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(1)

戦争国家における新聞広告とジャーナリズム : イ ラク派兵をめぐる大学と政府の責任を中心に

著者 浅野 健一

雑誌名 評論・社会科学

号 73

ページ 179‑238

発行年 2004‑03‑20

権利 同志社大学人文学会

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000004676

(2)

はじめに

二〇〇四年二月二八日のNHKテレビは︑日本政府が三月から

アラビア語のアルジャジーラ放送︵本社・カタール︶で︑イラク

へ派兵した自衛隊の任務は戦争参加ではなく︑復興人道支援だと

いうCMをオンエアすることを決めたと報じた︒

NHKは必ず︑﹁イラクで人道支援をしている﹂﹁イラクで復興

支援をしている﹂という枕詞を使っている︒主要新聞も同じだ︒

これだけマスメディア企業が政府・防衛庁の広報をしているの

に︑政府はあらゆる手段と資金︵主権者と外国人が支払う税金︶

を使って︑自衛隊のイラク派兵に反対する国民を洗脳しようとし

ている︒

日本国軍とも言うべき自衛隊のイラク侵略・不法占領への参戦

は︑国際法と日本国憲法に違反した犯罪である︒市民有志が二月

二七日︑小泉純一郎首相を刑法九三条私戦予備罪で︑東京地検に 刑事告発した︒ジャーナリズムの最重要課題は︑侵略戦争とファ

シズム化を阻止することだと思ってきた私は︑日本のマスメディ

ア企業が︑迷彩服に身を固めて出兵する兵士たちと︑日の丸を手

にした多数の関係者が見送る風景を無批判に報道しているのを見

て︑いったい何のためにジャーナリズムはあるのかと情けなくな

る︒

イラクに到着した兵士たちの﹁復興支援﹂の一挙手一投足を伝

える一方で︑世論調査で派兵反対派が一ポイントずつ減少し︑賛

成と答える人が増えている︒メディアが権力と癒着しているから

だ︒戦時における権力に抗えないマスメディア企業集団にジャー

ナリズムを担う資格はない︒︵日本国憲法の下ではあり得ないこ

となのだが︑小泉純一郎首相は自衛隊を軍隊と繰り返し認定して

いるので︑ここで敢えて﹁日本軍﹂と表現した︶

︹ 研 究 ノ ー ト ︺ 戦 争 国 家 に お け る 新 聞 広 告 と ジ ャ ー ナ リ ズ ム

│ │ イ ラ ク 派 兵 を め ぐ る 大 学 と 政 府 の 責 任 を 中 心 に │ │

浅 野 健 一

― 1 7 9 ―

(3)

1 防 衛 庁 へ の 屈 服 を 象 徴 す る 二 つ の 誓 約 書

国連は無力だから米国との同盟関係が重要だと主張する小泉政

権︑二月二二日︑アナン国連事務総長を東京に招いて︑﹁自衛隊

の活動に感謝している﹂と言わせた︒自衛隊の海外派兵を可能に

したPKO法の成立︑そして一九九九年に数々の悪法が成立し

て︑﹁法の支配﹂を失ったこの国の企業メディアは政治権力に屈

服した︒

日本におけるジャーナリズムの衰退を象徴するのが︑一月二〇 日に︑クウェートに滞在する記者たちが書いた﹁誓約書﹂と︑イ

ラクでの自衛隊宿営地での取材に関し︑﹁遵守事項の遵守﹂を誓

約する発行条件のついた﹁暫定立入取材員証﹂の申請である︒

﹁誓約しなければ取材させない﹂などという憲法違反の要請に

対して︑大手メディア企業が一致して︑﹁検閲のようなメディア

規制は絶対のめない﹂と言って︑一致団結して跳ね返せばいいの

に︑情報と映像ほしさに﹁米軍やオランダ軍の要請なら仕方がな

い﹂﹁暫定的な取り決めで本格的なルール作りには影響しない﹂

などという防衛庁側のうそにのって︑誓約してしまった︒詳しく

は月刊﹁創﹂四月号に書いたので参照して

ほしい︒

2 政 府 広 報 八 紙 に 掲 載

一 億 三 〇 〇 〇 万 円

二月一四日の全国紙五紙とブロック紙三

紙に﹁イラク再建のため︑自衛隊は人道・

復興支援活動を行います﹂と大書された政

府広報の全面広告が

一八二頁に複写を掲 載

一斉に載った︒掲載したのは朝日︑毎

日︑日経︑産経とブロック紙の北海道︑東

京・中日︑西日本︒

政府広報は︑イラクにおける支援活動と

して医療︑給水︑施設の復旧︑物資の輸送

〔04 年 1 月 20 日すぎ、航自がクウェートの記者 に書かせた誓約書〕

戦争国家における新聞広告とジャーナリズム

― 1 8 0 ―

(4)

の四つを挙げ︑自衛隊のPKO活動などの写真も配した︒

全面広告は︑右上の隅に﹁政府広報|防衛庁﹂と記され︑上部

に﹁イラク再建のため︑自衛隊は人道・復興支援活動を行いま

す﹂と大書されている︒そのすぐ下には﹁すでに︑九〇を超える

国と国際機関がイラクの復興を支援しています︒国連は︑すべて

の加盟国にイラクへの支援を要請しています︒イラクの人々が希

望を持って自らの国の再建に取り組めるよう我が国も自衛隊を派

遣し︑人道・復興支援活動を行います﹂と記述されている︒その

文章の下︑画面の中央部のもっとも目立つ箇所には︑﹁明るい未

来のために﹂というキャプションの付いた︑二〇人ほどのイラク

の子どもたちに囲まれている陸上自衛隊先遣隊長の佐藤正久一佐

の写真︵約

1 2

袍×

1 7

袍そイ︑はに隣左の︒︶るいてれさ載掲がラ

クの子どもたちと笑い合う自衛隊員を撮った﹁子どもたちととも

に﹂と題された写真︵約

5 . 5

袍×

7 . 5

袍︶︑右隣には︑小学校と見ら

れる施設内でイラクの人々の話にメモを取る自衛隊員を撮った

﹁復旧を待つ小学校の教室﹂という写真が掲載されている︒

これら三つの写真の下には﹁イラクにおける支援活動﹂との記

述があり︑さらに四つの写真が紹介されている︒ここで写真によ

って紹介されているのは︑左上部から時計回りに﹁医療﹂﹁施設

の復旧﹂﹁給水﹂﹁物資の輸送﹂の四つの活動内容である︒まず︑

﹁医療﹂と書かれた下には︑顕微鏡を挟んで語り合う日本人と支

援先国の人の姿を撮った写真を置き︑﹁イラク人医師への医療技 術支援などを行います﹂と説明している︒﹁施設の復旧﹂と記さ

れた︑﹁UN﹂と書かれたトラックを用いて作業する隊員の姿を

撮った写真を置き︑﹁道路︑灌漑用水︑学校などの公共施設を復

旧します﹂と説明している︒﹁給水﹂と記された下には活動によ

って作られた井戸を利用する人々の姿を撮った写真を配し︑﹁ユ

ーフラテス川の水を浄水して︑地域の人々に提供します﹂と説明

している︒﹁物資の輸送﹂と記された下には空港の輸送機を撮っ

た写真を配し︑﹁人道復興関連物資などを輸送します﹂と説明し

ている︒

これら四つの写真の下には︑小さく﹁※活動の内容に掲載した

四枚の写真は︑世界各地での支援活動のものです﹂と記してい

る︒

この全面広告の下部には︑﹁カンボジア﹂﹁モザンビーク﹂﹁ル

ワンダ難民救援﹂﹁ゴラン高原﹂﹁東ティモール避難民救援﹂﹁ア

フガニスタン難民救援﹂﹁東ティモール﹂﹁イラク難民救援﹂﹁イ

ラク被災民救援﹂の九つとそれぞれの活動期間を挙げて︑﹁自衛

隊は︑これまでも︑世界各地で施設の復旧や医療︑給水などの

様々な活動を行ってきました﹂と記している︒この部分は罫線で

囲まれている︒

最後に小さく﹁官邸ホームページ﹂﹁防衛庁ホームページ﹂﹁政

府広報オンライン﹂の三つのアドレスを掲載している︒

米英の不法占領への参戦と︑国連が行うカンボジア︑東ティモ

ール避難民救援への参加とは全く違うのに︑同列に扱って国民を

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戦争国家における新聞広告とジャーナリズム

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04 年 2 月 14 日付の朝日新聞に載った政府広報の全面広告

