九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
米国経済再生論と戦略的通商政策 : 政策介入と市場 メカニズムの相克
立石, 剛
九州大学経済学研究科経済学専攻
https://doi.org/10.11501/3122876
出版情報:Kyushu University, 1996, 博士(経済学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
第4章 米国経済再生とNAFTA
1 994年1月からNAFTAはすでに発効し、 貿易および投資に関する NAFTA加盟国間の障壁撤廃への取り組みが開始された。 NAFTAは第 a
次大戦後の米国の対外経済政策なかでも最も激しい論争が行われたものである。
その最大の論争点は雇用をめぐる問題であった1)0 NAFTAは経済発展段階 が同じ国同士でのECのような経済統合ではなく、 米国、 カナダ、 メキシコと いう発展段階の異なる国々との統合である。 そのため、 貿易・ 投資の自由化に 伴い、 米国企業のメキシコ進出の拡大や、 価格競争力をもっメキシコ製品の米 玉|への流入によって、 米国内の雇用が減少するか、 あるいは米国の賃金水準に 対して低下圧力がかかるとの懸念が、 AFL-CIOを中心に叫ばれた。
本来NAFTAは共和党のブッシュ政権下で交渉が開始されたものである。
従来より、 共和党政権は市場メカニズムを十分に機能させることが最善の政策 と考え、 企業活動の妨げとなる様々な障壁を除去することが政府の役割である と認識している。 NAFTAは貿易及び投資に関する障壁を撤廃し、 北米地域 全体で市場メカニズムを機能させようとするものである。 このことからNAF TAが共和党のブッシュ政権下で構想されたことは想像に難くない。 しかしN AFTAは実際には政策介入による米国経済再生を強く指向する民主党のクリ ントン政権下で批准された。 クリントン政権は労働組合を支持基盤に持つ一万 米国の基幹産業の競争力強化を経済政策の柱とするため、 産業界をもその支持 基盤としている。 そのため、 クリントン政権にとってはNAFTAを推進する か否かは苦渋の選択であった。 こうしたクリントン政権におけるジレンマはク リントン経済政策におけるNAFTAの位置づけにもあらわれることになる。
本章では、 クリントン政権下で提唱されている米国経済再生論とNAFT
1) ,第2章第3節を参照されたい。
- 157 -
4章 米国経済再生とNAFTA
Aとの関連性を明らかにすることを目的とする。 そのために次の順で検討する。
第1節、 第2節および第3節では、 NAFTAが批准されるに至った経済的、
政治的背景を明らかにする。 まず、 第1節では、 NAFTA域内および米同と メキシコとの間の貿易投資構造を明らかにする。 そこでは米国多国籍企業を中 心として経済的相互依存関係が深化拡大していることを示す。 とくにメキシコ 経済が米国多国籍企業の海外事業活動によって米国と密接な相互依存関係を持 っていることを示したい。
そのうえで、 第2節および第3節で、 米国多国籍企業を形成軸とした米[Jil メキシコ経済関係の形成の要因を検討する。 米国とメキシコとの間の経済関係 が近年密接になったのは、 メキシコにおける経済発展戦略の転換が背景にある。
メキシコは198 2年の債務危機発生以後、 対外的な自由化政策を採用して外 資主導、 輸出主導型経済発展戦略に転換している。 こうした転換は米国多同籍 企業の在外調達戦略と一致した。 その際、 メキシコにおけるマキラドーラ政策 (保税加工区)の成功が政策転換の背景ともなっている。 一方、 第二の要因と して、 米国側の在外調達促進戦略を検討する。 米国は共通関税制度のもとで、
長年にわたり米国企業のアウト ・ ソーシング戦略を再輸入免税という形で推進 してきた。 この政策はクリントン政権下でも継続されている。
そして第4節では、 NAFTAと米国経済再生との関連性を検討する。 そ こではNAFTAのもとでメキシコ経済が米国多国籍企業の在外調達拠点とし て制度的に固定化されることを、 NAFTA推進派の見解を中心に明らかにす る。 そのうえで最後に、 米国経済再生策とくに競争力政策とNAFTAのと整
合性を中心に、 NAFTAの位置づけを行う。
1 . 北米地域の貿易と直接投資
北米地域の貿易および直接投資をつうじた相互依存関係は、 米国、 カナダ そしてメキシコという三国によって形成されているが、 分析の中心となるのは
- 158 -
4章 米国経済再宅とNAFTA
米国を中心とした二国間となる。 その理由は、 カナダとメキシコとの聞の経済 関係はとるに足らない規模である一方、 カナダと米国、 メキシコと米国との問 の経済関係は極めて緊密だからである。 しかも米国とカナダは1 989年より すでに米加自由貿易協定を発効させており、 相互依存関係は一定の到達点に達 している。 そのため本節では、 北米域内の相互依存関係を概観し、 主に米同と メキシコとの貿易と直接投資関係に焦点を絞ることにする。
, • , . 米墨加の経済的相互依存
米国、 カナダ、 メキシコの3固からなるNAFTA域内の貿易および|宵接 投資の構造を把握しておこう。 この作業はNAFTAの性格を規定する七での 重要な検討材料となる。 もちろんNAFTA加盟国の経済関係を規定するもの として、 貿易および直接投資といった実体経済面の他にも、 証券投資などの資 金の流出入がある。 こうした金融面での相互依存関係は、 累積債務危機にもあ らわれたように、 実体経済に重要な影響を及ぼす。 事実、 1 994年1 2月に 生じたメキシコ通貨危機もこうしたボラタイルな資金移動が、 主要な役割を果 たした2)o しかし、 ここでの考察対象は実体経済面での米国経済再生という分 析視角から、 NAFTAを評価することであるため、 金融経済面からの評価は 次回にゆずることにする。
まず北米地域の貿易投資構造を貿易面から検討しよう。 同地域の貿易は米
2)メキシコの通貨危機は、 短期的な資金移動が直接的な要因となっているが、
間接的には部品等の中間財輸入を促進するための割高な為替レート評価が要閃 としてあげられる。 アジア経済研究所『メキシコの通貨危機とアジアへの教訓』
アジア経済出版会、 1 995年を参照。 こうした実体経済と金融経済との相互 関連性といった側面からの分析も次回にゆずる。
- 159
�
半作図符識調仰~HZ〉司→〉
いずれも各国統計をそのまま記載しているので各国閣の輸出入において必ずしも整合性はない メキシコの輸出データはマキラドーラ産業による愉出を除く
カナダとメキシコの輸入データはF. O. B.
International J(onetary Fund. DinctionojTrcuJ与Sωtistics: Yearbook. va r i ous i ssues.
