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(1)

分社経営における労使関係の現状と課題 : 民鉄A社 の事例から

著者 井波 洋

雑誌名 評論・社会科学

号 79

ページ 85‑135

発行年 2006‑03‑15

権利 同志社大学社会学会

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000011871

(2)

分 社 経 営 に お け る 労 使 関 係 の 現 状 と 課 題

││民鉄A社の事例から││

井 波 洋

︵社会学研究科産業関係学専攻博士課程後期︶

1課題と方法

2労働組合組織率の現状

︵1︶組織率の推移

︵2︶組織率低下の原因

︵3︶小括

3分社経営の進展と労使関係の変化︱民鉄A社の事例

︵1︶鉄道事業の現況

︵2︶分社化の進展と労使関係の変化

︵3︶小括

4労使関係の将来像

︵1︶労働法のパラダイム転換

︵2︶組織形態の選択

︵3︶組織化の範囲と代表の正統性

︵4︶労働組合の役割

︵5︶産業としての労働組合

― 85 ―

(3)

5結語

1課題と方法

長年にわたる労働組合組織率の低下とともに︑労働組合存亡の危機が叫ばれて久しい︒

二〇〇五年における推定組織率は過去最低の一八・七%︵前年比▲〇・五ポイント︶と発表された︒その内容を見

ると︑分母の雇用者数は前年比四五万人︵〇・八%︶の増加に対し︑分子の労働組合員数は前年比一七万一千人︵一・

七%︶の減少となっている︒組合員数の減少が大きかった産業は︑製造業︵▲七万二千人︶︑公務︵▲三万人︶︑金融・

保険業︵▲一万九千人︶︑教育︑学習支援業︵▲一万九千人︶︑運輸業︵▲一万七千人︶︑建設業︵▲一万六千人︶など

である︒製造業は組合員総数の二七・四%を占め︑公務︑金融・保険業などは比較的組織率の高い産業であるが︑いず

れも雇用者数の減少とともに組合員数も減少しており︑産業構造の変化の大きさをうかがわせる︒

労働組合のこのような現状に対して︑企業内労使関係の当事者である労働者︑企業︑そして労働組合は︑それぞれど

のように対処しようとしているのか︒とりわけ労働組合は︑現在そして将来︑どのような機能︑役割を果たしうるの

か︑また︑果たすべきなのか︒こうした問題提起に対しては︑一方で︑雇用社会における個別化︑多様化の動きは労働

者の団結を分断しその立場を弱めるものであり︑断固として反対すべきであるという考え方がある︒他方︑そのような

動きは労働者の主体性を尊重するものであり︑経済活動の自由という市場経済本来の姿へ近づくものとして基本的に是

認した上で︑公正なルールを確立し︑その実効性を高めるために積極的に環境整備を図ろうとする考え方がある︒

本稿において︑筆者は個人の自由な意思を尊重する後者の立場に立って︑現下の日本企業において進行しつつある企

業内労使関係の変化を捉えていきたい︒すなわち︑戦後日本の高度成長を支えてきた企業内労使関係のシステムが︑バ 分社経営における労使関係の現状と課題

― 86 ―

(4)

ブル崩壊後の長期不況下においていよいよ抜本的な改革のメスを入れられようとする中︑従業員代表や労使協議の制度

がいかなる方向へ進化しようとしているのか︒そうした新しい枠組みの中で従来の企業別労働組合はいかなる役割を果

たそうとしているのか︑また︑果たすべきなのか︒これらの課題について︑事例を取り上げ検討する︒

本稿では︑民鉄A社における最近の労使関係の動向︑とりわけ主力の鉄道事業において近年進められている業務のア

ウトソーシングの動きと︑それに伴い設立された分社会社B社における雇用形態の多様化の進展ならびにそれに対応す

る労使関係の動向に焦点を当てた検討を行う︒民鉄業界は︑従来規制業種の典型例として挙げられることが多かった

が︑国鉄の分割民営化を端緒として︑近年急速に規制改革の波が押し寄せ︑事業経営や雇用構造にも強力なインパクト

を与えている︒そのダイナミックな姿を分析することによって︑現下の日本企業とその労使関係に何らかの示唆を与え

ることができるのではないかと考えている︒

本稿の構成は以下のとおりである︒次節では︑議論の背景となる日本の労働組合の現状について︑組織率の側面から

問題点を整理する︒それを踏まえて︑第3節では主題であるA社における近年の労使関係について論ずる︒A社を取り

巻く近年の事業環境の動向を

韵事う雇用構造︑人労に務管理︑労使関伴れんにだ上で︑分社化よそる業務の再編と︑係

の変化を詳述する︒そこで抽出された問題点に基づき︑第4節で労使関係の将来像と労働組合の役割について整理を試

みる︒

2労働組合組織率の現状

︵1︶組織率の推移

労働組合組織率の低下傾向は︑一九七五年に三四・四%を示して以来三〇年にも及ぶ︒図1は︑低下に転じた一九七

― 87 ―

分社経営における労使関係の現状と課題

(5)

六年以降の組織率について︑対前年増減ポイントの推移

と︑その内訳に相当する組合員数︵分子︶︑雇用者数︵分

母︶それぞれの増減寄与度を簡易推計したものを示してい

る︒これによると︑二〇〇五年の組織率は二〇〇四年に対

して〇・五ポイント減少しているが︑そのうち分子の組合

員数減少によるものが▲〇・三ポイント︑分母の雇用者数

増加によるものが▲〇・二ポイントに相当すると考えられ

る︒

過去に遡って見ると︑一九九五年を境として︑それ以前

は組織率の減少が主として雇用者数の増加によるものであ

ったことがわかる︒組合員数は一九八〇年代においてはほ

ぼ横ばいで︑雇用者数が増加したにもかかわらずその組織

化が思うように進展しなかった状況が推察される︒その反

省の中から労働組合のあり方を根本から見つめなおし︑真

に労働者が求める活動を再構築しようという﹁ユニオン・

アイデンティティ﹂運動が展開されたことは周知のとおり

であるが︑そうした取り組みの成果もあって一九九〇年代

前半には組合員数が増加に転じ︑組織率低下に歯止めがか

かるかに見えた︒

1 推定組織率増減要因

(データ出所)厚生労働省『労働組合基礎調査』

分社経営における労使関係の現状と課題

― 88 ―

(6)

