得 再 分 配
足的コメント
小 林 晃
供する﹂ための﹁研究試論﹂シリーズの一つとして︑経済企画庁研究所編﹃日本の所
﹄(一九九八年一月)が出された(ただし︑このシリーズはすべて︑研究所としての公式見解を
筆した研究試論であるという断りがある)︒
業の削減︑雇用拡大に向けた﹁雇用戦略﹂を主たる問題意識として︑OECD加盟国
に行われてきているが︑本書は︑﹁OECD経済政策委員会における議論への参加のた
な分析枠組みに準拠しつつ︑日本の所得格差の状況を計測した﹂(同書︑五頁)もので
態分析(計測)に際して︑本書が準拠したグローバルスタンダードの中身は︑要約すれ
2 商 経 論 叢 第34巻 第2号
ば以下の五点である︒
ω個人間の所得格差の測定にあたって︑単純な一人当り所得ではなく︑個人がその所属する世帯規模の相違による
影響を加味した(一定金額の消費から得られる満足を世帯員が分かち合うという規模の経済を適切に評価に入れた)所得i
コ人当り経済厚生(効用水準ごに依っている︒
そしてこの﹁一人当り経済厚生﹂を示すように修正された可処分所得を︑﹁等価可処分所得﹂と呼んでいる(以ド︑
たんに可処分所得という場合︑これを指す)︒
②個人間の所得格差の調査︑測定については︑今日先進諸国では︑﹁ルクセンブルグ所得調査﹂(LIS)のテータ
ベースが用いられる場合が多い︒これは︑各国の家計所得に関する個票データベースを︑国際比較が可能な形にメン
テナンスしたものもっとも︑その他の国際比較がそうであるように︑様々な制約や限界があるである︒OE
CDにおける分析も︑このLISを採用しているが︑日本は現在のところ︑いまだこのデータベースに参加していな
い︒
個そこで本書では︑総務庁﹃全国消費実態調査﹄(五年ごとに実施)の個票を集計したデータを中心にしつつ︑国際比
較が可能な形で分析されている︒今回の分析は︑直近の一九九四年と一九八四年の比較を主としている︒具体的な集
計︑分析の方法(九二〜九五頁参照)は︑OECDが提示した基準に従っており︑LISを用いた既存の分析に概ね沿っ
たものとなっている︒
ω可処分所得を算出するうえで必要な﹁租税﹂と﹁移転﹂のうち︑﹁租税﹂は通常の租税のほか︑社会保険料(税)
11社会保障負担が含まれる︒また﹁移転﹂(的支出)は︑グロスの社会保障給付を指す(推計方法については︑九六〜一〇
一頁参照)︒
1人 当 た り 可 処 分 所 得(弾 性 値 一1.0)
C%)
1974 1984 1989 1994
ジニ係数
(29.$)
28.8 29.4 29.6SCV (38.2) 34.5 ・・ 39.3
MLD (14.7) 14.0 14.7 15.3
ア トキ ン ソ ン尺 度 (7.1) 6.7 7.1 7.3
(注)1.()内 の 数 値 は,世 帯}三が 主 に あ る い は 専 ら農 林 水 産 業 に従 事 す る 世 帯 を 除 い た もの 。 2.「 全 国 消 費 実 態 調 査 所 得 分 布 研 究 プ ロ ジ ェ ク トチ ー ム 」 に よ る 推 計 結 果 か ら作 成(特 に 断
わ らな い 限 り,以 ド同 様)。
3.弾 性 値==0.5の 意 義 と根 拠 に つ い て は,本 書 の11頁 参 照 。(以 ド も同 じ)。
※ 本 書,15∫ 「{。
○年間について︑四つの不平等尺度はいずれ ω可処分所得の分配
日本における可処分所得の格差は︑等価可
処分所得︑単純な一人当り可処分所得のいず
れでみても︑一九八四〜九四年のあいだで拡
大している︒表1にみられるとおり︑この↓ 上述の統計データならび統計分析手法に
よりながら︑主に第二章で︑日本における可
処分所得の分配実態の計測結果を概括し︑あ
わせてLIS参加国との国際比較を試みて
いる︒ 尺度を用いている(↓一︑互二〜五六頁参照)︒ 線に加え︑ジニ係数︑平方変動系数(SCV)︑
平均対数偏差(MLD)およびアトキンソン ㈲所得分配の不平等を計る尺度について
は︑OECDの基準に沿って︑ローレンツ曲
商 経 論 叢 第34巻 第2号4
表2各 分位 におけ る可処 分所得 シ ェアの増減(日 本) 弾性値a.5
(%ポ イ ン ト)
5分 位 1 2 3 4 5
1984‑1994 一 〇.4 一〇.3‑0,1 0.1 0.7
※ 同 ヒ,16頁 。
表3「 所 得再分 配調査 」 の ジニ係数
(%)
再 分 配 前 の
年1所 得
ジ ニ 係(a)
再 分 配 後 の 租 税 に よ る 社 会 保 障 に よ る
所 得 再 分 配 後 の 所 得2再 分 配 後 の 所 得3
ニ ジ 係 数(b)1‑b/aジ ニ 係 数{c)1‑c/aジ ニ 係 数(d)1‑d/a
1961 1966 1971 1974
×977 1980 1983 1986 1989 1992
39.0 37.5 35.4 37.5 36.5 34.9 39.8 40.5 43.3 43.9
34.4 32.8 31.4 34.6 38.8 31.4 34.3 33.8 36.4 36.5
11.8 12.fi 11.4
7.8 7.4 10.0 13.8 16.5 15.9 17.0
36.1 33.8 36.4 35.2 33.0 38.2
..
