指摘されているのかを確認しておくことが不可欠で あるように思われる。
そこで、本稿では、まず、イギリスにおいて、量刑ガイドラインに基づき 量刑判断がなされるようになった経緯と、量刑ガイドラインにおける判断手 法およびその位置づけを概略する。そのうえで、未遂犯(未完成犯罪)に対 する量刑上の問題点が指摘されている犯罪類型を取り上げ、その実態を確認 し、ここでの議論が有する意味を考えてみたい。
Ⅱ イギリスにおける量刑判断の方法
1. イギリスにおける量刑改革
イギリスでは、20世紀末から、量刑判断への関心が高まり、1991年刑事司 法法(
Criminal Justice Act
1991)をはじめとして、幾重にもわたる立法が繰 り返されてきた2)。そして、その集大成とも目されるべき法律が、2003年刑 事司法法(Criminal Justice Act
2003)である3)。同法は、イギリスの刑事司 法制度全体を見直すことで犯罪を減少させることを目的として制定された2) 1993年刑事司法法(Criminal Justice Act 1993)、1997年犯罪(量刑)法(Crime(Sentences)
Act 1997)、2000年刑事裁判所権限(量刑)法(Powers of Criminal Courts(Sentencing)Act 2000)など。清野憲一「英国刑事法務事情(3)」刑事法ジャーナル5号(2006)116頁参照。
3) 同法の解説書として、Richard Taylor, Martin Wasik, Roger Leng, Blackstone’s Guide to The Criminal Justice Act 2003(2004, Oxford UP).同法の量刑に関する事項や量刑ガイドラインに ついて、井戸俊一「イギリスの量刑ガイドラインについて」判例タイムズ1238号(2007)67頁、
吉戒純一「イギリスにおける量刑改革―2003年刑事裁判法―」判例タイムズ1235号(2007)85 頁、岡上雅美「イングランド新量刑ガイドラインの下における交通事犯の量刑(1)・(2)」筑 波法政45号(2008)93頁、同46号(2009)1頁、奥村正雄「犯罪被害者と量刑―イギリスの意 見陳述制度を中心に」井上正仁・酒巻匡編『三井誠先生古稀祝賀論文集』(有斐閣、2012)
887-889頁も参照。また、幡新大実「イングランド・ウェールズにおける量刑手続の客観化」
季刊刑事弁護58号(2009)174頁も参照。同法以前のイギリスにおける量刑の動向について、
大谷實「量刑基準と量刑相場―イギリスにおける議論を素材として(1)」同志社法学23巻3号
(1972)1頁、川本哲郎「イギリスの1997年犯罪量刑法」刑法雑誌37巻2号(1998)119頁、松 岡正章『量刑法の生成と展開』(成文堂、2000)、小林謙助「英米刑事裁判における量刑の研究」
法務資料318号(1951)も参照。
が、量刑に関しても、現在まで続く大きな影響を及ぼした。そのうちの一つ として、量刑判断の一貫性を目指す「量刑ガイドライン」が法的に位置づけ られたことがあげられる。
同法142条1項では、量刑の目的は、①犯罪者の処罰、②(抑止によるも のも含めた)犯罪の減少、③犯罪者の改善および更生、④公衆の保護、⑤犯 罪によって影響を受けた者への犯罪者による賠償にあると、初めて法律に明 記された4)。また、同法174条1項では、裁判所は、原則として、量刑の理由 と効果を説明しなければならないと規定された。しかし、これらの目的を調 和させて具体的な量刑を行うための基準は提示されず5)、その代わりに、同 法旧167条に「量刑ガイドライン審議会(
Sentencing Guidelines Council
)」の設立が定められ、旧172条1項で、裁判所は、量刑判断の際には同審議会 が 定 め る 量 刑 ガ イ ド ラ イ ン を「 考 慮 し な け れ ば な ら な い(
must have
regard
)」と義務づけられた6)。それまでの裁判では、前述の量刑の目的が意識されつつも、個々の事案に照らして当該裁判所が妥当と判断する目的を引 き合いに出し、量刑がなされていたきらいがあったことから7)、統一的な一 定の指針を法的に位置づけることで、量刑判断の一貫性を担保することが期
4) 井戸・前掲注(3)・80頁では、⑤は、当時の政府が掲げた、刑事司法を被害者や社会の視点 から再構成しようという流れ(Home Office, Justice for All(2002)Cm 5563, para. 0.3)に沿う ものであるとされる。
5) John Sprack, A Practical Approach to Criminal Procedure (15th ed., 2015), at p.350.
6) 2009年検死官および司法法(Coroners and Justice Act 2009)による改正前は、量刑諮問委員 会(Sentencing Advisory Panel)も存在し、ガイドラインの策定を量刑ガイドライン審議会に 求めたり、同審議会からの諮問機関として、同審議会が策定するガイドラインについて答申し たりする役割を担っていた(旧169条、旧171条)。しかし、2009年検死官および司法法によって、
両機関が量刑審議会(Sentencing Council)として統合されることになった(118条)。
7) John Halliday, Making Punishment Work: Report of a Review of the Sentencing Framework for England and Wales(2001), at para. 1.10. この「ハリディ報告書」は、「正当な応報(just desert)」を主軸とした1991年刑事司法法から、前科による刑の加重を認めるなどの修正を加 えたその後の立法(1993年刑事司法法、1997年犯罪(量刑)法など)を経て、量刑の指針が不 透明になっていたことや、刑務所人口が増加していたことに照らし、政府が当時内務省上級委 員であったジョン・ハリディに調査を依頼した結果出されたものである。同報告書は、右のよ うな問題点を整理し(See, ibid., paras. 1.8-1.9, 1.11-1.15, 1.34-1.39)、そこでの提案のほとんどが、
2003年刑事司法法に結実することとなった。吉戒・前掲注(3)・86頁以下も参照。
待されたのである8)。
2. 量刑ガイドラインに基づく判断方法
2003年刑事司法法では、5つの量刑の目的が併記されたのみであった。他 方、同法148条1項では、社会内刑(
community sentence
)の言い渡しの可 否について、当該犯罪が「そうした刑に値するほど十分に重大な(serious
) もの」かどうかが指標とされ、同法152条2項においても、拘禁刑の言い渡 しの可否について、当該犯罪が「罰金刑のみや、社会内刑では正当化されな いほど重大である」かどうかが指標とされている。そして、同法143条1項 では、「裁判所は、犯罪の重大性(seriousness
)を検討するにあたり、犯行 時の犯罪者の非難可能性および犯罪者が惹起した、または惹起することが意 図された、もしくは惹起されたかもしれないと予見できる侵害を考慮しなけ ればならない」と規定されている。ここから、同法は、1991年刑事司法法の 根底にあった「正当な応報(just desert
)」という刑罰思潮に基づき、罪刑 の均衡を重視していると解されている9)。そして、量刑ガイドライン審議会 が策定した、あらゆるガイドラインの前提となるべき総論的な「重大性」に 関するガイドラインでは、「量刑宣告者(sentencer
)は、犯罪の重大性を考8) 2003年刑事司法法旧170条5項(a)および現行の2009年検死官および司法法120条11項(b)
では、ガイドライン作成時には、量刑の統一性を考慮しなければならないと規定されている。
なお、量刑のためのガイドラインは、2003年刑事司法法の成立以前にも、治安判事協会
(Magistrates’Association)が作成した治安裁判所のガイドラインや、1980年代ころから見られ るようになった、控訴院がその判決文において、それ以降の下級審に対し量刑に関する一般的 な指針を与える「ガイドライン判決」と呼ばれるものの形態で存在しており、後者には一定の 事 実 的 な 拘 束 力 が あ っ た。See, R. v. Johnson(1994)15 Cr. App. R.(S.)827; Andrew Ashworth, Sentencing and Criminal Justice(6th ed., 2015), at p.38. 井戸・前掲注(3)・68頁、
吉戒・前掲注(3)・87頁も参照。しかし、治安裁判所のガイドラインに拘束力はなく、個々の 事案を契機として出されるガイドライン判決にも限界があり(See, R. v. Howells[1991]1 Cr.