(内閣広報室の許可を得て掲載)

戦争国家における新聞広告とジャーナリズム

― 1 8 2 ―

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騙している︒

イラク関連では〇三年末にも全国紙五紙に全面広告が掲載され

た︒小泉政権の米国追随政策によって殺された外務省の奥克彦氏

が撮影したイラクの子供の写真を中心に︑﹁原油輸入の中東依存

度﹂や﹁イラクの現状データ﹂が図解された︒

内閣広報室の中村克祥氏に二月一四日に聞いたところによる

と︑この全面広告の掲載費用は計約一億三千万円だったという︒

中村氏は広報を出した理由について︑﹁現在の政府の最重要課

題の一つで︑国民に広報する必要があると考えた︒指定した広告

代理店を通じて企画した︒自衛隊がなぜイラクへ行く必要がある

のかを説明するには︑今の時期が一番いい﹂と説明した︒

〇三年度の政府広報予算は約一〇七億円︒政府広報室による

と︑約三七億円が新聞・雑誌での政府広報掲載に使われている︒

私が記者を始めた頃︑多くの新聞社が自衛隊員の募集広告の掲

載を拒否していた︒自衛隊が違憲だという判断からだ︒全国の主

要紙が一斉に︑自衛隊参戦についてのデマ広告を載せても︑大き

な問題にならない︒時代は大きく右旋回している︒

朝日新聞は二月二一日︑この全面広告について︽政府広報メ

ディア席巻八紙に掲載一・三億円分︾という見出しで記事にし

たが︑アリバイづくりのような内容だった︒二月二四日付の朝日

に載った広島県の伊藤早苗氏の﹁日本の危うさ実感した一日﹂の

投書だけが救いだった︒伊藤氏は︑一月に﹁私たちは戦争に協力

しません﹂という意見広告に賛同した一人で︑﹁五一一八人が少 しずつお金を出し合ってやっと実現した﹂と書いている︒

朝日新聞の記事によると︑朝日新聞広告局の安達周・審査担当

部長は﹁読者の方々が政府広報で政府の考え方や基本姿勢を知る

ことができれば︑判断材料の一つになると思う﹂と述べている︒

また︑記事は︽米政府の広報戦略に詳しいメディア・コンサルタ

ントは﹁ブッシュ政権は米同時多発テロ後︑国土安全保障省を作

り︑対テロ戦争を戦う覚悟を国民の意識に浸透させた︒それがイ

ラク戦争支持の国内世論形成につながった︒自衛隊のイラク派遣

のように国民がすでに強い関心を持っている問題で︑宣伝をこの

段階になって日本政府がするのは疑問だ﹂と話す︾と書いてい

る︒

服部孝章・立教大教授︵メディア法︶は︑朝日記事に︑︽広告

として政府広報を掲載することは問題ないが︑自衛隊派遣に反対

している社も含めて主要紙が一斉に全面を使って掲載したのは異

様に見える︒この問題については相当量の報道が続いているにも

かかわらず宣伝するのは︑政府が国民に信じさせたい内容が報道

では伝わっていないと判断しているからだ︒政府広報で取り上げ

る問題は︑ほかにあるはずだ︾とコメントしている︒私も同感で

ある︒

3 派 兵 煽 る 大 学 広 告 は 新 聞 倫 理 綱 領 違 反

政府広告の問題が起きる約二カ月前︑私の勤務する同志社大学

の﹃朝日﹄広告問題が起きた︒

― 1 8 3 ―

戦争国家における新聞広告とジャーナリズム

(7)

自分が所属する組織や団体を批判するのはしんどいことであ

る︒今から三十年前︑私が当時勤めていた共同通信で︑犯罪報道

の犯罪を告発してからの約二〇年間もそうだった︒今また︑私が

働いている同志社大学が戦争犯罪の広報宣伝に加担したことを問

題に告発する闘いを始めることになった︒﹁大学の戦争犯罪﹂だ

と思うからだ︒

〇三年一二月二六日の朝日新聞︵大阪本社版二一ページ︶に︑

﹁広告特集﹂︽同志社大学関西学院大学ジョイントシンポジ

ウム﹁ブッシュ政権のグローバル戦略と宗教﹂︾という見出しの

全面広告記事が載った︒

︽イラク戦争︱ブッシュ政権の論理と日本の選択︾という横見

出しがあり︑同年一二月三日︑東京のプレスセンターホールで開

かれたシンポ﹁ブッシュ政権のグローバル戦略と宗教﹂について

両大学の教員四人が語り合ったとしている︒

パネリストは︑同志社大学から︑森孝一・神学部教授︑村田晃嗣

・法学部助教授︒関西学院大学からは︑栗林輝夫・法学部教授︑

豊下楢彦・法学部教授が出ている︒コーディネーターは中川謙・

朝日新聞論説委員が務めた︒

日本を代表する全国紙の一頁全面を使った広告記事の中で︑村

田晃嗣・法学部助教授が︑﹁イラク戦争は︑お互いの未学習の中

で起こった大きな事件﹂などと規定した上で︑日本の自衛隊派兵

問題に関して︑﹁日本が自衛隊を派遣するしか選択の余地がない﹂

﹁日本が派遣をやめたら︑アメリカや世界の多くの国が失望し︑ 国益にも大きな影響を与える﹂などと発言︒広告記事の下には︑

﹁伝え継がれる意志︒人はそれを

!

伝統

"

と呼ぶ︒﹂とあり新島襄

の写真も掲載されている︒

受験生を意識したと思われる大学の広告に︑自衛隊のイラク派

遣を全面肯定する主張が載ったことに︑強い衝撃を受けた︒おり

しも多くの反対の声を押し切って航空自衛隊の先遣隊がイラクに

派遣された当日の新聞に掲載されたこの﹁広告﹂は︑同志社大学

が﹁イラク派兵支持﹂という政治的立場を選択したという印象で

受け取られても仕方がない︒

広告と気づかず︑一般の記事と間違えて読んだ読者も多いよう

だ︒﹁広告と記事の区別を明確にする﹂というのは︑ジャーナリ

ズムの大原則のはずだ︒

村田助教授は広告記事の中で︑︵1︶米国の武力行使を支持し

た上で︑自衛隊派遣しか選択の余地はない︵2︶先の総選挙で与

党が勝ったのだから︑﹁︹日本国民︺は今回の総選挙の結果という

ものを︑背負う義務もある﹂││などと主張している︒

日本国憲法は﹁この国の最高法規であって︑その条規に反する

法律︑国務に関するその他の行為は効力を有しない︒日本国が締

結した条約︑確立された国際法規は誠実に遵守することを必要と

する︒﹂︵第九八条︶︑﹁国務大臣は︑この憲法を尊重︑遵守する義

務を有する﹂︵九九条︶と定めている︒

今回の自衛隊イラク派兵については︑憲法第九条に違反する疑

いが濃厚であり︑与党の中にも︑イラク特措法に抵触するという 戦争国家における新聞広告とジャーナリズム

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03 年 12 月 26 日付の朝日新聞に載った同大と関学大の全面広告と 04 年 1 月 17 日の川口外相の同大での「講義」を伝える新聞各紙

