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密教研究 Vol. 1937 No. 63 002赤山 得誓「住心考――疏家と宗家との相違點―― P12-33」

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住 心 考 一 二

皿家

鮎-赤

一 大 日 経 疏 一 部 二 十 巻 は 善 無 畏 三 藏 が 唐 の 開 元 十 三 年 ( A. D. 725 ) 梵 本 大 日 経 を 漢 課 す る に 當 り、 そ れ と 同 時 に そ の 意 を 講 述 補 説 せ し も の を、 一 行 輝 師 に よ つ て 筆 録 せ ら れ た る も の で あ る。 然 し て 之 等 を 所 依 と し て 大 師 に よ つ て 十 佳 心 論 ( 廣 論 ) 十 巻 並 に 秘 藏 寳 鍮 ( 略 論 ) 三 巻 の 製 作 が あ り、 所 謂 十 住 心 の 判 教 が 成 立 し た の で あ る。 十 住 心 論 並 に 秘 藏 寳 鍮 の 製 作 年 時 に 關 し て は 古 來 多 少 の 異 説 が 存 す る け れ ど も、 大 膿 淳 和 天 皇 の 天 長 七 年 ( A. D. 830 ) 頃 と す る 読 が 正 し い 様 で あ る。 し て 見 れ ば 善 無 畏 三 藏 の 疏 と 大 師 の 廣 略 二 論 と は そ の 製 作 の 上 に 既 に 一 百 有 鯨 年 間 の 隔 た り の あ る 事 を 認 め ね ば な ら な い。 然 し て 又 一 面 か ゝ る 時 間 的 な 問 題 の 外 に、 地 理 的 相 違 並 に 各 々 の 時 代 に 於 け る 諸 學 派 の 教 理 的 推 移 の 事 情 を も 考 慮 す る 必 要 が あ り、 更 に 又 一 面 疏 家 と 大 師 と の 間 に 於 け る 意 趣 ・ 意 樂 の 相 違 を も 見 分 け な け れ ば な ら な い の で あ る。 善 無 畏 三 藏 が 大 日 経 疏 を 造 り し 意 趣 は た ゞ 大 日 経 の 文 々 句 々 並 に そ の 内 容 を 忠 實 に 開 説 數 演 せ ん と す る に 在 つ た の で あ つ て、 こ 為 に 疏 家 と し て の 本 領 が 存 す る。 然 る に 大 師 が 廣 略 二 論 を 造 ら れ た る 場 合 は 自 ら 別 の 意 樂 が 存 す る の で

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あ つ て、 郎 ち 軍 に 経 疏 の 意 を 組 述 す る の み で な く、 そ れ ら に 基 い て 判 教 を 創 設 し、 以 て 眞 言 一 宗 の 立 教 開 宗 を な さ ん と 企 劃 せ ら れ た の で あ つ た。 こ ゝ に 宗 組 と し て の 本 領 が あ る の で あ つ て、 こ れ 即 ち 十 佳 心 の 判 数 と 構 せ ら れ る も の で あ る。 所 謂 十 住 心 の 判 教 と は 大 師 の 當 時 我 國 に 行 は れ た る 諸 宗 を 九 顯 に 囁 し て、 大 日 経 宗 の 一 密 と の 勝 劣 を 分 判 せ ん と す る も の で あ る。 故 に 大 師 の 十 住 心 は 何 慮 ま で も 當 時 日 本 に 存 在 せ し 佛 数 諸 宗 に 封 し て 設 伊 ら れ た る も の で あ つ て、 所 謂 南 都 の 六 宗、 北 嶺 の 天 台 を 目 標 と す る も の で あ る。 然 る に 疏 家 が 大 日 経 疏 に 於 て 扱 は れ た る 所 は 全 く 印 度 の 宗 派 で あ つ て、 日 本 に 行 は れ た る 宗 派 に 關 し て は 何 等 の 關 心 を も 彿 は れ て ゐ な い 事 は 論 を 待 た な い。 印 度 佛 教 と 日 本 佛 教 と で は 印 度 に 於 て は 輩 に 経 論 の み 存 し て 未 だ 學 派 的 色 彩 の 無 か つ た も の が、 支 那 ・ 日 本 を 傅 來 す る 事 に よ つ て 一 宗 を 構 成 し た る も の が あ り、 或 は 反 鉗 に 輩 に 印 度 に の み 存 し て 他 に は 傳 は ら な か つ た 學 派 も あ り、 乃 至 は 連 綿 と し て 印 度 よ り 支 那 を 経 て 日 本 に 傳 は つ た も の に し て も、 時 代 的 乃 至 は 地 理 的 條 件 に ょ つ て 思 想 の 攣 遷 發 達 の 経 緯 を 無 税 す る 事 は 出 來 な い の で あ る。 吾 人 は 之 等 の 諸 黙 を 明 瞭 に 分 別 す る 事 に よ つ て は じ め て 爾 者 の 眞 意 が 了 解 さ れ 得 る 事 を 信 す る の で あ る。 以 下 大 師 の 所 謂 ﹁ 十 住 心 ﹂ に 關 し て 以 上 の 諸 黙 を 考 慮 し つ ゝ、 大 日 経 住 心 品 ・ 同 疏 並 に 大 師 の 廣 略 二 論 を 中 心 と し て 數 個 の 問 題 に 燭 れ て 見 度 い と 思 ふ。 二 之 に 就 て 第 一 に 述 ぶ べ き 事 に 心 綾 生 の 答 説 の. 通 局 に 關 す る 問 題 が あ る。 心 綾 生 の 答 説 の 節 段 は 大 禮 経 に 於 て は ﹁ 秘 密 主 工 無 始 生 死 ﹂ 以 下 八 心 の 終 り ﹁ 慮 了 知 室 難 於 断 常 ﹂ ま で、 邸 ち 世 間 三 個 の 住 心 の み に し て、 大 師 の 所 謂 第 四 住 心 に 住 心 日 考 一 三

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住 心 考 一 四 相 當 す る 聲 聞 道 以 上 の 諸 住 心 に は 通 じ な い 事 に な つ て ゐ る。 聲 聞 溢 以 上 は 三 劫 ・ 十 地 を 説 く 菩 提 心 柑 と 心 殊 異 の 答 読 の 文 に 於 て 明 さ る ゝ 所 で あ る。 從 つ て 疏 に 於 て も 経 の そ の ま を 踏 襲 し て 種 子 等 の 十 心 を 繹 し 終 つ て ﹁ 故 云 最 上 大 乗 句 心 績 生 之 相 諸 佛 大 秘 密 外 道 不 能 知 鼓 々 ﹂ と 合 経 し て 心 綾 生 の 説 段 を 結 ん で ゐ る。 然 る に 大 師 の 場 合 は そ れ と 趣 を 異 に し て 十 佳 心 の 全 部 を 以 て 心 綾 生 の 法 門 と 見 る の で あ つ て、 從 つ て こ の 場 合 に は 八 心・ 三 劫 ・ 十 地 に 通 捗 し て 心 績 生 と 見 る の で あ る。 大 師 の 十 住 心 論 第 一 に 善 無 畏 三 藏 云 の 從 レ 此 以 下 ノ 十 種 住 心 ハ 佛 答 二 心 綾 生 之 義 一也。 交 と 繹 し て ゐ る。 所 謂 ﹁ 善 無 畏 三 藏 云 ﹂ の 一 句 は 立 義 の 典 嫁 を 求 め た る 意 味 で あ る が、 事 實 上 疏 の 中 で は か、 る 義 を 説 け る 個 所 は 全 然 見 當 ら な い。 凡 そ 大 師 が 如 是 く 心 綾 生 の 義 を 十 住 心 に 通 ぜ し め ら れ た る 本 意 は 所 謂 心 綾 生 の 語 義 が 必 ら す し も 世 間 三 個 の 往 心 の み な ら す、 少 く と も 浮 菩 提 心 が 淺 よ り 深 に 向 つ て 遍 次 に 展 韓 向 上 す る 事 を 意 味 す る の で あ る か ら、 か 温 る 意 味 よ り し て 聲 聞 以 上 の 出 世 間 心 を も 心 綾 生 の 義 に 撮 し た る も の と 見 る べ き で あ つ て、 こ れ 嚇 種 の 義 繹 或 は 韓 繹 に 踊 す る も の と 言 ふ べ く、 こ れ 随 文 作 繹 の 疏 家 の 立 場 に 於 て は 断 じ て 現 は れ 得 ざ る 見 方 で あ る。 然 し て 又 一 面 大 師 が 特 に か、 る 繹 義 を 必 要 と せ ら れ た る 第 一 の 原 因 は、 十 住 心 な る 判 教 を 打 立 て ん と せ ら れ た る 事 に 在 る の で あ つ て、 第 一 住 心 よ り 次 第 に 修 行 上 韓 し て 第 十 住 心 に 至 る ま で 蓮 綿 た る 一 つ の 過 程 に 於 て 見 ん と せ ら れ た る も の で あ る か ら、 世 間 三 個 の 佳 心 と 聲 聞 以 上 の 住 心 の 爾 者 を 別 目 を 以 て 呼 び、 恰 か も 前 後 異 な る コ ー ス な る か の 如 き 感 を 懐 か し む る 事 を 嫌 は れ た る も の に 外 な ら な い の で あ る。 心 綾 生 の 通 局 に 關 す る 問 題 は 以 上 の 如 し と し て、 次 に 寂 然 界 の 菩 薩 に 關 す る 問 題 を 注 意 し な け れ ば な ら な い。 寂 然