App. R. 98)、量刑のばらつきが見られたのも事実であった。そこで、ハリディ報告書では、よ り明確な量刑ガイドライン(とその策定機関)の必要性が強調され(Halliday, op. cit. n.7, at paras 0.9, 1.42, Ch.8)、その提案が政府によって採用されたのである。See, Home Office, op. cit.
n.4, at, Ch. 5.
9) See, Ashworth, op. cit. n.8, at pp. 112-113; Sebastian Walker, “Attempts and the Difficult Relationship between Harm and Culpability”(2019)2 Sentencing News 6, at p.6.
慮しなければなら」ず10)、その重大性を決する2つの指標が、「犯罪者の非 難可能性(culpability)」と「当該犯罪によって惹起され、または惹起される 危険のあった侵害(
harm
)」であるとされた11)。ここから、各ガイドラインでは、まず、列挙された非難可能性と侵害にま つわる諸要素に照らし、当該事案の犯罪のカテゴリー(大枠のレベル)を決 定することが求められる(ステップ1)。ここで列挙される要素は、当該犯 罪類型の主要な事実的要素である12)。ステップ1で確定された犯罪のカテゴ リーには、出発点(
starting point
)として、基準となる一定の重さの刑罰と、カテゴリーの範囲(
category range
)として、出発点を含む一定の量刑の範 囲が示されている。裁判所は、それらを確認しつつ、さらに列挙されている、当該犯罪が行われた状況や当該犯罪者の状態など、より一般的な事実的要素 に照らし、確認された出発点をカテゴリーの範囲内で下方または上方修正す るかを判断する(ステップ2)13)。そして、ステップ2を経て得られた刑に、
捜査機関への協力に基づく刑の減軽14)など、他の考慮すべき事項に照らし た修正を施し(ステップ3)、有罪の答弁にかかる減軽15)はその後に適用す る(ステップ4)。次に、一定の重大事犯について、「犯罪者の危険性」を考 慮して刑を加重する諸規定16)の適用の有無を確認し(ステップ5)、テロに
10) Sentencing Guidelines Council, Overarching Principles: Seriousness(2004), at para. 1.3.
11) Ibid., at para. 1.4.
12) たとえば、薬物犯罪であれば、犯罪者が果たした役割が非難可能性を示す要素として想定さ れ、所持したり、使用したりした薬物の量が侵害を示す要素として想定される。Ashworth, op.
cit. n.8, at p. 24.
13) 出発点を上方修正させる事情としては、前科があることや、信用されている立場を濫用した こと、証拠を隠滅したことなどがあり、下方修正させる事情としては、一回限りの犯行である こと、後悔していること、犯罪者に精神障害が認められることなどがある。下方修正させる要 素は比較的少ないのが通例であり、これを問題視する声も聞かれる。See, Ashworth, op. cit.
n.8, at p. 25.
14) Serious Organised Crime and Police Act 2005, ss. 73, 74.
15) Criminal Justice Act 2003, s. 144. 原則として、最高で3分の1の刑の減軽が認められる。減 軽の割合を決する最新のガイドラインとして、Sentencing Council, Reduction in Sentence for a Guilty Plea - first hearing on or after 1 June 2017(2017).
16) Criminal Justice Act 2003, ss.225,224A,226A.
関する罪または性犯罪に対して拘禁刑を科す際の特別規定17)が適用される かの確認(ステップ6)、複数の犯罪に対して刑を言い渡す際の調整18)(ス テップ7)、賠償命令19)などの付随命令を出すか否かの検討(ステップ8)
を経て、最終的な量刑に至った理由とその効果の説明20)(ステップ9)、電 子監視が付された保釈期間の考慮21)(ステップ10)がなされる22)。
3. 量刑ガイドラインの位置づけ
こうした量刑判断の手順を提示する量刑ガイドラインは、現在、イギリス における主要な犯罪のほとんどに関して策定されるに至っている。そうした 中で、従来のコモン・ローにおける量刑判断は、その重要性を失ったわけで はないものの、量刑ガイドラインを理解する上での重要性をもつに過ぎなく なったと評価されている23)。
しかし、量刑ガイドラインが策定されたからといって、個別事案の処理に ついて、裁判官の裁量権が一切排除されるわけではない。2009年検死官およ び司法法(
Coroners and Justice Act
2009)125条1項は、裁判所は、量刑判 断 の 際 に、 関 連 す る ガ イ ド ラ イ ン に「 従 わ な け れ ば な ら な い(must
follow
)」とするが24)、同時に、こうした義務は、「裁判所が、〔当該事案にガ17) Criminal Justice Act 2003, s. 236A.
18) 2003年刑事司法法166条では、裁判所は、「犯罪者が複数の犯罪で有罪となるケースにおいて、
刑の総計(totality)に関する法の原則を適用することで、刑を減軽することを」妨げられな いと規定されている。そして、複数の犯罪に対する量刑処理についても、量刑審議会によるガ イドライン(Sentencing Council, Offences Taken Into Consideration and Totality: Definitive Guideline(2012))が策定されるに至っている。
19) Powers of Criminal Courts(Sentencing)Act 2000, s. 130; Legal Aid, Sentencing and Punishment of Offenders Act 2012, s. 63.
20) Criminal Justice Act 2003, s. 174.
21) Criminal Justice Act 2003, s. 240A.
22) Sentencing Council, General Guideline: Overarching Principles(2019).
23) Ashworth, op. cit. n.8, at pp. 19-22. See also, Andrew Ashworth, “The Evolution of English Sentencing Guidance in 2016”(2017)7 Crim. L.R. 507.