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戦争国家における新聞広告とジャーナリズム

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議員がいる︒先の総選挙で過半数をとった与党が決定したのだか

ら︑有権者はそれに従う義務があるというのは論理的ではない︒

このような論理なら︑多数派は何でもできることになる︒

この広告記事が出た後︑多くの学生︑卒業生︑市民︑牧師など

から︑批判の声が上がっており︑大学学長︑法学部︑企画部企画

室広報課などに広告に抗議する電話や文書がきていると聞いてい

る︒大学はこれらの声を教職員︑学生に開示した上で︑大学とし

ての見解を明らかにすべきだと考える︒

同志社大学は︑大日本帝国がアジア太平洋諸国を侵略した一九

三〇年代から四五年八月一五日まで︑軍部に屈服して戦争に加担

した歴史をもっている︒最大のキリスト教学園だったが︑崩壊の

危機にあった︒

戦前︑戦中の反省から︑人権と民主主義の理念に支えられた国

際社会を目指し︑キリスト教主義に立つ大学が︑こうした視点に

逆行する一教員の見解を大学の﹁広告﹂として受験生や市民に提

供することは大きなマイナスになるのではないか︒広告記事での

村田氏の発言は︑﹁小泉政権の代弁︵広報︶﹂となっており︑﹁官﹂

と﹁民﹂の区別を重視した新島襄の精神にも反すると思われる︒

村田氏の言論の自由は認める︒しかし︑私たちは村田助教授の

極めて没論理的な憲法観︑政治的見解を︑学内において十分な討

議もなく︑同志社大学全体の姿勢であると受け止められても仕方

のない広告として刊行した学長の姿勢に深い危惧を覚える︒学長

は事態の深刻さを直ちに認識し︑大学の知性と良心の回復を求め る措置を直ちにとるべきではないか︒

一月下旬︑二九代学長に就任が決まった八田英二学長は︑﹁建

学の精神に則り︑校祖新島襄が夢見た光り輝く同志社大学を築き

上げたい﹂と決意を述べているが︑戦後日本における歴史の曲が

り角に立った今こそ同志社大学の良心の﹁危機﹂に手腕を発揮す

べきだ︒かつて日本の侵略戦争に駆り出され無念の死を遂げた多

くの学生たち︑大学存亡の危機の中でキリスト教主義教育の﹁良

心﹂によって投獄された大学関係者の存在において︑また特高警

察によって虐殺された詩人︑ユン・ドンジュの詩碑を置く大学と

して今こそ﹁建学の精神﹂に立ち戻ることを訴えたい︒

4 村 田 助 教 授 の 発 言

村田氏は広告記事の冒頭報告で︑﹁巨大になりすぎた国アメ

リカが抱える問題とは﹂と題して次のように語った︒

︽もし︑軍事・経済・文化の全てにおいて︑ある国が他を圧す

る力を持ってしまったとき︑その国は穏当で協調的な国になるで

しょうか︒日本は︑中国やロシア︑ドイツやフランスは?私の

答えは残念ながらノーです︒つまり︑アメリカやブッシュ政権が

抱えている問題と︑大国であるがゆえの問題は︑分けて考えるべ

きでしょう︒それだけ大きな力を持ったアメリカが︑歴史上︑も

っとも自国の安全保障におびえています︒それは︑九・一一のテ

ロによって︑複雑で相互依存的で開かれた社会に︑大きなダメー

ジを与えられると示してしまったからです︒アメリカは自分が持 戦争国家における新聞広告とジャーナリズム

― 1 8 6 ―

(10)

てる力をどのように行使すればよいかというのを︑まだ学習でき

ていません︒他方︑世界も︑これほど圧倒的な大国とどう付き合

っていいのかわからない︒イラク戦争は︑お互いの未学習の中で

起こった大きな事件なのです︒︾

討論の中で︑﹁アメリカに対して直言する機会は︑これから生

まれてくるのでしょうか︒﹂という問いに対してこう答えた︒

︽アメリカに対してなす術がないかというと︑答えはノーで

す︒それは︑アメリカが開かれた社会であるから︒アメリカが国

際社会の相互依存の網にからみとられているため︑私はNGOや

企業活動︑市民活動などを通じて︑アメリカが国際協調に帰って

くる可能性は充分あると思います︒ただ︑これだけ多くの国々が

反論をとなえて反米感情が高まっているなかで︑同盟国が強く直

言することの是非とその効果について︑外交的によく考えてみる

必要があるのではないでしょうか︒︾

﹁アメリカと日本はどういうふうにつきあっていくべきとお考

えですか﹂という問いに対しては︑次のように述べた︒

︽私も︑日本が三〇年間同じような外交を続けてきたという認

識はありますが︑一〇年間で︑日本が置かれた戦略環境は変わっ

たと思います︒過去二〇年の日本経済は上り坂で︑大した戦略が

なくてもお金で貢献することができました︒しかし︑経済の悪化

で貢献の度合いが小さくなりつつある︒そういう意味では︑戦略

的思考の必要性はむしろ高まってきているでしょう︒︾

﹁自衛隊の派遣についてはどうお考えですか?﹂という問いに 対しては次のように回答した︒

︽悩ましい問題ですが︑私は︑日本が自衛隊を派遣するしか選

択の余地はないと思います︒一つは︑今回の総選挙において︑国

会でイラク派遣法を成立させた与党が再び安定多数を確保し︑自

衛隊をイラクに派遣すると繰り返した小泉首相が衆議院で再任さ

れたという事実です︒これは我が国が一つの政治的選択をしたと

いう意味なのです︒自民党が︑イラク派兵の難しさを争点にしな

かったと批判されるかもしれませんが︑それなら︑野党はどうし

てこれを争点にできなかったのか︒国民は︑政党が問題にしな

かったから私たちは気付きませんでした︑で済むでしょうか︒選

挙のときから現状が変わっているという指摘もあるかもしれませ

んが︑一ヶ月でイラクの現状が変わった︑といって済むでしょう

か︒国民には権利もありますが︑今回の総選挙の結果というもの

を︑背負う義務もあると思います︒もちろん︑日本が派遣を取り

やめたら︑アメリカだけでなく︑世界の多くの国が失望し︑国益

にも大きな影響を与えることは目に見えています︒もはや︑日本

とアメリカの関係だけでは考えられないことでしょう︒︾

森教授は自衛隊問題には直接言及していない︒関西学院大学の

教授二人は日本の派兵に批判的な意見を述べていたので︑村田氏

の意見が目立つ形になっている︒

﹁市民的及び政治的自由に関する国際規約﹂第二〇条一項は

﹁戦争のためのいかなる宣伝も︑法律で禁止する﹂と定めてい

る︒ここでいう﹁戦争﹂は︑侵略戦争を意味すると解釈される︒

― 1 8 7 ―

戦争国家における新聞広告とジャーナリズム

(11)