42.1 42.6
749748292342353423
34.2 33.4 35.8 3s1 33.2 35.8 35.6 37.9 38.1
8.7 5.7 4.5 1.2 5.0 9.8 12.0 12.5 13.2 1.デ ー タ が 収 集 さ れ た 年 を 記 す 。 調 査 報 告 書 で は 翌 年 の 値 と して 公 表 して い る。
2.社 会 保 障 の 寄 与 分 を 除 き,租 税 支 払 の み 考 慮 し た 再 分 配 後 の 所 得 。
3.医 療 の 現 物 給 付 を 含 め た 社 会 保 障 給 付 を 加 え,租 税 の 寄 与 分 を 引 い た 再 分 配 後 の 所 得 。 資 料=厚 生 省 「所 得 再 分 配 調 査 」(本 書,18頁)。
(注)この点について︑本書は︑﹁この間
の所得分配の変化は︑主として低所得
層及び高所得層で生じており︑中所得
層では大きな変化は観察されていな
い︒いくつかの国で指摘されている中 とおり︑高所得層で(あるいは高所得層
ほど)増加し(第4︑5分位)︑逆に低所
得層で(あるいは低所得層ほど)減少し
ており(第1〜3分位)︑可処分所得分
配における格差と不平等の拡大が︑こ
(注)の点でも明白にうかがわれる︒ また︑この一〇年間の所得分配の変
化と推移を︑所得分位ごとの可処分所
得シェアの増減でみると︑表2が示す であることを示す)︒ ど格差が大きく︑したがって分配が不平等 れの尺度も︑係数の性格上︑値が大きいほ 平等が拡大しているからである(いず も増加しており︑したがって格差と不
所得格差と所得再分配
5 間層の﹃空洞化﹄(両極分解)は︑我が国に関しては生じなかったといえよう﹂(14頁)と述べている︒
つまり︑所得分配の変化の程度が︑どの層で大幅であるか小幅であるかに重点を置いて説明している︒このような統計解釈も
可能ではあるが︑肝心な点を看過しているように思われる︒
(注)なお︑ジニ係数については︑別の資料(厚崖者﹁所得再分配調査﹂﹁家計調査﹂)でも同様な結果が示されており︑それに
よれば再分配後の所得(可処分所得とほぼ同じド記の注参照)のジニ係数は︑最近のほぼ一〇年間(一九八〇〜九二年)︑
いずれも増加傾向を示している(表3参照︒なお︑﹁家計調査﹂の結果については︑本書一九頁の表2‑5参照)︒
(注)この﹃所得再分配調査﹄は﹃国民生活基礎調査﹄のサンプルのうち約九︑OOOサンプルを用いて.二年毎に集計されている︒
同調査における再分配後所得の定義は︑医療保険による現物給付を含む点で︑﹃全国消費実態調査﹄の畦処分所得とは数値上若
干異なっている︒
ついで可処分所得の分配における日本とOECD諸国との国際地範が試みられ(表4︑5参照)︑次のように述べてい
る︒
(注)本書によれば︑こうした国際比較は︑ω餌≦巻きζ̀..一訂8ヨΦ∪翼ユ9鉱o巳口○国OuOo巷鼠Φρ..O肉6b肉8謹§爵Oミh8神
06鶏忽§蕊ωミミ題轡言ぐ一鷲90閣OU.による大雑把な分析以来あまり行われてこなかった︒
﹁各国ともトレンドとして格差拡大傾向にあるといわれることから︑一九九四年の日本との比較では日本の不平等
(注1)度が誇張される可能性がある︒こうしたことも踏まえて︑あえてこの結果から導かれる評価を述べるならば︑日本の
等価可処分所得は︑北欧諸国を中心とする数力国より不平等であるがG7のなかではドイツと並んで比較的平等な位
(注2)置にあるといえよう﹂(︑...頁)︒
(注1)表4にみられるとおり︑LIS参加国のデータは︑いずれも一九八〇年代のものであることによる︒
(注2)このような評価にたいしては︑専門家のあいだになお異論があるという︒(たとえば︑橘木俊詔・八木匡︑﹁所得分配の
現状と最近の推移:帰属家賃と株式のキャピタルゲインの推計と併せて﹂石川経夫編﹃日本の所得と富の分配﹄︑一九九四年所
商 経 論 叢 第34巻 第2号6
表40ECI)諸 国 に お け る 可 処 分 所 得 の 分 配:10分 位 の 累 積 シ ェ ア 弾 性 値 一…0.5
(%)
年10%20%30%40%50%60%70%80%90%
日本 19843.8
19893.7 19943.5
9.516.324.032.742.353.065.279.5 9.316.023.632.041.752.464.fi79.0 9.115.723.331.841.452.264.478.9 オ ー ス ト ラ リ ア
ベ ル ギ ー カ ナ ダ
フ ラ ン ス ド イ ツ
ア イ ル ラ ン ド イ タ リ ア
ル ク セ ン ブ ル グ ノ ル ウ ェ ー ス ウ ェ ー デ ン ス イ ス
イ ギ リ ス ア メ リ カ