下段%)
1982 1983 1984 1985 1986 1981 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994
米 国 •
世 輸輸入出 212.214 200.528 211.889 213.146 211,292 252.884 319,413 363.801 393,106 421.143 441,366 465.353 512.391 界 254.882 269,880 341. 110 361. 620 :;81,015 424,068 459.113 493,323 511.018 509.299 552.599 600.001 689.310 カ
I( 車
輸
珂 H両「)
) 丈 出
33,1汗175 8 20 381 1,.E 9 29 44 4 E521,,B 59 1 24 41.251 45.333
75911 2 ,814 5691て2 .684 782 ,266 82,959 8521,7780 13 4. 6 9021,28
01E 5. E 1002., 百
11 91 114I21.,百22 8 55 ナダ -1E B.4 5 - EZ Z.5 5 -E T.4 f
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メ 輸出 11,811 9,.E 4 E 028 11,992 13,635 12,392 14,582 20,47 3 24,969 28,315 33,216 40,598 41. 635 50,840 キ ←ー((融%%-)x) --- -15 .7567..6 5 2 -17 I..5 5 3 -15.25 5.f 5 --T5 .365.4 2---TKE5a.7 ---50755
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B8 ---n7653.Z4 ---27-:ぬ6.B9 --3B777B.7 2 --31787B.9 E -3 E .39B.5 1 -ZU,78Z.9 5 -35.39 5.5 9 シ
コ 5.4 5.4 4.5 4.8 5.1 5.6 6.0 6.3 6.5 6.8 1.3
メキシコ 世
界 輸出 21, 209 22,313 24,382 22,105 16,588 26,912 20,409 23,046 21,161 26,939 21,166 41,123 56,951
輸入 13,681 8,200 10,321 13,441 12,319 19.950 19,551 22,192 30,014 38,012 41,945 60,240 12,039
米国
品
輸出受
)ー --E5コ2E.E5 11. 129 --13ι5E,B 08 O 34 5.4 5 --14E56,,E 130 8 2 z.0 σ ト--5 613,341 .305.44----56.277.23 11,163 ---1f仁86 .564 858.38 ---m76554.39 -13,454 -一白7705E.Z1 16,163 --13 618,831 7693.3 5 -3E6796E.5 18,129 Z -3 E18,651 31,041 4558,,B 70 78 66コ822.7 5 -ZT67,B89E..6 5 1 -E Z.4 f
%) 59.8 .5 .4 66.6 67.1 13.1 66.1 68.2 66.1 64.8 2.8 10.6
カ 輸偏( X出同J 584 461 495 393 302 886 213 212 226 561 785 2,665 3,126
ナ - ー ー -22E.8 f 一一一 -225.51 --- 226.T 0 ト---E1お.8一一一一-215.78-一一一-35由.3一一一一-515.B3--一一-515.B2 -ーー一泊0.T8 一一一一72B.E1 --T323.49 7 -ー- E55.75 ---75I.5 5 ダ
%) 2.1 2.5 2.0 1.1 1.8 2.0 1.8 1.6 1.3 2.0 2.2 1.0 1.0
カナダ
世 輸輸入出 11.231 16,145 90,293 90,180 89.706 98,104 116,418 120,613 126,441 126,160 133,441 140.148 161. 269
界 56,117 63,165 15,928 18,613 83.308 90,439 110,100 111,358 119,613 120,452 124,830 134.914 151.523
米
国 輸出 46,529 53,848 66.300 68,283 61,183 11,455 81,962 85,305 95,388 95,514 103,860 114.448 133,112 一橘((ス%%一)
) 一ー一一
-3 E663752..3 5 9 -4ι 77-020
5.
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2
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8.1 6.8 5.9 64.0 63.5 62.9 2.3 3.5
メ 369 310 218 281 288 398 404 525 488 386 613 599 715 キiノ 一一-B0E.55 ---B07.4 5 -- f,B05.3 5 ト--- 307.63-----E0a.3 ---E0白.4ー--170f8.B3 ---17057.E 4 --170m.4 T -- 27303.Z 3 --2102.5 7 --Z302.4 f -- 5105.4 f
コ %) 1.4 1.4 1.4 1.2 1.0 1.0 1.1 1.3 1.4 1.9 1.9 2.2 2.3
(注1 ) (注2 ) (注3) (出所)
(単位:上段100万ドル、
米国 ・ カナダ ・ メキシコの域内貿易 表4 - 1
-∞C
4章 米国経済再生とNAFTA
国を中心としてメキシコ、 カナダ両国が連結するという構造を持っている。 表 4 -1はNAFTA加盟国の域内貿易依存度を示したものである。 カナダおよ びメキシコの両国は輸出市場の大半を米国に依存し、 輸入の大半を米国から調 達している。 カナダの198 2年時点での輸出の65%は米国向けであり、 同 じく輸入の68%は米国からのものである。 こうした米国への依存度の高さは 8 0年代に一貫して上昇した。 とくに89年から発効した米加自由貿易協定 (C U F T A : Canada-U. S. Free Trade Agreement)をきっかけに、 米国への 輸出が大幅に拡大し、 総輸出額の80%を越えるに至った。 これに対して、 米 国からの輸入は65%を前後し、 比較的一定の比率を保っている。
同様にメキシコの対米依存度も極めて高い。 債務危機発生直後のメキシコ の対米依存度は輸出総額の53%、 輸入の60%であった。 メキシコは輸入代 替政策から輸出指向型工業政策への転換を行い、 とくに1985年以降の貿易 および投資自由化政策により対米依存度は急激に高まった。 さらに9 2年に、
サリナス政権とブッシュ政権との聞にNAFTA交渉が開始されるというアナ ウンスメント効果もあって、 輸出の80%が米国向げであり、 輸入の7 1 %が 米国からのものとなった。
このようにカナダおよびメキシコ経済は米国への依存度が非常に高いが、
その一方で、 カナダとメキシコとの間の貿易は僅かなものにずぎない。 カナダ
・ メキシコ間の貿易依存度は輸出入両面において6%以下でしかない。 メキシ コおよびカナダは米国を中心として回転する衛星のようなものである。 一方、
米国の場合、 輸出入両面においてカナダおよびメキシコに依存する度合いは、
80年代を通じて高まりつつあるが、 その水準はメキシコ、 カナダ両国の場合 に比べて低い。 しかしながら、 カナダは米国の貿易相手国の中でも第1位の同 であり重要な地位にあるといえる。 メキシコも発展途上国のなかでは米国の第 1位の貿易相手国である。 このようにメキシコおよびカナダへの依存度が米国 の輸出入全体に占める割合はメキシコ、 カナダ両国の場合に比べて低いものの、
やはり重要な位置を占めているといえる。
NAFTA加盟国の相互依存関係は貿易だけではなく、 直接投資を通じて
- 161 -
表4-2 北米域内直接投資
米国経済再生とNAFTA
対外直接投資 対内直接投資
1 982 1 992 198 2 1 992
米国 (単位: 1 0 0万ドル)
総残高 207.752 486.670 124,677 419.526
カナダ 43,511 68,432 11, 708 38,997
(%) 20.9 14. 1 9.4 9. 3
メキシコ 5. 019 13.330 259 1, 184
(%) 2. 4 2.7 0.2 O. 3
カナダ (単位: 1 0 0万カナダドル)
総残高 35,560 106.533 72.814 138.925
米国 23.781 61, 527 54,475 88,468
(% ) 66. 9 57.8 74.8 63.7
メキシコ 217 357 7 69
(% ) O. 6 0.3 0.0 0.0
メキシコ (単位: 1 0 0万ドル)
総残高 10.786 33. 875
米国 7. 335 21. 466
(%) 68. 0 63. 4
カナダ 140 491
(% ) 1. 3 1. 4
(原資料) Statistics Canada, Canada's Balance 01 International Payments, various issues., The Diredor General of Foreign Investment for Mexico's Secretria de Comercio Fomento Industrial(SECOFD
(出所) OECD, Internαtional Direct Investment Statistics Yearbook, various issues.,
United States General Accounting Office, North American Free Trade Agreement:
u.s. -Mexican Trade and Investment Data, Washington DC: U.S.G.A.O., 1992.