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界 の 菩 薩 は 経 の 三 劫 段 中 初 劫 の 終 第 二 劫 の 前 に 掲 げ ら る ゝ も の で あ る。 之 に 就 て 経 に は 次 の 如 く に 言 つ て ゐ る。 ス レ バ シ ヘア 若 於 二 悪 等 繭發 二 起 離 著 當 下 観 紮 聚 沫 浮 泡 芭 蕉 陽 炎 筆 而 得 申 解 脱 血。 謂 悪 腱 界 能 執 所 執 皆 離 法 性 一。如 レ是 謹 二 寂 然 界 一。 愛 々 こ の 文 に 於 て は 輩 に 寂 然 界 の 菩 薩 が 聲 縁 二 乗 よ り も 勝 れ た る 行 相 を 有 す る 事 を 髪 髭 せ し む る に 過 ぎ な い の で あ る が、 疏 に は 之 に 關 し て 相 當 の 紙 幅 を 費 や し、 可 な り の 注 意 を 彿 つ て 一 種 の 菩 薩 と 見 徹 し て、 聲 縁 二 乗 よ り 別 立 せ る も の ゝ 如 く で あ る。 疏 に 曰 く。 モ ノ 學 摩 詞 衙 人 初 得 二 出 世 初 心 一與 二 小 乗 見 道 ー齊 等。 然 不 レ 堕 二 聲 聞 正 位 一。 所 二 以 爾 一 者 由 彼 從 二 初 發 心 一師 知 心 性 但 爲 二 我 倒 一 所 レ 覆 未 レ得 二 現 前 一。 爾 時 諦 二 観 慈 界 入 等 一 悉 從 レ 縁 生 無 常 攣 異。 是 中 何 者 是 紳 耶。 量 々 又 下 文 に 曰 く 聲 聞 経 中 錐 レ 説 二 此 五 喩 一 意 明 二 無 我 一。 今 此 中 五 喩 意 明 二 諸 纏 性 室 一。 如 レ 観 二 五 慈 一者 當 レ 知 十 二 入 十 八 界 六 入 十 二 縁 等 皆 ク シ テ 慮 二 廣 分 別 説 一。 行 者 如 レ 是 観 察 時 從 三 無 性 門 一達 二 諸 纒 性 塞 一 得 下 難 三 一 重 法 倒 一 了 申 知 心 性 工。 如 是 不 下 爲 二 葱 慮 界 能 執 所 執 一 之 所 中 動 揺 上。 故 名 二 謹 寂 然 界 一。 謹 二 此 寂 然 界 一 時 漸 過 ご 二 乗 境 界 一。 嚢 々 之 等 の 文 に 読 く 所 の 慈 等 の 三 科 を 縁 生 無 性 と 観 じ て 一 重 の 法 執 を 離 れ、 漸 く 二 乗 の 境 界 を 脱 す る と 言 へ る も の は 明 ら か に 聲 聞 ・ 縁 畳 の 二 乗 よ り 別 な る 一 種 の 菩 薩 の 行 相 で あ る。 然 し て こ の 菩 薩 は 第 二 劫 に 設 か る エ 大 乗 の 眞 正 の 菩 薩 で な い 事 は 特 に 之 を 初 劫 の 中 に 論 か れ て ゐ る 事 か ら も 明 瞭 で あ り、 又 疏 中 に も そ れ が 明 説 さ れ て ゐ る。 上 に 説 く 所 の 疏 に ﹁ 離 一 重 法 倒 ﹂ と 言 へ る も の は 第 二 劫 の 第 二 重 の 法 無 我 性 に 封 し て 廉 な る 法 執 を 指 す も の で、 こ の 一 重 の 法 倒 を 離 れ て 謹 す る 所 は 二 室 偏 眞 の 理 で あ つ て、 疏 に 所 謂 ﹁ 了 知 心 性 ﹂ は 之 を 指 す も の で あ る。 後 の 具 縁 品 の 四 心 義 を 繹 す る 住 心 考 一 五

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住 心 考 一 六 疏 の 文 に 若 了 二 知 唯 葱 無 我 一 乃 至 謹 二 寂 然 界 一 時 當 下 約 二 我 人 衆 生 壽 者 本 不 生 一明 中 種 々 法 門 上。 交 と て 寂 然 界 の 菩 薩 の 法 室 を 認 め ざ る も の は、 こ の 清 息 を 物 語 る も の で あ つ て、 第 二 の 大 乗 の 法 室 観 よ り 見 れ ば 爾 こ れ 入 執 断 の 分 齊 に 相 當 す る も の と 言 ふ べ き で あ ら う。 疏 の 下 文 に レ ハ 依 二常 途 解 麗 一是 菩 薩 從 二 初 發 心 一以 來 経 二 一 大 陶 曾 祇 劫 一 方 謹 二 如 是 寂 然 界 。 今 秘 密 宗 但 度 二 此 一 重 妄 執 一 師 是 超 二 一 阿 曾 シ テ 祇 劫 鱒 行 者 未 レ 過 二 此 劫 一與 二 辟 支 佛 位 一齊 時 名 爲 凪一極 無 言 説 虚 罵 爾 時 心 滞 二 無 爲 法 相 殉 若 失 二 方 便 一 多 堕 二 二 乗 地 ー 誰 一小 浬 葉 一。 然 以 二 菩 提 心 勢 力 一 還 能 發 二 起 悲 願 一。 從 レ 此 以 後 三 乗 径 路 始 分。 然 所 観 入 法 倶 室 與 二 成 實 諸 宗 一未 二 甚 懸 絶一。 猶 約 二 偏 眞 之 理 一作 二 此 李 等 観 一 耳。 故 以 二 三 乗 上 中 下 出 世 間 心 一合 二論 一 僧 祇 劫 一。 至 二第 二 僧 祇 一與 二 二 乗 一異 也。 交 こ の 中 ﹁ 行 者 未 過 此 劫 與 辟 支 佛 位 齊 時 ﹂ と 言 ひ、 ﹁ 然 所 観 入 法 倶 塞 與 成 實 諸 宗 未 甚 懸 絶 ﹂ と 言 へ る も の は 正 し く こ の 菩 薩 は 二 乗 と 眞 正 の 大 乗 の 菩 薩 と の 中 間 に 存 す る も の で あ つ て、 恐 ら く こ れ 分 通 大 乗 の 類 に 屡 す る も の で あ ら う。 所 謂 寂 然 界 の 菩 薩 な る 學 派 が 善 無 畏 三 藏 の 當 時 或 は そ れ 以 前 に 印 度 に 存 在 し た か 否 か は 余 輩 と し て は 容 易 に 之 を 審 か に す る 事 は 出 來 な い け れ ど も、 然 し 疏 家 が 之 に 對 し て 相 當 詳 細 な る 読 明 を 載 せ て ゐ る 黙 よ り 見 れ ば、 或 は 成 實 宗 に 近 い 一 つ の 學 派 を 構 成 し て ゐ た の か も 知 れ な い。 然 し て こ の 寂 然 界 の 菩 薩 は 如 是 く 疏 中 に 明 説 さ れ て ゐ る に も 拘 は ら す、 高 組 の 廣 略 二 論 に 於 て は 十 住 心 の 一 に 加 へ ら れ ざ る 事 は 勿 論、 一 言 も そ れ に 關 読 さ れ て ゐ な い の で あ る。 こ れ 部 ち 如 上 十 住 心 の 判 教 は 大 師 の 當 時 日 本 に 行 は れ た る 諸 宗 を 以 て そ の 所 對 と す る も の で あ つ て、 寂 然 界 の 菩 薩 の 如 き 日 本 に は 曾 て 傳 來 せ ざ る 教 學 に 謝 し て は そ の 勝 劣

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を 判 す る 必 要 を 認 め ら れ な か つ た 爲 に、 大 師 自 身 の 意 趣 の ま 為 に 之 を 省 略 せ ら れ た る も の で あ る。 筒 宗 義 決 揮 集 に は ﹁ 寂 然 界 撮 在 ﹂ と て、 こ の 菩 薩 を 第 五 住 心 に 囁 す べ き か、 第 六 住 心 に 囁 す べ 膏 か に 就 て の 論 議 を 出 し、 第 五 住 心 に 撮 す べ き 旨 を 成 じ て ゐ る。 然 し 乍 ら こ の 菩 薩 は 経 ・ 疏 の 上 に て は 猫 立 せ る 一 個 の 住 心 と 見 徹 さ る べ き も の で あ り、 之 が 大 師 の 猫 特 の 意 趣 に よ つ て 十 住 心 に 加 へ ら れ な か つ た も の で あ る 以 上、 之 が 囁 在 の 如 何 を 論 す る 事 自 腿 が 経 ・ 疏 の 眞 意 に 合 せ ざ る も の で あ る 事 は 明 白 で あ る。 因 み に 一 言 す べ き 事 は、 凡 そ 経 並 に 疏 に 於 て は 各 々 の 往 心 の 節 段 は 明 瞭 を 鋏 く も の 多 く、 從 つ て 掲 立 せ る 一 個 の 住 心 と し て 扱 ふ べ き か 否 か に 就 て 去 就 に 迷 は し め ら れ る 所 が 少 く な い の で あ る。 從 つ て 各 住 心 の 名 目 の 如 き も 決 し て 明 示 さ れ て ゐ よ う 筈 の も の で は な く、 殊 に 往 心 の 數 を 示 す が 如 き 事 は 断 じ て 見 當 ら な い。 経 並 に 疏 に 關 す る 限 り、 住 心 と は 言 は れ 得 る も 十 住 心 と は 言 は れ 得 な い の で あ る。 之 を 十 種 と 限 定 し、 一 々 に 特 定 の 名 目 を 施 し て 初 後 整 備 せ る 禮 系 を 與 へ し も の は 全 く 大 師 の 廣 略 二 論 の 功 に よ る も の で あ る。 大 師 の 廣 略 二 論 を 造 る 本 意 は 判 教 に 存 す る 事 は 上 述 の 如 く で あ る が、 然 し 経 ・ 疏 本 來 の 意 味 は 心 綾 生 ( 八 心 ) と 心 相 ( 三 劫 ) の 廣 論 に 在 り、 從 つ て 八 心 の 一 々 と 三 劫 各 々 の 節 段 が 明 瞭 に 看 取 し 得 る に 止 ま る 事 も 蓋 し 又 當 然 の 事 と 言 は ね ば な ら な い。 然 し て 今 の 初 劫 の 中 に 含 ま れ た る 聲 縁 二 乗 と 寂 然 界 の 菩 薩 と の 三 種 の 住 心 の 節 段 の 不 明 瞭 な る 事 も 全 く そ の 例 に 漏 れ ざ る も の で、 経 ・ 疏 の 文 を 剰 然 と そ れ ら の 三 者 に 振 り 分 く る 事 は 全 く 不 可 能 に 届 す る。 三 者 の 中 で は 聲 聞 の 説 相 が 最 も 明 瞭 且 つ 組 織 的 で あ り、 寂 然 界 の 菩 薩 は 比 較 的 明 瞭 に 護 み 取 り 得 る と し て も 諸 所 に 散 読 せ ら れ て ゐ る 爲、 初 後 一 貫 せ る 罷 系 無 く、 縁 覧 の 説 相 に 至 つ て は 素 直 に 讃 過 せ し 場 合 に は 何 等 を れ と 豊 し き 文 を 見 出 し 得 ざ る 程 不 明 瞭 に な つ て ゐ る。 思 ふ に 縁 箆 に 關 し て は 経 ・ 疏 の 文 佳 心 考 一 七

