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中国農村集団所有土地の権利主体に関する研究

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早稲田大学博士論文概要書

中国農村集団所有土地の権利主体に関する研究

早稲田大学法学研究科

肖 ハン 晴

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博士論文概要書

中国農村集団所有土地の権利主体に関する研究

一 問題意識

中国の土地所有制度は国家所有と集団所有の二重構造になっている。土地所有権は多く の場合、法律だけでなく、政策によって調整されている。このような背景をもとに、政策 は集団土地所有権を調整する重要な役割を果たしている。しかし一方で、集団土地所有権 管理の混乱を引き起こす側面もある。国家権力の不当な干渉を原因として多くの問題を引 き起こされるのである。土地所有権は私権に属し、主に民事の法律によって調整されるべ きだが、政策から過多に干渉され、その私権の属性が弱くなる。実際、現行の集団土地所 有制により、農民が都市部への移住などにより農村の戸籍を失うと、農地に対する権利も 消滅する。なお、現在、農村の多くの労働者は都市部に出稼ぎに行っているが、現行の農 村土地制度により、請負経営地の処分について様々な制限を受けている。そのために、農 村において利用されずに放置されている土地が多くなり、農村経済の発展が妨げられてい る。また、最新の動向から見ると、農村土地制度の改革が徐々に全国的に展開していく可 能性がある。現実においては、集団所有という原則を尊重しながら、農地の効率的な利用 を目指し、各地方では農地の流動化を通じて、土地の効率的利用の試みも続出している。

その結果、中国各地で大規模な土地流動化が生じる可能性が高くなっている。

ところで、土地の流動化の過程で農民個人の権利を保護するために最も重要なことは、

集団所有土地をめぐる各権利義務関係及び農民個人の権利を明確にすることである。農民 は農民集団において二つの身分を有し、それは農民集団の構成員と請負経営戸の構成員で ある。これらの身分はそれぞれ集団土地所有権と集団土地使用権に関わっている。農民は、

これらの身分に基づきどのような権利義務を有するのかを検討することが本研究の中心課 題である。この課題を解決することができれば、集団所有土地をめぐる各権利義務関係が

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明確にされ、権利主体の虚位という問題が解決できる。そして、本研究では、法律の規定、

学界の議論などに基づき、具体的に以下の四つの問題を検討する必要がある。

一つ目は、農民は農民集団の構成員としてどのような権利義務を有するかという問題で ある。具体的には、以下の問題を明確にしなければならない。すなわち、農民集団は何を 指すのか(集団土地所有権の帰属主体と其の態様)、集団構成員の資格はどのような条件が 必要か(資格要件)、また集団構成員の権利はどのように行使されるか(権利の行使)などの 問題である。中国憲法第 8 条、民法通則第 74 条および物権法第 59 条の規定によれば、集 団所有権とは、労働大衆の集団組織または農民集団が持つ権利である。これは多くの法学 著書の一般的な解釈でもある。しかし、労働大衆の集団組織または農民集団とは、いった い誰であるのか、その法律形態はどのようなものであるのかの問題について、法律上およ び政策上においては明確な規定がない。そこで、本研究では、法律上の規定と学界の議論 に基づき、中国の集団土地所有権の主体、構成員の資格、権利の行使などを考察する。

二つ目は、土地請負経営権の主体は一体何であるか、農民集団の構成員は土地請負経営 戸においてどのような権利義務を有するかという問題である。現行法律では、土地請負経 営権の権利主体についての規定が一致していない。また、学界においても、様々な議論が ある。法律上、土地請負経営戸の事務の決定・運営についても明確な規定がない。実際に は、戸主は戸の名義で対外的な経済活動を行うことが多い。例えば、土地請負契約を結び、

土地請負経営権を流動する時、戸主のみが契約書に署名する。このように、対外関係にお いて、戸主は実際に戸の代表者となる。しかし、戸主の権限について、法律上での明確な 規定はない。それゆえ、現実においては、多くの紛争が生じ、中国の学界では、土地請負 経営権の主体、土地請負経営戸の法的地位、戸主の権利などについて様々な議論が存在し ている。農民の利益を保護し、紛争を減らすために、農民集団の構成員は土地請負経営戸 においてどのような権利義務を有するかについて明確にする必要がある。