米英のイラクへの武力行使は︑侵略戦争の範疇に入ると思われ

る︒

この広告記事に対して︑多くの学生︑市民︑牧師などから抗議

する電話や文書が大学に届いている︒私は一月十四日の文学部教

授会で︑広告問題について質問し︑﹁村田氏の政治的見解を︑学

内において十分な討議もなく︑同志社大学全体の姿勢であると受

け止められるような形で広告を刊行した学長の責任を問う︒学長

は事態の深刻さを直ちに認識し︑大学の知性と良心の回復を求め

る措置を直ちにとるべきだ﹂と表明した︒

大学当局は部長会において私の質問に対して︑﹁両大学の東京

オフィス開設を記念して︑報道機関︑企業関係者を対象にシンポ

を企画した︒日本を代表する国際政治学者である村田氏ら二人に

依頼した︒学問的に十分な実績のある先生の意見を云々する立場

にはない︒また︑村田氏の見解が大学を代表していない﹂︵企画

部長︶などと回答した︒八田英二学長は﹁教員の自由な発言に関

しては︑大学は関与すべきではない﹂と述べた︒この広告にかか

わる総費用は同志社大学だけで六三五万円と分かった︒

村田氏は講義の中での︑﹁新島精神に反するのではないか﹂と

いう学生の質問に対して︑﹁私は依頼を受けて出たのであって︑

依頼した側に文句を言っていただきたい﹂﹁私が掲載してくれと

頼んだわけではない﹂などと説明し︑広告に関する問題は主催者

大学

八田学長に全責任があると言明した︒

5 新 聞 広 告 の 倫 理

日本新聞協会が定めた新聞広告倫理綱領は︑︽広告内容に関す

る責任はいっさい広告主︵署名者︶にある︒しかし︑その掲載に

あたって︑新聞社は新聞広告の及ぼす社会的影響を考え︑不当な

広告を排除し︑読者の利益を守り︑新聞広告の信用を維持︑高揚

するための原則を持つ︾と規定︒また︑︽新聞社は新聞広告の社

会的使命を認識して︑常に倫理の向上に努め︑読者の信頼にこた

えなければならない︾と述べ︑新聞広告は︽真実を伝えるもので

なければならない︾︽関係諸法規に違反するものであってはなら

ない︾などと定めている︒

また︑同協会の新聞広告掲載基準は︑︽以下に該当する広告は

掲載しない︾として︑︽責任の所在が不明確なもの︾︽内容が不明

確なもの︾︽虚偽または誤認されるおそれがあるもの︾の三つを

挙げている︒

︽誤認されるおそれがあるものとは︑つぎのようなものをいう︾

として︑︽︵1︶編集記事とまぎらわしい体裁・表現で︑広告であ

ることが不明確なもの︵2︶統計︑文献︑専門用語などを引用し

て︑実際のものより優位または有利であるような表現のもの︾な

どを挙げている︒

また︑︽比較または優位性を表現する場合︑その条件の明示︑

および確実な事実の裏付けがないもの︾も掲載しないと規定して

いる︒ 戦争国家における新聞広告とジャーナリズム

― 1 8 8 ―

(12)

さらに︑︽社会秩序を乱す次のような表現のもの︾として︑︽暴

力︑とばく︑麻薬︑売春などの行為を肯定︑美化したもの︾︽そ

の他風紀を乱したり︑犯罪を誘発するおそれがあるもの︾の広告

は掲載しないと定めている︒

問題の広告特集は︑多くの一般読者が広告と思わず︑一般記事

として読んでいる︒市民運動の活動家の中にも︑そういう人が少

なくなかった︒︽編集記事とまぎらわしい体裁・表現で︑広告で

あることが不明確なもの︒︾に当たると思われる︒

6 ﹁ キ ナ 臭 い 同 志 社 ﹂ 返 上 を 求 め る

官 の 旗 振 り は 本 分 に あ ら ず

村田助教授の発言は︑彼が二〇〇一年に起きた九・一一事件以

降︑新聞︑テレビ︑雑誌などで主張してきた内容のまとめのよう

なものだ︒しかし大学広告に米英のイラク侵略・占領を支持し︑

イラク特措法にも違反する自衛隊のイラク派遣を全面肯定する主

張が載ったことは全く別次元の問題を引き起こした︒

私の知り合いの人たちから︑﹁大学の広告に戦争を煽るような

意見を出していいのか﹂﹁同志社の建学の精神に反しているので

は﹂などという批判の声が出ている︒この広告を読んで︑﹁同大

受験をやめた﹂という高校生もいる︒

また︑同志社大学教職員組合や同志社組合連合にも︑組合員か

ら︑当局に抗議すべきだという意見が来ており︑組合は学長との

団交で︑広告問題を質した︒そのやりとりは︑二月二日︑大学組 合ニュースの中で︽一二月二六日付朝日新聞広告記事について

大学広報のチェック機能を整備せよ︾という見出しで︑二番目の

ニュースとして報じられた︒

村田助教授の発言は︑戦争犯罪︵日本国憲法第九条第一項と刑

法九三条違反︶の可能性の高い政策を支持するようにというメッ

セージを発信したのも同然だ︒これは許しがたい犯罪の教唆にあ

たるのではないか︒

大学広報課は︑広告のもとになったパネルディスカッションを

リーフレットにする方針を示した︒これは後に撤回したという情

報もあるが確認できない︒村田助教授の発言を︑無批判に採録す

ることはあってはならない︒発行するなら私の見解を注ででも載

せるよう教授会で求めた︒

7 こ の 時 期 に 川 口 外 相 の 講 義 と 銘 打 っ た 講 演 会

また︑同志社大学と読売新聞の共催によって一月一七日︑川口

順子外相の﹁日本外交を語る﹂と題する講義が行われた︒外務省

と文部科学省の後援である︒陸上自衛隊の先遣隊が派遣された翌

日のことだった︒多くの市民が会場周辺で抗議行動を展開し︑市

民が掲げたプラカードには︑﹁同志社リベラリズムはどこへ?﹂

﹁﹃良心﹄は死んだ﹂というメッセージがあった︒

私はその時間帯に学内高校の推薦入試があって会場には入れな

かったが︑開始前に会場の前で抗議活動を展開する学生︑市民の

姿があった︒明徳館の一階付近にいるイアホンを耳に入れた多数

― 1 8 9 ―

戦争国家における新聞広告とジャーナリズム

(13)

のSP警察官︵私服︑バッジをつけている︶のほかに︑京都府警

と思われる多数の私服の公安警備警察官が会場付近にいるのを目

撃した︒

大学の教務責任者が抗議行動を続ける市民に︑﹁図書館の前に

移動してほしい﹂と要請する姿に絶望的な気持ちになった︒教授

たちは東大や京大︑同大の元全共闘活動家ばかりだ︒この中にゼ

ミのコンパで﹁インターナショナル﹂を得意げに歌う学者もいる

と聞いた︒私は﹁ここにいる私服の公安を移動させるのが先では

ないか﹂と彼らに言った︒

学生に﹁君はよく見るね︒情報をくれないか﹂と言ってきた公

安刑事もいたそうだ︒

会場に入った学生たちによると︑警備会社を導入して手荷物を

預け︑金属探知機を通過する過剰警備が行われた︒

学生︑教職員すべてが金属探知機とペンケースの中まで調べる

﹁検問﹂を受ける横を﹁同志社大学﹂の腕章をつけた読売新聞関

係者や警察関係者が自由に出入りするのを学生や教職員が目撃し

ている︒これは︑同志社大学の歴史上稀に見る異様な光景だっ

た︒センター入試︑同志社大学の推薦入試当日であるにもかかわ

らず多数の教職員が会場警備に労を割いた︒

大学当局者は︑﹁ベーカー米大使のときにも金属探知機を使っ

た︒それも知らずに文句を言うな﹂と述べているという︒なんと

いう傲慢か︒ベーカー大使のときに使うことも問題なのだ︒

陸上自衛隊先遣隊派遣の翌日に︑同志社大学が多くの予算と労 力を費やし︑先の広告に続いて︑川口外相の﹁経済大国日本が

!