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住 心 考 一 八 の 當 面 か ら 見 て む し ろ 一 つ の 住 心 と し て 別 立 す る 程 の 事 は な く、 極 め て 輕 く 扱 は れ て ゐ る 事 は 明 瞭 で あ つ て、 こ の 事 は 後 の 三 劫 實 珠 段 や 六 無 畏 並 に 四 心 義 の 読 段 の 繹 相 か ら 言 つ て も 否 み 得 ざ る 所 で あ る が、 一 面 疏 に は 故 以 三 二 乗 上 中 下 出 世 間 心 一 含 一論 一 僧 祇 劫 一。 云 々 と 言 ふ 文 が あ つ て、 初 劫 の 中 に 三 乗 上 中 下 の 出 世 間 心 あ り と 言 ひ、 こ れ 郎 ち 序 で の 如 く 寂 然 界 の 菩 薩 と 縁 豊 と 聲 聞 と に 相 當 す る も の で あ る か ら、 縁 覧 乗 に 關 し て 全 然 無 親 さ れ て ゐ る と 言 ひ 切 る 事 も 不 可 能 の 様 に 思 は れ る。 然 し 他 面 大 師 の 十 往 心 の 立 教 と 言 ふ 立 場 に 立 つ 時 は 當 然 之 を 一 つ の 住 心 と し て 立 て る 必 要 が あ り、 経 文 に 所 謂 抜 三 業 煩 悩 株 杭 無 明 種 子 生 二 十 二 因 縁 一。 女 を 以 て こ の 住 心 に 配 繹 す る の で あ る が、 そ の 中、 ﹁ 抜 業 煩 悩 ﹂ 等 の 上 二 句 は 聲 聞 の 行 相 に も 通 じ、 縁 豊 の 場 合 に は 之 を 重 讃 し て そ の 下 に ﹁ 生 十 二 因 縁 ﹂ の 一 句 を 附 加 す る 事 に ょ つ て そ の 魑 別 を す る と 言 ふ の で あ る が、 然 し か ゝ る 讃 み 方 は 経 文 の 當 分 か ら 見 て 非 常 に 無 理 の あ る 事 は 論 を 待 た な い。 三 次 に 吾 入 は 第 二 劫 の 無 豫 乗 心 に 關 す る 論 述 を な さ ね ば な ら な い。 所 謂 無 縁 乗 の 名 に 就 て は も と ノ 経 に は 無 縁 ・ 他 縁 の 二 名 を 出 し、 大 師 は 廣 略 二 論 に 於 て そ の 中 特 に 他 縁 の 一 名 を 取 つ て 住 心 の 名 と せ ら れ て ゐ る。 所 謂 無 縁 と は 三 界 唯 心 心 外 無 法 の 意 で あ り、 他 縁 と は 他 の 法 界 の 有 情 を 縁 じ て 李 等 の 大 誓 を 起 す 無 縁 の 大 悲 に 名 げ た る も の で あ る。 こ の 住 心 が 唯 識 宗 に 相 當 す る 事 は 経 ・ 疏 の 文 に よ つ て 明 ら か に 知 ゐ 事 が 出 來 る。 然 し こ 逗 に 注 意 す べ き 事 は こ れ が 直 ち に 護 法 の 流 れ を 汲 む 法 相 を 意 味 す る か 否 か と 言 ふ 事 で あ る。 疏 に 曰 く

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所 謂 他 縁 乗 者 謂 發 二 李 等 大 誓 帥爲 二 法 界 衆 生 一 行 二 菩 薩 道 一。 乃 至 諸 一 關 提 及 二 乗 未 レ 入 二 正 位 一 者 亦 當 丁 以 二 種 々 方 便 一折 伏 シ ヘア 撮 受 普 令 丙 同 入 乙 此 乗 胸 縁 二 此 無 縁 大 悲 一故 名 二 他 縁 乗 一。 交 こ の 中 諸 一 關 提 及 び 二 乗 の 未 入 正 位 者 を も 晋 ね く 大 乗 の 菩 薩 道 中 に 引 撮 す る 事 を 示 し て ゐ る。 然 る に 護 法 系 統 の 法 相 宗 に て は 五 姓 各 別 の 道 理 に よ つ て、 無 姓 有 情 と 決 定 姓 の 二 乗 と 不 定 姓 中 の 菩 薩 種 姓 無 き も の は 不 成 佛 と 立 て る 事 に な つ て ゐ る。 喩 伽 唯 識 の 系 統 で 五 姓 各 別 を 力 説 す る の は 護 法 系 統 が 最 も 鮮 明 で あ る が、 然 し 唯 識 系 統 一 般 と し て は 必 ら す し も 五 姓 各 別 説 に 限 つ た わ け で は な く、 そ の 事 は 唯 識 系 続 に 属 す る 多 數 の 経 論 に ょ つ て 明 ら か に 知 る 事 が 出 來 る の で あ る。 從 つ て 疏 に 所 謂 無 縁 乗 心 或 は 他 豫 乗 心 な る も の は 恐 ら く 護 法 系 統 の 法 相 宗 を 指 す の で は な か ら う と 思 は れ る。 然 し て 又 一 面 護 法 の 唯 識 學 に 關 す る 主 著 な る 成 唯 識 論 な る も の は 印 度 に て は 一 入 と し て 之 を 見 た る 者 が な く、 護 法 よ り 直 ち に 玄 弊 に 傳 へ ら れ、 玄 弊 は 之 を そ の ま ゝ 支 那 に 持 ち 蹄 つ て 支 那 に 於 て は じ め て 之 を 流 行 せ し め た と 言 ふ 史 實 に 徴 す る も、 善 無 畏 三 藏 の 所 謂 唯 識 宗 は 護 法 宗 で な か つ た 事 を 知 り 得 よ う。 更 に 又 之 を そ の 引 文 の 上 よ り 見 る に、 疏 に は こ の 佳 心 を 説 明 す る 爲 に 務 伽 経 と 解 深 密 経 と 大 乗 狂 嚴 経 論 と を 引 用 し て ゐ る が、 之 等 は 何 れ も 元 來 勝 義 諦 系 統 の 唯 識 読 に 囑 す る も の で、 無 差 別 李 等 の 方 面 が 力 読 せ ら れ、 從 つ て 一 牲 皆 成 説 を な す に 至 る 事 は 學 者 の 一 致 せ る 見 解 で あ る。 之 に 封 し て 俗 諦 系 統 の 唯 識 説 に 局 す る も の は 差 別 的 な 方 面 か ら 五 姓 各 別 説 と な る も の で、 善 無 畏 三 藏 の 取 る 所 は 恐 ら く 前 者 で あ り、 護 俵 は 正 し く 後 者 に 屡 す る。 宗 祀 が 廣 略 二 論 に 於 て 第 六 住 心 他 縁 大 乗 心 と 名 け ら れ た る も の は も と よ り 護 法 宗 を 指 す 事 は 論 を 待 た す、 こ れ 南 都 六 宗 の 随 一 と し て 奈 良 朝 時 代 つ と に そ の 流 行 を 見 た る 所 で あ る。 大 師 の 當 時 乃 至 今 日 に 至 る ま で 日 本 に 傳 は つ た 唯 識 住 心 考 一 九

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住 心 考 二 〇 宗 と し 言 へ ば 護 法 系 統 の そ れ の み で あ る。 如 是 く 同 じ く 一 つ の 住 心 と し て 扱 は れ て ゐ る 所 で あ つ て も、 疏 家 と 宗 家 と で は 必 ら す し も 同 一 の 宗 派 を 指 す わ け の も の で は な い の で あ る か ら、 吾 人 と し て は 常 に 地 理 的 相 瀧 乃 至 時 代 の 教 理 的 攣 遷 を 注 意 し な け れ ば な ら な い。 次 に 吾 人 は 次 の 住 心 に 關 し て 述 べ な け れ ば な ら な い。 こ れ 郎 ち 大 師 に ょ つ て 壁 心 不 生 心 と 名 け ち れ 三 論 宗 に 相 當 す る 所 の も の で あ る。 こ の 心 に 観 し て 経 に 曰 く。 テ ヘ ニ シ ア 秘 密 主。 彼 如 レ 是 捨 二 無 我 一 心 主 工 自 在 箆 二 自 心 本 不 生 一。 丈 と。 こ の 中 所 謂 ﹁ 豊 自 心 本 不 生 ﹂ に 關 し て は 疏 に 之 を 繹 し て ス ル ヲ 以 二 心 前 後 際 倶 不 可 得 ー故。 讐 如 中 略。 心 王 亦 復 如 レ 是。 無 二 前 後 際 綿 以 二 前 後 際 断 一故 難 下 復 遇 二 境 界 む 風 一從 レ 縁 起 滅 上 而 心 性 常 無 二 生 滅 一。 豊 二 此 心 本 不 生 一郎 是 漸 入 二 阿 字 門 一。 云 々 と 言 つ て ゐ る。 印 ち こ れ 心 性 の 常 住 を 示 す も の で あ つ て、 衆 生 本 具 の 一 心 を 以 て 直 ち に こ れ 阿 字 本 不 生 の 自 豊 艦 な り と 言 は ん と す る も の で あ る。 ﹁ 漸 入 阿 字 門 ﹂ の 一 句 は 即 ち こ れ こ の 漕 息 を 示 す も の で あ つ て、 所 謂 阿 字 門 の 阿 字 と は 帥 ち 阿 字 本 不 生 の 阿 字 を 指 す も の に 外 な ら な い。 以 て 知 る。 こ の 住 心 は 眞 言 門 に 凶 切 智 々 と 言 ひ、 如 實 知 自 心 と 言 ひ、 自 心 尋 求 菩 提 及 一 切 智 と 言 へ る も の と 非 常 に 接 近 せ る 事 を。 思 ふ に 第 二 劫 の 住 心 は 1 勝 義 諦 系 統 の 唯 識 宗 に せ よ、 三 論 宗 に せ よ 共 に ご れ-眞 如 随 縁 の 立 場 よ り し て 眞 如 と 諸 法 と の 融 會 を 説 く 宗 派 に 當 る も の で、 眞 如 は 軍 に 諸 法 の 所 依 艦 な る の み な ら す、 又 以 て 諸 法 の 當 膿 々 に し て、 眞 如 を 難 れ て 諸 法 無 く、 諸 法 の 外 に 眞 如 あ る に 非 す と 説 く の で あ つ て ・ 既 に 虞 如 を 以 て 當 罐 々 と す る 以 上、 諸 法 の 無 差 別 ・