三つ目は、中国集団土地所有権に総有理論を適用するべきかという問題である。民法は 単独所有を原則とするが、一つの物に対し複数人が所有することも多い。伝統民法上では、

複数人所有の形態は共有、合有、総有の三種類がある。しかし、中国物権法では、持分共 有(共有)と共同共有(合有)の二種類しか規定されていない。この二種類の共有のいず れにも、構成員の変動などの原因で、集団土地所有権の頻繁な変動が引き起こされ、集団 土地所有権が個人私有権に変更される可能性がある。そのため、中国集団土地所有権の法 的性質について学界では様々な議論があるが、民法上の共有でも、合有でもないことにつ いては異論がない。学界の議論は主に総有説に集中しており、総有説または新型総有説は

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有力であるが、集団土地所有権に総有を適用することについては疑問視されている。

総有は、沿革的にはゲルマンの村落共同体における所有に由来するものである。日本で は、総有という性質を持っている権利は存在している。すなわち、長い歴史がある入会権 である。日本の学界では入会権の性質を解釈するために、ゲルマン法における総有理論を 援用し、詳しく研究なされている。これに対して、中国の学界において、集団土地所有権 の性質が総有であるという学説は有力説として存在してはいるが(梁・2000 年、渠・2004 年、孟・2006 年、韓・2000 年、李・2010 年)、総有についての詳しい研究が欠如している。

本研究では、日中比較の視点から、中国の学界における総有説を再検討し、集団土地所有 権に総有理論を適用するべきか否かを検討する。

四つ目は、中国集団土地所有権は総有理論を適用するべきではないとした場合、どのよ うに解釈されるべきかという問題である。既述したように、集団土地所有権の法的性質は 中国民法上の二種類の共有形態ではない。そしてなおかつ、中国集団土地所有権は総有理 論をも適用しないとした場合、共同共有いずれの三つの形態にも属さない。民法上の民事 権利主体により、農民集団の法律形態を明確できないと、集団所有土地にめぐる各権利義 務が明らかにできず、国家権力の干渉を減らして、集団土地所有権の完全な私権化も実現 できない。従って、農民集団の法的形態を明確にすることが重要である。なお、民法上の 民事権利主体には、法人、自然人および非法人団体の三種類が認められているが、集団所 有権の主体である労働大衆の集団組織または農民集団は、明らかに自然人ではない。それ では、法人か非法人団体であるか、それとも両者に属しないのかは学界で様々な議論があ る。また、法人の設立については法人法定主義がとられている。つまり、法律上の根拠が なければ、法人化できない。本研究では、農民集団の法人化について法律上の規定がない 段階で、将来的に農民集団の法人化という法制度設計が可能であるかどうか、可能であれ ば、具体的にどのように設計するべきかを検討する。

二 本研究の位置づけ

全体から見ると、中国の学界では、集団土地所有権に関する研究は多くの場合、依然と して立法論にとどまっている。例えば、多くの研究はただ法律規定の不足を指摘し、法律 条文の修正について自分の意見を述べているにすぎない。実証の視点(歴史的、社会的、

比較的な角度など) からの研究は少ない。例えば、農村集団土地所有権の性質について、

総有説または新型総有説が有力であるが、総有の基盤である村落共同体に関する研究が少

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ない。総有権は村落共同体の慣習を反映したものであるため、総有権であるかどうかを検 討する前に、村落共同体について詳しく研究する必要がある。つまり、集団土地所有権は 総有であるかどうかを検討する前に、農村社会が村落共同体の性質を持っているかどうか を明確にしなければならない。中国村落の沿革及びその共同体の性格の有無についての検 討は不可欠である。

また、集団土地の所有権だけではなく、集団土地の請負経営権について様々な議論もあ るが、土地請負経営戸の権利義務帰属、戸主の権限などについて言及する研究は少ない。

また、集団土地請負経営権については、権利の主体、その主体の法的地位、戸主の権限、

土地請負経営戸の権利義務帰属などについて、不明確なところが多い。中国の学界では、

多くの著書、論文などは土地請負経営権の主体とその性質などに注目している。ただし、

土地請負経営戸の権利義務帰属、戸主の権限などについて言及する研究は少ない。

上記のような先行研究に鑑み、本研究では、実証の視点から農村集団所有土地の権利主 体について考察する。ただの立法論ではなく、法政策学を参考にし、具体的な法制度設計 を求める。本研究の流れは以下である。まず、農民集団の歴史的な沿革を考察する。次に、