しかし︑その後不況の長期化に伴い雇用者数は一時減少に転ずるとともに︑いよいよ組合員数自体が減少に転ずるに

至り︑組織率低下傾向は新たな局面を迎えているといえる︒すなわち︑労働組合にとって一九九〇年代前半までの課題

は︑増加しつつある雇用者をいかにして組織化するのかという比較的ポジティブなテーマが中心であったと考えられる

が︑一九九〇年代後半以降は︑組織労働者そのものの減少をいかにして食い止めるのか︑組織労働者の雇用をいかにし

て確保するのかという︑より深刻な︑そして労働組合の存在意義が直接問われる課題に焦点が移ってきたといえよう︒

︵2︶組織率低下の原因

このように組織率を低下させつづけている雇用者数や組合員数の変化が生じた原因について論じた先行研究は枚挙に

暇はないが︑以下に代表的なものを紹介する︒

神代和欣︵

2002

︶は﹁いろいろの原因が複合作用している﹂と前置きした上で︑次の六点に整理している︒

漓ユニオ

ン・ショップ制の確立している大企業の雇用量が減量経営によって著しく減少した︑

滷雇用量の増加しているサービス

業︑卸・小売業などではもともと労働組合勢力が弱い︑

澆て組はに業企細零小中るいえそ増の用雇もで種業の外以れ合

が存在しないところが多い︑

潺か派遣労働者がなな︶か労働組合に加や性雇パ用の増えているー女トタイマー︵特に入

しない︑

潸比るいてし加増が重の非職理管るなと員合組︑

澁立にれずいの合組働労るす対若し化変が観値価の々人いも

加入しない労働者が増えている︒

都留康︵

2002

︶は︑先行研究を構造的分析と組織化プロセス分析とに大別し整理している︒まず雇用構造の変化とい

う観点から分析すると︑﹁雇用者に占める女性労働者やパートタイム労働者の比率の上昇が組織率低下に作用している﹂

が︑それらが説明している割合は﹁約半分程度にすぎない﹂こと︑また︑﹁新規組織化の停滞が組織率低下の重要な要

因である﹂ことが判明したが︑﹁指摘されるような属性をもつ労働者の組織化や新規組織化が困難だったのはなぜかと

― 89 ―

分社経営における労使関係の現状と課題

(7)

いう問題﹂の説明は不十分であった︒次に︑組織化のプロセスに視点を移して分析をすると︑﹁組織化に対する使用者

の抵抗が組織率低下をもたらしている可能性は小さい﹂こと︑その一方で﹁労働組合の組織化努力は︑組合のある企業

の未組織層についても︑組合のない企業の労働者についても︑著しく不十分である﹂こと︑さらに﹁組合に加入したり

組合を結成する当の主体である未組織労働者の組織化支持はそれほど高くなく︑かつ近年低下している﹂ことが判明し

たとしている︒

日本労働研究機構編︵

2002

︶では︑組織率低下の原因に関する過去の研究を整理し︑産業構造︑就業構造の観点から

は﹁組織率の低い第三次産業︵卸売・小売業・飲食店やサービス業︶での雇用者数の増大﹂を︑産業内の雇用構造の観

点からは﹁女性労働者の増加︑パートなど非正社員の増加︑管理職の増加﹂を︑それぞれ挙げている︒そして︑それら

が組織率低下に与える影響を計量分析した結果を整理すると︑﹁前者の効果が二〇〜三〇%︑後者の効果が七〇〜八〇

%﹂となることを指摘している︒一方︑都留康氏のいう組織化プロセスに視点を移し︑﹁産業・雇用構造の変化に基づ

く説明がどうであれ︑新規の労働組合員が増加しないから組織率が低下する﹂と指摘した上で︑新規組織率の低迷から

﹁企業に新たな労働組合が結成されにくくなってきている﹂現状を明らかにしている︒また︑﹁企業別組合の組織化活動

との関係では︑企業における未組織層の増加が指摘される﹂として︑﹁非正社員はほとんどの企業の場合︑労働組合に

組合員の範囲として認められていない﹂ことや︑管理職に代表されるような﹁正社員のうち非組合員の占める割合の増

加も︑企業内未組織層の増加に影響している﹂と述べている︒さらに︑﹁一九九〇年代以降の不況は︑企業の雇用調整

や事業所閉鎖︑倒産を増加させている︒それが労働組合員数の減少に拍車をかけている﹂と分析している︒

︵3︶小括

以上をまとめると︑近年の組織率低下の原因は以下の三点に集約される︒

漓た就雇の内業企︑用ま造︑構業において 使課と状現の係関に労るけお営経社分題

― 90 ―

(8)

︒従るいてし加増が率比の﹂員業規正非﹁るゆわいていおに造構 !

滷組ん進どんとほが化織の新で業企たれさ立設に規で

いない︒これについては︑労働組合がある企業においても︑分社化やアウトソーシングを進めるために設立された企業

で組織化が容易になされていないことを示唆している︒特に従来ユニオン・ショップ制を導入していた大企業におい

て︑その影響が顕著に表れていると推察される︒

澆実かに的極積︑が側の者働労は︑組てしと因要るいでん阻を化織消

極的にかはともかくとして︑労働組合を必要としていないことも大きく影響している︒

組織率低下の原因を以上のように理解した上で︑次節では︑このうち

漓と 滷現の社Aたきてし発のに的型典が題問事

例を取り上げる︒

3分社経営の進展と労使関係の変化︱民鉄A社の事例

A社は関西に拠点を置く大手民鉄会社で︑主力の鉄道事業のほか︑不動産︑流通︑ホテル︑旅行などの事業をグルー

プで多角的に展開している︒労働組合は︑企業内組合であるAU労働組合があり︑上部団体は私鉄総連に加盟してい

る︒A社とAU労働組合とは労働協約を締結しており︑ユニオン・ショップ制が採用されている︒

本節では︑A社の主力事業である鉄道事業のうち︑駅業務︑列車運行業務に関わる部門︵以下﹁運輸部門﹂︶の近年

の動向を中心に検討する︒それに先立ち︑まず関西民鉄における事業環境と経営状況について概観する︒

︵1︶鉄道事業の現況

︵a︶事業環境の動向

民鉄各社においては︑近年事業構造の改革に向けての様々な取り組みが行われているが︑その背景には収益の基盤と

― 91 ―

分社経営における労使関係の現状と課題

(9)

なる旅客需要の伸び悩みがある︒とりわけ関西圏の各社

では一九九〇年代に入り旅客需要の減少傾向が続いてお

り︑早晩鉄道事業の経営基盤を揺るがしかねないとの危

機感が強まっている︒

図2は︑西日本旅客鉄道︵以下﹁JR西日本﹂︶が発

足した一九八七年度以降︑各年度の旅客輸送の総量を示

の﹂もたし化数指をターデのロキ人送輸﹁てしとのもす !

である︒これによると︑一九九一年度をピークとして関

西民鉄大手の輸送需要は減少の一途を辿っていることが

わかる︒とりわけA社は他社よりも早くから減少傾向が

始まっており︑一九九四年度から九五年度にかけては阪

神・淡路大震災によるダメージも顕著である︒一方︑J

R西日本は一九九五年度まで順調に増加したのち︑ほぼ

横ばいの状況が続いている︒

これら六社の輸送人キロについて︑各年度の増減を寄

与度で示したものが図3である︒これによると︑震災の

あった一九九五年度まではJR西日本の大幅な増加が見

られる反面︑特に一九九二年度から一九九五年度にかけ

てのA社の減少が顕著である︒それ以降は︑A社以外の

2 輸送人キロの推移(1987年=100)

(データ出所)JR西日本ホームページ

(注)阪急、阪神は第一種事業のみ、JR西日本は京都・大阪・神戸の三支社

分社経営における労使関係の現状と課題

― 92 ―

(10)

民鉄の減少寄与が著しい︒

こうした状況が生じた原因としては︑以下の点が挙げ

られる︒

第一に︑一九八七年の国鉄分割民営化により設立され

たJR西日本が︑民鉄との競合を強く意識した営業戦略

を採っており︑その結果民鉄からJR西日本へ旅客の転

地二に期ルブバるゆわい︑に第︒るあでとこたじ生が移 !