テロとの戦い

"

盟毎・注︵﹂性要必の同に米日や性要必るわ関日

新聞︶を訴える場を提供することは︑本学が﹁派遣支持﹂の姿勢

を鮮明にした意志表示にほかならない︒いかなる検証や合意の上

にこのような政治的立場決定がなされたのか明確にすべきだ︒川

口外相の講義も村田助教授が中心になって企画されている︒大使

講座の番外編として組まれた企画だが︑一二月下旬に急に学内の

告示が出た︒本当に前から決まっていたのか疑問だ︒

8 私 の 取 材 に 答 え な い 読 売 新 聞

大学挙げての多くのリスクを負うことが明白な外相講演の決定

経過をすべての教職員に明示し︑自衛隊派兵と﹁改憲﹂を推し進

める論調の読売新聞との﹁共催﹂は︑どのような手続きと合意の

もとに実現したのか経過を明らかにすべきだ︒当日の警備につい

ても︑公安警察との﹁連携﹂内容も含め事実を明らかにすべき

だ︒

読売新聞は外相講演を一月一八日︑︽日米同盟国際協調両立

を川口外相が特別講義︾︽劣化ウラン弾﹁健康に害ない﹂川口

外相︾︑︽川口外相データ示し説明国際貢献多岐に質問︾などの

見出しで詳報した︒しかし︑講演会場周辺の抗議の動きについて

全く触れず︑男子学生一人が講演中に︑外相に﹁人殺しの責任が

ある﹂などという抗議演説を約一〇分間行ったことも一切書いて

いない︒歴史の捏造である︒ 戦争国家における新聞広告とジャーナリズム

― 1 9 0 ―

(14)

毎日新聞と京都新聞は︽市民らが抗議行動︾などの見出しを立

てて︑学生らの抗議の声を伝えた︒朝日新聞は外相講演会につい

て一字も報じていない︒ライバルの読売との共催だからか︒

私は一月二三日午前︑読売新聞東京本社広報部に電話し︑川口

外相講演会の報道について聞いたところ︑﹁この件は大阪本社が

担当しているので︑大阪に聞いてほしい﹂と答えた︒電話に出た

広報部の吉村氏は︑川口外相講演会に対する抗議行動があったこ

とを全く知らなかった︒その後︑大阪本社広報宣伝部に電話し︑

最初に出た部員︵女性︶に質問したところ︑﹁いま︑同志社の講

演会に行っていた部員がいるので代わります﹂と言って︑男性部

員が電話に出た︒

この男性部員は﹁私も浅野という名前だ﹂と自分の名前を明ら

かにした上で︑﹁ここは広報宣伝のセクションなので回答は︑編

集局から行うことになるので︑ファクスで質問内容を送ってほし

い﹂と述べた︒フルネームは浅野博和氏ということだった︒

浅野氏は︑﹁回答は誰が行っても︑広報宣伝部というか︑社と

して行うもので︑個人の名前は書かないでほしい﹂と私に要望し

た︒私は﹁朝日新聞やNHKも同じだが︑会社がコメントを発表

するのはおかしい︒会社の社長︑代弁人︵スポークスパーソ

ン︶︑広報宣伝部長など責任ある人の名前を出すべきだ︒犯罪報

道や投書欄では実名原則と言っているのにおかしい﹂と反論し

た︒すると︑浅野氏は﹁浅野さんは︑そういうところは実名主義

なのですね﹂と話した︒話しぶりが急に変わった︒﹁そのとおり だ︒読売新聞のように世界一の一〇〇〇万部もの発行部数を持つ

巨大メディア企業の広報宣伝部スタッフで︑同大との﹃大使講

座﹄を担当する人は︑公人中の公人だ︒あなたのプライベートな

ことを聞いているのではなく︑まさにあなたの職務にかかわる川

口外相講演会に関する報道のあり方についての質問に答える人

は︑絶対に顕名でなければならない﹂と私は伝えた︒

浅野氏の指示に従い︑ファクスで質問書を送った︒あて先は︑

︽読売新聞大阪本社広報宣伝部浅野博和氏︾とし︑外相講演会

に抗議する声を全く伝えないのは︑日本新聞協会が四年前に全面

改定した新聞倫理綱領に違反するのではないかと質問した︒同綱

領は︽豊かで平和な未来のために力を尽くすことを誓い︾と宣言

したうえで︑︽新聞の責務は︑正確で公正な記事と責任ある論評︾

︽新聞は︑自らと異なる意見であっても︑正確・公正で責任ある

言論には︑すすんで紙面を提供する︒︾と規定している︒

﹁日刊ベリタに書くので本日夕方までに回答をしてほしい﹂と

要請したが︑その後︑浅野氏からは何の連絡もなかった︒日刊ベ

リタの取材に何も答えないという姿勢こそ︑世界の﹁普通の新

聞﹂が守っている報道倫理に反する︒

同紙は︑一月二九日に外相の講演内容をほぼ一ページ使って報

じたが︑そこにも外相に異議を申し立てた人々のことは一字もな

かった︒これはもう歴史の捏造である︒

浅野氏は︑村田氏が中心になって行っている﹁大使講座﹂︵外

相講演会もこの講座の番外企画︶の読売新聞側の担当者というこ

― 1 9 1 ―

戦争国家における新聞広告とジャーナリズム

(15)

とだった︒

私は二月二日︑浅野博和氏に再び︑質問書を送った︒翌三日︑

︽ご通知︾と題したファクスが届いた︒発信者は︽読売新聞大阪

本社︾とあり︑本文は︽質問されるのは貴殿のご自由であると同

様︑お答えするかどうかについても当方が自由に判断させていた

だきます︒︾

末尾に︽以上︾とあった︒これはあまりにも大人気ない﹁回

答﹂である︒

日刊ベリタの記事では︑浅野氏を﹁男性部員﹂として表記した

が︑今後は名前を出していきたい︒村田氏らがすすめる﹁大使講

座﹂は︑今年四月からの〇四年度カリキュラムでも同大と読売新

聞社の共催で開講される︒浅野氏は読売側の担当者のようである

から︑顕名にすべきであろう︒

﹁大阪読売﹂と呼ばれる読売新聞大阪本社は東京とは距離を置

いた歴史がある︒故・黒田清氏が社会部長の時代に平和をテーマ

にいい仕事をした︒ところが大阪読売は渡辺恒雄会長をトップと

する極右勢力︵彼らの多くが元・新旧左翼活動家︶に屈服︒読売

資本はいまや全社を挙げて︑軍拡路線を驀進する小泉政権の政策

を先取りして︑憲法違反の政策を後押ししている︒平和憲法と同

志社精神を守るために︑村田氏と運命共同体である読売新聞大阪

本社の戦争犯罪を追及していきたい︒

一七日の外相講演会では︑手荷物検査で筆記用具以外の所持品

は持ち込めず︑金属探知機を通過する過剰警備が問題になった︒ この外相講演会の後に行われた村田助教授︑内田明憲・読売新聞

政治部次長︑会場との討論で︑村田氏はジョイント・シンポジウ

ムに︑自分がすすんで出たわけでなく︑主催者︵同志社大学︶か

ら依頼されたので︑自分の意見を述べたまでで︑苦情は主催者に

言ってくれと表明した︒村田氏は︑﹁スピーカーの意見が主催者

の意見を代行しているわけではないということは︑この種のシン

ポジウムや集会を開催するにあたっての基本的な常識である﹂と

も述べている︒

村田氏の主張は︑果たして﹁基本的な常識﹂の範囲内のものか

を考えたいと思う︒日本が自衛隊を戦争に参加させることに反対

の意見を持つことを﹁特定の政治的意見﹂ととらえることは︑非

常識だ︒

村田氏にとって︑国の基本法である憲法を守ることが︑政治的

立場を意味するということなのだろうか︒

さらに一月二四日︑シンポジウム︑﹁国会は﹃危機﹄に対応で

きるか?﹂︵同志社大学法学部﹁危機管理と議会﹂研究プロジェ

クト主催︶が開かれ︑村田助教授がコーディネーターになり︑前

原誠司・衆議院議員と森本敏・拓殖大学教授がそれぞれ憲法を

﹁改正﹂し︑﹁危機管理﹂の恒久法を整備するべきであるという主

張を展開した︒﹁改憲﹂と軍隊の恒久化を推し進める﹁同志社﹂

のシンポジウムは︑翌二五日京都新聞で非戦を訴える市民の動き

と好対照で報道されている︒

私は村田氏の小泉政権支持の一連の政治的発言と︑それを何の 戦争国家における新聞広告とジャーナリズム

― 1 9 2 ―

(16)