U.S.Department of Commerce, SUnJey 01 Current Business, various issues.
- 162
σコ w
表4-3 米国の対外直接投資(製造業)
1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990
全世界 85. 253 95. 104 104,877 126,640 139,584 149, 237 164. 466 北米 242 511 252 921 272 182 29,2 759 332 635 372 446 382 986
8. 8 7. 3 5. 9 3. 5 4. 1 5. 1 3. 7
カナダ 202 879 21, 848 232 406 252 800 28, 859 31, 593 31. 790
4. 5 23. 0 2. 3 O. 4 20. 7 21. 2 19.3
メキシコ 3. 632 4. 073 3. 776 3, 959 4, 776 5. 853 7, 196
4. 3 4. 3 3. 6 3. 1 3. 4 3. 9 4. 4
中南米1 10.934 10,687 11, 009 11, 943 13,926 15. 330 16,537
12.8 11. 2 10. 5 9. 4 10.0 10. 3 10. 1
ヨーロッパ 37. 312 454 696 51, 988 67.457 71, 072 724 842 835 333
43. 8 8. 0 49. 6 3. 3 50. 9 8. 8 O. 7
EC 34, 040 41, 934 50, 082 64, 914 68, 252 70,919 80, 508
39. 9 44. 1 47.8 51. 3 48. 9 47.5 9. 0
アジア 6. 977 7. 917 9. 454 11, 873 14,437 15,813 17. 285
8. 2 8. 3 9. 0 9. 4 O. 3 10.6 10.5
日本 3, 942 4. 593 5. 443 7,073 8, 941 9,721 9,910
4. 6 4. 8 5. 2 5. 6 6. 4 6. 5 6. 0
NIEs 1, 956 2, 132 2, 684 3. 378 3. 851 4. 155 5, 153
2. 3 2. 2 2. 6 2. 7 2. 8 2. 8 3. 1
アセアン 1, 079 1, 193 1,326 1. 421 1. 646 1, 936 2. 222
1.3 1.3 1.3 1. 1 1.2 1.3 1.4
その他2、 5. 517 4, 883 5. 243 5.591 6. 516 7,806 8. 326
6. 5 5. 1 5. 0 4. 4 4. 7 5. 2 5. 1
(注1 )メキシコを除く
(注2)オーストラリア、 ニュージーランド、 インド、 中近東諸国、 アフリカ諸国からなる (出所) U .S.Department of Commerce, Survey 01 Current Business I various issues.
(単位:上段100万ドル、 下段%)
1991 1992 1993 1994
180.463 186,675 194.336 220. 328 402 589
2. 5 422 676 2. 9
42,2 986 2. 1
452 734 O. 8 31. 811 33. 068 33. 592 35. 037
17. 6 17. 7 17. 3 15.9
8. 778 9, 608 9.394 10. 697
4. 9 5. 1 4. 8 4. 9
16,274 17, 109 18, 129 21, 235
9.0 9. 2 9. 3 9. 6
92. 683 94, 338 95. 883 108, 655
51. 4 50. 5 9. 3 9. 3
88.531 88. 932 89, 360 101,009
49. 1 47.6 46. 0 45. 8
21. 749 22,579 26,401 31. 948
2. 1 12. 1 13.6 4. 5
11. 362 11. 838 13.408 15,844
6. 3 6. 3 6. 9 7.2
7,487 7.579 9. 124 11, 068 4. 1 4. 1 4. 7 5. 0
2. 707 2.891 3. 346 4.271
1.5 1.5 1.7 1.9
9, 167 9. 973 10. 927 12,756
5. 1 5. 3 5. 6 5. 8
4章 米国経済再生とNAFTA
も拡大深化している。 表4-2は北米域内の直接投資状況を示したものである が、 これによるとNAFTA加盟国の直接投資を通じた経済関係は米国を中心 に形成されている。 カナダの対外直接投資残高の6割前後、 そして直媛投資受 入残高の6割以上が米国からのものである。 同じくメキシコの直接投資受入残 高の6割以上が米国からである。 一方、 メキシコとカナダの間での直接投資は 僅かなものにすぎない。 このようにメキシコおよびカナダは米国多国籍企業に よる直接投資を通じて米国と密接な経済関係を取り結んでいる。
一方、 米国多国籍企業によるメキシコ、 カナダ向けの直接投資は対世界直 接投資残高の約2割の規模であるが、 その割合は80年代を通じて低下してい る。 表4-3は、 製造業に属する米国多国籍企業の対外直接投資累積残高を示 したものである。 北米地域の中でもカナダ向け直接投資残高のシェア低下が著 しい。 その一方でメキシコ向け直接投資残高は90年から急激に増加している。
北米以外の地域では、 ヨーロッパのシェアが最も大きい。 ヨーロッパ経済統合 を控えて、 米国企業にとってヨーロッパ市場の確保が重要な戦略であることの 反映である。 また90年以降は、 高度経済成長による市場の拡大を背景として、
アジア向け直接投資も急速に拡大している。 とくにアジアN 1 E s諸国向け直 接投資のシェア拡大が目立つ。 このように、 メキシコおよびカナダは直接投資 受入残高の大半を米国に依存しているにもかかわらず、 米国の対外直接投資残 高はおもにカナダ向けを中心にシェアを低下させている。
1 . 2. 米墨間貿易の構造
1 980年代のメキシコの経済開放政策と米国多国籍企業の競争力強化の 必要性の高まりによって、 米国とメキシコの間の貿易構造は大幅に変化した。
このことは次の二つの現象となってあらわれた。 一つはメキシコからの機械関 連財輸入の急速な拡大であり、 もう一つは米国多国籍企業関連貿易の拡大であ る。 1 980年代の米国 ・ メキシコ間の貿易構造は従来のパターンから大幅に
164 -
4章 米国経済再生とNAFTA
変化した。 メキシコは、 輸入代替工業化政策を採用していた際、 米国から中間 財および資本財を輸入して、 メキシコ圏内で最終財を生産するという形態をと った。 一方、 輸出はもっぱら石油関連に依存するというものであった。 これに 対して、 80年代の米国 ・ メキシコ間貿易構造はメキシコからの機械関連財の 輸入が急速に拡大したところに変化の特徴があらわれている。
表4-4は、 米国とメキシコとの間の貿易を産業・ 業種別にみたものであ るが、 メキシコからの輸入に占める機械関連財の割合が急速に拡大している。
債務危機直後には20%前後であった機械関連財のシェアは、 94年には56
%と2倍以上に伸びている。 機械関連産業の中では、 通信、 電機、 輸送に関連 する財の輸入が急激にそのシェアを伸ばしている。 一方、 米国からメキシコへ の輸出に占める機械関連財のシェアはあまり変化していないものの、 電気機械 関連財の輸出が伸びている。 このように80年代の貿易構造は、 7 0年代の垂 直的な産業間貿易構造から、 機械関連財を輸入し、 機械関連財を輸出するとい う産業内貿易の比重が高まっている。
こうした新たな貿易構造を形成する軸となっているのが米国多国籍企業関 連貿易である。 表4-5は米国 ・ メキシコ間貿易を共通関税表9802. 0。 のもとでの貿易と米国多国籍企業内貿易というこつの形態別に分類したもので ある。 このうち共通関税表(H T S : Harmonaized Tariff Schedule) 9 8 0 2 . 00品目は、 米国に再輸入することを条件に外国で加工した製品に関しては、
加工の際に投入された米国製の部品等の中間財部分に対して再輸入の際に課税 せず、 現地で付加された部分にのみ課税するというものである3)O つまり在外 加工を促進する制度の一つである。 この制度を利用する米国企業は必ずしも米 国多国籍企業とは限らない。 いわゆる生産分与協定を結んだ独立企業間によっ
3)生産分与形態に関する関税制度が米国経済に及ぼす影響については次の文献 を参照した。 U.S.Committee on Government Operations, Maquiradora lmpact on u.s.