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平 等 ・ 相 郎 ・ 無 碍 ・ 自 在 の 方 面 が 強 調 せ ら る ゝ に 至 る の で あ る。 こ の 眞 如 随 豫 の 思 想 は 實 に こ れ 大 乗 佛 敏 の 根 本 問 題 で あ り、 最 初 に し て 最 後 の も の で あ つ て、 後 々 に 發 蓬 せ る 諸 種 の 大 乗 佛 敏 も 要 す る に こ の 眞 如 随 縁 の 思 想 の 展 開 せ る も の に 過 ぎ な い。 一 念 三 千 も 事 々 無 碍 も 六 大 鰹 大 も 何 れ も 然 り。 更 に 又 般 若 経 の 諸 法 實 相 も 法 華 経 並 に 華 嚴 経 の 自 性 清 浮 心 や、 そ の 他 浬 葉 経 並 に 勝 量 経 の 如 來 藏 亦 然 り。 然 し て こ の 眞 如 随 縁 の 無 差 別 軍 等 の 方 面 が 佛 性 思 想 の 上 に 現 は れ て は 一 切 衆 生 悉 有 佛 牲 と も 煩 憎 翻 菩 提 生 死 郎 浬 禦 と も 十 方 佛 土 中 唯 有 一 乗 法 無 二 亦 無 三 と も 於 一 佛 乗 分 別 説 三 乃 至 は 郎 身 成 佛 と も 郎 事 而 眞 と も な る の で あ る。 か ゝ る 見 地 に 於 て 見 る 時 は 當 住 心 こ そ は 後 の 高 次 的 な る 大 乗 佛 教 乃 至 密 教 に 進 入 す る 發 足 黙 で あ つ て、 一 つ の 重 大 な る 契 機 と も 見 ら れ る も の で あ る か ら、 疏 家 は こ ゝ に 密 教 思 想 の 萌 芽 を 認 め ら れ た も の で、 所 謂 一、 漸 入 阿 字 門 ﹂ の 一 句 こ そ は 正 し く そ れ を 裏 書 き す る も の と 見 る べ き で あ る。 禽 叉 一 面 後 に 詳 述 す る 如 く、 疏 家 の 七 顯 三 密 の 立 場 よ り す れ ば 當 住 心 こ そ は 正 し く 顯 教 の 極 致 で あ つ て、 や が て 密 教 に 入 ら ん と す る 前 方 便 の 心 と も 見 ら れ る も の で あ り、 か、 る 意 味 よ り し て 之 に 密 教 的 萌 芽 の 漸 現 を 認 め ら れ た も の と 見 て よ か ら う。 大 師 は 贋 略 二 論 に 於 て 経 の ﹁ 豊 自 心 本 不 生 ﹂ 並 に 疏 の ﹁ 豊 此 心 本 不 生 即 是 漸 入 阿 字 門 ﹂ の 所 謂 本 不 生 を 繹 す る に 當 つ て 次 の 如 く 言 つ て ゐ る。 ネ テ ニ ハ 謂 本 不 生 者 兼 明 二 不 生 不 滅 不 断 不 常 不 一 不 異 不 去 不 來 等 一。 三 論 家 塞 三 此 八 不 一以 爲 二 究 寛 中 道 一故。 文 師 ち 本 不 生 を 以 て 眞 言 門 に 所 謂 阿 字 本 不 生 の 義 と せ す し て、 三 論 宗 の 八 不 の 義 と す る の で あ る。 之 は 疏 家 と 全 く 趣 を 異 に す る 見 方 で あ る。 本 不 生 を 疏 家 の 如 く に 解 繹 し て は じ め て 漸 入 阿 字 門 の 阿 字 と の 蓮 絡 が つ く が、 本 不 生 を 八 不 の 義 に 解 し た の で は 阿 字 門 と は 何 等 の 聯 蘭 も 無 い わ け で あ る。 本 不 生 が 八 不 を 意 味 せ ざ る 事 は 嘉 詳 大 師 の 大 乗 玄 論 第 住 心 考 二 一

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佳 心 考 二 二 一 二 諦 義 に 諸 法 本 從 無 生。 皆 以 二 阿 字 一爲 レ 本。 是 師 諸 法 皆 蹄 二 阿 字 一 無 生 門 一。 故 経 云。 四 十 二 字 皆 蹄 二 阿 字 一也。 嚢 々 と て 阿 字 本 不 生 の 義 を 取 れ る に よ つ て 知 る べ く、 疏 の ﹁ 蜷 此 心 本 不 生 即 是 漸 入 阿 字 門 ﹂ の 繹 は 恐 ら く こ の 大 乗 玄 論 に 基 い て、 た ゞ そ の 中 の 皆 蹄 阿 字 門 を 漸 入 阿 字 門 と 攣 へ た の で は な か ら う か と 思 は れ る。 如 是 く 大 師 が 本 不 生 を 八 不 の 義 に 解 せ ら れ た 事 に 就 て は 重 大 な る 理 由 が 存 し て ゐ る。 こ れ 帥 ち 大 師 の 十 佐 心 の 立 教 に 於 け る 九 顯 一 密 の 法 相 で あ る。 之 に 観 し て は 後 に 詳 細 な る 説 明 を 附 せ ん と す る 所 で あ る が、 疏 家 の 七 顯 三 密 に 於 て は 當 佳 心 は 顯 教 の 極 致 で あ る が、 大 師 の 九 顯 一 密 よ り す れ ば こ の 上 に 術 華 天 爾 種 の 顯 教 が 存 す る。 從 つ て 當 住 心 に 於 て は 断 じ て 密 教 的 萌 芽 を 認 め る 事 の 禽 早 な る 事 を 知 ら し め ん と せ ら れ た も の で あ る。 本 不 生 を 八 不 と 解 す る 眞 意 は こ 鮎 に 在 り、 疏 家 と 大 師 と の 意 趣 の 相 違 を 知 る べ き で あ る。 次 に こ の 住 心 に 關 し て 爾 一 つ の 問 題 が あ る。 師 ち 豊 苑 の 演 密 紗 第 三 及 び 五 大 院 安 然 の 教 時 義 第 二 等 の 意 に よ る に、 第 二 劫 を 詮 く 経 疏 の 文 は 他 縁 乗 の 一 重 に し て、 他 縁 と 箆 心 と の 二 重 の 淺 深 を 見 す と す る も の で あ る。 之 に 就 て 先 づ 経 ・ 疏 の 文 を 見 る に 経 に 曰 く ノ ア リ キ ハ シ テ シ ト 復 次 秘 密 主 大 乗 行。 發 二無 縁 乗 心 一。 法 無 我 性。 何 以 故。 如 二 彼 往 昔 如 レ 是 修 行 者 一 観 二 察 蔽 阿 頼 耶 一 知 三 自 性 如 二 幻 陽 焙 影 響 テ ヘ コ ニ シ テ 旋 火 輪 乾 闊 婆 城 一。 秘 密 主 彼 如 是 捨 二 無 我 一心 主 自 在 箆 二 自 心 本 不 生 一。 何 以 故 秘 密 主 心 前 後 際 不 可 得 故。 如 是 知 二 自 心 性 繍 是 超 二越 二 劫 一 喩 祇 行。 文 之 を 疏 に 繹 し た る 所 を 見 る に