価が急騰した結果︑比較的都心に近い民鉄沿線からより

遠隔地で相対的に地価の安いJR沿線に人口の移動が生

じた︒これには︑JRの路線改良︵電化︑複線化︶によ

るトリップ時間の短縮も影響している︒第三に︑こうし

た人口移動と相まって都市計画道路や都市高速道路の整

備が進み︑自動車交通の利便性が急速に高まった︒第四

に︑道路整備に伴いいわゆるロードサイド・ショップも

各地で出店が進み︑あるいは情報通信技術の進歩により

インターネット・モールが急速に社会に普及したことに

伴い︑都心のターミナルの集客力が相対的に低下した︒

第五に︑少子化︑高齢化が進み通勤・通学需要が縮小す

る傾向にあることや︑よりマクロ的には︑日本の産業構

3 輸送人キロ増減寄与度

(データ出所)図2に同じ

― 93 ―

分社経営における労使関係の現状と課題

(11)

造︑地域構造の変化に伴い︑製造業の工場や支店︑本

社などの中枢管理機能が関西から東京あるいは地方都

市︑海外へと移転し︑これに合わせて人口も流出が続

いていることが挙げられる︒

このように︑関西の民鉄を取り巻く環境は︑国内経

済における関西圏の相対的地位低下を背景とした人口

流出︑少子・高齢化︑高度情報化など社会環境の変化

による移動需要の縮小︑自動車やJRなど他の交通機

関︑交通手段との競合という︑いわば三重苦の状況に

あるといえる︒

︵b︶業績の動向

こうした構造的要因を抱えながら︑将来にわたる旅

客需要の減少への対応を迫られているのが関西民鉄の

現状であるが︑次に最近の事業業績の動向について︑

︒もくおてれ触てえま踏較比のと鉄民手大の東関 !

図4は︑各社の旅客運賃収入について対前年比増減

率を見たものである︒関東各社が増加基調にあるのに

対し︑関西はJRも含め減少基調にある︒先に述べた

地域構造の変化がこの数値からも垣間見られよう︒関

4 旅客運賃収入 対前年増減率

(データ出所)民鉄:国土交通省鉄道局監修『数字で見る鉄道』各年版 JR西日本:同社ホームページ

分社経営における労使関係の現状と課題

― 94 ―

(12)

西の中では︑JR西日

本の優位性が見られる

のはともかくとして︑

民鉄においてはA社の

減少幅が比較的小さく

なっている︒

次に費用構造を見

る︒図5は営業収益に

対する営業費用︑利益

の項目別比率ついて︑

A社が後述する事業構

造改革に着手する直前

の一九九八年度と二〇

〇四年度とを比較した

ものである︒これによ

ると︑関東八社の数値

はあまり大きく変動し

ておらず︑利益率も比

較的安定している︒ま

5 費用・損益 対営業収益比率

(データ出所)国土交通省鉄道局監修『数字で見る鉄道』各年版

(注)営業外損益=営業外費用―営業外収益

― 95 ―

分社経営における労使関係の現状と課題

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た︑減価償却費の比率が関西各社に比較して高いが︑これは輸送需要が引き続き増加基調にある中で︑新線建設︑複々

線化や高架化︑駅施設の改良などのため高水準の設備投資が続いていることを反映している︒

一方関西各社を見ると︑一九九八年度における人件費率は四〇%前後の水準にあり︑関東八社との格差が際立ってい

た︒経常利益率では︑A社を除く四社は五・九%と関東八社の半分にも満たない水準であった︒これに対しA社は関東

八社と比較しても高水準の利益率を確保していた︒これは︑阪神・淡路大震災による被害とその復旧を契機として本格

的な事業再構築に着手し︑その中で不動産事業やレジャー事業の再編に要する資金を鉄道事業の収益からも確保する経

営戦略を採用したことが反映しているものと推察される︒

それと並んで顕著なのは︑関西各社の人件費︑その他経費の項目における構成比の大きな変化である︒一九九八年度

から二〇〇四年度にかけて︑A社では人件費率が三九・四%から二〇・二%へと一九・二ポイント減少する一方︑その

他経費率は一六・一%から二七・七%へ一一・六ポイント増加︑両者を差し引きすると七・六ポイントもの減少となっ

ている︒同様に︑関西四社では人件費率の一五・二ポイント減少に対しその他経費率は九・二ポイント増加︑両者の差

し引きは六・〇ポイントの減少である︒それと共に︑関西四社では経常利益率も関東八社並みの水準に改善されてい

る︒

その原因としては︑この間賃上げの抑制や一時金の削減など一人当り人件費の抑制策が講じられたこともさることな

がら︑後に詳しく述べる分社化の推進が大きく反映されている︒すなわち︑業務を分社会社に委託化することにより︑

直接人件費として負担していた部分が業務委託料等の名目でその他経費に振り替わるとともに︑全体としてのコスト削

減を図ることにより︑利益水準を維持もしくは改善したといえる︒

このように︑関西各社においては非常に厳しい経営環境のもと業績の維持向上に取り組んでいるが︑とりわけ人的側

面にメスを入れることにより劇的な構造変化を遂げようとしているといえる︒その中で特にA社が先行して取り組んで 分社経営における労使関係の現状と課題

― 96 ―

(14)

おり︑関東八社と比較しても良好な業績を上

げ続けているといえる︒

︵2︶分社化の進展と労使関係の変化

次に︑A社における運輸部門の分社化につ

いて︑実施以前と以後で雇用構造や人事労務

管理︑さらには労使関係に︑いかなる変化が

生じたのかを見ていくことにする︒

︵a︶従前の業務組織と人事労務管理

A社の路線は︑複数の本線ならびにそれに

付随する支線とで構成されており︑運輸部門

においては従前︑各本線とそれに付随する支

線を加えた﹁線区﹂ごとのタテ割り組織とし

て︑駅業務と列車運行業務の現業部門を統括

する﹁︵各線︶鉄道営業課﹂が設けられ︑そ

の中に駅業務を担当する﹁駅管区﹂と列車運

行業務を担当する﹁運転係管区﹂が置かれて

いた︵図6︶︒それぞれの管区には︑管区長

である﹁駅長︵A︶﹂︑﹁運転係長﹂と︑管区

6 運輸部門業務組織(2001年6月以前)

(注)組織単位、名称については、検討に支障のない範囲で省略または修正している。

― 97 ―

分社経営における労使関係の現状と課題

(15)

長不在時の責任者となる﹁駅長︵B︶﹂︵いわゆる副駅長に相

当︶︑﹁運転係副長﹂が配置され︑その下に監督者である﹁助役﹂

が従事していた︒その指揮監督下に︑いわゆる駅員として窓口業

務にあたる﹁営業スタッフ﹂や︑駅構内信号装置の手動扱いを担

当する﹁保安スタッフ﹂︑列車に乗務する﹁運転士﹂︑﹁車掌﹂な

どの職種が配置されていた︵図7︶︒なお︑鉄道営業課における

組合員の範囲は︑課長︑管区長を除く社員であった︒また︑鉄道

営業課以外の組織として︑現業従事員の教育訓練機関である教習

所や本社スタッフ部門が設けられていた︒

社員のキャリアパスを見ると︑主として高校卒の新規学卒者が

営業スタッフとして定期採用され︑一定年数︵二年以上︶経過後

社内試験に合格すると︑学科教習・実務教習を経て車掌に登用さ

れる︒その後一定年数︵三年以上︶経過後社内試験を経て運転士

の見習︵けんしゅう︶生となり︑教習所での学科教習︵約三ヵ

月︶︑現場での実務教習︵約四ヵ月︶を修了し︑国家試験に合格

した者が国土交通大臣から動力車操縦者運転免許を与えられ︑正

輩一後てしと員導指後験経数年定︑は後のそ︒るなと士転運の規 !