24) 前述の2003年刑事司法法旧172条1項が、関連するガイドラインに「考慮しなければならない」
と規定されていたことに照らして、改正により、量刑ガイドラインにさらに強い拘束力を認め
イドラインを適用することが〕正義の利益(
interests of justice
)に反すると 思慮しない限りで」認められると規定しているからである25)。とはいえ、裁判所が、量刑ガイドラインに示された、当該事案に対応する
「カテゴリーの範囲」から逸脱した量刑を言い渡したことは、実務上、適切 な控訴の理由になるとされており26)、量刑ガイドラインが、実務において大 きな影響力を有していることが看取される27)。このように、裁判所に一定の 裁量権を認めつつも、量刑判断の手法および出発点を明確化することで、人 権侵害を含みうる刑罰の付加を、法律の原則のもとに置くことが目指されて いるのである28)。
ようとしていることも看取される。See, Andrew Ashworth and Julian V. Roberts, “The Origins and Nature of the Sentencing Guidelines in England and Wales”, in Sentencing Guidelines:
Exploring the English Model(Andrew Ashworth and Julian V. Roberts ed., 2013), at p.5.
25) R. v. Thornley[2011]EWCA Crim. 153,[2011]2 Cr. App. R.(S.)62では、「正義の利益」
の観点から、裁判所は、ガイドライン策定後の制定法の改正およびその影響を考慮する必要が あり、「ガイドラインは不動の原理(tramlines)ではなく、強制的なものではない」とされた。
See also, R. v. Dyer[2013]EWCA Crim. 2114,[2014]2 Cr. App. R.(S.)11. もっとも、当該犯 罪類型に対するガイドラインの一般的な枠組みに各裁判官が賛同しかねることは、「正義の利 益に反する」事態には含まれない(R. v. Taylor[2012]EWCA Crim. 630,[2012]2 Cr. App.
R.(S.)98; R. v. Healey[2012]EWCA Crim. 1005,[2013]1 Cr. App. R.(S.)33)。See, David Ormerod, David Perry, H. H. J. Peter Murphy, Blackstone’s Criminal Justice(2020), at p.2346- 2347.
なお、ガイドラインから逸脱した量刑判断を行う際には、ガイドラインに従うことが正義に 反すると思慮される理由を付さなければならない(2003年刑事司法法175条6項(b))。
26) e.g. R. v. Pulido-Sanchez[2011]1 Cr. App. R.(S.)641. 吉戒・前掲注(3)・88頁も参照。
27) なお、厳密に法律の文言を見ると、2009年検死官および司法法125条3項において、裁判所 が従うべきなのは、非難可能性と侵害の観点から、個々の事案に適切とされる「カテゴリーの 範囲」ではなく、「犯罪の範囲(offence range)」とされており、後者は、一番軽い類型におけ るカテゴリーの範囲の下限から、一番重い類型におけるカテゴリーの範囲の上限までの範囲を 意 味 す る(See, Sentencing Council, Crown Court Sentencing Survey Annual Publication
(2014), at p. 38)。したがって、こうした広い範囲にさえ該当しない刑を言い渡す場合に限り、
裁判所はその理由を述べる必要があることになるが、本文で記したように、実務では、「カテ ゴリーの範囲」が重視されているようである。See, Ashworth, op. cit. n.8, at pp. 29ff.
28) Ashworth, op. cit. n.8, at pp. 22-23.
Ⅲ 未遂犯(未完成犯罪)の量刑に関する問題
イギリスにおいて、量刑等の刑事手続にまつわる改革と並んで、20世紀末 から大きな動きを見せてきたのが、未遂犯に代表される未完成犯罪であろう。
犯罪予防の観点から、法益侵害結果が発生する前の介入・処罰を許容する動 きが、20世紀末から21世紀にかけて顕著になってきたといえる29)。
未遂犯に関しては、1981年刑事未遂法(
Criminal Attempt Act
1981)が制 定されて以降、未遂はコモン・ロー上の犯罪から制定法上の犯罪となり、一 部例外を除き、あらゆる正式起訴犯罪について、その未遂犯が成立する(同 法1条4項、3条)。そして、未遂犯に対して科すことのできる刑罰の上限は、試みられた犯罪が既遂に至った場合と同等のものである(同4条)。もっとも、
判例実務においては、未遂犯に対しては、既遂犯に対して科せられる刑より も軽い刑が科されるのが、コモン・ロー時代からの通例であるとされてき た30)。
しかし、量刑ガイドラインに基づく量刑判断が浸透してきている中、未遂 犯(未完成犯罪)に対する量刑判断について、冒頭で示したような問題が浮 上している。つまり、犯罪を遂行する意図という高度の非難可能性が認めら れる中で、全く法益侵害結果は認められないばかりか、その可能性さえもな かった場合も処罰されうる未遂犯(未完成犯罪)では、量刑ガイドラインに おける「侵害」の評価をいかに行うべきなのかという問題である。こうした 問題が、近年の量刑ガイドラインやそれをめぐる判例において現れ始めてい るのである。
そこで、以下では、こうした問題が指摘されている、謀殺罪の未遂、子供
29) See, Andrew Ashworth and Lucia Zedner, Preventive Justice(2014), at Ch. 5.
30) R. v. Robson, unreported, May 6, 1974. See, Archbold: Criminal Pleading, Evidence and Practice(2015), at §33-146. See also, Denis J. Baker, Glanville Williams Textbook of Criminal Law(4th ed., 2015), at p. 701; Andrew Ashworth, “Criminal Attempts and the Role of Resulting Harm under the Code, and in the Common Law”(1988)19 Rutgers L. J.725, at p.738.
を対象にした性犯罪の未遂、および、テロ準備罪(未遂犯ではないものの、
未遂行為やそれ以前の行為そのものを直接的に処罰の対象にする、制定法上 の未完成犯罪の一つ)に焦点を当て、その実態を確認してみたい。
1. 謀殺未遂
⑴ 謀殺罪に対する量刑
イギリスでは、1965年謀殺(死刑廃止)法(
Murder
(Abolition of Death
Penalty
)Act
1965)が制定されて以降、謀殺罪に対して科すことのできる刑は終身刑のみである。終身刑には、最低期間(
minimum term
,tariff period
) が付され、受刑者は、この期間は必ず服役する必要がある。その後、一定の 基準を満たせば、「ライセンス」のもと釈放される可能性があるが、再度、犯罪を行えば、当該終身刑による拘禁に戻されることになり、こうした「ラ イセンス」は受刑者が死亡するまで継続する31)。
2003年刑事司法法268条では、裁判所が、終身刑に付す最低期間を定める 際には、同法の附則21に定められた量刑の出発点を参照しなければならない と規定されている。次頁の表1は、附則21をまとめたものである。
⑵ 謀殺未遂の量刑ガイドライン以前の判例
現在、未遂に対する量刑ガイドラインが策定されている犯罪類型は、謀殺 罪のみであるが、その策定以前に、謀殺未遂に対する量刑が問題となった判 例として、1988年ヒンダウィ・ケース控訴院判決がある32)。被告人は、約 370人が乗っている飛行機に搭乗しようとしていた妊娠中の彼女のバッグに、
飛行中に爆発するようにセットしておいた爆弾をしのばせたが、空港でそれ が発覚したという事案につき、飛行機を破壊させる爆発物を飛行機に設置す る罪(1982年航空安全法〔
Aviation Security Act
1982〕違反)の未遂で起訴 され、有罪となった。そして控訴院は、「被告人の計画が、360〜370人の命31) Sprack, op. cit. n.5, at p.369.
