慮 臓 Nu5 7 :9 9 ‑ 1 1 2 ( 平 成1 5年)
日 本人英 東 学習者 と 英語 時制 体系 習得 の 困難点 に つ t ) て
荻原 洋
(2 0 0 2年1 0月2 1日 受 理)
Japa n e s e E n
g l
ish ‑le a r n e r s a nd th
eird
i ff ic ultie s in ・a cq u l rl ng
the En glish te n s e syste m
H ir o shi
O G
I H A R AE‑m ail: ogi ha r a@edu.toya m a‑u.a cJ p.
′
K ey w o rds : English te n s e syste m , Japa n e s e te n s e syste m, pre s e nt pe rfe ct, s e c o nd langu age a cquisitio n
0
.は じ め に
日本人が英語を学ぶ際特に難しい と感じ るもの は たくさ ん あ る が, な ぜそ れ ら が難しい か に つい て はきち ん と説明が な さ れて い ない こ と が多い。
本小論は その中の 1 つで ある( 現 在) 完 了 形を取り 上 げ, いくつかの観点か ら その原 因の 一 端を探る
こと を目 的と して い る。
まず、 近 年 出 版さ れ た大きな 英 文 法書の いく っ
か に お け る時 制の 取 り 扱い を概 観 すること に よ っ
て 、 英語 時 制
鈴
の ポイ ン ト を整理し, それを基に日本 語の 時制との比較を 試み る。 さ ら に その上で、 日本の 英語教育に お け る時制(特に現 在 完 了 形) の
扱い 方か ら どの よう な問 題点が見え てくる か を論
じ ること に し たい。
I .
時制論
こ こ で取り 上げるのは, Celc e‑Mu r cia 良 La r s e n‑
Fr e e n a n(1 9 8 3) , I)e cle rk(1 9 9 1) 、 Hudd le sto n &
Pu1 1u 皿(2 0 0 2) の 3 つ の英 文 法 書の時制 論で あ る。
以後、 言 及 を簡単 に、する た め に そ れ ぞ れ を M & F (1 9 8 3) 、 D C K(1 9 9 1) 、 H& P(2 0 0 2) と表記 する。 M& F (198 3) は、 その副 題 "Am ES L/E F L Te a che r‑s Co u r s e"
が示す よ うに、 英 語を外 国語と して教え る教 師 用
に書か れ た もの で あり、 複 雑な言語 事象を で き る
だ け簡 単な基本的原BJ,r( 規 則)l で説 明し ようと して お り、 英 文 法の全体 像を理解する た めの最初の 一
歩と し て大変 役に立つもの で あ る。 D C K(1 9 9 1) は, 著者自 身が英語の母 国語 話者で ないた め、 そ れ が
幸い し て、 英語を母 国語と す る英文法家た ち が見 過 ご し て し まい がち な 点に まで思慮が行き 届い て
お り、 英 文 法を考え る上で参 考に な る点が多い。 特に時制 論に関する部分は充 実して おり、 時制の
問題が複雑で なお か つ非 常に興味深い分野であ る
こ と を感じ さ せ てく れるo H& P(2 0 0 2) は、 英文法
の金字塔の 1 つ で あ る Quirk,et al ∴(1 9 8 5) の後 推 書と言っ て良いもの であ る が、 理論 面ある
LV
、 は分 析方 法等に おいて そ れ と は かな り 異 なる アブt7 ‑ チ を採っ て おり, 言語 資料の信 頼 性や 豊富さ と共 に、 今後の英文法研 究の基 本的
参
考 文献の 1 つ にな る もの である。
1 . 1 . 時 制の意 味と 形 式
言語は, 意 味と そ れ を表す 形 式の 対
応
の集 合 体 と して 成り 立っ て い る。 時制に関し て言えば、 そ の意 味 (あ るい は働き) につい て は、 (I)に引 用す る よ う に ほぼ 一 定の合 意が得 ら れて い る。 ( 以 下, D CK(1 9 9 1) に つ い て は、 断 り が ない 限り そ の邦 訳‑ 99 ‑
書か ら引 用す る。)
(1) a .T he m e a ning of te n s e s e ntai ls a la ngu age‑
spe ci f ic w ay of de aling with t