19852.97.713.721.029.439.050.263.075.3 19884.210.217.125.033.843.554.366.480.3 19872.87.814.121.530.139.850.763.378.4 19843.08.314.621.829.939.149.561.676.3 19844.09.816.624.232.942.553.265.379.4 19872.57.112.619.327.136.347.Q59.675.1 19863.18.013.920.728.738.048.761.276.2 19854.310.217.124.833.543.153.966.080.4 19863.99.816.924.933.943.754.666.780.6 19873.39.516.925.334.644.855.968.281.9 19822.88.014.121.029.037.847.758.972.5 19862.57.513.520.528.738.249.161.877.1 19861.95.711.218.426.235.746.96a.276.3
フ ィ ン ラ ン ド19874.510.818、126。435.645.s56.668.682.2 オ ラ ン ダ19874.110.116.924.533.042.553265.379.4
ニ ュ ー一 ジ ー ラ ン ド19883 .28.514.721.930.239.951.063。979」
この異論を考慮に入れて再計測
すれば︑﹁日本は﹂lS参加国の中
位に属し︑ドイツ︑カナダなどより
不平等︑アメリカ︑イタリアなどよ
り平等と判定される﹂(二三頁)と
している︒この種の国際比較の困
難性ないし不完全性が窺われる︒
②市場所得の分配
ここで市場所得とは︑政府(財政)
よる再分配︑すなわち﹁租税﹂控
︑﹁移転﹂追加が行われる以前の
得(市場所得ー‑可処分所得+﹁租税﹂
﹁移転﹂)で︑内訳としては︑﹁勤労
得﹂︑﹁資本所得﹂︑﹁自営所得﹂に
けられており︑このうち日本の
四年時点でいえば﹁勤労所得﹂が
八五%を占めている︒
表6にみられるとおり︑この市
所得の分配(表6の﹁租税・移転調
資 料:日 本 以 外 はAtkinson,A.B.,L.RainwaterandT,M.Smeeding(1995),Income
DistributioninoECDCountries,SocialPolicyStudiesNo.18,0ECD.な お,フ ィ ン ラ ン
ド 以 下3か 国 は,LISで は な く 各 国 デ ー一 タ ベ ー ス か ら の 集 計 。(本 書,21頁)。
場 約 九 分 所[所 除 に
f'()
収
u
所得格差と所得再分配
7 鮒㎝O国O])叢画弼Sロー▽マく繭寓(十)潮q聡禽(1)
m昼口餅斗1Xえ︑▽ご斗刈"冗収刈へ収庵︑マ痔ゆ\︑マメqヌヘペ十,刈図刈歳堺Ψ
7"蟷セー踵Y×.k㌔で"q刈V刈.︑マqHトー×⊆ヌ嗣﹂廿Y"V蹟
刈Yて黛.1崩.Y冥冗
一¢oQ¢一㊤¢幽一〇QQ㎝一㊤QoQo一㊤QQ刈一¢◎c心一㊤QQ膳一㊤◎Q刈一㊤QQ⑦一㊤oQ㎝一㊤oQO一りoQ刈一㊤◎Qb二一㊤Qc①一㊤◎◎①一㊤oo刈一㊤oQ刈 lIh﹁‑
くー刈
Vて
6◎QQQ
ロ耕6︒︒心
ちQ◎㊤
お逡
堺ーN7"己刈一㊤o◎㎝
藷ζ七‑
廿斗黛︑
刈守冥ヌ
τへ.Y
刈へ︑▽油冥て
収涛=刈 おc◎c◎
巳Qo刈
おG◎幽
おQQ幽
おcQ刈
おgQ①
︑マ貸膏Y覧︑︑▽樋一㊤◎◎釦
\㌔マ"Hー
×qHl跡.Y
ヌヘヌ
戒喰こメ
刈図虹瀞
M咲Y"マ署
導焔Y職 お◎◎①
おQQ刈
δQQ鱒
おoo①
這QQ①
6◎◎刈
お◎◎刈 十
十 一十
← 十
十
1‑十
十 十
十十
十十十
十 十 中 十 十 十 十 十
十 十 十 十一 十
十 十 十
十十 十
十 十 十
← 十
一 十 十 十
十十 十 十
十
十十
十 十 申 十 十
十 十
⊥‑
十 十
十十
十 十
← 十
十十 十
蹄重H画ナ(昏㎜一旨無)︒
(隣)旨図舜鴇難心θローてY.k[旺蕪(δゆ欝θ細礁粕H瀦)串‑躍πC詩ひθd・δ串欝︑圃'54eい▽鈷く伴ひ一鳶鰍d忌圖㊦細礁照蝉営一駅聾﹃軸
灘Cぺつか蔀φπ燭δ噛ローてY.k職欝(鈴O剰聡)鴫鵠欝(界G弘慈婚)伴蜘鈷借盤dづゆ︒
商 経 論 叢i第34巻 第2号8
表6再 分配 前後 の不平等 尺度(日 本) 弾性 値=0.5
(%)
1984 1994変 化 率(84‑94) SCV
租 税 ・移 転 調 整 前(1)40.153.633,7 租 税 ・移 転 調 整 後(2)24.329.621.7
租 税 ・移 転 に よ る 変 化 率(2)/(1)‑1‑39.4‑44.9
ジニ係 数
租 税 ・移 転 調 整 前(1)・ ・
租 税 ・移 転 調 整 後{2)25.2
租 税 ・移 転 に よ る 変 化 率(2)/(1)‑1‑15.2
34.0 26.5
‑22 .0
14.0 4.9
ア トキ ン ソ ン尺 度
租 税 ・移 転 調 整 前{1)8.4 租 税 ・移 転 調 整 後{2)5.3
租 税 ・移 転 に よ る 変 化 率(2)/(1)‑1‑36.7
X2.4 5.9
‑52 .3
47.3 10.9
※同L,25頁 。
表70ECD諸 国 に お け る 市 場 所 得 の 分 配 弾 性 値 一一〇.0
10分 位 の 累 積 シ ェ ア
C%〉
年10%20%30%40%50%60%70%80%90%
日本 19842.57.613.921.329.8 19892.16.913.020.828.4 19941.76.212.419.527.9