32) R. v. Hindawi(1988)10 Cr. App. R.(S.)104.
表1:終身刑(謀殺罪)の最低期間の出発点と要件・考慮要素
出発点 要件・考慮要素
終身
(第4パラグラフ)①当該犯罪の重大性が極度に高い(
exceptionally high
)こと②犯罪者が犯行時に21歳以上であること
【①に通常該当するケース】
➢
2人以上を殺害し、それぞれが⒜相当程度の予謀または 計画、⒝被害者の誘拐、⒞性的または加虐的な行為のい ずれかを含む場合
➢
子供を殺害した場合で、当該子供の誘拐または性的もし くは加虐的な動機が伴っていた場合
➢
職務中の警察官または刑務官を殺害した場合
➢
謀殺が、政治的、宗教的、民族的、または思想的な理想 を促進するために行われた場合
➢
謀殺が、以前に謀殺罪で有罪とされた者により行われた 場合30年の拘禁
(第5パラグラフ) ①当該犯罪の重大性が特に高い(
particularly high
)こと②犯罪者が、犯行時に18歳以上であること
【①に通常該当するケース】
➢
銃器または爆発物の使用を伴う場合➢
利益を得るために行われた場合
➢
司法(course of justice
)を妨害すること、または阻害 することが意図された場合
➢
性的または加虐的な行為を伴った場合➢
2人以上の殺害の場合
➢
民族的もしくは宗教的な理由または性的志向・障害な どの理由によって加重された場合
➢
最低期間が「終身」とされる要件のうち、犯行時の年 齢のみを満たさず、犯行時、犯罪者が21歳未満であっ た場合25年の拘禁
(第5
A
パラグラフ)① 何らかの犯罪を行うこと、または武器として使えるよう にすることを意図しつつ、現場にナイフやその他の武器 を持っていき、謀殺を遂行するうえで、それを用いたこ と②犯罪者が、犯行時に18歳以上であること 15年の拘禁
(第6パラグラフ) ①上記のいずれにも該当しない場合
②犯罪者が、犯行時に18歳以上であること 12年の拘禁
(第7パラグラフ) ①犯罪者が、犯行時に18歳未満であること
を奪うことに成功しなかったのは、彼に負うものではない」と述べ、45年の 拘禁刑を科した原審の判断を是認した。また、さらに遡る1984年のアルバー ナ・ケース控訴院判決においても33)、イスラエル大使の暗殺の未遂(被害者 は頭に銃弾を受け、重傷を負った)の事案につき、被告人に、30年の拘禁刑 が言い渡されていた。
後述のように、謀殺未遂の量刑ガイドラインが策定されるに至る契機とな った2003年刑事司法法の制定前、判例上、謀殺未遂に対する刑の上限はおよ そ20年の拘禁刑とされていた34)。そうした中で、ヒンダウィ・ケース判決は、
イギリス史上最も長い確定刑を言い渡したものであり、その量刑判断には、
犯罪者の行為による現実の結果ではなく、犯罪者によって「意図された」結 果が強く反映されているとも評価されている35)。
⑶ 謀殺未遂の量刑ガイドライン
前述の、謀殺罪に対する終身刑について最低期間を定めた2003年刑事司法 法の規定は、それまでの謀殺罪に対する量刑を相当程度重くするものであっ た。このため、謀殺未遂に対する量刑とのギャップが問題視されるようにな った36)。2005年フォード・ケース控訴院判決では37)、被告人が、銃を用いて 2人の被害者を殺害しようと発砲したが、被害者らは一命をとりとめたとい う事案につき、本件犯行が既遂に至っていれば、前述の表1における最低期 間30年の拘禁を伴う終身刑が科されていたこととの均衡から量刑判断がなさ れた。控訴院は、まず、謀殺既遂においては、「生命が失われたという事実 を特徴づけることが不可欠である」ことから、服役すべき期間(最低期間)
は、謀殺未遂の事例で犯人が服役すべき期間よりも自ずと長くなるべきであ ると述べた。しかし、続けて控訴院は、従来の判例に従い、本件のような重
33) R. v. Al-Banna(1984)6 Cr. App. R.(S.)426.
34) See, R. v. Ford[2005]EWCA Crim. 1358,[2006]1 Cr. App. R.(S.)36.
35) See, Ashworth, op. cit. n.8, at pp. 123, 127.
36) Ibid., at p.128.
37) Ford[2005], op. cit. n.34.
大な謀殺未遂の事案に対して20年程度の刑を科すのは、過度の減軽であると 判示した。なぜなら、宣告期間の半分の服役により原則として釈放されるこ とを定めた2003年刑事司法法244条に照らせば、20年の拘禁刑の宣告は、10 年の服役を意味し、既遂犯の場合と比べて、実際の服役期間が3分の1にま
表2:謀殺未遂罪の各レベル(カテゴリー)と出発点および量刑の範囲
犯罪の性質 出発点 カテゴリーの
範囲 レベル1
(謀殺罪での起訴であれば)2003年刑事司法法・
附則21の第4または第5パラグラフに該当するも のを含む、最も重大な犯罪
① 重大で長期間におよぶ身体的または精神的な侵
害の発生 30年の拘禁 27-35年の拘禁
②何らかの身体的または精神的な侵害の発生 20年の拘禁 17-25年の拘禁
③ 身体的または精神的な侵害がほとんど、または
全くない 15年の拘禁 12-20年の拘禁
レベル2
他の計画的な殺人の未遂
① 重大で長期間におよぶ身体的または精神的な侵
害の発生 20年の拘禁 17-25年の拘禁
②何らかの身体的または精神的な侵害の発生 15年の拘禁 12-20年の拘禁
③ 身体的または精神的な侵害がほとんど、または
全くない 10年の拘禁 7-15年の拘禁
レベル3
他の突発的な殺人の未遂
① 重大で長期間におよぶ身体的または精神的な侵
害の発生 15年の拘禁 12-20年の拘禁
②何らかの身体的または精神的な侵害の発生 12年の拘禁 9-17年の拘禁
③ 身体的または精神的な侵害がほとんど、または
全くない 9年の拘禁 6-14年の拘禁
で減じられることとなるからである38)。
こうした中、量刑ガイドライン審議会でも、同様の問題意識がもたれるよ うになり、2009年に、同審議会において、謀殺未遂に関する量刑ガイドライ ンが策定された39)。そこでは、まず、犯行態様に照らした犯罪のレベルと、
それに対応する量刑の出発点と範囲が確認される(表2参照)。その上で、
より具体的な諸事情(表3)を勘案し、確認された出発点が上方または下方 修正される。表2から明らかなように、最も重大な謀殺未遂のレベルが、
2003年刑事司法法における謀殺既遂に対する量刑と関連づけられている40)。 また、同ガイドラインは、謀殺未遂においては、殺人の意図が必要とされる
表3:謀殺未遂罪の出発点を加重・減軽する事由
特別な加重事由 特別な減軽事由
⒜ 被害者が特に脆弱であったという 事実(たとえば、年齢や障害など)
⒝ 被害者に対する心理的又は身体的 苦痛
⒞ 信頼されている立場の濫用
⒟ 犯罪の遂行を促進するための、他 人への強制または脅迫の利用
⒠ 被害者が、公的なサービスを提供 していた、または公的な義務を果た していたという事実
⒜ 犯罪者が、非難可能性の程度を下 げる、何らかの精神異常または精神 障害に罹患していたという事実
⒝ 犯罪者が刺激されたという事実
(たとえば、長期のストレスなど)
⒞ 犯罪者が、一定程度、自己防衛の ために行為をしたという事実
⒟ 犯罪者の年齢
38) したがって、原審では、既遂犯の服役期間の半分の期間の服役を担保すべきであるとして、
30年の拘禁刑を言い渡した(Ibid., at pp,208-209)。しかし、2003年刑事司法法244条の規定は、
その施行が、本件犯行よりも後であったことから、本件は、2003年刑事司法法以前の釈放に関 する規定(長期〔4年以上〕の拘禁の場合、刑期の3分の2が過ぎれば自動的に釈放される〔1991 年刑事司法法33条2項〕)が適用されるべき事案であった。そこから、控訴院は、30年の拘禁 を科す根拠は失われるとしつつ、当該被告人が刑期の3分の2を実際に服役することを念頭に、
既遂犯に対して科される30年の最低期間の半分の期間の服役を担保すべく、24年の拘禁刑に処 することが妥当であると結論づけた。
39) Sentencing Guidelines Council, Attempted Murder: Definitive Guideline (2009).