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而 人 法 二 察 之 相 亦 不 レ當 レ 心。 乃 名 二眞 入 二 法 室 一。 悟 二 唯 識 性 一故 経 云 秘 密 主 彼 如 是 捨 二 無 我 一 心 主 自 在 豊 二 自 心 本 不 生 ゆ 心 圭 郎 心 王 也。 文 こ の 中 ﹁ 悟 唯 識 性 ﹂ ま で は 経 の 前 牟 の 羅 で あ り、 ﹁ 経 日 秘 密 主 ﹂ 以 下 は 後 孚 の 文 の 繹 で あ る。 然 し て 前 牛 の 繹 の 最 後 の ﹁ 悟 唯 識 性 ﹂ の 義 を 次 の 経 文 に 合 す と 見 て、 ﹁ 唯 識 性 故 ﹂ の 故 の 一 字 を 下 に 蝿 し て ﹁ 故 経 云 秘 密 主 ﹂ 等 と 護 み、 恰 か も 後 皐 の 経 文 を 以 て ﹁ 悟 唯 識 性 ﹂ の 理 由 を 設 明 す る 文 な る 如 く に 扱 ふ の で あ る。 如 是 く 見 る 時 は 経 の 前 牟 と 後 孚 の 二 文 は 前 後 別 の 節 段 と な ら す し て 互 に 連 観 し た 文 賑 を 有 す る 事 と な る。 さ れ ば こ そ ﹁ 故 経 云 秘 密 主 ﹂ 等 と 経 文 を 引 く 揚 合、 そ の 最 後 に 者 の 字 を 挿 入 せ す し て、 直 ち に ﹁ 心 主 帥 心 王 也 云 々 ﹂ と て 繹 を 塞 ぴ て ゐ る。 普 通 の 牒 経 の 場 合 に は 必 ら す 者 の 字 を 挿 入 す る の が 普 通 で あ る が、 今 は 牒 経 に 非 す し て 合 経 で あ る。 從 つ て 前 後 互 ひ に 一 つ の 節 段 を 構 成 す る も の で あ る と 言 ふ。 教 時 義 第 二 に は 更 に 疏 第 三 の 四 心 義 の 繹 を 根 嫁 と し て こ の 義 を 成 立 し て ゐ る。 所 謂 四 心 義 の 繹 と は 阿 閣 梨 の 衆 徳 を 説 く 中 の 通 達 三 乗 の 文 を 繹 す る 條 下 で あ る。 疏 に 曰 く 此 経 宗 横 統 二 一 切 佛 教 一。 如 レ 読 二 唯 蔑 無 我 出 世 間 心 佳 於 悪 中 一 帥 搬 二 諸 部 中 小 乗 三 藏 一。 如 レ 説 二 観 藷 阿 頼 耶 豊 自 心 本 不 生 一 師 撮 二 諸 経 八 識 三 無 性 一。 質 帥 ち 第 一 に 順 世 の 八 心 よ り 謹 寂 然 界 の 菩 薩 に 至 る ま で を 一 種 の 阿 闇 梨 と な し、 次 に 第 二 劫 に 一 種 の 阿 闇 梨 を 墾 け、 乃 至 第 四 阿 闇 梨 を 出 し て ゐ る。 こ の 中 第 二 の 阿 闇 梨 の 場 合 に は 他 縁 乗 並 に 箆 心 不 生 の 爾 者 を 合 し て 諸 経 に 説 か る 為 八 識 ・ 三 性 ・ 三 無 性 の 教 理 と し て 一 種 の 阿 闇 梨 と な し て ゐ る。 よ つ て 今 教 時 義 第 二 に は 今 海 和 上 多 違 ご 此 文 殉 何 者 経 中 観 蔽 阿 頼 耶 乃 至 心 主 自 在 豊 自 心 本 不 生 等 越 二 二 劫 一行 之 文 義 繹 以 爲 二 一 種 阿 闘 梨 一。 亦 囁 二 住 心 考 二 三

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住 心 考 二 四 諸 経 八 識 三 性 三 無 性 等 一。 此 法 相 宗 所 用 経 論。 而 海 和 上 以 二 観 悪 阿 頼 耶 等 二名 二 無 縁 大 乗 心 一搬 二 法 相 宗 一。 以 二 心 主 自 在 畳 自 心 本 不 生 等 一名 二 覧 心 不 生 心 一囁 三 二 論 宗 一。 交 以 上 が 第 二 劫 に 於 て 二 重 の 淺 深 を 見 ざ る 読 の 大 要 で あ る。 弘 法 大 師 の 贋 略 二 論 に 於 て は 第 二 劫 の 前 牛 の 文 を 以 て 他 縁 大 乗 心 を 謹 し、 後 牟 の 文 を 以 て 豊 心 不 生 心 を 謹 し、 序 で の 如 く 第 六 ・ 第 七 の 住 心 と し て 數 へ ら れ て ゐ る の で あ る か ら、 若 し 経 並 に 疏 の 文 が 豊 苑 ・ 安 然 等 の 言 ふ が 如 く 二 重 の 淺 深 勘 見 ざ る 意 で あ る と す る な ら ば、 こ ゝ に も 又 疏 家 と 大 師 と の 間 に 相 蓮 鮎 が 存 す る わ け で あ る。 然 し 乍 ら 総 じ て 経 疏 の 文 は 各 住 心 の 節 段 の 不 明 な る 事 上 述 の 如 く で あ り、 今 の 第 二 劫 の 文 の 如 き も 正 に そ の 一 例 で あ つ て、 軍 に 経 ・ 疏 の 文 面 の み に て は 一 種 の 住 心 と も 二 種 の 住 心 と も 定 め 難 い 様 に 思 は れ る。 然 し 乍 ら 大 師 が 特 に 之 を 二 種 の 住 心 乏 し て 明 示 せ ら れ た る 所 以 の も の は そ の 判 教 的 意 趣 の 基 く 所 蓋 し 叉 當 然 の 事 に 属 す る と 言 ふ べ き で あ る。 爾 頼 喩 の 指 心 妙 第 二 に は 假 り に 六 個 の 疑 難 を 出 し て 二 種 の 淺 深 を 立 つ る 義 を 批 難 し て 廣 く 之 を 繹 し、 然 し て 後 五 門 を 以 て 二 種 の 勝 劣 を 判 じ て そ の 義 を 成 立 し て ゐ る。 然 し 乍 ら 之 等 は 既 に 大 師 の 廣 略 二 論 の 指 南 に よ り、 大 師 の 著 述 を 受 け て 第 六 ・ 第 七 の こ 佳 心 を 説 明 せ ん と す る も の で あ る か ら、 如 何 に 法 相 宗 と 三 論 宗 と が 互 に 勝 劣 を 有 す る 全 く 別 の 宗 派 で あ る 事 が 明 ら か に さ れ る に し て も、 そ れ が 直 ち に 経 ・ 疏 に 説 か れ た る 本 來 の 意 味 を 閑 明 す る 所 以 の も の で は な い の で あ つ て、 今 の 所 論 の 要 旨 を 離 れ て ゐ る 事 は 論 を 待 た な い。 四 以 上 を 以 て 第 二 劫 に 關 す る 論 述 を 終 つ て、 次 に 第 三 劫 に 観 す る も の に 入 ら ね ば な ら な い。 第 三 劫 に 於 け る 最 も 重 大

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な る 問 題 は 経 ・ 疏 の 文 の 當 面 に 於 て は 第 三 劫 の 文 の 全 膿 が 密 教 で あ る に も 拘 は ら す、 宗 家 は 之 が 中 に 八 ・ 九 ・ 十 の 三 個 の 住 心 を 開 い て 八 ・ 九 の 二 者 を 顯 教 と し、 第 十 の み を 以 て 密 教 と し、 從 つ て 十 住 心 全 罷 の 上 か ら は 所 謂 九 顯 一 密 の 法 相 を 立 つ る 貼 に 存 し て ゐ る。 大 師 の 十 住 心 が 九 顯 一 密 の 法 相 で あ る 事 か ら 推 し て 疏 家 の 立 場 を 七 顯 三 密 と 言 は れ る 事 が あ る け れ ど も、 然 し 疏 家 自 身 と し て は 顯 教 に 七 種 の 住 心 あ り と 示 さ れ た る 明 文 が あ る わ け で も な く、 密 教 に 三 種 を 分 た れ た る 読 相 が あ る の で も な い の で あ つ て、 畢 寛 大 師 の 立 場 を 基 と し て 逆 に 疏 家 の 立 場 を そ れ に 當 て は め た も の に 過 ぎ な い の で あ る か ら、 疏 家 自 身 の 本 來 の 立 場 を 語 ら ん と す る 場 合 に は そ の 呼 構 は 不 適 當 な る も の と 言 は な け れ ば な ら な い。 経 ・ 疏 本 來 の 立 場 が 第 三 劫 の 全 膿 を 密 教 と 見 る 事 に 就 て、 先 づ 疏 の 次 の 文 を 注 意 す べ き で あ る。 ル ニ シ テ 然 上 來 原 ゼ 始 要 レ 終。 自 レ發 一二 毫 之 善 一以 至 三 於 超 二 度 人 法 有 無 二 障 一。 難 ニ 宗 極 柄 著 韓 深 韓 妙 一 猶 是 對 二 治 心 外 之 垢 一。 筒 未 レ シ テ モ テ 闘 庇 心 中 秘 密 種 々 不 思 議 事 絢 從 レ 此 以 後 方 乃 説 レ 之。 若 不 レ 作 二 如 レ此 對 辮 一則 常 情 各 玩 二 先 習 一 不 レ能 レ 豊 二 其 微 妙 麟 也。 交 こ の 文 は 第 二 劫 の 終 に 存 し て、 將 に 第 三 劫 を 読 明 せ ん と し て 顯 密 二 教 の 勝 劣 を 對 辮 せ し も の で あ る。 こ の 中 所 謂 ﹁ 封 治 心 外 之 垢 ﹂ と は 前 二 劫 に 説 ぐ 所 の 顯 教 に 對 す る 疑 稽 で あ り、 ﹁ 開 此 心 中 秘 密 種 々 不 思 議 事 ﹂ と 言 ひ ﹁ 豊 其 微 妙 ﹂ と 言 へ る も の は 正 し く 密 敏 に 相 當 す る も の で あ つ て、 ﹁ 從 此 以 後 方 乃 説 之 ﹂ と 言 へ る 以 上 直 ち に 以 下 の 第 三 劫 に 於 て 密 教 を 読 く 事 を 豫 徴 せ る も の で あ つ て、 こ れ 帥 ち 顯 密 の 界 畔 を 明 示 せ る も の で あ る 事 は 一 見 明 瞭 で あ る。 さ れ ば こ そ こ の 、 文 の 次 に 出 つ る 第 三 劫 の 頭 初 の 文 に 曰 く。 ゐ ス ル ハ ニ ヒ ル ト ス ル ノ 復 次 秘 密 主。 眞 言 門 修 二行 菩 薩 行 一諸 菩 薩 無 量 無 數 百 千 倶 腋 那 庚 多 劫 積 集 無 量 功 徳 智 慧 具 修 二諸 行 一無 量 智 慧 方 便 皆 悉 住 心 考 二 五