Jobs and Trade Competition with Japan, Washington DC: U.S.G.P.O., 1987.
- 165 -
σコ σ�
表4-4 米国メキシコ間の機械関連貿易 ( 1 )輸出
1982 1983 1984
総輸出 11. 739 9, 079 11, 978
機械関連 5,314 3,753 5, 518
45. 3 41. 3 46. 1
一般機械 2, 278 1, 187 1, 720 19. 4 13. 1 14. 4
電話通信 698 615 990
事務機器 5.9 6. 8 8. 3
電気機械 1. 041 1, 127 1, 609
8. 9 12.4 13.4
輸送機械 1.297 824 1, 199 11. 0 9. 1 10. 0
1985 1986 1987
13, 401 12.379 12, 773
6, 666 6, 461 7,375 49. 7 52. 2 57. 7
2. 154 2. 176 2. 188 16. 1 17.6 17. 1
1, 154 1, 109 1, 293
8. 6 9. 0 10. 1
1, 636 1, 820 2, 233 12. 2 14. 7 17. 5
1, 722 1, 356 1, 661 12. 8 11. 0 13.0
(単位:上段100万ドル、 下段%)
1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994
18,022 24, 939 28, 340 33. 222 40, 592 41, 581 50, 840
10,131 11. 330 13,551 15, 680 16,352 17, 379 21, 100
56. 2 45. 4 47.8 47.2 40. 3 41. 8 41. 5
2, 905 3, 078 3,447 4, 165 3. 499 3, 441 4. 273
16. 1 12.3 12. 2 12. 5 8. 6 8. 3 8. 4
1, 935 2. 103 2.477 2,774 2, 770 3, 117 3. 643 10.7 8. 4 8. 7 8. 3 6. 8 7.5 7.2
3. 163 3,601 3. 767 4, 338 5. 180 5, 924 7,382 17.6 14. 4 13. 3 13. 1 12. 8 14. 2 14. 5
2, 128 2, 548 3, 860 4, 403 4,903 4, 897 5, 802 11. 8 10. 2 13. 6 13.3 12. 1 11. 8 11. 4
σコ ー斗
(2)輸入
1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994
総 輸 入 15,770 17,019 18,267 19,360 17,546 20. 523 23. 544 27.540 30, 770 31, 838 35. 211 39, 917 45. 268
機械関連 2,744 3. 580 4.671 5, 562 6. 576 8. 737 10,941 12. 212 13. 764 15.040 16.530 19, 400 25.428 17. 4 21. 0 25. 6 28. 7 37.5 42. 6 46. 5 44. 3 44. 7 47.2 46. 9 48. 6 56. 2
一般機械 495 761 963 1, 290 1, 414 1. 713 2. 024 2. 100 1. 968 2. 126 2. 020 2. 385 3. 655
3. 1 4. 5 5. 3 6. 7 8. 1 8. 3 8. 6 7.6 6.4 6. 7 5. 7 6. 0 8. 1
電話通信 974 1, 255 1, 470 1. 618 1,770 2. 222 3, 126 3, 451 3,493 3. 694 4. 043 4. 588 6. 757
事務機械 6. 2 7.4 8. 0 8. 4 10. 1 10. 8 13. 3 12.5 11. 4 11. 6 11. 5 11. 5 14. 9
電気機械 1, 011 1, 226 1, 695 1, 827 2.251 2. 846 3. 519 4,211 4, 593 4, 875 5.469 6, 450 8. 044
6.4 7.2 9. 3 9. 4 12.8 13.9 14. 9 15. 3 14. 9 15. 3 15. 5 16. 2 17. 8
輸送機械 264 338 543 827 1. 141 1, 956 2, 272 2, 450 3. 710 4. 345 4. 998 5, 977 6. 972
1.7 2. 0 3. 0 4. 3 6. 5 9. 5 9. 7 8. 9 12. 1 13.6 14. 2 15. 0 15. 4
(出所) United States General Accounting Office, Noバh Amencan Free Trade Agreement: U.S. -Meχzcαn Trade and Investment Dαta, Washington DC: GAO., 1992., U.S. Depatment of Commerce, U.S. Fore伊'l Trade Highlights 1992,1993,1994.
σコ 0:コ
表4-5 米国の対メキシコ貿易(形態別)
1982 1983 1984 1985 1986 1987
総輸出 11. 739 9, 079 11. 978 13. 401 12.379 12.773
HTS 1. 461 1.907 2. 555 2, 956 3. 401 4. 493
12. 4 21. 0 21. 3 22. 1 27.5 35. 2
米国多国籍 2, 328 2, 186 2. 726 3, 438 6. 640 4, 277 企業関連\' 19.8 24. 1 22. 8 25. 7 53. 6 33. 5
総輸入 15,770 17.019 18.267 19, 360 17,546 20, 523
HTS 2. 849 3. 714 4,808 5, 567 6, 457 8. 689
18. 1 21. 8 26. 3 28. 8 36. 8 42. 3
米国多国籍 1, 528 1. 896 2, 901 3. 349 6,461 4, 380 企業関連2、 9.7 11. 1 15. 9 17. 3 36. 8 21. 3
(注1)親会社を含む米国居住者からメキシコ多数所有子会社への輸出 (注2)メキシコ多数所有子会社から米国への輸入
(単位:上段100万ドル、 下段%)
1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 18.022 24. 939 28. 340 33. 222 40. 592 41.581 50. 840
5. 404 6, 111 6,256 7.241 8. 875 10. 071 30. 0 24. 5 22. 1 21. 8 21. 9 24. 2
5. 163 6, 735 7,462 9,651 11. 840 12. 680 28. 6 27.0 26. 3 29. 1 29. 2 30. 5
23, 544 27.540 30, 770 31. 838 35,211 39,917 45, 268
10, 785 11, 948 12.996 14. 312 16, 420 18,918 21, 192 45. 8 43. 4 42. 2 45. 0 46. 6 47.4 46. 8
5, 367 6, 463 7, 217 8. 704 10. 821 11,921 22. 8 23. 5 23. 5 27.3 30. 7 29. 9
(出所) United States General Accounting Office, North American Free Trade Agreement: U.S. -Mexican Trade and Investment Data, Washington DC: GAO, 1992., U.S. Depatment of Commerce, U.S. Foreign Trade Highlights 1992,1993,1994., U.S. Department of Commerce, U.S. Direct Investment Abroαd: Operations 01 U.S. Parent Companies and Their Foreignペffiliates, various issues.