.im e a nd
the r elatio n sh ip of e v e nts a nd inte rlo c u‑
to r s to tim e. (M & F, p.6 1)
b . 時 制 ( … 省略 … ) は言語 学上の概念 で あ り、 状 況を時 間 軸 上に位 置づ け る た め に
動詞の と る形を さ す。 (DC K, p.7 7)
c ・T he ge n e r al te r m te n s e ap pl ie s to a
syste 皿 Whe r e the ba sic o r cha r a cte ristic
Ⅲe a n l ng Of the te r m s is to lo c ate the situ atio n・ o r pa rt of it・
,
at s o m e point o r pe riod of tim e. (H& P, p.1 1 6)
し か し な がら、 こ の 「出 来 事や 状 況を時 間軸の 上に位 置づ け る」 とい う 基本的な働き につ い て は 合 意が あ っ て も、 具体的に その働きの中に どの よ
う な下 位 区 分を認め る か、 という 点に な る と文 法 家た ちの 意 見は分か れて く る。 そ して 、 その主な 理由は、 時 間 軸の設 定の仕 方にあ る と考え ら れ る。
あ る出 来事を時 間軸上に位 置づ ける場 合、 「何 年の何 月 何 日の何 時 何 分に」 というよ う に、 時亥]l を細かに 指 定す る ことに よ っ て そ れ を行うこと も 不 可 能で は ない が、 あ る基準時を設定し た上で そ れ との 時 間 的 ( 前 後) 関係に おい て 当 該の 出 来 事を 時 間 軸 上に位 置づ け る、 という 方が よ り 一 般的で あろ う。 こ の設 定さ れ る基 準 将に
けは 2
つ の種類が
あ り、 1 つは発 話 時、 も う 1 つ は、 そ れ以 外の基 準 時で あ る。 出来事 の起 こ る( 起 こ っ た) 時 刻を T E (tim e of e v e nt) 、 発話時を T S (tim e
.
of
spe e ch) 、 発 話 時 以 外 の基 準 時 を T 0 (tim e of
o rientat io n) と呼ぶ■
ことに す る と, 時 制の 意 味の
問 題とい うの は、 簡 単 に言え ば、 T E を T O や T S との関 連で どこ に位 置づ け る か とい う だ けの ことに な る。 し か し、 実 際に は‑ 時 制、 の問 題は非 常に複 雑な様 相を 呈 して い る。 その原 因は、 先に 述 べた よ うに、 時 間 軸の設 定の仕 方に奉る。 つま
り, 人 間は、 時 間を1 つ の大き な塊として 捉えて いるの で は な く、 過 去, 現 在、 未 来の よ う に、 い く つか
■
の よ り小さ な塊に 区 切っ て認 識して い るの で あ る。 そ して 、 問 題は、 人間の認 知 能 力の 問 題
と して 時を どの よ うに認 識し分け るこ と が でき る か で は な く、 実 際の 言 語 使 用の場 面に おい て 、 ど のよ う な時ゐ区
分
が利 用さ れて い る か、 とい うこ とであ る。 以 下、 先の 3 つ の文 法書の時 制 論を基に、 具体的に見て み ることに する。
I . 1 . 1 . M &F(1 9 8 3)
M& F(1 9 8 3) は、 Bul l(1 9 6 0) が提 案して い るス ペ イ ン語の時制を記 述 する枠組み を、 英 語の 時制の 記 述 に 応 用 し て い る。 こ の 枠 組み( 以 下Bul l
Fr a m e w o rk) の特徴は., まず 時を大 き く「退 去 時 ・ 現 在 時 ・ 未 来時」 に分け( 以 下、 大 区 分と呼ぶ) 、 さ ら に そ れ ぞ れ の 時 区 分の 中に 「基 本 前 時 ・ 基本 時 ・ 基本後 時」 とい う 下 位 区 分を設 け るこ とに あ るo これに よ り、 時は概
念
上 ( 意 味 上) 9 つ の領 域に 区 分さ れ る1 . こ の区 分は 一 見ご く自然な もの
に 見え る た め, M & F は、 こ の区 分は万 国 共 通で あ り、 あ と は個 別 言 語が そ れ ぞ れの 意 味 区 分に対し て どの よ う な言語形 式を用 意して い る か、 とV) う 問 題で あ る、 と し
.