入会権と比較し、その角度から、農民は集団の構成員としてどのような権利義務を有する かについて考察する。さらに、農民は土地請負経営戸の構成員としてどのような権利義務 があるかについて考察する。最後に、以上の考察に基づき、集団土地所有権にはそして「何 が問題なのか、何を問題とするべきか」を明らかにし、その原因を検討した上で、学界の議 論に基づき、集団土地所有権にとって、最も適切な制度設計を求める。

三 本論文の構成

第一章では、日本の村落共同体と中国農村集団について、それぞれの沿革・研究・現状 を考察した上で、日中両国の村落共同体を詳しく比較した。最初に、徳川・明治時代から の日本の村落共同体の沿革、学界の議論、入会権の成立及び村落共同体の現状について考 察した。次に、1940 年代の日本満州鉄道株式会社の「中国農村慣行調査」と 1950 年代の中 国土地改革委員会の「農村調査」に基づき、中国建国前後の農村社会の沿革、その村落共 同体の性格に対する学界の議論、集団土地所有権の成立、建国後の農村社会の変革につい て考察した。本章の考察により、中国の村落が日本の村落共同体と異なるところは以下の ように総括できる。日本の村落共同体と比べて、中国の村落が持っている共有財産は少な いが、村落の境界が不明確であり、村落の共同行事が少ない。また、中国現行の農民集団

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は比較的に強い行政機能を持っている。日本の入会権と比べて、中国の集団土地所有権は 国家権力の直接的な干渉によって形成してきたものであると言える。

また、中国の農村社会は村落共同体の性質を持っていないことを論証した。中国の学界 では中国の村落は共同体の性質があるかどうかについて、「官制共同体」、「政治共同体」、「関 係共同体」、「共同価値形態に基づく文化共同体」などのような様々の概念が提出されたが、

いずれも通説として認められていない。多数の学者が指摘したように、中国においては、

合作社化、公社化の過程で、一時的に形式的な共同体が形成されたが、それは政治手段を 使って、人為的に作った共同体と言える。共同体の固有の慣習も存在しない。従って、従 来から村落の支配者は村落への責任意識が弱いのである。現在でも、村落の支配者は村落 の代表的指導者であるという意識が乏しい。村民の自治意識も欠如するため、道路の修理、

水利灌漑などの施設は村全体の仕事となることは少ない。建国前、中国でも総有と類似す る形態が一時期存在し、例えば、祠堂、学田などのような宗族共有財産に対して、宗族構 成員間の関係は総有である 。しかし、全体から見れば、中国の農村社会は村落共同体の性 質を持っていない。つまり、中国の農村社会には総有権が存在する基盤が存在していない と言える。

第二章では、中国の集団土地所有権と日本の入会権を比較し、両者の差異をまとめた。

本章では二つの目的がある。一つは、農民が集団の構成員としてどのような権利義務を有 するかという問題を明確にすることである。二つは、集団土地所有権に総有を適用できる か否かという問題を念頭において、日本の「共有の性質を有する入会権」と比較し、両者 の相違点をまとめ、第四章で集団土地所有権に総有を適用できるかどうかを検討するため の根拠を提供することである。以上の二つの目的を実現するために、本章では、入会権と 集団土地所有権について、次の三つの問を設定し、それぞれ中国の集団土地所有権と日本 の入会権を考察し、両者の差異をまとめた。すなわち、(ア) 集団は何を指すか(権利の 帰属主体と其の態様)、(イ) 集団構成員の資格はどのような条件が必要か(資格要件)、(ウ)

集団構成員の権利はどのように行使されるか(権利の行使)などの問である。本章の考察 により、集団土地所有権にいて以下の問題があることを明らかにした。つまり、集団土地 所有権の権利主体について、法律上の規定が一致していない。集団土地使用権の主体も明 確にされておらず、様々な議論が存在している。また、集団所有権の行使は国家の公権力 の過度なコントロールを受け、政府が農村集団所有土地に対する徴収と徴用及び管制の権 利を行使していることとなる。さらに、農村集団構成員の資格の取得は戸籍を基準として いる。この制度は人口があまり流動しない時代には問題がないが、経済の発展につれて、