4章 米国経済再生とNAFTA
ても行われる。 しかしながら、 その大半は米国多国籍企業との聞に生産ノウハ ウの供与等を通じた何らかの経営上の結び付きを持つ関連企業であり、 こうし た意味から米国多国籍企業間関連貿易の範暗に含めることができるIJ;
さて、 表4-5によると米国 ・ メキシコ間の貿易のかなりの部分が米同多 玉|籍企業によって行われている。 米国からメキシコへの輸出においては米同多 玉|籍企業による輸出が一貫して増加しており、 82年時点で総輸出の2割から 9 3年には3割を占めるに至っている。 こうした多国籍企業関連輸出の拡大は 共通関税表9802. 00品目におけるメキシコでの在外生産を目的とした輸 出増加が寄与している。 この傾向はメキシコからの輸入においては a層顕著で ある。 82年時点では10%弱であった多国籍企業関連輸入は、 93年には3 0%と総輸入に占めるシェアを3倍にも拡大させた。 共通関税表9802. 。
O品目に関する輸入はさらに多く、 94年には総輸入の47%と約半分をしめ るに至った。
こうした米国多国籍企業関連貿易のほとんどが製造業に属する海外子会社 との取引である(表4-6)。 また多国籍企業関連貿易の約半分が輸送機械産
IJ)生産分与形態による進出が必ずしも出資による支配を伴わないという見解に ついては、 C.Oman, New Forms 01 International Investment in DeveloPing Countηes,
Paris: OECD, 1984.を参照。 ただし、 米国多国籍企業の場合多数所有形態による 進出が大半を占めるため、 少数所有あるいは非出資形態による進出のケースは
少ない
- 169 -
4章 米国経済再生とNAFTA
表4-6 米国一メキシコ問の多国籍企業関連貿易1) (産業別) (単位:上段100万ドル、 ド段%) ( 1 )輸出(多数所有子会社向け輸出) ( 2 )輸入(多数所有子会社からの輸入)
1989 1990
全産業 6. 735 7.462
製造業 6. 289 6. 943
93. 4 93. 0
食品及び 50 60 玩具 O. 7 O. 8
化学及び 276 164
関連 4. 1 2. 2
金属及び 18 15
金属加工 O. 3 O. 2
一般機械 328 281 4. 9 3. 8
電気機械 1, 786 2,041
26. 5 27.4
輸送機械 3, 410 3,814
50. 6 51. 1
その他 422 568
6. 3 7.6
(注1 )多数所有子会社との貿易 (D)非公開
1991 1992 9, 651 11. 840
8. 916 10.995 92.4 92. 9
114 226 1.2 1.91
234 353 2. 4 3. 0
21 80
O. 2 O. 7
332 378 3. 4 3. 2
2, 534 2, 514 26. 3 21. 2
4, 700 6, 244 48. 7 52. 7
982 1, 200 10. 2 10. 1
1989 1990 1991
全産業 6, 463 7. 217 8, 704
製造業 6. 213 6. 978 8. 394
96. 1 96. 7 96. 4
食品及び 62 (0) 77
玩具 1.0 O. 9
化学及び 43 65 65 関連 O. 7 O. 9 O. 7
金属及び 19 31 37 金属加工 O. 3 0.4 0.4
一般機械 315 307 307
4.9 4. 3 3. 5
電気機械 2. 085 (0) 2. 552
32. 3 29. 3
輸送機械 3. 202 3, 829 4, 539 49. 5 53. 1 52. 1
その他 487 477 818
7.5 6. 6 9.4
1992 10.821
10. 505 97. 1
104 1.0
87 0.8
I
51
O. 5
316 2. 9
3. 526 32. 6
5. 535 5l. 2
885 8. 2
(出所) U.S.Department of Commerce, u.s. Direct Investment Abroad: 1989 Benchmark Su仰ey., U. S. Direct Investment Abroad: Oþerations 01 U.S. Parent Com.μnies and Their Foreign Affiliates, various issues.
一 170 -
『司....-
4章 米国経済再生とNAFTA
業に属するものである5)O 次にシェアが大きいのは電気機械産業に属する子会 社との取引である。 電気機械産業における貿易は米国からメキシコへの輸出の
2割、 メキシコからの輸入の3割に達し、 輸送機械と電気機械だけで多国籍企 業関連取引の大半を占めていることがわかる。 このように米国多国籍企業を中 心とする米国 ・ メキシコ間貿易が80年代を通じて拡大したのは、 メキシコの 経済発展戦略の転換と米国多国籍企業のリストラクチャリング戦略が要因とな っている。 以下の節で検討することにしよう。
2. メキシコ経済発展戦略の転換
iNAFTAが浮上してきたのは80年代にメキシコで経済改革が始まっ たためである。 80年代初期の債務危機を処理するためメキシコは一連の経済 改革を行った。 (中略)こういった改革がなければ、 アメリカはとてもNAF
5)輸送機械とりわけ自動車産業のメキシコへの輸出は、 輸入代替工業化政策の 一環として6 2年に制定された60%という国産化率規定によって阻まれてき た。 60%という国産化率を満たすためには、 エンジンおよびトランスミッシ ョンといった基幹部分の現地生産を行わねばならなかった。 しかしこうした政 策も83年および8 7年に改編され、 メキシコからの輸出を行うものであれば 国産化率等の規制対象外となった。 その結果、 米国の自動車産業はメキシコを 販売市場および在外調達の拠点と位置づけることになった。 U.S. Internatinal Trade Commission, Potential lmpαct on the U. S. Economy αnd Selected lndustries 01 the North American Free-Trade Agreement, Washington DC: USITC Publication 2596, 1993.,
PP.4-8.