て い る。 彼らに よ る と、 英 語は
(2)の よ う な形 式を用 意して い る とい う。
(2) Bull Fr a Ⅲe w o rk に英語の時制 形 式を当ては め た表 [基 本 前 時] [ 基本 時] [基本 後時]
【過 去
嘩
】 過 去 完 了形 単 純過 去形 (単純過 去形)【現 在 時】 現 在 完 了形 単純現 在 形 現 在 未来形
【未 来時】 未来完 了形 単純 未来形 ( 単純未来形)
単純未 来 形 と して wi l l/be going to、 現 在未来 形 (futdr e of the pr e s e nt) と してbe going toが、
そ れ ぞ れ挙 げら れて い る。 ま た、 過 去 時の基本 後 時と未来時の基本後 時は、 そ れ専 用の言語形 式を 持たず、 そ れ ぞ れの 時 間 領 域の基 本 時を表す言 語 形 式を兼 用す る、 と して い る。 (例 文に つ い て は M & F(p.6 7) を参照o) 従 っ て、 英 語の 時 制 体 系で は、
9 つ の意 味を 7 つの言 語 形 式で表現 仕 分けて い る ことに な る。
M.& Fに よ れ ば, こ の分 析の最 大の メ リ ットは 、
談 話を構 成す る各 文の 時 制の 選 択上 の 問 題を「極 めて簡 単 に」説 明で き ることにあ る。 例えば、 (3)
の 2 つ の例を比べてみ る。 (イ タ リ ック筆 者)
日本人英語 学 習者と英 語 時制 体 系習 得の困難 点につ いて
(3) a .*I ha v e a sp l it ting he ada che that I had fo r‑tw o ho u r s; I th)Ink I w l'l l take a
c o up le of a spl rin tab lets・
b .I ha v e a sp l it t ing he ada che that IIv e
had fo r 2 ho u r s. I th)
I
nk I a m go ) ng ro take a c o up le of a spl rin tab lets・
(3 .a) の イ タ リ ック体の 時 制が表す 時の 大 区 分 を見る と「現 在時一 過 去 時 一 現在 時 一 未 来時(現 在 時)」 となっ て おり、 これだ け時 間軸が移動する と、
状 況が大変 掴み にくい こと が分か る去 これ に対 し
て(3 .b) は、 全て 現 在 時に統 一 さ れ て おり、 (3 ・a) に比べ 状 況が頭の中に入っ て来やすい 。 従っ て、 (4) の ような 一 般 的 な 制 約が存 在する と考え ら れ る.
(4) 1 つ の ま と ま っ た談話に おい て は, 連続する
文の 時制が、 過 去 時 ・ 現在 時 ・ 未来時という時
の大 区 分の 間を、 自 由に移動 し て は な ら ない 。
(4)8ま か なり 大雑把な言い方で あり、 実 用 的に は もう 少し き
ち
ん と述べ る必 要がある。 また、 「自由に移 動して は ならない」 とい う表現は、 「あ る条 件が満た さ れ れば 移動は可 能で あ る」 とい う含み を持っ てい るo ( 条件につ い て は, M &F(p p.6 8̀‑6 9) を参照。)
最 初に述べ た ように、 M & F(1 9 8 3) は英語教師用 に書か れ た もので あ り、 し かも 英文法の基本的な
部分をで き る だけ簡 単な( 一 般 的 な) 原 則で理解さ せ るこ と を主 眼と して い る。 日本人 英語学 習者の 書い た英文を母 国語話者に添 肖lT し ても ら う時頻 繁
に訂 正さ れ るもの の 中に、 「主語の揺れ(主題の不 統 一 性)」 と共に「時 制の 揺れ」が あ る とい う実 状 ( 日本の あ る国 立 大学で英作 文の 授 業を担当して
い る 2 人の英語母 国語 話 者に聞い た話に よ る と、
主語の揺れ も時 制の揺れ も話が あっ ち こ っ ち に飛 ぶの で読んで いて 頭が グ ラ グラす る、 とい うこ と で あ っ た) を考え る と、 時制を教え る際に は、 (2)