40) なお、表1のパラグラフ5Aは、ナイフを用いた犯罪の増加に伴い、2010年最低期間の決定 命令(Determination of Minimum Term Order 2010)により追加されたものである。2009年に 策定された謀殺未遂に関する量刑ガイドラインはこれに対応しておらず、現在、量刑審議会は、
ことから、必然的に「非難可能性」は高度のものと位置づけられるとしつつ も41)、犯行の態様に応じてレベルを分けている。かつ、「謀殺未遂の被害者 に対して実際に惹起された侵害の程度がわずかなものである場合、このこと が、犯罪の重大性の全体的な評価に影響を与えることは否定しがたい42)」と して、「結果として生じた侵害の程度」に応じて、出発点と量刑の範囲が区 別されている。
⑷ ガイドラインに対する評価
こうした謀殺未遂に対する量刑ガイドラインについては、レベル1の謀殺 未遂でさえ、最も重くて35年の拘禁刑にとどまるのは、既遂犯の場合と比べ て、なおアンバランスであるとの指摘がある43)。表1の通り、2003年刑事司 法法・附則21の第4および第5パラグラフに該当する謀殺既遂の場合、終身 刑に伴う拘禁の最低期間として、それぞれ、終身か30年の拘禁刑が予定され ている。そして、宣告された拘禁期間の半分を経過すれば釈放されるという 通常の拘禁刑の運用に照らすと44)、最低期間が30年とされた場合、実質的に は60年の拘禁を言い渡されていることになる。それに比べ、謀殺未遂として 35年の拘禁刑が言い渡されたとしても、17年あまりの拘禁で釈放される可能 性が出てくるというのは、謀殺未遂が、謀殺既遂とは異なり、「殺害の意図」
を必然的に伴うことに鑑みても45)、謀殺既遂との差が大きすぎるというわけ
同ガイドラインの改正に向けて、関連機関に諮問を行っている(Sentencing Council, Assault Offences Consultation(2020))。
41) Sentencing Guidelines Council, op. cit. n. 39, at p.3. See also, Editorial, “Sentencing for Attempted Murder”(2009)Crim. L. R. 755, at p.755. もっとも、当該犯罪の本質的な要素は、す でに各カテゴリーの量刑全体に影響を与えているのであるから、そうした要素を、カテゴリー を区別する上での加重要素とすることは許されない。See, Sentencing Council, op. cit. n.10, at para 1.21.
42) Ibid.
43) Walker, op. cit. n.9, at p. 8
44) 2012年 法 的 援 助・ 量 刑 お よ び 犯 罪 者 処 罰 法(Legal Aid, Sentencing and Punishment of Offenders Act 2012)のもとで拡張刑(extended sentences)に服している者などについて、例 外もある(2003年刑事司法法246A条など)。See, Ashworth, op. cit. n.8, at p. 323.
45) 謀殺既遂の場合、主観的犯罪成立要件(メンズ・レア)として、「重大な身体的傷害を惹起
である46)。また、こうした帰結の根拠を、単に、死亡結果の有無という事実 のみに求めることはできないとも指摘されている47)。なぜなら、何らかの不 法を実現するために行為した結果、被害者を死亡させた場合に成立する故殺 罪について、量刑ガイドラインによれば、最も軽くて、1年の拘禁刑(最高 で24年の拘禁刑)が予定されているからである48)。確かに、このガイドライ ンによれば、謀殺既遂が成立する場合とほぼ変わらない(が、謀殺既遂の成 立に必要な「重大な」身体的傷害を惹起する意図とまでは言えない)意図を 有しつつ、死亡結果を惹起させても、謀殺既遂よりもかなり軽く処罰するこ とが想定されており、死亡結果の発生が量刑判断に与える影響は相対化され ていると言える。にもかかわらず、「殺害の意図」という、より重大な非難 可能性が認められる謀殺未遂において、ことさらに死亡結果の有無を重要視 することには、疑問の余地もあり得よう。
前述のように、謀殺未遂に関する量刑ガイドラインが策定される以前に、
謀殺未遂に対して比較的重い刑を言い渡した判例に対しては、「意図された 侵害」を量刑上重視するものであるとの評価があり、2003年刑事司法法にお いても、量刑上、犯罪の「重大性」を検討する上では、実際に惹起された侵 害のみならず、惹起することが意図された侵害をも考慮する旨が定められた。
これを受けて、量刑ガイドライン審議会による「重大性」の判断に関するガ イドラインでは、(未遂のように)行為者の非難可能性と実際の侵害との間
する意図」でも足りるとされ、必ずしも、「殺害の意図」は求められない。See, R. v. Whybrow
(1951)53 Cr. App. R. 141; David Ormerod and Karl Laird, Smith, Hogan and Ormerod’s Criminal Law(15th ed., 2018), at pp. 512ff.
46) もっとも、謀殺未遂に対して、任意の終身刑を言い渡すことは可能である。See, R. v.
Barnaby[2012]EWCA Crim 1327,[2013]1 Cr. App. R.(S.)53.
47) Walker, op. cit. n.9, at p.8.