39.350.162.4 38.048.861.1 37.448.360.9
77.1 76.1 7s.i オ ー ス ト ラ リ ア
カ ナ ダ ド イ ツ
ア イ ル ラ ン ド オ ラ ン ダ ス ウ ェ ー デ ン ス イ ス
イ ギ リ ス ア メ リ カ
1985Q.43.1 1987a.94.O l9840.11.8 19870.12.0 19870.95.0 19870.21.1 19820.83.7 19860.21.7 19860.63.2
8.114.923.2 9.015.623.9 7.214.322.7 6.712.719.6 11.118.226.4 4.210.118.2 9.015.723.5 5.711.919.9 7.613.721.5
32.9 33.s 32.7 28.7 35.8 28.5 32.4 29.7 30.9
44.257.573.6 45.158.675.Q 44.358.074.5 39.853.571.1 46.859.775.4 41.256.374.0 42.654.669.3 41.555.673.1 42.055.572.5 フ ィ ン ラ ン ド1987
フ ラ ン ス1985 イ タ リ ア1986
ル ク セ ン ブ ル グ1985 ベ ル ギ ー1988
0σ0044
Qリ4﹁00000
把U7nUO9白
AUAU100QJ
8.415.i23.733.8 8.714.622.030.8 10.717.525.434.7 14.922.230.640.1 14.722.230.940.9
45.6 4i.4 45.6 50.9 52.0
59.375.8 54.070.0 58.674.5 63.478.7 64.479.2 1.市 場 所 得 が ゼ ロ の 世 帯 は推 計 の 際 対 象 か ら除 外 した 。
資 料:日 本 以 外 は 前 出,Atkinsonetal。(1995)。(同L,26頁)。
所得格差と所得再分配
9
表80ECD諸 国 にお ける市場所 得 の分 配 に関す る主 な尺度 弾性値=0.0
(%)
直近の期間 過去の期間
年
ジ ニ ア トキ ン係 数 ソ ン尺 度
年
ジ ニ ア トキ ン係 数 ソ ン 尺 度
ll本 198931.7
199432.6
9.2日 本
9.9
198429.$ ?.S
ア イ ル ラ ン ド ス ウ ェ ー デ ン イ ギ リ ス ア メ リ カ ス イ ス
ド イ ツ オ ー ス ト リ ア カ ナ ダ オ ラ ン ダ ノ ル ウ ェ ー
198746.1 198743.9 198fi42.8 198641.1 198240.7 198439.5 1985/198fi39.1
198737.E X98734.8 197933.5
20.0 20.0 18.7 15.5 15.6 17.7
×5.2 13.0 11.7 11.9
ス ウ ェ ー デ ン イ ギ リ ス
ア メ リ カ
198141.1 19793fi.5 197938.8
オ ー ス ト ラ リ ア1981/198236,9 カ ナ ダ198135.0
オ ラ ン ダ198333.9
17.7 13.8 14.1
13.6 11.4 11.0
フ ラ ン ス フ ィ ン ラ ン ド イ タ リ ア
ル ク セ ン ブ ル グ ベ ル ギ ー
1984 1987 1986 1985 iii
41.7 37.9 3fi.1 28.0 27.3
15.8 14.3 12.3 6.5 6.3
フ ラ ン ス
ベ ル ギ ー
197940.615.1
198527.5 6r1 1.市 場 所 得 が ゼ ロ の 世 帯 は 推 計 の 際,対 象 か ら 除 外 し た 。
資 料:日 本 以 外 は 前 出,Atkinsonetal.(1995)。(同 卜,27頁)。
整前﹂)は︑先にωでみた可処分所得
の分配(表6の﹁租税・移転調整後﹂)に
比較して︑より不平等となっている︒
﹁等価可処分所得の低い順にサン
プルを並べた場合︑(等価)可処分所
得は市場所得と比べてより分配が平
等であった︒これは租税及び移転に
よる再分配が効果的に行われている
(十分か不十分かは別として⁝⁝引用者)
ことを意味する﹂(二四頁)︒
ついで日本における市場所得の分
配を国際比較してみると︑ローレン
ツ曲線においても(表7参照)︑また
その他の不平等尺度(表8参照)にお
いても︑同一の結果が示されている︒
すなわち︑﹁日本の再分配前の所得分
布は北欧諸国も含めかなり平等な位
置にあると考えられ︑以下(次の㈹)
商 経 論 叢 第34巻 第2号10
(%)
表90ECD諸 国 に お け る 租 税 の 分 配 弓」単'「生f直=0.5
に税値均央平中る得す所対率
22.0 20.6 22.8
細 捌 ㎜ 珊 姻 枷 獅 鋼 鵬 珊 獅 謝 ㎜ ⁝ 脚 襯 瓢
3s.9 5分 位
年
1 2 3 4 5合計
日本 19547.511.i
X989fi.9×0.3 19946.610.2
15.221 14.220 14.721.