の ように 時 制の体 系を分か り や す く示 し た 上 で、
「同じ時の 大 区 分の 中で な ら基 本 前 時 ・ 基本時 ・ 基本 後時の 間を行 っ た り来た り す るこ と は構わ な い が, 時の大 区 分の間を移 動す る と き は、 そ れ が 分か る よ うに き ち ん と. 示さ な け ればい け なv、 ん だ
よ」 というよう な説明を加え る こと が、 学 者 者の
痩
解を大 き く助ける ように思 わ れる。し か し、 時 制 体 系を理解する た めの最 初の 一 歩
と して はこれで も十 分で あ る が、 英 語の 時 制 体 系 は実際はこれ以 上に複 雑な様相を呈し てい る。 こ の 一 番 簡 単な原則で 8.ま説明しきれ ない 現 象が たく
さ んある。
1 . 1 . 2 . D CK(19 9 1)
D CK(1 9 9 1) の時制 論の 特徴は, 時の区 分の 仕方 にある。 そ れ は、 まず時を大 き く 過 去時領域と現 在 時 領 域に分け る。 過 去 時領 域は「完 全 に発話時 以 前」 であ り、 現在 時領 域は「発話時を含む時 間領 域」 と定義さ れ る。 こ の うち、 現在時領 域は さら
に現 在前時 ・ 現在時 ・ 現 在 後 時の 3 つ の時 間領域
に下位区分 きれ る。 これ を, 過 去・ 現在・ 未 来と
いう 時間領域の 区分と比べて み る と、 現 在前 時の
扱いが特徴的で あ るこ と が分か る。
(4) 時の 区 分の比 較 ( 概略 図, 下が D CKの 区分)
過 去 時 現 在 時 未来時
退 去 時 現 在 前 時 現 在時 現 在後時
過 去 時領域 現 在 時 領域
D C Kの 言 う 現 在後時は未来 時と ほぼ 同じ なの で、
現在 ・. 過去 ・ 未 来と時 空間を 3 分 する考え方と比
べ
、 現 在前時だ け が新たに独 立の地位を与え ら れ
て い る。 これ は、 発話 時以 前に生じ た状況を過 去 のもの と捉え る場 合と現 在の もの と
捉
え る場 合があ っ て 、 そ れ が大き な意 味を持つ とい うこと を示 して い る とも 言え る。 そ し て、 こ の ように時間領 域を区 分 する根拠は ほぼ 次の 一 点に絞ら れ る と思
わ れ る。 すなわ ち、
(5) 4 つ の 時 間 領 域の そ れ ぞ れ に お いて , 出来 事 ( 状 況) を基 準 時に結 びつけ る た めの その領 域 独
自の シ ス テム が存 在す る。
出 来 事 ( 状 況) を基 準 時に結 びつけ る とい う こと は, その出 来 事の 生 じ た時と基 準 時の 間の 時 間 的
‑ 10 1 ‑
前 後 関 係を示す こ とで あ り、 具 体 的に は「基 準 時 に先 行す る( 先 行性)」 「
基 準 時と同 時で ある(同 時 性)」 「基 準 時に後行 する(後行 性)」の 3 種類の 指定
の仕 方が あ る。 つ まり、 退 去 時 ・ 現 在 前 時 ・ 現 在 時 ・ 現 在後時の そ れ ぞ れの時間 領 域に おい て、 こ の 3 種 類の時間的 前 後関係の指定の 仕方に、 領 域 独自のやり 方が見ら れ る、 というこ と に な・る。
D CK に よ れば、 特別 な 場 合を除 き、 全て の発話
は、 そ れ が どの 時間領域に属 する状 況を述べ た も のか を、 示し てい な けれ ばな ら ない 。 そ して そ れ は、
「基 準 時」 の中で も た だ 1 つ 絶対 的 基 準と して
指定し得る「発話時」 との関 連に おい て指定さ れ る こと が でき る。 こ のように、 他の状 況に関係な く、
直接的に あ る状 況や場面を発 話 時に結 びつ け る働 きを持つ時 制を「絶対 時 制」と呼んで い る。 絶対 時 制に よ っ て示さ れ た時 点は, そ れ ぞ れの時 間 領 域 に お け る基 準 時となる。 そ して、 その新た に設け ら れ た基 準 時との 関 係に おい て別の状 況が時 間軸 上に位 置づ け ら れ る。 こ の働き を持つ時制が「相 対 時制」 と呼 ばれ る。 (6)は そ れ ぞ れの時 間領域に お け る絶対 時制と相 対 時制を ま と め た もの である。