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人口流動が増加した場合には、農村経済の発展及び農民生活の改善を妨げることとなった。

集団土地所有権は入会権と比べて、自主性と自治性を備えず、不完全な所有権である。

日本では、入会地については、その管理はほぼ各地の慣習により行われ、国家権力の干渉 が少ない。これに対して、集団所有土地の管理については、様々な法律と政策があり、国 家権力の干渉が多い。特に、中国の集団土地所有権は政策によって、規制される場合が多 く、農村集団土地所有権は決して商品経済が自然的に発展する結果でなく、政治運動の産 物であって、農村集団土地所有権は伝統的民法理論に一致していない。要するに、集団土 地所有権は民事上の権利として、如何に公権力の干渉を減少し、私権の方向に向かせるか が集団土地所有権に関する研究の重要な課題である。

第三章では、中国の集団所有土地利用の内容とその法的関係を考察し、農民は土地請負 経営戸の構成員としてどのような権利義務を有するかという問題を検討した。まず、集団 所有土地の利用に関しては、土地請負経営権の設立とその内容、学界の議論、請負経営土 地の調整などについて考察し、またそれらに関する法的関係については、土地請負経営権 の主体、土地請負経営戸の法的地位、戸主の権限、戸の内部関係などを考察した。なお、

本章の考察に基づき、以下の四つのことを論証した。一つ目は、土地請負経営権の主体は 農戸であること。二つ目は、農戸は非法人団体に帰属するべきであること。三つ目は、戸 主が戸の代表であること。四つ目は、土地請負経営戸の権利義務帰属は中国法と日本法の 共 有 理論 によ って も説明 で きず 、む しろ 英国法 に おけ る合 有不 動産保 有 関係 (Joint Tenancy)と類似するところがある。また、土地請負経営権の権利主体を入会地の使用収益 権の権利主体と比較した。

本章の考察により、土地請負経営権は政策により規範化され、次第に立法により具体化 され、学説の解釈によって厳密化が図られていることが分かった。本章の結論をまとめる と、以下の四点が挙げられる。第一に、中国農民集団所有土地の請負経営権者は、当該集 団経済組織内の家庭でもなく、構成員個人でもなく、当該集団経済組織内の農戸であるこ とを論証した。第二に、土地請負経営戸の法的地位については、諸学説中において、非法 人説が最も妥当であることが分かった。詳細に言うと、非法人団体の中の権利能力なき社 団に属する。ただし、その構成員が一人しかいない場合、自然人とみなすことが妥当であ る。第三に、土地請負経営戸の権利義務の帰属は中国法と日本法の共有理論によっては解 釈できず、英国法における合有不動産保有関係により説明できるという結論を得た。厳密 に言えば、中国全国の範囲で、土地請負経営戸の権利義務の帰属は英国法における合有不 動産保有関係によって解釈できるとは言えない。しかし、「戸内の人員が増加しても請負土

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地は増加しないし、減少しても請負土地は減少しない」という制度を実施している地域に おいては、特別の約定がない場合のみ、土地請負経営戸の構成員間の関係が形式上英国法 における合有不動産保有関係に類似する。しかしながら、土地請負経営戸は特殊なところ があり、個別的な処理が必要不可欠である。特に、請負経営権を処分する場合には、戸の 全員の合意が必要であり、全員の合意が得られなければ、処分できない。第四に、戸主の 権限について、代表説が最も妥当であるが、紛争を減らすためには、法律においてどのよ うな法律行為が戸主あるいは戸主の授権によってなされるか、農村請負経営戸の内部の制 限は善意の第三者と対抗することができるかなどの問題を明確に規定する必要もある。

第四章では、中国集団土地所有権に総有理論を適用するべきか否かという問題を念頭に おいて、日本の入会権の総有論と中国の学界の総有論を考察し、中国の集団土地所有権に 総有説を適用するべきではないことを論証した。最初に、日本における入会権の法的性質 に関する学説を概観した。次に、中国改革開放前の集団土地所有権の性質及び現行の集団 土地所有権と総有論の関係を考察した。最後に、中国の新型総有説を考察した上で、日本 の総有論と比較した。