4 8 1
i
47.8 47.4
100.0 100.0 100.0
オ ー ス ト ラ リ ア
ス イ ス カ ナ ダ
ド イ ツ イ タ リ ア オ ラ ン ダ
ノ ル ウ ェ
ス ウ ェ ー デ ン
イ ギ リ ス
ア メ リ カ
1981 1985 1982 1981 1987 1984 1987 1983 1987 1979 1986 1981 1987 1979 cif 1979 1986
1.1 0.7 5.8 1.8 3.6 5.5 7.0 5.5 10.3 3.5 3.7 10.1 6.3 4.0 4.5 2.5 3.8
8.1 7.s 10.2 9.3 8.8 10.4 12.2 11.8 10.0 11.4 13.2 13.1 12.5 11.5 8.1 7.6 fi.9
16.2 16.3 14.7 16.7 16.2 17.0 17.6 17.O is.2 18.2 19.2 17.7
×7.7 i 15.9 14.6 13.9
24.8 24.2 21.1 25.8 24.8 23.E 23.8 22.9 22.3 25.8 25.7 23.3 23.3 25.1 25.0 24.7 22.6
49.8 51.2
.・
46.5 46、5 43.7 39.3 42.7 41.2 41.i 38.1 35.8 40.1 41.4 46.4 50.6 52.7
100.0 100.O lOO.0 100.0 1Q4.O loo.0 100.0 100.O loo.o lao.a 100.O loo.0 100.0 100.0 100.O loo.0 100.0
フ ィ ン ラ ン ド 19874.911.2 17.1 23.942.9100.0 資 料 日 本 以 外 はAtkinsonetal.(1995)。(本 書,29頁)。
でみるように租税及び移転に
よる再分配の度合いが弱いに
もかかわらず︑可処分所得の
分配が比較的平等であるとい
う関係をもたらしている﹂(..
八頁)としている︒上掲表で
みるかぎりでは︑市場所得に
おいて日本より分配が平等な
国はルクセンブルグとベル
ギーのみとなっている︒
⑧租税および移転の分配
租税の分配は︑表9にみら
れるとおり︑各国ともに一応
累進的となっており︑5分位
階級別の最下位層(第‑分位)
の負担が︑最高で全体の一〇
%程度かそれ以下︑また最上
位層(第5分位)で四〇〜五〇
ベ ル ギ ー
ス イ ス カ ナ ダ
フ ラ ン ス
ド イ ツ
ァ イ ル ラ ン ド イ タ リ ア
ル ク セ ン ブ ル グ オ ラ ン ダ
ノ ル ウ ェ ー
ス ウ ェ ー デ ン
イ ギ リ ス
ア メ リ カ
5821794476537961796968888878888888788878789999999999999999999991ームー111111111111111111 195505758063890502677202183997125714418506994223321123112232113222 656292282943839698091242392411216811063505112221222222112221222222 491692847375494287444141057988619986649179771221111112111111121111 961310770275476259017526634577150207329976471111111121222111111111 0173116736646210740911868322248972795187517511111221221111111111
フ ィ ン ラ ン ド 198725.9 22.6 18.215.8 17、6
000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000111111111111111111111←‑ }0㎜伍
⁝10 339314208547535105539413470225901388355584891331122122222113312 一772
資 料=日 本 以 外 はAtkinsonetal.(1995)。(本 書,30頁)。
商 経 論 叢 第34巻 第2号12
%となっている︒
この中で︑﹁日本における租税の分配は︑国際的にみると中所得層に比較的軽いことが特徴的である︒すなわち︑5
分位階層の最下位︑最上位層のシェアが相対的に大きく︑第3︑4分位のシェアが小さくなっている(第2分位は平均
的水準﹂(..九頁)︒
また移転の配分については︑表10にみられるとおり﹁各所得階層に均等︑ときには高所得層に手厚い国(﹁ばらまき
型﹂ということもできる)︑低所得層に手厚い国(㎜絞り込み型﹂)という類型化が可能である︒フランス︑イタリア︑ルク
センブルグなどが前者︑オーストラリア︑アイルランドなどが後者の代表例であろう﹂︒また︑この中で︑﹁日本の移
転の分配は︑他のOECD加盟国と比較して︑低所得層への絞り込みの度合いが弱く︑どちらかというと高所得層に