(な お、 発 話 時を基 準に して規 定さ れ た 4 つ の 時
廟
領 域は「絶対 的 時 間 区 分」 と呼 ばれて い る。 そ れ ぞ れの 具 体 例に つ い て は、 D CK を参照。)(6) 時 間 領 域 毎の絶対 時制と相対 時制
【絶対時制] 【相 対時制]
(先行性) (同時性) (後 行性)
【過 去 時】 過去形 過 去完了形 過去形 条件 時制
【現在前岡 現在完 了形 ★ ★ ★
【現 在 時】 現在形
過 去形、
現在 完了形
現 在形 未来 形
【現在後時】 未来形 ★ ・ ★ ★ ̀
M & Fで も そうで あっ た が、 表中に r未 来 形」 とい
う時 制 形 式が登 場して い る。
「英 語に は現 在 と過
去とい う 2 種 類の 時制し か ない」 とい う主 張があ る が、 これ はr動 詞が その形 態 ( 語 尾 変 化) に よ っ
て 区 別す る時 制は 2 つ し か ない 」 とい う 理由に よ る。 し か し、 時 制の働 き を考え た と き、 その範 囲 を形 態 論 的 区 別に基づ く もの に 限ら な け れ ば な ら なv) 先 験 的な 理由は ない . (D C K, p.7 8) (な お、 完 了 形 の問 題に つ い て は次のH & Pの と こ ろで触れ
る。)
表中に★ 印がつ い て い る箇所は、 複 雑な体系に な っ て い る た め、 表に 入りき ら ない ところで あ る。
以 下は DGKの説 明の要約セあ る。
【現 在 前 時】 に つ い て言えば、 その時間領域を 指 定 する現 在 完 了 形が表す 状 況は大き く分けて 2
つ あ る。 1 つ は「過 去に始まり 現 在まで継 続して い る場面」 で あ り、 も う1 つ は「過 去のある時 点か ら 現 在まで の 間に少な く と も 一 度は生 じ た場面」 である。 前 者を「継続完 了」、 後者を「不 定 完 了」 と 呼ぶ. ( 現 在 完 了で「結果」 の読み と言わ れて V、 る もの は「話 し手は主と して‑
(今) を問 題 に して い る」 とい う不 定 完 了の含 意に過 ぎない。(p.14 0)) そ して 、 ど ち らの「完 了」 か に よ っ て、 相 対 時制の シ ス テム は違 っ た もの と な る。
不 定 完 了の場 合か ら見る と、 通 例、 不 定 完 了が 使わ れ るの は、 過 去の あ る場面を、 現 在と関連 す る もの と して、 初めて 談
蒔
に導入 す る場 合であ る。つ ま り、 【現 在 前 時】 と いう 時 間 領 域を指 定 する た め だ け に用い ら れ る。 そ して ∴ひ と たび 時 間 領 域が定め ら れ る と、 その後, 導入 し た場面に新た に情 報を付け加え る た め に は、 場面その もの に関 心が移る た め(これ を「時 間 的 視 点の転 換」 と言 う)、
過 去の状 況を述べる た めのシス テム に乗り換え る。
すな わ ち、 表(6)の 【過 去 時】 の [相 対 時制] の と
ころ に あ るシ ステムが用いられ る。 (7)は その 具 体 例であり、 典 型 的な不 定 完 了の用 法を示して い る。
(7) + a .so m e id iot ha s put die s el in the t an k in ste ad of petr ol. W hich of yo u d]
.
d that? ‑ I di d.
b ・I ha v e tr ]
'
ed u s l ng that k ind of dete rge nt,
but t he re s ul t w a s n ot s at is‑fa cto ry・ c ・Ha v e yo u e v e r c o n s )
'
de r ed gr o w i ng r o s e s tbe r e? ‑ Ye s, I ha v e. But Ⅲy wi fe
de c )
'
ded aga i n st it.