本章の考察により、以下のことを分かった。日本では、入会権は総有の性質を有してい るものと認識され、通説として認められているが、入会権の現状から見ると、次第に消滅 または解体する実態が多くなっている。そして、入会権のこれらの現状を踏まえると、総 有という通説に対して疑問を投げかける学説も存在している。これに対して、中国の学界 では、現行の集団土地所有権の性質が総有であるかどうかについて大きく議論されている。

本章では総有論を支持するかどうかについて、各学説を折衷説、肯定説、否定説の三つに 分けて、それぞれを概観した。結果、この三つの学説においては、否定説が最も適切であ ると考えられる。その理由は以下のように説明できる。まず、総有はきわめて強い団体性 と閉鎖性を持ち、現代社会の発展に当てはまらないからである。また、集団土地所有権は 総有の特徴を備えていないし、本研究の第二章と第三章の考察により、集団構成員の資格 の判断基準、集団権利の主体及び集団権利の行使などについても、両者は大きな差異が存 在していることが分かった。従って、集団土地所有権は総有の特徴を備えていないため、

中国の集団土地所有権は総有権ではない。以上の分析により、中国集団土地所有権の改革 は「私権強化」の方向に向かわせ、総有を適用するべきではないという結論を得た。つま り、第一章で考察したように、建国前、中国では宗族共有財産などのような総有と類似す る形態が存在していたが、本章の考察により、総有は現代社会に当てはまらないことが分 かった。中国では、宗族共有財産というものが次第に少なくなっている。日本の入会権も

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解体の道を辿っている。宗族共有財産の減少及び入会権の解体は、総有が現在社会に適合 しないことの表明である。中国集団土地所有権の改革は政府または集団からの制限を緩和 し、「私権強化」の方向に向かわせるべきであり、総有は不適切である。

第五章では、農民集団の法的形態について検討した。本章では、第四章から得た結論に 基づき、農民集団は法人格を持ち、集団土地所有権は法人の単独所有であることを論じた。

最初に、法人と非法人団体の区別を明確にし、農民集団の法人化に関する議論を考察した。

次に、法人化に関する諸学説を考察し、株式合作社法人化は最も妥当であることを論証し た。さらに、中国の株式合作制とその沿革を概観し、株式合作社法人化の典型例-南海モ デルを考察した。最後に、集団土地株式化の法的性質について検討した。

本章の考察により、次のことが分かった。農民集団を株式合作社法人化し、土地請負経 営権の債権的移転により、農民が株主権を獲得するという制度設計は市場の要求に適合し、

効率性要件と正義性要件を満たすため、最も妥当である。ただし、株式合作社法人化の典 型例に対する考察に基づけば、農民集団の株式合作社法人化の実施には二つの重要な条件 を備えるべきである。一つは、農民集団の株式合作社法人化は、当地経済の成長が一定の レベルに達し、農民は株式合作化からより多くの利益を獲得するという条件である。二つ は、当該農民集団の多数の構成員が株式合作化を支持するという条件である。本研究では、

農民集団の株式合作社法人化という制度設計が最も妥当であることを論じたが、中国農村 社会の現状から見ると、多くの地方では、株式合作社法人化の条件はまだ熟成していない。

そのため、中国全国で農民集団の株式合作社法人化を推進することができない。上記の条 件を満たさない農村においては、株式合作制は実施せず、農民集団の法人格のみを認める べきである。株式合作制を実施するか否かを問わず、各農民集団が法人化され、村民委員 会の経済的機能及び政治的機能が剥離されなければならない。また、農民集団法人は、社 員大会と監督機関を設置する必要がある。社員大会は農民集団法人の意思決定機関である と同時に、法人の最高の権利機関とし、監督機関は、農民集団法人の日常事務を監督する 機関である。このように制度設計した場合においては、農民と集団との関係が明確にされ、