の育成にあたり︑その後会社の任命により助役へ︑さらには管区

長へと登用されていく︒

7 管区内職制

分社経営における労使関係の現状と課題

― 98 ―

(16)

人事異動は︑典型的には上に述べたように営業スタッフ↓車掌↓運転士↓助役という職種登用に従って発生するが︑

原則的には同一線区内︑すなわち鉄道営業課の組織の範囲内で行われる︒また︑営業スタッフや助役以上の監督者につ

いては定期的な異動が実施されているが︑これもひとつの鉄道営業課の中で︑駅管区相互間または運転係管区と駅管区

との間を異動する︒このことは︑後に述べる労働組合組織と相まって︑線区ごとの職場風土︑組織文化の違いを生み出

している︒

現業従事員はそのほとんどが中学卒・高校卒の男性社員である︒女性社員の採用は一九七〇年頃まで行われていた

が︑主として定期券発売や駅の出改札業務に従事しており︑当時の労働基準法の女性保護規定を考慮して深夜勤務が必

須となる乗務員へは登用しなかった︒従前体制の最終時点では数名しか在職していなかった︒一方︑大学卒社員はいわ

ゆる総合職採用しか行われていなかったため︑鉄道営業課に所属していた者は総数でも一〇名程度︑比率にすると〇・

五%にも満たない程であり︑主として人事係に所属し︑課内人事労務管理の統括的業務に従事していた︒

次に人事処遇制度の概要について触れておく︒A社では一九九一年四月よりいわゆる職能資格制度である﹁新人事制

度﹂へと移行したが︑それ以前は一九五〇年頃に確立された職階制賃金体系に端を発する﹁職別﹂登用制度を採用して

いた︒

職別登用制度の基本的な考え方は︑運輸部門のヒエラルキーと賃金処遇とをリンクさせるものである︒すなわち︑各

係↓て改札係↓出札係↓車掌運従転士↓助役↓首席助役↓っに員列に定員が定められ︑定に職欠員が生じると職種序種 !

長・駅長という順序で登用されていく︒賃金テーブルは各職種別に定められ︑より上位の職種に登用されない限り賃金

が上がらない︑というものであった︒これはいわゆる職務給体系であるが︑このシステムによれば各職種の定員が変わ

らなければ総額人件費は一定であり︑コスト管理が容易であるというメリットがある反面︑労務構成の状況によって登

用数が不安定となり︑社員のモチベーション管理が難しいというデメリットがあった︒

― 99 ―

分社経営における労使関係の現状と課題

(17)

この制度がどの程度純粋な形

で運用されていたかは定かでな

いが︑一九六三年には﹁新職の

導入﹂が実施され︑一部職能資

格制度的な運用が行われるよう

修正された︒以後一九九一年の

新人事制度移行まで︑基本的に

はこの職別登用制度が維持され

た︒

図8は︑新人事制度への移行

直前における職別登用制度の

﹁職﹂と﹁職格﹂の対応関係を

示したものである︒図の右側︑

﹁職別﹂と表わされた部分の実

線で囲まれた単位が独立した

﹁職﹂として定義されており︑

それぞれ一定の基準で定員が定

められていた︒賃金処遇は︑い

わゆる職務等級に相当する﹁職

8 登用制度における職区分(運輸現業部門、1991年3月以前)

(注)新規学卒者の初任格付けは次のとおり。

中学卒:作業職1格 高校卒:作業職2格 大学卒:作業職3格

分社経営における労使関係の現状と課題

― 100 ―

(18)

格﹂︵同図左︑点線で示した部分︶ごとに基準が定められた︒

運序れ︑典型的には先の職種列じ︑すなわち﹁車掌﹂︑﹁ら任︑に学卒者は高校卒の場合作新業職2格の﹁駅務係﹂規 !

転士﹂︑﹁助役﹂の順に欠員補充を基本として登用されていく︒ただし︑信号保安業務に従事する﹁信号士﹂や︑ホーム

保安業務に従事する﹁保安係﹂については︑欠員補充等の必要に応じて︑駅務係︑車掌︑運転士の職種の者を転用し

た︒一方で︑例えば職種としての車掌総定員のうち一定割合を︑独立した﹁職﹂としての﹁指導車掌﹂の定員と定め︑

上位職への登用︑退職等により欠員を生じた場合﹁車掌﹂の中から一定の基準に基づき﹁指導車掌﹂へ登用する制度が

設けられた︒これにより︑労務構成の状況により運転士への登用が比較的少数しかなされない場合や適性等の理由で運

転士へ登用しえない者についても︑運転士と同じ﹁職格﹂に格付けし︑運転士と同等の賃金処遇を行いうる道が開かれ

ることとなった︒ "

こうした﹁職格﹂に基づく賃金処遇は︑基本給決定において具体化されていた︒すなわち︑基本給は︑各職格に対す

る最低保障額である﹁職別保証﹂を基に毎年のベースアップを加算して決定された︒職別保証はそれぞれの職格に対応

して定められた初任給に相当するものであり︑上位職に登用された場合︑年齢︑勤続年数による若干の調整額はあるも

のの︑基本的にはそれまでのキャリアに関係なく同じ賃金に到達することになる︒また︑毎年のベースアップにおいて

は︑職格に基づく配分割合が大きく︑同一職格内での人事考課や属人的要素による配分格差が比較的小さかった︒さら

にベースアップに合わせて職別保証のテーブルも毎年改定されたが︑定期昇給を制度化していないにもかかわらず︑こ

れに相当する在格一年当り較差を設ける形で金額を設定していた︒こうした賃金制度の特徴から︑登用︵昇格︶に対す

るインセンティブは非常に高かった︒一年でも早く昇格することが生涯賃金の増加につながる一方で︑たとえ現在の職

への登用が遅れていたとしても︑次の職へ同時に登用されれば賃金は追い付き︑さらにその次の職に先に登用されれ

︒こたっあで能可もとるせさ転逆を金賃︑ば #

― 101 ―

分社経営における労使関係の現状と課題

(19)

こうした職別登用制度は︑運輸部門に

おける組織と一定の整合性を有していた

が︑一九八〇年代後半になると︑定年者

が激減する一方でいわゆる団塊世代が組

織の中核になりつつあるという労務構成

の大きな歪を抱える中で︑登用展開が停

滞することが予想された︒また︑他部門

での事業多角化が進展し︑これまで運輸

部門の派生として運用されていた登用制

度から︑より戦略的な人事制度に転換を

図る必要性が指摘されてきた︒そうした

問題意識のもと︑一九九一年四月から

﹁新人事制度﹂が導入されるに至った︒

図9は新人事制度における﹁資格﹂と

﹁職位﹂の関係を示したものである︒資

格は一〇等級に設定され︑従前の職格の

中間に新たな資格を追加したような形に

なっている︒職位の名称は資格に関わり

なく同一のものとする一方で︑昇進昇格

9 新人事制度における職区分(運輸現業部門、1991年4月以降)

(注)新規学卒者の初任格付けは次のとおり。

中学卒、高校卒:10級 大学卒:9級

職位区分、名称は、実施以降一部変更されたものを修正している。

分社経営における労使関係の現状と課題

― 102 ―

(20)