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住 心 考 二 六 セ リ 成 就。 天 人 世 間 之 所 二 蹄 依 一。 出 ニ 過 一 切 聲 聞 辟 支 佛 位 一。 去 々 郎 ち 既 に 眞 言 門 と 標 せ る の み な ら す、 疏 に よ る に こ の 文 は 第 三 劫 の 心 を 述 ぶ る に 當 つ て そ の 功 徳 を 歎 じ た も の で あ る と 言 ひ、 そ れ を 神 通 乗 を 以 て 喩 顯 し、 毘 盧 遽 那 具 禮 法 身 の 功 徳 に 蹄 し て ゐ る の で あ る が、 紳 通 乗 並 に 大 日 具 禮 法 身 と は 師 ち こ れ 密 教 の 徳 を 言 へ る も の で あ る 事 は 論 を 待 た ざ る 所 で あ る。 こ ゝ に 引 く 経 の 最 後 の 文 に 所 謂 ﹁ 出 過 一 切 聲 聞 辟 支 佛 位 ﹂ に 就 て 疏 に 繹 し て 次 の 如 く 言 つ て ゐ る。 以 行 者 得 二 此 心 一 時 郎 知 二 繹 迦 牟 尼 浮 土 不 ツ 殿 見 佛 壽 量 長 遽 本 地 之 身 與 二 上 行 等 從 地 涌 出 諸 菩 薩 一同 會 二 一 慮 鱒 修 二 對 治 道 一 ヲ モ 者 難 二泌 隣 二 補 慮 一然 不 レ 識 二 一 人 鱒 是 故 此 事 名 爲 二 秘 密 鴫 又 此 菩 薩 能 於 二 畢 童 浮 心 中 一 普 集 二 會 十 方 法 界 諸 佛 菩 薩 一 亦 自 能 瞥 詣 二 十 方 一供 二 養 諸 善 知 識 一謁 二 求 正 法 一。 唯 凋 自 明 了。 諸 天 世 人 莫 二能 知 一。 由 二 此 因 縁 一 復 名 二 秘 密 一。 云 々 こ れ 帥 ち 眞 言 門 の 浮 菩 提 心 は 唯 佛 與 佛 の 境 界 に し て 二 乗 人 天 等 非 所 識 な る 事 を 示 せ る も の で あ る。 こ の 中 ﹁ 以 行 者 得 此 心 ﹂ 等 の 前 牛 は 法 華 経 の 壽 量 品 と 寳 塔 涌 出 品 の 意 を 記 せ る も の で あ り、 ﹁ 又 此 菩 薩 ﹂ 以 下 の 後 牛 は 華 嚴 経 の 入 法 界 品 の 意 を 記 せ る も の で あ る 事 は 一 見 明 瞭 で あ る。 こ の 文 に 就 て 宗 家 の 意 に よ る 時 は 九 顯 一 密 の 法 相 に よ つ て 華 天 晦 一 乗 を 顯 教 と し て 扱 ふ の で あ る か ら、 法 華 ・ 華 嚴 の 爾 経 も と よ り 顯 教 の 経 典 で あ る。 從 つ て こ の 場 合 の 引 文 は た 草 爾 経 に 出 過 の 意 を 示 せ る を 例 と し て、 密 教 の 二 乗 の 境 界 を 出 過 せ る 事 を 擬 知 せ し む る に 在 り、 郎 ち 顯 の 爾 縄 を 以 て 能 擬 と し 眞 言 門 の 相 を 以 て 所 擬 と 爲 す も の で、 顯 密 の 分 齊 は 爾 者 各 別 な り と 見 る の で あ る。 然 し 乍 ら こ の 一 文 の 始 終 を よ く 見 る と 必 ら す し も 宗 家 の 説 の 如 く で な い 事 に 氣 附 く で あ ら う。 師 ち 若 し も 言 ふ が 如 く 能 擬 と 所 擬 と の 關 係 に あ る な ら ば 必 ら す 文 中 に 猶 如 或 は 例 如 等 の 言 葉 を 挿 入 し て そ の 意 を 明 ら か な ら し め る で あ ら う が、 こ の 場 合 そ ん な 事 は な く、 叉

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所 謂 ﹁ 是 故 此 事 名 爲 秘 密 ﹂ の 此 事 と は 飾 ち 法 華 経 を 指 す も の で あ り、 叉 ﹁ 由 此 因 縁 復 名 秘 密 ﹂ の 此 因 縁 と は 郎 ち 華 嚴 経 を 指 す も の で、 法 華 ・ 華 嚴 二 経 の 所 説 を 以 て 直 ち に 秘 密 と 言 へ る も の で あ る。 又 引 文 の は じ め の ﹁ 得 此 心 ﹂ と は 即 ち 浮 菩 提 心 で あ つ て、 ﹁ 帥 知 ﹂ と 言 へ る 事 よ り 浮 菩 提 心 を 得 る 時 は 即 ち 法 華 ・ 韓 嚴 二 経 の 意 を 得 る 事 で あ り、 又 こ れ 眞 言 門 に 契 誰 す る 事 で あ る。 こ れ に よ つ て 疏 家 に 於 て は 顯 密 の 界 畔 は 第 二 劫 の 終 に 在 つ て、 第 三 劫 の 全 髄 を 以 て 密 教 と す る 意 趣 を 知 る べ く、 こ れ 宗 家 と 疏 家 と の 大 な る 相 違 鮎. で あ る。 経 に は 更 に 前 文 に 績 い て 次 の 如 く 言 つ て ゐ る。 ハ レ パ テ シ テ フ ハ レ レ レ テ 所 謂 室 性 離 二 於 根 境 一無 相 無 境 界。 越 二 諸 戯 論 一。 等 盧 塞 無 邊 一 切 佛 法 依 レ 此 相 綾 生。 離 二 有 爲 無 爲 界 一。 離 二 諸 造 作 一。 離 二 眼 耳 鼻 舌 身 意 一。 極 無 自 性 心 生。 文 こ の 交 は 疏 に よ る に 上 既 に 眞 言 門 の 功 徳 を 歎 じ 終 つ て 引 綾 き こ、 に 眞 言 門 能 入 の 心 を 明 す と 言 ふ 事 に な つ て 居 り、 大 師 は こ の 文 を 以 て 第 八 一 道 無 爲 心 と 第 九 極 無 自 性 心 と の 二 住 心 を 合 読 し た る も の で あ る と 見 る の で あ る。 経 の 文 を 二 種 の 住 心 に 配 繹 す る 事 に 就 て、 大 師 の 廣 略 二 論 の 上 よ り 見 て、 所 謂 塞 性 乃 至 眼 耳 鼻 舌 身 意 を 以 て 第 八 佐 心 を 謹 し、 極 無 自 性 心 の 一 句 を 以 て 第 九 住 心 を 謹 す と も、 又 眼 耳 鼻 舌 身 意 迄 は 二 種 の 住 心 に 通 じ 極 無 自 性 心 の 一 句 の み を 第 九 住 心 に 局 ら し め て 爾 住 心 の 簡 別 を な す と も 言 は れ て ゐ る。 爾 こ の 経 文 の 配 繹 に 關 し て は 頼 喩 の 指 心 砂 第 十 三 に 七 義 を 出 し て 読 明 せ る も の や 般 若 寺 観 賢 の 大 疏 抄 上 巻 に 出 せ る 別 義 等 を 参 照 す べ き で あ る。 上 に 引 く 所 の 所 謂 塞 性 等 の 文 を そ の 文 字 通 り に 素 直 に 讃 ん だ 者 に は、 か 蕊 る 大 師 の 読 は 経 文 の 表 面 上 に 表 は れ た 意 味 と は か な り か け 離 れ 九 義 相 を 提 示 せ ら れ て ゐ る 事 に 氣 附 く の で あ る。 一 文 の 中 に 殆 ど 全 く 華 嚴 或 は 天 台 の 思 想 ガ 積 佳 心 考 二 七

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住 心 考 二 八 極 的 に 明 瞭 に 出 て ゐ る わ け で も な く、 從 つ て こ の 文 を 嚴 密 に 華 天 爾、 一 乗 に 配 繹 す る が 如 き 事 は も と よ り 想 像 も な し 得 ざ る 所 で あ る。 最 後 の 一 句 を 以 て 華 嚴 に 配 繹 す る 事 は あ た か も 彼 の 初 劫 の ﹁ 生 十 二 因 縁 ﹂ の 一 句 を 以 て 縁 豊 に 相 當 す る 第 五 の 抜 業 因 種 心 に 配 羅 し た る も の に 似 て ゐ る。 後 に も 読 明 す る 如 く、 文 の 當 面 よ り し て は 之 は む し ろ 二 住 心 に 配 繹 し て 二 段 と 見 る よ り も 初 後 一 聯 の 思 想 を 演 べ た も の と 見 る 方 が 自 然 で あ り、 後 の 三 劫 寳 珠 段 や 六 無 畏 の 段 に も 極 無 自 性 心 の 一 名 の み が 出 さ れ て ゐ る。 所 謂 極 無 自 牲 心 の 名 は 経 の ﹁ 極 無 自 牲 心 生 ﹂ よ り 出 て ゐ る 事 は 論 を 待 た す、 大 師 の 第 九 住 心 の 立 名 も も と よ り 之 を 踏 襲 せ ら れ て ゐ る の で あ る。 然 る に 第 八 住 心 に 關 し て は 寳 鍮 に 三 名 あ り。 一 道 無 爲 心、 如 實 知 自 心、 室 性 無 境 心 こ れ で あ る。 そ の 中 一 道 無 爲 心 は 金 剛 頂 蓮 華 部 心 念 諦 儀 軌 の ﹁ 是 一 謹 清 浮 茨 々 ﹂ の 文 に 基 く 立 名 と せ ら れ、 後 二 者 は 大 日 経 住 心 品 に 基 く と は 言 へ、 如 實 知 自 心 は 三 劫 段 の 今 文 に は 見 當 ら す、 最 後 の 室 性 無 境 心 の 一 の み が ﹁ 所 謂 塞 性 ﹂ 等 の 第 八 住 心 に 相 當 す る と せ ら る ゝ 當 分 の 文 中 に 見 ゆ る の み で あ る。 三 名 の 中 に て は 第 一 の 一 道 無 爲 心 の 名 が 正 名 で あ る。 大 師 は 如 是 き 三 名 の 下 第 八 佳 心 を 上 の 経 文 か ら 摘 出 せ ら れ た の で あ る け れ ど も、 文 の 當 面 か ら 第 八 住 心 の 必 然 的 な る 存 在 牲 を 裏 附 け る 事 は 如 何 に す る も 困 難 で あ る。 上 に も 蓮 べ し 如 く 経 ・ 疏 に 於 て は 三 劫 の 節 段 は 明 瞭 に 看 取 し 得 る け れ ど も、 各 佳 心 の 節 段 に 至 つ て は 殆 ど 明 示 さ れ た る も の 少 く、 名 構 の 如 き も 一 と し て 示 さ れ て ゐ な い の で あ つ て、 第 三 劫 の 読 相 も そ の 例 に 漏 れ ざ る も の で あ る。 然 し 大 師 の 意 趣 と し て は 判 教 と 言 ふ 立 場 に 立 つ て、 當 時 日 本 に 存 在 せ し あ ら ゆ る 宗 派 を 所 封 と し て 九 顯 一 密 の 十 往 心 を 立 て ら れ な の で あ り、 華 天 爾 一 乗 を も 九 顯 の 中 に 撮 め な け れ ば 制 教 と し て の 意 義 が 成 立 た な い の で あ る が、 之 は 第 二 劫 の 二 乗 地 に 囁 め る 事 は 出 來 す、 第 三 劫 に 撮 め ね ば な ら な い 必 要 上 今 の 経 文 に 野 し て 如 是 き 配 繹 を 加 へ ら れ な る も の で あ る。