検証も自制もなく全面的に﹁同志社大学﹂の姿勢であるかのよう

に受け止められても仕方のないような一連の事態を推し進める学

長︑法学部︑広報課の姿勢に深い危惧を覚える︒﹁改憲・自衛隊

派兵と小泉政権支持﹂は本学教職員の総意ではない︒

繰り返すが︑村田氏がメディア企業に登場して︑個人的な意見

を述べるのは村田氏の﹁言論の自由﹂だが︑同志社大学には彼と

は違う見解を持つ教職員が多数いることを別の大学広告で明らか

にすべきだ︒何よりも︑学長がイラク自衛隊派兵についてどう考

えるかを示すべきだ︒

私は一二月二六日午前︑千葉県柏市の自宅から電話で広報課長

に抗議した︒

日本は︑国連の決議の裏付けもない米英によるイラクへの武力

侵攻を当初から支持し︑イラクの罪なき子ども︑女性たちを殺し

ている︒米英などの兵士もブッシュ・ブレアの犠牲になってい

る︒

9 文 学 部 教 授 会 で 意 見 表 明 ・ 質 問

私は一月一四日の文学部教授会において︑この広告問題につい

て︑

漓︽朝作制・画企集特告広︾記告広面全︽に上左の事日

新聞社広告局︾とあるが︑広告記事を企画制作したのは︑朝日新

聞なのか大学なのか

滷デンョシッカスィルこネパと事記告広のに

かかった費用はいくらかを明らかにせよ

澆衛隊のイラク派兵に自 明の見解をべらかにす長き︶︵学二英田八学大社志同︑ていつだ

︱と述べた︒

また︑一月一七日の川口外相講演会の整理券発行で学生に記入

させた名簿を警察などの公安・警備に出すことのないように要請

した︒このとき︑複数の教員がくすくすと声を出して笑い︑﹁そ

んなことするわけないじゃないか﹂と野次を飛ばした︒私は﹁早

稲田大学は中国の江沢民国家主席の講演会の参加者の住所︑電話

番号などの名簿を警視庁に提出した︒早大と交換留学制度のある

同大の学生の名簿も出されている︒学生が提訴︑最高裁で早大当

局が負けた︒笑いごとではない﹂と述べた︒

教授会で私の意見に賛同も反対の声もなかった︒

私の質問内容と当局側回答は大学ホームページの教職員のペー

ジで︑紹介されている︒

一月二八日に開かれた文学部教授会で黒木保博学部長は︑広告

問題について次のように説明した︒

︽一月一五日︑部長会において一四日の文学部教授会で出た意

見と質問を私が伝えた︒落合企画部長が以下のように答えた︒

﹁一〇月三〇日・部長会議で︑企画部長が企画提案︑了承され

た︒ほぼ同時期に東京オフィスを開設した本学と関西学院大学が

そのオープンを記念したジョイント・シンポジウムを報道関係者

・企業企画部長によると︑関係者を対象にして開催することが決

まった︒

四人︑パネリストを出すことになり︑本学からは二人を選ん

― 1 9 3 ―

戦争国家における新聞広告とジャーナリズム

(17)

だ︒﹁一神教﹂をテーマにCOE研究をしている森孝一・神学部

教授と︑サントリー学芸賞などを受賞している﹁日本を代表する

国際政治学者﹂である村田晃嗣助教授に出てもらった︒村田助教

授のコメントは自らの学問的立場から発言したもので︑大学とし

ては内容に立ち入ることはできない︒村田氏は自由の立場で自分

の発言をできるのであり︑彼の見解が大学を代表するものではな

いということは当然のことだ︒パネルディスカッションに関して

チラシ案内状︑朝日広告費を両大学で折半︑六三五万円︒この費

用は企画部広報費を使用した﹂︒

学長のこの件についての見解を求められたが︑八田学長は︑

﹁村田助教授は大学としての意見を述べたわけではない︒村田氏

の自由な発言であり︑本学では︑各先生が様々なメディアに出て

自由に発言していただきたいと思っている︒各先生の発言に大学

として関与すべきではない﹂と述べた︒

川口外相講義に関する指摘については︑田畑教務部長が次のよ

うに述べた︒

﹁時期が時期だけに︑時期がたまたま︑どんぴしゃ・・・とい

う感じであった︒イラク派遣問題にぴったり重なったが︑もとも

とこの講座は︑各国の大使を招いて幅広い知識を得てもらう講座

の一環であり︑自衛隊イラク派遣問題に絞って開いたものではな

い︒また︑様々な国ぐにの大使を招いており︑ドイツ︑フランス

の大使は米英のイラク戦争に反対する意見を述べている︒講義の

なかでは学生の反論や意見が自由に展開されている︒日本の外交 はどうか︑外交戦略を知ってもらうため︑日本の外相である川口

氏を呼んだ︒たまたま︑運悪いというか︑時期が︑そういう中で

開かれる︒﹂︾

私は︑﹁学長らの説明は︑私の質問への回答になっていない︒

米英の侵略と占領に自衛隊が参戦することに大学が賛同している

かのような印象を受験生や市民に与える広告を出したことを私は

問題にしている︒村田助教授がどこのメディアに出て何を話そう

が︑それは全く自由だ︒村田助教授は一月一七日の大使講座で︑

広告問題についての学生の質問に対して︑﹃大学に頼まれたから

出たのであって︑文句があれば大学に言ってくれ﹄と回答してい

る︒大学当局は一教員の自由な意見表明だといい︑村田教授は大

学が頼んできたという︒これでは誰も責任をとらないということ

になる︒

この広告記事を読んだ人たちが︑同志社に対するある種のイメ

ージを持ってしまうことが問題である︒最近の名誉毀損訴訟の判

決でも︑一般の読者が受け取る印象を名誉毀損成立か否かの判断

基準にしているものがある︒学長は︑自衛隊イラク派兵問題につ

いて自らの見解を明らかにすべきだ︒少なくとも︑村田助教授の

意見と異なる見解が学内にあることを︑今後の広告で明らかにす

べきではないか︒

広報課によると︑広告のもとになった一二月三日のパネルディ

スカッションがブックレットになると聞いている︒その刊行物に

は︑パネルディスカッションの後の一般参加者との討論で︑村田 戦争国家における新聞広告とジャーナリズム

― 1 9 4 ―

(18)