は資格の昇格︵任用︶と職位の登用とに制度上二分され︑定員管理の考え方は職位において受け継がれた︒また︑賃金

は従前の職格基準のものがすべて資格を基準とする体系に改定され︑従前の職別保証は﹁資格別保証﹂に引き継がれ

た︒

以上述べてきたように︑運輸部門においては長年にわたり︑線区ごとの組織体制のもと︑ヒエラルキーに基づく職種

序列を基軸とした労務管理体系を持ち続けていたということができる︒

︵b︶業務効率化の経緯

次に︑運輸部門︑特に駅業務における業務効率化の流れに触れておく︒

鉄道事業は巨大な装置産業であり︑都市計画事業や環境対策などの政策的要請もあるため︑設備投資や維持修繕など

一定規模の資本費用を負担していかなければならないが︑A社においては︑比較的早い時期から出札業務︑改札業務の

機械化や運行管理の自動化を進め︑高い効率性を維持してきた︒

まず出札業務については︑一九五四年に単能式券売機が導入され︑一九七九年までに全駅に自動券売機が設置され

た︒改札業務では︑一九六七年以降順次自動改集札機が導入され︑一九八三年に全駅に設置が完了した︒さらに︑一九

八九年にはプリペイドカードの導入と︑駅務機器の高性能化に対応した新たな遠隔システムによる改札口の無人化の拡

導ト接改札機で処理する﹁スアをードフェアシステム﹂が直ド九ー実施した︒そして︑一九大二年にはプリペイドカを !

入され︑一九九三年の全駅機器更新完了を経て︑一九九六年三月には関西共通ストアードフェアシステム﹁スルッとK

ANSAI﹂がスタートするに至った︒

こうした機械化・自動化の一方で︑現業従事員については駅係員︑乗務員ともに社員を主体とした労務構成を堅持す

るとともに︑効率化に伴う待遇改善を進めてきた︒駅業務の機械化に対して︑労働組合は一貫して合理化として受けと

めつつ︑必要要員の確保と労働条件︑職場環境の改善︑業務の高度化に対応した登用昇格面での改善を求めてきたが︑

― 103 ―

分社経営における労使関係の現状と課題

(21)

会社側も﹁高効率︑高実績︑高賃金﹂の思想のもとに賃金水準の向上︑職別定員の見直しと登用数の確保︑それに伴う

!

元のなどにより︑生産性向上成確果を一定部分社員にも還保の増員の実施︑あるいは休日・昇労働時間短縮と補充要給 "

︒〇率は三〇%台後半から四%件前後の水準となっていた費人そる姿勢を維持してきた︒のす結果︑営業収入に占める #

一方︑A社の鉄道事業における業績は先に見たように︑輸送人キロは一九九一年度をピークに減少の一途をたどり︑

二〇〇四年度は一九九一年度比で約二〇%の減少となるに至っている︒また︑消費税率変更に伴う改定を除くと︑実質

的な運賃改定は一九九五年九月を最後に実施されておらず︑旅客運賃収入も一九九六年度をピークとして︑その後は輸

送人員の減少に呼応して減収が続いている︒将来に向けても︑先に述べたように事業環境は三重苦の状況にあり︑輸送

需要の好転は難しいと予想されている︒そして︑このような状況が続いていけば早晩鉄道事業自体の採算が維持できな

くなるとの問題意識から︑業務運営体制の抜本的な見直しが必要とされるに至ったのである︒

︵c︶分社化による業務再編と人事労務管理の変化

こうして︑一九九八年以降︑鉄道事業の全部門において事業構造の改革とコストダウンを図ることを目的として︑分

社化を機軸とした組織の再編が順次始められた︒当初は技術関係部門が先行していたが︑二〇〇一年六月には駅運営業

務の受託会社となるB社が設立され︑同年七月よりA社最大のターミナル駅を含む三駅の業務委託を開始︑二〇〇三年

四月からは全線全駅の委託化を実施するに至っている︒

B社はA社の出資により設立された一〇〇%子会社で︑駅運営業務についてはA社との間で﹁業務受委託契約﹂を締

結し受託する形態をとっている︒従前駅業務に従事していたA社社員はB社へ﹁在籍出向﹂する雇用形態に変更される

とともに︑別途B社で直庸従業員を採用し︑職場では両者が混在して業務に従事している︒

駅業務の委託化にあたり︑運輸部門の組織も抜本的に変更されている︵図

1 0

型り割テタ別区線の前従︑に一第︒︶組

織から︑列車運行と駅運営の機能を分離したヨコ割り型組織に再編され︑全線の駅業務を管轄するB社﹁営業部﹂と︑ 分社経営における労使関係の現状と課題

― 104 ―

(22)

全線の列車運行業務を担当する

﹁運輸課﹂に二分された︒

第二に︑キャリアパスも大き

く見直された︒新規採用はB社

における﹁契約社員﹂の雇用形 !

態で行い︑当初は営業スタッフ

として駅業務に従事する︒その

後一定年数経過後︑試験を経て

車掌に登用されるが︑この時点

ではまだB社の﹁契約社員﹂契

約のままA社へ出向する形態を

とる︒一方︑運転士ならびに監

督者については︑人命に直接関

わる重大な責任を担う業務であ

り︑高度の技能やスキルを必要

とするため︑今後もA社社員が

従事するとされている︒現時点

ではB社契約社員の車掌経験が

浅いため︑運転士登用者は未だ

10 運輸部門業務組織(2003年4月全面委託化以降)

(注)組織単位、名称については、検討に支障のない範囲で省略または修正している。

― 105 ―

分社経営における労使関係の現状と課題

(23)

生まれていないが︑近い将来そうしたケースが発生するに至れば︑その段階でA社社員として転籍することになる︒ま

た︑運転士の養成に関しては︑運転の安全を担うための知識︑技能やマインドを育成するため︑駅業務︑車掌業務の経

験を必須とする考え方が従前と同様に堅持されている︒そのため︑新規採用の入口としてはB社に一本化されている︒

員て期雇用従業員を採用しいでる︒これは︑B社契約社短形いるに︑駅係員と車掌につて第は︑契約社員を補完す三 !

の採用計画が将来のA社における運転士の要員計画に基づいて立てられていることに関係しており︑契約社員で補充し

出やおけるこれらの契約社員短社期雇用従業員は︑A社へにBで︑ない部分をこれら要員補きうことになる︒そしてれ "

向している者も含め︑非組合員となっている︒

二〇〇五年一二月時点における雇用形態別の従業員構成をみると︑駅管区では概ね三分の一がB社直庸従業員となっ

ており︑非監督者に限ってみると既に半数を超えている︒また︑車掌についても四人に一人はB社からの出向者であ

る︒B社直庸従業員の本格的採用は二〇〇三年一月からであり︑わずか三年足らずでこれだけの変化が職場内に生じた

ことになる︒そのインパクトの大きさは想像に難くない︒

さて︑B社においては当面︑現状の雇用形態と適用職種の枠組みを定着させていくことが課題となるが︑今後の直庸

従業員に対する動機づけについては︑従来の登用制度に準じた職種転換に雇用形態の転換をリンクさせることが志向さ

設期限定するとともに︑契約間種と契約更新の上限回数をを職ぞ応いる︒すなわち︑それれれの雇用形態について対て #

定する︒これにより︑上位職種への登用と新たな雇用形態による雇用契約の締結とを結びつけることが可能となり︑登

用された者は雇用期間が延長しさらに上位職種への登用機会が得られる一方︑登用されない者は上限更新回数を経過す

ると契約満了となる︒こうした仕組みを取り入れることによって︑従来の職種による組織の秩序と登用によるモチベー

ション刺激の機能が維持される一方︑長期雇用に伴うリスクの発生を抑制することができると考えられている︒

こうした新しいキャリアパスの仕組みは徐々に定着しつつあり︑契約社員内部での営業スタッフから車掌への登用は 分社経営における労使関係の現状と課題

― 106 ―

(24)