一 方、 継 続 完 了で は、 卓れ が表す場 面が発 話 時 を含む た め、 その後に述 べ ら れ る全て の状 況が、 発 話 時との関 係で示さ れ るこ と が可 能に な る。 発 話 時との関 係で示さ れ る と言う こと は、 絶 対 時 制
の働き その もの で あ る か ら、 結 局の と ころ、 継 続
日本 人 英語 学 習者と英 語 時制 体 系習 得の困難 点につ いて
完了に よ っ て定められ た 【現 在前 時】 という時 間 領 域の中で は、 相 対 時制の特 別なシ■
ス テ ム は存 在
せず, 4 つの絶対時 制に より、 新しい場面が導入 さ れて い く ことに な る。.(8)が その例で あ る。
(8) a .He ha s alw ays m aintain ed that he do e s n
'
t l)
.
ke m u shr o o m s.
b .T he she rif f ha s kn o w n fo r s o m e tim e that B i g John ha s be e n in to w n.
c .I ha v e kn o w n fo r s o m e tim e that it w a s n ot B il l who stole the m o n ey.
d .I ha v e kn o w n sin c e la st w e ek that J im
ha s pa s s ed all his e x a m s.
e .Ev e r sin c e th is m o r n l ng he ha s r epe ated
∈ that he. w )
'
l l c o mp la
,1n to the m a n age r・
つ まり、 同 時 的な場面は現 在 形(aほ た は現 在 完 了 形 (継 続 完了)(b)で、 先行 する場面は過 去 形(c)ま た は現在完 了形 ( 不 定 完 了)(d)で、 後行 する場面は 未 来形(e)で、 そ れ ぞ れ表さ れ るの で あ る。
で は 【現 在 後 時】 に つい て は どうで あ ろうか。
あ る状 況 を 【現在 後 時】領 域に属する別の状 況に 関係づ け ようと す る場 合、 通常、 時間的 視 点が移 動し、 【現 在後時】領域の基 準時があた か も発話 時であ る かの ように振る舞う。 とい うこと は、 新 た に そ こ か ら 4 つの 絶対 的時 間区 分が指定さ れ ((6)の絶対時 制の働き)、 さ ら に そ れ ぞ れの時 間 領 域
内
で状 況間の 時 間 的関 係が示さ れ る((6)の相 対 時制の働き) こと に な る。 つ まり、 【現在 後 時】領域 内で生 じ る状 況が 、 【現 在 後 時】 の基準時 (新しい発 話 時) に先 行す る場 合は 【過 去 時】領 域 か 【現 在前時】領域の 時制シ ス テムで、 同 時 的な 場合は 【現 在 時】 領域の 時制シ ス テムで, 後 行す る場合は 【現 在 後 時】領 域の 時制シ ステム で、 そ れ ぞ れが述べられ ること になるの である。 (9)にい
くつ か 例を示す。
(9) a .T he polic e wil l bel ie v e tha t he w a s
k)
'
lled to night.
b .Ⅵ1 0 Wil l lo ok afte r yo u whe n Br ad a nd Syb il ha v e Left?
c .If the w e athe r is fin e, fathe r wil l s ay
that it ]
'
s tim e fo r a pi c nic.
d .He wil l s w e a r that he w L
'
l l n e v e r tel l he r the ug ly tr uth .