48) Sentencing Council, Manslaughter: Definitive Guideline(2018), at pp.3ff. なお、2019年に同 志社大学にて行われた、イギリスのオックスフォード大学オール・ソウルド・コレッジ(All Souls College)の名誉教授であるアンドリュー・アシュワース(Andrew Ashworth)博士の基 調講演を翻訳したものとして、Andrew Ashworth・奥村正雄(訳)「イギリスにおける量刑の 諸問題」同志社法学71巻7号(2020)215頁がある。その資料編では、重大な過失による故殺 罪に関する量刑ガイドラインの訳出を試みた。
にギャップがある場合、「犯人の非難可能性を、犯罪の重さを判断するため の一次的な要素とすべきである49)」とも述べられた。さらに、謀殺未遂に関 する量刑ガイドラインにおいても、「制定法上の『侵害』の定義には、犯罪 者によって実際に惹起された侵害だけでなく、当該犯罪によって惹起するこ とが意図された…侵害も含まれ」、「謀殺未遂という犯罪は、殺害の意図があ る場合にのみ遂行されうる以上、原則として、最も重大な侵害のレベルを常 に伴うであろう」とされている50)。にもかかわらず、同ガイドラインでは、
実際に生じた侵害のレベルに応じて、相当程度の量刑の差を設けており、そ の方向性が若干不透明であることは否めない。
2. 子供を対象にした性犯罪の未遂
未遂における「侵害」の評価と量刑の関係をめぐる問題は、子供を対象に した性犯罪に関する近年の判例においても現れている。具体的には、子供に 性的な行為を行わせる、または唆す罪(2003年性犯罪法〔
Sexual Offences Act
2003〕10条)の未遂に関する判例である。⑴ 量刑ガイドライン
2003年性犯罪法に規定されている各種犯罪に関する量刑ガイドラインは、
2014年に策定された51)。しかし、同ガイドラインは、各犯罪の既遂類型を念 頭においたものであり、未遂についてはカバーされていない。
同法10条違反の罪に関する量刑ガイドラインにおいても、まずは、侵害お よび非難可能性を示す事項(表4参照)の有無を確認し、それに基づいて量 刑の出発点と範囲(表5参照)を確定させることになる。
49) Sentencing Council, op. cit. n.10, at para. 1.19.
50) Sentencing Guideline Council, op. cit. n.39, at pp. 3, 6.
51) Sentencing Council, Sexual Offences: Definitive Guideline(2014).
表4:犯罪のカテゴリーを決するための考慮要素とレベル 侵害
カテゴリー1 ・(身体または物体を用いた)膣または肛門への挿入・陰茎の口への挿入
カテゴリー2 被害者の性器もしくは胸を触ること、もしくは露出させること、
または、被害者自身が、自己の性器もしくは胸を触ること、も しくは露出させること
カテゴリー3 他の性的行為 非難可能性
A
相当程度の計画があったこと
犯罪者が、当該犯罪を遂行するために他の者と共に行為したこと
当該犯罪を促進するために、被害者に対してアルコールまたは薬物を用い たこと
被害者に対して用いられた仕込み(
grooming
)行為 信用の濫用(ゆすり〔
blackmail
〕を含む)脅迫の利用被害者の性的な映像が録画され、保持され、要求され、または、共有され たこと
特に脆弱な子供を特に標的としたこと 犯罪者が年齢について偽ったこと 年齢の相当程度の開きがあること 営利的な利用かつ/または動機 民族的または宗教的に加重された犯罪
被害者の性的志向(または想定された性的志向)またはトランスジェンダ ー性(または想定されたトランスジェンダー性)に基づいた、被害者に対 する敵意によって動機づけられた、またはそうした敵意を示す犯罪 被害者の障害(または想定された障害)に基づいた、被害者に対する敵意 によって動機づけられた、またはそうした敵意を示す犯罪
B
カテゴリーA
における要素が存在しない場合⑵ 具体的事例
上記ガイドラインと本罪の未遂との関係が問題となった近年の判例とし て、2018年クック・ケース控訴院判決がある52)。被告人(当時31歳)は、約 4か月にわたり、13歳の少女と思っていた相手とオンラインでコンタクトを 取り、自身との性的な行為への従事や、性的な姿態を撮影した写真の送付な どを要求したが、実は、コンタクトを取っていた相手は、少女のふりをした 警察官であった。被告人は本罪の未遂として起訴され、有罪とされたが、原 審では、量刑判断において、被告人が唆そうとした行為の内容から、侵害の カテゴリーは1に該当し、その計画性などに照らして、非難可能性も
A
に 該当すると判断され、量刑の出発点は5年の拘禁刑とされた(表4・表5参 照)。そのうえで、有罪の答弁などが加味され、最終的に、3年の拘禁刑が 言い渡された。これに対し、被告人側は、現実の子供との接触が認められ得 ない本件においては、「侵害」は認められず、そのカテゴリーは一番低いカ テゴリー3に位置づけられるべきであると主張し、量刑不当で控訴した。これを受けた控訴院は、性的な行為を唆す罪において、現実の子供との身 体的接触やコミュニケーションが認められない場合には、侵害はカテゴリー
表5:犯罪のカテゴリーに対応する量刑の出発点と範囲
A B
出発点 カテゴリーの
範囲 出発点 カテゴリーの
範囲 カテゴリー1 5年の拘禁 4-10年の拘禁 1年の拘禁 高度の社会内刑
-2年の拘禁 カテゴリー2 3年の拘禁 2-6年の拘禁 26週の拘禁 高度の社会内刑
-1年の拘禁
カテゴリー3 26週の拘禁 高度の社会内刑-3年の拘禁 中度の社会内刑 低度の社会内刑
-高度の社会内 刑
52) R. v. Cook[2018]EWCA Crim.530,[2018]2 Cr. App. R.(S.)16.
3と位置づけるのが妥当であるとした先例53)に照らし、被告人側の主張は 正当であると判示した。そのうえで、カテゴリー3Aの範囲内である21月の 拘禁刑を出発点とし54)、有罪の答弁にかかる減軽を付して、14月の拘禁刑を 言い渡した。
他方、2018年のプライス・ケース控訴院判決では55)、被告人(当時35歳)
は、14歳の少女であると思っていた相手と連絡を取り、自身の性的な姿態を 映した映像を送ったり、性的な行為を行うために会う約束をしたりしたが、
実際には、その相手は、「ペドフィリア・ハンター」と称される自警団員の 成人女性であったという事案につき56)、同罪の未遂(その他、子供に性的な 行為を見させる罪、性的な目的で手はずを整えて子供に会う罪の未遂等)で 起訴され、有罪とされた。原審は、同罪の量刑にあたり、未遂においても同 罪のガイドラインが参照されることを前提に、①本件犯行の「侵害」はカテ ゴリー1に該当する、②本件が未遂の事案であることから、カテゴリーの範 囲内でも低い出発点を採用すべきである、③他の犯罪も成立する本件の事情 に照らして、出発点は、カテゴリー1
A
の範囲の下限である4年を下回るべ きではないと述べ、有罪の答弁による減軽を付して、32月の拘禁刑を言い渡 した。これに対して、被告人側が、本件が未遂の事案であるにもかかわらず、カ テゴリー1
A
の下限である4年を下回ることができないとした原審は不当で53) R. v. Gustafsson[2017]EWCA Crim. 1078; Attorney General's Reference No 94 of 2014
(Baker)[2014]EWCA Crim. 2752 and Attorney General's Reference No 94 of 2015[2015]
EWCA Crim. 2384.