助教授の見解に対する反論が出たことを含めて多様な意見が学内

にあることを︑周知すべきだ﹂と述べた︒

また川口外相講演会について私は︑﹁当日︑多くの市民が抗議

する中︑私服の公安刑事に囲まれ︑土曜日だというのに教職員が

動員され︑学生たちが所持品検査を受けて︑筆記用具だけにされ

て入場した︒大使講座の一環だというだけではすまない︒同志社

は何を恐れ︑いったい何を守ろうとしているのかと考え︑情けな

くなった﹂と表明した︒

前回も同じだったが︑教授会で私のほかにこの問題で発言した

人はいなかった︒今回は︑私の発言に野次が飛ばなかった︒

二月一二日︑文学部教授会で︑一月二九日の部長会の報告があ

った︒その中で︑黒木文学部長は︑一月二八日の教授会での私の

質問︑意見表明についての学長と教務部長の発言を紹介した︒

学長は相変わらず︑村田氏の﹁表現の自由﹂を保障するのが同

志社らしさだと発言した︒ただし︑大学の広報委員会で今後︑論

議してもいいと表明した︒教務部長は︑川口外相講演会につい

て︑ベーカー米大使のときにも金属探知機を使ったなどと述べ

て︑過去の経緯を知らない人が批判しているとか︑同志社が政府

の宣伝をしているという批判は︑事実誤認に基づくものだと述べ

た︒また︑インターネットで反対運動が生じたというアナクロ的

な主張と展開したという︒これはとても許せない発言である︒私

は﹁〇四年度も読売新聞社と共催で大使講座をやるようだが︑現 在の読売新聞がどんな役割を果たしているかを考慮すべきだ﹂と

発言した︒

10

朝 日 新 聞 の 責 任 も あ る

本広告は︑﹁企画制作﹂が朝日新聞と明記されており︑﹁朝日

新聞で作成﹂︵正木卓広報課長︶したもので︑朝日新聞の責任は

重大である︒

私は一月二九日に朝日新聞に質問書を出した︒東京本社は大阪

本社が開催したので大阪の広報へ聞いてくれということだった︒

大阪本社広報部電話をかけて︑担当者の要請通り︑ファクスで質

問をしたが︑三一日現在︑何の返答もなかった︒そこで二月二日

に再びファクスを送ったところ︑すぐに担当者から電話があり︑

もう少し待ってほしいということだった︒三日正午すぎ︑広報部

と広﹂いな題問てしら照に準基告﹁︑は日朝︒たっあが答回らか !

いう見解だった︒

おわりに

多くのOBG︑市民︑牧師などから︑学長︑広報課宛に広告と

︒のるいてれらせ寄が見意判批るす対に会演講相外 "

九〇年に卒業したOBは︽しばらく母校から遠ざかっておりま

した︒しかし︑昨年末の朝日新聞同志社大学広告記事の話を聞い

てからというもの︑母校がどこへ向かっていくのか心配になり︑

日々ニュースを追っています︒

― 1 9 5 ―

戦争国家における新聞広告とジャーナリズム

(19)

先日の川口外相講演も︑新聞の報道だけでは様子がよく分から

なかったのですが︑﹁日刊ベリタ﹂の関連記事を読んで愕然とし

ました︒重要なことは殆ど報道されてなかったのですね︒どんど

ん情報がコントロールされているようで︑気がかりです︒︾とい

うメールを送ってきた︒

同志社中退の大学教員︵米国在住︶は︽村田先生と小泉首相は

全く同じにみえますし︑そういう意味では︑この広告をした同志

社は︑大学ではなく︑小泉首相をかつぐ政党の役割をしたのも同

じでした︒同志社は一体全体どうしたのでしょう

!

︾︽

"

一九六〇

年代

#

やのく多ていつに﹂憲護﹁﹂を和平﹁︑しご過で社志同こ

とを学びました︒その同志社大学が︑﹁自衛隊を派遣するしか選

択の余地がない﹂などと言う発言を一流紙の大学広告欄に載せる

のを見るとき︑恥ずかしさや怒りを感じるとともに︑﹁キナ臭い

日本の将来﹂を危惧せずにはおれません︒︾という意見書を送っ

ている︒

横須賀で平和運動を続ける女性は︽同志社大学といいますと︑

まずリベラルな校風を思い浮かべますが︑一九三〇年代後半にや

はり軍部に屈した歴史を思わざるを得ません︒その轍を再び繰り

返すことのないよう一言申し上げずにはいられなくなりました︒

イラクを攻撃した米国ブッシュ大統領の戦争は侵略戦争に他なり

ません︒国際法も何も無視して仕掛けた戦争ですから︑米国がす

べて処理すべきではないでしょうか︒何故日本の自衛隊員を派遣

しなくてはならないのでしょうか︒自衛隊派遣するしか余地ない とはとんでもない発言と思います︒︾

ある卒業生は︽村田氏のような言説が

"

大学広報

#

として行わ

れていることについて︑深い憂慮の念を表明しました︒村田氏が

どのような見解を持っているかについては︑彼の自由でしょう︒

しかしそれと︑彼を

"

大学広報

#

として用いることとは︑別個の

問題だ︒︵﹁紙面に限っても︑明らかに関西学院のほうが魅力的で

あり︑同志社受験生はこの広告によって︑かえって減少するので

はないか?﹂とも︒︶︾

友人の牧師は︽同志社の大学広報は︑小泉首相の犯罪を背後か

ら教唆したのも同然の行為です︾と指摘している︒また弁護士は

︽田畑忍氏をはじめとする平和主義の同志社の法学部がどう整合

するのか︑論理的に説明すべきだと思います︒﹁没論理は戦争の

始まり﹂です︒︾などという長文の意見書を送っている︒

一二月一八日夜︑元レバノン大使・天木直人氏の講演会を浅野

ゼミと京都の市民団体との共催で開催し︑四〇〇人が参加した︒

しかし︑大学の教務当局が︑教室使用の手続きについて︑集会開

始直前にクレームをつけてきた︒チラシなどの主催団体の表記を

問題にして︑﹁講演会の内容を事前に知らせてほしい﹂と言われ

た︒﹁内容がホットだから﹂という言い方だったが︑同志社に来

て初めてのことだ︒

同志社の一九三〇年代後半の動きと︑いまの情勢が重なって見

える︒憲法改悪に向かって︑村田氏のような

"

日本版ネオコン

#

御用学者を動員して︑戦争のできる国にしようとしている︒ 戦争国家における新聞広告とジャーナリズム

― 1 9 6 ―

(20)

私が一〇年前︑同志社に来ることを決意したのは︑同志社建学

の精神と︑和田洋一氏︵同志社大学の新聞学専攻を創設︶︑田畑

忍氏︑鶴見俊輔氏らのリベラリズムの伝統に敬意を抱いていたか

らだ︒

和田洋一氏は一九四八年一二月一日発行の﹁同志社学生新聞﹂

の特集記事﹁見よ屈辱の歴史﹂に﹁学園に迫りくるファッショ

の嵐﹂と題して次のように書いている︒

︽︵略︶あの暗黒のファシズムは完全に息の根を止めたろうか?

残念ながら﹁否﹂という他はない︒世の中にはなお封建の名残り

が根強くあり︑また新たなファシズムが芽生えつつあるのではな

かろうか?︵略︶我等はこの期に当たって当時を回想し反省し輝

かしい自由の地﹁同志社﹂を︑そして日本を新たなファシズムか

ら守ろうではないか︒︾

日本帝国の崩壊から三年後に︑和田氏は早くもネオ・ファシズ

ムが芽生えていると警告したのであった︒詳しくは﹃大学とアジ

ア太平洋戦争﹄︵白井厚氏編︑日本経済評論社︶所収の﹁戦時中

の同志社﹂を参照︒

朝日新聞に載った広告について︑これは同志社にとって命取り

の危機だと訴える︒

イラクへ派兵された日本軍の兵士たちについて︑それが﹁復興

支援﹂活動と称して︑日本に報道されている︒兵士が実際に派遣

されると︑兵士たちが安全に帰国することを祈ろうという世論に

なる︒イラク侵略の際︑米国世論は戦争賛成に傾いた︒ NHKは常に﹁イラクで人道支援に当たる自衛隊﹂とか﹁イラ

クで復興支援活動している自衛隊﹂と表現する︒自衛隊が米占領

軍の指揮下に入っており︑イラク人民の殺害に手を貸しているこ

とは一切伝えない︒まさに大本営発表である︒

二月一日旭川における陸上自衛隊本隊の﹁出陣式﹂のあの異様

な風景︑クウェートやイラクでの﹁我々はイラクに人道復興支援

に来た﹂と大嘘をつく︑あの傲慢な態度︒インフラの整備なら︑

なぜ迷彩服を着て︑重装備する必要があるのか︒

ついにはサマワの陸自幹部が︑﹁日出る国﹂の何とかと言っ

て︑歌を読んだ︒米国に住む元共同通信バンコク支局長の戸田邦

信氏は︑﹁国家神道を放棄したのに︑日本の自衛隊の人は︑二一

世紀になっても︑こんなアナクロニズムかとがっかりした︒根深

い日本文化の負の側面が︑表通りに大手を振って出てきたという

感じだ︒これは単独主義を標榜するブッシュ政権の感化を受けた

としか思えない︒両方ともディプロマシー︵如才のなさ︶がな

い﹂と言っている︒

日本がまさに︑﹁大東亜共栄圏﹂の看板を﹁国際貢献﹂﹁人道復

興支援﹂に塗り替えて戦争国家動員体制を復活させた︒

本稿で論じた広告問題について﹁週刊金曜日﹂二月六日号に書

いた︒

同志社では長い伝統のある﹁学友会﹂が一二月に自主解散し

た︒突然のことだった︒解散大会を開くエネルギーがあるなら︑

再建の努力をすべきではないかと思ったが︑学生たちが決めるこ

― 1 9 7 ―

戦争国家における新聞広告とジャーナリズム

(21)