- 171 -
4章 米国経済再生とNAFTA
TA交渉を始める気にはなれなかっただろうJ 6)。 このようにメキシコの経済 改革はNAFTA合意にいたるまでの重要な要因であった。 米国はメキシコと 近接しており、 歴史的に様々な政治、 経済問題を抱えてきた。 最近ではメキシ コから米国への移民問題が米国経済にとって焦眉の課題となっていた。 ーノヲ、
メキシコにとっても米国からの経済的影響はメキシコの経済的自立を悟るがす ものと認識され、 輸入代替工業化政策通じて米国との経済関係を極力分断する というスタンスをとってきた。 こうした複雑な政治経済的関係にある米同とメ キシコの経済関係は80年代を通じて急速に変化した。 メキシコは債務危機以 降の極端な経済停滞を経験し、 これまでの輸入代替工業化政策から対外開放政 策に大幅に政策を転換した。
2. , . 輸入代替工業化政策7'
メキシコの経済改革は債務危機をもたらすにいたった輸入代替工業化戦略 を中心とする一連の経済政策に対する反省のうえに行われた。 メキシコ政府は 198 3年に「国家開発計画」を策定し、 輸出促進工業化戦略への転換を図っ た。 一方、 メキシコ国内に対しては民営化を柱として、 政策介入主義から市場 メカニズムを通じた資源配分機能を重視する自由化路線へ転換した。
輸入代替工業化戦略は国内で投資される最終消費財の自国生産を工業化の 基本戦略とするものだった。 メキシコでは1 940年代半ばからはやくも厳格
6) R.C.Fisher, “NAFTA: A U.S. Perspective," Congressional Quαrtely Weekly Report,
September 12, 1992.
7)輸入代替工業化政策を中心とするメキシコの経済政策については、 以下の文 献を参照した。 加賀美充洋 ・ 細野昭雄編(1991) rrラテンアメリカの産業政策』
アジア経済出版会
- 172 -
4章 米国経済再宅とNAFTA
な輸入代替政策を採用した。 ほとんど全ての貿易品目に対して高率の関税が課 され、 自国の民族産業の育成を目的とする外資規制が行われた。 石油化学産業 や自動車産業といった雇用および波及効果の面で戦略性を持つ特定産業に対し てはとくに優先的な開発政策が行われた。 1 958年には石油化学庵業法が制 定され8)、 また6 2年には国産化率を大幅に高めることを条件とする自動車産 業に関する政令が出された9)O これらの規制によって外国人の所有は制限され、
更なる現地化が要求された。
当時の米国多国籍企業によるメキシコへの直接投資は、 メキシコの輸入代 替政策を反映し、 メキシコ市場へのアクセスを確保することを主目標とするも のであった。 米国多国籍企業の全生産額にしめる輸出の割合は10%以下にす ぎなかった。 またメキシコの外資系の工場の規模は圏内市場の大きさによって 決定されたため、 規模の経済を発揮する水準よりも小さいものであった。 この ように輸入代替政策下のメキシコへの直接投資は、 メキシコ経済を多同籍企業 の世界的な生産体制に組み込むというよりもむしろ、 保護された市場への参入 権を確保しておくというものであった。 70年代に入ってメキシコ経済は国内
8)石油化学産業法の特徴は、 石油産業を一次加工(原油精製)と二次加工(精 製以降の工程)に分割し、 一次加工部門をメキシコ側の独占とした点である。
一次加工はPEMEXが独占して行い、 二次加工部門のみに少数所有形態での 外資参入が認められた。 石油化学産業のような資源産業においては、 加工によ る付加価値率が低いため、 川上産業がを支配することができれば川下産業に対 しでも独占的支配力を行使することができる。
9)この自動車政令は、 メキシコの自動車産業の育成というよりもむしろ、 雇用 の創出を目的としたものであった。 その際、 60%という国産化率の達成、 完 成車および基幹部品の輸入規制、 ノックダウン用のキット輸入規制が行われた0 60%の国産化率を達成するためには、 エンジンやトランスミッションといっ た基幹部品の現地生産を行わなければならず、 事実上の現地化政策であった。
一 173 -
4章 米国経済再生とNAFTA
市場の飽和に直面したが、 その際、 メキシコ政府は、 196 5年以来韓闘が採 用したような消費財部門の輸出指向戦略をとらず、 政策介入による資本財部門 の育成をはかった。 これは自国の戦略部門の一層の保護をはかるものであった。
7 3年に政府は、 エネルギー、 農業、 林業、 通信、 銀行等の戦略部門における 外国人の所有を禁止し、 このほかの産業でも外国人の所有を49%以ドに制限 するという「メキシコ人投資の促進および外国人投資の規制に関する法律(し1
わゆる「外国投資規制法J ) Jを制定した10J o
以上の投資に対する各種規制は貿易に関する規制と連動して機能した。 貿 易面においては次の3つの政策が採用された。 第一に、 圏内産業の保護のため に最終財の輸入制限措置を設けること、 第二に、 中間財および資本財の輸入を 促進するため自国の為替レートを高めに設定すること、 第三に、 外貨獲得は に石油といった天然資源などの一次産品の輸出によることであった。 これによ って自国の輸入を最終財部門から国内生産によって代替し、 次第に同内部門の 裾野を広げようとするものだった。 中間財輸入はメキシコの貿易収支の赤字要 因となった。 しかし豊富な天然資源、 石油の存在と70年代の石油価格の高騰 により、 メキシコは石油の輸出により、 中間財 ・ 資本財における貿易赤字をフ
ァイナンスする事ができた。
しかし、 70年代末から80年代初頭にかけて以下の要因により経済は停 滞し、 債務危機が発生することになった。 第一に、 国内需要が小さいというこ とである。 メキシコは輸入制限措置により圏内市場を圏内の生産者のための市 場として確保したが、 輸入代替が完了した段階で逆に国内の需要の伸びによっ て成長が制約されたのである。 市場規模が小さいことから、 十分な規模の経済 を達成することができず、 この面で非効率な産業をメキシコ圏内に温存するこ
I 0)ただし、 メキシコ経済に対して技術面での貢献が高いと考えられた部門に ついては外資を認可するケースもあった。 とくに1980年代に入って、 自動
車産業とコンピュータ産業に関してはより柔軟な対応がなされた。
- 174 -
4章 米国経済再生とNAFTA
とになったのである。 第二に、 メキシコ製品の輸出競争力がほとんどなかった ことである。 メキシコでは中間財および資本財輸入を促進するため、 為瞥レー トを割高に設定していた。 これは輸出価格競争力にとってはマイナスの要因と して作用した。 そのため、 外国の需要を利用することができず、 規模の経済が 十分に発揮できないために、 生産効率も低いものとなった。 さらに石油などの 競争力のある産業が存在したため輸入代替工業化から輸出指向型工業化への転 換の必要性が十分に認識されなかった。 第三に、 原油価格が低迷したことであ る。 工業製品による輸出が不利な状況であったため、 メキシコの外貨獲得源は 原油を中心とする一次産品に頼らざるを得なかった。 しかしながら、 7 0年代 後半をピークとして一次産品価格が低迷し、 外貨獲得が困難になった。 第四に、
国営企業を含む政府部門の肥大化が進んだことである。 7 0年代を通じてメキ シコでは、 外資に対する規制を通じての民族企業の育成策が行われ、 国家自身 による産業への参加、 介入、 そして公営部門(国営企業)の拡大が進んだ。 ま た国内での産業育成のため有利な財政的奨励措置(各種の税の減免、 金融面で の優遇措置などからなる)が実施された。 こうした政策介入は政府支出の拡大 をもたらし、 資金面での対外依存を一層押し進める結果となった。