54) 被告人が、相手と連絡を取っていた期間、唆した行為が、年齢を知っている少女との完全な 性行為であったという事実、被告人と意図された被害者との年齢差などから、拘禁刑を科すべ き限界は超えているとされた。
同様の「侵害」の評価を行うものとして、R. v. Privett[2020]EWCA Crim. 557;[2020]4 WLUK 319. See also, Nigel Stone, “Sexual Harm: Inciting a "Child" via Social Networking”(2018)
Probation Journal 65(4), at pp. 472-473.
55) R. v. Price[2018]EWCA Crim. 1528.
56) なお、イギリスでは、こうした自警団員からの情報提供に基づく起訴および有罪判決が許さ れるのかどうかが議論になりつつあるようである。See, Alisdair A. Gillespie, ““Paedophile Hunters”: How Should the Law Respond?”(2019)Crim. L. R.1016.
あるとして控訴した。しかし、控訴院は、本件において成立する犯罪の全体 的な重大性に配慮しなければならないことは明らかであるとしつつ、以下の ように述べて原審の判断を是認した。「本件における少女は架空の存在であ ったが、本件犯行は、被告人が逮捕された際にコンドームを所持していたこ とから明らかなように、被告人が性的関係を持とうとした少女に働きかけ、
同女を搾取しようとする、重大で、継続した試みであった」。
⑶ 判例に対する評価
上記2つの判例は、いずれも、現実の被害者が存在しなかった「不能未遂」
の事例であるが57)、ガイドラインに即した量刑判断にあたり、その「侵害」
の評価を異にしている。つまり、現実の侵害は生じえないことから、侵害の カテゴリーは低いとみなすのか58)、あくまで、行為者が意図していた侵害の 観点から、侵害のカテゴリーは高いとみなすのかの違いである。高度の非難 可能性が認められる事案で、前者の理解を前提にすれば、量刑ガイドライン の出発点は26週の拘禁刑であるが、後者の理解を前提にすれば、出発点は、
その約10倍の5年の拘禁刑となる。確かに、量刑判断においては、さまざま な事項が考慮され、また、各カテゴリーに付された量刑の幅も広いとは言え
57) 冒頭で確認したように、不能性は、未遂犯の成立を否定する抗弁とはならない。Criminal Attempt Act 1981, s.1(2),(3); R. v. Shivpuri[1987]1 A.C. 1.
58) なお、性的な行為を「唆す」行為の場合、既遂類型であっても、「侵害」がいかに評価され るのかは、疑問の余地がある。前述のクック・ケース控訴院判決でも引用された、2015年ブキ ャ ナ ン・ ケ ー ス 控 訴 院 判 決(R. v. Buchanan[2015]EWCA Crim. 172,[2015]2 Cr. App.
R.(S.)13.)では、被告人は、性的な行為の実行を14歳の少女に唆したが、実際に少女に会って、
性的な行為を行う意図までは有していなかったという事案につき、量刑ガイドラインが、本件 事案のように、被害者と実際に接触を持たない場合に適用されるかどうかは疑わしいとされつ つ、同ガイドラインにあてはめるとすれば、侵害はカテゴリー3に含めるのが妥当であると判 示された。しかし、同ガイドラインでは、本罪が「遠隔から、またはオンラインで行われた」
場合にも適用されると規定されていること(Sentencing Council, op. cit. n.51, at p. 46)を本判 決は見落としており、かつ、同ガイドラインのカテゴリー1の侵害は、本罪の「唆し」の行為 類型だけでは惹起され得ず、したがって、必然的に、侵害はカテゴリー3に位置づけられるこ とになるとして、本判決の内容に疑問を呈する声も聞かれる。See, Lyndon Harris, Commentary
(2015)Crim. L. R.551, at p.552.
よう。しかし、こうした出発点の大きな差に照らしても、判例に現れた「侵 害」の評価の違いは重要な意味を有するであろう59)。
現実的な侵害の惹起の有無を重視する判例に対しては、インターネットを 用いて子供にアプローチし、性的搾取の対象としようとする犯行が一般的に なりつつある現状において、被告人の行為自体の有害さがもう少し重視され ても良かったのではないかとの声も聞かれる60)。
3. テロ準備罪
イギリスにおける未完成犯罪の進展は、テロとの戦いとも常に隣り合わせ であるとも言える。21世紀を迎えて以降、多くの立法により、テロの脅威を 抑え込む努力が重ねられてきた。それに伴い、テロ関連の罪については、
2018年に量刑ガイドラインも整備されるに至った。
これまで見てきたような量刑判断上の問題は、テロ行為に向けた準備行為 を行う罪に関しても指摘されている。
⑴ 従来の判例
「テロ」と呼ばれうる行為の未遂について量刑判断を行った判例としては、
すでに謀殺未遂に対する量刑判断を行った判例としてその一部を確認した が、テロに対して厳しく対応する動きの分水嶺となったと評価されているの が、2008年のバロット・ケース控訴院判決である61)。被告人は、大量殺人を 画策したテロ攻撃の計画に加わり、訓練にも参加したが、犯行に用いる爆発 物や資金、車などを確保するには至っておらず、本件の計画が実現されるか どうか、いまだ不確かな段階で逮捕されたという事案につき、謀殺罪のコン スピラシー(共謀)で起訴された(本件の犯行は、2003年刑事司法法および、
後述の、2006年テロリズム法〔
Terrorism Act
2006〕の施行前であった)。謀59) Walker, op. cit. n.9, at p. 7.
60) Harris, op. cit. n.58, at p. 553.
61) R. v. Barot[2007]EWCA Crim.1119,[2008]1 Cr. App. R.(S.)31.
殺のコンスピラシーの罪については、1977年刑法法(
Criminal Law Act
1977)の3条により、終身刑を言い渡すことが可能であったが、原審では、被告人の社会に及ぼす危険性を根拠に62)、最低期間を40年とする終身刑が言 い渡された。ここでは、前述のヒンダウィ・ケース(45年の拘禁刑)に比べ て、本件の犯行はそこまで進展させられてはいないものの、その犯行計画が 本格的なものであったことも指摘された。
控訴院においても、過激な信条のもと、長期にわたり、大量殺人の計画を 立てていた被告人の危険性から、終身刑が妥当であることが前提とされ た63)。しかし、最低期間を40年とする重い終身刑は、「遂行可能な(
viable
) 方法による、大量殺人の遂行の重大な未遂で有罪となったテロリストにのみ 科されるべき」であり、また、「被告人の行為が未遂にまで至っていない場合、刑は減軽されるべきである」と判示された64)。もっとも、何の罪もない者を 殺害する計画のスケールの大きさと、その実現が少なくとも不可能ではなか った点に鑑みて、最低期間を30年とする終身刑の言い渡しが妥当であると結 論づけた。
前述のように、本判決は、テロに関連する事案に対する従来の量刑の傾向 に比べて非常に重い刑罰を科すものであり65)、テロに対して司法が厳しい姿 勢で挑む端緒となった判決であると評価されている66)。しかし、本判決にお
62) 当時の判例では、問題となっている犯罪が非常に重大なもので、当該犯罪者が、いぜんとし て、社会に対する重大な危険性を不定期的に保持している場合には、終身刑を科すことができ るとされていた。See, Attorney General's Reference No.32 of 1996(Whittaker)[1997]1 Cr.