集団所有土地の権利主体の「虚位」、村民委員会の権利濫用などの問題を解決できる。

四 本研究の結論

本研究の考察により、問題意識で提示した四つの問題に対して、次のように回答したい。

①農民は農民集団の構成員としてどのような権利義務を有するのかを解明するために、

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具体的に、集団土地所有権の主体である農民集団の実態、権利取得の資格、権利の行使に ついて考察し、以下の結論を得た。まず、集団土地所有権の主体は行政村が最も妥当であ る。つまり、農民集団の範囲は行政村を単位とするべきであると考える。また、集団構成 員の資格を判断するのに戸籍によるのは不適切で、むしろ、その資格を判断する際に、集 団土地所有権が実質的に必要であるかどうかを重視するべきである。さらに、集団所有権 の行使は国家の公権力の過度なコントロールを受けている。その結果、農民は集団の公共 生活に参与する熱意が高くならず、とどのつまり、村民の権利が軽視されるなどの問題が 生じている。集団所有権の行使に関する問題の解決策としては、集団所有権の行使の民主 化を促進することである。

②農民は土地請負経営戸の構成員としてどのような権利義務を有するのかを解明するた めに、土地請負経営権の主体、請負経営戸の法的地位、請負経営戸の権利義務帰属につい て考察し、以下の結論を得た。土地請負経営権の主体は農戸である。土地請負経営戸の法 的地位についての諸学説の中では、非法人説が最も妥当である。土地請負経営戸の内部関 係について、中国法と日本法の共有理論によっては解釈できず、英国法における合有不動 産保有関係(Joint Tenancy)により説明できる。また、戸主の権限については代表説が最も 妥当である。

③中国集団土地所有権に総有理論を適用するべきかという問題について以下の結論を得 た。中国現行の集団土地所有権の性質は総有ではなく、また将来の改革においても総有は 適用できず、その論拠は以下の三つに分けられる。一つ目の論拠は、中国農村は村落共同 体の性質が欠如することである。二つ目の論拠は、集団土地所有権は日本の入会権と異な る点が多いことである。三つ目の論拠は、総有はきわめて強い団体性と閉鎖性を持ち、中 国における農民の個人権利を強化する方針と一致していないことである。

④中国集団土地所有権は総有理論を適用するべきではないとした場合には、どのように 解釈されるべきかという問題について、以下の結論を得た。集団土地所有権は総有理論を 適用するべきではないとした場合、農民集団を法人化し、集団土地所有権は法人の単独所 有権とされるべきである。さらに、農民集団を株式合作社法人化し、農民は土地請負経営 権の債権的移転により株主権を獲得するという制度設計は市場の要求に適合し、効率性要 件と正義性要件も満たすため、最も妥当である。ただし、株式合作化法人化の典型例に対 する考察に基づくと、農民集団の株式合作社法人化の実施には二つの重要な条件を備える べきである。一つは、農民集団の株式合作社法人化は、当地経済の成長が一定のレベルに 達し、農民は株式合作社法人化によってより多くの利益を獲得できるという条件である。

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二つは、当該農民集団の大多数の構成員が株式合作化を支持するという条件である。上記 の条件を満たさない農村においては、株式合作制を実施できずにいるが、農民集団の法人 格のみを認めるべきである。

以上、本研究の結論としてまとめた。なお、十分に論じきれなかった問題もある。例え ば、農村社会の性質について、単におおざっぱに南方と北方とに分けて検討した。中国は 国土が広いため、農村社会の実情も大いに異なる。農村社会の性質を検討する際に、各地 方の差異を重視し、分類して検討するべきであると考える。また、土地請負経営戸の構成 員の関係についても、形式上英国の Joint Tenancy に類似するという結論を得たが、具体 的な比較を展開しておらず、また、株式合作社法人化に対しても具体的な制度設計に十分 言及することができなかった。

今後は、次の課題について検討を加えていく必要がある。2013 年の中央一号文書によっ て、農村土地請負経営権登記制度を整え、農村の農地、林地など各種土地請負経営権の物 権保護を強化する方針で、農村の土地権利確認登記証書の交付業務が全面的に推進されて いる。それと同時に、戸籍制度の改革も全国的に展開されている。以上の業務が終了した 暁には、集団土地所有制度にどのような影響を与えるか、一層検討する必要がある。また、

土地開発の推進につれて、集団土地の利用についても、地上の利用だけでなく、地下の利 用も増えている。従って、土地の立体的な利用に関する研究も不可欠である。これらの問 題は今後の課題として、検討を加えていく必要がある。

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