手厚いグループに属する︒最下位から第3分位までの層は全ての移転の.一〇%未満しか得ておらず︑最上位層が二〇
%台半ばのシェアを占めている︒日本における移転の主要な部分は公的年金であり︑ここでの結果は報酬比例部分に
よる公的年金給付の逆進性を多分に反映したものであるとみられる﹂(︑.九〜.一.O頁)︒
本書の評価とやや異る面もあるが︑概括的にいえば︑わが国はOECD諸国の中で︑租税負担の逆進性が相対的に
強いグループに属し(租税分配における第1︑2分位の比率が比較的に高い)︑また公的年金を含む社会保障制度全体が著し
く未熟かつ劣悪なグループに属している(移転分配における第1︑2分位の比率が最低に低い)と言ってよいであろう︒
三
国際比較の視点にたった日本の所得分配分析をうけて︑主に第三章で︑﹁八四年から九四年にかけて﹂生じた﹁所得
格差拡大﹂の﹁背景﹂と﹁要因﹂が統計的に分析されている︒
中所得層(第4〜7分 位) 高所得層(第8〜10分 位)
31.3 45.4
27.5 54.7
‑3 .8
9.4
市 場所 得
低 所得層(第1〜3分 位) 中所得層(第4〜7分 位) 高所得層(第8〜10分 位)
7¶19白
0σ51且100FO
凸UQU9白
ど0だ00σ‑り04
一1 .2
‑0 、8
2.Q
移 転
低所 得層(第1〜3分 位) 中所得層(第4〜7分 位) 高所 得層(第8〜10分 位)
28.027.5 32.737.5 39.335.0
刃.5 4.8
‑4 .2
租税
低所 得層(第1〜3分 位) 中所 得層(第4〜7分 位) 高所得 層(第8〜10分 位) 可処 分所得
12.6 3Q.9 56.6
11.3 29.7 59.0
一1 .3
‑1 .2
2.4
低 所 得 層(第1〜3分 位)
中 所 得 層(第4〜7分 位)
高 所 得 層(第8〜10分 位)
is.3 3fi.7 47.0
15.7‑0,6
36.5‑一 一〇.2
47.80.8
※36頁 。
ω所得源泉別に
みた拡大要因
先ず︑所得分配の
状況と推移を︑八四
年から九四年にかけ
て所得源泉別にみて
みると︑表11にみら
れるとおり︑﹁この一
〇年間で︑低所得層
に分配される勤労所
得のシェアは上昇
し︑資本所得及び自
営所得のシェアは下
落した︒他方︑資本
所得及び自営所得
は︑高所得層により
厚く分配されるよう
になっている︒労働
商 経 論 叢 第34巻 第2号14
表12可 処 分 所 得 の 不 平 等 度 に 対 す る 各 所 得 源 泉 の 寄 与:SCV 弾 性 値 一 〇.5
(%,%ポ イ ン ト)
1984 1994 変 化(84‑94)
可処分所得全体の不平等に対する寄 与くD 勤労所得
資本および自営所得 移転
租税
移転 と租税
94.1 41.2 2.6
‑37 .9
‑35 .3
94.8 41。8
4.3
‑40 、9
‑3s .s
0.7 0.s 1.7
‑3 .0
‑1 .3
シ ェ ア{2)
勤労所得
資本および自営所得 移転
租税
82.5 1 6.7
‑20 .0
93.0
・
10.8
‑20 .6
10.5
‑14 .0 4.1
‑0 .5
相対 不平等 尺度(1ソ(2) 勤労 所得
資本 お よ び自営所 得 移転
租税
1.11.0 1.32.5 0.40.4 1.92.0
一 〇.1
1.2
0.o o.1
※37頁 。
若干補足して再説すれば︑第一に︑勤労所得
のなかで︑﹁低所得層(第‑〜3分位)に分配され
る勤労所得のシェア上昇﹂は︑単位当りの所得
上昇ではなく︑自営業や農業から賃労働への移
行と女性の職場進出(パート労働を含む)の急増
を主として反映していると思われること︑第.一
に︑資本及び自営所得︑とりわけ資本所得は︑高
所得層(第8〜10分位)にますます集中する傾向
を強めていること︑そして第三に︑市場所得全
体でみても︑低・中所得層がいずれもシェアを
減少させているのに対して︑高所得層はシェア
を拡大していることである︒
そこで次に︑﹁これら市場所得が可処分所得
の格差拡大にどの程度寄与したか﹂を︑SCV
についてみてみると︑第一に︑表12にみられる 力が自営から雇用に移るなかで︑低所得者が勤
労所得により依存する形になったとみられる﹂
(..五頁)︒
得のSCV水準に対する寄与度(において)︑勤労所得の寄与が圧倒的に大きく︑次い
︑これらは租税の再分配効果(後述)によりおおむね相殺されるという構造になって
処分所得に占める各所得源泉のシェアと︑各所得源泉そのものの分配の不平等度に
ると︑勤労所得の寄与が大きいのはそのシェアが大きいことによるという点が確認
営所得はそれ自身の不平等度が高いことが︑特に九四年については重要となってい
変化(全体で五・三%増加)への各所得源泉の寄与度(表13参照)についていえば︑﹁こ
のシェアの変化による部分とそれ自身の不平等度の変化による部分に分けられる︒
ェア拡大とそれ自身の不平等度増加の両方が全体のSCVの増加に寄与している︒
小しているためマイナスの寄与であるが︑それ以上にそれ自身の不平等度が増加し
かる︒市場所得全体としては︑比較的格差の小さい勤労所得のシェア拡大という格