(9. a) はこれ か ら誰か を殺そうと して い る とき
の発話で あ り、 補 文で述べ ら れて い る状 況が未 来
の あ る時点( 時 間 的視点の移動の 結果 出来た新し い発話時) から 見る と過 去の 出来 事に な るの で 、 過 去 形が用い ら れ てい るの である. 同様に, (9
.1.b)
の補 文の内容は未 来の あ る時点か ら見た 【現在前 時】 に属する もの で あり, (9 .c) の 補 文の 内 容は
【現在 時】 , (9.d) の補 文の内容は 【現 在後時】
に そ れぞれ属 するものなので あ る。
先に 述べ た ように、 DC K は時制に関す る現象を 非常に丁寧に し か も論理 的に分析し て おり、 それ が時 間 領 域 区 分に おい て 【現 在前時】 を独 立さ せ る論拠に な っ て 小 る. こ の こと は、 人間が論理 的 な 思考に より時間という もの を どのように区分し
て認識し得る か という問 題と, 実 際の 社会 生 活に おい て は どの ような時 間の 区 分が必 要かつ 有 益で あ る か とい う問題と は、 別の次 元の
.問題で あ るこ と を示 唆し て い る。 確か に, 既に生 じ た状 況が、
「今」 と全く関 係の ない過 去の こと なの か、
「今」 と 深く関わりを‑持つ依 然 と し て重要なこ と
,なのか、 とい う問 題は、 人 間 生 活に おい てか なり 重要なこ とで あろ う。 その意味で は, D CKの 時間 領 域の 区 分は かな り説 得力を持つと思わ れ る。
1 . 1 . 3 . H 良P(2 0 0 2)
H & P(2 0 0 2) の 時 制 論の 特 徴は、 時制を 一 次 的 (prim a ry) な もの と二 次 的 (s e c o nda ry) な も の に分
け ること に あ るo
一 次 的なもの は、 動詞の屈 折語
尾に よっ て表さ れ るもの で あり、 英語に は「現 在」
と「過 去(pr ete rite)」 の 2 種類 し か ない と言 う。
これ に対し て、 二次 的なもの は、 助動 詞ha v eを 用
い た分 析 的 (a n aly tic al) な も の で 、
「完 了」 と「未 完 了」 が あ る と言う。
時制をこ の よ う に 2 種 類に分け る主な理由は次
の通 り で あ る. (H 良P. p.1 5 9) まず、 時制の役 割 は基 準 時との関係におい て 出 来 事 時を時 間 軸上に 位 置づ け る ことで あ り、 その意 味で は本 来車示 的 (deictic) な もの で あ る が、 動 詞の 屈 折 語 尾が示
ー 1 03 ‑
す現 在と過 去は明ら か に直 示 的で あっ て時 制 本 来
の役 割に合 致して い る と言え るの に対 し、 完 了形 が示 す 時 点は「他の時 点との相 対 的な時 間関 係」 に 基づくもの で あり、 直示 的と は言い難い。
さ らに、
一 次 的 時 制は、 二次 的 時 制に比べ て よ り 深く文 法の中に組み込ま れて(h i gh l y gr a m 皿ati‑
c al is ed) い る。 具体的に は、 まず第1
.
に、
一 次 的
時制は屈折という 形で動 詞に しっ かり 結 びつ け ら れ
て
い るの に対し、 二次 的 時 制は文法 形 態素の付加という 比較的ゆ る や かな 形 式に よっ て作られる。
第2 に、
一 次 的 時制は現 在と過 去というはっ き り し た対立 を含む が、 二次 的時制 に は そ れ がない 。
完 了を示す特別な形は あ る が、 未 完 了を示す そ れ は ない 。 第3 に、
一 次 的 時制は本来の意
味
以 外の 意味で使わ れ るこ と が あ る( 例えば、 過 去 形が蓋 然 性の低 さ(m odal r e m ote n e s s) を表すの に 用い ら れ た り、 時制の 一 致 (ba ckshi ft) で 用い ら れ た り す る こと) の に対し、 完了 形は、 た っ た 1 つ の用 法し か持た ない 。以 上の理 由か ら丁 完 了 形は 一 次 的 時制と は別の 種 類の時制で あ る と見な さ れ、 その働き は、
「 ‑
より 前に」 とvゝう 意味の 「過 去」 を表すもの と さ れ て い る。 従 っ て 、 「過 去」 を表す 時 制と して は, 一 次 的 時制の 過 去(pr ete rite) と二次 的 時制の 完 了 (pe rfe ct) の 2 種 類が あ る こと に な る。