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上 掲 の 所 謂 室 性 等 の 一 文 は そ の 内 容 殆 ど 全 く 否 定 的 な 言 葉 を 以 て 一 貫 せ ら れ て ゐ て、 般 若 の 塞 思 想 を 想 は し め る 筆 致 を 取 つ て ゐ る の で あ る が、 之 を 疏 の 文 に よ つ て 見 る と そ の 読 根 が 非 常 に 攣 つ て ゐ て、 多 く 肯 定 的 な 言 葉 を 用 ゐ、 意 味 上 に 於 て も 一 段 の 飛 腱 を な し、 幾 分 法 華 ・ 華 嚴 の 思 想 を 髪 髭 せ し む る の み な ら す、 密 教 思 想 が 濃 厚 に 現 は さ れ て ゐ る。 然 し 具 膿 的 に 如 何 な る 経 論 で あ る か は 疏 中 も と よ り 何 等 明 示 さ れ て は ゐ な い。 疏 の 文 に 曰 く。 ス ル ニ つ 経 次 云 二 所 謂 塞 性 一。 室 性 郎 是 自 心 等 虚 室 性。 今 観 二 此 心 一 帥 是 如 來 自 然 智。 亦 是 毘 盧 遮 那 遍 一 切 身。 以 二 心 如 シ 是 故 諸 法 亦 如 是。 根 塵 皆 入 二 阿 字 門 殉 故 日 二離 於 根 境 鱒 影 像 不 レ 出 二 常 寂 滅 光 一故 日 二 無 相 一。 以 二 心 實 相 智 一豊 二 心 之 實 相一。 バリ ヲ リ ム ル ユ 境 智 皆 是 般 若 波 羅 蜜。 故 日 二 無 境 界 一。 以 龍 此 中 十 喩 望 二 前 十 喩 一復 成 申 戯 論 上 故 日 二 越 諸 戯 論 一。 第 三 重 微 細 百 六 十 心 煩 憎 シ ロブ シ テ 業 壽 種 除 復 有 二 佛 樹 牙 生 一。 故 日 二 等 塵 室 無 邊 一 切 佛 法 依 此 相 綾 生 殉 既 不 レ壊 二 因 縁 一帥 入 二 法 界 一亦 不 レ 動 二 法 界 一師 是 縁 起。 ニ モ ニ モ ト シ テ 當 レ知 因 縁 生 滅 師 是 法 界 生 滅 法 界 不 生 滅 郎 是 因 縁 不 生 滅。 故 日 二離 有 爲 無 爲 界 一。 若 如 來 出 世 若 不 出 世 諸 法 法 爾 如 レ 是 イ テ 住。 故 日 二 離 諸 造 作 殉 如 般 若 中 一 切 法 趣 レ 眼 是 趣 不 レ 過。 猶 如 三 百 川 赴 レ 海 更 無 二 去 慮 一。 是 故 當 レ 知 眼 郎 是 第 一 實 際。 第 一 ニ ン ヤ 實 際 中 眼 爾 不 可 得。 何 況 趣 不 趣 耶。 耳 鼻 舌 身 意 亦 如 レ是。 故 日 二 離 眼 耳 鼻 舌 身 意 一。 行 者 得 二 如 是 微 細 慧 "時 観 二 一 切 染 ス レ ハ り 浮 諸 法 一乃 至 少 分 猶 如 二 隣 虚 一無 下 不 二 從 レ縁 生 一者 上。 若 從 レ 縁 生 邸 無 自 性。 若 無 自 性 即 是 本 不 生。 本 不 生 郎 是 心 實 際。 心 實 際 亦 復 不 可 得。 故 日 二 極 無 自 性 心 生 一也。 文 こ の 中 ﹁ 毘 盧 遮 那 遍 一 切 身 ﹂ と 言 ひ ﹁ 根 塵 皆 入 阿 字 門 ﹂ 並 に ﹁ 郎 是 本 不 生 ﹂ 等 と 言 へ る も の は 密 教 思 想 に 基 く 説 相 な る 事 明 ら か で あ り。 ﹁ 影 像 不 出 常 寂 滅 光 ﹂ と 言 ひ ﹁ 以 心 實 相 智 豊 心 之 實 根 境 智 皆 是 般 若 波 羅 密 ﹂ と 言 へ る も の や、 ﹁ 既 不 壊 因 縁 即 入 法 界 法 界 不 生 滅 師 是 因 縁 不 生 滅 ﹂ と 言 へ る も の 等、 華 嚴 経 や 法 華 経 の 思 想 を 取 り 入 れ 九 り と 住 心 考 二 九

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住 心 考 三 〇 見 得 る 筆 致 を 示 せ る も の が あ る。 要 す る に こ の 一 文 に 於 て は 法 華 経 や 華 嚴 経 の 思 想 と 密 教 思 想 と が 交 互 に 織 込 ま れ て ゐ て、 密 教 思 想 を 解 す る に 法 華 ・ 華 嚴 爾 経 の 思 想 を 以 て し た る も の と も 見 る べ く、 之 に よ つ て 法 華 ・ 華 嚴 の 爾 経 と 密 教 思 想 と の 間 に 嚴 然 た る 一 線 を 劃 す る 事 な く、 之 等 三 者 を 綜 合 し た る も の を 以 て 密 教 と な し た 疏 家 本 來 の 立 場 を 窺 ひ 知 る 事 が 出 來 る 様 に 思 は れ る。 但 し こ ふ に 注 意 す べ き 一 事 は 今 は 軍 に 経 典 と し て の 法 華。 華 嚴 の 爾 者 を 見 て 行 け ば 足 る の で あ つ て、 之 等 に 基 い て 宗 派 的 に 構 成 せ ら れ た 華 天 爾 宗 に 就 て は 何 等 の 注 意 を も 彿 ふ 必 要 の 無 い 事 は 論 を 待 た な い。 華 天 の 爾 者 が 宗 派 的 機 構 を 成 立 し た の は 支 那 に 渡 つ て 以 來 の 事 で あ る。 天 台 宗 は 慧 文 ・慧 思 を 経 て 智 者 大 師 に 至 つ て 大 成 せ ら れ、 華 嚴 宗 は 法 順 智 撮 を 経 て 賢 首 大 師 法 藏 に 至 つ て 完 成 し 九 の で あ る。 從 つ て 之 等 は 印 度 に 於 て は 何 等 宗 派 的 の 罷 系 は 無 か つ た の で あ る。 從 つ て 善 無 畏 三 藏 と し て は そ れ ら に 就 て は 全 く 無 關 心 で な け れ ば な ら な い。 然 し 之 等 爾 宗 の 所 依 の 経 典 と し て の 法 華 ・ 華 嚴 の 爾 経 は つ と に 大 乗 佛 教 初 期 の 成 立 に か ・ り、 そ の 思 想 内 容 は 印 度 佛 教 の 最 高 峯 に 薦 す る も の と し て 印 度 佛 教 史 上 多 大 の 影 響 を 持 つ て 居 り、 印 度 の 論 師 に し て 之 等 爾 経 の 思 想 に 鰯 れ ざ る も の は 皆 無 と 言 つ て よ か ら う。 善 無 畏 三 藏 も そ の 例 に 漏 れ ざ る 事 は 上 掲 の 疏 の 文 に よ つ て 明 ら か に 知 る 事 が 出 來 る。 善 無 畏 三 藏 が 之 等 爾 経 を 以 て 密 教 に 撮 す る 態 度 に 就 て、 之 等 は 第 二 劫 に 牧 め 得 な い と 言 ふ 理 由 で 漫 然 と 密 教 中 に 牧 め た と 見 る べ 嚢 で は な く し て、 恐 ら く 三 藏 當 時 之 等 を 所 依 と す る 宗 派 的 色 彩 も 無 か つ た 事 で あ り、 叉 思 想 が 極 め て 高 次 的 な る も の で あ る 爲 に、 三 藏 自 身 と し て は 大 日 経 と の 間 に 何 等 の 思 想 的 の 高 下 を 認 め ら れ な か つ た も の で は な か ら う か。 之 に 就 て 今 安 然 の 教 時 問 答 第 二 の 左 の 文 を 注 意 し よ う。 曰 く