に各所得ごとの格差拡大が生じたと結論付けることができる﹂(︑二Lハ{'三レ]}貝)︒
再分配効果について︑本書は︑﹁租税の再分配効果がf分に機能していることが分か
がらプラスの寄与であり︑それだけをみると逆進性があることを示している︒
ェアには若Fの低下がみられるが(表11)︑このことは再分配における移転の役割の
については︑八四年より九四年において︑より大きな割合が高所得層によって支払
る(表12参照)︒(なお︑表13によるSCVの増加への寄与度でみても結果は同じ)︒
商 経 論 叢 第34巻 第2号16
表13可 処 分所得 のSCVの 変化へ の各所得 源泉 の寄与 弾 性値=0.5
(%ポ イ ン ト) 1984‑1994
勤労所得
シェア
自身の不 平等度 全 体
(1) (2) (1)+(2)
3.0 2.1 5.2
資本 および自営収入
シ ェ ア
自身の不平等度 全体
(3) (4) (3)+(4)
一7 .4
9.8 2.4
移転
シ ェ ア
自身の不平等度 全体
{5) (6) f5)+(6)
0.4 0.2 0.6
租税
シ ェ ア
自身の不平等度 全体
(7) (8) (7)+(8)
一 〇.3
‑2 .6
‑2 .9
可処分所得
各 源泉 の シェア 各 源泉 の不平等 度 全 体
一4 .3
9.5 5.3
(注)1.可 処 分 所 得 に 占 め る 各 所 得 源 泉 の シ ェ ア の 変 化 に よ る,全 体 のSCVの 変 化 。 尺 度 が マ イ ナ ス の 場 合,不 平 等 度 の 減 少 を 意 味 す る 。
2.各 所 得 源 泉 自 身 の 不 平 等 度 の 拡 大 又 は縮 小 に よ っ て 生 じ る 全 体 のSCVの 変 化 。 X38頁 。
場所得の各要素ごとの格差
拡大のために︑換言すれ
ば︑低所得層に分配される
勤労所得のシェア上昇と︑
資本所得の高所得層への集 以上を要約していえば︑
八四〜九四年の一〇年間︑
租税・移転の再分配効果
は︑総体として一定程度高
まったものの︑主として市 また︑租税と移転の再分
配効果は︑再分配前と再分
配後の指標を比較した前掲
表6によっても︑﹁この一
〇年間(八四〜九四年)で再
分配効果が高まっている﹂
(三九頁)ことを確認でき
る︑としている︒
た可処分所得はこの間格差を拡大した︑ということである︒
帯主の年齢︑世帯員の就業状況︑家族形態といった属性別にグループ分けを行い・
びにグループ内の所得格差が分析されている︒
ば︑次のとおりである︒
︑過去δ年間で拡大した︒これには︑笙に︑就業者のいない世帯(このグループ内
合が上昇したことが最も大きく寄与している︒失業率はこの間でそれほど差がない
非就業世帯が増加したためとみられる︒第二に︑就業世帯の中での所得格差が拡大
若年世帯の相対所得の低下と合わせると︑若年女子の労働力率上昇を反映している
のMLDの変化をみた表14︑15︑16である︒
)に最も寄与しているのは﹃構造効果﹄(各グ牛プのシェアの変化によるもの)であっ
﹄(シェアを是としたときの各グ孕プ内の不平等による要因)もまた・その程度はやや
与した︒﹃純粋なグループ間効果﹄(シェアを↓定としたときのグループ間の平均所得の差
ループ間の相対所得の変化が全体の格差拡大を緩和させたことを示している︒
帯(このグtフ内での所得格差は大きい)のシェアの増加が特に寄与していた(書)・
差がない}﹂とか・り合.二?︑充%)︑むしろ高齢化によって非就業世帯が増加した
商 経 論 叢 第34巻 第2号18
表14就 業 状 況 別 のMLD寄 与 度 分 解(そ の1) 弾 性 値=・0.5{/
, %ポ イ ン ト) 全体 のMLD グ ル ー プ 間 効 果 グ ル ー プ 内 効 果 1994年 の 値
変 化(84…94) 寄 一与 率
12.6 1.5 100.0
0.7
0.3
・ ・
ll.9 1.2 i1
※48頁 。
表15就 業 状 況 別 のMLD寄 与 度 分 解(そ の2) 酵単,1生イ直=0.5
(%ポ イ ン ト)
変 化($4‑‑94)
構造的効果
純 粋 な グループ間効果 純 粋 な グル一プ内効果る化度よ変与にの寄果Dの計効Lへ合各M幅の
非就 業 世帯 によ る寄k}
就業 者1人 世帯 によ る寄 与 就業 者2人 世帯 によ る寄 与
2.3‑0.8 0.51.8 0.02.1
一 〇.1
0.3
0.4
1.5 1.s
‑1 .7
各 世帯 類型 によ るMLDの 変 化幅 への寄 写度の合計
1.8 一1.00.71.5
※49頁 。
表16家 族形 態別 にみた相対可 処分所 得 の変化 への各所 得源泉 の寄与 弾性値 二〇.5(%)
森轟繍 森氏1命 毒覇嚇 森絡 館
勤労 所得
資本 お よび 自営 所得 移転
租税 口∫処 分所 得
14.2
‑15 .3
‑1 .8 a.o
‑2 .9
一23 .8
1.1
12.8 3.3
‑6 .5
13.912.2
‑15 .514.9 0.93.8
‑0 .70.3
‑1 .41.3
※42頁 。