もちろんのこと︑短期雇用従業員から契約社員への転換︑あるいは短期雇用従業員内部での駅スタッフから車掌への転

換など︑直庸従業員の活躍の場は着実に裾野を広げている︒A社グループ内でのB社の人的資源面での位置づけ︑すな

わち︑基幹職種である運転士としての能力と適性を有する人材を養成し供給するプールとしての役割と駅業務における

多様な人材の活用によりコストダウンを図るという役割を整合的に果たしていくための方策として︑こうしたキャリア

パスが有効に機能するよう︑制度と運用両面にわたり一層の充実を図ろうとしている︒

︵d︶労働組合の対応

この結果︑運輸部門における組織率はどのように変化したであろうか︒業務運営体制見直し直前の二〇〇一年六月と

二〇〇五年一二月とで比較すると︑組織率は九七・三%から八〇・二%へと実に一七・一ポイントも減少している︒こ

の間︑総従業員数は五・四%減少したのに対し︑組合員数は二二・〇%の減少となっている︒注︵3︶と同様の推計を

行うと︑総従業員数減少が組織率を四・三ポイント押し上げたにもかかわらず︑組合員数減少により二一・四ポイント

引き下げたことになる︒今後は︑二〇一二年頃までいわゆる団塊の世代が定年退職期を迎えるため︑さらに非組合員へ

の置き換えが加速され︑組織率の低下が進むものと予想される︒

こうした企業側の動きに対して︑AU労働組合も組織面︑財政面双方からの対応を迫られている︒

組合の従前の組織は︑図

1 1

︵地域︶別に支部制体が組まれ︑専従役区線︑運上段のように︑輸別︑技術の職能分野員

を置いていた︒また︑職能ごとに共通する問題に対処するための協議・連絡組織として﹁協議会﹂が設けられていた︒

しかし︑組合員数と組合費収入の減少傾向︑技術部門や本社部門で進捗する会社組織の再編に対応するため︑専従役員

数の削減と日常活動の活性化を目指して一九九八年に組織改革を実施した︵同図中段︶︒従前の運輸部門と技術部門の

組織を線区別に統合し︑﹁︵各線︶鉄道支部﹂に再編した︒また協議会組織も﹁鉄道協議会﹂に一本化し︑個別の問題に

ついては運輸︑技術の各﹁部会﹂を設け︑そこで対応することとした︒

― 107 ―

分社経営における労使関係の現状と課題

(25)

11 労働組合組織の変遷

(注)

は専従役員を置く常設組織

は専従・非専従の役員によって構成される協議・連絡組織

実体面に則して図式化したため、組合規約上の規定と厳密には合致しない部分があ る。

また、検討に支障のない範囲で組織の省略、名称の修正を行っている。

分社経営における労使関係の現状と課題

― 108 ―

(26)

その後︑上述の駅業務全面委託化をもって分社化が一応の完成をみたとして︑二〇〇四年に再度組織の改編を行った

︵同図下段︶︒これまで協議会は本部三役が議長となり︑各支部︑職能ごとの意見調整の機能が重視されていた︒しか

し︑分社化の進展に伴いそれぞれの職能ごとに分社会社との協議がより大きなウエイトを占めるようになり︑より日常

的な︑職場に密接した問題への対処が重視されるようになってきた︒そこで︑従前の支部組織に対する権限委譲を図る

とともに︑部会組織を中心とした協議体制に移行するよう変更がなされた︒すなわち︑従前の支部組織は線区ごとの

﹁地域支部﹂として存続するが︑その上部組織として﹁鉄道支部﹂を新設し︑﹁部会﹂組織は実質的にこの鉄道支部の配

下に置かれることとなった︒そして︑より職場末端の意見を取り入れやすい運営をめざすために︑各部会長は鉄道支部

もしくは地域支部の専従役員が就任した︒

このような組織再編の中で一点指摘しておくべきことは︑日常の組合活動における組織と対会社との協議・交渉のた

めの組織とが分化しつつある︑という点である︒すなわち︑従来の職能別線区別に確立されてきた組合内部の日常の活

動を担うのが﹁地域支部﹂であり︑一方その支部組織を母体としながら︑会社の業務組織に対応しそれぞれの職能分野

において労使協議の主体となるのが﹁部会﹂であるといえる︒そして︑その両者の活動を全体として調整し︑コーディ

ネートするのが﹁鉄道支部﹂の役割であるといえよう︒一九九八年以降二度にわたり組織を再編する中で︑会社の分社

化戦略とそれに伴う組織の改変に対応しながら︑一方で従来からの線区別職能別に組織が形成され︑それに伴い独自の

風土を有していた職場を︑互いに大きく混乱させることなく徐々に融合していくことに腐心した結果が︑現行の姿であ

るということもできよう︒

その結果︑A社の運輸課に対応する協議体が﹁運転部会﹂︑B社の営業部に対応する協議体が﹁駅部会﹂という形

で︑一応の整理をみたのである︒

AU労働組合として今後の課題については︑二〇〇四年度運動方針の中で次のように述べられている︒﹁私たちの職

― 109 ―

分社経営における労使関係の現状と課題

(27)

場でも雇用形態や就労形態の違う非正規労働者が多く勤務﹂しており︑﹁事業本部内グループ会社での直採用をはじ

め︑契約社員︑臨時従業員などの採用があり︑混在する﹂状況にある︒そのため︑﹁日常的な課題を協議できる場の必

要性が求められており﹂︑従業員﹁協議会組織の立ち上げに努力するとともに︑全AU労協とともに非正規労働者の組

織化に向け議論して﹂いく︑としている︒また︑本部内グループ会社の一部では﹁会社と直接に雇用関係を有する者

︵直庸者︶︑A社に在籍しながら出向し︑会社の業務に従事する者︵出向者︶双方の労働環境の整備や快適な職場づくり

をめざし従業員協議会を立ち上げ︑情報の共有化に努めて﹂きたが︑﹁本来は事業本部内グループ会社において︑会社

と直接に雇用関係を有する者︵直庸者︶が集い︑労働組合を設立することが望ましい﹂︒しかし︑﹁今日の労働事情や組

織結成に至る手続きを考えると現時点では困難な状況にあり﹂︑組織化の﹁前段のステップとして﹂当面は従業員協議

会の設立に努力していくとの方針が示されている︒

この方針に基づき︑出向社員を含めたB社従業員の自発的な組織体として︑二〇〇五年四月に﹁B社従業員協議会﹂

が設立された︒この協議会は︑AU労働組合とは完全に独立した︑法的には任意団体として組織されたが︑設立にあた

ってはAU労働組合の全面的な支援を受けていた︒協議会の目的としては︑会員相互の親睦とコミュニケーションを図

るとともに︑労働環境の整備︑充実を通して明るく働きやすい職場づくりに資することが掲げられ︑その会員には︑A

社からの出向組合員とB社の直庸従業員︵契約社員︑短期雇用従業員︶とが対等の立場で加入するものとされており︑

協議会での活動や役員の選任権︑被選任権などいずれも特に制約は設けられていない︒

職場レベルでの協議会組織としては︑個々の駅管区ごとに﹁管区協議会﹂が設置されたが︑これは労働組合の﹁班﹂

と対象範囲が重複しており︑管区協議会のリーダーである﹁議長﹂には労働組合の班長を選任する一方で︑サブリーダ

ーの﹁副議長﹂にはB社直庸従業員から代表者を選任するという運用上の工夫を行い︑直庸従業員の発言力の確保に配

慮している︒また︑全社レベルでは︑管区協議会の役員全員を構成員として﹁全体協議会﹂を設置するが︑その議長と 分社経営における労使関係の現状と課題

― 110 ―

(28)