とだからどうしようもない︒解体すると再建は難しい︒裏に何か

ないのだろうか︒

同志社の一九三〇年代後半の動きと︑いまの情勢が重なって見

える︒イラクも同じだが︑日本の人民が闘わないことには︑日本

に人権と民主主義は確立しない︒﹁市民の不断の努力﹂がいま必

要だ︒そしてジャーナリズムの真価が問われている︒

﹁創﹂四月号に︑防衛庁に白紙委任状を渡したマスコミ企業を

批判する記事を批判する記事を一〇ページ書いた︒﹁週刊金曜日﹂

二月二〇日号で書いた誓約書などについて︑さらに詳しく論じ

た︒イラクで取材したジャーナリストの綿井健陽さんらのコメン

トも入れた︒イラクに派遣された報道機関の記者がイラクや中東

の人民によるレジスタンス運動に巻き込まれて殺害される危険性

が高いようで︑本当に心配だ︒

イラクに派兵された自衛隊が︑日の丸︑君が代を派手に使って

いるのに腹が立つ︒防衛大学が人気大学になる日も近いかもしれ

ない︒日本軍がスタートした︒

四月一六日午後六時半︑辺見庸さん講演会が同志社女子大学栄光

館で開かれる︒同志社教会と浅野ゼミ︑﹁辺見さんを呼ぶ会﹂が

共催する︒多くの学生・市民と共に︑辺見さんの講演を聞いて︑

ジャーナリズムのあり方を考えたい︒

ジャーナリズムの重要性が今ほど高まっているときはないだろ

う︒情報産業ではない︑人民のためのジャーナリズムを創出する

ための同志をつのり︑国際的な視点を忘れずに追究していきた い︒人権を守り︑侵略戦争を阻止することがジャーナリストとジ

ャーナリズム研究者の責務だと思う︒

︵1︶昨年三月から四月まで︑イラクへの武力攻撃を始めた米国に滞在

した︒四月一二日に首都ワシントンで行われた﹁イラク占領反

対﹂デモに参加したが︑デモ隊はワシントン・ポスト本社前で︑

﹁ブッシュや国防総省の宣伝をやめろ︒真実を伝えろ﹂と大声で

訴えた︒

戦争報道で知られるニューヨークタイムズのクリス・ヘッジス

記者は︑﹁戦争が始まると最初に死ぬのはジャーナリズムである﹂

と私の取材に答えた︒彼は“WarIsaForceThatGivesUsMean-

ing”︵邦訳﹃戦争という名の甘い誘惑﹄︶という〇二年に出版した

本で︑﹁戦争は最初のうちは︑恋愛のように見える︒しかし︑恋

愛とは全く違って︑何も返ってくるものがない︒すべての麻薬の

ように︑自己破壊に至る道への依存を永続的に深めていくだけで

ある﹂と書いていた︒

ヘッジス記者は昨年九月︑ニューヨークで調査した私のゼミ学

生に対して︑﹁どんな理由付けをしたものでも戦争は社会を牢獄

にする︒米国のメディアのイラク報道は︑ひどいし︑恥だ︒軍の

チアリーダーになった︒メディアは︑兵器の説明はするが︑その

兵器が何をしているかを伝えない︒エンベッドとは軍と共にマー

チすることで︑すべては軍の窓越しに見ている︒チェイニー副大

統領がイラクの制圧後︑ナショナルプレスクラブでの講演でプレ

スを絶賛した︒どんな政府でもうそをつく︑そのうそを暴くこと 戦争国家における新聞広告とジャーナリズム

― 1 9 8 ―

(22)

がジャーナリストの仕事だ︒すべてのうその中で最も大きなうそ

が戦争だ︒米国人に︑自分たちは強くて︑正しいと信じ込ませ

た︒神話を創り出すのだ﹂と語った︒

また︑﹁日本は原爆を投下された国としてあらゆる戦争の悲惨

さが分かっているはずだ︒その国のジャーナリストは権力の発表

を垂れ流す﹃速記者﹄であってはならない︒イラクへ派兵は日本

の利益にならない︒日本が米国の下僕になるなら︑日本の記者も

犠牲になる﹂と警告していた︒

小泉・石破両氏らの国際法・憲法違反の政策のために︑国民も

ジャーナリストもレジスタンスの犠牲になってもおかしくない︒

派兵された日本軍兵士と取材記者の日本人が米英日による不法占

領の犠牲になるのではと心配だ︒

イラクの自衛隊を報じる際に︑﹁復興支援活動を行っている﹂

という枕言葉を一貫して使うNHKなど日本のメディア企業前で

も︑派兵反対の示威活動が必要だと思う︒

︵2︶この広告での村田晃嗣氏の発言内容はネットで見ることができ

る︒

︿http://www31.brinkster.com/aphorg/murata.html﹀

︵3︶村田氏は︑同志社大学の広報誌﹁同志社大学通信ONEPUR-

POSE﹂︵NO1292001DECENBER︶でも︑学生たちとの﹁座談

会﹂でアメリカのブッシュ政権によるアフガン侵略を擁護する発

言を繰り返している︒私は﹁評論社会科学﹂六七号で︑この座談

会を批判した︒ また村田助教授は昨年一二月一〇日の京都新聞九面で︑︽自衛

隊イラク派遣三氏に聞く︾という記事でも︑小泉政権のイラク

派兵を完全に擁護する意見を次のように述べている︒

︿http://www.kyoto−np.co.jp/kp/topics/kanren/iraq1130/opnion03.

html﹀

﹇同志社大助教授村田晃嗣氏

﹁国際政治の公約果たす義務﹂

イラクの復興と安定は国際社会の課題だ︒国益と国際秩序安定

の観点からも日本は自衛隊をイラクに出すべきだ︒状況を見極め

るにも限界がある︒派遣時期については限られた時間と情報の中

で小泉首相が政治的決断を下すしかない︒

先の総選挙では︑イラク復興特別措置法を作った与党が絶対安

定多数を確保し︑自衛隊派遣を繰り返し表明してきた小泉首相が

再任された︒公約重視のマニフェスト︵政権公約︶選挙で︑国民

はイラク派遣を信任する判断を下した︒

イラク情勢の変化は選挙前から予見されたことだ︒国内政治と

同様︑民主主義国家として国際政治においても公約を果たす重い

責任がある︒もし派遣を中止するなら︑イラクで犠牲者を多数出

しているイタリアなど諸外国にも影響を与える︒日米関係も悪化

し︑北朝鮮をはじめとする外交問題で日本の立場と発言力を弱め

ることになる︒

二一世紀の安全保障にとってテロは大きな問題だ︒現行憲法の

制定時には︑大規模テロが国際社会の基幹を脅かす状況は想定さ

れなかった︒憲法の想定を超える事態が生じている今︑自衛隊活

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戦争国家における新聞広告とジャーナリズム

参照

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