では︑就業世帯の中での所得格差が拡大したことがプラスに寄与している(表15)︒こ(表16)と合わせると︑若年女子の労働力率上昇を反映している可能性がある﹂(四八〜
︑﹁この種の分析にはいくつかの統計上の留保条件が伴わざるをえない﹂(五二頁)としつつ︑
についての知見が世界から求められ︑また︑日本でも世界の動きに学びながら構造改革を断行
はあっても日本のデ←を国際比較の枠組みのなかに位置づけるという我々の試みは・より精上での基礎的な材料として有用であるかもしれない︒
な処方箋が導かれるわけではないが︑さしあたり︑どのようなメッセ←が考えられるかを整理
として︑以ドの..一点を指摘している︒
本はどちらかといえば平等な国であるという計測結果が得られた︒この結果は十分割り引いてアメリカのように所得格差が深刻であるということはないであろう・また・市場所得の分配も
分配の規模は小さく抑えられている︒
居︑別居の選択を通じた格差回避メカニズムの存在を考慮しなければならない・さもなければ・
され︑問題視されることにもなりかねない︒特に︑高齢者間の所得格差を論ずるに当たり︑これたと考えられる︒
に拡大しているが︑主として高齢者の割合の高まりによる面が強いと推測され・諸外国で観察
がすようなものではない︒
人間のマクロ的な所得格差に着目する限り︑日本ではそれが制約となって分配面に影響を及ぼ
いいかえれば︑市場重視型改革の余地がある国といえるのではなかろうか﹂(五二頁)︒
分配効果に関する百及について︑一霞補足的コメントを付記しておきたい︒
能している﹂﹁再分配における移転の役割は若干の低下がみられる﹂(以上︑二八頁)︑
商 経 論 叢 第34巻 第2号 2a
尺四年から九四年へかけて︑移転はプラス(籠低下)︑租税はマイナス(機能上昇)であるが︑租税のマイナス幅が大
きいので租税及び移転の再分配効果は高まっている﹂﹁再分配前と再分配後の指標を比較すると︑この一〇年間で租税
と移転の再分配の効果が高まっている﹂(以上︑三九頁)と本書が述べている▼﹂とは︑すでに先の三その他で紹介したと
おりである︒したがって︑わが国は︑国際的にみて﹁市場重視型改革の余地がある国(当面︑再分配政策はさほど重視し
なくてもよい?)﹂(先の三の注記の末尾)と.︑﹂日うのであろう︒
確かに・冗八四〜九四年の一〇年間に関するかぎり︑そしてまた}﹂の間の基礎デ←な・りびに﹁不平等尺度﹂を
承認する前提にたてば︑このような立論や評価も統計分析上成り立ちうるであろう︒
しかし・そうした立論や評価を下す際︑卜分に考慮に入れるべき事情や条件がある︒たとえば具体的な例を挙げれ
ば・e本書も注記で指摘していると雛︑税制抜本改革による税震造の大幅﹁簡素化﹂のため︑尺四年かり八九年
にかけては反対の動き﹂すなわち租税の﹁再分配効果を弱め﹂ている︒〇八四〜八九年はいわゆるバブル景気のピ;
クを含む時期であるのに対して︑八九〜九四年はその崩壊期であり︑したが・て}﹂の二つの五年間には︑とりわけ資
産所得とその税収面で極めて大きな落差がある︒口奎田ではでタの制約上︑考慮されえなか.たのは当然としても︑
九七年の地方消費税の導入を含む消費税率五%ア・プは︑その時点の前後の時期いかんで︑所得逆進性において相当
大きな差違がある・四移転に関しても︑とりわけ九〇年代後半に入.て︑医療費自己負担の引上げ︑介護保険の導入
による新規保険料の徴収︑公約年金の賃金スライド制の廃止(移転を広義に解すれば︑政府.日銀による国際的にも異常な
超低金利の継続による所得移転もある)に代表される移転の逆進性の強化︑等々がそれである︒
(注)﹁八四年から八九年にかけては反対の動きがみられた︒租税により低所得層にその負担を移し︑その再分配効果を弱めるり︑
ととなった・これは・所得税の累進性を緩和した八ヒ年九月と八八年三月の税制改革の結果を反映している︒例えば︑所得税
改革により︑七〇%(八三年は七五%⁝⁝引用者)から五〇%に引きドげられた﹂(三八頁)︒
析を通じてトレンドを析出し︑一定の立論ないし評価を下す場合︑その期間や比較
違が生じうるということである︒また︑ときによっては︑国民の生活実感や経済的
論を導き出しかねないということである︒
小限にとどめるためには︑少なくとも︑第一に景気循環の状況︑局面転換の具合か
時点の設定が︑近年のトレンドや現況(ここでのテーマでいえば︑とりわけ市場所得)を
分検討し︑考慮する必要がある︒とりわけ昨今の日本経済はそして国際的にも
長期不況を転機として︑敗戦直後に匹敵するといっても恐らく過言ではない︑激動
ると思われるだけに︑こうした配慮がきわあて重要であろう︒
間や比較時点の設定についての配慮が︑ある意味でよりいっそう重要なのが政策動
ていえば︑例えば可処分所得は︑税制や社会保障制度の有り様いかんで︑直接に政
のは︑その変動ー1政策的改正の幅や内容が相当に大きい場合である︒しかも
な改正とは異って︑特定の時期に︑またいわば不規則に実施されるといってよいか
らを対象期間内にどのように包含するかいなかで︑統計的結論に相当大きな差違が
礎的な材料﹂(五二頁)の提供を意図する本書が︑こうした観点を︑いまいっそう考慮
ォローした貴重な統計分析を継続されよう望みたい︒
(一九九八年九月一日)