二名の副議長のうち一名を管区協議会議長から︑もう一名の副議長を管区協議会副議長から選任するよう運用し︑ここ

でも直庸従業員への配慮がなされている︒

このように従業員協議会は︑出向組合員と直庸従業員との対等な立場や発言力を確保し両者の自然な融和を図ろうと

している一方で︑組織運営にはあくまでAU労働組合の強い影響力を及ぼそうとしているといえる︒しかし︑出向組合

員が数的にも︑また︑実際の活動力の面でも優位にある現状のもとでは︑ごく自然な形で組織を立ち上げることができ

たといえよう︒

ところで︑B社においては従業員協議会設立に時機を合わせて︑社内の労使協議機関として﹁労使委員会﹂が設置さ

れた︒この委員会は︑会社が指名する委員と従業員の互選による委員とが同数となるよう構成され︑互選委員としては

基本的に従業員協議会の管区協議会議長︑副議長が選任されている︒また︑互選委員には特にAU労働組合の駅部会長

も選任されており︑A社における労使協議との円滑な連携や役割分担も意識されている︒

労使委員会の付議案件としては︑会社の経営計画の説明や雇用条件の変更︑業務改善︑就業環境の整備︑安全衛生︑

賞罰など一般的な労使協議制と同様の内容が挙げられているが︑現時点では設置初年度ということもあり︑被服貸与や

福利厚生などの苦情処理的な事項が解決されている程度である︒しかし︑労使間で正規のコミュニケーションの場が設

けられたということは︑B社の直庸従業員に概ね好意的に受け止められており︑労使ともにその協議機能を充実させて

いきたいとしている︒

このようにB社においては︑多様な雇用形態が混在する中で従業員協議会を通じて従業員相互の理解と協調の精神を

育みながら︑労使委員会における円滑なコミュニケーションにより労使関係の安定も図っていくという︑新たな挑戦が

始まった︒

― 111 ―

分社経営における労使関係の現状と課題

(29)

︵3︶小括

以上︑今日までのA社運輸部門における業務の分社化と労使関係の到達点をみてきたが︑このように確立されつつあ

る枠組みを前提として︑B社が新しい労使関係を構築するにあたっての問題点を整理しておく︒

その第一は︑労使関係の﹁主体﹂に関する問題である︒これは労使それぞれに論点を抱えている︒まず使用者につい

ては︑B社がその地位にあることについては異論がないとしても︑グループ経営や業務の受委託関係を前提とすると︑

そこにはA社の影響力が反映する余地が少なからずあるといえよう︒すなわち︑B社の経営戦略や経営計画はA社グル

ープの経営戦略との整合性を当然に求められ︑より具体的な人事施策についても︑その原資は最終消費者からの収入は

もとより︑それを源泉とするA社からの業務受託料に依存することとなる︒したがって︑B社はA社との関係において

負担の転嫁と効率化努力との拮抗を考慮せざるをえない立場に置かれ︑B社が主体性を確保しながら労使関係を運営し

︒関るなと要必が理整の係限権のと社A︑はにくいて !

労働者側の主体に関しても問題を抱えている︒現状におけるB社とAU労働組合との直接の協議は︑基本的に出向組

合員の労働条件に関係する問題に限定されている︒すなわち︑AU労働組合がB社における労働条件について正規の団

体交渉︵またはその下部交渉︶を行う根拠としては︑A社との労働協約およびA社出向規程に関する労使協定がそれに

あたり︑B社へ出向している組合員を対象として彼らに直接関連する労働条件についてのみ交渉しうるというのが︑少

なくとも労使間の建前になっている︒しかし実態的には︑駅の管理監督者については全員A社からの出向社員で占めら

れており︑非監督者についても出向社員とB社の直庸従業員とが混在しながら業務に従事しているため︑事実上駅業務

全般にわたり労使協議の対象となっている︒なお︑AU労働組合とB社との間では労働協約は締結されておらず︑その

意味で正規の団体交渉を行うための確立されたルールは︑今のところ存在しない︒三六協定など正式な労使協定を締結

しているものもあるが︑それはB社就業規則に基づき過半数代表者として締結しているとの理解である︒ 分社経営における労使関係の現状と課題

― 112 ―

(30)

しかるに︑B社における従業員構成の変化は先に述べたとおり︑駅管区においてA社からの出向者の割合は既に全体

の六割程度にまで減少しており︑AU労働組合は︑過半数代表者の資格は維持されているものの労働協約の一般的拘束

力を行使する要件は満たしていない︒また︑B社における今後の従業員構成の変化を想定すると︑いよいよAU労組の

を状れている︒こうした況えに鑑み︑直庸従業員ら考位と数代表としての地が過失われる日も近い半 !

!

蚊屋の外

"

に置

いた労使関係は本来あるべき姿とはいえないとの考え方から︑先述の従業員協議会の設立に至った︒そこでは︑B社で

ともに働く者として︑直庸従業員に対しても労使間の問題について参加︑発言の機会を与え︑また︑労務管理の面から

しても企業の施策について重要な情報を組織的に提供するという機能が期待されている︒また︑単に労使間の利害調整

にとどまらず︑出向組合員と直庸従業員︑さらには直庸従業員内部でもそれぞれの雇用形態によって生じてくるであろ

う利害対立とその調整という問題意識も生まれている︒すなわち︑従業員の多様な価値観や就業意識︑組織や職場に対

するロイヤリティの違いを反映して︑より個別的で︑より多様な意見調整の場として機能することが求められるといえ

る︒

この点に関連して︑第二の問題は︑従業員代表の﹁正統性︵正当性︶﹂をいかに担保するかという点である︒B社に

おいては︑従前の正社員主義から決別し︑多様な雇用形態の導入とそれらをキャリアパスと有機的に結合させることに

よるモチベーション管理を志向している︒そこでは︑多様な価値観を有する従業員が互いに異なる利害関係を孕みなが

らも︑それぞれの主体的意思によって雇用契約関係を結んでいる姿が想定されている︒そうした従業員の集団である従

業員代表組織において代表者が﹁正統な﹂代表者であるためには︑単に﹁過半数を代表する﹂こと以上に︑労使協議の

枠組みや取り扱うべき内容そのものを抜本的に見直すことが必要になると思われる︒すなわち︑従来の集団的労働条件

決定システムにおけるように統一的︑画一的に労働条件を規制するのではなく︑個別的な労働条件決定を前提として︑

そのためのルールの設定やその公正な運用に関して従業員の利益を代表し発言する︑また︑紛争の解決に関与する︑そ

― 113 ―

分社経営における労使関係の現状と課題

(31)