完 了 形は、
一 次 的 時制と二次 的 時制が組み合わ せ ら れ た複 合 時 制 (c o mpo u nd te n s e) で あ り、 現 在 完 了 形は現 在 ( 助 動 詞ha v e の現 在 形) と過 去 (「ha v e
+ 過 去 分 詞」 に よ っ て示さ れ る過 去) の組み合わ せ、 過 去 完 了 形は過 去 ( 助 動 詞ha v e の過 去 形) と過 去
(「ha v e + 過 去 分 詞」 に よ っ て 示さ れ る過 去) の組み
合わ せ(い わ ゆ る「二重 過 去」) とい うこと に な る。 未 来 時 制に つ いて は、 これ を認め ず、 未 来を表 現す る方 法に はい ろい ろ な もの が あ る、 とい う言
u 方を して い るo そ して 、 助 動 詞will が未 来 時を 表す時 制 形 式で あ る とい う主 菜に対 して は, 助 動 詞w o ul d はwill の過 去 形で あ るこ と( 従 っ て、 will を未 来 時 制と して認め て し ま う と「未 来 時 制の 過 去 形」 と いう不 合理 な もの の 存 在を認め る こ とに な っ て し ま う こと) 、 wi‑1 1 は文 法 的に も意 味 的に
'
もc a n, m ay、m u st のよ う な法 助 動 詞と同じ範 時に属 す る こと、 等を 理 由に反 論して い る。
未 来 時 制に つ い て は、 こ のよ う な考え方も あ る と は思わ れ る が、 はっ き り時制要 素と して 認めて
い る完 了 形が、 いわ ゆ る未 来 完 了とい う形で 、 彼 ら が時制に よ る もの で は ない と主張す る「未 来の
表現」 の 中に存 在 するこ と に対 して 、 合 理 的な説 明が な さ れ な け ればな ら ない、 とい う問題が残る。
1 . 2 . 英語 時制
夢
の整 理以 上, 3 つ の時制 論の概略を見て き た が、 時 制 論を整 理 する際の ポイ ン ト は次の 2 点に あ る と考
え る。 1 つ ば、 未 来 時制を どう考え る か、 とい う 問題で あり、・ もう1 つは、 完 了形を どう考え る か、
とい う 問 題で あ る去 時制その もの の 意 味 (機能) に
つ い て は はぼ 共 通の認識があ り, 時 間 領 域の 区 分 につ い て は完了 形の問題が 深 く関わ っ て い る。
未来時制を認め る か ど う かに つ い ては、 既にDC K の時制論の ところで述べた ように、 時制形 式を屈 折 形に限ら
'
な け ればな ら ない理 由は ない。. 未来時 制を認め な いH& Pで さ え、 屈 折 形 以 外の分析的な 時制形 式を認めて い る。 た と え未来時制を認め な く て も、 実 際問題と して 、 未来の 出来事を表現す る文 法シ ス テム を記 述す ること が可 能で あり、 そ うい っ た意 味か らも、 未 来時 制を認め るこ とに問 題は ない よ う に思わ れ る。 要は、 そ れ ぞ れの 時 間 領 域 毎に、 そ れ用の時 制 形 式 群が用 意さ れて い る か どうかであ り、 英 語の場 合、 未 来時 領域に も そ れ は用 意さ れて い る と言え る。 (H& Pの場 合、 未 来 完 了 形の 問 題が あ るこ と は先に述 べた。)
完 了 形に つ い て は、 そ れ が時制形 式で あ る とい う 点で は、 共 通の認 識が あ る。 そ して、 現 在 完 了 形の意 味も基本的に は 3 つの時制 論で
同
じで あ る。つ まり、 現 在 完 了 形は「発 話 時を基 準 時と し、 そ れ 以前に 出 来 事 時を位 置 づけ る」役 割を持つ。 違 うの は、 その意 味の r確 保の仕 方」 で あ り、.H & P は 発 話 時と の関連 をha v eの 現 在 形 に求め、 DC K は独 自の時 制 体 系の 存 在を論 拠に( 発 話 時と直 接関連 づ け ら れ る) 絶 対 時 制とい う形に求め る。
従っ て1 3 つ の時 制 論に つ いて は、 本 質 的な相 違はない と考えて 良い と 思 わ れ る。 た だ し、 既に
述べ た よ うに、 実 際の社 会 生 活に お.い て 多
分
重 要 かつ 有 益で あ ろ う と思わ れ る「今に 関わ る過 去の出 来 事が存 在す る時 間 領 域」 を別 個に設 定す るDC耳