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ノ 大 日 義 繹 是 無 畏 説。 一 行 記。 読 日 此 経 本 地 之 身 師 是 妙 法 蓮 華 最 深 秘 塵。 智 撮 温 古 沿 定。 亦 同 二 蘇 悉 地 疏 一。 師 説 云。 教 有 二 二 種 一。 一 顯 示 教。 三 乗 是 也。 二 秘 密 教。 一 乗 是 也。 秘 中 立 レ ニ。 一 唯 理 秘 密。 華 嚴 般 若 維 摩 法 華 浬 葉 等 也。 二 事 理 倶 密。 大 日 金 剛 頂 等 也。 金 剛 頂 疏 述 二師 説 一云。 法 華 明 二久 遠 成 佛 噛。 此 経 明 二頓 悟 成 佛 一。 二 読 難 レ異 實 是 一 佛。 而 海 和 上 於 ニ ス ル コ ト ノ ノ ア リ 諸 大 乗 一藪 判 二 教 理 淺 深 果 極 高 下 一難 突。 文 安 然 は 台 密 の 學 匠 と し て そ の 名 高 く、 偉 大 な る 功 績 を 残 し て ゐ る の で あ る が、 今 文 に 於 て も 疏 家 本 來 の 立 場 を 閾 明 し、 顯 密 二 教 の 分 齊 を 定 め、 密 教 中 に 理 密 と 事 密 と の あ る 事 を 明 示 せ る 鮎 は 大 い に 注 意 を 要 す る 所 で あ る。 こ の 中 顯 密 の 分 齊 を 定 む る に 當 り 三 乗 教 を 以 て 顯 教 と な し、 一 乗 教 を 以 て 密 教 と な す と 言 へ る 鮎 の 如 き 上 來 掲 ぐ る 疏 の 文 の 所 読 と 極 め て よ く 一 致 す る も の で あ る 事 は 論 を 待 た な い。 爾 密 教 中 に 理 密 と 事 密 と を 分 別 し、 一 乗 教 を 以 て 理 密 と な し 爾 部 大 経 を 以 て 事 理 倶 密 と な す 馳 に 關 し て は 疏 文 の 中 に か ゝ る 明 文 が あ る わ け で は な く、 將 し て 疏 家 本 來 の 立 場 と し て そ こ ま で 嚴 密 に 劃 然 た る 匠 別 を 立 て ら れ て ゐ た も の か 否 か は 速 断 を 許 さ れ な い で あ ら う が、 然 し 経 文 の 内 容 よ り 見 て 勿 論 こ の 匠 別 の 正 當 な る 事 は 否 み 得 ざ る 所 で あ る。 如 是 く 華 嚴 経 並 に 法 華 経 の 思 想 は 疏 家 本 來 の 立 場 と し て は 密 教 中 に 掻 め ら れ て ゐ る も の で あ り、 然 し て 又 そ れ ら は 未 だ 華 嚴 或 は 天 台 と 言 ふ 宗 派 的 色 彩 を 持 つ て 居 ら な い も の で あ る。 從 つ て 上 に 掲 ぐ る ﹁ 所 謂 室 性 ﹂ 等 の 一 文 に 關 し て 宗 家 の 如 く 華 天 爾 一 乗 に 配 繹 し て、 八 九 の 二 住 心 と な す が 如 き 事 と は 大 な る 蓬 庭 の 存 す る 事 は 蓋 し 又 當 然 の 事 に 属 す る。 大 師 が 如 是 く 天 台 と 華 嚴 の 爾 宗 を 序 で の 如 く 第 八 ・ 第 九 の 爾 住 心 に 配 せ ら れ た る 事 に 就 て、 台 密 系 統 の 圓 珍 の 大 日 経 指 蹄 や 安 然 の 教 時 問 答 等 に 於 て 旺 ん に 大 師 の 十 佳 心 の 立 教 を 難 じ、 天 台 を 以 て 華 嚴 宗 の 上 に 置 く べ く 種 々 の 論 議 を 住 心 考 三 一

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佳 心 考 三 二 重 ね、 又 大 師 宗 家 に 於 て も 宗 義 決 澤 集 其 他 に 於 て ﹁ 八 九 淺 深 ﹂ 等 の 論 題 と し て 大 い に 重 要 覗 せ ら れ 來 つ た 鮎 で あ る け れ ど も、 そ れ ら は 宗 派 成 立 後 に 於 て こ そ 當 然 起 る べ き 問 題 で あ つ て、 決 し て 善 無 畏 三 藏 當 時 に 於 て 起 り 得 べ き 事 で は な い の で あ る。 先 に も 一 言 せ し 如 く 経 の ﹁ 所 謂 室 性 ﹂ 以 下 の 文 を 以 て 二 種 の 住 心 に 配 す る 事 は 何 と し て も 無 理 で あ り、 安 然 等 も そ の 鮎 を 強 く 指 摘 し て ゐ る。 安 然 は 天 台 を 以 て 華 嚴 の 上 に 置 か ん と し て 八 九 の 淺 深 を 論 す る 場 合 に 決 し て こ の 一 文 を 以 て 典 檬 と し た る 事 は 無 く、 四 心 義 の 繹 や そ の 他 の 説 文 を 利 用 し て ゐ る の に 徴 す る も 明 ら か で あ る。 安 然 の 教 時 問 答 第 二 に 曰 く ヲ ハ ノ 経 中 所 謂 塞 性 乃 至 極 無 自 性 之 文 及 十 縁 生 句 義 繹 以 爲 二 生 極 無 自 性 心 入 曼 茶 羅 海 會 一 種 阿 聞 梨 一。 亦 揺 二 華 嚴 般 若 種 々 不 思 議 境 界 一。 此 中 華 嚴 是 華 嚴 宗。 般 若 是 三 論 宗。 而 海 和 構 以 二 所 謂 塞 性 等 文 一爲 二 天 台 宗 一。 以 二 極 無 自 性 一 句 一爲 二 華 嚴 宗 一。 ノ ノ ノ ヲ ⋮⋮⋮ 此 中 佛 性 鶴 浬 葉 経。 一 乗 郎 法 華 経。 秘 藏 師 眞 言 教。 而 海 和 尚 以 一一上 如 實 知 自 心 等 文 下 所 謂 室 性 等 文 一爲 二 天 台 宗 一。 ナ レ ド モ ト シ テ 於 二 顯 教 一是 究 竜 望 二 眞 言 一是 初 門 而 安 二 華 嚴 宗 教 之 下 一。 弐 々 こ の 中 所 謂 義 繹 と は 四 心 義 を 繹 す る 部 分 の 疏 文 に 相 當 す る 事 は 論 を 待 た な い。 以 て 知 る べ き で あ る。 五 以 上 吾 人 は 住 心 義 に 關 し て 疏 家 と 宗 家 と の 間 に 於 け る 種 々 の 相 違 黙 を 列 墾 し、 供 せ て 疏 家 本 來 の 立 場 を 明 示 す る 事 に 努 力 し た。 古 來 傳 統 的 に は 疏 家 と 宗 家 と の 間 に は そ の 所 読 の 上 に 何 等 の 相 違 黙 も 無 く、 思 想 的 に 全 く 一 致 せ る も の ゝ 如 く に 言 は れ る 事 が あ る け れ ど も、 然 し 如 上 爾 者 の 間 に は 年 代 的 に も 地 理 的 に も 又 意 趣 の 上 か ら 言 つ て も 既 に 相 當 の 開 き が 存 す る の で あ る か ら、 ど う し て も そ の 間 多 少 の 蓬 庭 の あ る 事 を 認 め ね ば な ら す、 然 し て か 瓦 る 逞 庭 を 發 見 す

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る 事 こ そ 正 し く 爾 者 の 眞 實 の 思 想 的 特 徴 を 發 見 す る 重 大 な る 襖 機 で あ る。 然 し て 又 一 面 か ゝ る 爾 者 間 の 思 想 的 蓬 庭 が 萄 多 數 に 發 見 さ れ た 所 で 決 し て 爾 者 の 思 想 的 贋 値 が 低 下 す る わ け の も の で は な く、 事 實 は 却 つ て 反 對 に 大 師 が 一 面 疏 家 を 組 習 し つ ゝ 他 面 猫 立 し 九 猫 創 的 の 立 揚 に 於 て 自 己 の 見 解 を 加 味 し、 こ 瓦 に 十 住 心 の 判 教 を 造 ら れ た 所 に 立 教 開 宗 の 租 と し て 不 滅 の 功 績 の あ る 事 を 知 り 得 る の で あ る。 大 師 の 思 想 的 立 場 は 眞 言 宗 の 教 義 を 理 解 す る 事 に よ つ て 明 ら か に 知 る 事 が 出 來 る け れ ど も、 経 ・ 疏 本 來 の 立 場 は 眞 言 宗 の 教 義 を 基 と し て そ れ か ら 遡 つ て 行 つ た 所 で 分 明 に 分 り 得 る も の で は な く、 住 心 義 に 關 す る 隈 り む し ろ 大 師 の 廣 略 二 論 並 に 大 師 の 流 れ を 汲 む 注 繹 家 の 著 書 か ら 離 れ て 見 る 事 が 必 要 で あ り、 常 に 宗 派 以 前 と 云 ふ 事 を 忘 れ て は な ら な い の で あ つ て、 之 が 爲 に 或 は 傳 続 的 な 見 方 に 違 背 し 抵 鰯 す る 様 な 結 果 に 立 至 る と し て も、 そ れ は 如 上 方 法 論 の 相 違 に 墓 て 所 蓋 し 已 む を 得 な い で あ ら う。 本 稿 ほ 昨 年 末 よ り 本 年 春 に 亙 る 數 ヶ 月 聞 大 臼 経 並 に 同 疏 な 通 讃 す る 必 要 が あ り、 そ の 際 勿 々 の 間 に 認 め た も の で あ る。 そ の 後 火 曜 會 の 公 開 講 座 の 機 會 に 之 な 發 表 し 六 の が 線 と な つ て、 乞 ぱ れ る ま ゝ に 本 誌 に 掲 載 す ろ 事 と な つ 六 の で あ る が、 何 分 密 教 學 に 手 々 染 め て 以 來 日 術 淺 く、 砺 究 も 遷 捗 し て 居 ら な い の み で な く、 原 稿 に 灘 し て 殆 ん ど 推 敲 た 加 へ る 暗 間 の 飴 裕 が 無 か つ 六 爲、 思 ば ざ る 誤 謬 が あ つ 公 り、 或 ぼ 意 外 の 鋏 黙 の あ る 事 た 恐 れ る の で お る け れ ど も、 幸 に し て 先 輩 諸 氏 の 御 叱 正 々 得 ん 事 秘 望 ん で 止 ま な い。 以 上 (昭 和 一 二 ・ 六 ・ 三 ○ ) 住 心 考 三 三

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