うした役割を果たすものとして従業員代表を位置づけし直すことが求められるであろう︒

第三は︑この従業員代表組織は労働組合なのか︑そしてこの組織はAU労働組合といかなる関係を結ぶのか︑という

問題である︒これは︑両者がどのような役割分担をするのか︑その関係を効果的なものとするために整備すべき条件は

何か︑という問題と言い換えることができる︒この点に関しては︑後に述べるように︑多様な雇用形態を前提とすると

ここでの従業員代表組織は労働組合ではない方が適切であり︑その点ではAU労働組合やB社従業員協議会が当面目指

している方向性は妥当なものであると評価される︒その上で︑将来は従来企業別労働組合が企業内労使関係において果

たしてきた積極的役割を従業員代表組織に受け継がせるとともに︑労働組合の役割はより大局的な見地に立ち︑あるい

は労使中立的な立場から︑対労働者向けのサービス機能や労使間の利害調整機能を強化するという方向性が考えられよ

う︒

次節では︑以上のような問題点を踏まえ︑先行研究において提示されてきた見解と照らしながら︑労使関係の将来像

に対する筆者なりの解答を提起したい︒

4労使関係の将来像

︵1︶労働法のパラダイム転換

A社の事例に見られるような個別化︑多様化が進むわが国の雇用社会の現状に対して︑労働法学では︑従来の労働法

制が前提としていた労働者像や労働組合像に大きなパラダイム転換が必要であるとの主張がなされている︒以下に︑そ

の代表的な議論を紹介する︒

土田道夫︵

1998

︶は︑終身雇用制︑年功制︑企業別組合の﹁三種の神器﹂に特徴づけられた日本型雇用システムが変 分社経営における労使関係の現状と課題

― 114 ―

(32)

容する中で︑労働者を使用者に従属する弱者と捉え︑これに国家と労働組合による後見的保護を与えることによってそ

の生存を確保するという︑伝統的労働法のコンセプトも変容を迫られているとする︒従来の労働法における労働者のイ

メージは﹁労働保護法や解雇制限法理によって最低労働条件と雇用上の地位を保護されつつ︑使用者の包括的・集団的

雇用管理下で労働する者﹂であり︑そのことを﹁労働の従属性﹂として理論化し︑その緩和と労働者の保護を労働法の

目的と理解した︒そのために最も重視されたのが労働組合を主体とする集団的労働法であり︑﹁弱者としての労働者

は︑団結し︑団体交渉と争議行為を通して使用者と対抗することによってはじめて対等な立場に立ち︑使用者からの自

由を獲得する﹂と理解された︒ !

しかし︑現代の雇用社会においては︑必ずしも弱者として保護を必要とする労働者ばかりでなく︑﹁保護よりも自己

決定と自己責任のルールに適合する層が増えつつあり﹂︑また︑﹁個人や家庭生活との調和を重視したり︑企業の包括的

雇用管理を脱却して自己の権利を主張しようとする意識︵いわば市民的契約意識︶が広がっている﹂︒一方で︑雇用管

理の個別化と多様化が生じており︑労働者は﹁望むと望まざるとにかかわらず︑自己の労働条件やキャリアの決定に自

ら関与︵参加︶する機会に直面することになる﹂︒こうした労働者像の変化に伴い︑労働法のコンセプトも﹁労働者が

自立した主体として行動し︑使用者と対等の立場で労働条件を決定することを支援する﹂という理念に転換する必要が

あり︑﹁個々の労働者が交渉主体となる側面に着目し︑その対等交渉の様々な支援を通して︑雇用関係︵労働契約関係︶

︒理新たな労働法の念をとして掲げている︑と等こける労使の対関に係を実現する﹂お "

こうした理念に基づき︑労働組合の役割についても︑労働者を﹁裸の個人﹂としないために︑制度設計︑利益代表︑

紛争処理の三つの機能により集団的にサポートすることに重点を置くべきであるとする︒そして︑﹁今後は︑労働者各

人の主体的意思を基盤とする連帯の場として労働組合を捉え︑その労働条件規制を︑個別交渉では困難な労使間の対等

交渉を集団レベルで実現するための法システムとして﹂集団的労働法のコンセプトを再構成する必要があると指摘して

― 115 ―

分社経営における労使関係の現状と課題

(33)

いる︒ !

野川忍︵

1998

︶は︑日本の労働組合について︑戦時中の産業報国会の方式を受け継いだため︑当初から企業別の﹁従

業員組合﹂としての性格を有しており︑それが﹁正社員組合﹂に収斂していった︑そして︑﹁労働組合の主要な目的

は︑企業帰属性の強い正規従業員の雇用と労働条件を最優先に守ることであった﹂ために︑現在の日本の労働組合は労

働者全体の利害を掌握できなくなっていると指摘する︒また︑雇用の個別化や能力主義処遇のように従業員の特定企業

への密着度とは関係のない要素が重視される状況のもとでは︑﹁従業員組合﹂的性格をもつ労働組合の﹁機能が相対的

に低下し︑社会的地位も︑労働者にとっての重要度も低くならざるをえないのは当然﹂であり︑さらに︑規制改革の流

れの中で﹁団体交渉や労働協約によって自由な労働力の個別取り引きを疎外しているかに見える労働組合の役割が疑問

視されたり︑逆に雇用形態の多様化が著しい現代にあって︑多くの労働者の利害を包括的に守ることを労働組合に期待

︒着ういと﹂るあつつし定も識認ういといなえし "

そこで︑現下に必要とされているのは﹁労働者代表としての労働組合の機能を復活させ︑憲法秩序のもとでの合理的

な労使関係システムを再構築するための処方箋であり︑事業所に働く従業員の利益を守り︑公正かつ合理的な労働条件

成働ある︒そして︑日本の労組﹂合の課題は﹁内向きに形で編き再遇を実現することのでるや従業員代表システムの処 #

されたこれまでの企業別組織の機能を︑どのように従業員代表にゆだね︑あるいは再編成しつつ︑労働組合の独自の活

組選﹂という点にあり︑その択く肢としては﹁各企業内のかい者て目的をいかに賃金生活一動般の利益の擁護に向けの $

織を︑企業内で自己完結する形態としてではなく︑ネットの結び目として定立しなおす﹂いわば﹁ネットワーク型﹂の

組織を志向し︑﹁利害の分野の最も共通性が高い要素を組合の構成基準としてそれを組合の名称とし︑各企業ごとの組

員﹁現実的な方策としては︑やそがてはドイツの事業所委の︒位るできる限り分会として置織付ける﹂ことを主張すを %

会のような機関を見通しつつ︑過渡的には︑徐々に労使委員会による決議事項を加えていき︑同時に労働組合の基盤を 分社経営における労使関係の現状と課題

― 116 ―

図 11 労働組合組織の変遷 (注) は専従役員を置く常設組織 は専従・非専従の役員によって構成される協議・連絡組織 実体面に則して図式化したため、組合規約上の規定と厳密には合致しない部分があ る。 また、検討に支障のない範囲で組織の省略、名称の修正を行っている。 分社経営における労使関係の現状と課題 ― 1 0 8 ―

参照

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