貿易収支および財政収支の赤字拡大は外国からの資金流入によってファイ ナンスされた。 この資金の最大の貸し手は米国であり、 7 0年代のメキシコ経 済の成長率からみても魅力的な投資先であった。 しかし80年代前半、 レーガ ン政権はインフレの抑制のために大幅に金利を引き上げた。 そのため、 これま でメキシコに流入していた資金の大半は米国に環流し、 8 2年8月に債務危機 が発生することになった。 債務危機後のメキシコ経済は長期間にわたる経済停 滞を経験することになった。 いわゆる失われた1 0年への突入である。 メキシ コ政府はこうした経済停滞の要因を輸入代替工業化を中心とする政策介入主義 に求め、 自由化 ・ 民営化を柱とする経済政策への転換を図ることとなった。 そ の中心は貿易および投資に関する自由化と世銀 ・ IMF路線による構造調整策 の受け入れであった。
- 175 -
4章 米国経済再生とNAFTA
2. 2. 輸出志向型工業化戦略への転換
債務危機以降のメキシコ経済の停滞は、 輸入代替政策を中心とする政策介 入主義から自由化および民営化路線への政策転換の結果生じた。 こうした政策 はメキシコ経済に市場メカニズムを導入するという目的を持っていた。 それと 同時に輸出志向型工業化戦略を採用するという積極的意義をもあわせ持ってい た。 当時のメキシコ市場の規模は経済停滞により大幅に縮小していた。 そのた め国内需要をてこに経済を成長させることには限界があった。 輸出志向型工業 化戦略への転換はこうした限界を乗り越えるためのものであった。 しかしなが らメキシコ企業は長年にわたる保護政策のもと、 世界市場で競争することので きる効率的な産業の育成には失敗した。 そのため競争力をもつ多国籍企業の誘 致が必要となり、 そのためには貿易および投資に関する自由化が不可欠となる のである。
2. 2. 1 . 構造調整策下での民営化
債務危機以来の経済停滞は、 その重荷を国民に背負わせるものだった。 メ キシコはIMFコンディショナリティーを受け入れることによって、 総需要抑
制政策を導入した。 その結果、 メキシコ経済は大幅なマイナス成長を記録する ことになった。 しかしこのような短期的な政策では累積債務問題は解決するこ とができず、 より長期的な成長指向の構造調整策を実施する必要性のあること が国際的に認識された。 この変化のきっかけとなったのは8 5年のIMF ・
銀総会におけるベーカー提案であった。 この提案は、 金融面での支援はあくま でも民間の資金によって行うという立場を変えていないが、 債務国の政策とし ては、 より成長指向の構造調整を行う必要があることを強調するものだった。
構造調整策の目的は、 いうまでもなく対外債務の削減と、 経済再建にある
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4章 米国経済再生とNAFTA
が、 その大き な特徴は従来の国家主導・ 介入による経済運営から特定の政策の 変更や制度面での改革を通じて市場メカニズムに基づく経済運営に路線を転換 し、 それによってより効率的な資源の利用を達成することを目指すものである。
具体的には、 貿易の自由化、 経済活動に対する様々な規制の緩和、 国営企業の 民営化、 外国からの直接投資の促進などである。 これらによって財政赤字を削 減し、 インフレを抑制しながら、 経済を立て直して債務負担を軽減するという ものである。
メキシコは債務危機以来、 世界銀行・ IMF主導のもと民営化を償極的に 押し進めた。 その範囲は広範なもので、 自動車・ セメント・ 合成繊維・ 砂糖・
石油化学・ トラクター ・鉄鋼・航空・ 電気通信・ 銅鉱山 ・ 銀行などの主要産業 が民営化された。 82年に11 5 5社あった国営企業は、 9 2年には232社 までに減少した11:。 とりわけ88年に登場したサリナス政権下ではより強力 に民営化が推し進められた。 サリナス革命とも呼ばれた国営企業の民営化は既 に最終段階に入っており、 9 1年には、 メキシコ最大の通信会社であるTEL EMEXが、 最大の金融機関であるBANAMEXやBANCOMERも民営
化された12) 0 9 2年には債務危機発生直後、 信用保持と資本逃避の阻止を理 由に固有化された商業銀行18行全ての再民営化が完了した。 これまでのメキ シコの銀行はきわめて非効率的で、 非競争的な産業の代表にようにいわれてき たため再民営化は急務であった。 また国営石油公社(PEMEX)が海外から 設備資金を調達する計画も実施され、 また電力事業への民間企業の参入を認め るなど、 民営化は最終段階を迎えている。
以上の国営企業の民営化は、 単に財政赤字の根源となってきた国常企業を
I 1: Banco de Mexico(1992), The Mexican Economy 1992
12) F.Sader, “Privatizing Public Enterprises and Foreign Investment in Developing Countries, 1988-93," World Bank, Foreign Investment AdvisoηI Service Occasional Paþer, no.5., 1995., pp.4-5.
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4章 米国経 済再生とNAFTA
売却して債務返済にあてるという消極的なものにとどまらず、 国際競争力のあ る企業に育て上げるという積極的な意図をもあわせ持っている。 つまり、 市場 メカニズムを導入することにより、 メキシコ経済の対外開放に備えるという目 的をも持つのである。 事実こうした国営企業の民営化は、 外国多国籍企業によ る資本参加という形態で行われたものも少なくない。 世銀の資料によると、 9 1年には外国資本による国営企業の買収額が総直接投資受入額の32%にも達
した1 3)。 国営企業の民営化は、 外国資本を参入させることで、 重要な戦略部 門の競争力強化を図るという目的をもあわせ持っていた。
2. 2. 2. マキラドーラ政策
1 980年代半ばまで、 メキシコは輸入代替工業化政策によってメキシコ 経済を世界市場メカニズムから保護する一方、 それと正反対の性質を持つ政策 を行ってきた。 マキラドーラ政策がそれである。 この政策は後の輸出指向刑 業化政策への移行の際のきっかけを与えたものである。 このマキラドーラ政策 とは、 部品を加工用として輸入し、 それを完成品として再輸出する保税工場を 意味している。 この政策は1 965年に「国境工業化計画」として導入され、
外貨獲得と雇用の拡大を目的としていた。 当時のメキシコでは外国人による出 資は基本的に規制の対象となっていたが、 上述の目的の達成のため、 国内市場 への販売は禁じられたものの、 外国人による100%出資が認められた。 同時 に加工用の部品、 機械、 原材料等の中間財 ・ 資本財の輸入が自由化された。
13; ibid., p. 17
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マキラドーラによる雇用効果は非常に大きいものだった1 ,\、。 マキラドー ラでの雇用者数は1980年の12万人から91年の4 7万人まで拡大した。
マキラドーラの効果は雇用だけでなく貿易においても十分にあらわれた。 8 0 年当時のマキラドーラ企業による輸出および輸入はそれぞれ 1900万ドル、
1 300万ドルであったが、 91年には158億ドル、 1 1 7億ドルにも鉱大 した。 こうしたマキラドーラ企業の輸出入はメキシコ経済全体の輸出入のかな りの割合を占め、 91年時点で総輸出の37%、 輸入の23%がマキラドーラ 関連貿易であった。 また、 マキラドーラ企業は、 メキシコ経済にとって最大の 外貨獲得源となった。 91年の非マキラドーラ企業の貿易収支は111億ドル の赤字であるが、 マキラドーラ企業の貿易収支は41億ドルの黒字を計上した0 80年代以降原油価格の低迷によりメキシコ経済にとって外貨獲得の道が閉ざ