App. R.(S.)261.
63) Barot[2007], op. cit. n.61, at p.168.
64) Ibid., at p.173.
65) 従来は、テロに関連する同種事案に対する量刑の幅は、20年〜35年の拘禁刑とされていた。
See, R. v. Martin[1999]1 Cr. App. R.(S.)477. See also, Barot[2007], op. cit. n.61, at p. 170.
66) Ali Naseem Bajwa, “Terrorism Sentencing: A Different Threat; A Different Approach”(2010)
10 Arch. Rev. 5, at p. 6. 終身刑における最低期間30年の拘禁という結論は、前述のヒンダウィ・
ケースにおいて科された45年の拘禁(当時の釈放に関する規定から、実質的な服役期間は30年)
と同等であり、かつ、本件が、ヒンダウィ・ケースほどに犯行計画が進展させられていないコ ンスピラシーの事案であったことからも、テロに対して厳しく臨もうとする裁判所の姿勢が見 て取れる。ここには、2001年の同時多発テロ以降、自爆テロが問題視されたことも影響してい
いても指摘されてはいるが、犯行計画がそこまで進展しておらず、計画が実 現されるか否かも不透明であったことに鑑みても、刑が過度に重く量定され ており、そこでは、適切な「侵害」の評価が十分になされていないのではな いかとの批判も見られた67)。結論を見れば、やはり被告人によって「意図さ れた」侵害が重視されたことがうかがえる。
⑵ 量刑ガイドライン
バロット・ケースで問題とされたような、テロの準備行為については、現 在、2006年テロリズム法5条1項⒜(「テロリズム行為を遂行する意図、ま たは他人が当該行為を遂行するのを幇助する意図の実行に備えて、何らかの
行為(
any conduct
)に従事する」罪)によって規制の対象とされている68)。そして、量刑審議会は、テロに関する犯罪の量刑を、その重大性や他の犯罪 との関連で均衡のとれたものにすること、オンラインによるテロの準備およ び実行の容易化に対応することを目的として、量刑ガイドラインの策定に着 手し、2018年にその確定版を策定した69)。ここでも、侵害および非難可能性 を等級づける事情(表6参照)の有無を確認し、そこから導かれる犯罪のカ テゴリーに対応する量刑の出発点ならびに範囲(表7参照)が定められるこ とになる。
本ガイドラインの策定にあたっての諮問段階において、量刑審議会は、本 罪の「侵害」のレベルのうち一番高度のものは、生命の危殆化(
endangerment
of life
)であり、「これは、犯罪者が生命の侵害を惹起することを意図しながらテロ行為の準備をしていたことが明らかである場合、または、生命が侵害
る。See, Barot[2007], op. cit. n.61, at pp. 171-172. しかし、本件は自爆テロの計画が練られて いた事案ではなく、自爆テロの脅威から、一律に、テロに関連する犯罪に対する量刑を厳しく することには疑問も示されている。Bajwa, op. cit. n.66, at p. 6.
67) Ibid.
68) See, Ashworth, op. cit. n.29, at p. 98 ff.
69) Sentencing Council, Terrorism Offences: Definitive Guideline(2018).
表6:犯罪のカテゴリーを決するための考慮要素とレベル 以下のうちの一つまたは複数によって示される非難可能性
A
・ 準備行為が完了した、または、完了に非常に近接したので、逮捕されな ければ、当該テロ行為が実行されていた可能性が非常に高いようなテロ 行為において、単独で行為していたこと、または先導的な(leading)役 割を果たしたこと
B
・ 準備行為が進展し、逮捕されなければ、当該テロ行為が実行されていた 可能性が高いようなテロ行為において、単独で行為していたこと、また は先導的な役割を果たしたこと
・ 準備行為が完了した、または、完了に非常に近接したので、逮捕されな ければ、当該テロ行為が実行されていた可能性が非常に高いようなテロ 行為において、重要な(significant)役割を果たしたこと
・ (
A
に該当しない場合で)犯罪者が、イギリス国内であれ、国外であれ、他の者に働きかけて、テロ行為に参加させたこと
C
・ 準備行為がそれほど進展していない場合で、テロ行為において先導的な 役割を果たしたこと
・ 準備行為が進展し、逮捕されなければ、当該テロ行為が実行されていた 可能性が高いようなテロ行為において、重要な役割を果たしたこと
・ 準備行為が進展し、逮捕されなければ、当該テロ行為が実行されていた 可能性が高かった場合で、テロ行為において重要でない(lesser)役割し か果たさなかったこと
・ (
A
またはB
に該当しない場合で)犯罪者が、テロ行為を目的として、訓 練したり、技能を得たりしたこと・ (
A
またはB
に該当しない場合で)他の者に対する重要な援助または奨励 行為を行ったことD
・犯罪者が、テロ行為に向けて、非常に限定的な準備にのみ従事したこと
・他の者に対する重要でない援助または奨励行為を行ったこと
・
A
、B
またはC
に該当しない他の場合 侵害侵害は、危殆化された侵害の類型と侵害が惹起される可能性に基づき評価される。
侵害の可能性を考慮する際、裁判所は、あらゆる計画の遂行可能性(
viability
) を考慮すべきである。カテゴリー1 ・ 多数人が死亡する危険であり、それが生じる可能性が非常に高かった場合 .
カテゴリー2 ・ 多数人が死亡する危険であるが、それが生じる可能性が非常に高くはなかった場合
表7:犯罪のカテゴリーに対応する量刑の出発点と範囲 非難可能性
侵害
A B C D
カテゴリー 1
出発点 終身刑
(最低35年)
出発点 終身刑
(最低25年)
出発点 終身刑
(最低15年)
出発点 15年の拘禁
カテゴリーの 範囲 終身刑
(最低30-40年)
カテゴリーの 範囲 終身刑
(最低20-30年)
カテゴリーの 範囲 終身刑
(最低10-20年)
カテゴリーの 範囲 10-20年の拘禁
カテゴリー 2
出発点 終身刑
(最低25年)
出発点 終身刑
(最低15年)
出発点
15年の拘禁 出発点 8年の拘禁
カテゴリーの 範囲 終身刑
(最低20-30年)
カテゴリーの 範囲 終身刑
(最低10-20年)
カテゴリーの 範囲 10-20年の拘禁
カテゴリーの 範囲 6-10年の拘禁
カテゴリー 3
出発点
16年の拘禁 出発点
12年の拘禁 出発点
8年の拘禁 出発点 4年の拘禁 カテゴリーの
範囲 12-20年の拘禁
カテゴリーの 範囲 8-16年の拘禁
カテゴリーの 範囲 6-10年の拘禁
カテゴリーの 範囲 3-6年の拘禁
・ 誰かが死亡する危険で、それが生じる可能性が非常に高かっ た場合
カテゴリー3
・ 誰かが死亡する危険であるが、それが生じる可能性が非常に 高くはない場合
・ 財物の損壊または経済的な利益に対する、広範な、または重 大な危険が生じた場合
・街のインフラに対して重大な影響を及ぼす危険が生じた場合
・その他の場合