されるなか、 マキラドーラ企業は最大の外貨獲得源となったのである1 5) 。 ただしマキラドーラ企業による外貨獲得効果は限定されたものといわざる を得ない。 その理由のーっと してマキラドーラがメキシコ経済からエンクレー ブされ、 ほとんど関連性を持たないという性質から生じる。 例えば91年時…
でのマキラドーラ企業による生産のための総投入額は158億ドルであるが、
このうち輸入による調達は117億ドルにも達し、 全体の74%をしめる。 こ れに対してメキシコ現地からの調達は26%にすぎない。 しかもメキシコにお ける調達の大半を労働力が占めており、 メキシコ国産財の投入比率は1%にす ぎない。 このようにマキラドーラ企業の活動はメキシコ経済全体との関連性を
1 4)
U nited States General Accounting Office, Norlh American Free Trade Agreement:
US. -Mexican Trade and Investment Data, Washington DC: U.S.G.A.O., 1992. 以下のマ キラドーラに関するデータもこの統計によるものである。
5) 1 9 8 0年代のマキラドーラに関する分析は、 丸谷吉男「メキシコの経済 危機とマキラドーラの新展開」丸谷編『ラテンアメリカの経済危機と外国投資』
アジア経済出版会、 198 9年、 が詳しい。
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ほとんど持たないため、 外貨獲得の規模は大きいものの、 国産財の投入が行わ れた場合に比べて外貨獲得率としては非常に低いものとなっている。 輸出加工 区としてのマキラドーラ企業のパフォーマンスと、 外貨獲得の潜在的可能性の 存在によって、 メキシコ政府はこうしたマキラドーラ型の工業化戦略をメキシ コ全土に拡大しようとするインセンティブを持つことになるのである。
2. 2. 3. 貿易 ・ 投資の自由化
198 3年、 メキシコ政府は工業化戦略の転換を図り、 輸出促進政策を採 用した。 その際I 1 983年国家開発計画(N D P National Development
Program) Jが打ち出されたが、 これはインフレの収束を目標とする経済安定
化政策と製造業部門を中心とした構造転換を主目標としていた。 経済安定化の ためにとられた政策は、 通貨切り下げ、 政府支出削減、 競争力回復のための実 質賃金切り下げであった。 これと同時にメキシコ経済の一連の自由化 ・ 民営化 政策が行われた。
貿易の自由化は急速にしかも大規模に行われた。 国家開発計画はメキシコ 経済を対外的に開放することによって、 圏内産業の競争力圧力を高め、 同時に 安価な輸入品の供給によりインフレ圧力を押さえることを目的とした。 8 5年 にはほとんどの品目について輸入許可制度を一方的に廃止し、 輸入数量規制撤 廃を開始した。 8 6年にはGATT加盟に基づく関税引き下げが行われた。 さ らに88年には一方的な関税引き下げが行われた。 その結果メキシコの関税お よび数量規制の水準は大幅に低下した(表4 - 7)。 平均関税率は8 5年時点 では23. 5 %であったが、 さらに低下し90年には12. 5 %になった。 ま た最高関税率も8 5年の100%から90年の20%にまで低下し、 輸入ライ センスをうけた比率も大幅に低下した。
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4章 米国経済再生とNAFTA
表4-7 メキシコの関税および数量規制
平均関税率
関税幅(最高/最低)
輸入数量規制1ì
198 5
23. 5 %
100/0
9 2. 2 %
(注1)ライセンスによる国内生産を含む
1 990
12. 5 %
20/10
1 9. 9 %
(出所) M.Dean,S.Desai and ].Riedel, “Trade Policy Reform in Developing Countries since 1985," World Bank Discussion Pajうers, no.267, 1995.
直接投資に関する規制は、 88年の国家開発計画を契機に転換点を迎えた。
この計画では、 投資拡大、 技術開発、 輸出増加という三つの基本目標のために、
外国からの直接投資受入の重要性が強調されたのである。 この背景にはマキラ ドーラ政策の成功もある。 その結果、 第一の投資拡大という側面からは直接投 資は大きく貢献し3倍以上にも達した。 また直接投資は外貨資金の獲得、 近代 的な技術の導入、 製品輸出の拡大等の面での効果が期待された。 しかしながら 技術開発および技術移転の面では効果的なものとはならなかった。 これは多国 籍企業内で技術が内部化され、 下請産業の育成にはつながらなかったためであ る。 後述するが、 米国多国籍企業の現地生産では、 生産性が低くなっている。
これはメキシコでの生産活動は資本集約的なものばかりではないことを示して いる。 第三の輸出促進面では多国籍企業はかなりの程度寄与している。
一方、 直接投資に関する規制は部門ごとにも徐々に緩和された。 自動車部 門における直接投資規制に関する政策の中で最も重要なのは1983年の大統
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領令である。 この政策では、 従来の輸入代替的な圏内自動車産業の育成策から 輸出拡大政策への転換が行われたのである。 当時のメキシコ経済は債務危機発 生直後であり、 メキシコ市場の規模が急速に縮小していた。 そのため、 坐建規 模はますます縮小し、 規模の経済という観点からは非効率的なものであった。
そこで需要を国外に求め、 規模の経済による効率化の達成が重要となった。 こ の政策は基本的には車種やモデル数を削減することで、 規模の経済の実現を目
指したものであるが、 その際、 生産量の最低80%を輸出する場合は、 同!老化 率と生産ラインに関する規制の適用外となった。 この結果メキシコ経済は米同 多国籍企業にとって販売先であると同時に、 輸出拠点としても位置づけられる ようになったのである。 自動車本体およびエンジンの輸出は急激に拡大し、 自 動車産業関連の雇用も大幅に伸びた。 さらに89年の大統領令によって円山化 が進展した。 完成車の輸入は3 0年ぶりに自由化され、 自動車部品に関しても メキシコ園内だけでなく、 自由に調達先を選択することができるようになった
16) 。
電子産業部門の場合は、 198 1年に制定された「電子計算機システムの 製造 ・ 促進計画(し1わゆる8 1年計画) Jの緩和という形で自由化が進んだ 17)
0 8 1年計画が策定された当時、 メキシコはコンピュータのほとんどを輸 入しており、 囲内には生産拠点はないに等しかった。 コンピュータ産業の戦略
1 6)ただし小型自動車に対する輸入制限は行われた。 U.S.International Trade
Commission, oþ.cit., p. 4-10
1 7)ここでいう電子産業部門とはコンピュータ関連産業のことであり、 家電部 門を含まない。 家電部門における直接投資は後述するマキラドーラ(保税加」二 区)へのものが主流である。 家電部門での輸入規制は7 0年代後半からすでに 緩和され、 8 5年の経済自由化を契機とした生じた経済停滞と需要の減少によ り、 メキシコの家電産業はかなり縮小した。 メキシコ家電市場の縮小に伴し 、 外国企業の進出はもっぱらマキラドーラへのものとなった。 ibid., p. 5-4
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